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コンテンツ専門調査会

企画ワーキンググループ(第2回)議事録


1.日 時:平成18年10月16日(月)10:00〜11:30
2.場 所:霞が関東京會舘シルバースタールーム
3.出席者:【委員】牛尾会長、荒川委員、角川委員、金丸委員、久保委員、久保利委員、重延委員、原田委員、村上委員、中山本部員
【事務局】荒井事務局長、藤田次長、吉田次長
4.議 事
(1)開会
(2)コンテンツの振興戦略について
(4)閉会


○牛尾座長 では、やや定刻よりも早いですが、全員おそろいでありますので、ただいまからコンテンツ専門調査会企画ワーキンググループの第2回目を開催したいと思います。
 本日は、コンテンツの振興戦略に関する論点と、海外展開戦略の2つに分けて検討したいと思います。
 まず最初に、事務局から、議題1のコンテンツ振興戦略に関する論点について、その資料に基づき説明をお願いいたします。資料1、2、3です。

○荒井事務局長 それでは、資料にそって御説明いたします。
 資料1は事前に御確認いただいておりますが、第1回会合の議論の整理をしたものであります。
 資料2は、第1回の資料を基に一般から意見募集を行い、寄せられた意見を取りまとめたものであります。意見募集は、前回の会議終了後の9月7日から28日までの3週間、ホームページへの掲載によって行いました。その結果、提出されました意見は90件に上リまして、そのうち個人から提出されたものが76件、団体から提出されたものが7件、個人か団体か不明のものが7件であります。
 資料2の2ページからは、いただいた意見の概要を整理しております。意見につきましては、首相官邸のホームページに掲載する予定であります。
 資料3につきまして御説明いたします。資料3は、前回会合における御議論や各委員の御意見、意見募集の結果を踏まえ、論点を取りまとめた資料であります。
 1ページ目は、基本路線に関するものであります。ここでは、日本にはすぐれたコンテンツがありながら、それが十分に活用されていないこと、戦略的メガコンテンツを生み出して世界に発信すべきであること、コンテンツ産業は技術革新や新しいビジネスモデルによって二桁成長も不可能ではないことを記載しております。
 2ページ目は、成長を妨げている要因として指摘されているものであります。@時代の変化に対応できない制度と業界慣行、A将来に目を向け、新しい産業や収益源を見つける視点の欠如、B産業界の海外戦略の欠如について記載しております。
 3ページ目は、コンテンツ大国へのシナリオ(イメージ)であります。ここでは、最高のコンテンツを生み出し、ビジネスとして成功させるためのシナリオとして考えられる2つのポイントを記載しております。ポイント1としては、世界に通用する業界となるため、「特別な業界」ではなく「普通の業界」として世界に飛躍することなどを記載しております。また、ポイント2として、世界のコンテンツのハブとなるため、魅力ある日本に世界中から人材・資金が集まり、日本がアジアと世界の架け橋になることを記載しております。
 なお、本日御欠席の岡村委員から、議題1に関しまして資料5−3を提出いただいておりますので、御参照ください。
 以上です。

○牛尾座長 ありがとうございました。
 資料1、2に示されるように、いろいろな論点がたくさん出てまいっておりますが、資料3はそういうものをまとめまして、やや議論を活発にするために議論を明確化しておりますので、その他の御意見については今日、積極的な議論をお願いしたいと思います。
 それでは、まず、前回欠席された久保利委員、原田委員、中山本部員に、本ワーキンググループにおける検討課題についての御意見をお願いします。
 この会では、いつもお一人の発言を3分ぐらいにしておりますので、よろしく御協力をお願いいたします。
 では、初めに久保利委員からお願いいたします。

○久保利委員 前回は欠席しまして失礼いたしました。
 非常に熱心な御議論がなされたことは十分資料でわかりますけれども、私が思いますのに、今後のこのワーキングが考えなければいけないことというのは、今までの延長線をただ伸ばしていくというわけにはいかないのだろうということです。もう少しリアリティのある議論をしていって、その上で、資料3にありますようなことを具体的にどうやっていくかということが必要なんだろうと考えます。
 そういうふうに考えてみると、このワーキングの進め方として、もう少し具体的に、例えば、日本のコンテンツがすばらしいと言うけれども、誰のコンテンツがどこでどれだけ売り上げているのか。久保さんからは、いつもポケモン等についてはこういうことだというディテールを御発表いただいて大変ありがたいわけですけれども、では一体、宮崎さんの作品というのはどこでどれだけ売れて、どういう成果なのか。あるいは村上隆さんは、オークションで5,000万円だ、1億円だという話は聞きますが、それはトータルでどのようになっているのか具体的な案件でケーススタディをしてみる必要があるのではないか。
 もう一つは、人材育成の関係で言うと、村上さんはどこでどういう教育を受けて、彼はどこであの爆発的な突き抜けるような力を得られたのか、もし、村上に続けということであれば、村上先生から何を学ぶべきなのかという辺りを、場合によったらゲストでお招きするなり、ヒアリングをするなりして、もう少し個のベースに下りて、それから、もう一遍総論といいますか、全体的なものを見直すと。制度の問題とか法律体制の問題というのは、もう十分我々も認識しているところでありまして、これを変えていくのはやぶさかではないわけですが、人材育成ということになって、特に世界に伸びていくという話になると、本当に今伸びていると言われる人たちがどうなのかという現実論、個別論というものを少し研究してみた方がよいのではないかという提案でございます。
 私としては、そういうふうに考えていくと、実は資料中でいろいろ指摘されておりますけれども、国内市場に安住して海外に行かないということについて、逆にどうしたから行けたのか、なぜ村上さんは行けたのか、ポケモンは行けたのか。そして、行けないとすれば、それは行かないから行けていないのか、行こうとしたけれども、こういうバリアがあったということなのか、そのバリアを解消するにはどうしたらいいかというのを、もう少し具体的に検討する時代が来たのではないかと思います。
 それから、優秀な人材が業界に魅力を感じないという話もありますし、エンタメを普通の業界にという話もありました。しかし、私は、やはりコンテンツをつくる人は、かなり異常な人なのではないかと思っておりまして、むしろ日本の場合には異常な人が少な過ぎるので、普通過ぎるから問題なのではないかという気がしておりまして、もっと異常な人を伸ばすためには国は何ができるのかという視点も必要ではないか。要するに、制度構築、法律の面では普通の競争状態がなければいけないんだよというのは正しいと思います。そこで競争する人は、結構異常な人たちをどうやって生み出すかということも人材育成では大事なのかなと考えました。非常にすばらしい議論が進んでいる中で、別に逆行するわけではありませんが、そういう視点も加えられたらいかがであろうかということを冒頭申し上げたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○牛尾座長 大変に興味深い視点だと思います。
 続きまして、原田委員、お願いいたします。

○原田委員 前回は失礼いたしました。
 最近YouTubeの動きがひとしきり話題になっております。そのYouTubeをGoogleが買収するというようなことも伝えられており、コンテンツをめぐる環境の目まぐるしい変化というか、スピードの速さに改めて愕然としているというところもございます。
 YouTubeというのは御存じのとおり、自由に映像を投稿できる最大のサイトということでございますけれども、最近、NHKでもチェックをいたしましたら、NHKのコンテンツだけでも2,600件あまりが違法な形で投稿されているということがわかりました。これは先方に申し出て、それらを削除していただくということを進めて、削除は終わりましたが、多分これからもこういうことは続いていくと思います。ですから、コンテンツ産業の将来を考えていくときに、これまでには考えられない事態が急速に進んでいる中で、違法コンテンツの処理に振り回される、そういうことがないようにしなければならないと考えています。
 そのためには、今申し上げたような足元で起きている大きなメディアの変化に対してしっかりとした現状認識をまず持つことだと思います。それから、さまざまな立場を反映したご意見はございますけれども、その立場を越えて前に進むにはどうすればいいのかということを大同団結する形で議論を進めていかないと、世界に通用するコンテンツ振興を図ることはできないのではないかと考えております。
 もう一点、これは後程コンテンツの海外展開のところでも申し上げたいと思いますが、制度の整備というのは当然大事なことでありますけれども、それに併せて私も人材の育成というのは極めて大切な視点であろうと、そこにかなりの力を注ぐべきであろうと感じております。

○牛尾座長 大変に大事な視点だと思います。特に、Google等々のいわゆる大きな業界のメディア変化が、スケールが大きいのと非常に早いんですね。スピーディなので、そのフォローをしていると次に行ってしまっているというところが非常にあって、これは我々のこういう会合にしても、スピーディに、しかも、先見性を持ってやらないと、とても追いついていけないところがあるということは非常に大事なポイントかと思います。
 では、続きまして、中山本部員、お願いいたします。

○中山本部員 前回はソウルに行っていて失礼いたしました。
 議事概要を拝見いたしますと、非常に幅広く意見が出ておりまして、それが全部実現すればバラ色になるような感じもいたします。現実にはブロードバンド時代を迎えまして、いろいろ問題があるわけでございます。ビジネスとかあるいは業界慣行あるいは国民の意識につきましては、私は素人でございますので、法的観点からどこに問題があるのか、あるいは法が発展を妨げていることはないのかという点について申し上げたいと思います。
 コンテンツ振興のためには言うまでもなく、創作へのインセンティブを与えなければいけないという点と、流通・利用を促進しなければいけない、この2点が大事なわけです。この2つの点を法的に支援するということが大事なわけですけれども、ややもすると、従来はこの2つは相反するようなとらえ方をする向きもあったわけであります。権利者団体は、例えば、権利を強化することがインセンティブの付与につながるんだという主張のもとに、権利の切下げには一切反対であるということを主張しております。例えば、IPマルチキャスト放送につきましても、権利者団体は権利の引下げには反対であるということを言っております。
 しかし他方、強力な権利というものは、時として流通にとって阻害要因になり得るわけであります。流通の側面だけを考えて、他の要因を一切捨象して考えれば、権利なんてない、全部自由利用が一番いいわけであります。それは経済上明らかでありますけれども、しかし、インセンティブを与えなければいけない。強力な権利とインセンティブというこの2つをどう調和させていくかという点が難しい問題であります。
 著作物というものは、一般に流通し、利用されなければ意味がないものが圧倒的に多いわけです。日記のように見てもらうことを予定せずに、自分で書くことだけに意味があるということもありますけれども、ビジネスという観点からすれば、利用されなければ話にならないわけであります。それは例えば、IPマルチキャスト放送を著作権で厳しく縛って、その結果利用できないというのでは意味がないわけです。私は、著作物は利用して流通されるという観点、そして、その利用・流通から生ずる利益の一部をいかにして権利者に還元するかということに尽きるのだろうと思うわけです。
 したがって、この両者をセットで考えなければいけない。権利の切下げがいいかどうかという議論ではなくて、流通・利用を促進し、その中の利益の一部をいかにして還元するかというスタンスが一番大事だろうと思っております。だから、仮に権利の切下げのように見えても、利益が還元すればそれでよいと思っています。
 しかし、そうはいってもなかなか現実には難しいわけで、先ほど言いましたIPマルチキャスト放送を一つとりましても、同時再送信は一応決着を見ましたが、それ以上の問題は、例えば条約との関係であるとか、あるいは権利者団体との関係、あるいは多分著作権のいろいろな条文との関係、平仄・体系の問題等々ありまして、とてもここで細かい点について議論する時間はないので、それは著作権の方の審議会にお任せするとして、ここではあくまでも利用・流通を促進し、その利益の一部を還元するという大原則を確認する、それが大事ではないかと思っております。

○牛尾座長 大変興味深い議論だと思います。いろいろな御意見もおありかと思いますが、後の論議の中で御意見をちょうだいしたいと思います。
 では、前半の議論として、各委員の御発言に移りたいと思いますが、議題1に関しまして、事前に資料を提出していただいております角川委員、久保委員に、まず御発言をお願いしたいと思います。
 角川委員、どうぞお願いいたします。資料は5−1に入っております。

○角川委員 知財本部は2005年、去年からデジタルコンテンツがコンテンツ産業にもたらす影響を評価するとともに、警鐘も鳴らしてきたなと思うわけです。Web2.0の出現によって、デジタルコンテンツの本質がどのように変わるのかそしてその拡大状況を視察するために、10月1日から8日までアメリカに行ってまいりました。そして、先ほどお話に出ておりましたGoogleやYouTubeあるいはアップル等からも話を聞いてまいりました。
 そこで、私がお手元に資料を提出したのですが、これは私の視察旅行の感想を書いております。昨年から、私は、2011年に日本で大変動の時代が来るんじゃないかということをお話ししてまいりましたけれども、その実態とはどういうことかということがアメリカに行って非常に実感を強くしてまいりました。
 米国では、これから大バンドル時代が来るということです。その時代が来ると、固定電話、携帯電話、テレビ、ブロードバンド等を通じて、エンターテインメント・コンテンツが一括して大衆に提供されることが予測されます。この流れは日本にも波及・到来するのではないかと思うわけです。
 そういうことが起こりますと、電話会社、ケーブルテレビ会社、テレビ局、ハリウッドを含む映画会社なども巻き込んで進行していくということであります。したがって、私が前回メガコンテンツをつくっていくために、資本力のある大きな会社も必要になってくるのではないかと申し上げましたけれども、アメリカでは既にそういうことが実現されております。
 こういう中で、梅田望夫さんの『ウェブ進化論』なども読ませてもらいますと、次の時代というのは技術革新によって「知の世界の秩序」が再編されるという言葉を使っております。この言葉を私は知財の大事な命題じゃないかということで提案したいと思います。
 2番目に、その中身ですけれども、コンテンツそのものに革命的変化が起こっている。数千万人の個人レベルの大衆がつくり出す膨大な量のチープコンテンツがネット上に氾濫しております。例えばYouTubeの中にはNHKの非常に貴重なコンテンツとともに、大衆がつくり出す非常にチープなコンテンツもあふれております。その玉石混交のチープなコンテンツをたくみに取り込んだコンテンツ会社というのが、これから世の中に出てくるのではないかと思います。「次世代に勝利する」というのは、ちょっときつい表現ですけれども、次世代にはそういう会社が出てくるのではないかと思います。つまり、インターネットの登場というのは、新しい情報の伝達手段の登場と思っていましたけれども、実はそれにとどまらず、人間の基本的な欲求である自己表現の手段としていくのではないかと。私は勝手に1990年代の自分探しから、これから21世紀は自己表現の時代が来るのではないかと感じたわけです。
 次のページに3番目として、日本のコンテンツ会社によるWebサイトの充実も図っていかなければいけないということを挙げております。リアルな世界では、ネットのAmazonに対抗することの出来る1,000坪単位のビデオ、CD、ゲーム、書籍の複合超大型店が生き残っていくのではないか。しかし、ネットの世界ではまた、何万、何十万単位のコンテンツを供給するGoogle、Amazon、アップル、マイクロソフトといった米国のIT大企業によって、アメリカだけではなくて日本も支配されるというか、大きく網をかぶせられます。例えば、Googleでは、米国内のユーザは実は21%にしかすぎないと言われておりまして、海外のユーザはなんと79%、日本の人たちも随分使っています。また、Google自身も非常にローカライズに熱心でして、既に115の言語で対応できると言っております。
 そういう中で、私は一つ間違えると、今話がされております日本の知財も海外の企業に実は収奪されていくおそれがあるんじゃないかと懸念しております。
 そういうことで、私は日本のコンテンツ会社は自らのWebサイトを充実させること。「のみ」というのは削っていただきたいんですけれども、充実させることで生き残りを図っていくということも大事だと思います。
 これからの10年をどう見るかということで、ちょっと自分で表にしてみたのですけれども、1990年代というのは1990年から1995年ぐらいまではマルチメディアの時代と言われました。後半はIT、デジタルとパソコンの出現によってIT革命と言われて、今から思えば第一次IT革命だったと思っております。2006年、今日GoogleがYouTubeを吸収するといったこの時代は、第二次のIT革命が起こっているのではないかと思うわけです。それはどういうことかと申しますと、第一次IT革命のときにはパソコンの時代、これを梅田さんはよく「パソコンのこちら側とパソコンのあちら側」と言うんですけれども、パソコンのこちら側、つまりハードの時代、それから、第二次IT革命はネットの時代、ここで先ほど申しました「知の世界の秩序」が変わるような動きがあるのではないかということだと思います。そういうことが起こったのは、ITの技術価格というものがどんどん低廉化されていって、そこで2番目のチープ革命というのが起こってきて、そしてまたオープンソースというものが出てきていると言えます。これもチープ化の流れの中にあるということです。
 そういうことで、これからの2011年を含めた10年を考えたときに、日本にも大バンドル時代というものが来るのではないかと。文化的に考えれば、私は失われた10年の中で日本の存在感は薄かったけれども、文化的には自分探しの10年だったと。これからは自己表現の時代になるのではないかと思ったわけです。そんなことを御報告申し上げます。

○牛尾座長 大変重要な御指摘をありがとうございました。
 では、続きまして、久保委員お願いいたします。資料5−2です。

○久保委員 おはようございます。
 ただいま角川委員から、高所から先を見たお話をいただきました。私は出版業界で今起きている現場的な問題についてお話しします。
 まずは、「紙媒体の出版と電子出版における融合の問題」という資料をご覧ください。既に紙に印刷された過去の出版物を電子出版化する場合、現状では紙面制作に参加したさまざまなクリエイター、カメラマン、イラストレーターを初めとする著作権者、またはデザイナー、モデルさんのように制作に協力していただいた方々との調整作業が必要になります。つまり、放送と通信の融合問題と同様の状況が出版メディアでも起きているのです。
 また、紙媒体と電子媒体を同時に進行しようとする出版物を企画した場合、クリエイターたちに対してどのように許諾を求めていくのか、実例がないために紙出版と通信の融合企画を検討している編集・制作現場は大変混乱しております。このままでは、このような近未来型出版物は、なかなか制作されづらいという状況が続いてしまいます。
 一方、海外では、紙・電子双方のメディアで同時に発売される雑誌が登場したり、電子出版された雑誌では、さまざまな広告とのWeb上の連携が図られたりしています。日本も同様な出版物を実現させるためには、出版権と電子出版権に関連する法改正が必要になります。つまり、IPマルチキャスト、先ほど中山先生からもお話しいただきましたが、テレビ放送と同様に、ある種の同一性が認められるものについては、出版権の一部とみなした状態で同時に出版できるというようなことを考えていく必要が生まれてきているのです。
 その際、同一性については、読者の利便性についてきちんと考えていく必要があるでしょう。クライアントや情報提供者のHPとはハイパーリンクされるべきですし、ペイパービューで販売した出版物も紙の出版物と同様にカウントできるような環境整備が求められていると思います。
 また、現在、印刷所では出版社から入稿された原稿を一旦電子化してから印刷を行っています。アナログ的な原稿に関しても、すべて電子化され印刷されております。この印刷用データを何らか活用することができないか、と考えております。出版物を電子化する際には勿論コストがかかるわけですが、印刷所で既に電子化されている場合は新たなコストを考えなくてもよくなるわけですから、活用しないともったいないと考えております。
 最後に、今後、電子出版物の流通量が増加すると、時代の流れとはいえ紙の出版物を支えてきた書店流通が疲弊することは否定できません。しかし現実的には、過去に発行された出版物が急速に電子化されていくわけではないですから、書店に対する保護政策も何らか必要になってくると考えております。
 私の方からは以上でございます。

○牛尾座長 現場の大変に貴重なお話をありがとうございました。
 では、議論に移りたいと思いますので、御発言の方はネームプレートを立てていただきましたら、1人3分ぐらいでお話をちょうだいしたいと思います。御意見はございますか。
 金丸さん、どうぞ。

○金丸委員 おはようございます。
 私は冒頭、久保利先生がおっしゃられたケーススタディという話は全面的に賛成でございますので、是非御検討いただきたいと思います。
 私は、この会は途中から新しく参加させていただきましたので、多分それ以前にも相当な整理が進んでいたとは思うんですけれども、現在私たちは大きな方向性であるとか、あるいは既存のものを何か大きく変えるという決断をしなければいけない状況にいるわけです。しかし果たしてインプットの品質といいますか、考えてデシジョンするというインプットのクオリティは今どうなんだろうかと非常に気になっております。いろいろな業界の方々の抱えていらっしゃる問題であるとか、個人の抱えていらっしゃる問題であるとか、いろいろなことを聞いてきたんですけれども、点の話であって、それが線になったり面に私自身はまだなれていません。ですからそのケーススタディを通じてビジネスの取引と権利関係の動きと、それに伴うファイナンス、お金の問題であるとか、それから、先ほど久保利先生のおっしゃった教育等の問題というものを、1つのケーススタディでもう一度きちんと整理を、まずインプットとしてなすべきではないかと思います。これが1番目でございます。
 それから、先ほど角川さんから第一世代、第二世代とあったんですけれども、私自身は多分自分でも16ビットパソコンの設計をやっておりましたので、パソコンの第一世代になるかもしれません。日本はその当時はハードウェア志向だったものですから、OSとか言語を複数のプラットフォームに提供していってビジネスになるというようなところになかなか視点が移らなくて、我々はハードウェア志向だったということで、ソフトウェアの時代に対して劣後していくわけです。今起きていることというのが大きく変わっているかというとそうではなくて、私たちが考えるべきことは新しいソフトウェアといいますか、広く言うと知財の世界にどんどん世界が動いていくんですが、このときに重要なのは、ミクロな前進、緻密な前進が得意な日本というのは、ハードウェアをつくるということは依然得意だと。ところが、ソフトウェアの世界はマクロな前進というのが重要になって、多少足りていないところとか、例えばYouTubeにしても、法律面でもややこれはグレーとか違法だというところを含んでいても、エンドユーザの支持を獲得していってマーケットを作った人というのは、違法性そのものについても自分の時価総額が高くなったり、利益を出していけば解決可能なわけですね。これは、マイクロソフト社が最初に世界的に出したMS−DOSも、他人から買ってきたもので違法だと言うんですけれども、そのときには彼らは成長していて、その会社と折り合いをつけられるお金が用意されているわけで、解決可能なわけであります。
 例えば、マイクロソフト社は抱合せ販売で問題になりましたけれども、これも先ほど例えばGoogleの今のエンドユーザが79%海外だということで見ると、アメリカは国益で考えたときに、やや違法性は国内であっていろいろ軋轢はあったものの、成長して外貨を稼いでくる存在になったら、その部分は後で幾らでも折り合いがつけられたわけでありまして、そういう意味では、Googleが抱えている著作権等の非常に深刻な問題等についても、時価総額が15兆円になりしかも利益を出していると彼らが今度はある意味で社会還元ができるような変身をしてくるわけですよ。ですから、私たちはマクロな前進の方が重要だということであります。それは先ほど牛尾座長がおっしゃられたスピードが重要だということとまさしく一緒であります。加速度とか接線の傾きの方が重要な時代だと、知財の競争はそういう分野だと思います。
 それには、まず、最初の確認としては、業界の利益とか一個人の利益もさることながら、誰の利益でもいいですが、足し合わせた合計の国益が増すということが大前提でないといけない。この会はその確認をまず、なすべきだと思います。そういう意味では、中山先生がおっしゃられた点と全く一緒でございます。
 その後、合計の利益が増えれば、先ほどのマイクロソフトやGoogleの例でも言うように、フェアな配分をするということが表裏一体の約束としてであれば、短期的には何かいろいろ影響があるんですけれども、「いかに国益の合計が増えるか」という視点で我々は議論していくべきじゃないかと考えます。
 基本的には、既存の人、新しい人の双方が新しい市場を形成していくための自由度が少ない国は負けるんだということが私の経験でも痛感したことでございます。そういう意味では、実は今の法律関係とか諸慣習も既存の人の自由度も実は縛っているわけですから、既存の人と新しい人が新しい市場に参画できる余地というものを残すべきではないかと思います。
 もう一回戻りますが、そういうことを含めて、1番目の久保利先生がおっしゃったケーススタディを私も是非やらせていただきたいなと思います。
 以上でございます。

○牛尾座長 ありがとうございました。
 ほかに御意見ございますか。では、特にございませんようでしたら、議題2に移って引き続き総合の議論を後で繰り返したいと思います。
 では、事務局から資料4についての御説明、コンテンツ海外展開戦略についてお願いいたします。

○荒井事務局長 それでは、資料4に沿って説明いたします。コンテンツの海外展開についてであります。
 1ページ目は「1.基本的視点」です。ここでは@日本のコンテンツ産業は、世界に飛躍するポテンシャルを持っていること、A海外展開は、民間企業のビジネス戦略を基本として、官の役割は環境整備、側面支援であること、B海外展開によってコンテンツ産業の国際競争力を高め、日本の経済成長にも貢献すること、これらを基本的視点として掲げております。
 「2.対応策」として、次の8項目の対応策を記載しております。
 (1)日本のコンテンツの強みを世界的に発揮することとして、日本のコンテンツが有する独創性を生かし、海外にも通用するコンテンツを制作することとしております。このため、共同制作によってコンテンツをつくることや、海外テレビ局との分業体制をつくること等を記載しております。
 (2)海外展開を見据えた権利処理を行うことといたしまして、コンテンツホルダーと原権利者との間で、海外展開を見据えた協調体制を確立し、権利処理を行うこととしております。具体的には、海外展開についての共通認識の形成や国内外の権利者団体間で協議の場を設けることを記載しております。
 (3)法務能力を高めることとしては、訴訟対応の能力の向上と国内弁護士育成のため、契約交渉や訴訟対応の成功や失敗の事例集をつくることと等を記載しております。
 (4)ハードとソフトを連携させた海外ビジネスモデルを構築することとしては、成長分野のコンテンツビジネス構築や技術規格の統一国内標準をつくることを記載しております。
 (5)日本のコンテンツの魅力を世界に伝えることとして、日本のコンテンツの魅力をさまざまな方法で世界に発信することとしています。具体的には、コンテンツカーニバルを世界最高峰のイベントに育て、観光、ファッション、食の要素も取り入れ、シナジー効果を上げることや、在外公館を通じた海外への情報提供について記載しています。
 (6)日本をクリエーションの拠点とするでは、新人クリエイターのデビューの機会を設け、能力を発揮させることとして、コンテンツカーニバルやメディア芸術祭における作品紹介や内閣総理大臣による表彰制度、外国人クリエイターの受入れ要件を緩和することを記載しております。
 (7)コンテンツ企業に対し各種情報を提供することとして、政府及びJETROなどの関係機関は、コンテンツ企業の海外展開に有用な各種情報を提供することとしています。
 (8)国際的な知的財産保護の動きに貢献するでは、EPA協定に海賊版に対する実効的なエンフォースメントの確保のための条項を盛り込むように交渉することや、CJマークの周知・普及の努力について記載しています。
 なお、本日御欠席の依田委員から、議題2に関しまして資料5−6を提出していただいておりますので御参照ください。
 説明は以上です。

○牛尾座長 この議題に関しましては、事前に資料を提出していただいております原田委員、村上委員の御発言をお願いしたいと思います。
 では、原田委員、よろしくお願いいたします。資料5−4ですね。

○原田委員 先ほど私は、人材育成という視点が大切であるということを申し上げました。主にその観点から海外展開についてお話を申し上げます。少し具体的な話でありますが、毎年世界の科学番組、自然番組を担当するプロデューサーが集まる会議が開かれております。これは各国持ち回りでやっていますけれども、去年は東京で開催しましたので、私もそこへ出席いたしました。各国から大体300人ぐらいの科学・自然番組の第一線のプロデューサーが集まりました。
 そこへ行きますと、例えば、クジラを追い掛けているのはどこの放送局で、どういうカメラマンがいて、あれがいればすばらしい番組ができるとか、シロクマを追い掛けているのは、あそこの放送局の誰だとか、あるいは、インドのトラを撮るためには、あそこへ行けば誰それのつてで撮れます、などといろいろなことを聞くことができます。言ってみれば、自然番組、科学番組の分野というのは言葉を超えるんですね。本当に熱心に3日間やりまして、お互いに情報交換したり勉強会をしたりしております。ですから、その会議へ出て行けば、どの放送局と組めばこういう番組ができるということがわかる。実際にその場からいろいろな国際共同制作が具体化しています。そういう世界があるんです。
 やはり、そういう場に出ていける人材を育てることが大切です。世界のネットワークの上で何か新しいものをつくっていくときに、そういう土俵と人のネットワークの中に入っていかないことには何もできないということを強く感じました。そういうところに出ていける人材を後継者も含めて育成していくことが極めて大事なことだと、この科学・自然番組のプロデューサー会議に出席して実感した次第です。
 NHKでは、海外の放送局などとの国際共同制作を積極的にやっております。今放送していますNHKスペシャル「プラネット・アース」もBBCと共同制作した自然番組です。BBCが初めて自然番組の分野でハイビジョンを使うということに目覚まして、NHKのハイビジョン技術を活用してあの番組ができておりますけれども、この番組なども今申し上げましたような土俵の中で育ってきたものです。
 それと、もう一つ申し上げておきたいと思いますのは、今、世界の放送局の一つの流れは、やはり国際共同制作だということです。国際共同制作にどれだけお金をかけ、どれだけ大きな番組、すぐれた番組を作っていくことができるのか、ということに関心が集まっています。海外展開という場合、日本でつくったものを海外に持っていくという、どちらかというとそういう議論が主流かと思いますけれども、やはりいいものをつくっていくためには、日本も参加しながら海外のすばらしい人材、すばらしいノウハウ、それらとドッキングして優れたものをつくっていくんだということも一方で必要なことだと思います。それが一つの近道かもしれません。ですから、そういう視点を是非我々はきっちり持っていった方がいいのだろうと。日本でつくったものを単に海外に出すということだけで議論すると、非常にスケールの小さな議論になりかねないとも思っております。
 ただ、制度の面では、例えば、先ほど申し上げた国際共同制作を新たにやろうとすると、海外ではインターネット展開権が付くのが当たり前です。国内ではまだそこのところは遅れていたりします。ですから、そういうこともやはりきっちり進める必要があるということであります。
 それともう一つ、テレビ番組の国際コンクールや、大きな見本市が海外に幾つもございますけれども、やはりそういうところでプレゼンスを高めていくということは非常に大事です。例えば、そこへ行って審査委員を務めることができる人材を日本からもきっちり出していくことも大事ですね。そういう人材も一朝一夕で育つわけではなくて、やはり言葉の面も含めてそういう場でやっていける人材を少し長い眼でどうつくって、どう後継者をつくっていくかという地道なことを進めることも、私は大事だろうと思っております。
 とりあえず以上でございます。

○牛尾座長 昨日も「プラネット・アース」を拝見しましたけれども、5年前、10年前に比べて国際共同制作のレベルが高まれば高まるほど、本当にレベルが上がるんですね。その中でも、こういう海外特撮のこれこれというのは英国の誰々という風に分かるんですか。日本にもそういう人というのは一つの分野でかなりあるんですか。

○原田委員 あります。

○牛尾座長 そういうものがある程度育たないと、交換条件というものがなければ相手にされないですね。

○原田委員 そうです。「プラネット・アース」でも、BBCがつくっている部分がありますけれども、NHKで得意な分野、例えば潜水ではNHKのカメラマンが活躍をしておりますしあらゆる特撮は日本のノウハウということでできていると思っていただいていいと思います。

○牛尾座長 国際的にものをつくって、非常にいいものがあるときに、それを教材に使うとか一般の第三者に譲っていく場合の権利とかそういうものは、つくるときに初めから合意されていればいいと思うんですが、後になると大変でしょうね。

○原田委員 通常は初めに合意しています。例えば、NHKの場合は国内では独占的に放送します、アジアのここまではNHKが放送します、ヨーロッパではBBCが放送します、アメリカ大陸ではアメリカの放送局が放送しますといった放送権、それから、DVDにしたりする二次利用の展開権などをあらかじめすべて契約に織り込んで合意します。先ほど申し上げたインターネット展開権なども、今、必須条件になりつつあるということでございます。

○牛尾座長 国際的な協調をすることによってもう一つ進歩したと思うのは、4年ほど私はNHKの関係の中央放送番組審議会の委員を務めていましたが、ああいう特別な番組をつくると、どこかに制作者の独断的偏見が入って、後で議論がいつも出るんですね。それが国際的に交流すると全般的に高まって、もちろんある程度はあるけれども、それが国際レベルまでアウフヘーベンされるものだから気にならないという、非常にレベルが上がるという点では非常に私はよくなったんじゃないかという気がします。だから、交流の人材というのは、技術プラスこの場合こういうところに出られる素養というのはどういうものなんですか。特撮ができること以外に、国際会議に出ているでしょう。そういうものを相互にしゃべるときに、いろいろなものの見方も交流されるわけですか。

○原田委員 やはりそれぞれの専門知識がまずちゃんとあるということですね。やはりこちらからそういうところへ出て行ける人間は、NHKもそんなにたくさんはおりませんけれども、やはり現場でさまざまな経験をしてその上で出て行くのでなければ会議の中でイーブンに話をしていくというのは、そう簡単なことではないような気がいたします。

○牛尾座長 プロデューサー的な知識も、また技術的な知識も両方要るんでしょうね。

○原田委員 そうですね。それと今の時代で言うと、そういうものをアシストするライツに強い人間とか、さまざまな分野の助力も当然必要になってきます。

○牛尾座長 この2〜3年は、こういう国際的なものは非常に進んだんでしょうね。非常に技術的にも感心する場合が多いんだけれども。

○原田委員 「新シルクロード」もそういうものでございますし、それから、自然番組で実際に海外でかなり売れるものもつくれております。2004年に放送したNHKスペシャル「地球大進化」というシリーズがございまして、これなどは相当の販売実績があります。

○牛尾座長 では、村上さん、どうぞ。資料は5−5です。

○村上委員 今、NHKさんからはNHKのいろいろな取り組みをお話しいただいんですけれども、私の方は今、日本の民間テレビ局がどういう形でコンテンツの国際展開をしているかという具体的なお話をちょっとさせていただければと思っております。
 現実的にテレビ局がコンテンツの国際展開をしていくという場合、目的としては2つあるわけでございます。1つは、今、原田委員もおっしゃったようなプレゼンスの問題。いわゆるブランドを国際的に付けたいという気持ちと、2つ目は何といってもビジネスを国際展開によってしたいという、その両面で今動いております。
 当社においては、まず、番組のいわゆるセールスということで言うと、ドラマが大体全体のセールスの8割を占めておりまして、更に、販売先を地域別に見た場合は、アジアが9割、欧米はほとんど10%というようなところに縮まっているということでございます。
 では、どういう形態でその番組のビジネスをやっているかということでございますが、大体3つのやり方がございまして、1つは番組そのものを販売する。それから、番組そのものではなくて、企画コンセプト、それから、構成をセールスという、いわゆるフォーマット販売というやり方がございます。それから、3つ目は共同制作という、大体この3ジャンルで我々はコンテンツの海外展開をしているということでございます。
 番組販売、いわゆる番組そのものを売るということにつきましては、ほとんどアジアが主流でございます。特に1997年に台湾のケーブルテレビで日本番組の専門チャンネルが開局したことから、日本ドラマの需要が非常に増加しまして、販売価格も上昇いたしました。現在、台湾のケーブル大手のある局では、当社のドラマ枠を毎週月〜金、固定的にレギュラーで放送してもらえるというところまで来ておりまして、台湾はある意味で日本のテレビ局のセールスにとって一番大きなところになっております。
 一方、同じアジアでも中国では厳しい輸入規制と、ともかく購入予算が非常に低いということでセールスが難航しておりましたけれども、ようやくここ数年少しずつ販売ができるようになりました。特に2008年の北京五輪がございますので、HDTV需要が非常に出てきたということで、当社も「白い巨塔」というドラマが向こうで放送が可能になりまして、中国ではいろいろ話題が今できているようでございます。
 一方、韓国ですが、これは日本ドラマの放送は禁止されておりましたので、販売そのものができませんでしたが、2年前からようやく衛星とケーブルだけは日本ドラマが解禁されて販売が始まりました。
 しかし、アジア全体の動きとしては、各国で2001年前後から御承知のように韓国ドラマの人気が急激に高まりまして、それ以来、アジア地域のテレビコンテンツセールスでは、韓国が日本を大きく引き離しているという状況でございます。何ゆえ韓国が強いかということについては一応3枚目に書いておきました。いろいろ国が支援しているというような話もございますが、実は近ごろは最大マーケットだった中国が韓国ドラマの新規輸入の禁止を始めたということで、それなりの影も出てきたということをとりあえず情報として入れておきました。
 一方、欧米向けはほとんどフォーマット販売というところに集中をしております。欧米マーケットでは見てわかりやすい、あるいはアイデアが斬新という番組を非常に望んでおりまして、いわゆるそうしたバラエティー系の番組フォーマットが好まれて、主力商品として展開しております。
 3つ目の共同制作でございますが、これは民放がまだ非常に遅れている部分でございます。ようやく韓国の提携局といろいろなドラマあるいはバラエティーを中心に始まったというところでございますが、正直、制作現場での文化の違いや、視聴者の見方の違いなどで克服すべき問題点が多いということでございます。
 いわゆるコンテンツ国際展開の課題ということで、我々が直面している問題を3つ、2ページ目に書いておきました。言われておりますように著作権をめぐる課題というものがございます。まず、一々権利者団体に許諾申請をしていかないといけないということとか、当然番組内で使用された洋楽が海外で使えませんから、その都度、著作権フリーの楽曲に差し替えるというような煩雑さがあるという、いわゆる著作権上の問題に加えまして、関係者━━というのはほとんど権利者のことなんですけれども、要するに売ってもらってもあまりメリットがないと。特に、海賊版やコピー商品といったネガティブなイメージが非常にアジアに強いために、あまり出したくないというような関係者の意識がまだ非常にございます。この辺も意外に大きなデメリットになってございます。
 もう一つは、御承知のようにドラマが一番アジアで売れるんですけれども、実は日本のドラマというのは大体1クールごとに1つの番組が終わってしまいまして、11話から多くても12話しかないんですが、アジア各国では週に2〜3話放送すると。中華圏では毎日1〜2話放送してしまうというのが一般的なために、テレビ局としても放送しにくい。その辺の問題がございます。
 したがいまして、今後、我々の海外展開をやっていく場合の問題点として要約しますと2つあろうかと思いますが、1つは、先ほど中山本部員がおっしゃいました強力な権利と流通の促進、このバランスをどういうふうにとっていったらいいか。ある意味で番組が海外に出て行くことについてのあるモチベーションを持てないと、なかなか難しいということが1つございます。
 それから、何よりも需要の喚起ということがございます。これはいろいろな手を使って、当然一テレビ局だけでやっていくことではなくて、いろいろな意味で相手国あるいは海外で日本のソフトを欲しいと思わせるいろいろな手だてが必要ではないかと考えております。
 以上でございます。

○牛尾座長 ありがとうございました。
 では、討議に入りたいと思います。御意見のある方はどうぞ。

○久保利委員 村上さんに質問があるんですけれども、今御説明いただいたものを見ると、これはフジテレビの特殊性なのか、あるいはどこのテレビ局もおおむねそうなのか。例えば台湾で売れているが、中国、韓国は全然入れてもらえないということを全体的傾向として認識してよろしいのでしょうか。

○村上委員 ドラマが8割というのは、当社がそういう意味で人気ドラマが多いということがございますが、基本的な動きと問題点については各局が抱えているテーマだと思っております。

○久保利委員 そうすると、中国、韓国にほとんど入っていけないという状態だとすると、アジアで9割頑張ってというのは、むしろそれ以外のところで稼いでいるという状態ですか。

○村上委員 現状はそうでございますね。ただ、韓国とか中国に逆に入っていく手だては何かというと共同制作です。要するに、資本が入っていればオンエアOKというような、中国などは特にそういうことになっていますので、完全日本製品だとだめなんだけれども、中国の資本が入っているといいということなので、例えば、うちなども月曜9時のドラマのリメイク権というのをまず持って、そして、それを一緒に向こうの放送会社と共同制作していくというような流れは少しずつできております。

○久保利委員 わかりました。かなり国際的な、政治的な影響というものがこのコンテンツの実際の輸出入に相当密接な関係があるんだなというのが大変よくわかりました。ありがとうございました。

○原田委員 その関連ですけれども、ハイビジョン放送のチャンネルがようやく海外でも立ち上がりつつあります。中国でも去年から今年にかけて中国中央テレビ(CCTV)と上海メディアグループ(SMG)が、これはケーブルテレビですけれども、ハイビジョン放送のチャンネルを始めました。これは日本にとって一つのチャンスです。中国ではハイビジョンのチャンネルは立ち上げたけれども、ハイビジョンソフトはそれほど持っていません。NHKは相当な量のハイビジョンソフトを持っていますので、それらを中国向けに販売しました。その中で私がちょっと面白いなと思いましたのは、例えば、CCTVのハイビジョンチャンネルには「おしゃれ工房」という教育テレビでやっています婦人向けの編み物とか洋装とかの趣味・実用番組がバルクで売れています。あの手のものというのは、案外国境を越えるんだと思いました。
 それから、これはハイビジョンではありませんが、アルジャジーラというカタールの放送局と話がまとまりました。教育テレビの幼児番組などですが、これも言葉を越えて外国のお子さんでも十分親しめるということで、アルジャジーラの教育番組としてこれもバルクで販売することになりました。
 私どもは実感としては、例えばドラマとかは、特に欧米に出していくというのは文化の違いから難しい。しかし、教育テレビの幼児の番組というのは案外国境を越えやすい、それから、自然番組も自然な形で共同制作ができる、といったように国際展開が比較的やりやすい分野かなと思っています。
 それから、ハイビジョンスキルということで言うと、ようやくBBCもハイビジョンチャンネルを衛星で立ち上げようとやっていますので、そういうところにソフトを出していくチャンスがこの後広がってくるだろうとは思っています。

○村上委員 あと1つ、テレビ局がやっておりますので劇場映画の製作がございまして、その海外展開というのはどういうふうに今動き出しているか、ちょっとお話ししておいた方がいいと思いますけれども、以前はハリウッドで何か映画をつくるというのを聞いて、何とか資本参加して一緒に利益にあずかりたいという流れがあったんですが、それはいろいろな試行錯誤の中であまりうまくいかなかったということで、今テレビ局で始まっておりますのは、いわゆるメジャーの会社、向こうのハリウッドのメジャー会社を、例えば、日本の作品をつくるときに資本参加してもらって全世界配給するという流れを、例えば、うちなどで言うとアニメをやっておりますし、日本テレビさんなどもワーナーさんに資本参加してもらって、日本の作品をつくって、それを海外にセールスあるいは配給する流れをつくってもらう。
 一方、日本の小説とかドキュメンタリーの中で、いわゆる世界市場で通用する作品を原作として海外にセールスをするという流れを一生懸命つくろうとして、いろいろなプロジェクトを今組んで、そういう形でいわゆる共同制作の開発みたいなところに何か活路ができないかということで動き出しているということはございます。

○重延委員 昨日ヨーロッパから帰ってきまして、4月と10月にMIPCOMというテレビのマーケットがカンヌであるんですけれども、これはいつも行っていると次第にその変化がよくわかるんですね。今年もやはり変わったと思いました。というのは、2年ぐらい前までは双方向というか、あるいはインターネットテレビを含めたコンテンツはどうかということが大変な議論をなされていました。でも、実は今年は余りないんですね。なぜかというと、それはハードにとって有効なコンテンツの集め方であって、ソフトをつくる側から言うとあまり利益が生まれないという実態がわかってきたんですね。ですから、大量のチープコンテンツもそれに向かっていくプロダクションはあまり実は成功しないんです。求められるけれども成功しない。還元もあることはあるんですが、少ないんです。ですから、そういう意味でそれにだけ臨んでいくというのは、やはりどちらかというとほかの産業でも確立されているブロードキャスターとかディストリビューターがやることであって、むしろインディペンデントはそこから大きな利益は出ないということがだんだんわかってきたということが一つ見えます。
 それから、もう一つは、村上委員のお話にもありましたけれども、フォーマット権が非常に大きなマーケットになっておりまして、フォーマット権はEUで言いますと、やはり何十カ国というのがそばにありますから、1つのコンテンツが何十カ国に売れていくということがあるんですね。日本の場合はアジアでもたくさんの国はありますけれども、一挙にそれが何十カ国というレベルではなくて、やはり2国、3国という程度でございます。そうすると、ヨーロッパ系ということは国とかメディアの種類が多いものですから、むしろフォーマットを動かしていくということの方に今ビジネスが動いていく。しかも、なおかつヨーロッパで特にイギリスとかフランス、ドイツという地域で一度成功したフォーマットというのはアメリカに届くんですね。そのときにアメリカのマーケットは5倍ぐらいの値段で出しますから、大変な産業になる。しかも、フォーマットというのはアイデアですから、実際には活動がないんですね。活動がなくて知的財産として売れていくという非常に意味あるものであって、私もやはり独立制作会社としては、まずヨーロッパにフォーマット権を売ってから、アメリカに売ってもらうということを考えています。こういうアイデアが必要だと思うんです。面白いからBBCに売ったりしていると、代わりに情報が非常に入ってくるんです。なぜそれが通らないか、非常によくわかるんですね。イギリスは今どの番組が当たってきたから、これはちょっと待ってくれと。現実に、3年前にはリアリティショーというのが大盛況でありまして、リアリティショーなんて昔日本でやっていたものですから、古いなとは思いつつ、やはり「ビッグブラザー」とか「サバイバー」もそうですけれども、大流行の後に何が起きてくるのかというのをじっと待っているんですね。そういうときに、どういう傾向の番組がヨーロッパで望まれてアメリカに行くのかという情報が必要なんだと思うんです。やはり、そういうのは情報を集めるという人間が必要なんだと思うんです。実際にそういうマーケットへ向かっていく、情報を集める、それを繰り返していくということですね。こういう人間が必要であるということだと思うので、そういう意味でMIPCOMは非常に面白い変化を見せる場所と言えます。
 今年はJETROさんがとてもいい場所を押さえて、新しい展開をなさっているなという印象も持ちましたけれども、1つ面白かったのはMIPCOMの社長さんとお会いしたんですけれども、どうしてこういう具合に盛況になるようなマーケットができるのかと聞いたところ、どうも自分のものだけを売るマーケットと思ってはだめだと言うんですね。フランスはフランスのものを売ろうと思ってこれをやっているんじゃないと。ここに集まることによって、インターナショナルの意味があるという目的でやっていると、お客さんが集まるんだということで、それは一つの教訓でした。私も日本でそういうマーケットができれば本当に良いと思っているんですけれども、やはり日本のものを売ろうと見えてしまうとバイヤーか逆に来ないと言うんですね。ですから、そこは交流の場所というような観点を持つ、これが1つ大きなヒントでした。
 それから、あと2つ面白かったんですが、MIPCOMの前に4月にはMIPDOCというドキュメンタリー、これは非常にクリエイティブな作品を集めるというのをやっているんですね。それからマーケットに入るということをやっている。やはりここにはインディペンデントのプロデューサー、ディレクターが参加していただきたいということです。ここはインディペンデントの世界であると、そしてQUALITYをちゃんと持ってMIPをやっていきたいという考え方。
 それから、もう一つ非常に今年面白かったのは、MIPCOM Juniorという子どもたちの番組のマーケットをMIPCOMの前にやっていたんですね。私はたまたま1日前に行ったものですから、是非見てくれと言われて見ました。カールトンのホテルでやっていたんですけれども、そこのマーケットはセールスのブースがないんです。びっくりしたんですが、人がいないんです。人がいなくて小さいブースがたくさんあって、そこに登録しますと、その中のコンピュータで全部登録されているソフトをダウンロードで見られるんです。これは、私はすばらしいと思いました。交渉は全部パソコンでやってくださいと言っているので、つまり、ある意味でお金をかけないでマーケットをやっているということに気がつきまして、これは私は意外と日本にはいいんじゃないかと思いました。たくさんの人が集まってという大きなフェスティバルもあるんだけれども、いまやそれよりもネットでやってしまえば、人が来なくてもできるんだと。日本の欠点は極東だということですよね。欧米から来るのにものすごくお金がかかるんですけれども、そうじゃなくてネットでやって、その代わりクローズドでやると。そこでダウンロードして作品全部も見られるし、場合によっては5分ぐらいのものも見られると。交渉は全部ネットでできてしまう。そうすると、もしかすると大きなマーケットをやるというのがそろそろ時代遅れになってきて、ネットでやってしまうというようなことをやれば、日本は世界に先駆けるかもしれないというヒントをちょっと得ました。それはまだMIPCOM Juniorでやっているだけですから、そこは予算がないからやっているのだと思いますけれども、こういうヒントを集めてやると、日本のやり方が出るんじゃないかというような気がちょっといたしました。今日はそういう報告だけで終わって、次回にちゃんと資料を提出しようとは思っているんですが、さっき久保利委員でしたか、村上隆さんのお話があって、私はちょっとそれについて書いたことがあるんですが、村上隆さんの『芸術起業論』という本が今出ておりまして、非常に面白いんですけれども、そこにまさに答えが出ているんですね。なぜ日本のアーティストが世界に通じないかという答えを言っているんです。「欧米の芸術の世界のルールを踏まえていなかったからなのです。」つまり、勉強していないということなんですよ。だから、制作者の反省も私はしているんですが、それから、「勉強や訓練や分析や実行や検証を重ねていき、ルールを踏まえた他人との競争の中で最高の芸を見せていくのがアーティスト。」つまり、「ルールを踏まえた」と書いてあるんですね。これは普通自由な方がいいように思うんですが、「ちゃんと世界のルールを踏まえろ」と。それから、「自分勝手な自由からは無責任な作品しか生まれない」、こう書いているんです。これが世界に向かっているトップの発言だと私は思います。
 それで、「欲望の強さは芸術制作の邪魔にはなりません。むしろ問題は、日本の芸術家に強烈な欲望がないことです」。私はこれだと思います。やはり制作者側の反省としては、欲望が少な過ぎるのだと思いました。それで、「芸術の力を生かしたいなら金銭が要るという事実からどうして目を反らしてしまうのでしょう」と、書いてあるんですよ。ですから、村上さんがトップに行くのは、つまりやはりすごいんですよ。そういうことをしなければトップにはなれない、国際的にはなれないということを学びつつ、次回の発言にしたいと思います。

○牛尾座長 ありがとうございました。

○中山本部員 村上さんにちょっと民放のことについてお伺いしたんいですけれども、海外展開というのは、共同制作は別として、大体二次利用が多いと思うんですけれども、二次利用というのは国内も国外も法的には同じだと思います。先ほど申し上げたIPマルチキャスト放送は条約上の縛りは今のところないので、法的には自由な制度設計ができるんですが、普通は強力な著作権が条約上ありますから難しいんですけれども、1つはJASRACみたいなああいう権利者団体がしっかりしてちゃんとやってほしいというのはもちろんあるんですが、コンテンツを最初に作るところ、つまり放送局がメーンだと思うんですが、放送局が二次利用に対して一体どのくらいの権利処理をやっているのか。ネット配信が中心ですけれども、DVDその他もろもろいっぱいあるんですが、その著作権者と最初にきちんとやっておけばかなりの問題は解決すると思うんですが、現状はどうなんでしょうか。

○村上委員 一番その辺が批判されておるところなんでございますけれども、基本的に流れとしてはそういう形で、要するに、番組で放送するという形のときに、既にそういう権利処理をしていこうという流れはございます。ただ、それがすべて可能になるかというと、それこそ一つ一つの権利者とのまた問題が起こってくるので、我々としては今のような特にネット時代を迎えて、できるだけそういうことについての権利処理を最初にしておこうという流れはございます。今現実的にもうできているのはCS放送をする場合には完全にそれは処理して、自動的にネットに流せるという形にはなっておりますが、地上波についてはまだ正直不完全な状態だと言えると思います。

○中山本部員 何でもそうですけれども、最初にやっておかなければ後でやろうと思うと不可能に近いぐらい難しいので、是非最初にやる、つまり放送局がしっかりやってもらいたいと思いますし、もう一個質問があるんですけれども、フォーマットの売買というのは事実として存在しているということはわかるんですが、それはアイデアであって法的には何らの権利もなくて、例えば孤島でのサバイバルゲームというのは誰がやったっていいはずなんですけれども、何でそれが売れるんですか。

○村上委員 基本的に、すべて契約の中で現実に成り立っています。ただ、中には全く野放しでやってしまうところもあるんです。全くそっくりじゃないかといった場合、あるお国でそういう番組が見られたときは、必ず我々の方は法的措置をとりますよということを言っておりまして、それが可能です。なぜかというと、要するに、番組の構成自体にいわゆる著作権を我々としては持っていると思っています。例えば、フジテレビで「クイズ$ミリオネア」というのをやっておりますが、あれはイギリスでやっていた番組を全くほとんどそのままやっているんですが、これはイギリスの放送会社ときちんと契約を結んでやっているということです。実際にフォーマット権という言い方でそういう権利の販売ができる形になっています。

○中山本部員 翻案権に該当するぐらい似ていればそうなると思うんですけれども、孤島でサバイバルゲームをやるなんて、多分日本で訴訟を起こしたら負けるんじゃないかと思うんですね。勝てる国もないんじゃないかと思うし、判例もないと思うんですけれども、それでも事実としてそういう売買が行われている……。

○村上委員 どういうことですか。

○中山本部員 つまり、例えば孤島でサバイバルゲームをやるというのをある放送局がやって、違う放送局がまねをしたというときには、普通は著作権で多分訴訟を起こしても負けるんじゃないかと思うんですけれども。

○村上委員 ですから、その著作権を売り渡すのに近い形で商習慣として定着したビジネスということです。

○中山本部員 いやいや、著作権が発生していないと思うんですけれども。

○重延委員 補足していいですか。ヨーロッパで割とフォーマット権が発達したのは、実はほかの国では随分アイデア盗みが起きているんです。実際にまねられてしまう。フォーマット権というのは何かというのは私も随分調べたんですが、フォーマット権とノウハウとは別だということなんですね。つまり、ノウハウはフォーマットにならない。フォーマットというのは、あるアイデアが非常に独創的で、なおかつ成功した番組でなければいけない。つまり、どこかで持続して成功しているということが一つのフォーマット権のベースになる。それは法律的では実はないんですが、ヨーロッパみたいに非常に近い国々ですと、アイデア盗みをやってしまうと信頼がなくなるんですね。そういう指摘をされるという、ある道義的な中で動いているので、ヨーロッパの中ではそれが結構守られています。ところが、ほかのところで守られているかというと、現実には守られていないし、裁判しても結局は裁判にならないという可能性はあるという状態です。アメリカでも結構まねしているという実態があります。

○荒川委員 コンテンツ振興戦略とコンテンツ海外展開の両方にかかわる問題で、先ほど国際的なそういう交流等々に専門家の人たちが出ていって行うというようなお話がございましたけれども、インターネットの世界ですとか、角川委員の方からオープンソースの話とかが資料の中で出てきておりますけれども、こうしたものというのは、ほとんどがそういう標準化団体だとか国際的なオープンソースの運営団体というのがあって、そういうところで参加する人たちがいろいろな意見を出し合って、だんだん形にしていくというようなやり方をとっているわけなんですけれども、実は、この分野では日本の企業さんというのはまねるだけで、ちっともそこに対して参加していないじゃないかという批判が非常に強いんですね。きちんといいものになったら日本のメーカーさんなどは使うと。でも、その前段階でみんながつくり上げていくとか、企画をつくるなどというのはまさに、そのものではなかなかビジネスにならないというようなことで参加しないんですけれども、参加しないとどういうことになるかといいますと、まさにノウハウがたまらない、それから、国際的なルールというようなものを覚えられないということで、だんだん影響力が低下していってしまうんですね。恐らく日本の社会の中ですと、我々はソフトウェアの産業をやっているんですけれども、ソフトウェアと言ってもコンピュータのソフトウェアをやっているわけなんですが、コンテンツにしてもソフトウェアにしても、最初のころというのはそれをやりたいからやっているんだろうということで、どちらかというとそういう職人さんのような人たちに対する評価が低くて、あまり金銭的なところは最初からは考慮されないというようなことがあって、どうしても好きだからやっているんだからいいじゃないか的に放っておかれてしまって、もっともっとその力を前に出していくというようなことが足りないのかなと。
 先ほどお話にございましたけれども、そういう人たちをいかに国際的な舞台に持っていってしまって、いかにすごいことをやっているんだということを認めてしまって、それと同時に、そういう人たちもやはりやっていたら経済的にもよくなるねというような環境づくりというのは重要じゃないかと思うんですね。久保利委員がおっしゃっていたように、確かに最初は異常な人たちというのでしょうか、非常にとんがっている人たちがあまり金銭ということに関係なくやっているんですが、産業として育っていくためには、その後でやったら成功したら確かに経済的にも成功するよねというようなこともしていかなくてはいけないし、そういう人たちが最初は英語もしゃべれなくてもいいと思うんですが、やはりそういう国際団体に出ていってきちんとした発言をし、ルールを学んでくるということをし、国際交流をするということ自身にものすごく意味があるのではないかと思うんですね。
 弊社も小さいながらソフトウェアの世界に供給ができている理由というものも、そういう活動をもう10年以上にわたってしてきていて、最初はばかじゃないのと随分言われたんですね。全然儲からないのにどうしてそんなことをやるのと。でも、やはりそういうところでルールを学んでいくと、海外に展開できるようになっていきますし、イニシアチブをとれるようになっていくのではないだろうかというような期待が私はありまして、日本の方々というのは本当に真面目でいいものをやっているので、それさえきちんとできれば随分変わってくるのではないかなということ。
 もう一つ、全然別の視点なんですけれども、海外に行って非常に驚くのは、コンテンツのお話ですけれども、これってすごく日本的で、こんなものが本当に受けるのというようなものが、例えば、スペインに行ってこの前「クレヨンしんちゃん」がものすごくはやっているんですね。びっくりしてしまいまして、「えっ、こんなものがこっちで受けるの?」と言ったら、ものすごく受けると。たしかイタリアだったと思うんですが、ロボットと言うのでしょうか、日本のロボットアニメとかものすごく一時期、今でも受けているのだと思いますけれども、「ガンダム知ってるか?」と言うので「当然知ってるよ」と言うと、「そうか。じゃあ、おまえ『マジンガーZ』って知ってるか?知らないだろう」と言われて、「いや、俺の子どものころに日本ではやっていたよ」と言うと、「そうか、残念だなあ。今すごくはやってるんだよ」みたいな話をされたりすると、決して日本文化特殊論というのではなくて、かなり世界的にも受けるようなものがあるんだけれども、あまりそういう市場を考えなくて成り立つ経済性というのでしょうか、日本自身が成り立ってしまっているので、海外までそういうことを本当に広げてパイを大きくしていく、先ほど金丸委員がおっしゃっていたような、パイを大きくしてみんなで分かち合うみたいな、それをやった人たちに分けていくというような考え方はしなくてもよかった、または積極的にしようと今まではしてこなかったというところにあるんじゃないのかなというような気がいたしまして、そういったところをもう少し具体的に確かに調査したり、ケーススタディしてみるというのものも非常によいことなのではないかと思いました。

○牛尾座長 ありがとうございました。

○久保委員 今、海外のアニメの話が出ましたので一点。アメリカの海賊版対策についてです。実はアメリカでの日本製アニメのDVDセールスはダウントレンドになっています。その一番の理由は、P2Pのファンサイトで日本製アニメ映像ファイル交換が非常に盛んに行われていることが挙げられます。昨年アメリカの大学で講義をした際に、生徒に日本のアニメをどんなメディアで楽しんでるの?と聞いたら、ほぼ100%の生徒がP2Pファンサイトで見ているとのことでした。つまり、日本の大切なアニメコンテンツの利益が、アメリカで海賊版があることによって大きく損なわれているということについて認識を深めて頂きたいと思います。
 もう一点は、村上委員からもお話がありましたが、韓国でのアニメ放送の実情です。これは、まだ第二次世界大戦のつめ跡が残っておりまして、日本製アニメの放送に対しては何らかの制限が今でも残っています。日本国内でこれだけ韓国ドラマが自由に見られる環境ができているのに関わらず、日本製アニメとバラエティーについては制限を受けているということについては、政府として継続的に発言していってほしいという気持ちがあります。
 3番目に、重延委員がMIPCOMの話をされましたけれども、実はテレビのコンベンションマーケットであるMIPCOMは二重価格で販売が行われているはずです。EU圏内と圏外の番組価格を比較すると、EU圏外から入ってくる番組の価格の方が総じて安いと言えると思います。この二重価格は、アメリカのエンターテインメント学科ではみんな学ぶことなんですが、日本ではそれを知っている方は少ないかもしれません。ですから欧米の販売会社は、このような制作方法を考えたりします。例えば、カナダのプロダクションとEU圏内にある販売会社と国際共同制作をすると、カナダの政府からスタジオ使用に関しての助成金がもらえるはずですし、なおかつEU圏内では比較的高く番組販売できることになります。日本以外の国では常識としてそのような共同作業をやっているわけですね。ですから、日本のコンテンツを売るということだけに特化せずに、国際的な情報収集を様々なロビー活動の中で行っていきながら、純国産コンテンツでは得られない大きな利益を目指すということをトライしていく時期に来ているのではないかと思っております。
 最後に、人材育成の面に関してですが、原田さんのお話しからNHKさんが国際共同制作の面ではかなり先を行かれているという認識を今日持ちました。できれば、学生に対する教材の制作協力とか、エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークに対する御協力をいただければなと思いました。
 以上でございます。

○村上委員 ちょっとこの御質問はまだ早過ぎるのかもしれませんが、資料4で「コンテンツの海外展開について(案)」というのが事務局から出されていると思うんですが、これはどういう形になるんでしょうか。もし、ここで討議があれば何か言ってもよろしいんでしょうか。

○牛尾座長 これは、単なる素材としてまとめて、後は委員の方に個別に全部御訪問して。

○村上委員 一つだけちょっと思いましたのは、無論、表題、それから対応策で項目立てになっていることについても何ら異論はないんですが、その下に対応策という形で更に具体的な施策が出ておりますけれども、民の自主性に任せてもいいんじゃないかなというところもちょっと散見されましたので、また、それは事務局の方で御検討ください。

○牛尾座長 できるだけ民が自分でした方がいいと思います。

○久保利委員 ただいまの久保委員の御発言に関連してですけれども、あるいは村上委員も今、資料4のことをおっしゃいましたが、その(3)で法務能力を高めるというのが出てきて、エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークの存在を更に強化していろいろやっていけという話でございました。その理事長として私一言申し上げますと、要するに、弁護士というのはクライアントがあって初めて仕事があるわけでありまして、一方で、弁護士が得た能力あるいはノウハウ、知見というものをどこまで出せるかというと、お客様からお金をいただいてやった仕事のことを弁護士がベラベラ言ってはいけないという守秘義務的なものもありまして、実は簡単ではないんですね。したがって、例えば、NHKさんが、我々は国際的な共同制作でこういう知見を持った、それは、関与した弁護士に対して、この限度までは対外的に発表してよろしいと。そのことによって日本の法的な能力が上がるのであれば、それは公共放送局として非常にハッピーなことなんだというふうにもしお考えいただければ、エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークの研究会等で発表いただきたい。それを多くの弁護士たちが更にバージョンアップをして、それを今度逆に、その弁護士さんはNHKにリターンができるかもしれないというようなことで、やはり事業者と弁護士が一緒になってやっていかないと、エンタメ系の法務能力というのは決して上がらないんですね。
 そういう意味で、@ABとありますが、現にエンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークもカンヌの映画祭に行ったり、いろいろなところに出張って行ったり、今度の東京国際映画祭でもブースをいただいて、そこで法律相談に関与するというような活動ができるようになってきました。そのためにも是非、会員弁護士の能力向上を図るのは、決してエンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークだけでできるわけではなくて、現にエンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークは久保さん、角川さんを初めとして、理事にもなっていただいておりますけれども、そういう事業者と弁護士が手を組んで、さあ、どうやっていこうかというところからスタートするんだという認識を是非改めてもう一度申し上げておきたいと思いますので、よろしくお願いします。

○久保委員 これは笑い話にしかならないかもしれませんが、先日、中国のある政府系の団体とアニメの国際共同制作にサインをいたしました。そうしたら、その次に中国政府筋がその契約内容を新聞記者に全部出してしまいまして、結果的には契約内容の守秘義務というのは一切なくなってしまったんですけれども、そういう意味ではどういう契約をしたかということが中国の人たちは共有できたわけで、何ということをするんだと思いましたけれども、こと既に遅しということだったんですが、やはりそういう意味では今、久保利委員がおっしゃったように、守秘義務の問題は大きなハードルですので、これをどうやってクリアしていくかということに関しては、エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク自身が出資するとか、多分そういうかなり大胆なことをやっていかない限り、この守秘義務のハードルは越えられないんじゃないかなとも思っております。

○牛尾座長 中国、韓国との間のこういう文化、ITの交流というのは、これから怒涛のごとく広まっていくと思います。先日も中国の留学生と話していたら、ものすごく日本のトレンディなことに詳しいんですね。聞いたらフジテレビさんの番組もいっぱい入っているんでしょうが、全部海賊版で見ているようです。トレンディドラマでスターテレビなど正規ルートで放映しているものはみんな言葉が吹き替えされているが、そうではない海賊版で日本語のままでも姿だけ見てて大流行だというんですね。恐らく50円か30円ぐらいで見られるそうですけれども。彼が言うと、日本の方はものすごく得していると。文化は全部我々の方の努力で勝手にどんどん入っていって、それで日本に留学するという人が最近は増えているわけですね。日本の日常生活に対する魅力というのは、実は海賊版も影響しているという部分もあるわけなんですよ。
 ということは、ポテンシャルなこの事務局でまとめたものでも、日本のコンテンツの魅力とか、日本のコンテンツの強みを世界に行って、そういうものは海賊版を通じてみんな見てしまっているわけですよ。だから、潜在的な需要というのは非常に高いということに気がつくわけです。これをどうやってビジネスにするかということについては、中国はいろいろな点で私も関与したけれども、全く常識が違うんですね。こんなことは当然正気だと思っていたらそうでないし、やはり文化侵略ということに対して非常に強い執念があったり、しかし、それは海賊版を出すことが文化侵略とは関係ないんですけれども、その辺を論理的にきちんと正す部分と黙認する部分を考えながら、ここに強烈な潜在的需要があることだけははっきりわかっているわけですから、実際にどういうふうに解決していくかというのが、需要があるだけに重要な問題だと思うんです。だから、そういう点もこの会議は、国内の方をもっぱら表向きの議論ばかりではなしに、実態をどうやって流していくかということについても、今議論があったように、やはり民の知恵というのはどうやって普遍化していくかということも大事なので、そういうことについてもこの会議では議論しなければならないと、しみじみと思いました。
 今日は大変に有効な議論であったと思います。とても行政サイドでわからないようないろいろな御意見があって、早速整理をしたいと思っております。
 次回の会合は11月27日、月曜日の10時から、再度開催することになっておりますので、もうそろそろ最終的な問題提起というものを強く認識していくことになっていくと思いますので、それまでにもう一度また事務局が皆さんのもとに参りまして、今日ご発言できなかった御意見も全部ちょうだいして、今、村上さんから御報告があったように、提案の内容というものはこれからいよいよ詰めていくわけでありますので、率直な議論、しかも、ポジティブな議論を是非お願いしたいと思います。
 では、本日はこれをもって終了いたします。ありがとうございました。