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知的財産戦略本部会合(第23回)

日時: 平成21年6月24日(水)16:45〜17:30
場所: 官邸大会議室

○野田内閣府特命担当大臣
 ただいまから、知的財産戦略本部の第23回会合を開催いたします。
 本日はお忙しい中、ご参集いただき、誠にありがとうございます。
 総理は所用により到着が遅れるとの連絡を受けておりますので、時間の都合もございます、会合を始めさせていただきます。
 では、早速、議題に入らせていただきます。
 本日の議題は、「先端医療分野における特許保護の在り方について」、「知的財産推進計画2009について」及び「専門調査会の設置等について」等です。
 まず、知的財産推進計画2008に基づき、先端医療特許検討委員会を設け、先端医療分野における特許保護の在り方について検討してきましたが、同委員会の金澤一郎委員長から検討結果のご報告をお願いいたします。

○金澤先端医療特許検討委員会委員長
 それでは、ただいまのご指示に従いましてご報告を申し上げます。
 資料1の1ページ目をあけていただけますでしょうか。先月の29日にこの「先端医療分野における特許保護の在り方について」と題する報告書を取りまとめました。
 1ページ目にございますように、現行制度についてまずご説明したいと思うんですが、この1ページ目の下の方をご覧いただきたいと思います。○とか×とかがついているやつです。現行の制度では、医薬品あるいは医療機器といった物でありますね、あるいはその製造方法などは特許対象になっておりますけれども、医療の方法、言いかえれば人間を手術、治療、診断するような、そういう方法については特許対象としておりません。他方─上の方にいきますが、iPS細胞を典型といたしますような先端医療分野においては大変な研究開発が進んでおりまして、世界的な競争も激しいということであります。そして、それに伴って知的財産の獲得競争も非常に激しくなっている。こういう状況を踏まえまして、知的財産推進計画2008におきまして先端医療分野における特許保護の在り方について検討するということが決定されて、この委員会が設置されたわけであります。本委員会におきましては、先端医療技術の発展を促進して、その結果を患者さんに届けるということを第1の目標といたしまして、諸外国における特許保護の動向であるとか、あるいは国民の生命や健康に直結する医療の特質や公共の利益への配慮というようなものを考慮しつつ、先端医療分野における特許保護の在り方を検討してまいりました。
 2ページ目をあけていただきたいと思うのでありますが、今回の検討に当たりまして、先端医療分野における研究者からのヒアリングであるとか、あるいはインターネットを利用いたしました事例調査をまずいたしました。その中で、新たに特許対象とすべきかどうかの検討が必要だと考えられる発明の具体例を延べ100例ぐらい集めまして、それを類型化し、分析し、検討を行ったわけでございます。その上で、この2ページ目の一番下にありますような、今後取り組むべき3つの課題を抽出いたしました。第1は、審査基準における特許対象の明確化であります。よく調べて見ると、特許の対象になるんだけれども、そう簡単には理解しにくいものというのがございます。その辺を明確化してもらう。第2に、特許対象範囲を見直そうということです。方向としては広げるということです。それから第3に、研究者等に対する先端医療特許取得への支援でございます。この3つについてご説明をしたいと思います。
 3ページ目をおあけいただきたいと思うんですが、1つ目の課題であります明確化ですが、研究者とか大学などでは、どうしても知的財産の担当者などですね、特許を出願する人にとって特許対象となるのかどうかというのはこれは非常にわかりにくい部分がございます。審査基準を明確化することによって、それをはっきりさせようということでございます。これによりまして予見可能性を高めて、発明の確実な権利化を促進することができると考えております。具体的には、薬剤を局所加温─温めるわけですが、体の局所を温める装置と組み合わせて用いるドラッグ・デリバリー・システムの発明であるとか、あるいはiPS細胞の分化誘導方法などを生体外のプロセスを含む発明をするとか、あるいは細胞シートなどの生体由来材料の新たな用途の発明などがその対象になるかと思います。
 4ページ目をおあけいただきたいと思うんですが、次の課題は特許対象の見直しでございます。2つの類型の発明を新たに特許対象とすることを提言しております。1つは、この上の方の@でありますけれども、専門家の予測を超えるような効果を示す新しい用法・用量の医薬品の発明でございます。例えばここの例でありますと、毎日飲まなければいけなかったのを、いろいろ検討してみると1週間に1遍でよかったというようなですね。2日に1遍でいいというのはちょっと普通の医療の範囲だろうという議論もございまして、やはり1週間飲まなくてもいい、1週間に1遍でいいというぐらいの専門家の予測を超えるような効果をするものについては対象としてはどうかということになります。
 それから、2番目の断層画像撮影の云々というのは、例えばX線、CTやMRIなどの断層画像撮像の仕組み等の測定技術の発明であります。これらの発明について特許の保護をすることによりまして、副作用やあるいは患者さんのQOL─生活の質でありますが、それを劇的に改善すると、あるいは画期的な医療を発見するというような、そういう実用化を促進したいとは思っております。
 5枚目をお願いいたします。最後のページでありますが、最後の課題、これは先端医療分野における特許取得の支援でございます。研究者を初めとした特許制度のユーザーの方々にとりまして、国内外における的確な特許権の取得の役に立つようなさまざまな施策・活動を提言しております。インターネットなどによってこういうことが簡単にわかるようなシステムを構築してほしいという提言でございます。
 私からの報告は以上でございますけれども、この内容をさらに効果的なものにするためにも、関係の各省の方々のご協力がぜひ必要でございます。どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。
 以上でございます。

○野田内閣府特命担当大臣
 ありがとうございました。
 それでは、知的財産推進計画2009の草案を有識者本部員の方々に取りまとめていただいておりますので、その座長をお願いしておりました相澤本部員から概要をご説明いただきます。
 よろしくお願いします。

○相澤本部員
 それでは、知的財産推進計画2009の案を説明させていただきます。
 4月6日に本部会合において決定されました第3期の基本方針に基づく初年度のものでございます。また、この案は2008年の施策評価の結果を踏まえて作成されておりまして、特に重要な施策をまとめたのが「重点施策」であり、全体の状況は「施策一覧」にリスト化されております。
 それでは、A3のカラー刷りになっております資料3をご覧ください。
 大きく3本の柱立てに分かれております。第1はイノベーションの促進、第2はグローバルな知財戦略の強化、第3はソフトパワー産業を戦略産業として成長を推進するでございます。
 第1の柱でございますが、技術革新や市場のスピード・規模が飛躍的に拡大する中で、iPS細胞など先端分野における世界的な知財獲得競争が激しさを増してきております。一方で、内外の資源を有効的に、あらゆるリソースを活用するという、いわゆるオープン・イノベーションがますます進展しております。ところが、日本における革新的な基本特許を獲得してオープン・イノベーションでの事業展開ですが、グラフにありますように、海外からの研究費の獲得ということになりますと、ほかの国に比べて圧倒的に低い状況です。これは日本の国際展開における不十分さのあらわれであります。
 そこで、イノベーション促進のための主な取り組みでございますが、まず、先端医療分野における特許対象の見直しであります。今、金澤先生からご説明がありましたように、知財戦略本部においてこのような答申が出され、副作用を劇的に低減する新用法・用量の医薬を特許対象とするなど、大きな進展が見られました。これをに基づき、実施体制を整えるというところでございます。
 その次に、総合プロデュース機能の強化であります。その一環といたしまして、企業や大学等に分散する技術あるいは人材等を柔軟に組み合わせ、新たな付加価値を創造する革新的な活動、それに対してリスクマネーを供給する新しい構想の産業革新機構の体制、これを整備することでございます。それから、大学発のイノベーションを加速する知財システムを見直すこと、こういうことを2つ目として挙げております。
 3つ目でございますが、オープン・イノベーションに対応した知財環境整備であります。いわゆるパテント・トロールの問題に関しまして、権利の濫用問題への対応、特許の実施許諾の意思をあらかじめ登録しておけば特許料を減免する、いわゆるライセンス・オブ・ライトの導入等を促進措置することでございます。
 第2の柱でございますが、グローバルな知財戦略の強化であります。事業のグローバル展開に伴いまして、世界全体で特許権を押さえて権利保護を図っていくことが重要になってきております。真ん中のグラフをご覧ください。これは日米欧出願人の自国特許庁への出願構造でございます。ここでも米国あるいはヨーロッパと日本の大きな構造の違いがございます。つまり、海外での知財活動が非常に遅れているという状況であります。
 まず、グローバルな知財戦略の強化のために、世界知財システムの構築に向けた取り組みをなお一層強化すべきであります。特許庁による特許審査ハイウェイのネットワークの積極的な拡大が大きな取り組みとなります。
 次に、模倣品・海賊版対策の強化でございます。模倣品・海賊版防止条約、いわゆるACTAについて、先進諸国間での交渉が進められているところでありますが、さらに早期の妥結に向けて取り組むこと、侵害発生国・地域に対する働きかけの強化等であります。
 次に、中小企業の海外展開支援の強化でございます。権利取得から販路の開拓、模倣品対策までの一貫した支援強化が重要でございます。
 第3の柱でございますが、ソフトパワー産業を戦略産業として成長を促進することでございます。主な取り組みといたしましては、ソフトパワー産業の振興、海外展開支援の強化、デジタル・ネットワーク時代への対応の強化でございます。それぞれの取り組みについてはそこに記されたような内容でございます。
 以上でございます。

○野田内閣府特命担当大臣
 ありがとうございました。
 次に、専門調査会の設置等についてです。
 専門調査会は重要な政策課題の専門的事項を調査するためのもので、その設置及び廃止については知的財産戦略本部令の規定により本部決定が必要です。内容を素川事務局長から説明させます。

○素川事務局長
 それでは、資料5と資料6によりましてご説明申し上げます。資料中ほどに1枚ずつの資料がございますので、お取り出しいただきたいと思います。
 まず、資料5につきましては、本年度からの第3期知的財産戦略の基本方針におきましてコンテンツ等の分野の柱がソフトパワー産業の成長戦略の推進とされたことを踏まえまして、コンテンツを初めとするソフトパワーの強化に係る課題につきまして調査・検討を行うために、コンテンツ等ソフトパワーの強化に関する専門調査会を設置しようとするものであります。
 続きまして、資料6をお願いいたします。
 この資料6につきましては、今申し上げました新たな専門調査会の設置に伴いまして、これまで設置されておりましたコンテンツ・日本ブランド専門調査会を廃止するとともに、昨年3月に設置されまして昨年の11月に報告書が取りまとめられましたデジタル・ネット時代における知財制度専門調査会を廃止しようとするものでございます。
 以上でございます。

○野田内閣府特命担当大臣
 ありがとうございました。
 それでは、推進計画の案を取りまとめられました有識者本部員の方々からご発言をお願いいたします。
 今回は、「大学発のイノベーション促進のための知財システム」と「ネット上の違法コンテンツ流通対策を初めとするソフトパワー戦略の推進」を中心にご議論いただければと思います。
 まずはイノベーション促進について野間口本部員からリード発言をいただいた後、各本部員からご議論を、ソフトパワー戦略の推進について里中本部員からリード発言をいただいた後、各本部員からご議論をいただければと存じます。
 それでは、イノベーション促進について野間口本部員からご発言をお願いします。

○野間口本部員
 ありがとうございます。
 大学等発のイノベーション促進のための知財システムとして、資料7−1を使いまして議論の口火を切らせていただきたいと思います。
 2ページ目でございますが、推進計画2009では、先ほど相澤委員からご説明がありましたとおり、イノベーション促進のための知財戦略の強化、グローバルな知財戦略の強化、ソフトパワー産業の成長戦略の推進などの重点項目を具体的にとり行うということになっておりますが、この中で、大学等発のイノベーションを促進するためにも、知財創造サイクルの創造だけでなく、知財立国の取り組みの原点に立ち返りまして、創造、保護、活用という点を視点に入れて実施することが重要であると考えます。
 具体的な点につきまして3ページ目を使って説明させていただきます。
 以上述べました視点で3点申し上げたいと思います。1つ目は、大学等研究者の知財マインドの醸成ということであります。これは、研究者は発明の産業利用への熱意を持つべきであり、産学官連携して偉大な発明を工業化し、商品化していく強い意志を持った実業人との出会いで、お互いに相互理解しながら進めていくことが重要だということでございます。
 この例として我が国が自慢できるのは、100年前の「うまみ」発見でございます。塩・コショウだけの調味料で満足しているのではなくて、「うまみ」というものの本質を追究した東京大学の池田先生がグルタミン酸ソーダを、ちょうど今年で101年になりますけれども、発見されました。そして、何とその時点で製造法の特許を取られました。これは、安心して事業として実用化に取り組めるためでした。当時海草からヨードを抽出して、ヨードチンキの原料を作る事業をやっておりました鈴木三郎助という事業家がそこに注目しまして、今日の味の素株式会社のもとができます。世界に冠たる「うまみ」は今日まで事業として続いているわけです。こういうものにチャレンジするマインドを醸成する、このようなことをしっかりと視野に入れてリードする必要があるのではと思っております。
 それから2番目は、総合プロデュース機能の早急な確立でございます。研究者はいろいろ発明をいたしますが、例えば私が現在所属しています産業技術総合研究所では、まず弁理士に相談しまして、その弁理士のアドバイスを受け、より良い知財にするための取り組みを目指しております。このような取り組みを大学等でもぜひ位置づけていく必要があると思っております。
 それから最後は、国際的なオープン・イノベーションへの対応ということでございます。オープン・イノベーションで国際化しますと、いろいろ国境を越えるがゆえの問題点が生じております。例えば、日本企業が米国で研究所を作り、そこで発明が生まれますと、米国では国益の観点から研究成果の出願をまず米国の特許商標庁に出すことを義務づけております。日本もこのようにオープン・イノベーションを進めていくには、国益を守りながら取り組んでいくことが重要と考えております。 このような視点は今回の推進計画に盛り込まれておりますので、是非具体的に進めて頂きたいと思います。
 以上でございます。

○野田内閣府特命担当大臣
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご発言を踏まえつつ、イノベーション促進に関して相澤本部員からご発言お願いします。

○相澤本部員
 ただいまのご指摘の点は今後の検討課題にさせていただきたいと思います。
 私がここで申し上げたいことは、大学知財システムの全体的な見直しが必要なときではないかということでございます。と申しますのは、経済産業省を中心に今までTLOの事業が進められてまいりました。それから、文部科学省を中心に大学知財本部の整備が進められてまいりました。しかし、それぞれの事業がすべて終了しております。しかも、TLOと大学知財本部等の統廃合が示唆されているんですが、むしろ必要なことは、大学知財の支援体制を全体としてどうするのかというビジョンをきちっと整理するべきではなかろうかというふうに思います。
 それから、各府省で非常にたくさんの知財施策が出されております。しかし、それはかなり細分化されているので、これを全体的に見直す時期ではなかろうか。そのためには、知的財産戦略本部の機能が問われるときでもありますので、そういうふうなところにその機能を発揮するべきではなかろうかと。
 以上、2点でございます。

○野田内閣府特命担当大臣
 ありがとうございました。
 それでは次に、佐藤本部員からご発言をお願いします。

○佐藤本部員
 今、相澤本部員がおっしゃられたとおりだと私も考えております。我が国が本当にこれから国際競争力を持つためには、まさに革新的な基本特許、これをつくっていくということが非常に重要だと思っております。それをつくり出すのが大学等の研究機関なんですが、実はそれがうまくいってないというのが現実だと思います。先ほどのように、大学の知財本部、それからTLOという組織はあるんですが、実は開発している現場がうまく回っていないということが一番大きな問題だと思っております。せっかくいい発明をしながら、実際には特許をするのを忘れたり、まだ出し遅れたりして、結局いい発明が本当に権利にならないというのが我々弁理士の現場からの感覚です。それは外からのアウトソーシング、我々は当然専門家としてサポートしているんですが、やはり内部にその発明が本当に必要なときに必要な形で切り出せるような人材をつくっていくということが非常に重要じゃないかと思っています。これがない限り、外で我々が幾ら追いかけても、気がついたときにはもう既に権利が取れない状態になってしまっているということが起こってしまっています。そういう意味では、先ほど相澤本部員がおっしゃったように、大学を中心とする発明の創造システムをもう一度抜本的に見直すということが今の段階ではぜひ必要だと思っております。
 以上です。

○野田内閣府特命担当大臣
 ありがとうございました。
 それでは次に、松本本部員からのご発言をお願いします。

○松本本部員
 ありがとうございます。
 私も両本部員が言われたように、大学発の知財に対する国の支援のあり方につきましてちょうど曲がり角に来ていると思いますので、引き続きご検討をお願いしたいと思っております。
 お手元に資料を2枚ほど用意させていただきましたが、それに基づいて簡単に意見を申し述べたいと思います。
 まず、イノベーション促進における大学の位置づけにつきましては、ここに赤字で書いてございますように、大学人としては広く意識されているものと思います。
 2枚目へめくっていただきますと、大学の現場における研究活動から生ずる知的成果を我が国の産業発展あるいは国民生活の向上につなげるということは、かなり広く大学の中でも認識されるようになってまいりました。これはいいことだと思っております。そういった経験上、5つ、6つの意見を出させていただきましたが、1番は、例えばコンセプト特許の権利化をどうするかと、非常に基本的な特許をどうするかという問題、あるいは国際競争力強化に向けてスピードアップをどうするか、あるいは論文発表後、出願可能となる申請期間の延長等々ございます。また、共有特許の活用を大学と産業界で進める場合にどうするかという問題も完全にはまだ解決していないと思っております。また、リサーチツール特許、基本特許に対する支援拡大というのも、これも先ほど申し上げましたように、今後引き続きご検討をお願いしたいと思っております。しかしながら、今回取りまとめられました知的財産推進計画2009におきましては、以上の課題を重点的に論ずべき施策として5ページの6にきちっと書き込んでいただいておりまして、大学関係者としては大変ありがたいとお礼を申し上げたいと思っております。
 第2の論点でございますが、その下に書かせていただきましたが、今回の知的財産2009の中において先端医療分野における特許保護、これは金澤先生の方でお話がございました。特にiPS細胞研究や幹細胞の研究成果を一日も早く有効な治療方法として確立し、社会に還元したいというのが研究者の意向でございますので、知的財産の取得支援策に十分な議論をしていただきたいということでございます。
 どうもありがとうございました。

○野田内閣府特命担当大臣
 ありがとうございました。
 次に、山本本部員からのご発言をお願いします。

○山本本部員
 私は資料はございませんが、これは東大と富士通研究所で開発されたマスクなんですが、チタンアパタイトというのを使っておりまして、ウイルスを吸着して分解をします。実は、昨年もう既にH1N1、豚インフルエンザの実験も終わっておりまして、99%以上ウイルスを吸着して分解するというようなものが出ております。あとは、先般、臓器移植法案が可決されましたですけれども、日本で心臓移植が行われているものはすべて拡張型心筋症という病気でございますが、実はこれの遺伝子治療の発明等々も大学からは出ております。
 何を申し上げたいかというと、大学には実は昨今いろいろ話題になるような社会問題を解決するような技術はありますので、ぜひとも大学の産学連携をイノベーションの核にしていただきたいと思っております。そのためには、一番多分早いのは日本版仮出願制度という、アメリカにある制度をもってくることです。大学の研究者は論文を発表するのが使命ですので、論文のまま出願ができる制度です。アメリカではこれは論文のまま75ドルで出願ができるという、非常に簡便なシステムがございまして、もしこれが導入されれば、先ほどありましたような特許を出願をし忘れたとか、そういったものは一気に減って、日本の競争力は高まるというふうに思っております。日米欧のハーモナイゼーションの問題があるのは重々承知の上ではありますが、日本の競争力をつけるためにはそれを考えていただきたいということ。
 それと、もう一点は、今30名で1人90億の研究予算という話がございますが、私どもの現場から見ますと、90億までもらわなくても、2億円ぐらいもらうだけでも随分と研究が進んで社会のために貢献できそうな研究というのもございます。ですので、まずその30名ありきということではなくて、例えばその予算を複数の研究室で使えるとか、というようなこともご検討いただければ、さらに有効な成果が上がってくるのではないかと。
 それと最後は、大学の研究者は非常に優秀なんですが、知財本部やTLOがもう国の支援が終わっておりますので、なかなか支援する人たちが予算が足らなくて困っているという現状がございますので、相澤本部員からご発言がございましたが、その支援体制の見直しは早急に図っていただければというふうに考えております。
 私は以上です。

○野田内閣府特命担当大臣
 ありがとうございました。
 それでは次に、ソフトパワー戦略の推進について里中本部員からリード発言をお願いします。

○里中本部員
 「世界をリードするコンテンツ大国となるには」ということでまとめさせていただきました。
 資料7−2の1ページ目をあけてください。
 日本が世界をリードするコンテンツ大国になるにはということですが、やっぱり創作環境の整備、海外展開の支援、コンテンツの流通促進のほか、とても大事なのは、クリエーターが創造した作品を権利侵害から守る海賊版対策、この強化が必要だと思います。また、海賊版といって守るだけではなく、やっぱり攻めるということで、海外に作品をPRするための拠点が必要であると思っております。
 1枚めくって2ページ目をご覧ください。
 海賊版対策について、今実情ですけれども、携帯電話向けで違法配信のダウンロードが正規配信を上回るという、こういう現状もありますように、アニメでは日本でテレビ放送後約1日で動画投稿サイトに字幕つきで作品が出てしまいます。漫画も日本で発売されて数日のうちにといいますか、今最速で明くる日にスキャンされたものがネットに掲載されてしまいます。これは本からスキャンしますので余りいい画像ではないんですけれども、それに対して出版社などが苦労いたしまして、自分のところで原稿からスキャンしたのを早く読者に届けるために、アメリカでネット配信を無料で始めました。これは、画像が汚い違法配信のものを見られるよりも、美しい作品になじんでいただいて本の販売に結びつけたいということですが、ちょっと今苦労しておりますので、大変だなと思います。問題は、国内でも多くの若者が違法サイトを利用していて、ネットは無料という誤った認識が浸透していますので、こういう違法行為をした場合の罰則とか、そういうのをここで考えるのは行き過ぎかもかもしれませんが、そういうことも強化するのが必要かなと思っております。
 そして、日本が誇る文化資産、新しいメディア芸術を含む漫画、アニメ、ゲームなどは、これはプライドとともに文化資産の問題ですので、対外発信拠点が欲しいということで、今計画されておりますメディア芸術総合センターというのは、漫画とアニメだけではなく、今後世界をリードしていくであろう新しい時代のデジタルアートですね、あとゲーム、日本が世界に誇るメディア芸術全般の拠点になるべきだと思っております。
 国がプライドを持ってメディア芸術のすばらしさを訴えていくのと同時に、海外からの集客の拠点とする、またそこでの販売も認めるし、ネット販売ということも考えられますので、積極的に集金も─ちょっと下品な言い方ですが─求めていけたらうれしいなと思います。海賊版によって実は出版界とかアニメ業界とかはかなり経済的打撃をこうむっているんですね。正規の販売の額以上の違法のものでの経済的な損失をこうむっております。言われてますように、アニメの現場とか漫画の現場で若者たちが少ない収入で苦労していると言いますが、つまりそれだけの見返りが与えられる業界になり得てないということは、この違法コピーに対して損害が非常に大きい原因になっておりますので、そのためにも海賊版対策をしっかりしたいと。
 若者たちに発表の場を提供し、若いクリエーターを育成するということも拠点が必要ということです。
 また、散逸の危機にあって、将来デジタル化が不可能にならないように、今のうちに傷んでいる漫画原画、特に戦後間もなくのものなどを収集・保存し、内容をアーカイブ化していきたい。
 日本の文化資産を世界にPRし、若いクリエーターを育成する拠点として重要だと考えておりますので、各方面のご理解、よろしくお願いいたします。

○野田内閣府特命担当大臣
 どうもありがとうございました。
 それでは次に、三尾本部員からご発言をお願いします。

○三尾本部員
 私は、コンテンツの海外展開の促進について意見を述べたいと思います。
 今回、資料3−1の一番右側の真ん中に書いてありますように、コンテンツの海外展開ファンドというものを創設していただきまして、国からコンテンツの海外展開に対する支援をいただくということで、非常に期待しております。ただ、1点気になりますのが、先々週に終了しましたアヌシーの国際アニメーション映画祭の状況を見ても、どうも欧米ではコンテンツが供給過剰の状態にあると言えるのではないかというふうに言われておりまして、その中で我が国が国際競争に打ち勝つすぐれたコンテンツを世界に出すということは、非常に困難を伴うものであると考えられます。その中で、すぐれたコンテンツというものは何かを見極めることが必要なんですけれども、それがなかなか難しいという状況にありまして、今現況を見てますと、すぐれたコンテンツを見きわめるための人材が不足しているのではないかというふうに思うんですね。特に、海外ですので、現地マーケットを十分理解してその国に適したコンテンツをつくるということが必要です。そのためには、まず海外のマーケットの情報の収集をしなければいけませんので情報収集能力を持った人材がまず必要になってきます。さらには、販路を開拓するためには十分な人脈を持ったプロデューサーも必要です。さらには、広報宣伝をするためにジャーナリストも必要になろうかと思います。これらの人材を適切に海外に配するということが一番必要なのではないかと思います。海外拠点となる在外公館に現地になじんだ人材を一時的ではなく装備するということを考えていただきたいと思います。ファンドはこのような人材投入に対して資金を投入していただければいいなというふうに考える次第です。
 以上です。

○野田内閣府特命担当大臣
 ありがとうございました。
 角川本部員、次お願いいたします。

○角川本部員
 それでは、海賊版対策について一言申し上げます。資料はありません。
 海賊版対策に関しましては外務省とそれから経産省が中心となって各国と交渉を進めている模倣品・海賊版拡散防止条約ACTAがございます。知財本部としてもこれを全面的に支援していきたいということが必要だと思っております。知財本部では2005年に知財高裁を設置し、また映画の盗撮の防止に関する法律を2007年8月に施行させるなど、大きな成果を上げてきております。知的財産に関しましては日本は各国との交渉や調整をリードしていく立場にあると思っております。有体物物品の海賊版のみならず、インターネット上では国境を越えて違法流通が激増しております。ネット対策なくして模倣品・海賊版拡散防止条約ACTAはないと思っております。ネット対策がACTAには不可欠だと思っています。日本の著作権法にネット法制を盛り込むことで、ACTAを推進する外務省、経産省の後方支援をしていきたい。それが必要であると感じております。
 以上であります。

○野田内閣府特命担当大臣
 どうもありがとうございました。
 続いて、二階大臣、塩谷大臣、佐藤大臣から発言を求められておりますので、順番にお願いいたします。
 まず、二階経済産業大臣、お願いします。

○二階経済産業大臣
 特許についてまず申し上げたいと思います。今年はご承知のとおり特許法が公布されて50年の節目の年になります。イノベーションをより促進する特許制度とすべく、目下検討を進めているところであります。特に今回ご検討をいただいた先端医療分野の特許制度については、今年中に審査制度の改正を行いたいと思っております。さらに、知財制度は世界各国で同じような制度になるように見直さないと意味がないと思います。こうした考えから、今月7日、私は中国と知財保護に関する覚書を締結いたしました。今後、知財ワーキング・グループを年内に開催して、中国と議論を深めていきたいと思っております。これに加え、日本が主導して欧州、アジアと、ある国で特許になった審査内容を他国でも利用する特許審査ハイウェイという協力を進めており、この1年で新たに5カ国と協定を締結し、今月中に合計10カ国が対象国となる予定であります。
 コンテンツについても先ほどご論議がありましたが、コンテンツ産業を20兆円産業に育成するため、「コンテンツ海外ファンド」の創設など、施策の具体化を進めているところであります。知財本部においてもコンテンツ産業の育成強化に向け、各府省の連携をしっかりとっていただきたいと思います。なお、本年4月、インターネット上の違法コンテンツ対策強化に向け、コンテンツ業界を横断的にコンテンツ海外流通促進機構を法人化し、体制を強化しました。模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の2010年中の妥結に向けた交渉を加速するとともに、海賊版対策、先ほど各先生方からお話がありましたが、これを経産省として強化をしていきたいと思います。
 最後に、皆様のお手元に「地域団体商標2009」という小冊子をお配りしてございますが、国外でも高く評価いる我が国の地域ブランドこそ、我が国の底力の一つであります。各地域に眠っているすぐれた商品サービスを活用して、地域から我が国を元気にしていくことが重要であります。過疎対策等におきましても、これらの分野での活用に大いに期待ができるところでありますので、ご協力をお願いいたします。

○野田内閣府特命担当大臣
 ありがとうございました。
 次に、塩谷文部科学大臣、お願いします。

○塩谷文部科学大臣
 今般取りまとめられました知財推進計画2009は、知的財産立国を目指す我が国の今後の具体的な道筋を示す重要な意義を持つものでありまして、取りまとめに当たられました有識者本部員を初めとする関係者の方々のご尽力に敬意を表するものでございます。
 これまでも、文部科学省としましては知財推進計画の2008等を踏まえて、1つは、iPS細胞の研究を加速する総合的支援体制の構築、2つ目に、大学等の体制整備や海外特許出願に対する支援、さらに大学発ベンチャーの支援強化等に取り組むとともに、インターネット等を活用した著作物利用の円滑化や違法な著作物の流通抑止等を目的とする著作権法改正を本国会で成立させたところであります。今般の知財推進計画2009の決定を受けまして、関係省庁や関係団体とともに連携しながら、大学の知的財産本部やTLOの機能強化、そして権利制限の一般規定、日本版フェア・ユース規定の導入等に関する文化審議会における検討、文化資財のアーカイブ化の推進や若手クリエーターの育成など創作環境の整備等、知的財産立国の実現に必要な取り組みを進めていく所存でございます。
 特に、メディア芸術の国際的な発信拠点の整備につきましては、文化芸術の振興に関する基本的な方針、これは平成19年2月閣議決定、さらに知的財産推進計画2008など、これまでの検討経緯を踏まえて今般の補正予算に国立メディア芸術総合センター─仮称でありますが─設置にかかわる予算が計上されたところでございます。大変話題になっております。先ほど里中本部員からもご指摘いただきましたように、このセンターでは漫画やアニメのみならず、お配りした参考資料、これは8−2でございますが、2ページ目にあるような、新しい技術を用いたメディアアート等も総合的に扱うこととしております。また、センターの設置については、文化の振興のみならず国際的な基金の確立やコンテンツ産業の育成など、我が国の成長力強化に寄与するものでありまして、今後一層センターの役割・機能について理解増進を進めるとともに、早急に有識者委員会において具体的な事業内容について検討しまして、基本計画を策定の上、企画提案を募るなど、国民から愛される魅力的なセンターの具体化を図ってまいりたいと考えております。
 以上です。

○野田内閣府特命担当大臣
 ありがとうございました。
 次に、佐藤総務大臣、お願いいたします。

○佐藤総務大臣
 知財戦略を強化するためには、映像コンテンツ市場の7割を占める放送コンテンツの市場の拡大、流通促進、権利処理の円滑化が重要でございまして、総務省としても、配付資料の8−3にございますとおり、本年度補正予算も活用し、放送コンテンツ製作力の強化及び海外発信、権利処理システムの実証等についてしっかりと取り組んでいく所存でございます。その際、魅力あるコンテンツを提供し続けるために、クリエーター等権利者へのインセンティブが重要でございまして、そのためには本計画にあるコンテンツ流通促進に係る法的な規制の検討に当たっては、権利者の意見をしっかりと聴取し、権利者の利益を害しないような配慮が必要だと思います。民間においても権利者団体による権利処理窓口の一本化等、コンテンツ流通促進に向けた動きが進んでいるところでございまして、法的検討等、計画の具体化に当たってはこうした動きを十分に踏まえて対応していただくことが必要だというふうに思います。
 よろしくお願いいたします。

○野田内閣府特命担当大臣
 ありがとうございました。
 ほかにご発言ございませんか。
 甘利大臣。

○甘利内閣府特命担当大臣
 3分だけください。さっき山本先生が1つの予算を複数の研究室で使えるようにと。これに限らず、研究開発予算の使い勝手が物すごく悪いと。はしの上げ下げまで使い方が決まっていて、それで結局大きなむだを生んでいると。現場の声を上げて、それを予算当局や会計検査院の監査のあり方に反映すべきだということをずっと言ってきたんですが、その建白書をきょう官房長官に出しておきましたので、これは総合科学技術会議か何かのもとに予算の使い勝手をよくすると。例えばパソコンなんていうのは、どこに入れていいかわからないんですね。汎用型のやつは予算要求ができないとか、むちゃくちゃどうしようもないと。それは役所のアリバイづくりのために使い勝手、はしの上げ下げまで決めてあると。そのために予算が死んでいるというところがいっぱいありますから、これは中小企業で政府の技術開発予算、研究開発予算をもらっているところも含めて、量が限定されているんですから、使い勝手をよくするための改革をしてもらいたいということを今提言しております。
 それから、思うんですけれども、例えば医療でも文化芸術でもそうですけれども、これは企業化っていうことが入ってこないと発展はしないんですね。医療が医は仁術の世界にとどまっていたら医療技術というのは伸びないので、そこに企業化、産業化が入るということが大事なんです。文化もコンテンツ全般、私はコンテンツの基本法から議員立法でつくってきましたけれども、芸術ということで鎮座ましましていればもうどうにもならないんで、それを産業化、企業化ということが入ってこないとだめなんですね。ハリウッドだって映画が芸術であると言っているだけじゃ世界を席巻できないので、ハリウッド全体が映画のまちになっているのでありましてね。ですから、秋葉原がコンテンツのまち、世界のオタクが巡礼するまちというような、そういう文化とそれから企業化ということの融合ということがとても大事だと思いますので、これはぜひ文化庁と経産省が完全に連携して、経済戦略と文化戦略と外交戦略と合わせて取り組んでいってもらいたいと。縦割りをこういうところから打破してもらいたいというふうに思います。

○野田内閣府特命担当大臣
 どうもありがとうございました。
 ほかにございませんか。
 ありがとうございました。
 それでは、知的財産戦略本部として、本計画案を知的財産推進計画として決定すること及び専門調査会の設置等を資料のとおり決定することについてのご異議はございませんでしょうか。 (「異議なし」の声あり)

○野田内閣府特命担当大臣
 ありがとうございました。
 それでは、本計画案を知的財産推進計画2009として決定するとともに、資料のとおり専門調査会の設置と廃止を行います。
 それでは最後に、知的財産戦略本部長の麻生総理大臣よりご発言をいただきたいと思いますが、その前にプレスが入室しますので、お待ちください。 (プレス入室)

○野田内閣府特命担当大臣
 よろしいですか。
 それでは麻生総理、よろしくお願いします。

○麻生内閣総理大臣
 それでは、本日は大変お忙しい中、今後の知的財産というか知財戦略について活発なご議論をいただきまして、誠にありがとうございました。先ほどご指摘のありましたように、iPSの話を初め、いろいろ世界に誇る研究成果があると。先ほど甘利大臣からもお話がありましたし、また二階大臣からも発言があっておりましたように、これが企業による事業化に速やかにつなげていくというのが結構大事なところで、「稼げる知財」─いや、もっと品のいい表現がいいですかね、「もうかる知財」かな。何かそういったものに変えていくことが大事だと思っております。これがやっぱり知財獲得競争という世界の中で行われているものに乗り遅れちゃならん、と思っているわけです。
 また、国立メディア芸術総合センター、これはえらい評判が悪かった話がよく出ていますけれども、これは世界の中において評価が高いと言われております日本のアニメ、ゲーム、CG、映画、写真、いろいろありますけれども、こういったいろいろなコンテンツについて、若いクリエーターにとって元気が出て、世界を楽しませていくことが大事なんであって、一番いいところを全部取られて、本人の実入りが少ない、ということになると、育つものも育たなくなっていくんだと思っております。そのために、やっぱり海外の展開ということで、この種のことがわかって、海外戦略ができる人が、日本にどれだけいるかといったらなかなかいないんですよ。だったら、これは外国人を雇った方が早いのかもしれないし、考え方はいろいろありますよ。だから、要は国策としてこういったものをきちんと考えていこうという話を今、二階大臣と甘利大臣がしておられるんだと思いますので、模倣品やら海賊版対策ということにつきまして、きちんと政府として応援をしていくというのが大事なんだというお話なんだと思って、私どももつくづくそう思っております。
 いずれにいたしましても、本日のご議論をもとにして、この知財戦略をさらに深めていただきたいとお願いします。

○野田内閣府特命担当大臣
 ありがとうございました。 (プレス退室)

○野田内閣府特命担当大臣
 それでは、時間もまいりましたので、本日はこれで終了とさせていただきます。
 次回の会合につきましては、事務局から追ってご連絡をさせていただきます。
 本日の会合の内容につきましては、この後、事務局からブリーフを行うこととしております。
 本日はどうもありがとうございました。