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第3回知的創造サイクル専門調査会 議事録


1.開 会:平成17年12月21日(水)10:00〜12:00
2.場 所:知的財産戦略推進事務局内会議室
3.出席者:
【委 員】 阿部会長、下坂委員、中山委員、加藤委員、妹尾委員、八田委員、田中委員、前田委員、吉野委員
【参考人】 植村参考人
【事務局】 荒井事務局長、藤田事務局次長
4.議事
  (1)開会
  (2)知的財産基本法に基づく施行状況の検討の進め方について
  (3)知的財産人材育成総合戦略について
  (4)知的財産関連分野の広がりに対応した国際ルールの構築について
  (5)閉会


○阿部会長 それでは、時間より少し前ですが、お揃いになりましたので、これから知的創造サイクル専門調査会第3回会合を開催させていただきます。本日は、御多忙中のところありがとうございます。
 なお、本日は板井委員と久保利委員は御欠席という連絡をいただいております。また、参考人の方にお越しをいただいておりますので、最初に御紹介申し上げます。世界知的所有権機関前事務局次長の植村昭三様でいらっしゃいます。植村様には後ほど国際機関等、さまざまな国際議論の場における知的財産と、公共政策に関する議論の内容について御紹介をいただくことにしております。よろしくお願い申し上げます。
 本日は、まず知的財産基本法に基づく施行状況の検討の進め方について事務局から説明をさせます。では、お願いします。

○藤田事務局次長 それでは、資料1をごらんください。「知的財産基本法に基づく施行状況の検討の基本方針について」ということでございます。
 12月9日に開催されました知的財産本部におきまして、このとおり決定をされました。この決定を受けまして、当専門調査会において知的財産基本法に基づく過去3年間のレビューを行っていただきます。
 具体的な進め方でございますけれども、来月の中旬に委員の皆様のところにまず事務局の方から個別に伺わせていただいて御意見をいただいた上で、事務局で原案を作成し、次回の専門調査会において御議論をいただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。その上で、次々回の専門調査会において取りまとめをいただき、2月の下旬になるかと思いますけれども、次回の知的財産本部会合において阿部会長より御報告をいただきたいと存じます。以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。そういう流れで進めさせていただきたいと思いますので、御協力のほどをよろしくお願い申し上げます。
 それでは、「知的財産人材育成総合戦略について」に入らせていただきます。前回に引き続きの御議論をいただきたいと考えております。まず最初に事務局より人材育成総合戦略について、前回の皆様の御議論を踏まえて作成したものについて説明をしてもらいたいと思います。

○藤田事務局次長 御説明申し上げます。資料の2−1と、2−2を用意してございます。資料2−1が本体でございますけれども、さまざまな方々からの御意見をいろいろ盛り込んだり、あるいは事実関係を書いておりますうちに大変厚いものになりまして、これで御説明するのは恐縮ですので、資料2−2の方で御説明を申し上げたいと思います。資料2−1の本体につきましてはもう少しコンパクトにするように心掛け、今日の皆様方の御議論などを踏まえて次回の専門調査会で御決定をいただければと存じます。
 資料2−2でございますけれども、1枚めくっていただきますと、これが大体概要でございますけれども、まず総合戦略がなぜ必要かということでございます。知的財産立国を目指していろいろな動きが出てきているわけでございますけれども、それに伴いまして知財の人材の重要性が高まっている。特に人材の質の向上が必要である。いろいろな環境の変化に対応するために新しいタイプの知財人材、あるいは今おられる知財人材の質の向上が必要である。
 もう一方で人材の量、数の不足というものも懸念されているということで、その質、量ともに向上させなければいけない。特に人材育成の特性でございますけれども、人材の育成には大変時間がかかる、あるいは効果的な人材の育成にはいろいろな手段を有機的に使う必要がある。あるいは、多種多様な人材を育成する必要がある。こういう背景から、知的財産人材育成総合戦略の策定が必要であるということでございます。
 次のページをごらんいただきますと、知的財産人材と言っても大変に多様でございまして、一応3つのカテゴリーに分けてございます。第1が「知的財産専門人材」でございまして、知財の保護・活用に直接的に専らそれの専門家として携わる人材を念頭に置いてございます。第2が「知的財産創出・マネジメント人材」、これは前回の資料では知的財産活用人材となっておりましたけれども、活用という言葉が創造、保護、活用と言ってよく使う知財サイクルの活用と同じ言葉だと混乱を招くのではないかという懸念もございまして「知的財産創出・マネジメント人材」というふうに今回はさせていただきました。これは知財を創造する人材、あるいは知財を生かして経営やマネジメントを行う人材が念頭にございます。
 なお、専門人材が重要で、2番目の範疇の人材が重要性に劣るということでは全くございませんで、これは重要性の差ではなくて、知財の専門性の程度の差によってこういう分類をしてございます。立派な知財がそもそも創出されなければ、それをいかに生かす、あるいは活用しようとしてもその意味がないわけでございまして、そういう意味で知財の創造あるいは経営も1の専門人材と同等に重要なものであると私どもは認識してございます。 3番目の範疇は「裾野人材」ということで、一般社員、企業の中で、特に知財に関わらないけれども、一般の例えば営業などをされる社員の方々とか、あるいは一般の消費者、それから知的財産を将来創造することが期待される人材、要するに子どもたちということですけれども、それを念頭に置いてございます。
 次のページをごらんいただきますと、総合戦略の目標というものを概括して述べてございます。まず「3つの目標」ということで、「知的財産専門人材」については量を10年間で倍増し、質を高度化する。それから、創出・マネジメント人材につきましてはいろいろなタイプの人材を育成し、しかも質を高める。そして、妹尾先生の表現をお借りしてございますけれども、3番目に国民の「知財民度」を高めるということでございます。
 では、特にどういう人材が求められているのかということで、5つグループ分けしてございます。第1に国際的に戦える人材、第2に先端技術を理解できる人材、第3に融合人材、第4に知財競争を勝ち抜く経営人材、第5に中小企業・地域で役立つ人材ということでございます。
 その育成の手法の基本的な考え方でございます。これも御議論をいただいていろいろ直していきたいと思いますが、人材の流動化を促進していく。それから、人材のネットワークの構築と活用を図る。それから、多様な学習機会を提供するということでございます。 次の5ページは、例えば専門人材をどういうふうに育成していくのかということで、10年間漫然とその施策を講ずるということではなく、例えば3年、4年、3年というふうに3つの期間に分けて基盤の整備、あるいは集中実施、そして結実というふうに期間を区切って、その期間ごとにもう一度レビューをして施策を見直すことをした方がいいのではないかということでございます。
 次の6ページでございますけれども、ここは教育機関あるいは研修機関におけるそれぞれの機関ごとの人材の育成策についての提案の中で例示的に述べてございます。例えば、「法科大学院」については理系人材への配慮。知財に重点を置いた教育をしていただく。「知的財産専門職大学院」では知財ビジネスを多方面で支援できる専門家を育成していただく。「一般の学部・学科」においても、知財の授業を充実していただく。あるいは、どういうふうに活用するかということを教えていただく。
 それから、「コンテンツ関係の教育機関」では、世界で勝負のできる質の高いプロデューサーやクリエイターを育成していただく。それから、弁理士会とか知財協のような民間機関においてはビジネス知識、企業経営戦略、コンサルタント戦略等の教育の充実を図っていただく。それから、最後の「知財人材育成総合拠点」というものを設ければ、知財人材育成の中心的な機関として指導者の育成とか、あるいは教育手法の研究等をしていただくということではないかと思います。
 次の7ページでございますが、今度は分野ごとの人材育成策の例示でございます。例えば、企業の知財の担当者においては体系化された内部研修の充実、あるいは能力評価に関する外部検定の利用、中小企業の知財担当者においては中小企業診断士等を介して知財のマインドの底上げを図っていく。弁理士の方々には技術的な素養、あるいは条約の知識等、実務能力を高める研修をしていただく。弁護士の方々には、知財ネットとかエンタメネットの充実を図っていただく。産学連携に従事する方々には企業の実務経験者を採用する、あるいは職員の企業への派遣等の人事の交流をしていただく。それから、特許庁の審査官・審判官については大学のポストドクターあるいは企業の技術者等の任期付審査官への登用を促進するというようなことでございます。
 次の8ページ目が、2番目の範疇の創出・マネジメント人材についてでございます。例えば、研究者については知財の保護・活用に関する成功事例、失敗事例を盛り込んだような研修をしていただく。あるいは、企業の経営者や経営幹部についてはそうした方々向けの知財のマネジメントの研修を充実する。それから、コンテンツの関係のプロデューサーやクリエイターについてはインターンシップの促進あるいは大学等で教える産業界の人材の登録とか紹介ということで教育の充実を図るということでございます。
 「裾野人材」につきましては、子どもについてはまずは知的財産を創造する力をはぐくんでもらうことが大事だということで、自然体験やものづくり体験などの機会を通して豊かな心をはぐくむ。あるいは、もう少し中学生、高校生くらいになってくれば知財についてのごく基本的な、人の権利を尊重しようとか、海賊版には手を出さないとか、そういう教育もしていただくということかと思います。
 それから、大人についてはセミナーの開催とかパンフレットの作成等で、知財についての普及啓発を更に促進をするというようなことでございます。
 くわしくは資料2−1の方にいろいろ書き込んでございますので、それもごらんいただきながら御意見を賜われればと存じます。以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。
 次に、妹尾委員から補足的な御説明をいただくことになっておりますので、よろしくお願いします。

○妹尾委員 それでは、資料3に配付してありますのは、前回提示させて頂いた、人材育成政策案です。これについて少し踏み込んで、ただし簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
 今お話のありましたような人材育成拠点を是非おつくりいただければということを前回申し上げました。それについて詳しいものを資料3の後ろの方に書いてあります。ここで何をやるべきなのかということを具体的にもう少しブレイクダウンしておきます。
 1つは各専門職能の高度化と広域化の機能を深めるべきではないかということです。各職能団体、弁理士会さんだとか知財協さんはやられています。それが従来型で従来人材の育成をされていることは確かに重要なのですが、それ以上に教育のレベルの底上げをするためには、それらの司令塔的、あるいはハブ的な機能が必要であろうというのが第1点です。
 第2点に、しかし同時に新しい知財人材を育成しなければいけないと考えております。その知財人材というのは、いわゆる融合型、複合型の人材ですので、その育成機能を持たなければいけないし、それから知財クラブハウスというようものが設立される時期にきているのではないかと思います。いわゆる文系の交流機関としては、民間では例えば国際文化会館だとか、交詢社だとか、銀行クラブだとか、そういうものがたくさんありますが、技術関係だとか知財関係者が、国際的に交流するような機関というものはまだどこにもございません。そういうものがそろそろ知財立国の時期としてあってもいいのではないかということです。
 3番目に、新しい資格や検定というものをつくるべきではないか、あるいは、それを検討すべきではないかというのです。そこの検討を総合的に行うためにはこういう交流拠点でやってはどうかと考えております。
 4番目は、大学あるいは高等教育機関への教育展開で、年間10万人教育が始まってもよろしいのではないかと思います。現在大学には1学年13万人ほどの学生がおります。何も理工系だけではなくて、医薬系もあれば経営系もあります。また、昨今話題の種苗法に関係する農学部等ももちろん知財の関係で欠かせません。その方々への知財導入教育をしてはどうかと考えております。
 5番目の初等中等教育、これは先ほどの裾野人材に対応しますが、知財民度を高めるためにこういうような子どもたちへのDo'sとDoNotsを展開するためにいわば教育教材の開発だとか、そういうようなものをやるということです。
 それから6番目に、私の方でそのためには放送大学を活用してはいかがかということをかなり申し上げていたのですが、うっかりe−ラーニングのことを忘れておりました。しかし、今は残念ながら知財の関係で使われているe−ラーニングは我々からいうと10年前のものをやられています。やはり最新のe−ラーニングを軸にもう少し幅広い、オンメディア型の教育を活用すれば裾野にも使えますし、レベルアップができるだろうと思っております。
 要は、箱物ではなくてこういう活動拠点を10年間の倍増を効果的、効率的にやるために必要かと思います。
 それで、今、申し上げたようなことの一つひとつが3ページ以降に書いてあります。知財関連の資格制度の検討をしてはどうかと考えています。知財ディプロマということが前回わかりにくかったと思いますが、いわば専門家の方々の主専攻に対して、専門家の方々の副専攻という意味でディプロマを活用する。つまり、ダブルメジャーに対してメジャーマイナーという考え方を入れて、準学位ないしは準資格としてのディプロマがあってもよろしいのではないかと考えています。それ以外に、IPパラリーガル等の関連職能を整備することが、ここに優秀な人材を招き入れる要因になればと思っております。
 4ページ以降、「一般向け"知財民度資格/検定"の検討」とか、あるいはできれば指導要領等に書き込まれてほしいというふうに入れてあります。
 3番目の大きい枠として「知財マネジメント教育の定着策を展開」するということで、いわゆる企業の役員レベルの知財マネジメント教育が大変好評に行われておりますけれども、これを常設化すべきです。あるいは、その次の5ページにございますが、エグゼクティブレベル、これは我々経営教育をやっている人間からいくとエグゼクティブレベルというのは重役という意味ではなくて、いわばその候補となる、40歳前後の幹部を教育することを言いますけれども、そこのクラスでこれから中核になる人材を育てる。これについても現在、常設した教育機関はございません。30歳前後を対象としたMBAレベルはありますが、エグゼクティブレベルはございませんので、この機関の常設化が必要ではないかと思います。
 また、もちろん専門職大学院がたくさんできておりますで、そこでの教育を充実させていく。
 それから、少し先ほどのe−ラーニングに戻りますが、実は今、企業内教育でe−ラーニングというものがかなり実践されてきています。幸か不幸か、コンプライアンスだとか、ハラスメントの防止だとか、あるいは個人情報保護法だとかと言っているような必須のものがこのe−ラーニングを通じて行われています。必須の一テーマとして知財教育を企業内でやっていただくということではないかと思います。
 先ほどの全体のお話で、大人に対してはパンフレットを配るということですが、反対はしませんけれども、むしろこういう企業の中でのe−ラーニングみたいなものに入れて、ここで言われる裾野人材としての教育が進展する可能性もあるわけです。先ほどのような拠点でコンテンツをつくって企業さんへ御提供する。企業さんはそれを社員に実施するといったようなスタイルもあり得るかと思います。
 以降は5ページの学部レベル、先ほどの年間10万人教育、それから放送大学、大学院の活用です。放送大学は単位互換が可能なものですから、大学として科目に組み入れやすいということがあります。その例を6ページに挙げてあります。このような学部教育と専門教育をやってはいかがかと思っております。経営学関係者の研究の促進も書きました。
 それから、6ページの4番目の「地域への知財教育の展開」は中小企業コンサルタント等、あるいは公設試等への教育を更に加速させてはいかがかということです。
 7ページ目ですが、これは初回のときに申し上げましたが、いわゆるリサーチノートの問題がいろいろ出てきています。最近の不正や情報漏洩を防止するため、また発明者権、インベンターシップの認定の証拠の問題等に対応する必要があります。そのためにはラボノート、リサーチノートと呼ばれているものをしっかりしないといけません。いわば日本が丸腰の状態であるという懸念を私はしていますので、ここのところに少し手を打ってはいかがかと思っております。
 以上、資料3に基づきまして御説明させていただきました。ありがとうございます。

○阿部会長 どうもありがとうございました。次に、久保利委員から知的財産人材育成に関する御意見のメモをちょうだいしていますので、事務局から紹介してください。

○藤田事務局次長 資料4としてお配りしてございます久保利委員からの御意見でございます。
 2点ございまして、1番目は法科大学院における知財教育の充実についてということで、「具体的提言」というところにございますけれども、第1に知財に関する科目を充実させる。第2に、理系人材の法科大学院への入学を奨励する。第3に、夜間コースの開設、理系人材の優遇措置等を講ずるというようなことを提言いただいてございます。
 2番目が知財に詳しい弁護士の充実についてということで、具体的な提言のところをごらんいただきますと、知財ネットあるいはエンターテイメントロイヤーズネットワークの周知徹底を図る。日弁連において実施されている研修の充実を図る。あるいは、国や地方公共団体、企業等が積極的に知財弁護士の採用、活用に踏み切るということを御提案いただいております。以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、議論に入りたいと思います。本日は事務局から、資料2−1は非常に膨大ですが、一字一句というわけにはいきませんけれども、今、資料2−2についてまとめていただきました。それから、妹尾委員からの資料3、久保利委員からの資料4、これが本日の資料でございますが、前回もいろいろ御議論をいただきました。事務局は前回の議論をも踏まえて資料2を作成してくれたわけですけれども、繰り返しになってもよろしいかと思いますが、それらも踏まえてどこからでも結構でございますので御意見をいただければと思います。よろしくお願いします。

○妹尾委員 今回の資料を拝見して全面的に私は賛成ですが、幾つか補足的に意見を言わせていただきます。例えば資料2−1の5ページのところに大きな表がありまして知財人材の分類が書いてあります。これはもちろん事務局案として反対するわけではないのですが、若干懸念するのが、「求められる知的財産に関する専門能力」というところに高、中、低と書いてあります。これを見ると従来型の知財の人は、そうか、高ければいいんだというので、また深くて狭い世界へ飲み込まれてしまうのではないかと懸念してしまいます。 私は、高いとともに周辺に広いということが知財の専門の人材に非常に必要なのではないかと思うわけです。もちろん裾野の人材も低く狭くではなくて広くということが必要になるのですが、知財にプロとして関わっている方ほど高くはあるけれども、まさに知識としては広い裾野を持っていただきたい。そうしないと、今の知財タコツボ村と呼ばれているような状況が更に深まってしまうのではないかという懸念をしてしまいます。
 それに呼応すると、資料2−2で例えば7ページを見ていただくと、ここに「技術的素養や条約の知識など実務能力を高める研修」とあります。これは大賛成なのですが、弁理士の方々が高度化すればするほど、実は周辺の経営だとか技術についての知識も持って、そして企業競争力強化のためにコンサルテーションができるくらいの幅広い人材になっていただかないと、やはりこれから10年後はまずいと思うわけです。
 したがいまして、この専門能力を高くすることは大賛成なのですが、同時に専門の方ほど幅広くしていただきたいというところに関して少し補足的に意見を言わせていただきます。

○阿部会長 ありがとうございました。今の御意見は、前回もほかの委員から類似の御発言があったように思います。では、前田委員どうぞ。

○前田委員 前回の会議の際、ライフサイエンス分野の知的財産の目利きを育てる人材養成の資料を出させていただきました。この分野における目利きは、日本には余りいないものですから、このプログラムの中で海外の弁理士事務所へインターンシップをお願いしています。現在、東京医科歯科大学の客員教授をしていただいている先生が一緒にプログラムを考えてつくってくださるということでしたので受け入れてもらうということを決めました。社会人の生徒が多く、弁理士の方などがインターンシップへ行く関係上、日本ですと弁理士事務所では、同業他社への派遣となりますので、なかなか受け入れていただくのは難しい状況にあります。その意味からも海外を選びました。
 また、夏にワシントンロースクールへの3週間の研修も行いました。現在の制度では、文部科学省の振興調整費で学生に海外へ行ってもらうお金を出すことがなかなか難しい情況にあります。その他、法科大学院とかMOT、そして振興調整費でも、海外への研修というものが難しい状況にあると聞いていますす。ライフサイエンス分野のように、特に日本に目利きが育っていない場合は、海外の手法も取り入れるような工夫をしても良いと思います。今後、いろいろな分野で柔軟な対応ができるようになっていけばいいと思っております。
 特に私が今、関わらせていただいている分野はアメリカの戦略というものをつかんでくるのが大事なものですから、規則ではだめですと言われないような形になっていくと、どんどんいろいろな大学も利用できるのではないかと思っています。

○阿部会長 ありがとうございました。今の御発言でちょっとお聞きしたいのは、海外に行けるか、行けないかという問題とは別に、日本では守秘義務その他で受け入れてくれないけれどもというお話がございましたね。アメリカでは、それはどうなのですか。そこをちょっと御説明いただけますか。

○前田委員 当然、弁理士事務所ですから守秘義務も結びますし、かなりきちんとした契約を結びます。快く受け入れていただけるのは、先生と個人的に親しいという点もあろうかと思います。
 また、私どもの生徒になっていただいている方は弁護士や弁理士の方なものですから、日本の弁理士事務所にインターンシップで行ってもらおうと思いますといわゆる同業他社になってしまいます。そこで、よそのところの感覚をつかむのは大事なことだと思いますが、双方のどちらにとってもいろいろな思いがあると思いますので、海外を選択しました。
 そして、ライフサイエンスの方の分野はアメリカでの係争などをじかにつかまないと意味がありませんので、インターンシップ先にアメリカを考えました。

○阿部会長 ありがとうございました。非常に具体的な御意見でした。では、八田委員お願いします。

○八田委員 資料2−2の方に「人材像の基本的な考え方」ということがございます。ここに「国際的に戦える人材」、「先端技術を理解できる人材」、「融合人材」、「知的競争を勝ち抜く経営人材」、それから育成の基本的な考え方として「人材の流動化の促進」、「人材ネットワークの構築と活用」の重要性が指摘されております。今、前田委員のおっしゃったことは、このすべてに関わることではないかと思うんです。
 これに関しまして、技術者の方、それからもちろん医療関係の方、そういう専門的な方に対して奨学金を付けて海外のロースクールに留学させるというシステムが必要なんだということを私も前回申し上げた。それが本資料の2−1のどこに入っているのか、後で教えていただきたいのですが、私が気が付いた限り、「海外留学の機会を拡充する」といったことしか書いてない。これでは全然足りないと思います。
 奨学金が必要なのです。
 奨学金には2つのタイプが必要です。1つは、弁護士になる人のための貸与奨学金です。どうせ後で金もうけをする弁護士に何で奨学金を付ける必要があるんだということがございます。基本的にはアメリカの大学院はビジネススクールとかロースクールとかというところに余り奨学金はありません。それで、あとで金にならない仕事をする我々経済学者とか、そういうところはほとんどその大学院は奨学金で上位3分の1くらいの学生をとるわけです。日本の大学の先生でアメリカのPhを持っている人はほとんど、向こうの大学の奨学金を取って留学したわけです。ところが、ロースクールでは奨学金が基本的にはないわけです。中山先生は御存じだと思いますけれども、そういうほかの大学院のような勢いではない。
 そうすると、日本人だって十分金はあるんだから、どこか金を借りてくればいいじゃないかということになるのですが、基本的にはほかのものと違って、奨学金は銀行からは借金ができない。借金をするときに形がないんです。払えないときに、担保として自分自身の役務を提供するわけにはいかないからです。このため市場が失敗しますから、銀行が金を貸すというわけにはいかない。
 だから、奨学金の制度においては金を全額給付する必要はないけれども、少なくとも貸与の奨学金を出して、後で債務不履行になるものについては国が面倒を見る。そういうようなことで、多くの人が実際に国から金を借りていけるようにする必要がまずあると思います。そうして米国の弁護士資格をとった人たちがアメリカの法律事務所に行くなり何なりして民間で活躍するということが必要だと思います。
 もう一つは日本のロースクールの教員になる人のための給付奨励金です。非常に成績優秀な人にはまるまる奨学金を出す必要がある。
 具体的な例で申しますと、今、経済学はかなり国際化しておりますから、東大の経済学部では新しい人を雇うときには国際マーケットで雇っています。したがって、日本語ができない先生を任期付きで雇っています。このようにロースクールでも英語で授業をして普通の国際マーケットで人を採るということがどうしても必要です。それが法学部やロースクールの全ての分野で全部できるとは思わない。しかし、知財はまさに外国からそういう人をどんどん雇ってきて、条約などについて説明してもらう人を雇わなければいけない分野です。
 東大の経済でできるのは、先生の中にアメリカでPh.Dを持った人が十分いるから上で述べたようなことができるわけです。実際にリクルートに行くのもアメリカの学会に行って人を採ってくるわけですから、大阪大学でも東京大学でも外国に行って博士を取ってきた人を随分たくさん採用してそういう国際化ができるようになった。
 私は知財もそういう状況にあると思います。ここでの計画の、例えば3年、4年というときに、3年は試行してもいいけれども、あとの4年は大量に送り出す。奨学金を付けるということが必要ではないかという気がいたします。

○阿部会長 決して八田委員のお考えを無視しているわけではありませんで、この間の本部会合で私からそういう御意見があったことを、短いキーワードですけれども御紹介をさせていただいたわけで、今後の非常に大きい検討課題の一つだろうと思います。
 事務局、書いていないのではないかというお話ですが、どうですか。

○藤田事務局次長 書き方が足りないと言われればそうかもしれませんけれども、一応本文の方の例えば9ページの下の方の「人材像の基本的考え方」の1番のところで「知的財産活動の国際化にかんがみ、海外留学の機会を増加することによって、言語能力や国際的な交渉力など国際的に通用する実践的な能力を有する人材を多数育成する」というふうに記されております。
 それから、各論では企業の知財担当の方々の部分ですけれども、18ページの下から2番目のポツのところをごらんいただきますと、「国際的に戦える人材を育成するため、知財部員の海外留学の機会を拡充するよう奨励する」というようなことも書いてございますけれども、委員の御指摘を踏まえて更にしっかり確認したいと思います。

○阿部会長 多分これは具体的な施策をどうつくるかによって効果が違ってくるのではないかと思いますので、検討させていただきたいと思います。
 では、田中委員どうぞ。

○田中委員 現在、知的財産に関する教育のチャンスがどんどん増えていっているというのは非常にいいことだと思います。ただ、会社でもいろいろな教育をやっておりますが何か不足している部分があります。それは、【鍛える】ということを余りしていない。つまり、知識はいっぱい皆さん持っているんだけれども、その知識をどの様に活かすかという応用力をどういう形で与えていくかということがこれから非常に大きな問題ではないかと思います。
 私どもでは、最近ですけれども、50歳代くらいのある意味では大ベテランを活用して、新人が入ってきますとマン・ツー・マン的に明細書の書き方ですとか、拒絶に対する対処ですとか、いろいろなことを徹底的に教え込む。。こういうことを通していわゆる専門的な対処の仕方につい徹底的に鍛えています。知識だけではなくて、ベテランの身に付けたノウハウ等をできる限りトランスファーさせていこうという試みをしております。
 それから、知財のマネージャー教育についてですが、マネージャーに対しての教育というのは非常に難しくて、会社でもマネジメント研修というものがありますが、知財プロパーの人間は大体成績が最悪なんです。専門職としては非常にいい点数を取るのですが、マネジメントという視点で見るとなかなかいい点数が取れないという傾向があるようでございます。これに対してどういうふうに対処していけばいいのかということは大きな問題かと思います。
 私どもでは結局ローテーションしかないのかなと考えています。いろいろなことを自分で経験させることです。知識としていろいろなものを知っているということと、それに基づいて自分で決断できる、実態に基づいて決断できるということは全く別物なんです。
 たまたま私どもは組織が大きいものですから、国内の関係会社ですとか、あるいは海外の関係会社にどんどん出します。そうしますと、そこは組織が非常に小さいですから、知的財産とは言っても契約もやらなければいけない。模倣品対策もしなければいけない。場合によっては法務的な処理もしなければいけない。あらゆることを経験できる。それで、また元へ戻って私どもの業務の中で働いてもらう。つまり、いろいろな視点で物事が考えられて、いろいろな視点でそれを使って決断できていく。マネージャー教育はどうすべきか。これは皆で議論していろいろな機会をつくっていく必要があると思います。
 それからもう一つが総合人材育成といいますか、知的財産人材育成総合拠点ですか、これも大賛成です。日本は知的財産活動はすごく活発だと思いますが、それが体系化されていない。トレーニングをする場、あるいは、そういうものをきちんと与える場が総合的に整理されていないと思います。人材育成の総合拠点を作り、この拠点を核にして知財人材育成の体系化を図ることが重要と思います。そうすると、アジア地域からもどんどんきてもらえる。そこで人材交流が図れる。日本人が海外に出て勉強することも、これはこれで非常に大事なことなのですが、これからの時代というのはそれにプラスして、海外から来てもらうということも充実させていかなければ、人材育成は中途半端に終わってしまうのではないかと思います。以上でございます。

○阿部会長 それでは、加藤委員どうぞ。

○加藤委員 今、田中委員がおっしゃったことは非常に賛成なのですが、バイオの場合、上層部はアメリカ留学をほとんど経験しているPh.Dたちです。ですから、これらの研究者達を特許的な面で鍛えるのが結局一番の早道ですし、これらの研究者達は日本中にたくさんいらっしゃいます。私ども日々アメリカの企業と特許論争や法廷闘争をやっておりますと、一番役に立つのは裁判所の実際の判決です。例えば、ここまで調べるかというくらい様々な係争の例を挙げてきて、それゆえにおまえの方が負けだとかを、詳細かつ明確に言ってきます。このような具体的で、しかも自社に関わる論争ですと、皆徐々に鍛えられて、こんなふうに勝つのかとか、こんなふうに負けるのかとか、様々な経験ができます。
 要するに、申し上げたいのは、ロースクールはいいですし、それは別に反対いたしませんが、知財創出がないとそのようなことを言っても始まらないので、単なる研修会ではない融合型の大学院か何かをつくっていかないと、結局鍛えられた知財人は出てこないと思います。以上です。

○阿部会長 ありがとうございました。それでは、前田委員、妹尾委員の順番でお願いします。

○前田委員 東京医科歯科大学の知的財産本部は、他の多くの大学同様、まだまだ脆弱です。数人の企業経験者で成り立っています。企業からマネジメントがよくわかって、なおかつ知財のわかっている方を簡単にお呼びできれば、ライセンスの交渉などに苦労しないです。
 でも、そのような人を採ることがとても難しいので、私は東京医科歯科大学へ入った翌年に、目利きを育てるプログラムを申請し採択していただきました。結局、中で育てるしか方法がないと思って始めました。その方たちに、知的財産本部のライセンスの現場に入ってOJTとして練習をしてもらうことは、彼らにとってもたいへん役に立つというコメントをもらいます。TLOではまさに契約もやらなければいけないですし、ラインセンスの交渉もしなければなりません。
 相手が企業の方なので、学ぶこともすごく多いです。大学の先生の研究をたたき台に練習をしてはいけないと思いますが、元来、優秀な人が少ないわけですし、知的財産本部というのはまさしく融合の場ですから、融合人材を育てる場として最適だと思います。企業の方とのやり取りで日々学べるのではないかと思っています。

○阿部会長 大変身につまされる御意見です。では、妹尾先生お願いします。

○妹尾委員 今までの御議論に対して最初にちょっとコメントさせていただいて、それから意見を話させていただきます。
 田中委員と加藤委員がおっしゃられたことには全く同感です。それで、人材育成についてはよく教育というふうにイコールに思われるのですが、実は人材育成の基本は業務です。業務を通じた育成、交流を通じた育成、それから教育を通じた育成、この3本柱があるのです。これらをミックスした形として先ほど私が申し上げたエグゼクティブレベルの教育つまり、企業のベテランになった方が、ほかの企業の方や関連ある知財人材と交流をしながらやるエグゼクティブスクールの常設化が私は大変効くのではないかと思います。
 残念ながら、エグゼクティブスクールは現在日本にはございません。MBAレベルはありますけれども。このエグゼクティブスクールの常設化ということが、実は先ほどのような問題の対応にいいのではないかと思います。そこでは何をやるかというと、意見交換だけではありません。私は戦略的選択肢と呼んでいますけれども、あの手・この手を習得するということなんです。プロはあの手・この手を知らなければいけないのですが、どうしても自社内にいますと自社の得意な手しか覚えなくなります。なので、他流試合をしてくれというようなスクールを是非常設化していただければということを政策的に提言したいというのが1点目です。
 それから、手短に言いますと、資料2−2の4ページのところです。この目標はもちろん大賛成なのですが、ちょっと懸念するところがあるので本文の方では是非それを払拭していただければという意味で申し上げます。「質を高度化する」という先ほどの文言なのですが、これは実は10年たつと現在のコンセプトでの質ではいけないと思われます。是非知財立国に資するような質に転換した上で高度化していただきたい。高度化とは、実は質を転換するという意味なんだということが1点目です。
 2点目は、「人材像の基本的な考え方」の4番目に「知財競争を勝ち抜く経営人材」とあるのですが、これを読むとまたすぐ勘違いして、知財競争、そうか、特許の件数かという件数ごっこが始まってしまう可能性があるのではないかと思います。重要なことは数の競争ではなくて、知財を競争力ある経営に組み込める人材が必要なわけで、知財競争のための知財ではないはずです。企業競争に勝ち抜けるために知財を経営に組み込める人材であるというニュアンスを是非本文の方で入れていただければということです。
 3番目は、人材育成で最も重要なことは今いる人材をいかに育成するかという観点とともに、この分野にいかに優秀な人に来ていただくかということがあるわけです。その意味では知財分野の魅力化といいますか、知財をライフワークとしてやってもいいのではないかという若い人たちが増えるような魅力化の政策がもう少し盛り込まれるといいのではないかと思います。私はこの前、極端にキムタク弁理士物語というものを提案しましたけれども、そういうミーハー的なものも含めて、もっと魅力的な資格制度その他も含めて入ってくるといいのではないかと思います。

○阿部会長 ありがとうございました。そのとおりだと思います。そのためにも、ある程度出口に希望なり、本当はロールモデルがどんどん出てくるといいんですけれども、初めはありませんので、いろいろ工夫しなければいけないだろうと思います。ほかにどうぞ。○吉野委員 1つ、ベーシックなことをコメントしたいと思います。日本が知財立国を成功させるためには、確かに最終的には人だということで人材育成の戦略が今、検討されているわけですが、この中で裾野人材みたいなところを取り上げているのは非常にいいことだと思うんです。それで、結局世界の中で日本という国の全体の民度というお言葉をお使いになりましたけれども、それが上がっていって、世界の国々から尊敬され、信頼されるようなことになっていかないと、さまざまな交渉で日本だってこんなことがあるではないかとか、現実にはあるわけですね。
 したがって、大変重要なことだと思うんですが、総論の必要性のところに何も書いていないという感じなんです。専門人材をいかに育成することが必要であるかということは書いてあるんだけれども、この裾野人材のことは後では出てくるわけですが、是非かなりきちんと書いていただきたい。この戦略によって大変パワーは上がるんだけれども、品位といいますか、あるいは倫理性みたいなものを日本の国全体として知財の分野で高めていくということを是非とも基本的な考え方の一つとして入れておいていただきたい。最近、不祥事だとか、いっぱいありますから、日本は比較的性善説でやってきたんだけれども、もうそれが通じないような感じのところもありますが、多分いろいろなことが起きるんだろうと思います。
 それで、先ほど妹尾先生がドゥーズとドゥーノットズみたいな、これは子どもの教育だけではなくて多分、企業の中で、これは企業だけに限りませんけれども、実際に研究とか開発とかをやっている人たちの中にもまだ余りはっきりした形でそういうことを教育といいますか、トレーニングしていないと思うんです。やがて確信犯だってあり得るわけだし、そういうことがぼろぼろ出てくると、やはり日本全体の知財の国としてのパワーがなくなってくるということだから、是非前文にきちんと書いていただきたいと思います。

○阿部会長 ありがとうございました。中山委員、下坂委員からも御発言をいただきたいと思います。

○中山委員 人材の育成の教育ですけれども、大学等の教育機関と、先ほどから話が出ているタフな人を育てるのとは全然別で、大学というのは基本的なことを教えればいい。あとは、私は基本的には自己研さんといいますか、競争しかないと思うんです。競争の中でいかにタフになっていくか。それ以外にはないと思います。いかに優秀な軍備をされても、実践経験がない部隊は恐らく弱いでしょう。百戦錬磨の部隊の方がずっと強いと思います。
 これは、どうやって競争の環境をつくるかということだと思います。弁護士とか弁理士もそうなんですけれども、弁理士は出願だけではなくて、発明ができてから権利を取って、権利を執行して、終わるまで全部面倒を見てほしい。経営戦略から見てほしいという話がありましたけれども、出願だけで食べていけるんだったらそんなことをやる人はいないわけです。だから、十分競争状態をつくる。
 これは企業でも同じでして、あるいは弁護士でも同じでして、競争状態をつくれば、食べるためには自らトレーニングせざるを得ない。それが一番大事だと思います。教育機関でできることなんて本当に私は少ないと思っています。本当に基礎的な、将来あちこちに伸びる能力を付ければいいと思っているわけです。
 それが私の基本的な考えで、あとは妹尾委員に聞きたいんですけれども、組織的、物理的な拠点というのは何ですか。これは大学ですか、それともプライベートな機関ですか。どういうことをお考えですか。

○妹尾委員 大学ではなくて、むしろ各人材が交流できるようなバーチャルな組織、ないしはそういうものがあっていいのではないかということです。大学を新たにつくるという意味ではございません。
 ただし、そこでやる教育自身については本文の中で書きましたけれども、今いろいろな施策の中で競争的資金みたいなものが動きますので、施策を支援するときにはそういうものを獲得できるステータスくらいはあってもいいのかなというふうには思います。

○阿部会長 これは具体論になると非常に議論のたくさんあるところだと思いますので、もし具体的なことを2006に書くとすればもう少し議論しなければいけないですね。
 しかし、妹尾委員がおっしゃった中で、私はやはりある種の必要性がある切り口は必ずあるような気がしますので、それと具体論をどう結び付けていくかというところだと思いますから、それは考えさせていただきたいと思います。
 下坂委員、最後で恐縮ですが、お願いします。

○下坂委員 競争の中でという中山委員のお話をいつも拝聴するんですけれども、私ども十分な競争が実は起こっておりまして、料金競争も起こっておりまして、それから会社側も先ほど吉野委員の方からいろいろと将来の道義的な面もというようなジャパンパワーという面からのお話がありましたけれども、むしろそれらを低下させないためにどうやったらいいかというようなことで頭を悩ましております。
 それから、日々特許事務所の仕事に携わっておりますと、現実には弁理士全員がマネージャーであるということは必要ないし、またマネージャーに向かないものもかなり多いということも言えます。明細書を現実にノルマで書いております者たちにとりましては、なかなかそのような余裕もないとか、いろいろな矛盾にぶつかっております。長い間、弁理士は、社会から見れば大変悠々と豊かに暮らしてきたように思われている様子なので、一応静かにして発言を控えてきたのですが、多くの批判に対してここからどのようにはじけて外に出て行くかというところで、大変私ども自身苦しんでいるところではあるんです。人数が増えていくことは一つの突破口ではあるだろうというふうには思います。ただ、料金競争などで食べられない者が出てきた場合に、その人たちがどのような行動様式を取るかとかなど、いろいろな心配もたくさんございます。それで、弁理士は技術と法律の素養を備えるということに今まで邁進してきたんですけれども、その形が21世紀に向かってどのようになっていくのかという問題も非常に難しいところでございます。
 先日、21世紀の弁理士像について書くようにと言われましていろいろ頭をひねっているのですが、なかなか具体像が出せません。今は弁理士自身も大変苦労しながらやっておりまして、できるだけ皆様方の期待にこたえていきたい、弁理士自らも発展していきたいと思っておりますので、また叱咤激励のほどをお願いしたいと思います。
 1点だけ前田委員にお尋ねしたいんですけれども、先ほど国内留学といいますか、国内でのインターンシップと、外国でのインターンシップのお話がございまして、国内インターンシップは大変難しいというお話しでしたが、外国のインターンシップというのは弁理士業界では盛んに昔から、40年くらい前からそれぞれ自分たちのルートを通じてやっております。いろいろなタイプがあるのですが、国内インターンシップというのは自分で独立する前に3、4年どこかに勤めるとか、自分の息子をよその事務所にわざと入れるとか、そういうインターンシップはあるんですけれども、前田委員のお考えの国内インターンシップというのを簡単にもし御説明いただければ、将来検討もできるかと思っておりますけれども。

○前田委員 東京医科歯科大の人材養成のプログラムで考えているのは、研究者側に知的財産の知識をお教えするのと、弁理士、弁護士の方、もしくはその卵の方にライフサイエンスの知識を教えるのと両側の教育をやっています。そのどちら側の方も知識を付けた後にビジネスのことを学び、知的財産本部等でマネジメントができるようになるまでの人が育っていただければと思って始めたプログラムです。
 今年度はたまたま5倍の倍率で入っていただいた方の多くが現職の弁理士、弁護士の方でした。この場合、どこかの弁護士・弁理士事務所に勤めたまま私どものプログラムに入っています。そうすると、当然同業他社さんのところのインターンシップに行かなければいけないという状況になります。ライフサイエンス等の研究者の方は受け入れてもらいやすいのですが、弁理士さんや弁護士さんに別な弁理士事務所へ行ってもらうことに二つ返事をしていただくことがなかなか難しかったということです。 下坂先生がおっしゃいましたように、実際に2年、3年どこかで勉強をして一人前になるというのが本当の勉強なのでしょうが、うちの場合はすでに職業を持ったままですので短い研修期間です。より臨場感を持ってもらうという意味ではアメリカを選びました。国内で何ヶ所かお願いした中では余り色よい返事がいただけなかったということからさきほどのようなコメントを言わせていただきました。

○阿部会長 ありがとうございました。具体的には非常に難しい問題かもしれませんが、下坂先生、もし御検討する余地がありましたら後でよろしくお願いします。
 時間が少し過ぎておりますので、もっといろいろ御議論いただきたいところですが、人材についてはこの辺で終わらせていただきます。
 実は、次回の専門調査会で人材の総合戦略をそろそろ決めなければいけないという状況でございます。今のままで少し早過ぎるのではないかという懸念もございますけれども、一応内容については事務局から各委員に個別に御相談をする機会もつくってもらいまして、本日の報告書の案をたたき台にして、次回の専門調査会に修正案を提出していただくということで進めたいと思っております。
 そういうことで、若干急ぎ過ぎている面がなきにしもあらずでありますけれども、是非そこは事務局の腕力でカバーしていただいて、先生方にも今日いろいろな御意見をいただきましたが、できれば資料2−1をまだごらんいただいていないようでしたらさっとごらんいただいて、合わせて御意見をいただければ大変ありがたいと思います。そういうことで進めさせていただきたいと思います。できるだけ拙速にならないようにしたいと思いますので、御協力をお願いいたします。
 それでは、次に「知的財産関連分野の広がりに対応した国際ルールの構築について」ということで御議論をいただきたいと思いますけれども、まず事務局から基本的な事項について説明をしてもらいたいと思います。では、お願いします。

○藤田事務局次長 資料5に基づいて御説明を申し上げます。
 知財の関連分野の広がりということでございまして、大きく2つの分野が考えられるのではないか。第1が、さまざまな国際公共政策と知財との関連というものが非常にいろいろな場所で議論されるようになってきている。第2に、ITとかバイオのような先端技術分野でイノベーションが拡大し、イノベーションが行われていく中で、知財の問題というものがいろいろな形で顕在化してきているということでございます。
 1枚めくっていただいて2ページの上の四角の中でございますけれども、1880年代からウルグアイラウンドが始まるころまでは知財政策というものは自己完結的であり、WIPOを中心に議論がなされていた。それがウルグアイラウンドが開始された86年ごろから、あるいはTRIPSが成立したのは94年でございますけれども、だんだんに貿易政策の観点からも知財が議論されるようになり、そして2000年ごろを境にして近年ではさまざまな公共政策との関係が議論されるようになってきたということでございます。
 1枚めくっていただいて3ページの四角の中をごらんいただきますと、例えばUNCTAD、国連の人権委員会、UNEP、あるいは食糧・農業ではFAO、UNESCO、WHO、ILO、あるいはインターポールという警察の分野まで、いろいろな切り口で知財に関わる議論がなされ、特に先進国と途上国の間でのいろいろな問題になってきているという面がございます。
 その主な点を御紹介申し上げますが、まず4ページをごらんいただきます。@のところに「遺伝資源・伝統的知識・フォークロア」とございますけれども、これはそれぞれ定義は真ん中ぐらいの点々で囲まれているところにございます。遺伝資源あるいは伝統的な知識、例えば薬草に関する知識とか農業の知識、あるいはフォークロアというのは民話、民謡あるいは伝統舞踊というようなものが入ってくるわけでございますけれども、こうしたいろいろな知的な資源が途上国から先進国によって搾取されているのではないかという議論が出ているわけでございます。
 次の5ページの四角の中をごらんいただきます。一番代表的な議論がCBD、生物多様性条約でございますけれども、CBDは遺伝資源や伝統的知識へのアクセスと、その利用から得られる利益の公正な配分の必要性について規定をし、その実現のための具体的な仕組みが必要であるということで枠組みを定めているわけでございますけれども、この枠組みをどういうふうに具体的に実践していくのかということについては、今なお国際的な場で議論が続いているという状況でございます。
 それから、次の6ページをごらんいただきますと伝統的知識・フォークロアというものを紹介してございますけれども、既存の知的財産制度による保護にはなかなかなじまないということで、例えばその幾つかの国においては特別な制度によって独自にいろいろな自分の国の知的資源の保護をするような動きも出てきているということでございます。
 それから、8ページをごらんいただきますと、2つ目の大きな論点が医薬品のアクセスあるいは稀用薬の問題でございます。医薬品のアクセス問題というのは随分新聞等でも紹介をされておりますけれども、例えば自分の国にエイズの薬を製造する能力がない、そういう事業者がいない。外国から買おうとすると、大変にロイヤリティがかかって薬が高くて経済的な事情から買えないというときにそれをどうするのかということで、TRIPSの31条という条文がございまして、それで2003年の8月の議論のときにはいわばTRIPS協定の例外措置というものを暫定的に決めました。自分の国で薬をつくる能力がないときに、他人の国から強制実施的に薬を買うことができる。これはあくまでも暫定措置であったわけでございますけれども、本年の12月になりまして、このTRIPS協定そのものを変えようということの合意がなされて、今その手続きに入っているという状況でございます。
 こうした問題にどのように対応していくのかということでございますけれども、11ページをごらんいただきたいと思います。「日本の対応」ということで、4つの視点をもって対応していくべきではないか。
 第1に、やはり日本の国益ということ、それから国際社会への貢献、あるいは南北問題への対応といった問題を踏まえて、バランスのとれた日本の国益にもつながるようなwin−winの解決策を目指していくということ。
 第2に、知財の問題なのか、あるいはそもそも南北の貧富の差、経済格差の問題であるのか。それであれば、それはODAで対応すべきことなのか。そうしたことについて適切に判断すべきではないか。
 第3に、さっき御紹介したいろいろな場所でいろいろな議論がなされているわけでございますけれども、必ずしも日本の国全体として知財を横串として分野横断的に検討がなされていないという面もございまして、そうした面への対応が必要ではないか。
 第4に「柔軟かつ現実的なアプローチ」ということでございますが、原理原則で先進国と途上国がぶつかり合っておりますと、結局何も決まらない状態でどんどん時間が過ぎてしまうということにもなりかねない。それであれば例えば現実的アプローチ、自主的なアプローチなどが必要ではないかということが書いてございます。
 「具体的対応策」でございますが、
 第1に「相互理解と国際的なコンセンサス作りへの積極的な貢献」ということで、いろいろな先進国、途上国、あるいは地域コミュニティ間の対話、意見交換、そのためのシンポジウムの開催、あるいは私ども事務局ではいろいろな方にヒアリングをさせていただきましたけれども、こうした分野は専門の方がたくさんおられないという面もございまして、そうした分野の研究活動の促進ということも必要ではないか。
 第2に「制度的な対応と経済協力による対応」ということで、経済協力によって対応すべきものは十分に日本として対応するということです。
 次の12ページの上に書いてございますが、1つの例としてつい先日ですけれども、13日に小泉総理がASEANプラス3の会合で鳥インフルエンザの薬のタミフルを50万人分ASEANに供与するということを表明したということが一つのこうした事例かと存じます。
 第3に「ソフトアプローチによる対応」ということでございまして、例えば企業の自発的な意思として途上国の伝統的知識とかフォークロアを尊重するとか、それを取得するに際しては事前その同意をきちんと取るとか、あるいは利益配分を適切にするとか、そうした自主的な取り組みによるソフトアプローチというのも一つの有効な考え方ではないか。      
 第4に、関係省庁間で十分に連絡体制をとって、日本としていろいろな場所での議論にきちんと統一的なポジションで対応できるようにするということが必要ではないかということでございます。
 以上が、いわば伝統的知識とか南北問題に関わるところでございますけれども、次に先端的な分野の課題です。13ページをごらんいただきますと、ITとかバイオの分野で非常にイノベーションが進み、それに伴って旧来型の知財政策についていろいろな関係、論点が出てきているということでございます。
 例えばパルミザーノ・レポートというものがございますけれども、これはアメリカで『イノベート・アメリカ』という21世紀のアメリカはいかにして産業を育てていくのかということを書いてあるわけでございますが、この中でイノベーションを最適化するためには知財のシステムとか制度の修正も必要であるというようなことも書いてございます。例えばパテントプールとか、オープンスタンダードとか、オープンアクセス、データベースとか、こうしたものも有用であるというようなことも紹介がなされております。 それから、14ページの真ん中の「オープンソース・ソフトウェア」でございますけれども、このオープンソース・ソフトウェアというものが既存の知財制度を前提としながら、その権利者が一定のライセンス条件の下でそれを利用してもらうことによって共有財産、パブリックドメインが充実をされ、イノベーションを加速化する動きが出てきている。例えばリナックスとか、あるいはアパッチとか、そうしたものが普及して広がってきているということ。
 それから、Bのバイオの分野では次のページの2つ目、上から5行目のところに書いてございますけれども、リサーチツールについてそれが特許であるということで、その利用が制限されるとかえって新薬の開発とか、イノベーションを阻害するのではないかという議論がございます。
 そうした中で、論点を幾つか御紹介させていただきます。同じページで(2)の「主要論点」というところでございますけれども、例えば第1に「競争政策」との関係が出てくる。IT分野で一番基盤的なOSの知財権が強く働き過ぎると、それが公共の利益に反するのではないかという議論が出てきている。いわばエッセンシャル・ファシリティであるにもかかわらず、それが知財の対象であるということでその利用が制限されるということについて、独禁法上の取り組みというのはどうなんだろうかという問題、競争政策上の問題はどうだろうかという問題でございます。
 次の16ページではAとして公衆衛生の問題でございますけれども、これはただいま申し上げました例えばリサーチツールの話ですが、特許の権利と、それから新しい医薬品の開発との関係についてどのように考えていくかということでございます。
 次の17ページのBには「生命倫理」と書いてございますけれども、例えばヒトの胚性幹細胞、ES細胞について、これを特許として認めるか、認めないか。特許法の32条には、公序良俗を害するおそれがある発明は特許を受けることができないと書いてございますけれども、一応我が国ではヒトのES細胞自体は特許の対象となり得るとされておりますが、生命倫理に関する発明についてどういうふうに考えていくのかというような議論もございます。
 Cの「標準化」という切り口もございまして、標準化自体は非常に重要なことでございますけれども、例えば皆の特許を持ち寄ってパテントプールをつくり、そのパテントプールを標準にして皆で運営をしていくというときに、そのパテントプールの外にいる人たちに対して競争制限的な効果を持つことがあるのではないかという議論がございまして、同じ17ページの下の方に、本年6月でございますけれども、公正取引委員会が技術の標準に伴うパテントプールの形成等に関する考え方ということでガイドラインを示しているという動きもございます。
 次の18ページは知財の自主的な共有、パブリックドメイン化ということでございまして、先ほど紹介しましたオープンソース・ソフトウェアという動きがあるのですけれども、これは著作物としての利用許諾契約でございまして、特許についての規定が十分にない。したがって、知らず知らずにというか、オープンソース・ソフトウェアによって逆に第三者の特許権を侵害してしまうようなおそれがあるのではないかという懸念も示されているということでございます。
 我が国としての対応でございますけれども、19ページに案が示してございます。3つの視点で考えていくということで、第1に「持続的なイノベーションを可能とする制度設計」、第2に「競争政策や標準化政策との調和」、第3に「産業界の能動的な対応」ということで、「具体的対応策」としてはIT分野では企業がエッセンシャル・ファシリティとなるソフトウェアを競業的に利用できるように、政府がどういう制度整備を図っていくべきかということ。
 第2に、リサーチツールの問題については今、総合科学技術会議でガイドラインの策定に取り組んでいただいていますけれども、こうしたものの議論を更に深めていく、そして早く結論を出していただくということ。
 第3に、標準化については公取の指針が示されておりますけれども、その着実な実施に努めていただくとともに、必要に応じて追加的な対応策をとる。
 第4に、オープンソース・ソフトウェアについては民間が主体となっている動きでございますけれども、こうした場においてライセンス等の特許等の問題にしっかり取り組んでいただく。
 最後に、イノベーションの促進に資するこうしたさまざまな取り組みについていろいろな場所で議論を深めていただくことが必要ではないかというようなことが書いてございます。
 少し長くなりましたが、以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。大変盛りだくさんですが、今日はお忙しいところ参考人として植村さんに来ていただきましたので、資料7に基づきましてよろしくお願いいたします。

○植村参考人 それでは、御説明をさせていただきます。私は1978年にさかのぼりますが、政府の一員として、あるいはその後、国際機関の一員として知的財産権の国際的な保護批判の一連の流れにいろいろな局面で携わってまいりましたが、今日はその知識、経験等を踏まえまして、これまでの流れ、今後の行く末、我々として何をすべきかということも含めましてお話をさせていただきたいと思います。
 ただいま事務局の方から既にイントロダクションがあったわけでございますが、説明の重複する点につきましては、省略させていただきまして、ポイントをフォーカスしながらお話をさせていただきたいと思います。
 2ページでございますが、これは先ほど事務局の説明にありましたが、事務局は第1期、第2期、第3期という説明でございましたが、私のプレゼンの中では第1期を2つの時期に分けております。この第1期というのはまさにパリ条約ができた1883年です。これが今でも国際的なルールの基幹をなしているわけでございますが、それから1960年くらいまではまさに自己完結的に、特にポリティクスが係わることもなく条約の改正でしのいできたという時期でございます。1960年辺りからニューヨークを中心といたしまして南北問題、開発途上国の格差をいかに軽減するかというクライメートといいますか、雰囲気の中で特許と技術移転との関係が取り上げられて議論されてきたということでございまして、あとは事務局とほとんど同じ説明でございます。
 ただ、1つ、現在1986年から2000年のところでウルグアイラウンドTRIPS交渉の結果、TRIPS協定ができたわけでございますが、その後もWIPOは引き続きインターネット条約等、ルールメーキングなど、それなりの機能を果たして来ています。
 それで、2000年から現在ということで、これが第3期に当たるわけでございますが、事務局のペーパーで言うところのいわゆるマルチプルフォーラということでございまして、次のページに移らせていただきます。
 ここに一覧表で整理してございますが、これは網羅的ではございません。あくまでも例示的でございますが、例示だけさせていただいてもこれだけの議論の場で知的財産権がいろいろな角度から議論されて、場合によってはルールづくりも行われている。これはルールづくりをやっているフォーラムと、それからいわゆる調査研究的なフォーラムも含めてございますが、ざっと見ただけでも大変な様相を呈しているということでございます。
 国連機関は総会とECOSOCに分けてございますが、国連機関のほかに国連の組織それ自体の組織とは独立したと申しますか、別のガバナンスを持った国連の専門機関が関連した議論を行っている。それから、国連とは関係のないといいますか、国連ではない組織ですね。典型的にはWTOであり、先ほどお話のあったいろいろな機関が書いてございますが、そういった機関。
 以上は政府間機関でございますが、政府間機関でない機関、典型的にはICANN、これはインターネットの管理をしている機関でございますが、こういったところでも知的財産権と関係のある議論といいますか、ある意味でルールメーキングでございますが、行われているといった状況があります。
 今までの機関というのはある意味でハードな機関でございますが、もう少しいわゆる協力ベースの機関として、これはアジアについて特記いたしましたが、これだけの機関で知的財産権をその中で議論をしているという例でございます。
 ただいま申し上げましたいろいろなフォーラムでどういった政策課題を議論しているかということを4ページにシェマティックに例示してございますが、これまたこの図が絶対的に正しいということではございません。例えば左側に開発問題とございますが、これはかなり幅の広いイシューでございまして、貿易問題、技術移転問題、公衆衛生問題、情報社会問題、環境問題、人権問題、あらゆることが開発問題に絡んでいるわけでございます。そういう意味におきまして、これは単にこういうイシューがさまざまなフォーラムで議論されているということを概念的に示したものということでございます。
 例えば真ん中の人権、環境問題というところに幾つかの具体的なイシューが挙がってございますが、これもまた例示でございまして、こういった問題はもちろん開発にも関係しますし、技術移転にも関係するということでございます。そのように、いろいろなイシューが絡み合って存在しているということでございます。これについてどう取り組んでいくかということが問題でございます。これも事務局の方から既に一部御説明がありましたし、参考資料も出ているようでございますが、それぞれの場でそれぞれのイシューがどのような議論をされているかということを少し見ていきたいと思います。
 5ページの方でございますが、先ほども申し上げましたように開発問題、これは非常に大きな広がりがあるわけでございますが、ここには3つのフォーラムについてどういったことをやっているかということを例示的に示してございます。この2000年で第4期を切ったのはこの年に国連ミレニアムサミットがございまして、そこからミレニアム開発目標、巷間MDGsと言われておりますが、ができたからです。これは非常に高いレベルでのグローバルなコミットメントということでございました。それを受けまして、UNCTADであるとかILO主導の世界委員会というものがつくられたり、いろいろなフォローアップがございまして、つい最近、2005年の9月でございますが、国連のサミットがございまして、そこで改めてMDGsの重要性が再度コミットされるといった状況になっておりまして、依然として非常に高いコミットメントが与えられているということです。
 そういう中にありまして、政治的と申しますか、非常に総論的なコミットメントがある中でWIPO、WTOというのはそれぞれ知的財産権についていろいろなイシューを持っているわけでございますが、WIPOの方にも例えばミレニアム開発目標という観点の中でアルゼンチン・ブラジル提案というものが昨年のWIPOの一般総会に提案されました。それを受けてWIPOのいろいろな活動、これまでのいろいろなルールメーキングであったり、開発途上国への協力活動であったり、そういったいろいろな活動があるわけでございますが、それをこのミレニアム開発目標に則してもう一度見直そうではないかという提案がなされて、1年間議論されてきたわけでございますが、更にまた来年の総会に向けて議論をするというフォーラムができたということでございます。WTOの方はまさに開発アジェンダということでございまして、開発問題そのものが今、議論されているわけでございます。
 それから、これも先ほど事務局の方からありましたので簡単に済ませますが、これだけのところで、これは生物多様性のほかに文化多様性という観点も含めてございますが、これも先ほどの開発問題と関連した形でいろいろルールメーキングが行われている。そのほかに、いろいろと調査研究の動きもございます。
 「公衆衛生」の方でございます。これもWTO、WHO、これも先ほど事務局の方から御紹介されました。
 それから「情報社会/IT/インターネット」、これはWIPOも真ん中のカラムでございますが、「デジタルアジェンダ」等をつくりまして総合的にインターネットの時代に対して旧来の知的財産権のシステムとどう適合していくかという議論を進めておりますが、つい先ごろではITU主導の国連サミットがございまして、いわゆるインターネットガバナンスをどうすべきかということが議論されておりますし、また新しいフォーラムで来年にかけて議論されていくということで、この中でインターネットと知的財産権、あるいは典型的にはドメインネームと知的財産権との関係、そういったことも視野に入れて議論されていくことになろうかと思います。
 それから「国際私法」、これも非常に重要な観点でございますが、国際私法会議の方で一定の前進がございました。これも知的財産権と非常に密接に関係するイシューでございます。
 それから「エンフォースメント/権利行使」、これにつきましてはWTOで一定の議論があったところでございますが、現在これだけたくさんのフォーラムでインプリメンテーションについての議論が行われている。
 こういう中で我々としてどういう議論をしていくことが大事かということで3つ4つ挙げてございますが、国際機関が非常にばらけているといいますか、いろいろなところで行われている。これを統一すればいいのではないかという議論はありますが、ガバナンスを国際的に統一するというのは大変な作業でありますし、時間もかかるということで、大事なのはそれにガイダンスを与えている各国ですね。国が横の連携を強化していく。情報を共有していくことが大事だろう。それから、知的財産権を多面的に見ていく必要があるのではないか。
 それから、国際的なコンセンサスをつくるには南北対立の先鋭化をほぐしていく必要があるということでございますが、こういったことに対しては取り分け開発途上国等に知財シンパという、言葉がいいかどうかわかりませんが、要するに知財は非常に大事だ。その国の経済、文化発展等にとって非常に大事であるという認識を持った方をそういういろいろな経済協力等の中でつくっていくといいますか、育てていくことが大事だろう。
 それから、多面的なアプローチが必要だということで、政治的解決のほかに、ソフトアプローチもありますが先ほどその話は出ましたので、これは省略いたします。
 更に政府、民間、学者それぞれの役割、政府の中のいろいろな意思統一、横のつながり、それから民間、学者、その民間セクターの中でもいろいろ分野があるでしょうし、そのつながりとか、学者についてもいろいろな専門分野の方の集まり、横のつながりが必要だろう。それから、インパクトアナリシスですね。エビデンス・ベースト・ネゴシエーションといいますか、そういったことが可能になるように、ポリティクスだけではなくて実際にこういう証拠があるといいますか、そういうデータに基づいた議論とか、そういうことが大事だろう。
 最後に付言いたしますが、WIPOの日本のオフィスをつくろう、日本に支所を置こう、こうした日本政府からの提案がWIPOの一般総会で歓迎されるに至りまして、日本に近々それが実現するであろうということを付け加えておきたいと思います。

○阿部会長 どうもありがとうございました。非常に内容の濃いお話を短時間で御説明いただきました。
 それでは、余り残り時間は多くございませんけれども、議論に入りたいと思います。ただいまの事務局からの説明及び植村さんの御説明を踏まえて御議論をいただければと思います。どなたでも結構でございますので、御発言をお願いします。
 では、八田委員、田中委員とどうぞ。

○八田委員 非常に多岐にわたる問題があると思うのですが、基本的には知的財産あるいは技術情報というようなものは道路などと同じで、だれか1人の人が使ってもほかの人が使うことを全く妨げないという非競合性という性質がある。こういうものは基本的にはただで、すべての人にできるだけ使ってもらうのが望ましいと言えるだろう。
 ところが、ただで供給させると、だれもそういう技術開発をしなくなってしまうから困る。それで、ある意味では2つの目標のバランスを取らなければいけないというのがこの知財の政策の一番難しいところだと思います。逆に言うと、技術開発さえ十分進むのならば、その制約の下でなるべくただで使ってもらった方が望ましいという側面がございます。それで、道路は、最初からただで使ってもらうし、国防もそういうような側面がございます。
 それで、フォークロアをどうするか。これは、情報ではあるわけですけれども、これを新しく開発する必要はないわけですから、ただで使うのは正当なことであると思います。あるいは漢方に関する知識、これも新しく開発するものに関しては知的財産権を与えるけれども、これまでに知られていることは全く無料でやればいい。
 そうすると、途上国の人たちはかわいそうではないかということになるのですが、それはもちろん分配の問題ですからODAで海外援助をする。それはこういう漢方だとかフォークロアにお金を使う、あるいはそれの使用権に対してお金を取るというような形ではなくて、ばさっとお金を差し上げて好きなようにお使いくださいというのが真っ当なやり方だろうと思います。それが第1です。したがって、フォークロアや漢方は知財に関係ないということです。
 2番目に、知財プロテクションのために特別の薬が高価で、途上国でそれが使えないというときにどうしたらいいだろうかということですが、原則論から申しますと、寿命を長くする、あるいは死亡率を下げるためのお金の使い方というのはさまざまにあります。例えば衛生をよくする、水道をきちんと整備する。それから、交通の信号がないところにちゃんとやるとか、医療全般をよくする。あるいは治安をよくする。さまざまなお金の使い方がある。にもかかわらず、初めから特定の知財で守られた医療の薬だけにお金を使うというのは、その国の死亡率を下げる一番有効な方法ではないだろう。したがって、海外援助をきちんとあげて、そしてその国が自主的にその金をどういうふうに使って自国の死亡率を下げるかを決めればいいというふうに私は思います。これがまず原則です。
 ただし、エイズの薬のようなことに関して官ができることはあると思います。例えば昔のカラーテレビは、日本の会社は皆アメリカでは安く売って日本では高く売りました。チャンネルが違いますから逆輸入できなかったわけです。そういうものに関して普通は国ごとに別な値段を付けるわけです。だから、エイズの薬だって途上国で売ったものが先進国に逆輸入できないという制度にして、官がそれをきちんと守れば、製薬会社は、非常に安く売るに違いないということかどございます。
 それが1つですが、更に何らかの理由でそれが難しいというような場合に、途上国に対して、ただで供給する代わりにまるごとお金を先進国が払いましょうということは途上国援助の一環としてあり得るかもしれないと思います。ただし、企業がエイズ薬を開発するインセンティブをつぶすようなことは一切すべきではないだろうと思います。
 それから、鳥インフルエンザの問題は今の話とは全く別のことです。海外から流行病が日本にくるかもしれないというのは全く海外援助とは次元の違う話で、先進国自身の利益のためにお金を十分使っていい話だと思います。
 最後に、リサーチツールをエッセンシャル・ファシリティではないか、公共財ではないか、だから、皆が使えるようにするべきではないかというと全部話が戻ってしまうわけで、知財というのはそもそもエッセンシャル・ファシリティに近いもので、皆がただで使えばいいものばかりなわけですね。それに保護を与えるときにどの方法が適正かということが問題になる。それは、やはりものによっていろいろ違うということがあると思います。それは特許の期間、特許の料金をどうするかということです。基本的に今、問題になっているのはすべて「開発のインセンティブを十分与えるだけのお金を稼いだら、それ以上は知的財産保護を外す。」という観点が必要なのではないか。
 要するに、特許からのリスクの上限を最初に決めておいてそれ以上になったらあとはただで開放する。例えばOSで広く使われているものなどについてもそういうことができるだろう。しかし、リサーチツールについて更に言えば、もし薬品会社で使うものではなくて純粋に大学だけで使うというふうにして、技術の転用を識別できるのならば大学用だけでただで使うというようなことにしても、技術開発をもともと阻害することはないのではないか。したがって、全部戻ると考えて、技術開発を促進するという条件の下でなるべくただで使える方法を考えるべきだと思います。

○阿部会長 ありがとうございました。田中委員、どうぞ。

○田中委員 資料を準備しております。資料8です。それに沿って簡単に説明したいと思います。
 2ページ目ですが、知的財産権の議論というのは当然のことながらビジネス活動等、大変な勢いでグローバル化しているわけでございまして、そのために総合的な視点あるいは国際的視点に立った制度というものを考えていかなければいけないと思います。
 例えば「職務発明問題」、特許法35条問題も基本的には、国内問題のようですが、海外の企業が日本に投資するかとか、それから海外企業は日本を素通りして中国とか、そういったところへどんどん流れていないか。場合によってはハブ空港問題もございますが、中国、韓国に巨大空港ができて、皆、素通りして向こうの方がハブ空港になる。このような問題等も絡めてきちんと議論していくことが大切だと思います。職務発明問題は、国内の特許制度だけの話ではないと私は思います。
 模倣品についてはいろいろなところで議論されているとおりでして、国内だけでは解決がつかない。
 それからもう一つは、まさにインターネット環境下では従来の考え方の枠ではもう制度構築はできない。個人が容易にその業を行えるような時代になってきたということも考えながらやるべきだということです。
 次に、IT関係についてお話をしたいと思います。昔から、キヤノンもそうだったわけですけれども、どちらかというとスタンドアローンの機械を中心に事業をやってきたわけですが、IT技術の進歩によってネットワークなどへの接続性、あるいはデータ互換性というものが問われる。なおかつハードウェアそのものの技術進歩が非常に進んでおりますので、使い勝手を含めたビジネス・ソリューション、ホーム・ソリューション、場合によってはパーソナル・ソリューションというものも一緒に供給していかなければまずいような時代に入ってきています。そして、知的財産というものもIT技術の進展によって大きく広がっていると言う事ができます。
 そう考えますと資料の4ページに記述していますが、接続性あるいはデータ互換性というのはIT機器のある意味ではプラットフォームでして、これは全世界で共通的に使用される。そうしますと、これは考え方によっては社会インフラの一部あるいはエッセンシャル・ファシリティの一つということが言えるのではないかと思います。
 資料5ページ目は、それをもう少し細かく表したものです。スタンドアローン機器からだんだんとIT技術の進歩によって変わってきています。一番下にありますのがある意味ではプラットフォーム、あるいはエッセンシャル・ファシリティの部分です。この部分における知的財産の取扱いについては非常にいい道筋をたどったのではないかと思います。ウェブ技術、これはW3Cが関与しているわけですが、これらの研究機関あるいは個人レベルのボランティアからの技術開発、あるいは統合というものがスタートしておりまして、知的財産については当初からパテントフリーという考え方で対処をしてきたわけです。
 その上が、ちょっとソフトとは違いますけれども、ミドルウェアと書きましたが、これはデータ互換性分野です。この部分はISO/IEC、ITU、国際標準化団体が関与するようになっておりまして、それぞれの標準化団体は、必要最低限の満たすべき条件の標準化からスタートしたわけですが、現状においてはなかなか新しい技術、技術の進展についていかれないという部分がございまして、知財については基本的には【RAND】になっています。
 ただ、妥当被差別と言っても、ではだれがそれを判断するのかというのは全く不明確でして、そこにパテントテロリストのつけ入る隙があります。
 更に、その上にIT機器というものが並んでおりますが、これは企業間の競争にさらされるわけでございます。
 プラットフォームあるいはミドルウェアのそれぞれの境界というのははっきりしないということと、それからグレーゾーンが非常に大きいことが課題です。OSSについては最近はパテントコモンズというような動きも出てきておりまして、この辺の取扱いについては、国際的な議論をしていかないとまずいのではないかと思います。
 最終ページには取組へのポイントを書いております。詳しい説明は省略しますが、是非関係省庁間の連携をとりながら日本から積極的に働きかけることが必要だと思います。
 それから、前ページのようなエッセンシャル・ファシリティ、ミドルウェア、あるいは企業間競争といった分野の整理、明確化をすることも大事であると思います。
 オープンソースについてもまさにそのとおりでして、考え方を整理しながらいろいろなルールというものをつくっていかなければいけない。そしてバイオテクノロジーも多分同じように整理をしていけばよいと思います。リサーチツール等についても考え方を整理して皆で合意を取って制度をつくっていったらいいのではないかと思います。以上でございます。

○阿部会長 どうもありがとうございました。

○中山委員 私は八田先生とちょっと違う考えを持っていまして、フォークロアとTKですけれども、現在の我々が持っている知的財産法の考え方でいけば八田先生の言うとおりですし、あるいは経済学的にもそのとおりだと思います。既存の情報は公共財とすればウェルフェアの最大化を招く、これは恐らく疑いのないところだと思うんです。
 しかし、先ほどちょっと先生もおっしゃいましたけれども、実際問題、途上国の側としては、例えばよく問題になるのはペルーの民謡をサイモンとガーファンクルが歌って『コンドルは飛んでいく』という歌で大もうけをした。そして、ペルーの人には一銭も入らない。では、経済援助でやればいいかというと、サイモンとガーファンクルは大もうけをして、それに見合った関連性のある援助をするかというと、多分それはないので援助は援助で全然別なんです。
 恐らく途上国としては、現在の西欧型の知的財産法に対する一種の反乱と言っては問題がありますが、自分達の持っている何かを主張したいという意識がある。では、それを具体的なスキルとしてどう取り組んだらいいかというのは非常に難しくて、なかなか今すぐには浮かんでこないんですけれども、これは根気強く途上国と交渉はしていかなければいけないだろう。理論的には先生のおっしゃるとおりだと思うんですけれども、実際問題としてはやはり交渉していかざるを得ないだろうと思います。
 リサーチツールですけれども、先生がおっしゃるとおり、これはある種の特許の存続期間を発明によって変えるとか、あるいは利益の額を一定にするというのは理屈としては一番いかもしれませんが、実際にはこれは条文にはまずできません。したがって、可能性としては理論的には4つしかないので、そのようなものには特許は与えない。あるいは、今までどおりの特許を与える。いい発明をしたんだからうんともうけてくれと言うか、あるいは裁定実施権を活用するか、あるいは特許法と離れて競争法的な規制をするか。この最初と最後の考え方は多分問題があり、真ん中の2つになると思うんですけれども、そこら辺で調和というものをつけていくしかないのではないか。利益の額で、これ以上になったら特許を開放するというのは、条文として書けないと思います。

○阿部会長 いろいろ御議論があるかもしれませんが、加藤委員どうぞ。

○加藤委員 バイオの分野で遺伝子治療というものがあります。当社は日本でトップを走っているつもりですが、治療に関する特許についても日米の法的な根拠が異なるようです。私は専門ではございませんが、要するに米国では治療法の特許が認められている一方、日本では認められていません。
 つまり、遺伝子治療の場合は患者さん自身の細胞に治療用遺伝子を入れて、それを増やして患者さんに戻すという新しい技術でして、この辺の特許の感覚は物質特許や用途特許以外の、治療技術に関する特許というものが重要になってくるのですが、日本ではそれは認められていなくて、アメリカでは認められています。
 今後この治療法に関する分野はどんどん広がりますし、やはり物質特許でもない、用途特許でもない中間領域で、患者さん自身の細胞を使ってやりますので、難しい問題はたくさん出てきます。更に、ES細胞の話などになるともっと複雑ですので、この辺は本気で特に米国の関係機関と日本の関係機関とで十分議論をしてほしいと思います。少し話は変わりますが、米国で採用されている先発明主義について、非常に理不尽な違いがたくさんあります。バイオ業界の発展にも影響を与えることですので、日本としてはっきり時代が変わったという認識のもと、先発明主義を認めないという方向で議論していただければありがたく存じます。

○阿部会長 ありがとうございました。ほかの方、どうぞ。

○下坂委員 質問ですが、先ほどフォークロアと遺伝資源のところで途上国と先進国ということで中山先生にはお分けいただいたのですが、この2つは途上国対先進国の対立というだけではなくて先進国対先進国、例えばカナダとか、そういう場合もやはり同じような考えでいいということですか。

○中山委員 もちろん遺伝資源についてはカナダその他、今日のどこかの資料に載っていましたけれども、問題があるわけで、考え方は同じでなければいけないと思うんですが、問題は今の我々の知的財産のシステムにはそれには乗らないんです。それをどういうふうな形でやっていくかという話であって、別にそれは遺伝資源がカナダにあったからこうで、それがインドネシアにあったからこうだということはあり得ないと思います。
 ただ、新しいシステムというのはなかなか難しいことは事実だろうと思います。

○八田委員 私は『ソーラン節』でも『南部牛追い歌』でも世界中で使ってもらうべきだと思うんです。それで、『コンドルが飛んでいく』をほかの国が使っても全然構わない。そこで一歩何かの形で妥協をしたらとんでもないことになってしまう。すべてが広がってしまう。何の理由もないことで譲るべきではないと思います。
 それで、途上国援助をするのはサイモンとガーファンクルがもうけたから、それに対して報酬を払うなどということはあり得ないので、『コンドルが飛んでいく』を持っている国であろうがなかろうが援助するということでいいんだと思います。私はこれは、知財と全く別な話だというふうに思います。
 それから、利益の額で特許料を決めるというのは、現在すぐ国際条約でできるわけはありません。私が申し上げたのは、根本的な問題として特許の期間を決めるとか、料金を決めるとかということをこれから本格的に検討していく中で、そういう対策も検討対象とすべきだということです。元来ならば最も望ましい解決法を、現実には中山先生がおっしゃるように条約に取り込めないとしたら、現実の制度の制約の中で理想的対策をどうやって近似していけばいいか。そういったたぐいの話だと思います。
 例えば、タミフルの会社がものすごくもうかるでしょうけれども、それはタミフルを開発するのに十分以上のもうけを与えてしまうことになるんだと思います。今まで収入上限制限するという視点がなかっただけの話で、これからはそう見なければいけない。あるところで緊急措置をとるというようなことも、そのような理想的対策の近似措置の一環だというふうに解釈できるのではないかと思います。

○阿部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 この国際的な対応というのは大変難しい問題で、恐らく日本とほかの先進国も違うだろうと思いますけれども、先進国側がこうだと言っても途上国側が全く別な考えを持っているということが山ほどあるわけで、先進国の中でも違うわけです。しかし、やはりこれから知財戦略を我が国で進めていく場合、こういう視点を積極的に考えていかなければいけないことは多分間違いないだろうと思います。
 今日はもう時間になってしまいましたので、委員の先生方からできればメモをちょうだいできればありがたいと思います。事務局の資料5の11ページ、12ページに日本の対応案というものが書いてありますけれども、これも含めてこういうことでいいのか、あるいはもっとこういう対応策があるのではないか、あるいは視点があるのではないかということも含めてお寄せいただければ大変ありがたいと思います。すぐこれは結論が出るものでもありませんし、事務局の案にもありますように、いろいろな課題ですね。先進国、途上国、地域コミュニティ間の対応だとか、国際シンポジウムだとか、いろいろなことをやって、少しでも共通の理解を持っていくということも非常に大切なんだろうと思いますので、すぐの結論は難しいんですけれども、先ほどの御説明にもありましたが、国際的には毎年のように動いていく課題でもありますから、ぼやっとしているわけにもいかないということだろうと思います。よろしくお願い申し上げます。植村さん、本当にお忙しいところをありがとうございました。
 それでは、予定の時間がまいりましたので本日はこれで閉会にしたいと思いますが、次回の専門調査会は1月30日月曜日13時30分から15時30分にこの場所で行います。次回は先ほどの報告書案について決定してお決めをいただくことを考えておりますが、それとは別に知的財産基本法に基づく3年レビューということで第1回目の専門調査会で議論をさせていただいた知財推進計画に関する重点課題について御議論をいただきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
 本日は、大変御多忙のところ御協力いただきましてありがとうございました。これで終わらせていただきます。