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コンテンツ・日本ブランド専門調査会(第8回)議事録

  1. 日時:平成20年12月15日(月)10:30〜12:00
  2. 場所:知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者
    【委員】 久保利会長、生越委員、角川委員、木村委員、久保委員、里中委員、重延委員、関本委員、高橋委員、中村委員、中山委員、南場委員、服部委員、浜野委員、廣瀬委員、三尾委員、宮田委員、村上委員、佐藤本部員
    【事務局】 素川事務局長、内山次長、関次長、小川参事官、大路参事官
  4. 議事:
    • デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会からの報告
    • 政策レビュー及び第3期基本方針の在り方について

○久保利会長 おはようございます。定刻でございますので、ただ今から第8回コンテンツ・日本ブランド専門調査会を開催いたします。本日は御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会からの報告並びに政策レビュー及び第3期基本方針の在り方について検討いただきたいと存じます。
 まずは、先月27日に報告書を決定いたしましたデジタル・ネット時代における知財制度専門調査会について報告いただきたいと思います。
 事務局から御説明願います。

○関次長 それでは、まず最初に配布資料の確認をさせていただきます。
 本日の配布資料でございますけれども、番号を振ってありますものが1から6まででございます。資料の1と2が、デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について、デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会の報告でございますが、資料の1が横長の概要のものでございます。それから、資料の2が報告書の本体でございます。
 それから、資料の3、一枚紙でございますが、放送番組の二次利用に関する権利処理の円滑化のための取組について(案)でございます。
 それから、資料の4と5、これは政策レビューの関係でございますが、資料の4が政策レビュー及び第3期基本方針の在り方に関する検討の進め方と基本的考え方について、横長のものでございます。それから、資料の5でございますが、これまで講じてきた施策の概要と検討の視点について(案)、A3判の横長のものでございます。
 それから、資料の6といたしまして、村上委員から御提出いただいた資料でございますが、放送番組のネット配信に関わる権利処理についてという資料でございます。
 それから、資料番号を付してございませんけれども、関本委員から御提出いただいた資料が2点ございます。1つが橙色のリーフレットでNHKオンデマンド、それからもう1つは横長の資料でございますけれども、1枚目がNHK動画提供のビットレートとなっております2枚組の資料でございます。
 それでは、資料の1に基づきまして、デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会の先月27日にお取りまとめいただきました報告書につきまして、御説明させていただきます。
 まずこの専門調査会でございますが、先生方も御案内のとおりでございますけれども、確認のために申し上げさせていただきますと、本年3月に設置されたものでございまして、委員の先生は全部で12人、中山先生が会長でございます。
 今までの経過といたしましては、本年5月の段階で検討経過報告をお取りまとめいただきまして、それにつきましては知財計画2008にも反映をされたところでございます。それ以降さらに審議を重ねていただきまして、先月の27日、11月27日にこの報告書をお取りまとめいただいたというところでございます。
 まず1ページを御覧いただきたいと思います。全体の背景的な事項、それから検討いただいた事項について書いてございます。検討事項は1ページの下にございます3つでございまして、コンテンツの流通促進方策、権利制限の一般規定、それからネット上に流通する違法コンテンツ対策の強化ということでございます。以下順に御説明を申し上げます。
 まずコンテンツの流通促進方策でございますが、資料の2ページを御覧いただきたいと思います。
 問題の所在でございますが、ネット上のコンテンツ・ビジネスについては、音楽など一部のものについては流通が進んでいるものの、特に放送・映画等の動画コンテンツの流通は十分に進んでいない。その原因の一つとして上げられているのが、コンテンツの権利処理コストということでございますが、それを低減するための新たな方策を講じるべきではないかということでございます。
 その2ページの下には、権利処理の状況を分野ごとに書いてございますけれども、レコード・CD、それから映画につきましては、制度上、実態上、権利が集約されておりますので、大きな問題がないということでございます。
 これに対しまして、放送番組、左下でございますが、これにつきましては製作段階においてその後の利用を含めた契約がほとんど行われてきておらず、また放送事業者に権利が集約されていないため、契約ルールが成立していない分野や団体に属していない権利者との間で、権利処理が滞っているということでございます。
 なお、2ページの右下、ユーザー・コンテンツ、これはユーザーが創作するコンテンツのことでございますけれども、これにつきましては、最近音楽の集中管理団体における取組でございますとか、映像コンテンツにおきましても二次利用可能なコンテンツを積極的に提供するといった取組も進められておるところでございまして、ユーザー・コンテンツについて権利者からの許諾が得られやすい環境整備をする取組が一層進展することが期待されるということでございます。
 続きまして、3ページを御覧いただきたいと思います。検討結果でございますけれども、これにつきましては2段階でお示しをいただいております。
 1つ目は、契約が円滑に行われるような取組の促進を図るということでございます。
 それからもう一つが、契約促進の取組による権利処理の進捗状況等を踏まえ、多角的観点から適宜法的対応の検討を進めるということでございます。
 その契約が円滑に行われるような取組の促進ということでございますけれども、これは3つの策をお示しいただいておるわけでございます。一番下の絵で黄色で囲ってある部分でございますけれども、1つが分野ごとの集中管理を促進するということ、それから2つ目が関係省庁の支援のもとで、コンテンツの特性に応じた標準的な許諾条件を契約ルールとして定めるということでございます。それから3つ目といたしまして、放送につきまして製作段階において、その後の利用を含めた契約を行っていただくよう努力を促すという、この3つでございます。
 それから、続きまして4ページを御覧いただきたいと思います。検討事項の2点目の権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入ということでございます。
 これにつきましても、問題の所在というところでございますけれども、近年のデジタル技術や情報通信技術の発展を背景に、従来想定されなかったコンテンツの利用形態が出現しているが、現行の著作権法は個別具体の事例に沿って、権利制限の規定を定めているため、これら規定に該当しない行為については、たとえ権利者の利益を不当に害しないものであっても、形式的には違法になってしまうということでございます。
 その下、真ん中辺りでございますけれども、近年の技術革新のスピードや変化の速い社会状況を考えれば、個別の限定列挙方式のみでは適切に実態を反映することは難しく、著作権法に定める枠組みが社会の著作物の利用実態やニーズと離れたものになってしまうということでございまして、具体的な観点といたしましては、その下に示してあるところでございます。
 続きまして、5ページを御覧いただきたいと思います。これにつきましての検討結果でございますけれども、権利者の利益を不当に害しないと認められる一定の範囲で、公正な利用を包括的に許容し得る権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)を導入することが適当であるというお取りまとめでございます。ただし、一般規定の導入に当たってはということで、4点留意事項を示していただきまして、それを踏まえて実際の規定振りを検討する必要があるのではないかという御指摘でございます。
 それから、続きまして6ページを御覧いただきたいと思います。6ページ目からが検討事項の3点目、ネット上に流通する違法コンテンツへの対策の強化ということでございますが、これは細項目が4つございます。
 以下順に御説明いたしますと、1点目が、コンテンツの技術的な制限手段の回避に対する規制の在り方についてでございます。問題の所在でございますけれども、映像の視聴・プログラムの実行といったアクセスを技術的にコントロールする手段、アクセス・コントロールでございますけれども、これを回避する機器の頒布等に関連する経済的な損失は、違法コンテンツのダウンロード等と相まって拡大しており、これを防止するための措置を講ずるべきではないかということでございます。
 具体例といたしまして、そこにゲームソフトについて書いてございますけれども、ゲームソフトについて申しますと、違法なゲームソフト、違法にアップロードしてそれをダウンロードした違法なゲームソフトは、通常であれば正規のプレイヤーではそれを楽しむことができないようになっておるわけでございますけれども、これに回避装置を装着することによって、プレイが可能になるということでございます。
 これに対する規制といたしましては、現行法で言えば不正競争防止法があるわけでございますけれども、不正競争防止法につきましては、やはり規制対象の機器等が限定されていると。それから、著作権法におきましては、コピープロテクション等の禁止行為がございますけれども、アスセス・コントロールについては規制がないということでございます。
 これについての検討結果でございますけれども、現行制度の実効性の検証を行い、コンテンツの経済的価値を損なうような行為については、国民の適切な情報アクセスの機会の確保や国際的な動向にも留意しつつ規制の在り方を見直し、違法ソフトの蔓延を防止するための何らかの措置を講ずることが必要であるというお取りまとめでございます。
 それから、2点目がインターネット・サービス・プロバイダの責任の在り方についてということでございます。7ページを御覧いただきたいと思います。問題の所在でございますけれども、ネット上の著作権侵害行為、その発生時においてインターネット・サービス・プロバイダが負う損害賠償責任につきましては、プロバイダ責任制限法により一定の範囲で免責されているわけでございます。
 しかしながら、動画投稿サイト等あるいは携帯電話の「着うた」違法サイトなどを通じたネット上での新しいタイプの著作権侵害が増大しており、プロバイダの責任の在り方が問題になっている。
 このため、著作権侵害の対策、それから健全な通信サービスの運営といった観点から、プロバイダ責任制限法や著作権法を見直し、新たな方策を講じるべきではないかということでございます。
 現状をそこに書いてございますけれども、事業者それから権利者の自主的な取組によりまして、違法なファイルにつきましては、要求をすれば、請求をすればそれが削除されるということができておりますけれども、運営事業者、プロバイダから見れば責任の範囲というのが明確になっていないということでございますし、権利者の側から見れば侵害の減少には必ずしもつながっていないのではないかということでございます。
 これについての検討結果でございますけれども、プロバイダと権利者等による自主的な取組を発展させることと併せて、制度上の見直しについても検討を行い、実効性のある方策を構築することが必要であるということでございまして、具体的には著作権侵害防止の観点から、動画投稿サイト等特定のプロバイダには、合理的な範囲で標準的なレベルの技術的な侵害防止措置の導入を義務付ける。それから、著作権侵害防止措置を導入していること等、一定の要件を満たす事業者については、損害賠償請求や差止請求などを受けないこととする明確な免責規定を設ける、こういったことが考えられるのではないかというお取りまとめでございます。
 それから最後、8ページを御覧いただきたいと思います。違法コンテンツ対策の3点目でございますが、著作権法におけるいわゆる「間接侵害」への対応ということでございまして、この間接侵害と申しますのは、侵害にかかる場所でございますとかツールでございますとか、そういうようなものを提供する行為というふうにお考えいただきたいわけでございます。
 これについての問題の所在でございますけれども、いろいろなサービスが新たに登場しておるわけでございますけれども、そういった中には従来では見られなかった侵害行為の幇助的な行為も存在するということでございます。
 したがいまして、ユーザーの著作権侵害を助長するような行為を抑制し、かつ新たなサービス等を提供する者の予見可能性を確保するための制度的な対応が必要ではないかということでございまして、これにつきましての検討結果は著作権法上の、いわゆる「間接侵害」の明確化に関する検討を早急に進め、行為主体の考え方を初め差止請求の範囲を明確にすることが必要であるということでございます。
 最後が、国際的な制度調和等についてということでございまして、デジタル化、インターネットの普及によりまして非常に問題が複雑化しておるわけでございますけれども、こういった中で、著作権侵害に関する司法救済等の国際的な制度調和を進めるべきではないかということでございます。
 これについての検討結果でございますけれども、国際裁判管轄の問題については、国内法の整備に向けた検討が進められているところであり、これを踏まえ準拠法も含めた今後の国際的な制度調和を図っていくことが必要であると。それからもう一つ、海外における侵害対策については、ACTAの早期実現に向けた取組を進めるとともに、海外の政府や事業者に対し、関係省庁と民間が連携して日本のコンテンツの適正な保護に向けた制度面・運用面での改善を行うよう、引き続き積極的に働き掛けることが必要であるというお取りまとめでございます。
 以上、ちょっと長くなりまして恐縮でございますが、デジネット専門調査会の報告の概要を御説明させていただきました。

○久保利会長 ありがとうございました。
 それでは、同専門調査会会長でいらっしゃいます中山委員からコメントをお願いしたいと思います。

○中山委員 ファッションとか食について、私は門外漢で沈黙してまいりましたけれども、この問題は専門でございますので、感想のようなことを申し上げたいと思います。具体的な内容は今、関次長が申し上げたとおりでございまして、それに付け加えることはございません。したがって、全般的な考え方について少し申し上げたいと思います。
 現在、日本のコンテンツ産業の伸び率は世界の伸び率を大きく下回っておりまして、世界的に見れば地盤沈下を起こしております。世の中すべて大きく変わっておりまして、それに従って、実は法律の世界でも非常に大きな変化を起こしております。会社法なんかも昔の面影もないぐらい変わっておりますし、民法も明治以来、今現在大改革を進行中で、もうじき新しい法律ができると思います。独禁法も変わっておりますし、行政法なんかの基本的な考え方も変わっていると、すべての法律が変化を起こしている。その中で、最先端を扱う知的財産、特に著作権、デジタルを扱う著作権というのは最も変化をしなければいけない分野だと考えております。
 表から見ておりますと、知財戦略本部ができて、華々しく変わっているように見えるのですけれども、私の目から見ますと、どうも知的財産、特に著作権の世界というのは保守的でありまして、デジタルによる変化というものを非常に甘く見て、古い概念から抜け出すことができないという状態にあるように見えるわけであります。
 著作権法を取り巻く環境というのは、革命的な変化を遂げているわけであります。この変化に食らいついていかなければ著作権法の将来もないし、あるいはコンテンツ・ビジネスの将来もないと考えております。
 コンテンツを大きく回し、より大きく利用される、そこから得られた利益を、権利者を始めとするすべてのステークホルダーに還元するという、その抜本的な方策を考えなければいけないわけです。
 現在問題になっている、例えば死んだ後70年後をどうするかなどということは本当はどうでもいいんで、現在この権利者に対してどういう利益を十分に還元するか、その利益をどこから生み出すか、これを考えなければいけないと思っているわけであります。
 日本のコンテンツ、特にエンターテイメント関係のコンテンツは巨大マスメディア、特にテレビの宣伝広告費によって賄われている。つまり民間企業から広告費を集めて、それがエンタメ業界に流れているわけですけれども、現在はテレビも新聞も、もう昔日の面影はなく赤字のところが増えているわけであります。
 そうなってまいりますと、現状のままでいくとコンテンツ、エンターテイメントコンテンツに関する資源というものは枯渇してくるわけです。ここで臆することなく、世界に先駆けて新しいビジネスを展開し、そしてその利益を先ほど言いました権利者を始めステークホルダーに還元をするという、この方策を何としても考えなければいけないわけであります。
 しかるに、現状はブロードバンドあるいは携帯といったインフラは、日本は世界一かもしれませんけれども、その中を通っているコンテンツは先ほど言いましたように、世界的に見れば日本は地盤沈下を起こしているわけでありまして、しかし多くの関係者は何かやろうと思うと、あれはだめ、これはだめという具合で、結局、著作権法が新しいビジネスを阻害しているという面も否定できないだろうと思っております。
 今こそ、著作権の分野でも大きな変化に対応した改正というものを行い、少なくとも外国ではできるけれども日本ではできない、そういうビジネスがあってはいけない、日本はやはり世界に先駆けて新しいビジネスを展開できる、そういう環境を作っていく必要はあるだろうと思います。
 そこで、この戦略本部こそが万難を排して、その先頭を切って、コンテンツ振興のための障害を取り除くというための努力をしてほしいと思います。そして、今、関次長から報告がありました、このネット時代における知財の在り方、まさにこれをきちんと実行してほしいと。特にフェアユースを始めとするいろんな諸方策、ぜひ実行してほしいと考えております。
 以上です。

○久保利会長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして先ほどの専門調査会の報告の中で、放送番組のネット配信について、権利処理が円滑に行われるような取組を進めるべきだという結論が示されておりまして、この点については民間での取組を進めることが重要と考えますので、これに関連した今後の取組について、事務局から御説明願います。

○関次長 それでは、資料の3を御覧いただきたいと思います。
 放送番組の二次利用に関する権利処理の円滑化のための取組について(案)ということでございます。
 その資料につきましては、この専門調査会として、こういう進め方でよろしいのかということについて、御確認をいただければという趣旨の資料でございます。
 趣旨でございますけれども、放送番組のネット配信に関し、様々な権利処理が円滑に行われる仕組みを整備することを目指すということでございます。
 2の検討課題でございますけれども、放送番組の権利処理に係る昨今の動向等を踏まえ、関係者の合意に基づき集中管理の拡大や契約ルール(標準的な許諾条件)の形成を図るということでございます。
 3番目に検討体制といたしましては、映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会に協議を依頼するということでございます。この検討委員会につきましては、平成18年10月、2006年10月に設置されたものでございますけれども、この専門調査会の会長である久保利先生が会長をお務めになっていらっしゃる会議でございます。映像に関する実演に関して契約の自主基準やひな形を策定するために発足した検討委員会でございますので、そこに協議を依頼させていただいたらどうかということでございます。その委員会の取組につきましては、私ども事務局それから総務省、文化庁、経済産業省が一体となって支援するということでございます。
 4はその上で、この専門調査会にその進捗状況につきましては適宜報告をいただくということでございます。冒頭申しましたように、デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会の報告を受けて、こういった形で具体の取組を進めさせていただいてよろしいであろうかということでございます。
 私のほうからの説明は以上でございます。

○久保利会長 ありがとうございました。
 この映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会というのは、平成18年に各権利者団体相乗りで、どういう契約を作っていくべきかという、問題を含めて経団連に事務局を置きましてスタートいたしました。
 その後、この放送問題について検討をする予定でおりましたけれども、ただ今の中山委員会等々ができましたものですから、少し具体的な検討というのをお休みしておりました。私が会長をしておりまして、数多くの業界代表者並びに弁護士等々が関与している検討委員会でございます。
 つきましては、今事務局の提案のように、この検討委員会に協議を依頼するということでよろしいかどうか、この専門調査会としての御意見を取りまとめたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
 中山先生。

○中山委員 基本的にはよろしいかと思いますし、自由主義経済のもとにおいては、自由な契約によってうまくいくというのは最も理想的なのですけれども、しかし、この問題には常にアウトサイダー問題というのがあるわけです。この団体に全員が加入すれば理想的なのですけれども、アウトサイダー、特に大物なんかのアウトサイダーがいますと、それを無断で利用すると10年間の懲役なんですね。アウトサイダーを一体どんなふうに考えるのかという、これは実はこの問題だけじゃなくて、著作権法のあらゆるところで問題になってくるわけですけれども、このアウトサイダーをどうお考えなのでしょうか。

○久保利会長 この映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会ではどう考えているかということですか。

○中山委員 つまり、ここでアウトサイダーのことを一切触れられていないものですから、どういう考えなのかをお伺いしたいと思いまして。

○久保利会長 では、そちらのほうの会長として申し上げますと、中山先生がおっしゃっている問題意識、全くそのとおりでございます。
 問題は、それではアウトサイダーに対してどういう対応をとれるのかです。もちろん一つは個別契約という形でアウトサイダーがインサイダーに入ってくれればいいわけですけれども、別に団体に加盟しなくても。ただ、そうならないという状態の中で、それに対して一体どうしたらいいのか、それこそ強制許諾という話までありますけれども、そういうことでいいのか、それではまずいのか、そこをまさに検討しなければいけないところでございますし、一方で、これから御説明のあります関本委員のところでも、いろいろ御苦労されながら前へ進んでいらっしゃいますし、村上委員のところでも非常に今御苦労されながらも前へ行こうと、こういう流れがありますので、その辺の実務的な流れも見ながら、そしてまた中山委員会のお考えも受け入れながら具体的にどう進めていくか。これは早くやらなければいけないというのは、中山委員おっしゃるとおりでございますので、早急にそのあたりを調整しながら、アウトサイダー問題を含めて解決をすると。これを除外するつもりはありませんので、それも含めて検討をすると、こう考えております。
 では、この検討委員会というところへ依頼をするという結論はよろしゅうございますか。特に御異議がないようであれば、そうさせていただきたいと思いますけれども。
 ありがとうございます。では、そういうことで具体的に進めてまいりたいと思います。早急に進めてまいりたいと思います。
 それでは、最近新たにNHKオンデマンドが開始されておりますので、参考までにNHKにおける放送番組のネット配信の状況について、関本委員から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○関本委員 関本です。よろしくお願いします。
 12月1日からNHKオンデマンドをスタートいたしました。BBCは4、5年かけて準備をして大宣伝をしてスタートしたのに比べまして、私どもは放送法が改正されてから半年余りで許諾を含めて、あるいはシステムを含めて作りましたので、バタバタの開局でありましたが、このパンフレットに書いてありますけれども、サービスとしてはインターネットでのサービスと、J:COM、アクトビラ、ひかりTVなどのIPTVのサービスの2つでやっております。
 見開いていただきますと、いわゆる見逃し番組、正確に言いますと、翌日の大体6時ぐらいがメインの切り替えで、ニュースについてはPC系は放送から2時間後、IPTVはちょっと暗号化に時間がかかりまして、これも技術的な問題ですが6時間後から配信をしているというふうになっております。
 それから、特選ライブラリーと書いてありますのは、過去10年、20年含めた昔の番組の中で、NHKで一番話題になったものを配信しようというもので始めております。
 次の動画提供ビットレートをちょっと書かせていただきました。PC向けについては、NHKの今までのインターネットは大体480キロぐらいの動画を出しております。この間、ニコニコ動画さんにちょっと生中継で僕が出たんですが、これもニコニコ動画さんも大体500キロぐらいでやっていらっしゃるようです。
 私どものサービスですとPC向けの低ビットレートで768キロ、高ビットで1.5メガで配信をしております。このために何が起こっているかといいますと、XPのバージョンの11にアップグレードをしていただかないといけないので、ユーザーさんがそれになかなか対応するのがちょっと大変だと。それから、DRMについても相当厳しい制限をかけなきゃいけない、前に団体さんとの約束がありますので、それもアップグレードしなきゃいけないというので、訪問者の方の中で、そこであきらめちゃう人も結構いて、ここのところをどうやって周知していくかというのが問題になっております。
 それから、テレビ向けのアクトビラなどについては、ここに書いておりますように、アクトビラも光も7Mbpsで出しておりまして、御覧になった方もあると思いますけれども、40インチぐらいのテレビで見ますと、ほとんどハイビジョン放送とクオリティーは変わりませんが、放送と並べてみると若干違いがあるかもしれません。これだけで見ると、ほとんどハイビジョングレードで流されております。
 スタートしまして2週間ですが、利用客で言いますとパソコン系、テレビ系合わせて、およそ2万人の方。このうちパソコンの会員数もさっきのような条件がありましたけれども、1万人を超えまして、まあまあ順調なスタートかなというふうに考えております。ただ、地域別で見ると、東京が40%、大阪12%の大都会型で、まだ地方のほうにはなかなか普及していないなというのが現状です。
 ページビューで350万ページビュー、訪問者で35万件ありました。ビデオビューは12万回を数えております。大体サイトへの再訪問のパターンでいいますと、1日以内が45%、3日以内が20%で、見逃しは大体3日以内で推移していくと。人気の番組でいいますと、毎日若干ちょっとずつ見逃しは放送によって違うんですけれども、NHKスペシャルとか連続テレビ小説「だんだん」とか、「プロフェッショナル」みたいなやつがいい日もあったり、「クローズアップ現代」とか「経済最前線」みたいなやつが1位、2位に来たりとか、ばらつきは見逃しについてはあります。
 過去番組につきましては大体一定でありまして、大河ドラマ、まずNスペですね。Nスペの宇宙とかそういう大型、「映像の世紀」とか、それから大河ドラマの「翔ぶが如く」とかというのが主になっております。
 それから、権利処理、先ほどの話も若干関係があるんですが、映像大国の委員会で、まずこれは実演家さんの団体、放送局の団体さんとある種のルールを作って取り組みました。横に「見逃し番組」、「特選ライブラリー」と書いてありまして、上のほうに「プロ」、「アマ」というふうに仕分けしておりますが、まず見逃し番組については、権利者団体さんとほぼ合意を得ましたので、ここはほとんど問題なく進んでいます。ただ、調達映像、例えば写真とか映画の一部、そういうものについて一部のところでだめだとおっしゃるところがあったり、あるいは物すごいお金をふっかけられて、大河ドラマの出演者の全員のお金よりも高いお金を1枚の写真でふっかけられたりとかというのがありますが、ここもだんだん話していくうちに、もともと最初にお話ししたときに「我が社にはネット使用のルールがないんだ。」というのが結構あったんですけれども、それぞれの会社さんでルールを作っていただく、いわゆる独立系のところについてもルールを作っていただいていると。ただし、その業界の中で一番強いところが、大体高いことをおっしゃるというのが現状です。
 それから、特選ライブラリーのほうでいいますと、そんなに簡単ではなくて、例えば特に、これは世界的に問題になっておりますけれども、ある歌手の方がしゃべっていらっしゃるときは某プロダクションの許諾を得られればいいんですが、歌った瞬間にレコードの専属開放という、レコード会社さんの開放が要るので、見逃しのときには、ある種宣伝になるのでまあいいでしょうというので、早い段階で大体各社合意になったんですが、過去になるとレコード会社さんも音楽配信やっていますから、当初は商売でバッティングするので「何で敵に塩を送らなきゃいけないんだ。」という話になって、許諾を得るのは難しい状況でしたが、各社との交渉の結果、ほぼ合意できるようになりました。調達映像は金額面で相当開きがあって、まだ合意出来ない所があります。
 それから、アマチュアのところは大変苦労していまして、NHKの場合、「NHKスペシャル」とか「クローズアップ現代」とか、いろいろな番組が人気があるものですから、これについては見逃し系で言うと、僕はちょっと困っちゃったなと、これはちょっと想定外だったんですが、お願いをすると、「放送を見てから返事をします。」と。考えてみれば当然の話で、ドキュメンタリーで自分が映されていたらどう映されているかわからないので、印象が悪いとそんなもの1週間流されるのは嫌だ、だから放送を見てから許諾をしますというのは各番組に必ず3人ぐらいいらっしゃるんですね。今までのところは、この2週間で言うと、幸いなことにノーというのはなかったんですが、ここが見逃し系で言うとそういう問題が起こってくる。
 過去について言いますと、これはもう、その方を探すのが大変で、「新日本紀行」なんか、20年前、30年前の番組になりますと、NHKの受信料でも同じなんですが、大体年間300万人が日本では移動していらっしゃるんですね。転勤族もいますから全員がそうではないにしても、1,000万人近い方が移動していらっしゃる中で、そういう方の許諾を得なければいけない、これは法律的に得なければいけないかどうかわかりませんけれども、例えば昔は貧乏だったけれども、今は金持ちになっていて、その映像が出て、何だ、成り上がりだというのがわかったとか、あるいは昔、竹の子族で踊っていたんだけれども、今は非常にまじめな主婦で通っていたと。それが不良だったと噂されると、どうしてくれるんだとか、そういう様々な問題がありますので、必ず許諾を取るようにしておりまして、ここが相当手間暇がかかります。この辺のところはどうしていったらいいのかなというふうに思います。
 それから権利者さんでも、不明、特に写真家さんの方とかは多いんですけれども、実演家の方でも、大河ドラマで10年前以上の番組になると、いわゆる端役で出ていた方、でも名前はちゃんと載っていらっしゃる方で、10人ぐらい行方がわからない。これについては、CPRAさんで暫定的に、3年間は権利者団体であるCPRAがホームページで探しますと。それで現れなければ出していいですよと。NHKはCPRAさんにそのお金を供託しておりますという制度で今はやっておりますが、でも最後に書いてあるのは「訴えられたら放送局のせいですよ。」というふうに書いてありますので、若干この辺は心配なところはあります。
 それから、見逃しの場合は、最初からプロの実演家の方でだめだという方は少数いらっしゃるんですね、さっきの独立系(アウトサイダー)の中で。でも、それは最初から交渉しなければいい話なので、見逃し系は余り問題ないんですが、過去の番組になりますと、もう映っちゃっているものですから、特にこの10年、日本で人気のある「5人組」がだめだと言われると、大河ドラマ、一番売れる大河ドラマの多くが出せないというのが非常な悩みです。
 ただ、法律改正論よりも前に、僕らから見ると、ネットに熱心な光テレビをやっていらっしゃるようなところがコマーシャルで、その人たちを使っているわけですよ。通信系の配信事業者さんもその人たちを使っていらっしゃるんですけれども。そういうのを考え直してもらえれば、それは自由契約ですから、法律上何の問題もありませんよね。総務省さんのデジタルの普及もそのグループの方を使っていらっしゃるんですけれどもね。その会社さん自体はもう前向きになっていらっしゃって、フジテレビさんのやつはもうオーケーになっていらっしゃる。会社としては前向きに検討しているが、グループを統括している方が反対で許諾出来なかったと伺いました。とはいえ、ほんの一握りの方の為に法律を抜本的に変えなくてもその前にネット流通に積極的な方々が契約の範囲でできる事があるんじゃないかと、NHKの問題、経緯で言うと、僕なんかは個人的にそういうことを思っておりますが、そういう状況で今進んでおります。
 3か月ぐらいやってみないと、実はこの後もいろんな問題が多分出てくると思いますので、3、4か月やったところで具体的にはこういうところが本当に問題だということがわかってくるだろうというふうに考えております。

○久保利会長 生々しいお話、本当にありがとうございました。
 それでは、先ほどの資料3に関する説明あるいはNHKオンデマンドに関する御報告について、関連の深い村上委員、廣瀬委員、久保委員、角川委員及び同専門調査会に委員として御参加されました中村委員から、それぞれコメントがあればお願いをしたいと思います。
 各委員、いかがでございましょうか。
 では村上委員、お願いします。

○村上委員 村上でございますが、ではまず私のほうからちょっとお話をさせていただきます。
 冒頭、事務局のほうからお話がございましたデジタル・ネット時代における知財制度専門調査会からの報告につきましては、既に民放連のほうから十分なパブリックコメントを出させてもらっていると思いますけれども、本日は私のほうから、実際に番組のネット配信において権利処理を行っている民放局の立場からお話をいたします。
 ずっとこの会でも、私、番組のネット配信については風穴をあける努力を進めているというお話をしてきたと思うんですけれども、今、関本委員から非常に具体的なお話が出ましたように、NHKさんがビデオオンデマンドを始めたというようなことで、一つこれは大きな風穴が開いてきたんじゃないかと。
 私の資料6で、放送番組のネット配信の現状についてというのを書かせていただきました。すみません、これは「フジテレビ」というふうに書いてしまいましたけれども、「民放テレビ局」というふうに読み替えていただけたらと思いますけれども、放送番組のネット配信については動き出したというのは、もう実感として言えるのではないかと思います。
 今日の事務局からの検討課題ということで、放送番組の二次利用に関する権利処理の円滑化のための取組というのが出されました。正直、これはもう民放においても番組のネット配信において、権利処理をいかに効率的に行うかというのが、重要な課題になっております。
 ただ、今、関本委員のほうからもちょっとお話出ましたけれども、現在各権利者団体との間の権利処理のスキームに関しては、協議は非常に進み出しております。民民で協議が動き出しているということは言えるんじゃないかと思います。実は現在、実際的な現場の気持ちからいいますと、今はそこからさらにちょっと進んだ、次の段階に来ているということで、それは何かというと、今課題になっておりますのが、特定の権利処理スキームですね、いわゆる各団体とできているような、そういうものが存在しないで、個別の交渉が必要となる権利物への対応、今これが非常に煩雑な手間になっています。
 例えば細かいことですけれども、写真とか、さっき関本さんから話が出ていた映像素材、新聞・雑誌の記事というようなもの、あるいは外部から借用してきたものを番組内で使用する場合。それから非常に大きいのは、外国の音楽曲を使用する場合に、著作権を管理する出版社との個別交渉を行うという必要がございます。
 今、それについてはどういうふうに我々は対応しているかといいますと、配信する場合に、権利処理担当のスタッフが、台本の確認あるいは美術の打合せの段階から作業に一緒に入りまして、可能な限り製作過程に参加して、製作現場と一体になって権利処理が必要となる要素の確認を行いながら、ネット配信を前提にきめ細かい対応を行う。そういう必要が今出てきております。番組には多くの権利がかかっておりますために、こうした対応は必要なものだと思いますけれども、より効率的な権利処理業務が実現できないかということで工夫を重ねているという状況でございます。
 今回、事務局提案の中に放送番組のネット配信のための集中管理の拡大というのが、この資料3で上げられております。実際に、今お話ししたようなことを御認識していただいた上でお聞きいただきたいんですけれども、幾つかこの集中管理ということについては現場的には懸念を感じている部分がございます。
 それを資料6に書かせていただきました。放送番組のネット配信に関する集中管理、この検討に際して、ちょっと留意していただきたいということで言うと、まず一つは、どこまでの範囲をカバーするのかと。これはかなり明確にしておく必要があるんじゃないかということと、特に一番微妙な問題というのは、出演料あるいは脚本料といった具体的な金額は当然、各局あるいは権利者団体等の微妙な部分があるわけで、この辺を完全に外部の集中管理団体みたいなところにオープンにできるのかどうかという、非常な問題があるかと思っております。それから、2番目に適切な費用対効果が実現できるだろうかと。これは相当なコストが必要になるわけで、この辺についての検討も要るのではないか。
 そして何よりもう一つ、やはりどうしてもありますのが、権利者の意向の配慮ということでございまして、特にネット法の議論の中で、ここのところ「強制許諾」という言葉が出てきているわけですけれども、我々放送事業者もコンテンツの作り手の中に入る。その作り手の感覚としては、やはりコンテンツに対する感情といいますか「思い」、細かいことを言うと、今本当にそのソフトを出していいのかどうか、あるいは旬のものを出したい、当然、役者さんにおいては古い自分の映像を出したくないといったような、そういう細かいことも含めて、いろいろ検討しておかなければいけないことがあると思います。いわゆる効率化、流通ということを言うだけではなくて、個別の権利者の意向に対してのきめ細かい対応ができるスキームを構築してほしいと思っております。
 改めて言うまでもないんですけれども、コンテンツ流通を促進するということは、今中山委員もお話あったように、落ち込んでいるソフト産業をまたさらに上げるという、非常に大きな意味もあると思います。ただ、やみくもに古いものを使えばいいということじゃなくて、次の新しい生産につながる環境を作り出すためのコンテンツ流通、そういう意識をきちっと持って、我々もやっていく必要があるんじゃないかということを思っておりまして、そのようなことをちょっと検討していただきたいというお願いを出させていただきました。

○久保利会長 ありがとうございます。
 他の先ほどお名前を申し上げました委員から特にございませんか。
 廣瀬委員、お願いします。

○廣瀬委員 廣瀬でございます。
 今話題になっておりますところで、幾つか音楽事業者あるいは実演家に絡んだところがございますので、少し追加のお話をさせていただきたいと思いますが、まず関本さんの資料の2ページ目を御覧ください。それのプロとアマがございますが、プロのサイドで2つ整理されておられます見逃し番組のところと特選ライブラリーのところですね。
 見逃し番組のところは、多分、音楽関係では放送に準じたという発想で考えましたので、比較的スムーズに話が進んだのかなと思っておりますが、特選ライブラリーのところが、この見逃し番組と特選ライブラリーとどこが違うのかねというところがポイントでございまして、見逃し番組は放送だと、再放送だと、こういうふうに見ているわけでございますが、特選ライブラリーのほうはビデオオンデマンドだと、こう見ております。
 では、それは一体どこに違いがあるのかといいますと、ビデオオンデマンドは、サーバーの中にその映像ないし音源が固定されていると見ておるわけですね。なぜかというとユーザーのリクエストに応じて何度も再生可能、つまり放送は放送番組として時間の中で流される。一方、特選ライブラリーのほうは、視聴者の希望する、あるいは見たいときに見れるというところで、これはその映像なり音源が固定されていると、このように見るわけでございます。
 そうすると、一体そこで何が起きるのかと申しますと、実は音楽の世界を考えますと、演奏家とプロダクションがございまして、レコード会社がございまして、放送局がございます。放送に関しましては、実演家がその放送番組に出演いたしますので、これはプロダクションと放送局の関係で出演契約というのが決まってまいります。
 ところが一方、実演家ないしプロダクションとレコード会社の間には、それぞれの実演をメディアに固定するということに関しての契約がございます。実は、レコードというのは、この「固定をする」というところが契約の本質でございまして、レコードを流通させるというのはもう一つの役割でございます。そうなりますと、音源を固定するとなると、固定されたものは、これは実は実演家とレコード会社あるいはプロダクションとレコード会社の、固定に関する契約にかかわってまいります。これは、ではなぜ今どきこんな問題になるかと申しますと、もともとの契約の段階で、現状でございますから、CDとかレコードとか、あるいはDVDとか、及びそれに基づくデジタル配信に関しては契約書でうたっているんですが、放送で実演されたものが固定されるということは、そのもともとの頭の中にはないわけですね。固定されるということがなかったですから。したがって、そういうことが起きております。
 これはあくまで、関係事業者間の契約の問題でございますから、これは今度、中山先生の資料のほうを御覧ください。中山先生のほうの資料の3ページに「円滑な権利処理の取組の促進」とございますが、そこに「契約ルールの確立」というところですね。このアプローチで解決していけると、このように思っております。それが一番スムーズではないかなと思っております。
 というのは、事業者自身が賛成反対というよりは、むしろどのように解決したらいいのだろうかというところが現状の課題であるからでございます。それに当たりましては、個別事業者同士の対応というのは非常に厄介なものがございまして、至近な例を申し上げますと、先ほどNHKさんがオンデマンド配信等、見逃し放送がなされるということが決まりますと、他のテレビ局さんが一斉に何とかNHKさんよりも早くというようなお考えだと思うんですけれども、一斉に個別に御相談に見えます。
 御相談に見えますと、例えば音楽に関しまして言うと、それぞれレコード会社がございますから、それぞれのレコード会社とそれぞれの放送局さんと、ばらばらに話し合いをするというのは非常にばかげた話でございまして、たまたま私のところに御相談にお見えになった局さんには、実はレコード協会さんに御案内しまして、レコード協会と、それから今の局の方という御相談の取組を、実は今年の後半やってまいりました。
 おそらくは、例えば放送に関しては民放連さんと、あるいはレコード協会と、あるいは実演家でございますと、音事協でございますとか音制連がございますから、それぞれ関係団体で話し合いをするという時期に来ているんではないかと思います。それぞれ、どういうところが懸念事項かということは分かっているんですが、ではどのように落ち着けようかというところが難しいところなので、話し合いでこれは済んでいくだろうと思います。
 それから、先ほど中山先生からアウトサイダーの話がございましたが、実は、アウトサイダーでございますとか「5人組」の話でございますけれども、これはある種、私は仕方がないことかなと思っております。なぜかと申しますと、それぞれのビジネスにかなり関係しております。
 ちなみに例を申し上げますと、私どものところで若い男性のヒットアーティストがおるのでございますが、これは我々としてはどうしてもネット配信をやりたいんですね。ところが、アーティストサイドから申しますと、ネット配信は陳腐化が早まる、自分たちの、アーティストの陳腐化が早まるという考えのもとに、なかなかネット配信に踏み込んでまいりません。陳腐化が早まるという点も確かでございますが、昨今のようにネット配信の比率が高まってまいりますと、逆にアウトサイダーからインサイダーに来る利点というものも、かなり無視できないものがございます。したがいまして、やはり単に契約も大事でございますが、アーティストに還元される利点をアーティスト自身に理解させるべく啓蒙的な活動も必要かと、このように思っております。
 というわけで、放送関係のところで、特にビデオオンデマンドのところは関係者での一括のお話し合いをしていけば、かなり早い時期に落ち着くんではないかなと、このように思っております。

○久保利会長 ありがとうございました。
 検討委員会のほうは各団体、皆さんお入りになっていますので、そこで早急に今廣瀬委員のおっしゃるような形で団体的な合意にいければと考えています。また、今、アウトサイダーについての御見解承りましたので、それも考慮しながら進めてまいります。
 他にはいかがでございますか。
 では、角川委員お願いします。

○角川委員 権利の集中管理をどうするかという点で、契約による権利処理を円滑に進めていくという取組は、ネットビジネスの流通市場拡大にとって必要なことだと思います。そういう点で、今回のNHKさんの努力には敬意を表したいと思っております。また、業界の垣根を越えて、この問題はユーザー視点、国民視点で広く協議を進めていくことが重要であると思っております。しかしながら、ネットワークの進化に伴って契約だけではカバーできないところ、現行の著作権では対応が難しいところも、また多数存在していると思います。
 具体的には報告書の項目にありましたとおり、複数権利者のかかわる場合、権利不明者の場合、また写り込みへの対応、このようなことが契約だけでは進まないということが指摘されると思います。
 また、光ファイバーやネクスト・ジェネレーション・ネットワークといういわゆるNGNの普及に伴いまして、ネットビジネスの促進のためには資金を負担、リスクを負っている人たちにその権利を集中させて、利益を還元させることによって新たなコンテンツが多数・大量に製作されて流通も拡大していく。そういう好循環を生み出すべきではないかと思います。
 中山先生のお話にもありましたように、コンテンツ産業の最近の停滞というものは、ある面で20世紀で生まれたメディアが21世紀になってメディア力の衰退という現象が2008年、非常に顕著に出てきたことで、ここにやっぱり大きな歴史的転換点を今迎えていると思っております。円滑な権利処理のための契約ルールの協議と並行して、デジタル・ネット時代に対応した新しい法制度、新しい仕組み作りを併せて検討していくということをお願いしたいと思います。
 また、最後になりましたけれども、どうしてもこういうネットビジネスの話になりますと、権利者間の分配の問題が非常に大きくなるんですけれども、私たちが忘れてはいけないのは、現状、大量のコンテンツが海賊版として、パイレシーとして流れていって、それに対してどのくらい大きな損害になっているかということについては、正確な統計資料がないということです。
 しかしながら、映画の場合には、アメリカのMPAから、日本はパッケージの海賊版は大体5%程度だけれども、正規のネットにおけるパイレシーは、それの何倍かになるんだということの指摘がありまして、来年の3月にはその数字が出てくるというふうに言われておりまして、私は注目しております。

○久保利会長 ありがとうございます。
 久保委員、さっき手が挙がりましたが。

○久保委員 アニメーションの観点からちょっとお話をしたいと思います。2007年度、今回いただいた資料にございますが、アニメ産業全体が右肩下がりにがくんとシュリンクしてきております。恐らく他のコンテンツ産業よりも早く、コンテンツ不況がアニメ産業については表れてきているという認識を持っています。
 来年3月開催されます東京アニメフェアに関しても、現在出展数等の調整をしているわけですが、世界的な経済不調という状況の中で、海外からの出展社数が減っています。言い換えると、日本のアニメについては、クール・ジャパンの牽引者としての役割を果たせなくなってきている。大変苦戦をしているという状況です。
 特にアメリカの放送局が日本のアニメを買わないということを明言しています。これはネット上の海賊版が最大の理由です。日本で放送され24時間以内に英語版に翻訳され、海外のファイル共有サイト、交換サイトに上がっていくわけですから、「タダで見れるものをだれがお金を払うんだ。」という歓迎しない状況がアメリカでは続いています。
 また昨今は、中国のファイル共有サイトからアメリカへという、世界的な海賊版ネットワークがしっかり構築されていますので、たとえ、今からファイル共有サイト、新しいビジネスを正規に起こそうと思っても、隣でタダで売っている人がいるわけですから、これを解決しなければ新規のビジネスは成り立つわけがありません。
 今後コンテンツ企業として考えていかなければならないことは、次の4つです。1つはパッケージの効果的な販売。僕はパッケージは死んでいないと思っています。ですので、小売り、またネットにおけるパッケージの販売については、しっかりと買った方の満足感が得られるようなものを、吟味してつくっていく必要があるだろうと思います。
 2つ目は通信による販売。これはデータの無料、有料ダウンロードがあるわけですし、ファイル交換があるわけですから一概に販売とは言えませんが、ここに関しては広告モデルなど、様々なやり方で収益を上げることをやはり念頭に入れていく必要があると思っております。
 そして、3番目は海外への販売。これはコンテンツの著作権、利用権の販売をするわけですけれども、それについては展開するそれぞれの地域で海賊版の対策がしっかり行われなければならないという危惧を持っております。
 ただ、日本から直接海外に向けて英語版を作って出すということについては、非常にリスクが大きいと思います。海外の文化を知らない状況で、安易に英語版に翻訳し日本から発信しますと、それぞれの国の文化を知らぬ間に傷つけてしまうというようなことがございます。ですので、日本を起点にして英語版、海外版のコンテンツを発信するということに対しては、僕は抵抗感があります。やはり海外の幾つかの拠点をベースに、海外発信を行っていくということが必要になってくるんではないでしょうか。
 となると、海賊版対策に関しても海外の拠点からも行うということが必要になります。前にもお話ししましたが、中国で行おうとしますと、日本の中における著作権のある種の裏書きが必要になります。つまり「あなたは本当にこのコンテンツのホルダーなんですか。」ということを海外から問われた時、著作権登録ということが日本では一般的でないがために、なかなかそれが円滑に証明できるという実情がございます。ですので、この辺りの著作権登録のシステム、もう少し簡単に、もう少し安く、そしてそれがより一般的になるということをお考えいただいて、できれば、それが海外に出ていくコンテンツのシールドになればいいと考えております。ぜひとも御検討いただければなと思っております。
 以上です。

○久保利会長 中村委員、お願いします。

○中村委員 先ほど中山委員から制度面の意義を強調されたんですけれども、私はもう一つの側面を強調しておきたいと思います。
 資料1の2ページ目、3ページ目にありますように、この制度調査会では、放送コンテンツの流通促進というのが重要なテーマでして、その制度問題を活発に議論をしてまいりました。
 一方で、こうした議論に対するパブコメの意見を見ますと、制度問題以上に契約ですとかビジネスモデルの問題が大きいんだという指摘が非常に多く寄せられました。こうした声にもきちんと耳を傾けておく必要があろうかと思います。
 制度あるいは法令を動かすということに時間を費やすことは非常に重要なんですけれども、現下の情勢を考えますと、具体的な個々のビジネスを形作るとか契約環境を適正化していくとか、あるいは民間ベースで権利の集中管理を促進するといった、具体的な努力がより緊急かつ重要だと考えます。
 現実にも、先ほど報告がありましたように、NHKあるいは民放によるネットビジネスが活発化してきているといったふうに、今年に入って随分その情勢、業界も動いてきておりますし、あるいは総務省で議論してきました民間ベースのコンテンツ取引市場の実験も動いているということもありますので、政府としては、この制度調査会の提言を実行に移すとともに、そうした民間の動きを後押しして、具体的な成果をしっかりと検証していくという、制度面と実体面、ダブルの対応が重要だと考えます。
 以上です。

○久保利会長 ありがとうございました。
 他の方々で御発言の希望のある方は名札をお立ていただけますでしょうか。
 中山先生、お願いします。

○中山委員 NHKについてお伺いしたいのですけれども、BBCに比べると大幅に後れているとはいえ、これだけのことを短時間にやられたことには非常に敬意を表したいと思います。ただ、この権利処理に大変な時間とコストがかかったと思われますけれども、これは営利企業である民放でできるような労力、コストだったのでしょうか、その辺をお伺いしたいんですけれども。

○関本委員 2つあると思います。
 見逃し系でいいますと、実は権利の処理をしているのは担当のディレクターなんですね。要するに見逃しですから、放送の前に許諾を取らなきゃいけませんから、番組を作っている連中がその負荷でやっているわけですね。その負荷をどの程度とみるか。ここはなかなか難しいので、ネット権もお願いしますよと言っているだけの話ですから。
 過去の番組については、これはさっきも言いましたように、権利者を探したりとか何とかで結構時間がかかっています。民放さんの場合は、いわゆるドキュメンタリー系は、この前、経団連の話し合いの中でも、まあうちでやるとしたらドラマとか何とかなので、「新日本紀行」とかそういう番組も余りないし、そこはあんまり関係ないなという話を民放さんはされていたので、そこはNHK特有の負荷かなと思います。
 それから、さっきの写真とか何とかは、実は各社さんに交渉していくので大変だったんですが、そこはある種のルール作りができてくると、あるいは逆に各社さんが交渉しているときに、「いや、うちルールないから判断できないんだよ。」とおっしゃるところも結構あるんですね。ここのところがNHKが始めたことによって、各社さんはそれぞれ考え出されていて、ある種のルール作りを各社さんがやっていらっしゃるので、道筋の一つはできてきたのかなと。そこに今度は民放さんとかいろいろ入ってこられると、うちの考え方はこうだよというのをいろんな会社さんが考え出されている。そういう意味の最初のパイオニアとしては非常に努力が必要であって、これを民放さん、いきなりやれと言われたら、きつかっただろうなというふうには正直思います。

○久保利会長 よろしゅうございますか。
 今日は時間が30分足りない上に議題がいっぱいありまして、また後で御希望の方は発言の機会を与えられるかと思いますけれども、これまで6年間の政策レビューと第3期基本方針の在り方についての検討というのも、今日議論をすることになっております。そこで検討の進め方について、事務局から御説明を3分程度でお願いをしたいと思います。

○内山次長 資料の4を御覧いただきたいと思います。
 1ページ目でございますけれども、今のお話にございましたように、知財戦略本部が設置されて6年目ということで、第1期、第2期やってまいりました。いよいよ来年度から第3期ということでございまして、2ページ目を御覧いただきたいと存じます。
 目的のところにございますように、平成18年の本部決定に基づきまして、6年間の知財政策の実施状況、成果に関するレビューを行う。第3期の知財戦略の基本方針の在り方について検討を行うということでございます。既に10月から競争力専門調査会で創造、保護、活用、人材の各分野における政策レビューを進めております。本専門調査会におきましては、コンテンツ・日本ブランドに関して同様に政策レビューを行いまして、第3期基本方針の策定に向けて検討を行う必要がございます。
 検討の進め方でございますけれども、政策レビューを行うに当たっては、右に示した政策項目ごとに行うことといたします。そして、基本方針の策定に当たりましては、PDCAサイクルを機能させる観点から、可能な限り定量的な政策目標、評価手法を設定すべきではないかと考えております。また、評価については5年後とすることが適当ではないかというふうに考えております。
 政策レビュー項目でございますけれども、これは第2期の2006、2007、2008の推進計画に盛り込まれた事項を踏まえまして現時点で整理した項目となっております。本専門調査会関係では、2.の保護の(2)模倣品・海賊版対策の強化、4.のコンテンツの関係全般でございます。
 3ページ目を御覧いただきますと、第2期重点項目との関係がございます。左側の第2期の重点項目を見ますと、右側の今回の政策レビュー項目にすべて含まれておりますので、今回レビューを行うことによりまして、2期重点項目の各事項の現状の成果評価が同時に行うことができると考えております。
 4ページ目、5ページ目は基本的な考え方、総論にかかる部分でございまして、これは競争力専門調査会でも同様の御説明をしておりますけれども、まず環境変化につきましては、委員の皆様御案内のとおりでございまして、市場の変化の加速、経済グローバル化の進展と併せまして、4.にございますようにデジタル化・ネットワーク化の進展ということで、先ほど議論がございましたように新たなビジネスモデルの構築、知財制度の構築の必要性の高まり、またネットを利用した模倣品・海賊版被害の拡大と、こういう状況でございます。そうした中で真ん中、5.にございますように、昨今の金融危機・世界経済減速への対応ということで、コンテンツ・ブランドの振興により成長牽引と、こういう期待の高まりがあるわけでございます。
 最後のページでございます。今後の主な論点でございますけれども、2.にございますように国際的な制度調和・海外展開の促進ということでは、下から2番目の丸にございますように、対策強化のためにACTAの早期締結など外国政府・事業者へのより積極的な働き掛けが必要ではないか。また、コンテンツ産業の海外展開の強化が必要ではないかという点。それから、4.のデジタル化・ネットワーク化への対応でございますけれども、コンテンツ産業の市場規模の伸び率を見ましても、世界と日本は相当な格差がございます。したがいまして、コンテンツ産業、ネット関連産業の振興を図るためにどのような対策が必要か、またデジ・ネット時代に対応した知財制度を早急整備すべきではないかという論点がございます。
 最後に、知財への投資の拡大という点でございますけれども、左に主要国の無形資産投資のGDP比率がございます。我が国における無形資産形成への投資、その活用というのは欧米に後れているのではないかという問題意識がございます。コンテンツ・ブランドへの投資拡大や分野横断的な日本ブランドの海外配信力の強化が必要ではないかというふうに考えておるところでございます。
 以上でございます。

○久保利会長 ありがとうございました。
 そういうことで、ただいま説明のありましたとおり検討を進めたいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。
 特に御異議がないようであれば、その方向で進めたいと思います。
 それから続きまして、これまで講じてきた施策の概要と検討の視点ということで、関次長から資料5に基づいて簡単に御説明をいただきたいと思います。

○関次長 それでは、資料の5を御覧いただきたいと思います。
 これは、これまで講じてきた施策の概要と検討の視点ということについての案を示したものでございます。
 この資料の構成でございますけれども、5本の柱に分かれてございます。5つの項目でございますけれども、この項目については今、内山次長のほうから御説明をいたしました資料の4の2ページ、今回この専門調査会でレビューをしていただきたい項目、それを5つ並べたものでございます。
 以下、時間が押しておりますので、今後の検討の視点というところを中心に御説明させていただきたいと思いますけれども、資料の構成は冒頭申しましたように、これまでの取組及び現状、それからそれぞれの項目ごとに、これまでの政策の評価と今後の在り方の検討に当たっての視点というのを書いてございます。本日は、こういった現状分析、認識がどうであろうか、あるいは今後のこの視点というものの考え方がどうであるかといった点を中心に御意見を賜れればと思っております。
 それから、また今後の進め方について冒頭申し上げさせていただきますと、この点につきましては、来年2月の専門調査会で御議論いただいてお取りまとめをいただければと思っております。したがいまして、そういった意味でも本日御意見をいただければ、それを踏まえまして、かつ、この全体の中で調整をいたしまして、整理、肉付けをさせていただきたいというふうに思っております。
 具体の内容でございますが、まず1ページから4ページまでが新しい市場の拡大というテーマでございます。そのうち1ページ目、2ページ目がデジタル・ネット環境をいかした新しいサービスの促進ということでございます。これについての視点は、2ページの右下に書いてございます。デジタル・ネット環境をいかした新規ビジネスを創出するためにはどのような支援が必要か。それから、2つ目がデジタル・ネット環境をいかした新しいサービスを展開するための技術的課題への取組や制度的対応は十分かということでございます。
 それから続きまして3ページ、4ページでございますが、これが新しい市場の拡大の中の細項目の海外展開の促進ということでございます。これにつきましての視点でございますが、4ページの最後に掲げてございます。この2つでございますが、一つ目がさらに海外市場を拡大するためにはどのような方策が必要か。もう一つが、コンテンツ事業者の海外展開に対する支援は十分行われているかでございます。
 それから、続きまして5ページからでございますが、2番目の柱、契約環境の改善ということでございます。その中の小さい柱の1点目が円滑な権利処理のための環境整備ということでございまして、これの視点は1枚めくっていただきまして、6ページの左側の下でございます。2つございまして、集中管理の拡大や契約ルールの形成、権利処理に必要な情報の整備・公開などコンテンツの円滑な権利処理のための環境整備は十分か。それから、クリエーターへの適切な利益の還元が行われているかということでございます。
 それから、契約環境の改善の2つ目の柱が適正な取引の促進ということでございまして、これの視点につきましては、右下のところでございますが、発注書面の不交付や書面によらない契約などの旧来の取引慣行を是正するためにはどのような追加的措置が必要かということでございます。
 それから、大きな柱の3点目でございますが、世界中のクリエーターの目標となり得る創作環境の整備ということでございます。これについての視点でございますが、1ページめくっていただきまして、やはり2つお示しをしてございます。世界に通用する優れたコンテンツを生み出す創作環境が整備されているか。それからもう一つが、人材育成においては、雇用機会の確保等を含め、将来のキャリアパスを描けるような一貫した育成を行うべきではないかということでございます。
 それから、その次の9ページからが、柱の4点目、日本ブランドの振興ということでございます。これは、まさに現在御検討いただいているテーマでございますが、これについての視点は10ページ目の右下でございます。分野ごとの断片的な取組にとどまらず、分野横断的な取組を強化すべきではないか。それから、もう一つが省庁間及び官民の連携を促進するため官民の連携体制の構築が必要ではないかということでございます。
 それから、最後に11ページからが5本目の柱、模倣品・海賊版対策の強化ということでございます。小見出しが3つございます。1つ目が外国における対策ということでございまして、これの視点は右下にございます。外国市場対策として、多国間での枠組みづくりとともに、官・民の2国間ベースでの取組を一層強化していくためには、さらに何が必要かということでございます。
 それから、12ページからが国内における取組、対策ということでございますが、これの視点につきましては、13ページの左下を御覧いただきたいと思います。水際、国内での取締りの強化は成果を上げてきているか、もう一つが消費者の知財意識を高めるには何が必要か。特に若年層の知財意識は不十分ではないか。
 それから、模倣品・海賊版対策の強化の最後の柱が、インターネットにおける対策強化でございまして、これの視点につきましては、13ページの右下でございますが、インターネット上での模倣品・海賊版対策は十分か。特にオークション対策以外のインターネット上の違法対策は不十分ではないかということでございます。
 ちょっと現状の御説明を多少はしょらせていただきましたもので、大変分かりづらいものかもしれませんけれども、私からの御説明は以上でございます。

○久保利会長 ありがとうございました。
 そこで、この5つのテーマに分かれているわけでありますが、とりあえず最初に、まず最初の新しい市場の拡大、2番目の契約環境の改善、3番目の世界中のクリエーターの目標となり得る創作環境の整備ということについて、御発言のある方の発言を求めたいと思います。
 そして、その次に日本ブランドの振興という4番目の問題を取り上げ、最後に模倣品・海賊版ということで順次進めたいと思います。
 まず今の1から3について、御発言のある方いらっしゃいますでしょうか。
 どうぞ関本委員。

○関本委員 非常に多岐にわたっているので、全体としてはちょっとよく分からないところがあるんですが、この間もインターネットのビュー数が少ないんじゃないかという話をして、今日見て、5ページの「ジャパン・コンテンツ・ショーケース」のところで、登録コンテンツが2008年3月末現在380万件あって、1か月平均が1万ビューと書いてあるんですね。これどういうことかなと思って、最初数字の間違いじゃないかと思ったんですが、1万ビューということは、1,000人ですよね、訪問されているのは。380万あって1,000人しか訪問されていない。でも、あれ僕も見たんですけれども、結構いろんなリンクが張られていて、ちょっと信じられなかったんですが。
 こういうことが一方であって、その後のページに「放送コンテンツ取引市場構築のためのデータベース」と書いてあるんですね。総務省で多分やられているデータベース。何か同じようなことを片方全然見られていないのに、また片方でやるというのは、ちょっとどういうことなのかというのがよくわからなくてですね。
 この辺もこの間のジェトロさん、ビジット・ジャパンのことがありますけれども、ある種統合していって、よりよいものにしていったほうがいいのかなという気がしましたけれども。

○久保利会長 はい、わかりました。
 これは今、どなたか御説明できる事務局の方はいますか。誤字ではないですね。1万、間違いじゃないですね。
 決して誤字誤植ではないようでありますので、御指摘の点について、それでは協力して調査をしてどういうことなのか、今の関本委員のお考えも踏まえて事務局のほうで、他の省庁にもお話をしてみたいと思います。

○関次長 その辺データベースの取組ということで、5ページから6ページにかけて、幾つか書かせていただいておりますけれども、いずれにいたしましても、その辺は連携をとって進めていただくようにしたいと思っております。

○久保利会長 ありがとうございました。
 他にはどなたかいらっしゃいますか。では角川委員お願いします。

○角川委員 8ページ目の視点のコンテンツ関連人材の育成というところで、適切かどうかわかりませんけれども、世界に通用する優れたコンテンツを生み出す製作環境が整備されているかを問題として取り上げたいと思います。手塚治虫先生の名作「鉄腕アトム」の映画化が今アメリカで行われていまして、この間NHKのドキュメントで放映されたので、御覧になった方もいらっしゃると思うんですけれども、6,000万ドルという巨費をかけて「鉄腕アトム」がハリウッドの手でよみがえろうとしております。
 6,000万ドルというのは、60億円ですね。アメリカの題名「アストロ・ボーイ」が製作されてしまうと、本当に僕たちどうしたらいいんだろうと思います。申し上げたいことは、日本でもちろん「鉄腕アトム」は国民的なキャラクターですけれども、日本の代表的な手塚先生の代表作キャラクターであろうと、60億円かけて世界に持っていこうという人は、まずいないと思います。
 このCGアニメ大作は実は、実態としてはハリウッドと言っていますけれども、香港なんですね。香港のオタク少年が、お父さんが作ったドライフラワーの会社を精算して、その資金で「鉄腕アトム」を作っているんです。次は「ガッチャマン」をやりたいと言っているんですね。こういうふうに、もう世界の、日本のオタクが世界に広がっている現状の中で、日本のコンテンツは外国人とか、特にアジアみたいなところで行われていくことになるというふうなことを考えますと、ここの文章がちょっと虚しくなってきます。
 やっぱり僕らが本当にできないのが悔しいんですけれども、この世界に通用する優れたコンテンツを生み出すというところが、「世界市場に通用する」ですね。世界市場、世界マーケットに通用する優れたコンテンツを生み出す創作環境ですね、製作支援ですね。これは、もう本当に欠けているというふうに思います。
 従前は、より文化的な視点から新しい資金に恵まれないクリエーターに援助するということで、これは文化庁もかなり努力してくれております。しかしながら、そのことはそのこととして評価しながら、超大作を作れるような環境、製作支援をやはり国が制度的支援をするという視点が欲しいなというふうに思いました。

○久保利会長 ありがとうございます。
 中山先生。

○中山委員 ちょっとお伺いしたい。今60億円、香港の資本だとおっしゃいましたけれども、なぜ本家本元の日本の、日本に60億円投資しないでハリウッドに行っちゃったのか、その理由はどこにあるんですか。

○角川委員 これもよく話を聞いてみてわかってきたことなんですけれども、アメリカのメジャーが後ろについております。ドリームワークスのCG技術がバックアップをしております。併せて、やはりドリームワークスが、アメリカのハリウッドが築いたルート、世界マーケットに向けて販売していくことを戦略としているわけです。
 日本の場合には、日本から販売ルートを世界に持っていかなきゃいけないという点で、著しく対応が後れていると。そういう点で、もしこの人材育成という視点に置きかえますと、アメリカで持っている販売戦略に乗れるような人材は、もう日本には基本的には欠落していると。日本の海外戦略は始まったばかりです。アメリカのハリウッドが100年築いてきた販売ルートに乗せていくような人材が、日本は後れている。映像会社だけの問題ではなくて、もちろん映画会社も後れていると思いますけれども、併せてこのことは言えるんだろうと思います。

○久保利会長 ありがとうございました。
 時間がだんだん迫ってまいりましたので、次に日本ブランドの振興についての御発言を求めたいと思いますが、いかがでございましょうか。4番のテーマですね。特にございませんか。
 服部委員、お願いします。

○服部委員 この9ページなんですが、9ページの民間による取組ということで、これは取組の例としまして、世界料理サミットが2009年2月開催されます。現在、我々進めております。世界8カ国のトップの料理人と、そして東京で行うのですが、ファッションの世界ではパリコレだとかニューヨークコレクションや東京コレクションと言われているのはファッションの世界なんですが、それを東京コレクションというよりは料理の世界ですので「東京テイスト」という形で発信しようとしてやってきているわけなんです。
 今皆様のお話にも支援かということがありましたけれども、実は先日NHKの子会社が、今度民放も出資する日本国際放送という会社ができたんだそうです。そこの方がいらっしゃいまして、今までのNHKとまた違った形で御支援くださるというお話をいただいたんです。専門に世界に発信できるということなんです。大変ありがたいということだったんですけれども、実は予算が必要だそうで。
 それで、この予算をどこからとったらいいかということなんですが、NHK側からどちらかでスポンサーを御紹介いただけないだろうかと言われました。私どもは、この世界料理サミットを実現させるために、いろいろな民間企業にお願いしまして、お金をこの2年ぐらいで集めてきたんですけれども、そこの条件としては、もうこれ以上出さないよと釘をさされております。今回特に、御承知のサブプライムの問題があって、2、3か所のスポンサーが途中でおりちゃったんですね。そうすると、実は大中小規模の予算の掛け方でAランク、Bランク、Cランクに分けてました。Aだったらこのぐらいできるよ、Bランクだったらこのぐらいできるよ、ところが今Cがいいところで、それにさらにTV用の予算を出せということになると非常に苦しい。しかし、世界に発信させたいんですね。
 というのは、日本で行われるこの世界的なショウが、何が料理の世界で起こっているか、行われているか、みんなが知りたがっているわけなんです。それを一堂に日本で見られるわけですから、こういったものをどちらかでお助けいただけるところはないんだろうかと。こういうぐあいに、そういうぐあい、どこかに頼むと、これは意義があることだということで、御判断してくださるところというのは、自分で探せと言われれば探さなきゃいけないんですけれども。何かそういう、先ほどからお話を伺っていると、「アストロ・ボーイ」の話もそうですけれども、やはり日本サイドでお金出すんじゃなくて、他が出してくれればそれは価値として、また他に持っていかれるような気がするんです。残念ですね。国が出してくれないでしょうか。
 今回、いわゆる世界料理サミットがそれだけの価値があるかどうかは別にしまして、どちらかでこういうものを発信してくださるような、そういう意義を感じてくださる会社が、またお金を出してくれるところと、あとそれを受けてくれるテレビ会社がないだろうかなというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。

○久保利会長 村上委員、何かお返事がございますか。

○村上委員 うちもお金はないんですけれども、具体的に今、先生のほうからも御提案はいただいていると思いますので、何か、然るべきいい形はないかなということで検討はさせていただいております。

○久保利会長 はい、分かりました。
 12時を回りつつあります。最後に、模倣品・海賊版対策の強化について、これはもうずっといろんな議論を続けてきたところでございますが、最後にこれだけは言っておきたいという方がいらっしゃいましたらば、御発言していただきたいと思います。いらっしゃいますか。
 では角川委員、お願いします。

○角川委員 この模倣品については、結局先ほども委員の方々から御指摘があったように、中国からアメリカに流れたり、もう非常に大きな動きが出ております。そういった点で、まず実態として、時間があればということで結構ですけれども、その管轄をしております警察関係の話を、この委員会で1回お話を聞いたらいかがかなということを御提案したいと思います。
 その後に、ぜひこの今の模倣品、海賊版防止条約、11ページのところにございますけれども、ここで2005年の小泉内閣のときの提唱、そして2008年の北海道サミットの宣言というふうに書かれておりますけれども、この実態についても、あるいはこれからのロードマップについて、外務省からも話を聞きたいと思います。

○久保利会長 分かりました。御意見として承ります。要するに、官民連携あるいは各省庁連携ということが非常に重要だというふうに考えておりますので、御意見を適切に反映していくように考えたいと思います。
 なお、本日御議論いただいた政策レビュー及び第3期基本方針の在り方については、来年2月25日の第10回会合で引き続き議論する予定でおります。
 最後に私から2点ご報告がございます。
 先日この会議で了承いただきました日本ブランド戦略案の執筆にかかる作業チームにつきましては、太田委員、生越委員、関本委員、中村委員、廣瀬委員の5名にお願いをいたしまして、私を含めた6名で行うことといたしました。次回の会合で、戦略案を提出できるよう準備を進めてまいりたいと考えて、今鋭意努力をしているところでございます。これが報告の第1点でございます。
 また、12月の下旬に予定されている知的財産戦略本部の会合において、私から日本ブランド戦略の検討状況について報告することとなっております。報告内容、資料については私に御一任いただくということで、御了承いただければと考えますけれども、よろしゅうございますでしょうか。
 ありがとうございます。
 それでは、予定の時間を少し回りましたけれども、今日の会合をここで閉会いたしたいと思います。
 コンテンツ・日本ブランド専門調査会の第9回会合は、来年の1月23日金曜日、10時から本日と同じここ知財事務局会議室で開催する予定でございます。
 本日は御多忙のところ、誠にありがとうございました。