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第4回 コンテンツ専門調査会 議事録


1.日 時:16年 2月 2日(月)10:30〜12:00
2.場 所:霞が関ビル東京會舘 エメラルドルーム
3.出席者:
【委 員】牛尾会長、岡村委員、角川委員、久保委員、久保利委員、熊谷委員、里中委員、重延委員、関根委員、日枝委員、依田委員
【事務局】荒井事務局長、森口事務局次長
4.議 事:
(1) 開会
(2) コンテンツ専門調査会の運営について
(3) 制作・流通に関する課題について
(4) 閉会


○牛尾会長 では、ただいまから「コンテンツ専門調査会」第4回会合を開催させていただきます。お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございました。
 本日はコンテンツ専門調査会の運営についての改正の御報告と、政策・流通に関する課題について討議を2つ予定しておりまして、初めは、やや運用面での問題でありますけれども、コンテンツ専門調査会の運営についての改定ということで、まず問題を提起いたします。
 本専門調査会第1回会合において決定されたコンテンツ専門調査会の運営に基づき、本専門調査会の運営議事規則を、資料1のように改定をしたいという提案であります。
 これにより今後のコンテンツ専門調査会における検討に当たり、委員でない、上の親部会である知的財産戦略本部員の方にも希望に応じてコンテンツ専門調査会のオブザーバー参加ができるようにしてまいりたいということが、前回の知的財産戦略本部会で、そういう方向で方針が出ましたので、我々としても、本部会の本部員がこの会にオブザーバーとして出席されることは、両組織の間のコミュニケーションにも非常に役立つということで特に異論はないということで、本日皆様にお諮りするわけであります。
 では、本件につきまして、御了承を得たいと思いますが、御意見ございますか。

(「異議なし」と声あり)

○牛尾会長 ありがとうございました。では、そのとおりにしまして、本日はどなたもオブザーバーはいらっしゃいませんけれども、次回にはそういうことがあり得ることもあるということで御了解を願いたいと思います。
 なお、本専門調査会の第3回会合において議論しましたコンテンツビジネス振興政策の骨子について、12月の第6回知的財産戦略本部会合において、私が会長として別紙2のとおり報告をしました。その旨を報告申し上げたいと思います。
 大変に出席の各大臣からも関心が強く、2、3の質問があったわけでありますが、十分意思は通じたと考えております。
 続きまして、本論であります政策・流通に関する課題についての討議に入りたいと思います。
 政策・流通に関する課題について討議を行いたいと思いますが、その前に事務局から資料3についての御説明をお願いしたいと思います。

○森口次長 それでは、お手元の資料3をごらんいただきたいと思います。
 本資料につきましては、事前に各委員にお配りしておりますので、ごく簡単に御説明を申し上げ、討議の時間を十分に確保したいと思っております。
 1枚めくっていただきますと、目次になっておりまして「各業界の課題と対応策の概要」2が「各業界の産業構造と課題、対応策」ということで、2のところに業界ごとというふうに5つ、「放送」「出版」「音楽」「映画」「ゲーム」、この5つの業界につきまして、産業構造、課題、対応策についてまとめております。
 1枚めくっていただきまして、3ページ、4ページ、これは5ページ以下の各業界の現状、課題、対応策につきまして、まとめたものでございますので、ここは省略いたしまして、5ページから各業界の現状等につきまして、簡単に御説明申し上げます。
 5ページをごらんいただきますと、まず「放送の現状」でございます。これを見ていただきますとおわかりのとおり、市場規模約3兆7,600 億円ですが、その大部分が民放の地上放送、あるいはNHK、NHKにつきましても、大部分が地上放送になるわけですが、地上放送が大部分であるということがおわかりいただけると思います。右側の視聴世帯数につきましても、地上放送が4,000万世帯ということで、これも大部分が地上放送ということになります。コンテンツの流通量につきましても、左の下ですが、同様でございます。
 また、1日当たりの視聴時間につきましても、地上テレビ放送が平均で3時間37分ということになっております。一番下のところでございますが、「ワンユース」と書いてございますけれども、この放送事業につきまして、1回限りの利用というものが大部分でありまして、番組販売収入は赤字で2.3 %となっておりますが、ごくわずかというのが現状になってございます。
 6ページをごらんいただきますと、「放送産業の構造」ということで、これは真ん中に在京キー5局、NHKというところがございますが、ここが中心となっておりまして、右側の参考2のところをごらんいただきますと、事業収入平均を見ましても、在京キー局が2,500 億円、その他平均しても70億円という形になってございます。また、番組制作会社と民放テレビ局の規模を見ましても、番組制作会社については、3,000 万円未満の会社が74.7%ということで、非常に弱小の会社が多いという状況にあるということがおわかりいただけると思います。また、この在京キー局、NHKが自ら制作、あるいは番組制作会社に委託したものを、右側の方にローカル局、衛星放送事業者、CATV事業者、ビデオメーカー等へ、コンテンツを売っていくという状況でございます。
 7ページでごらんいただきますと、「課題」ということで、前回の骨子のところでも議論がありました「前近代的側面の残存」ということで、制作面では、いわゆる制作会社の制作費見積もりがあいまいである。紙1枚であるという問題点が指摘されております。また、流通におきましては、いわゆる窓口権、放送事業者が番組制作会社に委託をした場合に、窓口権というのを持つ場合の条件等が不明確な事例があるということです。あるいは、口頭契約の慣行が一部残っているということでございます。また、制作面におきましては、番組制作会社内での、いわゆるクリエーターの待遇等についての問題があって、若者のキャリアパスが不明確になっているということです。あるいは、マーケティングということでは、制作面では、いわゆるマルチユースを前提とした番組制作等がほとんど行われておりません。流通におきましては、これもやはりビデオ化などのマルチユースを前提とした権利許諾契約が結ばれていないということが挙げられております。
 8ページをごらんいただきますと、「対応策」ということで、事業者と政府が取り組むべき事項と大きく2つになっております。事業者の取り組むべき事項といたしましては、今の課題のところで問題になっておりますマルチユースの促進ということで、幾つか上げられてございます。特に2次利用の見込まれるものについての幅広い権利許諾を含んだ契約の事前締結の促進が必要ということです。また、既存番組の再契約の促進等も必要ということでございます。また、番組制作会社においても、いわゆる受託制作以外においても、独自の番組制作といったものが期待されております。特に欧米におきましては、ここにございますように、放送事業者、番組制作会社から制作費の5〜8割で放送権のみを買取るという仕組みもございます。こういうことの導入も検討が必要かと思います。また、制作・流通に係る契約・会計等のビジネスモデルの透明性といったことも望まれる事項でございます。政府といたしましては、一番下にございます「公正な取引環境の確立」ということで、ここに挙げられたような事項がございます。
 9ページをごらんいただきますと、「ローカル放送局の活性化」ということで、これはマスメディア集中排除原則というのがございまして、特にローカル局について、集中化というのが一部規制をされているわけですけれども、これの規制緩和ということによって、ローカル局を活性化していくということです。あるいは、放送番組の流通市場を育成していこうということで、必ずしもキー局からローカル局という流れだけではない、いろいろな流通市場の育成を図っていくことが必要となります。また、権利許諾手続の環境の整備、あるいは法律面におきましては、国際的議論等も一部行われておりますけれども、新たな通信役務利用放送、あるいはインターネット放送といったものの著作権法上等の位置づけにつきまして、検討をしていく必要があるということでございます。
 10ページ、2番目の出版でございます。出版につきまして、ここにございますように、ずっと低減傾向、全体の事業規模としてはマイナス成長になってございます。そういう中で、漫画市場については、一部健闘をしているということで、若干の回復傾向も見られます。これは人気アニメの大部分が漫画が原作であるということも影響していると思われます。一方で、問題点としまして、現状といたしまして、漫画の原稿が流出するというケースもあるということでございます。
 現状といたしまして、2番目に書いてございますが、いわゆる書店を通じた流通ということが、このグラフでごらんいただけますように減ってきておりまして、コンビニその他というところでの流通が増えてきています。また、下の○に書いてございますように、オンライン書店ということで、市場規模はまだわずかでございますけれども、電子出版等々、オンラインの出版が増えてきているという状況にございます。
 12ページが、「出版産業の構造」でございまして、これは御存じのとおり、著者がいて出版社がいまして、それを取次店を通して、書店、コンビニ、その他に流れていく。こういうものと別のルートとして、電子出版、オンデマンド出版といったものが最近増えてきているという状況でございます。その上にございますように、中小の書店につきましては、非常に廃業が多くなっておりまして、大型化ということになっておるということでございます。
 「課題」といたしましては、13ページでございますが、やはり出版界におきましても、制作面では口頭契約慣行の残存ということが残っております。また、不適正契約書の存在ということで、例えば漫画につきましては、コミックの発行時に契約書を交わすということですけれども、漫画家の方々の十分な知識がないということによる、不適正な契約というものが存在をしているという状況でございます。また、マーケティング、ビジネス展開という意味では、先ほど申し上げましたようないろいろな流通ルートが増えておるわけでございますけれども、そういったもの、コンビニエンスストアの拡大、あるいはインターネット、携帯電話の普及といった新たな媒体に対応した展開というのが十分ではない。また、いわゆる非再販品の占める部分が少ないということで、価格設定の多様化が不足しておるという状況にございます。
 それを踏まえまして「出版の課題への対応策」ということで、事業者の取り組みとして望まれる事項につきましては、先ほどの課題への裏返しになりますけれども、口頭契約などの不透明な取引環境の排除。あるいはデジタル化の促進。再販制度を維持しながらも、消費者利益の観点からの、非再販品の発行・流通の拡大といったようなことが対応策として挙げられております。また、事業者と政府が取り組むべきものとして、いわゆる契約者のひな形といったものについての作成がございます。政府といたしましては、例えば漫画原稿の紛失・流出といった面から言いますと、アーカイブ施設といったものへの支援。あるいは不正コピー等に対応した安全な流通機構の整備ということが問題になっております。
 15ページ、3番目の音楽でございます。音楽業界につきましても、このグラフにございますように、だんだんと市場規模が減少しております。2001年で1兆8,000 億円というので減少が見られます。しかし、下のところで囲ってございますように、まだまだ音楽売上げではアメリカに次いで世界2位、シェアもアメリカに次ぐ15%ということでございますが、全体として市場規模は減少傾向にあるという状況がございます。
 16ページをごらんいただきますと、「現状(2)」ということで、そういう中で新たな流通形態として、携帯電話向けということで、1つは着メロでございます。規模として1,000 億円。着うたも、現在は50億円ですが、今後ますます伸びていくであろうということでございます。 また、パソコン向けということで、アメリカのi−Tunes Music Storeというのがございますが、こういったものが日本へ上陸する可能性もある。一方、日本では、非パソコン系でレーベル主導での動きがございます。またファイル交換ということで、こういう問題が浮上をしてきておるという状況がございます。
 17ページが「音楽産業の構造」ということで、これにつきましては、音楽出版社、プロダクションとともに、クリエーターというのがおるわけですけれども、そこからパッケージ流通、ネットワーク流通、その他形態ということで、いろいろな面の流通があるというのが現状でございます。
 18ページをごらんいただきますと、「課題」ということでございますが、先ほど申し上げましたP2P、ピア・ツー・ピアということで、いわゆるファイル交換システム、これについての問題というのが浮上をしてきてございます。また、私的複製への対応ということで、現在私的録音補償金制度というのがございますけれども、これに対応していない機器、いわゆるブランクのディスクというものがございます。また、コピー防止技術というものも取り入れられてきておりまして、その関係での関係者間の調整ということが課題になってございます。また、ビジネス展開の不足という意味では、パッケージソフトにおきましては、新しいビジネスモデルというのがなかなか出ないという意味での硬直化、あるいは音楽配信ビジネスについては、新規・他業種からの参入が少ないという課題が挙げられております。
 「対応策」といたしましては、いずれも課題の裏返しになりますけれども、着メロに続くビジネスモデル、着うた等があるわけでございますけれども、新たなビジネスモデルの創出、いわゆるコピー防止の技術確保等の環境の整備、あるいはスムースな利用許諾の取組、あるいは音楽CDの再販制度のさらなる弾力的運用といったものが事業者として望まれております。政府といたしましては、コピーの取締強化、あるいは先ほどの私的録音補償金制度の見直し、罰則強化、こういったものについての関係者間の協議への対応、あるいは著作権教育の充実といったことが望まれてございます。
 4番目として映画でございますけれども、映画につきましては、昨今非常に話題の映画もあり、明るい兆しが見えているわけでございますけれども、ここ数年の傾向としては、横ばいということで、毎年でこぼこしておりますが、ほぼ横ばいの需要の規模の状況ということになってございます。
 21ページが、「映画産業の構造」でございます。これは制作・配給・興行という流れになってございまして、それぞれ生産部門、流通部門、小売部門ということで、これは歴史のある構造という形になっているところでございます。
 22ページは「課題」でございますけれども、前近代的な側面の残存ということでは、制作面では、いわゆる制作部門への利益のリターンが少ない。その利益の配分が興行・配給・制作といった順に進んでいくことによる制作部門への利益のリターンが少ないという状況がわかります。また、ハリウッドで見られるような最先端技術の活用というものが、まだまだ進んでいない。流通面ではブロックブッキングということで、上映スケジュールの固定化があり、また料金の固定化、あるいは前売システムといったような問題が残されてございます。また、制作面での労働環境の問題ということも指摘されてございます。マーケティング、ビジネス展開の不足という意味におきましては、いわゆる野外撮影での複雑な手続の問題。あるいはビジネスモデルの不透明さといった問題が挙げられてございます。また、デジタル化ということも問題点として、これは浜野委員からもデジタル化の対応の遅れについての意見書がございます。
 23ページ、「対応策」ということでございますけれども、これはまずは制作・配給・興行の各者における公正な取引関係の構築、あるいは労働条件等の整備、最先端映像技術の開発と利用ということが、事業者として望まれております。また、「ビジネスモデルに関する事項(1)」といたしましては、柔軟な競争的な流通・配給の方式ということで、先ほど申し上げたように、ヒットしたものであっても、事前にスケジュールが決まっていて、延長ができない。また、ヒットしていないものでも、そのまま続けるといったような問題が出ております。また、料金の多様化といったことについての対応も望まれるところでございます。
 24ページ、「ビジネスモデルに関する事項(2)」ということで、マーケット手法の積極的活用ということで、正確な興行データが必ずしも把握されていないということにもよるわけですけれども、そういった把握。あるいはPOSシステムの導入といったことが必要でございます。また、前売券等において、事前に元を取るという発想を変えていくということも重要でございます。本件については、最近シネマコンプレックスというのが非常に増えてきておりまして、料金の多様化、あるいは柔軟な流通・配給というものについての新たな動きも出てはきているということでございます。政府といたしましては、環境整備の問題、労働環境整備の問題、あるいは公正な取引関係への対応、あるいはフィルム・コミッションの活動への支援、POSシステムの導入支援、デジタル化支援、税制等等々についての支援があると思います。
 最後「ゲームの現状」でございます。ゲームにつきましては、ここにございますように、今までの4つの産業に比べますと、非常に海外にも展開をしたという意味では、成功をした産業であるということが言えると思いますけれども、一方、最近においては、諸外国からの追い上げがあって、市場規模というのが伸び悩んでおるという状況にございます。その一方で、下のグラフ、右にございますように、オンラインゲーム、携帯ゲームというのは飛躍的に伸びておりますけれども、このグラフを見ていただきますと、スケールが全く違いまして、伸び率としては大きいわけですが、まだまだ市場規模としては、オンラインゲーム、携帯ゲームの方はまだまだ小さいという状況にございます。
 「産業の構造」といたしましては、生産メーカー、卸、小売、ユーザーということで、プラットフォームメーカー、ゲームプロダクション、ゲームパブリッシャーということで三者がございますけれども、それが卸、小売、流通という形で流れております。また、別の流れとして、右側にございますようなネットワークゲームという流れというものもございます。
 27ページをごらんいただきますと、「課題」ということでございますけれども、そういう昨今の市場規模の伸び悩みということから言いますと、ユーザーニーズの多様化、あるいはマーケットの細分化への対応が必ずしもできていない。あるいは、技術開発、応用といったものが不足しておるということでございます。また、新たなビジネス分野での展開ということも、今後の課題となっております。また、中古品の流通ということで、発売間もないゲームソフトが、ゲームソフトは他の自動車とか、そういうものと違って、全く質の劣化がありませんので、中古品が安価で流通した場合に、新規の売上げに影響があるということも指摘をされているところでございます。
 28ページをごらんいただきますと、「対応策」ということで、ゲーム関係者の統計データというのが必ずしも十分ではない。そういう統計データの市場状況等の統計データの充実を図る、あるいは新技術を活用する。新しいモデルの研究・開発。あるいは中古品流通の在り方につきましては、関係者協議が進められておりますけれども、その協議の促進を図るということが事業者としての取り組みかと思います。政府におきましては、一定の研究開発等をやった場合の税制等についての支援といったことの検討が考えられるということでございます。
 以上でございます。

○牛尾会長 ありがとうございました。それでは、各分野、特に順番を付けませんので、討議に入りたいと思います。
 なお、本日御欠席の浜野委員からは、資料4で書面で御意見が出ておりますので、後でお読み願いたいと思います。前回と同じようにネームプレートを立てていただいて、大体3分くらいの発言で、多くの議論をしたいと思います。

○関根委員 コンテンツ流通を促進するという立場から、紹介も兼ねまして、2点ほど報告させてもらいます。
 1つは、NHKがブロードバンド事業者に対しまして、試行的に番組を提供していこうということを決めました。
 2つ目は数年来、懸案となっていましたけれども、制作プロダクションとの委託契約、これがようやく去年の暮れ合意いたしました。この2点について簡潔に述べさせてもらいます。
 まずブロードバンド事業者への番組の提供でありますけれども、国内の複数のブロードバンド事業者が、セット・トップ・ボックスという機械を使いまして、テレビで視聴できるビデオディマンド、この商用化に向けて実験を計画しております。我々のところに是非番組を提供して欲しいという要望がありました。いろいろ検討しました結果、今のところ数業者と言った方がいいかもしれませんけれども、数業者に対して、番組を出していこうということを決めました。我々がここに番組を提供する理由というか、背景としましては、著作権などの権利処理のルールといったものをここで是非検証してみたいということです。
 2つ目は、安全でかつ効率的な認証課金の在り方。こういったものも調べてみたいと思っています。
 3つ目は、コンテンツの保護の在り方。更にこういったブロードバンド事業者等に番組を提供した場合に、ユーザーがどういった内容の番組を求めているのか。そういったものを是非きちんと検証してみたいという考え方がありまして、提供することにいたしました。 実施時期は今年の4月以降になるんじゃないかと思います。今、細部を各事業者と詰めているところであります。これが1つ目の紹介です。
 2つ目は、制作プロダクションとの制作委託契約であります。これは先ほど申し上げたように、数年間にわたって、ATPという、「全日本テレビ番組制作社連盟」というところと話し合いをしてきましたけれども、去年の暮れ、12月にようやく合意をいたしました。
 私どもはこれまでプロダクションとの番組制作に当たりましては、プロダクション側の著作権というのをNHKに譲渡してもらっていたんですけれども、新たに番組については、著作権を共有しようという契約方式に改めることにいたしました。
 その主な内容でありますけれども、1つは、番組については著作権を共有しようということです。そしてその著作権を共有する場合には、NHKが代表して代行することになります。
 2つ目は、一定の条件、これは使用回数とか期間でありますが、これを超えて、プロダクションの制作した番組を使う場合には、追加の使用料をきちんと払う。これまでも勿論払ってきましたけれども、そこを更に明確化したということであります。
 それと番組を2次展開する場合、これも収入の配分というのはこれまでやっていましたけれども、配分する率を上げるということであります。
 4つ目は、プロダクション側も2次展開にあたっては、いろんな提案をすることができるということであります。こういった内容につきまして、これは1月の末でありますけれども、ATP加盟社を含め百数十社に対しまして、説明会を開いて了解してもらったところであります。
 この番組制作プロダクションのほかに、アニメのプロダクションでつくっております日本動画協会、こことも今、いろんな契約の方針について話し合いを進めているところであります。できるだけ早い時点で合意に達したいと考えております。
 放送番組の流通に当たっては、NHKが番組を抱え過ぎているんじゃないかという批判がある一方で、既にCS事業者に対しては、パッケージの番組を出していますけれども、出せば出したで、これは民業圧迫であるとか、NHKの巨大化、肥大化ということで批判されます。しかしNHKとしてはそういった批判があるということをきちんとわきまえながら、とにかく節度を持ってこのコンテンツ流通に積極的に取り組んでいきたいと考えていますので、是非御理解のほどをお願いしたいと思います。

○牛尾会長 これは初めの半分はテストケース的に、実験的におやりになるというふうに理解していいんですね。
 どうぞ日枝委員。

○日枝委員 今のお話の中でも民業圧迫とかいろいろな話がありましたが、同じ放送事業者の中でも、受信料でやっているNHKさんと、広告収入でやっている民間放送とではおのずから性格を異にしているということがあります。ブロードバンドについては両論あるわけで、まだ結論が出ているわけではありません。ただ、受信料というものを基本的な収入にしてきたのが、それが新たな収入源になるとすると、放送だけではなくて、新聞もブロードバンドで配信していこうという中での問題があるわけです。これはまだ結論が出ておりませんので、まだ私がここで軽々に申し上げることではありませんが、資料2のコンテンツビジネス振興政策骨子、それから集中構造改革の推進、それに二十何ページの資料、これらを拝見しますと、私は本当によくまとめられているなという感じがします。
 ただ、放送事業者として、結論に至るまでの過程を是非御理解いただきたいなという点が1つ2つございます。
 今、関根委員からお話のように、制作委託については、契約内容は各社ばらばらになっているわけです。これが統一されていない。では、統一していいのかどうかという議論も勿論あります。
 例えば今の制作委託について、私どもはもう何年も前から放映権だけをプロダクションから買う場合、2年に2回放送ということで私どもは決まっています。しかし、そうじゃないところもある。
 今、関根委員のように、どういう内容か知りませんけれども、交渉しているということで、この辺を統一した方がいいのかどうかという問題があると思いますが、これは契約の中身の問題になってくるんだろうと思います。
 この中で、放送の課題、あるいは問題点の中で、どうも放送は相当いいかげんだという感じが全文にあるんです。前近代的な構造とか、残存とか、私は、放送に従事して、そんないいかげんじゃないと思っているわけです。制作費見積りは紙1枚、口頭契約の残存、前近代的な側面と表現されていますが、実はこれはものづくりはそういう部分があるわけです。勿論、原点としてです。すべてがこれでいいと言っているわけではございません。これは放送が最初に出てきますので、放送の数字の後、7ページの放送の課題からずっとありますが、これが前提になって物事がありますと、本当に番組振興になるかどうか、ソフト振興になるかどうかということもございます。つまり、角を矯めて牛を殺すようになってしまうと問題ではないかというふうに思います。
 というのは、重要な事項については、書面でちゃんと契約をする。しかし、その後については、その状況、状況によって、柔軟に対応していくことを、業界で制作者も流通、我々媒体も決めていくという原則が必要ではないかと。
 と申しますのは、もしすべてきっちり決めるということになると、目標視聴率は何%取りなさい、取れないとお金は払いませんよと、取ったらお金を上げますよとかいうことになる。それから、タレントさんのギャラというのは、時価で決まっていくわけです。企画が決まっているときの料金と、だんだん当たってくるとすごく高くなっていく、これはいい悪いは別にして、これが現状なんです。これを柔軟にしていきながら、いい番組を作っていくことが大事で、それまで全部やってしまうのはいけないと。
 私が申し上げているのは、きちっとした契約は作らなければいけないけれども、細部については口頭部分を残していかないと、ソフト振興にはならないということを御理解いただきたいと。これは非常によくまとまっていると思いますが、そこに行く前提の認識をしていただきたいと思います。
 この中で、徒弟制度がいけないということがありますけれども、これは後ほど映画の部分にも出てくるわけですが、ものづくりというのは、ある程度徒弟制度で学んでいく部分が多いので、大学を出たからすぐいい作品ができるとも限らないし、優秀な大学を出たからすぐにいいものができるとは限らない。やはりある種徒弟制度的な、良いディレクター、良い監督のノウハウを盗みながら良い作品を作っていくということで、一概に徒弟制度がいけないというような前提に立ってしまいますと、本当のソフト振興にはならないのではないかという気がします。
 放送の課題のところで、番組はワンユースが主流で、複次利用は3%と書いてありますが、現状を申し上げますと、放送については1局で年間約8000時間ぐらい放送しているわけです。かなりの部分が生放送をしているわけです。ですから、生放送というのは複次利用になりにくい部分がある。ゴールデンタイム、プライムタイムのドラマとか、ドキュメンタリーとか、こういうものは2次利用になっていくわけでありまして、私どもで言えば3%ではなくて、各社、これもまたばらばらです。各社それぞれビジネスですから、利益を上げるために複次、2次、3次、4次で利益を上げていく努力をすべきでありまして、これは御指摘でありますけれども、私どもの会社の例で大変恐縮ですけれども、プライムタイム、すなわち午後7〜11時での放送は、番組の25%を複次利用して利益を上げております。
 これは誇るわけではありませんけれども、私どもの今期の中間利益は、実は複次利用が利益を上げたということもあります。御指摘のとおり、我々も業界も努力をしていかなければいけないのではないかと。
 まだ、申し上げたいところがありますけれども、時間だということで、また機会があれば是非申し上げたいと思います。

○牛尾会長 御発言の趣旨、大変によくわかりますので、両面あるということを十分考慮したいと思います。
 重延委員、どうぞ。

○重延委員 私の感想では、今回の知的財産の流れの中の流通では、やはり放送ソフトが遅れていると思うんです。放送ソフトの位置取りというのが、特に国際的観点から考えれば、遅れている。これは放送というのは、テレビ50年を迎えても、どちらかと言えば日本の国内で結構充足できる産業だったと思うんです。放送産業というのは安定した産業として確立されているから、このままでも十分産業としては成り立ち得るわけで、その中で流通というのは極めて比率の低い部分だったわけですね。
 ところが、デジタル時代になって、かつてはビデオがなかったところから、ビデオはでき、DVDはでき、それから衛星放送ができ、それで国際的な市場ができ、それからいろんな事業連動ができ、こういう具合に向かってきたときに、最初に地上波しかなったような時代の契約をそのままというわけにはもういかないということで、それでNHKさんも民放も次第に変わってきているところだろうと思います。
 その中で、やはり流通に向かってインセンティブを持つのはどこかということが大切です。勿論放送局さんもインセンティブをお持ちになると思うんですけれども、日本の放送界というのはある意味では規制が少ない。例えば、アメリカの規制は御存じのとおり、今はありませんけれども、フィンシンルールができるとか、あるいはネットワークのシェアのパーセンテージが決められているとか、イギリスで言えばやはりある部分は外部委託会社がつくるパーセンテージがあるとか、そういう中の規制に比べれば、やや規制が少なく育ってきて、安定しているわけです。その中の自由競争では、やはりものを作る人の競争の場所が少し少なかったかなというふうに思っております。
 そういう中で、放送局というのは、電波料と制作費、今は余り具体的には分かれてないと思いますけれども、電波料、制作費両方の収入があって、それで事業を展開できるわけですけれども、制作会社は電波料はないわけですから、制作会社は、制作費を中心に動いている。そうすると、流通するところの権利をもう少し拡大していただいてもいいのではないかと思っているわけです。
 ですから、日枝委員の御発言になった前近代的な側面、それはたしかに過去にはあった。でも、この会の目的はそういうことは勿論みんなで減らしていこうと思っていますので、流通という点に関しては、これからは新しい考え方を導入していく、そういう方向に向かうようなことをしてもらいたいと思っております。
 時間が余りありませんけれども、1つだけ私の方のお願いは、やはり第1次放送権契約という最初の契約書の中に、第1次放送権2年2回終了後、必ずしも2年2回ではないと思いますけれども、2年2回というものが終わったら、その後の利用権に関しては別途協議事項にして欲しい。第1次放送権の契約の中に、その後も管理権は放送局が持つという具合に書かれているのは、どうも私としては理解できない。そこを切り離すということが第1点で、そうすると少し自由な協議ができる。勿論その後放送局がやってもいいわけですけれども、協議事項でいくというところぐらいのところまでは優遇していただけると、この「前近代性」と書かれていることを越えて、もっと未来に向かって、流通に向かって、いろんな動きができると思います。
 それで、NHKさんの今度の新しいブロードバンド向きの出方とか、予約購入制というは、ある意味では刺激的であると思います。ただ、おっしゃったとおりまだ検証の時代だと思うんですけれども、そういう出発点に向かったということは、非常に興味が持てると思っております。むしろ前近代的関係こそは、場合によってはこの解決に時間がかかるかもしれませんが、それをやっているとあと10年かかるかもわかりませんから、それよりも流通に向けて、今年、来年というところで変えられるところは変えていくというような方向で、放送局とともに考えていきたいというのが、私の考えでございます。

○牛尾会長 どうもありがとうございました。続きまして、依田委員、どうぞ。


○依田委員 コンテンツビジネス振興政策(骨子)、非常によくまとまっていると思うんですが、その2ページのところでコメントしたいんですが、「社会的認知度を向上」、これはわかるんですが、どこに入れればいいかよくわからないんですけれども、やはり著作権教育、いわゆる日本のコンテンツの中核を成す、そういう教育というものを是非どこかに、これは国が進める方策として入れていただきたいと思います。
 もう一つ消費者利益と産業政策、国策とのバランスをどう取るかということ、これがやはり国レベルでないとなかなかいろんな対策ができないと思うんです。どうしても公正取引委員会等の消費者利益ということから、ともすれば国策としてのコンテンツ産業をどうするかというときに、なかなかそれが整合性が取れないという問題が現状として一つあると思います。
 コンテンツ事業振興法もできることから、この辺の中身をもう一度見直してみたいと思っております。
 それから、コンテンツ制作・流通の課題についての資料の15ページでございます。この「音楽CDの2001年度の市場規模5,031 億円」でございますが、昨年末の日本レコード協会の統計によれば、音楽CDと音楽DVDを足しますと、2003年で4,560 億円という数字が発表されておりますので、念のため申し上げておきます。
 16ページでございますが、「携帯電話向けの着うた」でございますけれども、2003年の年末の状況を見ますと、累計で大体6,000 万ダウンロードまで上がってきているかなということで、あと今年はNTTドコモのFOMA、あるいはボーダフォンの参入も既にありますので、1億ダウンロード、100 億円レベルに来年度中に行くのではないかと思っております。
 この下の方でございますが、「ネットワークを通じた音楽配信についての国内事業者の成否流動的」とありますが、私はこれはもう避けては通れない流れであると思っていますが、2つほどあります。
 1つは、アメリカのi−Tunes Music Store等で、8か月で2,500 万ダウンロードですから、8か月で25億円の収入で満足できる数字だとは思いません。日本は、やはりやる以上はきちんとしないといけないと思いますが、1つだけ1曲ダウンロードしますと、10枚ぐらいがCD−Rに焼き付けされているという状況の中では、日本の権利者としてはそう簡単に乗れないわけです。2,500 万ダウンロードの10倍の2億5,000 万ダウンロードされているということは、もうほぼ間違いのない事実ということで、その辺のところを今、実際やっておりまして、今年中にはこの問題が解決するだろうということで、我々日本の業界もこのダウンロードには前向きに対応できると思いますが、ただ1つの日本の既存の流通が大幅な縮小をする可能性がありますので、その辺のところをどう進めるかということが、レコード業界として非常に難しい立場であると思います。
 18ページでございますが、これは「P2P、ピア・ツー・ピア」ですが、アメリカでは約千件近い民事訴訟を起こしております。これは違法ファイル交換に対してですね。日本は昨年は約1,200 の大学には注意を促すアクションを取りまして、レターを出しました。そして、また42校には警告文を出したと。今年はもっと強化して、本当に大学生等の違法ファイル交換についての啓蒙を図りたいと思っておりますが、「私的複製への対応」という真ん中のとろでございますが、何かこの部分を見ますと、「制度と実態が乖離」というふうに言われていますが、もともとこの私的録音補償金というのは、十数年前のいわゆる通常のフェアユースの状況の中での私的録音補償金をいただいていましたが、今はデータ用CD−Rへのコピーが2億1,300 万枚、これは2002年の実態で、昨年はもっと増加しているやに聞いております。この2億1,300 万枚のデータ用CD−Rに焼き付けられた、この私的録音補償金はいただいておりません。
 そういうことで、制度と実態が乖離と言いますか、いわゆる現状の消費者のCD−Rへの焼き付けという、新しい事態に法的にまだ追い着いていないということで、現在文化庁等の協力もあって、交渉中であります。
 長くなりますが、最後に1つ、一番最後のところでございますが、「政府取り組むべき事項」で申し上げたいんですが、最近顕著に私が感じますのはEUです。EUの文化担当公使が、日本の音楽業界にEUと日本でジョイントでコンサートをやりたいと。音楽文化の交流を図りたいということを、EUの公使が自らお出になってアプローチされる。あるいはまた、フランスではフランス音楽輸出振興事務局というのが東京にできまして、我々には考えられない、あのナショナリスティックなフランスの音楽を日本に売り込もうということで、東京に事務局ができたりしております。
 あるいは、また1月19日の月曜日には、韓国のソウルにおきまして、アジア文化産業交流財団が韓国にできまして、リー文化観光大臣が主催した設立大会が開催されました。これは基本的には文化観光大臣が後押ししています。その背後には盧武鉉大統領がおられて、映画、音楽、ゲーム、アニメーションの制作者、あるいはメーカーを呼んで意見を聞いているということで、もうとにかく大統領府が立ち上がって動いているというような状況の中で、私どもは今までどうしても民だけでやってまいりましたけれども、ここまできますと官というか、国を挙げてのサポートが非常に大事だと感じております。
 以上であります。

○牛尾会長 だけど、この違法複製というのは、どの辺までの範囲を現実問題として確認するわけですか。

○依田委員 データ用CD−Rの問題ですか、日本記録メディア工業会によりますと、年間の生CD−R、録音できるものの素材が約4億1900万枚ぐらい生産されているということなんですが、その約半分がビジネス用等に使われていると。そして、その約51%ぐらい、すなわち2億1,300万枚は、音楽録音を目的として、いわゆる通常のPCショップ、あるいは量販店において売られているという数字が出てきております。これが一応確認された数字であります。それについてはいっさい私的録音補償金は我々は受け取っておりませんので、私的録音補償金制度があっても全くらち外ということで、その交渉を今しておるんですが、この辺はやはりハード業界の皆様と私どもの対話がもっと開かれなければならないということで、経済産業省の方もお願いしまして、今後もう少し対話を早く、前向きに進めたいと思っておりますが、御協力を賜りたいと思います。

○牛尾会長 技術的に解決法がありそうな気がしますね。初めから入れるときに。複写機なんか、書類のコピーなんかはできないような仕組みは最近できていますから、技術的な問題もあると思います。

○依田委員 CDの場合は無防備でございますので、とにかくパソコンでも何でも載せたら焼かれてしまうということで、いろいろな対策をしていますが、またその辺、ハードの協力が是非必要です。

○牛尾会長 久保利委員、どうぞ。

○久保利委員 久保利でございますが、今日はNHKという非常に大きなタンカーがかじを切り始めたのかなと思うような発言を関根委員からいただき、そういう点で意味があると思っているところでありまして、かつまた前回は日枝委員がお見えにならなかったので、日枝委員の発言に対するコメントは差し控えておきましたけれども、今、歯切れのいい御説明がありましたので、それではというのでマイクを取らせていただいたわけであります。
 つい先日の中村修二さんの日亜化学の判決ではありませんけれども、どうも日本の企業というのは、個別契約というのを避ける傾向がありまして、エンタメロイヤーが10人しかいないじゃないかという批判を受けましたが、探しましたところやはり200人や300人は軽くいるということでありまして、今、このエンタメロイヤーズクラブというのを作くろうということで動き始めておりますから、いずれ十分充足できるようなロイヤーが出てくると思います。基本的にNHKさんもおっしゃいましたけれども、ひな形というものですね。これは日枝委員はむしろそういうふうにすべて一定の形におさめていくことがいいのかどうかという疑問を投げかけられましたけれども日本ではひな型ができますと、もうあたかも金科玉条、不磨の大典のようになって、何でもひな形がこうだからと言えば全部終わってしまうと。
 例えば、銀取という銀行の取引約款ひな型が以前ありまして、これがありますとこれですべておしまいというふうになってしまって、ある意味で言うと経済の活性化には非常に規制要因として働くんではないか。その意味では、あれば便利なものではあるんですが、あくまでも一つのモデルぐらいに位置づけをして、もっと個別のことをきっちりと、ケース・バイ・ケースというものを重く見ていかないと、こういうソフト産業では動きが取れなくなってしまうんではないかという感想を持ちまして、その点では日枝委員に賛成であります。しかし、だからと言って口頭主義を最後まで残せという話になりますと、これまた言った言わないという話になると、証明手段の問題でありますので、契約書かどうかという問題ではなくて、せめて文章で合意書、議事録、あるいはメモでもいいですから、何らかの書面でやり取りをしたもの以外は駄目ですよというふうな形で、随時変更していくのがいいと思うんです。そういう形の、後で裁判所の検証に耐えられるような書類を残していくということが必要なのではないかと。
 そういうふうに考えてまいりますと、放送界の現況はやはり前近代的としか今はまだ言えないのではないかと。
 もう一つは、契約ができた後の話は、それで仮にいいとしても、実は私のところに今、相談が来ております。非常に著明なアニメ作家でありますが、この人がある放送局に言われて、こういう番組を作りたいということで準備に入った。こういう形で、こんなふうな企画で、こんなようなものでどうかと、言わば双方知恵を出し合って6か月かかった。その制作のために相当コストもかけた。そうしましたら、あるときその放送局が、あれはやめになったと言っておしまいと。それまでに渡したコンテとかいろんなものは全部持って行かれてしまったきりで、制作費用を払ってくれと言ったら、いやこれは局の中で通らないでボツになったものだから、金は出ないという話になりそうだというものです。要するに、契約にこぎ着けるまでいかに大変なことをやってるかと。その危険負担はすべて制作側であるということでは、やはり困るのではないかと。そういうことですと、むしろ着手段階からある程度の契約を作っていく流れにしないと、でき上がりました、さあこれの配分をどうしまようという契約だけでは不十分なような気がするんです。
 そういうふうに考えてまいりますと、まだまだ放送ないしはそれに絡むさまざまな制作委託契約については、相当改善の可能性があって、これは私どっちの弁護士ということで言っているわけでも何でもないんですけれども、やはりユーザーのため、あるいは国益のためを考えると、ここをしっかり双方協議して作っていくと、その体制づくりというのがやはり必要なんではないか。その意味では、モデルと言いますか、そういう標準タイプも1つの役割はあります。ないよりあった方がいいと思いますが、その拘束力を余り強く考え過ぎ、今度はこれになったからもうNHKさんはこのひな形でしか契約しないよと言われると、何のためのひな形だったかわからなくなるのではないかということを一言申し上げたいと思います。
 以上です。

○牛尾会長 ありがとうございました。久保委員、どうぞ。

○久保委員 今日は民放連代表として、日枝委員が御出席いただいておりますが、かなり文句を言われるだろうと容易に想像できる場に、こうして御出席いただいていることには、非常に感謝しますとまず申し上げたいと思います。
 実は、フジテレビさんは、契約書の面で言うと、多分民放連の中でも最も現実にそくし得る局ではないかと思っています。その意味では、そのテレビ局の代表者に文句を言うのは一番難しいんですが、民放連全体を見て本当に前近代的ではないのかということに関しては、少々懐疑的にならざるを得ないと思っています。
 私の専門はアニメーションなんで、アニメについてちょっとお話しをさせていただきたいと思います。日本製のコンテンツで最もビジネスが世界へ拡大しているのがアニメーションです。そのアニメを輸出する際の問題点も、前月JETROさんが「日本のアニメを中心とするコンテンツ産業のための米国進出の手引きなる」、ほとんど70ページ以上のバイブルを作っていただきまして、問題が明白化されつつあると思います。
 この手引きの中では、中間法人日本動画協会の会員各社85%が、何らかの形で海外展開しているものの、その約半数に当たる46%の企業が契約管理の問題に悩んでいるとあります。
 日本は、著作権登録制度というのが、十全に機能しておりませんので、海外ビジネスを振興させるためには、日本人に馴染みのない書類が必要となってきます。つまりビジネスを拡大化するためには、権利を明確化する作業並びにその書類が必要になるということです。海外にコンテンツを輸出する際に必要なE&O保険、それからチェーン・オブ・タイトルと称される書類で、権利が連鎖し明確化されていることを証明しないとアニメは海外に出て行けないんです。
 この部分に関して、アニメーションの業界では流通に当たるテレビ局との契約問題で問題が発生しています。これについてもうちょっと具体的に御報告したいと思います。なるべく個人の放送局名が出ないように努力しながらお話したいと思いますが、出たらごめんなさい。
 テレビ向けのアニメ番組は、現在地上波で周当たり58の新エピソードが放送されていまして、しかしながらこの地上波の約半数の番組は、契約書によって著作権が明確化されていません。よってこれらの番組は権利的に混沌としているという状況だと思います。
 この約半数という数字ですが、これはくしくもJETROの報告と一致していると思っています。もう少し分かり易くお話ししますと、地上波で放送されているアニメ番組の過半数は、4〜10チャンネル以外の放送局で放送されています。彼らは契約者のひな形を2つ持っています。
 1つは、著作権の所有が明記されている新しいもの、もう一つは、明記されていない新しい契約書ができる以前のもの、この2つでございます。この4〜10チャンネル以外の放送局ですが、私たちのように口うるさいプロダクションに対しては、この著作権が明記されている新しい契約書で締結しますが、それ以外のプロダクションとは前近代的な古い契約書を依然として使用し続けています。
 先日、プロダクションサイドから、新しい契約書で提携したいという申出を出しましたら、この局からは、総務省と民放連の研究会の結果が出てから考えたいという返答をしてきております。
 動画協会に確認をいたしましたら、確かにそのような研究会があり、契約書について論議する予定とのことです。
 民放連さんの管轄省は総務省ですが、ここがプロダクションの代表を呼び出して、ある種、契約書について論議するというのは、いささか土俵が違うような気がします。
 本来ならば、このように総務省や経産省、公正取引委員会、中小企業監督庁などが関わった土俵の中で、放送局とプロダクションが契約を論議すべきだと考えます。 また、経産省からは、既にアニメプロダクションにとって希望的な契約書のひな形が発表されております。
 再度、総務省で似たような契約書のひな型を作るということは、税金の無駄遣い以外に他ならないとも考えております。
 民放連は、この4〜10以外の放送局のアニメビジネスが4〜10チャンネルの放送局のビジネスモデルと著しく異なるという事実をしっかりと把握していただきたいというふうに思っております。
 契約については、現在、民放連のように護送船団方式的な発想が存在しているわけですが、久保利委員がおっしゃったように、各局が現実に即したケース・バイ・ケース的な柔軟さを持って自主性のある判断をしていただきたいと思っています。
 いずれにしても、アニメ製作会社約440社は中小企業でございまして、反対に、キー局は、プロ野球の球団のオーナーをするという非常に裕福なところばかりでございます。やはり、これはバランスが少々悪くございませんでしょうかということを申し上げたいと存じます。
 それと、NHKさんが、契約書面での大きな変革を勇断されたということに関しては、本当に感謝しておりまして、ある種NHKさんが民放連よりも先んじているような気もいたしております。
 今後はNHKさんには、番組を決定する際の透明度をより上げていただきたいという御依頼をして終わりにしたいと思います。
 ありがとうございました。

○牛尾会長 ありがとうございました。続きまして、里中委員どうぞ。

○里中委員 放送局と制作会社との関係と契約書のことを聞いておりますと、やはり私が属している漫画の世界と似ているかなということも感じました。
 確かに、出版の現状といろいろ書いてありますけれども、前近代的な口約束の部分がすてきな部分でもあるんですね。
 ここで、出版関係の方もいらっしゃいますが、ここに来ておられるような関係の立派な出版社以外ではどうしているかといいますと、本当に口約束すらないような世界もまだあります。
 先ほど、放送局と制作プロダクションとの契約で意見が出ましたけれども、何回か使った後は、制作会社の自由といいますか、著作権、それはとてもすばらしいことだと思いますが、実は漫画の現状では、契約上は様々なものが存在しております。出版社によっても違いますし、同じ出版社の中で編集部によっても違います。同じ編集部でも、漫画家と編集部の力関係によっても違います。こうしてくれ、ああしてくれ、こういう契約書じゃないと契約を交わさないと言うと、言うとおりにしてくれるところもあれば、特に若い方とか、力のない方は、おまえは契約書を取り交わす気かと怒られるのが怖くて、何も言い出せないまま、10年、20年経つということもあります。
 とにかく前近代的な部分と、力のある者には大切にしてくれるというのが同居しております。こういうことでは公平な世界ではないと思いますので、また業界全体の活性化のためにも、契約書のひな形というのは、是非私どもは欲しいんです。
 なぜかといいますと、本当に次元の低い話で申し訳ありませんが、私どもはクリエーターとして、創作することに専念したいわけです。契約で煩わされたくないわけです。
 ところが、契約書に書いてある、小さな文字で自動延長とか、二次利用もすべてやるという、そういう契約書に縛られますと、その契約書が生かされて二次利用されるんならいいんですけれども、実際には過去にすばらしい作品をお出しになった方が、10年、20年後に二次利用、特にデジタル化ということで求める業者がありながら、自動延長に縛られて、元の出版社が、それを出す気があればいいんですが、出す気もないのに縛らないで欲しいと。それでお互いもっと気持ちよく付き合いたいということで、シンプルで分かり易いひな形が欲しいと思います。
 ただし、すべての面に、この契約書に書いてある以外の事態は双方協議すると、それさえあれば、すべて問題は解決し、気持ちよく過ごしていけるのではないかなと思っております。
 まだ漫画の世界は、いろいろと派手なように思われますが、実は、一人ひとりがこつこつ書いてきた世界です。
 私が心配しておりますのは、今、各出版社でも大手は漫画原稿、作品をデジタル化しております。それはいいんですけれども、過去にさかのぼりまして、日本の漫画にとってルネッサンスとも言うべき、過去50年から20年前ぐらいまでの間の作品は、原稿がどうなっているかといいますと、大抵の場合作者のもとに戻されますが、全然戻って来ない場合もあります。
 これも契約書で、原稿は第一次使用権のための用が済んだら、速やかに返すという、大きな出版社はちゃんとそれを守ってくれていますし、万が一破損、紛失の場合はそれなりに限りなく原稿に近い復元原画を用意するという努力をしてくれております。
 そういうことも含めまして、シンプルで分かり易い契約書、ひな形が是非欲しいわけです。それに縛られるということではなくて、それ以外のことは協議するとすべて片づくとは思います。
 また、今、申し上げました過去の散逸しつつある原稿、既に紛失されてしまった原稿、お亡くなりになった方の名作、そういうものをすべて何とか公的機関でデジタル化して、アーカイブとしてとっておきたい。
 漫画というのは、まだ御理解していただいていない分野の方もいらっしゃるかもしれませんが、日本人が獲得した新しいドラマの形式として、すばらしい、本当にルネッサンスに匹敵する時代があったと思うんですね。今後、100 年、200 年後に、その時代の資料が我が国にないというのは大変恥かしいことです。映画の過去の名作が、海外のフィルムセンターに行かなければないとか、それと同じようなことになってしまいますので、今できるうちに、今ならまだ酸性紙で印刷した合本からでもデジタル化できますし、何とか公的機関でやっていただきたい。
 実は、過去に大手出版社にお願いしているんですが、それをやっても、今すぐ経済効果がないということで、なかなか腰が重いわけですね。誰がやるんだと、人手はどうするのだ、費用はどうするのだと言われまして、文化のためなのに大変情けなく思っております。
 コンテンツを大事にするということは、私たちの文化そのものを大事にすることで、どうか漫画においては、立ち遅れているアーカイブ化ということを、何とか具体的な安全策としてアイデアでも出てくればうれしいなと思っております。
 どうも時間を延長して済みませんでした。


○牛尾会長 大変貴重な問題提起だと思います。
 では、熊谷委員どうぞ。

○熊谷委員 ゲームの方からも、一言お願いしたいと思います。
 先ほどから話題に挙がっております、契約の部分に関しましては、ゲーム業界というのは、比較的新しい産業ということもございまして、現状は制作者間であるとか、または制作者とパブリッシャーの間で不当だというふうな前近代的な制作環境というのは、さほど問題化していないんですけれども、一方で、幾つかの流通等の問題で、我々が抱えている大きなテーマがございます。再三話題の中では挙がってきている中古品の問題というのがございまして、こちらについてちょっと御説明させていただきたいと思います。
 中古品と申しますと、要はパッケージ販売されたゲームが中古品として市場に流通し、新製品の売上に影響を与えているということなんですけれども、現在は、国内の中古ゲーム市場というものは、売上額にいたしまして、新作と中古の比率がほぼ2対1、数量に換算いたしますと、1対1というようなことで、非常に大きな市場となっており、我々コンテンツ制作者のゲーム開発費の回収を非常に困難にしているというような状況があるかと思います。
 ゲームは、漫画などとも一緒だと思うんですけれども、自動車などの消費財と異なりまして、やはり著作物自体が劣化していくということがございませんので、基本的には、またデジタルデータということで、中古品も新品も同じ内容なんですね。従いまして、自動車が、例えば中古車がたくさん売れたからといって新車が売れないといったようなことはないと思いますが、ゲームはそうとは言えない、ということがございます。
 また、ゲームは、AVの家電と異なった商品寿命の短い家庭用ハードがプラットフォームとして必要になっておりまして、こちらの移り変わりに影響されますと、ユーザーの方が半永久的にゲームを手元に持ち続けるというような、そういった動機づけが難しいということもあったりと、さまざまな理由で中古品が流通してしまう。
 これらは、確かに事業者間で解決していくべき問題かとも思うんですが、一方で、先の裁判の方でも最高裁で、中古問題の結論が出ているということで、公からはなかなか御理解いただけないところもあろうかと思います。
 ただ、少なくともコンテンツ制作者が、その開発費の回収をできるようにするという側面においては、前向きに御検討いただきたいと思いますので、そういったことで問題提起とさせていただきたいと思います。

○牛尾会長 では、岡村委員どうぞ。

○岡村委員 いわゆるハード屋としては、一人参加しておりますので、毎回申し上げているつもりなんですけれども、全体の枠組みの中に収めていただきたいことが1つありまして、先ほど依田委員からお話がありましたように、ハードウェア側といいますか、いわゆる機器側とコンテンツ側とのコミュニケーションが基本的に欠落しているんではないかという気がしていまして、これはハード屋といいましても、いわゆるセキュリティーの問題も含めた意味での話し合いが不足していると。
 私は何回か申し上げたと思うんですけれども、やはりそういうものを話し合う場を国としてひとつ作っていただけないかと。各省庁との問題もありますけれども、例えば、私もデジタルコンテンツ協会の会長の職にありまして、この職にある間は、これを言い続けていきたいと思っておりますけれども、間もなく終わりますので、今日は最後のお願いなんですけれども。
 そういう意味で、そういう協会を通して、そこでいろんなコンテンツ側と、それから機器側とのディスカッションを是非進めていただきたいと。
 依田委員のお話にありましたように、角川委員も進めておられますし、いわゆる音楽配信も、それからDVDの配信も、これはやはりネットワーク化、デジタル化というのは、絶対に避けられない通り道だと思うので、ここで躊躇すること自身が問題だと。
 やはり、躊躇する原因が著作権を含めた権利関係の問題の整理がなかなかつかないということと、やはり一つの旧流通ですね、さっき依田委員が言われた旧流通との戦いというのが、当然その中には入ってくるわけで、その辺、ある程度のものを犠牲にしつつ新しい方向へ日本が早く進まなければいけないとすると、是非そこのところの問題を解決して、早くネットワークを使った配信の技術というのを日本流スタンダードの確立をすることが、世界に対する一つの発信になるんではないかと、そういうふうな気がしておりますので、あえて、今日はもう一回お願いしたいと思います。
 それから、全く余談ですけれども、先ほどプロポーザルに対する対価という問題については、我々も例えばコンピュータのソフトウェアのビジネスをやるときに、非常に大きな問題になりますが、これはやはり一つ確立されたものが作れるとは私は思わない。基本的に、こちら側から売り込むときには、それに対するプロポーザルについての対価というのは、これは当然要求できない。
 しかし、お客さん側からこういうものを作りたいんだけれどもというときには、当然対価は支払われるべきものだと。当然の結果、やはりプロポーザルに対して、最後の制作まで任せるということが、避けようと思えば、当然買う側はお金を出さなければいけないと、そういうふうな商習慣がようやく、ようやくといいますか、ソフトウェア業界ではできておりますので、そんな事例を参考にしながら、これも含めて、例えばある団体でソフトウェア側とハードウェア側が、そういう異業種の交流があってもいいのではないかと、そんな気がしております。

○牛尾会長 角川委員どうぞ。

○角川委員 私は、映画と出版社という2つの分野で仕事をしております。勿論、ゲームについても音楽についても多少著作権のことを知っております。著作権というレベルから見ますと、著作権法をよく読むと、製作者と原著作者という関係で申しますと、製作会社に権利が非常に強いのは映画で、非常に権利が弱いのは出版社なんですね。
 2つの権利を比べてみると、何でこんなに出版社がひどく弱い立場にあるのだろうということを感じまして、著作権法の作成に関わった方と話をしたことがあります。
 そのときに伺ったところによると、出版社の社長さんは、著作権法を作るときに何も言ってこなかったから、出版社の権利は認めなかったんだよと。その点、音楽業界や映画会社の人たちはきちんとしたから、法人著作権というものを配慮したんだという話があるそうです。
 ここで私が申し上げたいのは、著作権法が業界分野ごとに見て温度差があるということなんです。このことについては、この間の中古品のゲームの高裁の判断でも、ゲームソフトは映画ソフトと同じであるという認定をしながら、映画は非常に著作権が強いのに、出版社がかわいそうだから、出版社の権利を守るための法律を作るべきだと裁判所が言っているんです。
 高裁の裁判官がほかの分野まで言及して判例をつくるというのは、私は異例だと思って、ちょっと今でも違和感を持っているんですけれども、そういう現状なんです。
 今日も利害のぶつかる人たちが来ていますから、どうしても著作権問題になってしまって、権利の問題になってしまう。私は、この調査会のいいところだと思うのは、そういう著作権問題を乗り越えて、産業振興というレベルでどうやって協調していくかということじゃないかと思うんです。
 その場合に、どうしてもリアルな流通という点では、著作権者同士がぶつかり合って、だんだん原理主義みたいになってしまって、言い募っていって、最後には顔も見たくないみたいになってくることもあるものですから、先ほどから出ているブロードバンドという新しい分野ですね、ネットワークの中でどうやってコンテンツを流していくかということになると、これは新しい事業になりますから、お互いに権利を調整しながらやっていこうじゃないかという気運が生まれてくると思うんです。
 このことが、やはり現在の著作権法、権利者のお互いの主張し合った妥協の産物の著作権法では解決できない、新しい時代のための産業振興法としてコンテンツ事業振興法の意義があると思うんです。
 本日の問題提起は、多少現状認識の方からの分析から入っていまして、ダイナミックに動いている各業界の動きの中で、国家がどうやってコンテンツ業界を支援していくかという、その視点が欠けているような気がするんです。
 この点では、やはり本当に勉強すれば勉強するほど、例えば映画界においても、フランスの映画庁だとか、それからオーストラリアも映画省、それからカナダなども大変な支援をしているんですね。そういう海外の支援例というものが研究されて、その上で各業界に投げかけていかないと、「コンテンツを飛躍的に拡大する」というテーマからちょっと離れてしまって、先ほど日枝委員がおっしゃったような、牛の角を矯めてしまうような、牛を殺してしまうようなことになっていくんではないかなという危惧を少し感じます。

○牛尾会長 ありがとうございました。あと3分ほどありますので、民放の話が非常に多かったんですけれども、日枝委員どうぞ、2分ずつ。

○日枝委員 決して対抗しているわけではないし、対立をしているわけではないんですが、基本的にコンテンツ振興は大賛成ですし、そのためにはどうしたらいいかという中で、私は業界全体も前近代的だという前提で捉えてしまうと振興にならないということを申し上げたわけで、一部では確かに前近代的なシステムと指摘されても仕方のない部分がないわけではありません。
 さっき久保利委員やまた久保委員がおっしゃるとおりでして、やはり良い方向を目指してどうしていくかというのを考えないと、本質論をやらないと振興にならないという意味で言ったので、私は決して保守主義ではございません。
 我が社も、お褒めをいただきましたけれども、つまり基本契約を結んで、その後の二次利用などについては、別途の項目で覚書でやっております。
 そういうシステムにしないと、角を矯めて牛を殺してしまうということで、例えば一例だけ、ちょっと時間がないので申しますと、放送、つまり番組からコンテンツになったときに権利が出てくるわけですね。
 私どものところでは、放送段階で赤字が出た番組は結構あります。それでも権利者の人たちには、原作者も出演者も音楽家も全部第1回の放送段階でお金を払っています。それが制作費に見合うだけの広告売上げが上がらなかった。しかし、それを二次利用することによって、大変な利益を生んだと。そのときは、また重ねてその人たちにも配分をしています。そういう覚書も作っております。これがやはり近代化の方向だと思いますので、あまり基本契約、基本契約、ひな形がなければおかしいというふうに言ってしまうと、角を矯めて牛を殺してしまうんではないかという問題提起です。

○牛尾会長 関根委員どうぞ。

○関根委員 前の会合ではハイビジョンの国際展開をお願いしましたが、前回12月の会合の後、ヨーロッパでハイビジョンについての注目すべき動きがあったので御紹介したいと思います。これはEUの産業政策を立案している情報総局というところがありますが、先月13日、ハイビジョンの、デジタルテレビの世界普及に対する貢献というテーマで報告書を出しているんです。
 簡潔に申し上げますと、ヨーロッパはデジタルの時代になりまして、多チャンネル、多機能というのを追求してきたんですが、どうもこのまま行くと世界の流れに後れをとるということで、ヨーロッパの各放送局は最近高画質のハイビジョンを追求しようという動きが出てきているということです。
 その理由として、日本とかアメリカ、こういったところでは、高画質のハイビジョン画質のDVDに取組んでいまして、このままヨーロッパの放送界が現状の方針にこだわったりすれば、世界の流れに乗り遅れますよということです。アジアでは日本、韓国、中国、オーストラリアというところでもう既にハイビジョンによる放送が始まっていますし、北米でもアメリカを中心にして、カナダでもやっております。
 一番遅れていたヨーロッパで、ハイビジョンに対する認識が非常に変わってきたということで、ハイビジョンに対する国際的な環境が大きく変化する動きが出ている訳です。
 ハイビジョンについては、以前も申し上げましたが、ハードとソフトを一体で展開できるという強みがあるわけですから、是非政府として考えていただきたいのは、例えば一つは、デジタル時代の産業政策の柱としまして、国際的なの展示会などで政府がパビリオンをつくりまして、これまでのアニメ中心の展示から、日本の文化の紹介も兼ねて今度はハイビジョンの番組を紹介することを検討して欲しいと思います。これはむしろ我々NHKとか大手の民放なんかより中小のプロダクションを対象にブースを開放したらいかがかということなんです。これが1点。2つ目としましては、先ほど依田委員がおっしゃっていましたように、フランス政府がやっているんですけれども、例えばメディアの著名な評論家等を日本に呼んで、このハイビジョンに対する日本の現状、つまりソフトとハードの両面について、見てもらうという方策を取ったらどうかなという気がするんです。とりわけハイビジョンについては『百聞は一見にしかず』で見て貰わなければ理解が進みません。
 我々は今、放送技術研究所というところで既にハイビジョンの次の世代の研究をやっています。走査線が4,000本の超高精細映像システムというのを開発していますが、世界で最先端を行く放送技術といったものを是非見ていただきたいと思います。とにかく国際的な環境は、我々日本にとって有利に展開しつつあるので、政府として何かここでもっとアグレッシブな政策を検討して欲しいという気がします。

○牛尾会長 予定した時間が参りましたので、これをもって終わることにしますが、とりあえずコンテンツ・ビジネスの振興という面から現状の把握においては、若干非近代的、封建的みたいな言葉も出ましたけれども、この公式の場でオープンな審議会で、こういう業界にとってはデリケートな問題を公然と議論をしたのは、きっと初めてだと思うんですね。 これだけでも非常に風が通っているわけでありまして、風通しがよくて日が当たればカビは生えないというわけで、こういうことをきっかけに、皆さんも段々ごく自然に思っていることをしゃべれるようになったというだけでも、共通の場としては進歩の始まりだと思います。
 政府としても、これから経済が活性化する場合に、これまでは経済のサービス化という言い方で、サービス面が伸びるぞということを言っており、それをもっと詰めてまいりますと、コンテンツ・ビジネスや、コンテンツ・インダストリー、あるいはエンターテインメント、クリエーティブというような、非常に幅広いところは、更に付加価値が高いことに気がついてきました。実は、事務局の裏話ですけれども、コンテンツ・ビジネス振興政策でも、大部分の人はコンテンツは意味がわかりにくいんではないかということを、私が提起して、何かもっといい言葉はないのかということを言ってまいりました。
 コンテンツは、CONTENTで、単数でも発音ではコンテンツと複数みたいになってしまうというのも紛らわしいし、みんなわからないで使っている人も非常に多いので、日本語で言えばどうなるんだろうかというと、一番わかりやすいのは娯楽という日本語になるんですね。娯楽というと、何か低俗なイメージがすると、年輩者の人はよくそう言うんですが、やはりエンターテインメントとか、クリエーティブとか、いろんな幅広い概念で、これをできるだけ幅広くしていって振興することが、日本経済の活性化に非常につながっていく。それと岡村委員のおっしゃった、いわゆるハイテクソフトの部分とのコミュニケーションが非常に欠けているわけでありまして、何かここのところだけは人間の頭の中だけではなく、やはりこれを支えるものは技術だと思います。IT技術と、デジタル技術を込めた膨大な、一番日本が世界で競争力のある技術を使わない手はないわけでありまして、それも一堂に会することは滅多にない。そういうことも振興を通じて、今、日枝委員からも話があったんですが、制度を決めること以外にマネージメントで決めるという、そのマネージメントが開明的であれば、制度が更に開明的になるんですが、制度も経営者も非近代的というのは一番絶望的な組み合わせなんですね。どちらかが近代的であれば、それなりに進むんですけれども、悪いケースの組み合わせもあると思います。
 我々としては、制度も非常に近代的であり、マネージメントも近代的でなければ通らないようにしようと思います。
 日本の場合は、特に21世紀に入った10年間ぐらいは、やはり近代的であるためには、グローバルであることが基本条件になるわけです。産業振興もこの分野では、国際的な競争力を持つことが産業振興の入り口になると思うんです。
 そういう意味では、依田委員からも角川委員からも話があった、世界との共有、標準化、競争力というものをもう少し視野に入れて、特に全体をリードしている技術ハイテクの場合にそうであるように、やはり日米がほぼ同じようなスタンダードを持っているということが非常に大事でありまして、勿論、民族性が違いますから、ぎりぎりまでは違うところがありますけれども、ほぼ高いレベルでは、日米のほぼ共通のスタンダードになることが、日本独自の停滞的なよどみを消すことになると思うんです。
 最後に申し上げたいのは、従来我々が気がつかなったけれども、今一番にものすごい勢いで膨らんでいるのはネットワークの世界です。
 これは、私も通信会社の経営で携帯電話に携わっている経験からいって、例えばこれまでは着メロなんて想像もつかなったものが、1年かからないでポンと出てきて、それが業界をリードするにようになってくる時代なので、ネットワークの世界の進歩のスピードと規模は、恐らくこの5年間は、過去20年分ぐらい膨らむと思います。今のレベルのネットワークでは、拡大するダウンロード需要に追いつかず、非常に業者さんたちは困っていらっしゃるんですけれども、こんなものでは済まないと思うんですね。もう来年、再来年は非常に必死でして、何か従来の手法では及ばないものになってしまうから、それを今から技術の開発を連動しながら考えていく必要があります。今でもちょっとふり回されている感じでしょう、だからこれを相当研究しないと、今、関根委員からあったハイビジョンなんかもそうですが、この分野の進歩のスピードは、目まぐるしいものがある。
 だから、何か停滞していても、かじがとれれば、スポンと急に10倍ぐらいになって突出するわけです。こういうものが今、5つぐらいネットの世界にも、映画や音楽の世界にもあるわけで、そういう点では、登場してから狼狽するのではなくて、予見してこういうコンテンツ・グループが準備をしておく必要があるのではないかという気がいたしました。
 次回は、本専門調査会として、変化しているものをとりまとめるのは難しいんでありますけれども、とりあえずとりまとめてコンテンツ・ビジネス振興政策に関する骨子等をベースにして、今日までの議論をまとめて事務局の方で最終案をつくって、個別に皆さんのところに御相談に上がるというふうに考えております。
 何か事務局の方からございますか。

○荒井局長 結構です。

○牛尾会長 次回は、3月15日月曜日、午後10時半から本日と同じこの場所で開催します。一応骨子は、かなり迅速に明確にやりたいと思いますので、事務局の方から個別に時間を取ってちょうだいするときには、率直な御意見をちょうだいしたいし、まとまった全体に対する御意見も、もし必要があれば、1回のみならず2回ぐらいお目にかかっていただいて、納得のいく会話をお願いしたいと思います。
 では、これをもって本日の会合を終了したいと思います。誠にありがとうございました。