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コンテンツ・日本ブランド専門調査会
コンテンツ企画ワーキンググループ(第3回)議事録
  1. 日時:平成19年12月4日(火)15:00 〜 17:00
  2. 場所:霞が関東京會舘ゴールドスタールーム
  3. 出席者
    【委 員】 久保利座長、角川委員、木村委員、久保委員、里中委員、重延委員、高橋委員、中村委員、南場委員、原田委員、廣瀬委員、三尾委員、村上委員、和田委員、佐藤本部員
    【参考人】 石川参考人、尾木参考人
    【事務局】 素川事務局長、松村次長、吉田次長
  4. 議事
    1. (1) 開会
    2. (2) 優れたコンテンツの創造と海外展開について
      参考人: 社団法人日本音楽事業者協会 尾木 徹 会長
      株式会社GDH 石川 真一郎 代表取締役社長
    3. (3) 閉会

○久保利座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまからコンテンツ・日本ブランド専門調査会、第3回コンテンツ企画ワーキンググループを開催いたします。
 本日は、ご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございました。
 ちょうど前の事務局長でいらっしゃいました小川さんがお見えになりました。内閣広報官として一言ごあいさつをお願いしたいと思います。

○小川内閣広報官 前事務局長を務めさせていただきました小川でございます。大変お世話になりました。ありがとうございました。
 先月11月でございますが、内閣広報官ということで人事異動になりました。今までご指導賜りまして、ありがとうございました。
 今度は内閣広報官として立場が変わりますけれども、内閣の一員として知財の問題について引き続き関心を持って、またいろいろやらせていただきたいと思います。
 今までのご厚情に対しまして感謝申し上げ、お礼を申し上げたいと思います。
 私同様、後任の素川事務局長を何分よろしくお願いいたします。
 今日は飛び入りで申しわけございません。ありがとうございました。大変お世話になりました。

○久保利座長 ありがとうございました。
 それでは、今日は先般の専門調査会で示されました4つのテーマのうちの優れたコンテンツの創造、それと海外展開というテーマに基づきまして議論をいただくことになっております。
 まず事務局から優れたコンテンツの創造と海外展開についてご説明いただき、その後、参考人としてお呼びしているお二人からそれぞれご説明をお願いしたいと思います。
 それでは、本日参考人としてお呼びしているお二人をご紹介いたします。
 まず、社団法人日本音楽事業者協会の尾木会長でいらっしゃいます。

○尾木参考人 尾木でございます。

○久保利座長 次に、株式会社GDHの石川代表取締役社長です。

○石川参考人 石川です。よろしくお願いいたします。

○久保利座長 参考人の方々、今日はどうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、議事に入りたいと思います。
 まず事務局から資料に基づき説明をお願いいたします。

○吉田次長 それでは、資料1をごらんいただきたいと存じます。
 資料1は、今回のテーマでございます優れたコンテンツの創造と海外展開ということで、事務局の方でその検討の方向性やあるいは論点などについて整理したものでございます。
 時間の関係もございますので、簡潔に要点のみで説明させていただきたいと存じます。
 1枚表紙をめくっていただきまして、2ページでございますけれども、ここで、このコンテンツの創造と、それから海外展開の密接な関係について図示をしております。
 3ページの方に飛んでいただきますと、まずはコンテンツの創造ということでは、検討の方向性といたしまして、4つの方向性をここに整理をさせていただきました。
 第1点は、創作者への適正な利益配分でございます。
 第2点目は、人材育成あるいは人材確保のための取組の強化でございます。
 3点目が制作資金の調達方法の多様化と環境の整備でございます。
 それから4点目は、個人の創作等に係る適法環境の整備ということでございまして、これはまた後ほど少し詳しくお話をいたしますけれども、個人の創作、発表の場の拡大というものを受けまして、その支援方策をどういうふうにしていくべきかという点でございます。
 4ページをお開きいただきますと、これは、創作者への適正な利益配分というくくりでございますけれども、こういった利益配分の関係につきましては、既に流通促進のテーマのときにもいろいろとご議論いただいたわけでございますが、ここでは、下請取引の問題につきまして取り上げたわけでございます。
 平成16年に改正下請法が施行されまして、コンテンツ等の情報成果物作成分野におきましてもこの法律の対象となったわけでございます。
 その結果といたしまして、支払遅延等の規定違反の事例が大幅に減少してきております。そこに例示してあるようなことでございますけれども、効果が生じているということではございます。
 ただ、この下請の問題につきましては、紛争解決の際に裁判という手段によらず、もう少しソフトな解決手段はあり得ないのだろうかというところが一つ論点として出てきているのではなかろうかと思います。
 ということで、対応策の方では、第三者の仲裁・斡旋による裁判以外の紛争解決、いわゆるADR手段ということについて検討をしてみてはどうだろうかということでございます。
 5ページの方をお開きいただきたいと存じます。
 ここは、人材育成・人材確保ということでございます。
 ここでは、アジアを初めとして世界の優秀な人材を積極的に受け入れる、そして、日本をコンテンツ人材ネットワークの拠点とすると、こういった趣旨でございますけれども、その中で具体的な問題といたしまして、各種学校に準ずる教育機関における外国人学生の受け入れという問題を取り上げてはどうだろうかということでございます。
 こういった各種学校として認可を受けていない民間の株式会社立などのような教育機関の場合には、ビザの問題があるわけでございます。ファッション分野の民間教育機関におきまして、構造改革特区の提案を活用いたしまして、今現在、一定の要件を満たす民間教育機関で学ぼうとする外国人学生について、就学という形で在留資格、ビザを与えるようなことはできないだろうかということで、現在、関係省庁で検討をしておるところでございます。
 これは、将来的には、ファッション以外のコンテンツ、アニメ、映画、音楽などの分野におきましても同様のことが当てはまるのではなかろうかと思いますので、こういった点も論点として挙げられるのではなかろうかと思います。
 それから、6ページの方をお開きいただきますと、ここも人材育成・人材確保という観点で、ここは舞台芸術というところでございます。
 演劇子役の就労可能時間の延長ということでございますが、これにつきましては、去る平成17年に就労時間をこれまでの午後8時から午後9時までに延長をしたところでございますけれども、やはりまだこういったミュージカルなどにおけます子役の出演、さらに閉幕時間においても出演できるようなことを考えるということになりますと、9時ということではまだまだ十分ではないというご意見がございます。
 今日の資料の参考資料ということで、日本演劇興行協会からの要望書がお手元に配付されておるかと思います。冊子の上でございますけれども、こういうものでございますけれども、中身はこれをまだごらんいただければと思いますが、10時までに延長をしていただけないだろうかということでございます。先進諸国とのバランスからしても可能ではないだろうかというご意見でございますが、このあたりも検討の対象になるのではなかろうかというふうに思います。
 それから、7ページの方に戻っていただきたいと思いますが、ここは資金調達の関係でございます。
 資金調達の関係では、その資料の下の方にございますように、各種の法改正が行われました。LLP制度の創設ですとか、あるいは信託受益権の証券化などにつきまして道を拓くというようなことが行われてきたわけでございます。それを活用する事例が次第に出てきているわけでございますけれども、まだまだ十分ではないのではなかろうか。
 また、コンテンツファンドにつきまして、投資家が証券を転売できるセカンダリーマーケットが十分に形成されていないのではなかろうかとか、また、データが整備されていないのではなかろうかというような指摘があるところでございます。
 そこで、対応策としては、制度の周知あるいは金融機関など、業界関係者の意識の啓発、それから成功事例の集積ですとか、あるいはリスク評価の手法などの開発などで、情報開示といったところにもう少し取り組む必要があるのではなかろうかということでございます。
 それから、登録制度の見直しとして挙げておりますのは、著作権のライセンシーの保護ということでございますが、ライセンサーが倒産などをした場合に、ライセンシーの立場が不安定になるということで、そのために、対抗要件だとか、登録制度といったものを整備したらどうかという指摘があるわけでございます。
 8ページの方にお移りいただきたいと思います。
 これは、個人の創作等に係る適法関係の整備ということでございますけれども、ネットワーク上のコンテンツ共有サービスなどの利用によりまして、個人が創作したコンテンツを発表する機会といったものが増大をしてきておるところでございます。
 ただ、こういった場合には、それぞれの個人が他人の著作物を利用する場合に、自らが権利処理を行うということにつきましてはなかなか負担が大きいという問題があったり、また、他人の著作物を無断で利用しているというような実態があったりいたします。
 そこで、こういったものにどのように対処していくかということでございますけれども、対応策の方に書いてございますけれども、一つは、利用者の便益に配慮しながら、サービス運営者、こういった投稿サイトなどのサービス運営者と権利者の自主的な行動ということで、一つは包括的な許諾システムを設けるというアイデアはどうか。
 それから、技術的手段によるフィルタリングを使いまして、違法コンテンツの排除や適法コンテンツの許諾といったものを効率的に行うような仕組みをつくってはどうかということでございます。
 その際に、サービス運営者の法的責任の問題点を明確にするという課題も生じてまいりますし、また、3番目に挙げておりますけれども、そういった環境の中で個人が創作した場合のその著作権の所在、取り扱い、そういったものについても明確にすべきではないかということが論点として出てこようかと存じます。
 9ページから11ページにかけましては、今お話をさせていただきました取組に関しましての図ですとか、それから、ここ一、二年の具体的な動きについて整理をしたものでございます。また後ほどご覧いただければと思います。
 12ページに移っていただけますでしょうか。
 これは、海外展開ということでございます。
 コンテンツ産業の発展を図るという観点からいたしますと、海外展開の拡大ということが避けて通れない課題ということになってまいります。その場合に、海賊版対策をどのように行うかといったことも含まれてくるということでございます。
 そこで、13ページのところに検討の方向性というものを少し整理させていただいております。
 4つほど挙げておりますけれども、まずは情報の収集、提供というところでは、一つは海外の諸情報の集約、提供でございます。また、2つ目は、輸出額等の統計の整備ということでございます。
 それから、下の戦略的アクションというところでは、まず海外の需要を喚起するさまざまなアクションを活発にというところと、それから、その下には、現地のニーズに合わせた制作・販売戦略を立てるというあたりを挙げております。
 14ページ以降は、今申し上げました4つの方向性をさらに具体化したものでございます。
 14ページのところは、海外の諸情報の集約、提供と統計整備に係わるものでございます。
 右側の表にございますように、JETROなどを初めといたしまして、さまざまな機関が海外の情報といったものを調査などしているわけでございますけれども、こういったものにつきまして、もう少し有機的に、また共有化できるような、そういった仕組みを考えてみてはどうだろうかということでございます。
 また、輸出統計という問題につきましても、現状としましてはなかなかまだ整備が進んでいないといったことがございますので、こういったものをもう少し促進するような仕組みが必要ではないかという問題提起でございます。
 15ページの方をお開きいただきますと、海外の需要を喚起するアクションということでございます。
 アジア・ゲートウェイ構想がこの5月にまとめられたわけでございますけれども、その中にジャパン・クリエイティブ・センターの設立といったアイデアが出てきておりますが、こういった動きですとか、あるいはそれ以外のさまざまな企画展示のイベントを効果的に実施すること。
 それから、コンテンツ・ポータルサイトにつきまして、その内容の充実や多言語化をさらに促進をするということ。
 そして、JAPAN国際コンテンツ・フェスティバル、この右側の方に今年の概況が載せられておりますけれども、これを取引市場としてさらに機能強化したり、その開催方法について見直しを行っていくといったことについて案として挙げております。
 16ページの方をお開きいただきますと、現地のニーズに合わせた製作・販売戦略ということでございます。
 この関係では、国際共同製作の問題あるいはネット配信の権利を含めた権利処理の問題、それから、地域別販売戦略の問題、そういったものを取り上げてきております。
 それから、17ページの方をお開きいただきたいと思います。
 これは、海賊版対策の関係でございます。
 17ページは、これは政府レベルの取組ということでございますが、前々から話題になっておりますが、「模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)」の検討状況を少し整理しております。
 2005年のグレンイーグルズ・サミットにおきまして、小泉総理の提唱でこの条約の策定作業が始まってきているわけでございますけれども、最近になりまして、日・米・欧の3極の足並みがだんだんそろってまいりまして、そこにございますように、年内にアメリカ、ヨーロッパ、スイス、カナダ、ニュージーランド、メキシコ、韓国など、関係国による協議が開催をされ、実は今日からジュネーブで初会合が行われているというようなことでございます。
 この件につきましては、昨日政府の中の関係省庁連絡会議におきまして、岸田大臣のご出席のもとで条約実現に向けて関係省庁が連携をして推進をするということについて確認が行われたところでございます。
 18ページをお開きいただきたいと思います。
 ここは、民間レベルの取り組みでございます。
 CJマークでございますけれども、2005年にコンテンツ海外流通促進機構(CODA)の中にCJマーク委員会がつくられまして、このCJマーク事業を推進するといった形になっております。
 概要のところをご覧いただきますと、現在、このCJマークの商標登録も日本を初めヨーロッパ、アメリカ、香港、台湾において登録が完了いたしまして、中国、韓国において現在出願をしているというところでございます。
 それから、右側の方は、新チャンネル活用実証事例の検討ということで、これはまた今日参考人としておいでいただきました石川さんの方からお話があるかと思いますけれども、日本の新作・旧作アニメの作品を中国の会員制サイトでストリーミング配信をし、ビジネスモデルの有効性を調査したり、違法状況についての調査を行ったりというような事業を進めているということがございますので、こういったあたりも新しい動きとして注目すべきではないかということでございます。
 19ページから20ページにかけましては、これまでのワーキンググループあるいは第1回の専門調査会で海外展開の関係で出されました意見を少しテーマ別に整理をしたものでございますので、これはご覧いただければと存じます。
 21ページ、最後のページでございますが、これは、これまで第1回、第2回のワーキンググループで、国会図書館の蔵書のデジタル化の問題につきましてご意見があったわけでございます。
 去る11月29日に国会図書館の長尾館長と私ども素川局長との間で懇談を行いまして、国会図書館の要望をお伺いいたしました。これはその国会図書館からの要望を整理したものでございます。
 左側の方に国会図書館の現在の蔵書数、それから、そのうちデジタル化をされている資料点数などが記載されてございますが、右側の方に課題といたしまして、著作権処理の問題、権利者不明の場合ですとか、あるいは図書館間のネットワーク形成の問題などがございます。
 それから、予算の問題、そして技術開発、そして納本制度、これはデジタルデータという形での納本というのが可能なのかどうかという問題にかかわってきますけれども、そういったあたりが問題意識として国会図書館側から示されたということでございます。この点につきましては、引き続き知財事務局として国会図書館とも連携をしながら取り組んでいきたいというふうに思っております。
 それから、資料3をちょっとごらんいただきたいと存じますが、これは、知財本部のもとには、コンテンツ・日本ブランド専門調査会と、もう一つ、知的財産による競争力強化専門調査会というのが設けられておりますけれども、その委員でいらっしゃいます妹尾様からいただいたものでございまして、コンテンツ分野との連携をより強化したいという趣旨のものでございます。
 1点目は、コンテンツを製作するクリエイターの方々に最先端の科学技術知識と知見を提供する場と機会を積極的に設ける。
 また、2点目は、コンテンツ製作に必要な機器等の技術開発を積極的に支援するということで、科学技術とコンテンツといったものについて、両方が協力し合うことによって相乗効果が期待できるのではないか、こういったご意見でございますということで、ご紹介をさせていただきたいと存じます。
 以上でございます。

○久保利座長 ありがとうございました。
 それでは、次に、参考人からお話を伺いたいと思います。
 各参考人に対しましては、お話が終わった都度、質疑の時間を設けたいと思います。
 それでは、映像コンテンツにおいて重要な役割を果たす俳優、タレントなどのアーティストの発掘、育成やそのキャリア開発について、社団法人日本音楽事業者協会会長の尾木様からお話を伺います。
 では尾木様、よろしくお願いします。

○尾木参考人 尾木でございます。日本音楽事業者協会を代表して本日は参りました。
 私ども、実演家並びにプロダクションが、ネットにおける二次利用に非常に消極的であるというような一部間違った報道がなされたりしておりますが、この誤解を解くために私が今日参ったわけでございますが、こんなに大会議とは思わずに、いささか恐れ多いかなと思いながらご説明をさせていただきます。
 まずは、日本音楽事業者協会のコンテンツ二次利用についての基本的スタンス、現況、将来像などをお話しさせていただこうと思っております。
 まずは、放送番組などの実演家が出演するコンテンツの二次利用に対して、プロダクションの考え方、姿勢からでございますが、二次利用の前に、まずはネットにおける一次利用の促進をすべきであると思っておりまして、一次利用の話からさせていただきます。
 当協会では、平成15年12月より音楽事業者協会自主制作番組JAMETVをネット配信向けに製作、配信をスタートしております。現在では、協会ホームページを初め、YAHOO、ShowTime、モバHO!で配信中でございます。フジテレビとの協力番組では、CS番組でありました「アイドリング!!!」を他媒体クロスオーバー番組として、CS、地上波、インターネット、携帯電話に展開中であります。その他、地上波番組の「あいのり」のネット配信を行っております。
 このように、日本音楽事業者協会は自ら発信できるという特性、メリットを生かして、コンテンツ・クリエイターとして積極的に取り組んでいる姿勢をまずご理解いただきたいと思います。
 また、会員社には、配信などでの留意点を周知の上、フジテレビ及びその他の局とも各プロダクションレベルでの対応として一次・二次利用の契約も同時に進めております。
 二次利用につきましては、2002年からTBS、フジテレビ、テレビ朝日が中心となって設立されましたブロードバンド配信マネジング会社トレソーラの有料番組配信実験に協力し、番組の二次利用を了解した経緯があります。
 その後、2006年1月に在京キー局にネット配信に関するアンケート調査を実施しましたが、なかなかビジネスになりにくいという回答が大半でございました。そのころから、協会と放送局とのルール決めも進まない状況でありましたので、ルールが決定するまでの間は、先ほどご説明しましたように、会員社に留意点を周知の上、現在は新規出演時に各プロダクションレベルの対応となっております。この対応につきましては、在京キー局初め在名阪のキー局にも説明を行い、遠慮なく企画提案してほしい旨伝えてあります。
 一部に言われておりますように、実演家やプロダクションが二次利用に消極的だという誤ったとらえ方があるようですが、事はそういった次元ではなく、我々はビジネスチャンスとしてとらえてはおりますが、事業としてはまだビジネスになり得ない状況であるというのが実態だというふうに考えております。
 続きまして、具体例として、映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会への参加につきましてのご報告でございますが、先ほども触れましたように、日本音楽事業者協会としましても、みずから積極的に配信事業にも取り組み、また、放送局などとも配信等への一次・二次利用に取り組んでおります。
 しかしながら、IT分野での問題点も多く残されており、それらを解決していく意味でも、業界全体が周知するようなルールづくりが求められております。
 そういった意味も含め、映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会に私どもも参加し、本年2月には、放送番組に関する出演契約ガイドラインをとりまとめ、その後も細部を詰めるための研究会でネット配信に関するルールづくりや実演家の所在不明者への対応、事故等に関する補償問題などを検討しております。これも二次利用に積極的に取り組んでいるということの証であると考えております。
 続きまして、音楽事業者協会におきまして、実演家の著作隣接権に関する集中管理事業について一部お話し申し上げます。
 時系列的には、地上波番組を部分的に抜き出して別の番組に組み込むなど、目的外使用の許諾申請の管理を行ったのが始まりでございます。当初はワイドショーでの使用が対象で、どういうシーンを何の目的で使用するかを一件一件確認し、諾否を決定するシステムであります。
 その後、このシステムは、通常番組や特別番組に対しても実施しており、現在は全番組が対象となっております。
 このシステムに端を発し、地上波番組をCSやBS、海外に販売する番組販売への対応、番組をDVD化するためのビデオグラム化への対応、イベントなどでの番組利用などの管理のほか、先ほど触れましたネットや携帯への配信関連の流通の管理も行っております。
 その結果、NHK、民法各局との間には、二次使用、部分使用、目的外使用に関するルールづくりが行われ、お互いの立場を理解し合いながら、長い時間をかけて二次利用の促進とアーティストの保護へと大きくつながってきております。
 最後になりますが、日本音楽事業者協会は創立44年でございます。正会員社102社、賛助会員社1団体40社の大所帯となり、所管は経済産業省の社団法人であります。正会員とはいわゆる音楽芸能プロダクションでありますが、このプロダクションというシステムは、欧米にはない日本固有のもので、このシステムが日本を代表するアーティストを数多く輩出いたしました。
 プロダクションの主業務はマネジメントでございます。マネジメントを一言で表現するのは大変難しいのですが、基本的には、アーティストの発掘、育成、プロモーションを主たる業務とお考えいただいて結構だと思います。一口に発掘、育成、プロモーションといっても、そこには多くの時間、労力、資金を費やし、その価値や商業的利用をつくり出しているわけでございます。
 そんな手間も暇もお金もかけてようやく育ったアーティストは、コンテンツ制作には欠かせない素材であり、コンテンツ制作にかかわるすべての人達の財産といっても過言ではないかと思います。
 したがいまして、アーティストの育成またその保護は、コンテンツメーカーの必須の義務ではないかとも思います。ここが実は誤解を非常に生みやすいのですが、経験に基づく二次利用の許諾は、アーティストの育成に不可欠な要素であるというふうに考えます。また、この許諾は、マネジメントの高級技術であるとも思います。報酬請求権で一括りにされては二次利用オンパレードとなってしまい、アーティストの出演機会も激減し、過去映像によるイメージダウンでその存在すら危ぶまれてしまうのではないかと危惧しております。
 日本は、その経済力・技術力でインフラ整備はお手のものでございます。コンテンツ・インフラにおいても同様で、相当なレベルで整備がされておりますが、今後の課題は、その中身をどうつくるかであります。ただご承知おき願いたいのは、コンテンツの前にアーティストありきということで、すぐれたコンテンツの創造への道に、アーティストの大きな存在があることをぜひご理解願いたいと思いまして、本日のヒアリングに参加させていただきました。
 ご静聴ありがとうございました。

○久保利座長 どうもありがとうございました。
 ただいまのご説明につきまして質疑を行いたいと思います。
 発言のある方はネームプレートをお立ていただければご指名申し上げます。
 なお、1回のご発言はお一人3分程度でお願いをいたします。
 どなたかございますか。今の尾木さんのお話についてのご発言をお願いいたします。特にありませんか。尾木さんは、お時間の関係で、この質疑の時間を逃すとお帰りになられてしまうということですので、是非これだけは聞いておきたいという方がいらっしゃいましたら、どうぞお願いします。
 それでは、尾木さんありがとうございました。

○尾木参考人 どうもありがとうございました。

○久保利座長 次に、アニメーション等の次世代へ向けた映像文化を国際的なネットワークで提供しておられる株式会社GDH代表取締役社長の石川様からお話を伺います。
 では石川様、よろしくお願いいたします。

○石川参考人 了解しました。
 それでは、私の方からは、業界全体の海外展開に関しての報告を私どもの会社から求められていると思いますので、そこを中心に、弊社の現状の取組の簡単なご紹介と、そこから今学んでいる知見といいますか、こう思っているというところを、述べさせていただきたいと思います。私はもともと強くものを言う傾向にありますので、ちょっと刺激的なスライドになっていますが、そこはご容赦いただいてお願いしたいと思います。
 まず、最初に海外マーケットの現況を肌感覚で、これは定量的ではなく定性的にお伝えさせていただきます。
 次に、私どもの取組をご説明させていただいた後に、私も経産省さんとか知財事務局さんとか、いろいろなところとご一緒に参画してご協力させていただいているんですが、それを見ていての私の印象、それから、この後、注目すべきポイントというのはどこなんだろうかということを述べさせていただきたいと思います。
 まだ肌感覚なんですが、この辺、ちょっと厳しいことを申しますのでご容赦ください。お気に障りましたら後で文句言っていただければと思います。
 日本コンテンツでグローバル市場で意味のある影響力に達しているのは、恐らく私の感覚で言うとゲームとマンガ、アニメしかないと思います。モバイルは、実はシステムとしては行っているんですけれども、コンテンツとしては日本のコンテンツが出ていっているわけではないので、コンテンツとして見てしまうと弱いと思います。
 ただ、ゲームソフトは、1995年には全世界のトップテンのソフト会社のうちの8社が日本の企業だったんですが、今はもう2社しかいない。こちらにいらっしゃっているスクウェア・エニックスさんは、まだ残っておられるんですが、ほかの会社さんがどんどん脱落してしまったということだと思います。
 オンラインゲームは非常に伸びていますが、基本的には世界を席巻しているのは中国と韓国、アメリカでも売れているのはアメリカのゲームと韓国のゲームで、日本は全く入れていない。
 それから、マンガ・アニメに関しては人気があるものの、まだビジネスとしては非常に発展途上で、私どもも含めて収益がなかなか上がらず、海外では困っているという状況がまだ続いていると思います。
 また、世界的に、映像系ビジネスは、違法ネット流通というのが非常に大きなダメージを与えています。音楽業界で2002、3年に起きたことが今映像業界で起きているのです。私どもの領域のアニメディストリビューターでも、アメリカではファニメーションという会社を除いて、他の大手ディストリビューターはほとんど全員、撤退か倒産か大幅縮小というような状況に追い込まれている。
 欧州も、今ちょうど欧州、アジアがすべて前年比5割減近い大きなダメージを受けている状態になっています。
 今後の注目市場、逆にそれは上記の危機と表裏一体になっており、ブロードバンド、オンライン系が今非常に大きな注目をされています。オンラインゲームは、現時点の統計でいうとアジアが大体立ち上がってきており、今成長後期くらいに入っているんですが、欧米では、今が成長前期で一気にこれから伸びていくだろうと言われています。
 また、You TubeあるいはBitTorrentといったソーシャルネットワーク×ブロードバンド配信の流れは、過去、大きな違法ビジネスだったものがリアルビジネスに今シフトしつつある。先ほどの参考資料の中にもYou Tubeさんがいろいろ合法化に取り組まれているということが書かれておりましたし、またMPAさんなども積極的に取り組まれているというところに如実にあらわれているかと思います。
 それから、中国を中心としたアジアというのは、実はこれ、違法だ、違法だといっていますけれども、この前、一橋大学さんでマイクロソフトの代表としてプレゼンされた方が中国は心配していませんとおっしゃっていました。基本的には、ソフトランディングで5年から10年をかけてどういうふうに合法化するかということを政府のトップレベルで、マイクロソフトも入り込んでやっているということだったと思います。私も同感で、やはり中国はゆっくりと、しかし着実に合法化が進むと思っております。
 政府、企業、ユーザーのあらゆるレベルでコンテンツに対するデマンドが大きい中で、特に政府と一流の企業といったところで合法化に対する意識が急速に高まっております。ここで、日本も中国市場に対し、きちんと取り組んでいくということは非常に重要だと思います。
 次に、我々の取組から申し上げますと、アメリカと中国を見ております。 
 ひとつ目として、ハリウッド型のグローバルコンテンツをつくるという取組をやっています。
 次に、オンラインゲームは、世界中で伸びているので、今注力しております。
 最後に、中国に注力しております。
 それぞれ簡単にご説明いたします。
 ハリウッド型グローバルコンテンツから。
過去、我々は巌窟王というフランスのコンテンツと、あとはSAMURAI7、「七人の侍」は世界で多分一番バリューのある日本コンテンツだと思いますが、これをベースにアニメをつくって、結構ヒットをしました。また、アメリカのLinkin Parkというバンドがあるんですが、ここのミュージッククリップを弊社でつくらせていただいて、これがアメリカでMTVビデオミュージックアワードでビューワーズチョイスという、視聴者の投票でナンバー1をいただきました。
 これらをベースに、GONZO+と命名し、次のステップとして、ハリウッド型のコンテンツとして、アフロサムライを今展開しております。これは、ハリウッド俳優のサミュエル・ジャクソンさんを主人公に据えて、彼と共同製作という形で、プロデュースしております。 アメリカでまずスパイクTVという全米で9,000万世帯くらいをカバーしているケーブルチャンネルで、今年1月、放送を開始しました。その後、DVDをウォルマートなどの量販店で発売し、今15万枚を超えております。 テレビシリーズとしては相当な売れ行きとなっています。
 また、ゲームが、バンダイナムコゲームスさんからPS3とエックスボックスで来年発売されます、マーケティングのローンチだけで相当額をかけてローンチしていただけるということなので、非常に期待しております。
 また、実写映画では、チャック・ローヴェンというバットマンビギンズのプロデューサーが率いるMosaic Media Groupと今共同開発させていただいております。
 音楽もRZAというWu-Tang Clanというヒップホップではアメリカでトップ5に入るアーティスト・グループの中心人物と、ご一緒させていただいております。
 日本では、WOWOWさんで5月に放送させていただいたんですが、その後、シネマライズさんという劇場で劇場公開してみないかというお話がありまして、ちょうど10月から、公開させていただいております。
 ちなみに、アフロサムライに関しては、今セカンドシーズンの方も開発が進んでおりまして、これからどんどん大きくしていきたいと思っています。
 次に、オンラインゲームに関しては、基本的にはアジア展開を中心で考えています。やはり日本は後発ですので、アジアにおいては、台湾及びマレーシアに子会社を買収等々もして展開しております。
 展開の考え方は、まず日本でコンテンツをつくる。
現在、バンダイナムコゲームスさんの伝説的なゲームであるドルアーガの塔というタイトルをオンラインゲーム化とアニメ化を同時にやらせていただいており、来年リリースさせていただきます。また、パンドラサーガというオンラインゲームもまもなくリリースいたします。
日本でつくったゲームを、まず我々はマレーシアで新規に設立した会社でオペレーションをしてまいります。
 その後、台湾で買収した会社がございまして、そちらをベースに台湾は自社で運営するんですが、中国、インド、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシアへはライセンス展開を行っていきます。
大分成長後期に入ってきたアジア市場で、中国と韓国の会社がほとんど優位をとっているんですが、日本発のコンテンツで一矢を報いたいということで頑張っております。
 最後に、中国ですが、最近相当力を入れております。私も今年だけで5、6回渡中しておりますが、政府の方々等ともお話させていただいた中での感覚では、今注目されている媒体は、次世代地上波テレビ、それからブロードバンドインターネット、次世代モバイルの3媒体だと思います。
 その中で、放送は今後もコントロールが続くと考えられます。一方、インターネットあるいはブロードバンドに対する規制は、意図的に緩めにしていると感じております。多分、北京オリンピック、上海万博ぐらいまでは緩いままいくんじゃないかと言われており、民間企業やベンチャー企業の参入を推進させて、内容規制も相当限定的に、いわゆる検閲ではなくて報告でいいというような形で進めております。
 また、近年のオンラインゲームでは爆発的な成長を達成し、複数の上場した企業が時価総額で数千億円に達しております。実際リアルビジネスとしても、一つのオンラインゲームで月商10億円を越えるというものが存在するくらいの市場になっております。日本でもその規模のオンラインゲームはないと思います。
 これはやはりインターネットカフェというのが、若者向けの、日本でいうゲームセンター市場と家庭用ゲーム機市場が同時にオンラインゲームで実現しているというようなイメージで考えていただければと思います。
 また、IP保護ということでも、政府、民間両レベルで高まりつつあって、中央レベルでは積極的発言が増えております。民間企業でも、海外企業と提携する企業の中には違法コンテンツ駆逐の体制として、実際に弁護士を何人も雇ってやっているような会社もあり、相当変わってきつつあると思います。
 GDHの具体的なプロジェクトとしては、次世代地上波テレビのデファクトホルダーとジョンイントベンチャーを設立すべく最終的な詰めを行っております。また、SNS系のベンチャーに投資を行い、共同事業展開を推進しております。これが先ほど冒頭でご説明のあった弊社がDCAJ様と共同で実験を行っているベンチャー企業になります。
 東南アジアでは、韓国、マレーシアに子会社、台湾に支店、それ以外はライセンスアウトでパートナーシップを組んで展開しております。
 ここで、簡単に実験をご紹介させていただきます。具体的なパートナーは、Wang You MediaというSNSで中国で今4位か5位に入るミクシィ的なサービスをやっている会社になります。ここと提携をして、アニメーションの配信サイトを合法で作り、定額課金の可能性を模索することでスタートしたのですが、やはり有料というのは中国では相当無理があったということで、余りうまく立ち上がっておりません。
これは、ちょうど一昨日ぐらいにアメリカのある識者からの公開書簡として発表された資料2の参考資料(http://www.animenewsnetwork.com/editorial/2007-11-25)にもあるように、インターネット・ブロードバンドで見る人たちは、アメリカを中心として、基本的にはお金を出してどうこうするという文化に対して非常に嫌悪感を持つという文化が強く、産業としても危機感を持って対応しなくてはいけないということが話されております。これらの事実に基づき、我々は現在、次のビジネスモデルは何かということを議論しております。
 次に、少々辛口になってしまいますが、私は海外のプロデューサー等とも付き合っていて、日本のコンテンツの今の取り組みがどういう状況かということを申し上げます。
まず良い情報から。
 あるプロデューサー、皆さんもご存じのハリウッド有名映画監督を擁立しているマネジメント会社の副社長が来日していたので、その方からのコメントを引用いたします。
「春のTAFと秋のTIFFは日本に来る価値のある2大コンベンションである可能性がある。今回のTIFFCOMで日本に眠っているすごいコンテンツがたくさんあることがわかった」ここにもあるように、非常に大きな期待感を持っておられました。
 ところが、その次の言葉には愕然としました。彼は今回すごく得したというんですね。なぜ得したかというと、TIFFCOMの情報というのは、その方がパネルディスカッションのパネルスピーカーとして呼ばれたにもかかわらず、TIFFCOMがあることすら知らなかったと言うのです。来日するまで何も知らされておらず、当然米国のライバル企業・プロデューサーは誰も知らないので、今回偶然来訪できてラッキーだというのです。情報がすべて独占できて、いいコンテンツがたくさん手に入るんですよねと。ちょうどTIFFCOMの際に朝食をご一緒したのですが、彼が嬉しそうに「得だ」といっていたのですが、私としては恥ずかしかったというか、ちょっと残念だなと思いました。
 それからもう一つ。
 これはある日本の有名なプロデューサーの方の、ある公式の場で発言されたことなのですが、「私は日本人ですが、日本のプレーヤーに余り期待していません。日本と一緒に沈没したくありませんので、私は直接向こうに行ってビジネスをやります。」とおっしゃっています。
 それから、ある日本人監督に関して、アメリカのあるマネジメント会社から聞いたのですが、「その日本の監督は、日本では仕事から外されていたのが、ハリウッドで優秀なマネジャーを紹介した途端に2週間で制作費8億円の映画が決まった。」今ちょうど撮影して、終わって、もうすぐ公開だと言うのです。「現在、その監督はその次の20億円クラスの映画の条件を交渉中です」ということで、もうその監督は多分日本に戻ってこないのではないかなと思うんですね。結局人材流出して、監督にはそこそこお金は入るかもしれないですけれども、一番儲かるマネジメント会社もハリウッドの会社ですし、結局人材が流出してハリウッドの会社が儲かっていくのかなとさびしく思いました。
 そういう中で、自分自身が強く感じることを、自由に提言として書かせていただいきました。まず「ホップ」として、英語化。私はTAFもTIFFも両方出て強く感じたのですが、オフィシャル言語は日本語で、英語圏の人たちにとってフレンドリーなものじゃないなと。カンヌの映画祭にも行くのですが、基本的にオフィシャル言語は英語で、英語をしゃべれない人のためにフランス語がついているという位置づけです。それに対し、日本の場合は、日本人のために日本語のものがすべてそろっていて、そこに英語で来た人で日本語がわからない人のために英語の補助がついているという形なんですね。これは根本的に、国際イベントとしては失格だと思います。今、あのプライドの高いフランスですらそういうことはやっていないので、これはちょっと変えた方がいいんじゃないかなというのが私の最初の意見です。
 次に「ステップ」は3つあります。
一つ目は、先ほども申し上げたグローバルに通用する人材の還流です。これは日本人に限りません;海外の方々で日本に来たい人も十分、中国とか韓国等々含めてあると思うんですが、そういう方々にも日本で活躍して欲しい。
また、「還流」と書いたのは、これは、日本に来るだけではなく、海外に出ていってまた戻ってくる。日本人が日本から出ていくのは良いと思うんですね。アメリカの大リーグに選手が行くのはいいのです。日本が魅力的であれば戻ってくると思うんですね。行ったきりではなくて。そういう還流する仕組みというのをどうやったらつくれるのかを本気で構築して欲しい。
 コンテンツの世界に当てはめていうと、国際的プロデューサー、クリエイター、そしてメディア企業が日本を拠点にしたくなるような魅力を作ることが鍵だと思います。近年、外資企業の日本対応は、日本に拠点はあるのですが、アジアの拠点は大抵、香港とか上海に移されています。明らかに企業のレベルで見ても、個人のレベルで見ても、日本の努力が足りないのかなと実感します。何かこれは国家レベルでの施策が必要ではないかなと思います。
 2つ目は、やはり中国及びアジア市場のリーダーシップです。私、ある政府系の研究会の委員をさせていただいたときに、最初にちょっとご相談されて、報告書を見たらびっくりしたんですね。その研究会の報告書では、世界はこう見られていたんですよ。日本が中心にあって、次がアメリカ・ハリウッド、その次がヨーロッパ、その次がアジアというふうに書かれていたんですね。私、日本というのはアジアだと思います。まずそもそも我々がこれから勝っていこうと思えば、アジアは多分GDPで2015年くらいには全世界の40%を超えるということを考えますと、やはり中国を中心とするアジアに対する進出投資を日本がハブとなって、何らかのリーダーシップをとることができないのかということを、本気で考えなくてはいけないと思います。まずは、思考パターンから、変えていっていただきたいなと考えております。
 3番目はブロードバンドです。実は、私は、日本はブロードバンドにおいてグローバルなリーダーシップをとれると思っております。ナローバンド・インターネットはアメリカがリーダーシップをとりました。ブロードバンドが日本なのには理由があります。まず、ブロードバンドで世界で一番進んでいるのは韓国、中国、日本です。市場的に見ても、オンラインゲーム等々、成長しているのはこれらの国々になります。ただ、中国、韓国に関しては、実際振り返ってみると、DVD等の旧メディアというのはほぼ市場としてもゼロ。つまり、旧メディアがだめだったので、ブロードバンドが来て、そこで一気に立ち上がった市場なんだと思います。
 それに対し、日本はアメリカとかヨーロッパに比べると、ブロードバンドでは先進で、韓国並みにいっている。その中で、旧メディアも先進国であるということは、日本が世界で唯一ブロードバンド先進国、かつ、旧メディアも先進であり、世界的に見てもオンリーワンの先端にいる国だと思うのです。だから、マクロで見れば、日本はブロードバンドでリーダーシップをとれるはずだと思っております。
 ビジネスチャンスで考えれば、例えば、ハードメーカーとソフトメーカーがコラボして、アイチューンの映像版を日本から発信するというのはいかがでしょうか?ソニーさんと松下さんが一緒になって、そして、日本のコンテンツメーカーやテレビ局さんが、あるいはクリエイターの方々が全員サポートして、そういうものをフリーで出していくんだ位の気持ちで、世界のアイチューンみたいなモデルをつくってしまえば、僕は世界をとれる可能性は十分あると思っています。
 ところが、そういうグローバルをリードできるポジションにいるにもかかわらず、日本では、全くそういう動きにならないというジレンマがあります。日本の中で権利や権益をどうやってクリアするのかみたいなところでぐるぐる回っているというのは非常に歯痒い。私どものような小さな企業ではどうしようもないところですので、ぜひ国家レベルで考えていただきたいと考えております。
 最後に、「ジャンプ」。相難しいところですので、相当刺激的なことも書いております。
「マルチナショナル」になることが、メディアコンテンツ企業の世界に勝つためのポイントだと思います。
 日本では多分ソニーさんが、日本の企業としてグローバルメディアコンテンツ会社としてただ一社土俵に上っています。ただ、それ以外の日本の大手メディアコンテンツ企業から真のグローバルメディアコングロマリットは生まれておりません。ここは、やはりM&Aが必要で、ドイツでいえば、ベルテルスマンという会社は、今グローバルメディア企業ですが、M&Aを駆使して、上り詰めました。英語でボードミーティングを行うようなレベルで目指す企業が日本からぜひ生まれて欲しいと思います。
 そういう中で、やはり日本というのは、外圧にあるいは外資に弱いところがあります。極論でいうと、今あるメディアコンテンツ業界における外資規制をちょっと緩めてみて、外資が日本を侵略したみたいな形をうまく見せることで、逆に危機感をあおって、日本の企業が世界に出ていくという芽を開かせるというようなショック療法をやられると良いのではないかなというのを、個人的な意見ですが、ちょっと肌で感じております。
 以上が私のプレゼンになります。
最後の添付資料は、実際に、権利保護に関してになります。
最近、日本でよく聞くのはDRMをどうするかという議論です。しかし、世界的な先端は、実はスティーブ・ジョブズが今年の5月にある書簡をグローバルで出してから、DRMはなくなる方向にあるというのです。DRMがブロードバンド等々における次世代メディアの発展を阻害している最大の要因で、スティーブ・ジョブズは自分でDRMをつくっていながら、公式書簡ではDRMはなくなるべきであるといっているのです。DRMがなくなり、ユーザーの良識に基づいてコンテンツが流通され、お金をとるというのが本来の姿であって、それをきちっと浸透させていくというのが本当のメディアコンテンツの発展のためには良いのだということを言っております。これはスティーブ・ジョブズだけではなく、EMIという、先日ファンドが買収した音楽企業でも、基本的にDRMフリーで音楽配信を行うということを11月に発表しております。映像の方でも、マイクロソフトはDRMを軽くする方向で開発を進めております。最終的にはDRMをなくしていく方向というのが世界的な潮流になりつつあると私は感じています。
 ぜひその先を行く、日本から発信していける、オープン・プラットホームで、しかも、ビジネスモデルが成り立つようなものを、何か生み出していければ、日本もグローバルの先端になっていけるのではないかと思います。添付の書簡に関しても、たまたま昨日発表されてアニメ業界は激震しているのですが、是非、前向きに参考にしていただいて、議論していただければと思っております。
 ありがとうございました。

○久保利座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明につきまして質疑を行いたいと思います。
 ご発言のある方は、ネームプレートをお立ていただけますでしょうか。
 どなたかいらっしゃいませんか。
 では、どうぞ。

○重延委員 今の石川参考人のお話を聞いて、「好き勝手に、刺激的に」とおっしゃいましたけれども、ちっとも過激ではないとまず申し上げたいと思います。全くそのとおりで正しい分析と思いますので、ただ、その可能性の中で、ゲーム、アニメ、マンガが今日本のコンテンツとして世界にグローバルに展開しているということで、それが3つの趨勢であるという具合にお話があって、私もそれは認めつつ、さらにいろいろなコンテンツがグローバルな視点を失わないでやっていただければというように思っております。
 お話の中にあったTIFFCOMを含めて、実は私がJAPAN国際コンテンツ・フェスティバルのエグゼクティブプロデューサーをやっておりましたので、そのことについてだけ少し触れさせていただきます。
 TIFFCOMは東京国際映画祭、TIFFの角川チェアマンがやっていらした中の一つの関連イベントでございました。そこに海外のプロデューサーがコンテンツとしてはすばらしいものがあると、こうおっしゃってくれたところに大切な原点があるかなと思います。「日本のコンテンツは売れるものではない」という、後進的な発言がいろいろなところから出てくるんですけれども、やはり「日本の才能はあるんだ」という原点から動くというところも一つのヒントになるだろうと思います。
 おっしゃるとおり、そのことについての国際的広報がないということは今回のコ・フェスタの反省点でございまして、それはやるべきだと思うんですけれども、確かに日本は、国際戦略、それから国際情報の収集に関して相当遅れていますよね。それは英語力の問題かもしれないんですけれども、本当に日本がコンテンツの創造と海外展開ということを考えるならば、やはり、今からでも相当急いで情報収集、戦略、そして才能の伝達というか育成というか、そういうことに進まなければいけないということを多分石川さんは最先端でお感じになっていると思いますけれども、私も今回コ・フェスタをやりまして、ゲーム、アニメ、マンガ・キャラクター、それから映画、放送、音楽、一応全部を見て、今年は第1回ですので、「新しい」というテーマでやりましたけれども、実は3年目に「すばらしい」という、2年目は「おもしろい」、3年目は「すばらしい」、このすばらしいところにいきたいんですね。やはりでも1年ではできなかった。1年では届かない。でも、一歩前進して、こういうコンテンツはやはり何かやらなきゃというところまで来たことは事実であるかなと思いますので、ぜひこれからも過激な発言をお願いしたいと思います。

○久保利座長 ありがとうございます。
 では、三尾委員、お願いします。

○三尾委員 三尾でございます。
 私の方から1点、質問なんですけれども、日本のコンテンツメーカーが海外展開を渋っている理由として、日本の市場の方が容易にお金を稼ぎやすい、ビジネスになりやすいんだという発言があると思うんですね。海外ではなかなかビジネスになりにくいので、出ていく勇気が持てないという意見があるんですけれども、石川さんの場合、日本でやられているビジネスと、海外で行われているビジネスに関しましても、ビジネスとしての成果といいますか、そのあたりをお聞きしたい、さらに海外における今後のビジネス展開の可能性についてご意見をお聞かせいただきたいと思います。

○石川参考人 正直にいいますが、海外は大変です。大変ですが、夢があったので海外をやっているといった方がいいかもしれないです。私がもともと初めてコンテンツ業界に入った理由が、日本はこのままじゃ世界に通用しないから何とかしたいという夢から入りましたので、悪戦苦闘しているというところがポイントだと思います。
 やはり一番大きいのは、日本が、世界の中で、アメリカ以外で唯一、自国内でメディア・コンテンツ産業をサポートできる経済規模を持っている国なんですよ。そうすると、自国内でカバーできますから、誰もグローバルな仕組みをつくるということに力を費やさない。
 この対照がフランス、イギリス、ドイツです。自国経済規模ではメディア・コンテンツ産業をサポートできないんですね。コプロダクションしないと成り立たないような仕組みができている。そうやってメディアが発展してきている。だから、テレビマーケットでも、フランスのマーケット(MIPCOM,MIPTV)が世界で一番大きくなっているというのはお分かりいただけると思います。
日本は、ある意味良いポジションにいたことにより、現状、非常に舵取りが難しくなっています。そこを打破するのには相当なエネルギーをかけなきゃいけない。
 ただ、今ブロードバンド化の中で一気にメディアがグローバル化していますので、そのエネルギーをかけないと、だめになると思います。よく「ゆでガエル」という例をいうんですけれども、釜に入った蛙は、中で泳いでいると、だんだん温度が上がっていくわけですね。始めは気分がいいんですけれども、だんだん60度ぐらいになると動けなくなって、最後は死んでしまう。そういうふうに日本のメディア・コンテンツ業界がならないように、大変でも、何とかして頑張っていくということが重要なんじゃないかなと思っております。

○久保利座長 ありがとうございました。
 久保委員。

○久保委員 僕、自分のペーパーのときにまとめて言います。

○久保利座長 そうですか。わかりました。
 では、南場委員、お願いします。

○南場委員 私はクリエイティブの領域は不勉強なのですが、今のお話にありました、三尾先生のご指摘のように、日本の方が居心地がいいというクリエイターもいる一方で、石川さんのお話ですと、優秀な人材が海外に出ていってしまうというお話もありまして、本当にどちらが実際に起こっていて、どちらの方が深刻な問題なのかというところを多少定量的に理解したいと思っております。その点辺について何かもし見解をお持ちであれば伺いたいと思っております。加えて、最後のペーパーにまとめてくださったように、還流のために施策を打たなければいけないという点ですが、その中には、国際的プロデューサー、クリエイター、国際メディア企業が日本を拠点にしたくなる魅力づくりをしなければいけないというご指摘がございました。それは具体的にはどういうところでしょうか。もともと魅力があるのかないのか、出ていっているのか、入ってきているのかというところも理解ができていないのですが、もし出ていってしまっていて還流していない、よって魅力を増さなければいけないというのであれば、具体的な事例をまじえてご教示いただけたらと思います。

○石川参考人 まず、出ていっているところは、定量が難しいです。これは、有名な方々がどうなっているかということしか言えないのですが、例えば私どもの近いところでいうと、日本のCGクリエーター等、今、ほとんど優秀な人たちはピクサーさんですとか、ドリームワークスさんとかで、クレジットを見ると出てくるんですね、日本人の名前で。この人こっちにいっていたんだという方がたくさんいらっしゃいます。そういった方に私もお会いしてお話しているんですが、向こうの方が居心地がいいし、給料も全然良いですし、あらゆる意味で環境も良いということをおっしゃっています。
プロデューサーでいうと、やはり一回アメリカで成功されたプロデューサーは、結構日本の企業さんと組んでやっていくのが難しくなるそうです。日本と組んでやっていく気にならないねということをやはり言われてしまいました。
多分ヒントはそこにあるんだと思うのですが、いわゆる「環境」なんだと思うんですよ。良い人材が行くためには、人材が最後に選ぶのは、お金もありますが、それも含めたエコシステムといいますか、環境ができているかどうかが重要だと思います。人によっては、それがお金の場合もありますし、働いている場所の雰囲気かもしれないですし、周りにいる人たちの刺激かもしれないし、評価される場かもしれないし、それは人によって違うんだと思います。そういったものを含めたエコシステムができているかどうかが重要なんだと思います。
 そこでハリウッドを見たときに、やはりエコシステムが非常によくできていると思いますね。メディアというのは、所詮、僕もよく言うんですけれども、究極の虚業、金融以上に虚業だと思います。バブルをつくることが重要なものだと思うんですよ。だから、バブルができて、盛り上がると、どんどん盛り上がって、どんどんヒットしていく。ハリウッドのシステムがよくできているなと思うのは、やはりある映画がヒットして、俳優がヒットすると、エージェントや何かが絡むことによって、その人の給料は次は10億円に上がる。すると、その人を雇うためには、今度ファイナンスで100億の映画をつくらなければいけなる。それがヒットすると、今度はその俳優が20億になるから、200億の映画をつくる。というような、正のスパイラルといいますか、いわゆるバブルのスパイラルができてくる。200億の映画だと、全世界で50億マーケティング使えますから、当然ヒットの確率も上がるので、さらに大きくなっていく。
 ゲームでも同じことが起きて、EAさんのようなアメリカのゲーム会社さんは、いわゆるハリウッド型のシステムに乗って、成功しました。ハリウッドにはゲームのエージェントまでいます。そういう人たちが行動することで、バブルが形成されて行くのだと思います。
 また、それだけお金が回って、ビジネスが回っていますから、当然その中には、個人が成長したり、自分を見せつけるための土台として、アート作品をつくりたいという人にも簡単にチャンスが与えられるわけですね。それを発掘する仕組みとして、1億円くらいの映画もつくりやすい仕組みができています。
日本で一体何をやったら、そのエコシステムがつくれていけるのかということを総合的に、考えていく必要があると思います。私はアニメに関してしか言えませんので、実写映画、テレビ、いろいろな知見の方々を集めて、それをあらゆる要素をきちんと整備して、そのエコシステムが正のスパイラルに入るような形をどうやったらつくれるのかということを本気で議論することが重要なんじゃないかなというふうに思います。
 特効薬がないというのはすごく大変なことなんですけれども、その辺、様々な方々からの意見を集め、それこそ政府とかこういう委員会でまとめていくことが重要なんじゃないかと思います。

○久保利座長 ありがとうございます。
 里中委員、お願いします。

○里中委員 肌感覚というところでおっしゃっていたんですけれども、マンガ・アニメは人気があるものの、まだビジネスとしては発展途上と。マンガの海外展開というのはリスクが伴う。本当におびただしい違法コピーが出回っていまして、それに対する取組がおくれているので、違法コピー市場は活気を帯びているんだけれども、正規版がなかなか流通しないと。ちょっとみんな消極的になりがちになってしまうんですね。海外展開を消極的にさせている原因のひとつに違法コピーへのおそれがあると思います。いかにして違法コピーをやめさせるかの方にばかり頭がいってしまって、積極的に売り込むということでなかなかできない。
 ところが、欧米では、日本のマンガ・アニメに対する求める行為というのは大きいわけですよね。マンガとかアニメーションというのは、それを見て育ちますと、まさしく肌感覚なんですけれども、そういうものをまた表現しようとする。マンガ・アニメの日本での発展を見てきた韓国とかあるいは中国の若者たちは、そのようなテイストのものをつくっていくわけですよね。
 私もこれはまた聞きなので申しわけないんですけれども、欧米が求めている日本のものがなかなか正規の流通で入ってこないので、そのかわりに日本のものと非常にテイストの似た韓国、中国のものを日本テイストを味わうために輸入したがると。その輸入をする場合に、韓国、中国は敷居が低いので、非常に輸入、流通しやすいと。そういうことで、ここ近年急速に韓国や中国の若者たちが、もともとは日本市場で活躍したかったんだけれども、日本はメジャーリーグのようなところで厳しいと。それならば、欧米に出て、日本的な作品、それを東アジア作家として売っていくという、そういうことがどうも顕著になってきているようなんです。
 私はちょっと危機感を感じますけれども、肌感覚の話だけで申しわけないんですが、実際にお仕事でこういう場に接しておられて、そういう流れというのは感じられたことはおありでしょうか。それをお伺いしたいと思いました。

○石川参考人 まず、おっしゃるとおりの流れだと思います。その中で、中国と韓国以外にもう一つ大きい国、フィリピンがあります。フィリピン、韓国、中国が今非常に伸びていまして、アメリカですと、ある大手のマンガのパブリッシャーがアメリカのコンテンツをベースにマンガをたくさんつくっているんですが、ほとんどフィリピンでつくっていたりします。フィリピンは東映アニメーションさんが拠点を持たれているので、人材が育っているんだと思います。アニメでは、日本がメジャーリーグな中で、周りからどんどん世界的な人材が輩出されようとしているというのは事実だと思います。
 ただ、それが悪いことかどうかというのは難しいところで、それをうまく利用して、メジャーリーグは日本だという位置づけをつくれれば、アメリカとかヨーロッパの市場は、あくまでそこに上がる上での、野球でいう日本とか台湾のプロ野球になればベストではないかと思います。最後はメジャーリーグ(つまり日本のマンガ・アニメ)にいきたいんだとなってくれれば一番いいんじゃないかなという気がします。そこはうまくやっていけばいいのかなと思います。
 もう一つの違法コピーのところなんですが、まさにそこが添付資料の書簡をぜひ後ほど、読んでいただきたいと思います。ちょっと長いので申しわけないんですが、後ろについている日本語のところを読んでいただきたい。これは私の肌感覚とぴったりなんです、一部余り納得しないところもあるんですけれども。一番肌感覚と合っているのは、日本のアニメとかマンガとかが世界で一気に有名になったのは、実は新しいインターネット世代という人たちがファンサブのおかげだという部分です。ファンサブとは、ファンがサブタイトルをつけて、日本で放送された2時間後くらいに世界中の人が見るんですね。ダウンロードの数を数えたら、最初の15日間で20万ダウンロードを超えるんですよ。
彼らがいっているのは、それがあったからこそアニメは普及したのに、日本のライセンサーは日本で放送をした後に、みんなが欲しがっているのに最低9カ月間海外で出しもしない。9カ月も待たせているお前らが悪いんだとファンはいうわけですね。でも、これはインターネットの感覚では当たり前のことです。グローバルにネットワークがなっているのですから、どこかで露出したら、それが全世界に流れるのは当たり前で、そういう世界の中で、その世界に合ったビジネスモデルをつくっていけば勝てるけれども、つくらなかったら、音楽業界で音楽のメーカーさんが皆ちょっと沈みかがっているのと同じように、いくら抗っても、世の中の流れは変えられないし、そういうプレーヤーは消えていくというのはこの書簡の内容なんです。スティーブ・ジョブズも同じことを音楽の世界でいっています。
日本にとってチャンスだなと思うのは、日本のアニメとかマンガは、まさにそういう次世代を担う世界中のブロードバンド世代、あるいはインターネット世代において非常に良いポジションにあるのだと思います。また、中国、韓国といった旧メディアがない新興国において、そういう人たちがまさにそれを伸ばしてくれたということから見ても、日本のマンガ・アニメは戦略的にはすごくいいポジションにあると思っています。オンラインゲームも然り。これをうまく利用して、次のステップに持っていければ大きなチャンスが眠っています。違法コピーを止めることもやらなくてはいけないのですが、それだけに躍起になるだけではなく、若者たちが興味を持ってくれて広めたということをうまく利用して欲しい。日本が世界をリードできるかもしれないという視点から、積極的にこれを利用する手段を何か考えていくべきじゃないかというのが、特に最近の肌感覚の意見です。
全世界的にも、この6カ月くらいにDRMがなくなる方向とか、動き始めていますので、本当に今最先端のところだと思います。ぜひ議論していただきたいなと思います。

○久保利座長 ありがとうございます。
 では、角川委員、お願いします。

○角川委員 石川さんの仕事に対する視点というのは、僕と同じものでして、同じDNAだなと感じています。その上でお伺いするのですけれども、日本のアーティストがアメリカに渡って、ハリウッドの文法の中で仕事をしていくことになると、結局ハリウッドの中でハリウッドコンテンツをつくる一人になってしまう。それは非常に残念なのですけれども、僕もアメリカと仕事をしたときに、そういう経験の中で感じたのは、アメリカはオールライツリザーブを求めると言うことです。今夏の公開映画“トランスフォーマー”の大成功を見ても、大変な数のDVDが売れたにもかかわらず、本来権利を持っているはずの原作者のタカラさんへは、ほとんどそれに対するリターンがなくて、二次利用をするおもちゃの商品が売れていることで満足しなきゃいけない。そういった意味で、石川さんが今ご苦労されているだろうと思うのですけれども、共同製作についてはどんな形で、法律的な問題を解決しているのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

○石川参考人 基本的にはハリウッドは、私も肌で感じるんですが、契約社会、不文律が存在しない世界だと思います。何でも契約すればありの世界だと思わなくてはいけない。だからこそ、逆にハリウッドの方々は、オールライツリザーブというのも、とりあえずいってみるというのが強いんです。
ただ、彼らはちゃんと調べてきますので、オールライツが空いていると思うと、向こうは絶対譲らない。ハリウッドでは、オールライツが空いていない状況をつくるということが結構重要です。アフロサムライでやったことは、まず最初にテレビのライツだけ売って、次にDVDを売って、それからマンガも売って、全部ないところで実写がくれば、契約上、それ以外のところしかもうないですから、仕方ない訳です。もう存在しないので、オールライツではお渡しできません。交渉するだけ無駄です、という状況を作ることが慣用です。もし厭だったら、オールライツでとれるコンテンツを頑張って探してくださいということなんですね。ただ、我々のコンテンツはクロスメディアでゲームとかも全部それぞれでライセンスアウトしており、御社にとっても相乗効果があるわけだから、魅力ありますよねという交渉を行う訳です。アフロサムライくらいのちっちゃいコンテンツでも、戦略を練れば十分できると思うんです。
 だとすれば、日本でもヒットしている、それこそ角川書店さんとか、小学館さんが持たれているようなコンテンツであれば、本当にそこをきちっとブロックする仕組みをつくって、アメリカのルールにのっとった交渉すれば良いと思います。
アメリカの弁護士と話すと、契約書は城みたいなものだというんですね。何で契約書を出すかというと、あれは城壁なんだと。200ページの契約書が30個とかあるんですけれども、攻め込まれないように城壁を全部張りめぐらせるんだということだそうです。
 日本では、契約書というのは読み切れないから、20ページで全部まとめたものをつくろうよ、とどうしてもなりがちです。日本ではそれでいいと思うんですが、やはり世界に出ていくときには、城壁を作るところから入るのかなというのは感じています。

○角川委員 そういう風な話を聞かせていただいた上で、例えば今ご苦労されている契約書づくりのノウハウ、このノウハウについて、非常に貴重であるということはよくわかるのですけれども、これから第2のGONZO、第3のGONZOをつくっていく為に、そういうご苦労された契約書のあるモデルをオープンにして頂けるとありがたいと思います。そのようなお気持ちはありますか。

○石川参考人 それは喜んで、いつでも。我々がつくっている契約書は、基本的にはイギリスとアメリカ経由でつくっていますので、英語のすごく分厚いものになりますけれども、そういうスタンダードフォーマットを共有させていただくのは、我々も全然やぶさかではございませんので。

○角川委員 ありがとうございます。ぜひ知財でもこのことをひとつテーマにしていただき、知財の成果としていくべきではないかと思います。そういう申し出を是非させていただきたいと思います。

○久保利座長 石川さん、ありがとうございます。
 まさに契約書は城だと思うんですよね。要するに権利ビジネスというのは、契約書によってしか守られないわけで、それにコストをかけないといけない。だから、僕は大変申しわけないと思うのは、石川さんは相当のコストをリーガルに出していると思うんですね。ですから、それを何もただでよこせと言っては失礼ではないかと。だから、一定の利潤は得られても当然だと思うので、出してもいいよというお気持ちが大変ありがたいというふうに私は今座長として思いましたね。ですから、ただでやるとまで言わないでいいんじゃないか。ただ、出すつもりはありますのでということで十分だと思います。

○石川参考人 おやさしい言葉、ありがとうございます。

○久保利座長 やはりこういうビジネスはそういうものだと僕は思いますので、要するに、そこのことを気がつかないか、気がつくかということが、実はそれ自体が大変なノウハウなので、そのことがわかれば、多分、石川さんのおつくりになっている契約あるいはつくり方というのは非常に皆さんに役に立つ話だろうというふうに思います。
 さて、それでは、村上委員、お願いします。

○村上委員 改めまして、ちょっと石川さんのお話にもう一回戻るんですけれども、先ほど、何が大事がというのは、エコシステムという言葉でおっしゃいました「場」ということじゃないかと思うんですけれども、我々もそれが今一番非常に大事で、かつすごく難しい問題だというふうに思っております。
 例えばテレビ局の人間の気持ちでいうと、今、テレビ局では当然番組以外に劇場映画というようなこともやっているわけですけれども、さっきの南場委員のお話しじゃないけれども、まずやはり日本というか、まず視聴者に喜んでもらうものをつくりたいという気持ちがある、では、海外展開のためのソフトづくりというのをどうしたらいいかという話になると、ある種強引に我々としても「場」を設定してやらないと、なかなかそこにみんな飛び込んでいかないという部分があると思っています。
 例えばうちなんかも、石川参考人とご一緒にやらせていただいたアニメ作品があるんですけれども、これは、メジャーと組んでつくるということで、海外展開を完全に目指した劇場版アニメというのをやってみたけれども、なかなか第1回だけだと、そうどんと大ヒット、世界的にそれが販売できるというようなところまで至らなかった。逆に言えば、1回で終わらせないで、それを2度、3度というふうに続けていかなきゃならないということで、例えば今石川さんのところともいろいろ検討させていただいているんですけれども、そういうことで、ある種強引な場を設定していかないと、なかなかクリエイターたちは飛び込んでいかないということがあると思うんですね。
 うちなんかは、番組という面でいうと、さっきの肌感覚という話で言えば、ニューヨークに当社の拠点の、海外の担当しているところに、ディレクターあるいはプロデューサーを出向させまして、実際の、向こうで欲しがっているソフトづくりに当たらせるということを始めているんですが、ようやく具体的に向こうの大手と組んで、アメリカ向けの、国際向けの番組について動きだしたというところがあるわけです。
 ただそれはあくまで、ここで討議されているビジネスということで言えば、非常にまだ小さいものですから、石川さんから言わせれば、ホップにもならないぐらいの、その手前のところと思いますが、そのような取組がようやく始まったんじゃないかと。
 先ほど重延委員がコ・フェスタの話をされましたけれども、来年、できればマーケットをきちんとやりたいというようなお考えもあるようにお聞きしています。例えばそういうところでのマーケットをうまくするために、では場の設定が、今おっしゃったエコシステムの場がどういうふうにつくられるかというようなことで、聞くところによると、日本のクリエイターと外国のバイヤーが直接コミュニケートできるような場ができないかというようなご研究もされているということで、ともかく今はそういう場の設定ということをみんなで必死で考えて、それができればその国の援助、お金的なものも含めて整備していくことが必要じゃないかなと、先ほど石川さんのお話を伺って改めて思ったところであります。

○石川参考人 それに関してなんですが、私も場というところで、一つ参考になる例、特にアニメーションでは日本では必要ないと思うんですが、実写のテレビシリーズなんかでできるシステムとして、フランスのアニメにおける取組がおもしろいと思うんですね。フランスという国は、世界的にアニメではリードしているんですよ。日本、アメリカの次くらい。
 なぜそれができたかというと、国がCNCというファンドを持ちまして、共同製作でやるプロジェクトに関しては3割くらい予算を負担してくれるんですね。ですから、大体30分につき500万円くらい国から出るんです、お金が。そうすると、テレビ番組は1時間の番組で1,000万から1,500万くらいが相当だと思うんですが、例えばそういうハリウッドとか、ヨーロッパとかとテレビの実写のバラエティでも何でもいい、ドラマでもいいと思うんですが、共同製作するときには、国から補助金が1,500万円。これは、一歩進める上では、すごくおいしい1,500万円なんです。そうすると、その1,500万円をたね銭にして、日本からあと1,000万円、アメリカから2,000万円を集めて、5,000万円1話のテレビドラマをつくろうみたいな動きをする方がうまれると思うんです。フランスはそれを無理やりやってうまくいった。
 中国も同じことをアニメでやっているんですが、逆に日本では実写みたいなところでそういうことをやって、共同製作じゃなきゃいけないという流れを作って欲しいと思います。ファイナンスのうちの例えば3割以上は確実に海外から集めることが前提条件で、そういう補助金をつけるようなことをやっていくと、もしかすると起爆剤として回し始められる可能性があると思います。国のお金としても、税金としてもいい使い方なんじゃないかなという気がします。 アニメとかではなくてもいけると思うので、実写で特に使われるのがいいんじゃないかなと思います。

○久保利座長 ありがとうございます。
 廣瀬委員、お願いします。

○廣瀬委員 今お話を伺っておりまして、音楽業界はどうなっているんだと、僕は考えたことがあるんですけれども、幾つか思い当たるところがありまして、一つは、先ほど石川さんもお話しになっておりました、イギリスとかフランスは、自国内でコンテンツビジネスそれ自体は成り立たないから、海外でということでモチベーションがあるんです。
 確かに、最近、東京で見られる現象が英国大使館でございますとか、カナダ大使館とか、各国の大使館が自国のミュージシャンを呼んで、ミュージシャンのショーケースをやるわけですね。そのときに、国内の我々のような音楽業界の人間を呼びまして、アーティストの売り込みをやるわけです。
 同じようなことが、日本のアーティストに関して、海外でそういうことが頻繁にあるかと申しますと、余りありませんで、なぜかと考えますと、実は、音楽の場合、ちょうどアメリカが当然音楽マーケットで世界最大、ちょうど半分のサイズが日本でございまして、それ以外はかなり小さくなっておりますので、日本の音楽事業にとって興味のある海外マーケットは、あえていうと中国ぐらいなんですね。されど、中国を考えますと、ついこの間までは、海賊版が怖くて、なかなか出足が鈍っておった。
 そういうところで、レコード協会が中心になりまして、現地の警察とかと取り組みまして、海外版の海賊版、積極的な摘発をやってきて、一応かなり地ならしができた。これからCDも海外輸出かと思っておりましたら、今はどうなっているかと申しますと、もうCDじゃない世の中になっておりまして、よくよく考えますと、例えば私どもがアーティストの音源をマイスペースの方にアップロードしまして、それは世界じゅうでアクセスできる。それから、海外の日本へ売り込んでくる音楽エージェントは、やはり自分のところのアーティストをマイスペースにアップロードして、ここでアップロードするから聞いてくれ、よかったらそれを日本で売ってくれというふうになってしまっている。というぐあいに、もはや流通経路は完璧に交換経路ですか、コンテンツの交換経路が完全にマイスペースに代表されるネットになってしまっております。
 そこでまたさらにおもしろい現象は、マイスペースですごい人気が出たアーティストが、ではこれは売れるだろうと思って輸入すると、実は1,000万ダウンロードぐらいのカウントを数えたアーティストを持ってきて売ると、みんな聞いているから買わないんですね。そういう状況でございまして、そんなふうに考えて、どんどんネットに移行しているときに、ネットで成り立つビジネスモデルを考えたときに、音楽事業者から見まして、何が今足りないか、必要があるかと申しますと、実は、携帯電話の環境がいいサンプルになりまして、携帯電話の環境は海外からアクセスできませんから、携帯のサイトの音楽は外に出ていかないわけですね。ただ、いいことに、携帯というのは、通話当たりの課金制度ですから、非常に安い金額の課金収入ができる。基本的には、10円からできると思いますね。ですから、携帯の世界を、多分音楽の技術というのは、今、1曲200円といっておりますけれども、あっという間に100円なり50円なり、あるいは30円なりというふうに下がってくるでしょう。
 さて、今度、海外の関係を考えますと、実は、PCAのインターネットの世界で、そこまで安い金額でビニングをしてくれるようなサービスがないわけですね。したがって、具体的にニーズが今のところ顕在化しているわけではありませんけれども、多分、日本の音楽を海外に幅広くビジネスとして持っていける一つのとりえは、十分安い値段でディストリビューションができること。それを十分安い値段、多分桁数でいえば10円、20円、30円というような桁数で、決済ができる環境があること。今現在、やはり200円だとみんな買いませんから、100円でも。そういうところが将来的に海外、あるいは世界じゅうに音楽コンテンツをばらまくときの要件になってくるのではないかと、このように思います。

○久保利座長 ありがとうございました。

○石川参考人 これに関して一言よろしいですか。

○久保利座長 どうぞ。

○石川参考人 一つ、参考までに、中国でお金を儲けようと思うと、今一番儲かっているのはオンラインゲームなんですが、なぜ儲かっているかというと、実はビリングのシステムがマイクロペイメントになるんです。なぜかというと、ほとんどの方々は、ネットカフェでプレイするんですよ。すると、そこで1,000円くらいのカードを発行するんです。そのカードを登録すると、そこからビリングされていくんですね。ですから、売る仕組みもある。
例えば、今考えたのは、まさにカラオケと同じモデルで、日本の音楽業界が全部一緒になって中国でカラオケとか、インターネットでダウンロードする団体をつくって、日本の音楽ダウンロードのカードをインターネットカフェに営業部隊50人くらいで、中国の何万というインターネットカフェでそれをやり始めれば、あっという間に広がる可能性があると思います。基本的には、音楽業界はカラオケでビジネスモデルを立てられているわけですから、そんなに難しい話ではないのではないかと思います。多分、課金のシステムも、逆にアメリカとかのブロードバンド後進国よりは、ブロードバンドが確実に普及している中国、韓国でそういう仕組みを、実験されると良いのではないかと思います。音楽はデータが特に軽いですから、ぜひ先行的な取組としてやっていただくとおもしろいかなと、今お話をお伺いしていて思いました。

○久保利座長 どうも、石川参考人、貴重な意見を本当にありがとうございました。
 今、石川参考人のご発言に関連するご質問ということでやってまいりましたが、この後、まだ全般的なものについても発言のチャンスがございますので、とりあえず石川参考人につきましてはこの程度でご議論、質疑を打ち切らせていただきます。
 どうもありがとうございました。
 次に、事前に資料をご提出いただいております久保委員にご発言をちょうだいしたいと思います。
 それでは、お願いします。

○久保委員 今回の参考人お二人の意見がコントラストだったものですから、ちょっと具申をする際にどういうふうに話したらいいかなと多少整理する時間が必要だったので、私のペーパーでまとめてお話ししたいと思って、今からお話をいたします。
 皆さんのお話を聞くと、やはり、新しいビジネスモデルを開発し、そのことによって若干停滞したような現状を打破する必要があるだろうということについては、恐らく皆さん同じ意見ではないかと。その上で、必要なものとしては、ハード、ソフトの融合、そしてWeb2.0の活用、そして3番目に、最後にネット上の個人認証の新たなシステムということですね。多分この3つなのではないかなと。
 やはり、韓国のネットゲーム等の話もいただきましたが、韓国は総背番号制で、ログインする際に個人認証が確実に行われるという背景もございますし、アメリカと日本のアイチューンストアは売っている商品が全く違います。やはりそれはアメリカのクレジットカードの発行するシステムが日本よりもかなり厳格であるとか、そういう背景があるからで、そういう意味では、ビリングシステムを含めた個人認証のシステム、この話をするためには、やはりネット上の自由な発言を守りながらも、犯罪の温床としての要素を取り除くという作業がやはりどうしても必要になってくるのではないかなと。ですので、新しい収益とするためにはビジネスモデルが必要ですので、それを何らか官民あわせて考えていくということが急務なんだろうというふうに一応頭の中を整理しまして、その上で、私が資料としてお配りしたものをちょっと参考に、資料4−1ですけれども、時間も押し迫っていますので、簡単にお話をしたいと思います。
 今回のテーマには、すぐれたコンテンツの創造と海外展開ということですので、まずすぐれたコンテンツの創造について、3つばかり挙げさせていただきました。
 1つは、やはりコンテンツ・ポータルサイト、過去何年にも渡ってこのサイト実現のためにいろいろな方が尽力されていることは、本当に承知しておりますし、非常にそのご苦労についても感謝申し上げているわけですけれども、やはりハリウッドのインターネット映画のデータベース、つまりIMDBとか、非常に大きなサイトの運営を見ると、何とかこういうものがつくれないかなと。このIMDBのところの一番いい要素は、やはりクリエイター自身がみずから書き込んでいくことによってサイトが非常に適正化されているということなんだと思います。ですので、ウィキペディアのようなものがコンテンツのポータルサイトにあるというふうにお考えいただければいいと思いますが、このようなものをクリエイターもしくはその代理人がたえず情報を更新していくということができるサイトであれば、もちろん更新作業にかかるお金は非常に安く済むわけですし、こういうことを既にお考えだと思いますが、やはり上から何かを下達という形で命令するということではなく、下からどんどん新しい情報が入っていくというような工夫が多分必要なのではないかなと思っております。
 2番目は、資料1の5頁の中にもありましたように、海外のクリエイターが日本で働きやすくする環境整備。学生ビザに関してはさまざまな活動があるというふうに認識しておりますが、OJT、オンザジョブトレーニングに関しては、なかなかビザが出ないという状況があったりするように聞いております。ですので、今後についても、弾力的な発給についてぜひご検討いただければなと思います。
 3番目に関しては、資料3、妹尾先生からいただいた資料と近いものでありますが、CG映像を製作する上で、どうしても超えなければならないハードル、これが僕らは流体だというふうに思っているわけですが、煙、炎、水など、流体の演出について、もっと簡単に、演出者の希望に沿った水の流れ、炎の大きさ等がコントロールできればいいなと思います。これについては、アメリカを初め諸外国も非常に悩んでおる案件ですので、この会議の中でもお話ししましたが、何とかこれがハードウエア、ソフトウエアあわせて開発し、それが日本のソフトウエアの会社すべてが使えるような、そういうものができないかなというふうに思って活動を継続しております。ぜひともご理解とご協力をお願いしたいなと思います。
 海外展開についても3つ一応挙げさせていただきました。
 1つは、ウエブサイトの広告収入の配分システムということでして、これはアメリカにはあるが日本にはないというシステムです。つまり、通常インターネットで通信で流れるコンテンツを販売する場合、大体が売り切りのケースが多いわけですが、海外では、そのサイトから得られる広告収入すらもシェアできるというシステムがございます。これもこの場では何回かお話ししていますが、やはりこういうシステムについて、何らか日本でも活用できるようなことをぜひお考えいただけないでしょうか。
 例えば、それとは違う例としては、携帯電話、ワンセグでテレビが見られるわけですが、恐らくキャリアの方たちは、ワンセグ上で見られているテレビ番組の視聴率を測ることが可能なんだと思うんですね。そうなってくると、恐らくテレビの視聴率が、現在出ているビデオリサーチさん以外の大きな情報が出てきて、テレビ業界としてもいろいろな方が見ているというバックボーンになるのであれば、何らかそういうものも検討されてはいかがでしょうかというふうに思います。
 2番目に関しては、インド、タイなど、集中的にコンテンツを展開するための情報収集というようなお話をさせていただきました。
 中国に関しては、かなりの方が行かれているというふうに思っています。今は、インド、タイという国が非常にそういう意味ではホットだということも認識しておりますが、アメリカ資本の会社は、インドで既に入っておったりもします。ですので、ここはある種そういうテリトリーを集中して、皆さんで展開すると。情報を交換するというようなことを意図してみてはいかがでしょうか。
 つまり、会社一つ一つがインドに向かってベクトルを向けても、やはり矢の本数としては非常に細く短いものになりがちです。いろいろな会社が集中して、同じ地域に対して展開し、そのことの情報交換をするということができれば、インドについては非常に可能性があるというような意見と、大変しんどいという意見が今は混存しているわけですけれども、何らか新しい情報が整理されてくれば、解決策が見えるのではないかなというふうにも思います。
 3番目は、コンテンツを低価格でしか販売できない地域に対するサポートで、これはやはり韓国製のコンテンツがアジアを席巻した理由の一つとして、やはり政府の見通しというのが非常にあったということでございます。結果として、販売先がほとんど日本だったということで、先日の新聞等では、韓国製のテレビ番組の販売益が日本が買わないために落ちてきているという情報が出ておりました。そういう意味では、やはり若干今韓国コンテンツが多少苦戦しているというのであれば、このタイミングこそ日本は逃しちゃいけないのではないかなと。このタイミングをしっかりと官民あわせて掴んで、アジアの地域に対するやはり販売強化というものについて、しっかり共闘していければいいなというふうに感じております。
 私からは以上です。

○久保利座長 ありがとうございます。示唆に富んださまざまなご提言、ありがとうございました。
 なお、ペーパーでございますが、本日ご欠席の浜野委員から資料4−2をちょうだいしております。これにつきましても、浜野先生から、先ほど石川参考人がおっしゃった海外に出ていくこと、海外から引き入れるというようなことも含めてさまざまご提言をいただいておりますので、ご紹介させていただきます。
 続きまして、全体についての意見交換に移りたいと思います。
 事務局、参考人からの説明等を踏まえまして、発言のある方はネームプレートをお立ていただきたいと思います。
 原田委員、お願いします。

○原田委員 私も石川参考人の先ほどのお話、大変刺激を受けながら聞かせていただきました。
 テレビの世界におりますと、テレビの世界に引き換えて、先ほどの話をどう考えるべきか、ということをさまざま考えました。それから、やはりアジアのセンターとしての日本の位置づけ、あるいは今私の念頭にありますのは、中国。日本は中国のものを、そしてNHKの場合も大変たくさんの番組をつくっています。
 一方で、中国に番組を出して、向こうでも見てもらいたい、そういうことはどうやったらいいのかということにも大変関心を持っております。そういう意味で、なかなか刺激を受けて話を聞かせていただきました。
 そういったことを含めて今日はお話しをさせていただきます。一つは、手がかりとして、皆様のお手元にパンフレットの冊子を配らせていただきました。これは、NHKが海外に番組を販売する際に使用しております番組のカタログといいますか、パンフレットでございます。春夏2回出しておりまして、これは最新版でこの10月に出したばかりのものであります。
 ご覧いただくと、自然番組からドラマ、アニメに至るまで、さまざまなジャンルの番組、全部でここには116タイトル出ております。この中には、プロダクションの皆さんと共同制作、一緒に作ったもの、そういうものはNHKのほかにそれぞれ表示をしております。3割程度がそういう番組だと思います。
 これを用いて、テレビの場合は「MIPCOM」というフランスで大きなマーケットで販売をしていくわけですけれども、その状況を一つ申し上げますと、今、ある意味日本のテレビ番組の販売については追い風が吹いているということがあります。
 それは何かというと、やはりハイビジョンで制作した番組ということであります。ハイビジョンというのは、日本では標準になりましたが、世界ではまだまだというところがあり、近年になって中国でも北京あるいは上海で衛星のハイビジョンチャンネルが立ち上がって、韓国でもそういうチャンネルが始まっております。ヨーロッパでもそういう動きがある。言ってみれば、新しいチャンネルがどんどん立ち上がっている。
 ただ、その中で、番組のニーズとしては、蓄積したものがないということで、幸いにも日本というのは先例をつけたということで、ハイビジョンなどの蓄積、それから今の制作は圧倒的に大きいわけです。マーケットでいうと、例えばそういうところに向けては、週1本で年間50時間、あるいは毎日1時間ずつで200時間など、いってみればシリーズのものに対する需要、ニーズが今大変高まっております。そういう中で、18年度、先だっても数字だけご紹介しましたが、全部で6,500本、40カ国ぐらい番組を出しております。
 こういう状況というのは、私はまだ続くというように思いますので、海外に番組を出していく場合に、一つは品質、もちろんすぐれたものである必要がある。そのこととあわせて、向こうのニーズにこたえられる形でシリーズのものをきっちり制作して、販売につなげていくということを、今、全世界では大変大事な状況にあると思っております。
 中国は、今年35周年ということで、NHKの場合、中国のものを扱った番組をたくさん出しているのですが、その中で、さっきお話を伺っていて、私、今、一つちょっと可能性があるなと思っておりますのは、この春から、つい先日シリーズが終わりました、「中国鉄道の旅」という、衛星放送番組で関口さんに延々と3万7,000キロ旅をしていただきました。これは、条件でいうと、一つは量がきっちりとそろう。それから、あの国でいうと、日本のようにいわゆる紀行番組ものがふんだんにあるわけでは多分ないだろうと。南の人が北のことをどの程度知っているのかということでいうと、極めてニーズはあるのではないかと思います。それから、実際には、この番組は国際共同制作といってもいいように、現場ではかなりの中国人スタッフの方が大変な協力をしてくれて、その人たちが熱烈にやってくれたということを含めても、受け入れられる素地はあるかなと。こういうものが受け入れられていくと、今度、例えば日本の鉄道の旅というものが向こうでも受け入れられるとか、そういうものを突破口にしていけば、何か道が開けるのかなと。実はいろいろな障壁はあるのですが、そういうことはぜひ力を入れてみたいなと思います。
 それから、もう一つ大事なのは、海外でのコンクール。これは、やはり日本の番組、優れた制作番組があるのだということを知ってもらう意味では大変大きなチャンスになるのです。「ハゲタカ」がイタリア賞をいただいたりしまして、大変ありがたいのですが、エミー賞では、NHKからの3番組が残っていたのですが、これは残念でありました。やはりそういうところで頑張れるということは、そういうチャンスをつくるということ、それから、実際にはそれをやはり担っている人たち、あるいは制作会社の方々の育成といいますか、そういうものを非常に進めるということで、大きな意味があると思います。
 ただ、実際にコンクールに出す場合には、当然英語版の制作をしなければならない。ですから、先ほど石川さんのお話で、国際共同制作の場合に、フランスでは国がマーケットでするという話もありました。あるいは例えば海外のコンクールへ制作会社の作品を出す場合に、英語版の制作などを補助する、そういう仕組みがやはりあってもいいのではないか。やはりこういうことが一つ方策として先に進むことにつながるのではないかというように思います。
 以上でございます。

○久保利座長 ありがとうございました。
 次に、中村委員、お願いします。

○中村委員 今日は非常にさまざまな刺激的な論点が提出されておりますけれども、私は資料1に沿って、さらに4点ばかり、ここに書かれていない政策的な論点、施策について指摘だけしておきたいと思います。
 まず最初は、3ページの全体の課題や方向性についてですけれども、ちょっとここには書かれておりませんけれども、メディアの法制度に関する論点があってもいいんじゃないかなと思います。総務省を舞台に、通信、放送の法体系の見直しが進められておりまして、私もその作業に携っておりますけれども、今月まもなく取りまとめということになります。今回取りまとめて、来年、再来年ぐらいかけて、2年間ほど煮詰め、2010年に法案として提出したいという意向なんですけれども、今の議論の方向性は、通信や放送の縦割りの仕組みを改めて、コンテンツ、ネットワークといったレイヤ別の編成にするという方向で議論が進められているんですが、そのポイントは、電波などの使い道を柔軟にして、つまり、大幅に規制緩和がどこまでできるのかというところにあります。つまりそれは、コンテンツのビジネスやサービスが花開く方向で、どういうふうな制度設計ができるのかということだろうと私は認識しているんですけれども、同時にそれはまた、著作権法ともどういうふうに整合性をとるかという議論にも波及するはずで、根本的な議論が必要になっていると思います。
 そうした法制度の問題についても、規制強化の方法ではなくて、コンテンツを創造するという、今日のテーマの沿った方法で議論をしていくというのがあってもいいかなというふうに考えました。
 それから、その次に、4ページ目の下請法の対応についてですけれども、先週、これは衆議院の総務委員会でも、放送業のガイドラインについてのやりとりがありました。こういった方向の政策がある一方で、コンテンツの取引市場の議論もされておりまして、今朝もそのワーキングがあったんですけれども、コンテンツの取引市場をここ日本につくろうという話は、規制的なといいますか、権利環境を変更するというような手法とは別に、民間主体で新しいビジネスの場をつくるというアプローチでありまして、例えば放送のコンテンツを流通促進するためには、放送事業者も番組制作者の方も基本的に前向きであって、それがビジネスモデルとして成立するのかどうかという議論をしています。つまり、権利関係とか、スキームをどういうふうに改めるかということと同時に、ビジネスベースでどこまで流通できるかというような議論をしているところでありまして、私は規制的なアプローチだけではなくて、市場づくりをどのようにプロデュースするのかという施策にも力を入れるべきではないかと思います。
 それから次のページの人材育成について、これは、8ページ目の個人創作とも絡む話なんですけれども、人材育成の議論をするときには、コンテンツの業界、産業界で役立つ即戦力をどのように確保するかというのが非常に大事で、それは産業政策として取り組むべきだと考えますが、同時に、より長期でコンテンツを創造していく下支えをする人材をどう育成するのかという、教育政策や地域政策にも力を入れるべきだと私は考えております。
 例えば、アマチュアや子供の創造力や表現力をどう全国的に底上げしていくのかとか、そうした創作活動やデジタル技術を使った知財教育というのにどう力を入れていくのかというのも、こうした場で話をしていただければと。全国的な底上げといいますか、長期的な取組というのも同時に推進されるべきではないかと考えました。
 最後に、13ページの海外展開のところですけれども、これも、取引市場の議論の中でもまれているんですが、これは先ほどの原田さんの話とも通じるんですけれども、取引市場の議論の中で今行われている議論としては、例えばMIPCOMのような売買展を日本にもつくるということと、それから、海外展開のためのデータベースを充実させるということもありますし、さらには、海外でのテレビ局やテレビのチャンネルを保有するといった議論、さらには国際放送を充実するという議論、さまざまなアプローチがあります。ですから、そういったことについてもトータルで、かつオールジャパンの施策を進めるということでいいんじゃないかと感じました。
 以上です。

○久保利座長 ありがとうございます。
 それでは、和田委員、お願いします。

○和田委員 全般を通じてでございますけれども(これは、一番最初にも申し上げたんですけれども)、非常にテーマが広範な内容でございますので、どこにフォーカスして議論していくか、着地をどこにしていくかということをやはり意識することが重要なんじゃないかと思います。
 例えば今出ました人材育成のところでも、確かに演劇子役の方々は大変かもわからないですけれども、子役の方々の出演可能時間延長について記述してあるかと思えば、次のページを開くと、それと同等の重さで著作権の登録制導入という巨大なテーマがさらりと書いてある。このギャップをどのように消化していいかよくわからなくなってしまいますので、そもそも、どういうことを目的として議論が進行しているのかということを、僕ももう少し理解しなきゃいけないと思っています。
 さて、コンテンツ会社を経営していますと、日本人というのは極めて物をつくる才能がある国民であるというのは、これは断言できると思います。この点にも少し光をあてた方が良いと思います。
この会合ではビジネス周りの話題が多いのですが、ビジネスは、変な話なんですけれども、自分で努力して情報収集して頑張りなさいという話だと思うんですね。できていないのは、我々経営者の責任になるんだと思うんです。構造的にどうにもならない話があるんでしたら、そこは議論すべきなんでしょうけれども、そうでないところですと、やはり各自の企業努力というのがまずあるというような話だと思うんです。
 一方、物をつくる環境はやはり整備していかなければならない。ビジネスになる以前の問題として、物をつくる人々がどう育ってくるかということこそが、非常に重要なポイントだと思います。物をつくる人たち、創造的な人たちがすくすく育っていく環境をどうつくるか。そのコンテクストで、例えば流通促進が必要だとか、そのために特許どうのこうのとか、そのための学校教育がとかいうような議論になるのであれば恐らく意味があるのではないかと思います。
 非常に極論めいた言い方をしますと、物をつくる能力は日本人がすぐれていて、それは世界中どこでもできるものではない。一方、ビジネスは、努力すれば誰でもできる分野だと思うんですね。
 そうすると、日本の価値ということでいうと、物をつくる側にどう力を入れていくかということだと思います。これはあくまでも私見にすぎないんですけれども、いずれにしましても、どこにフォーカスして議論するかということをもう少し私も理解させていただければと思っております。

○久保利座長 ありがとうございます。
 フォーカスの問題、ずっと座長も気になっているところでございまして、事務局ともよく相談をしながらまとめていきたいと思います。
 時間があと10分を切りましたので、三尾委員、そして高橋委員、久保委員にお願いをしたいと思います。よろしく、時間厳守でお願いします。
 三尾委員からどうぞ。

○三尾委員 本当に簡単に1点だけ申し上げたいと思います。
 事務局に作成いただきました資料1なんですが、1点だけ申し上げたいのは、1ページの人材育成の観点で、この資料1全体に関しまして、いいクリエイターという概念の中で、クリエイター自身が創作をして、さらにそれを、流通をはじめ、売っていって商売にしていく。つまり、第三者の流通業者を介さないで、すべてを行っていくというようなケースが想定されていないんじゃないかなというところが気になりました。
 以上のとおりですから、資料1の個人の創作等に係る適法環境の整備という8ページに記載されている「個人」が、クリエイターとして成功していくことは容易に考えられることなんですね。ですので、この「ネットワーク上のコンテンツ共有サービス」を、単に違法コンテンツの除去という観点だけではなく、個人の創作にとって例えばプレゼンの場とか、ポータルサイトとして利用すると場としても考えられた方が、これから将来発展していくんじゃないかというふうに考えます。
この点で、具体的に申し上げたいのは、このコンテンツの会議の1回目のときに申し上げました、「フロックマン」さんの話です。この方は、全く製作の素人で、フラッシュという本当に簡単なソフトを使ってアニメをつくって、それをどんどんヒットさせて、インターネットを介して有名になって、それが資金提供者とマッチングをして、資金がついて事業が広がっていった方なんですね。まさにそういう環境がこれからインターネットの世界では十分あり得ますし、お金を最初にかけて、映画とか放送番組とか、そういった形のコンテンツではなくて、いわゆるニッチな分野の発展性も十分あると思うんですね。ですので、そういう可能性をつぶさないような形での環境整備というところを考えていく必要があるのではないかというふうに思います。
 人材育成のところも、ビジネスとしての事業をクリエイター自身が立ち上げて行く必要性も高いといった意味を含めて「ビジネスがわかるクリエイターの育成」ということも考えておく必要があるのではないかと思います。
 以上です。

○久保利座長 それでは、高橋委員、お願いします。

○高橋委員 私は、コンテンツ創造の現場の状況の改善という観点からお話をしたいと思います。
 資料1の3ページのところにすぐれたコンテンツを創造するための現状と課題、それから検討の方向性というのが出されているわけなんですけれども、やはり、この中で一番上にあります、実際にコンテンツを創造創作する立場の者が経済的に厳しい環境に置かれているケースがあると。ここのところの改善というのは、非常に重要だと思っています。この製作者への適正な利益配分に関して、資料の方では4ページのところで下請取引の適正化等々の問題を取り上げております。下請取引は、この資料でいきますと、かなり改善しているというふうに書かれているんですけれども、やはり放送事業者と製作者との関係とか、このあたりを見てきますと、実際に表面化するものはものすごく少なくて、泣き寝入りに終わってしまうケース、優越的地位の濫用とまでは申し上げませんけれども、それに近いようなことがこの現場では現実には起こっていると私は認識しております。
 ですので、下請法の規制の強化ということで、公正取引委員会も国の底上げ戦略を受けて、重点4分野に入れたりしております。対応案のところで、違反行為の厳しい取り締まりを徹底することに加えとありながら、上の部分から読んできますと、かなりはそちらはできているので、その後の第三者の仲裁・斡旋による裁判以外の紛争処理解決、ADR手段を取り入れる方策も検討すべきではないかというふうに読めますが、私は前段の方の取り締まりの徹底ということをまだ行っていかなければいけないと思っています。
 裁判外紛争処理、ADR法ができたので、いろいろな問題の現場で、ADRで解決すればいいんじゃないのみたいな話になっているところは非常に気になるところでありまして、実際に今まで動いているADR機関でも、実効性が上がっているというところは、例えば交通事故紛争処理センターみたいに事実関係の認定が非常にやりやすいところとか、本当に少ししかないんですよね。このコンテンツの問題というのは、そんなに簡単にADR機関にゆだねられるものだろうかと私は思います。ですので、公正取引委員会任せではなくて、例えば下請代金支払遅延等防止法という法律によれば、事業者とか親事業者、下請事業者の営む事業を所管する主務大臣がどんどんやるようにというふうにきちんと書かれているわけですので、総務省とか経産省のこの強化ということに関しては、規制強化というより、やはりルールを徹底するという意味で、今ある法律でもかなりできることはまずやっていただきたいということです。それから、さらに新しいルールが必要なのであれば、それも考えていくべき思います。
 そして、この3ページの2番目のすぐれた人材を育てるというのは、ここが解決していけば、うまくいくというふうに思います。
 そうしますと、3つ目の製作事業者が主体的にコンテンツを製作するための資金を自ら調達できる手段が少ないと。これに関しては、私は、先ほどの下請法の問題とは別に、かなりこの資金調達の制度はできているというふうに思います。私は金融庁の方で金融商品取引法とか信託業法の改正の検討にも加わりましたが、この資金調達の道はできているんだけれども、問題は、それがうまく使えていないというところにあるんだと思います。
 7ページのところに、投資環境、いろいろな資金調達が多様化して、法律も改正されて、いろいろできるようになっていると書いてあるんですけれども、実際にそれが十分活用されていないのはなぜなのかということだと思います。この理由は幾つかあると思うんですけれども、やはりつくったものがきちんと流通する仕組みがなければ、製作する人は製作意欲というのが起きないと思いますし、先ほどから場の設定はとても大事というお話がありましたけれども、場の設定ももちろん大事なんですけれども、弱い人たち、それこそこれから育っていく人たちが大きな放送局と大きな資金とも競争できるような環境整備というのも今後考えていかなければいけないと思います。
 以上です。

○久保利座長 久保委員、お願いします。
 それから、木村委員はその後ご発言がございますか。お願いします。

○久保委員 では、簡単に。
 先ほどちょっとずっと温めていたフラッシュアイデアがありまして、それをお話するのを忘れたものですから。
 可能かどうかわかりませんが、ODAの一つとして、海外の国が日本のコンテンツを買う仕組みができないだろうか。または日本のコンテンツを政府が保証した形で海外へ出すというようなことはできないだろうかということです。やはり何千億も出しているんであれば、その中の本当1億でもあれば状況は好転するものだと思いますので、ぜひともご検討いただければなと思います。
 以上です。

○久保利座長 それでは、木村委員、お願いします。

○木村委員 私多分、唯一ハードウエアの立場といいましょうか、そういった立場として参加させていただいて、今日はちょっとそういうふうな観点から幾つか感じたことをお話しできればと思います。
 石川さんの話について関係があると思うんですけれども、やはり国内で考えたときに、ブロードバンドのインフラのすごさというのはすごいものがあると思うんですね。これは、世界を見れば見るほどこの国に帰ってくるとすごい。それは、光ファイバーにしても、それから携帯にしても、これだけのインフラがそろっている国というのは、しかもコストのことを考えてもないんですね。多分、この会合の1回目でIPTVのヨーロッパの話をさせていただきましたけれども、そういうインターネットのインフラ、ブロードバンドのインフラの中で、全部がIP化していくというふうに、インターネット、ブロードバンドが動き出すというところで、ものすごくいろいろなものが壊れてといいますか、壁が崩壊をしているという現状があって、そういう中では、まさに、石川さんがおっしゃったように、最先端のインフラと旧メディアの市場が混在している、こういうマーケットというのはないわけで、そこから何かおもしろいものが出ないわけがないのではないかという感じが私もします。
 もう一つ、そういう中で、今日お話を聞いていて、一つ思ったのは、人材のところで、石川さんが海外に優秀なプロデューサーだとか、そういった方がいっぱいいるんだということを聞いていまして、これは、私も何を思っていましたかというと、15年ぐらい、特にIT系の家電の産業で、台湾の資本と、それからシリコンバレーの技術というのがどう動いてきたかというのがちょうど類似形のようになっていまして、台湾はここ10年、15年ぐらいの間にいわゆるITの産業をアメリカとの関係で引っぱってきて、いわゆる巨大IT生産国になるわけです。
 それがこの10年ぐらい、今度は中国の労働力を使って大変な工場になるというところなんですけれども、そういうのを私もずっと見てきて、やはり一番の軸はシリコンバレーで育った人材がやはり還流して、そういう産業がやはり大きくなったということを目の当たりに見ていまして、ちょうどそういう話をされている中で、そのとき、やはり台湾がやったことは、そういう仕組みをつくったんだと思います。その結果、やはりすごくそういう人材が還流をして、いろいろな産業を起こして今日現在があるということで、そういう点では、一番多分大事なところのいい人材がいるんだということを今日石川さんがおっしゃいましたけれども、もしそうであるとすれば、あとは仕組みをうまく動かせばこういうことは十分に起こるんだろうなということで、ちょっと別の次元ですけれども、思っていまして、大変そこは、これはいけるんではないかという感じを私は持ちました。
 以上です。

○久保利座長 ありがとうございます。
 佐藤本部員、いかがでございましょうか。

○佐藤本部員 私はオブザーバーですので、最後に一言だけ申し上げます。
 今日は石川参考人のお話も含めて、クリエイティブな議論がたくさんされたというふうに非常に感動しております。
 ただ、論点が非常に多過ぎて、論点を整理していく必要があるんじゃないかと。その中で、優先順位というものを考えて議論をしていく段階に入ってきているんじゃないかというふうに思います。
 今日お話を伺っていて、つくづく思いましたのは、やはりこのコンテンツビジネスの中で日本が勝てるビジネスモデルは何なんだ、というところをどうやってつくり上げていくかということが一番重要じゃないかと感じました。インフラも非常に強いところがある。また、コンテンツもある。あとそれをどうやってビジネス、市場の中に儲かる形にしていくかという観点での整理がやはり必要なんじゃないかという感想を抱きました。そういう意味で、ぜひこれから先どんどん議論が深堀りされ、整理されていって、日本がアジアでも存在感のあるようになっていただきたいなと期待をしております。

○久保利座長 本日は、すぐれたコンテンツの創造と海外展開について、委員会における積極的な取組などをご紹介しつつ議論いただきました。参考人の石川さんには、最後までおつき合いいただきまして、本当にありがとうございました。
 事務局におかれましては、これまで委員の皆さんからいただいたご意見、特にどこに重点を置くのかというなかなか難しい難問も宿題になっております。次回のワーキンググループ、議論する予定の中間報告に反映させるべく、政府部内でご検討いただくようにお願いをしたいと思います。
 また、石川参考人には快くご協力していただけるという契約書の開示等につきましても、さらに協議して、成果のあるものにさせていただきたいと、かように考えます。
 それでは、予定の時間を過ぎましたけれども、今日の会合をこれで閉会したいと存じます。
 コンテンツ企画ワーキンググループの第4回会合は、来年2月1日金曜日、13時から霞が関東京會舘、このビルでございますが、シルバースタールームで開催する予定です。
 本日はご多忙のところ、まことにありがとうございました。