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第6回知的創造サイクル専門調査会 議事録


1.開 会:平成18年9月21日(木)15時00分〜17時00分
2.場 所:知的財産戦略推進事務局会議室
3.出席者:
【委 員】阿部会長 板井委員 加藤委員 久保利委員 下坂委員 妹尾委員 田中委員 中山委員 前田委員 吉野委員 
【本部員】野間口本部員
【参考人】田中参考人 小島参考人
【事務局】荒井事務局長 藤田事務局次長
4.議事
(1)開会
(2)今後の進め方について
(3)国際標準総合戦略について
(4)知的創造サイクルに関する課題について
(5)閉会


○阿部会長 それでは定刻でございますので、第6回の知的創造サイクル専門調査会ということですが、事務局に確認をしていただいたところ、7か月と4日ぶりだそうでございます。お久し振りでお会いしているような感じですが、御多忙中のところを御参集いただきましてありがとうございます。
 本日は、八田委員は御欠席との連絡をいただいております。板井委員は、間もなくおいでになられるそうであります。
 また、本日は特に知的財産戦略本部の野間口本部員にも御出席をいただいております。よろしくお願いします。
 加えて参考人の方にもお越しいただいておりますので、最初に御紹介します。小島康壽経済産業省産業技術環境局長、田中謙治総務省情報通信政策局通信企画課長のお2人においでをいただいております。
 参考人のお2人には、国際標準に関する両省の取り組みについて御紹介をいただく予定でございます。
 それでは議事に入らせていただきますが、まず「今後の進め方について」を事務局から説明してもらいたいと思います。お願いします。それでは、資料1をごらんください。

○藤田事務局次長 お手元の資料1をごらんいただきたいと思います。
 今、会長からお話がございましたように今年度としては今日が第1回目の会議でございます。今後の進め方でございますが、主な検討項目といたしまして、知的創造サイクルの推進方策ということで、創造、保護、活用全般にわたる諸問題について順次御検討いただくということ。それから、それに合わせまして国際標準総合戦略の策定、これは推進計画2006にそのようにうたわれているわけでございまして、本日が第6回に当たりますけれども、これを第6回から第8回にかけて御検討いただきたいと考えております。
 2の検討スケジュールでございますが、本日が第6回ということで、標準総合戦略についての議論、それから後半は知的創造サイクル全般に関わる御議論、1回目でございますので皆様方からいろいろ問題提起をいただければと思います。
 次の10月25日に標準総合戦略の案をお示しして御議論いただくとともに、創造分野についての御議論をお願いします。
 それから、11月17日の第8回は標準の総合戦略について取りまとめていただくとともに、保護分野についての御議論をお願いします。
 来年の1月、2月くらいにかけて活用人材の分野についての御議論、それから全体の取りまとめということで、来年の2月くらいに取りまとめをいただきまして推進計画2007につなげていくことを考えております。

○阿部会長 ありがとうございました。ただいまの説明について何か御質問はございますか。よろしゅうございますか。
 それでは、資料1のスケジュールに沿って検討を進めることにいたします。そこにありますように、今日は国際標準と知的創造サイクルの2つについて意見交換をお願いするわけであります。
 それでは、早速前半の「国際標準総合戦略について」に入らせていただきたいと思います。最初に経済産業省の取り組みについて小島さん、よろしくお願いします。

○小島参考人 御紹介いただきました経済産業省産業技術環境局長の小島でございます。私は、資料2に基づいて御説明をいたします。
 私の担当は、職名からいくとわかりにくいのですが、技術政策と、それから標準・基準認証政策、環境政策を担当しております。では、資料2の1ページ目から、国際標準化のイノベーション政策あるいは技術政策における位置付けについてまず御説明したいと思います。
 実はこの1ページ目、昨日事務局から説明するなと言われているのですが、今までの標準政策が標準をやっている人だけの非常に狭い世界で議論されてきた、実行されてきたことによって、それは政府においてもそうですし、経済産業省ですと旧通産省の工技院の標準部という狭いサークルで議論されていましたし、会社においても恐らく経営陣の耳に入ることはないくらい小さな部局で議論されていたということで、そのこと自体が問題であります。産業技術政策あるいはイノベーション政策の大きな中、あるいは企業で言えば経営全体の中で標準化ということを位置付けなければいかぬという意味で、事務局からは反対を受けておりますけれども、反対を受けるとますますやりたくなるという反発係数が高く、抵抗弾性値が高い私ですので、1ページ目を中心にとは申しませんが、ちょっと御説明させていただいて2ページ目に移りたいと思います。
 1ページ目に「イノベーション・スーパーハイウェイ構想」と書いてありますけれども、1ページ目の左の下の方に政府が決めた経済成長戦略大綱の中で、国際競争力強化のために科学技術によるイノベーションを生み出す仕組みとしてイノベーション・スーパーハイウェイ構想が打ち立てられているわけですけれども、真ん中の欄に、この骨子はここにありますように研究開発と市場、あるいは市場を更に循環して市場から研究へという研究開発、成果、需要、市場展開というものを一体として進めよう。企業においても経営の中において研究開発を経営の一つのサイクルの中でとらえていこう。そのときに非常に重要なものが特許であり、国際標準化である。更には、後ほど述べますけれども、制度改革、システム改革というものが非常に重要になる。
 それで、この技術が牽引する社会経済活動の変革を大きく展開させるためには何が必要かということで、これまでの産学連携とか共同開発の成功事例、失敗事例を分析して得られた5つのポイント、成功のコツというものがここにあります。
 1番目は「双方向の流れをつくる」ということで、研究から市場、市場から研究、例えば新たなブレイクスルーを見出すために科学までさかのぼって研究する。単にシーズを市場化するだけではなくて科学までさかのぼるという双方向。
 それから、最終目標を定めて必ずそれを市場化する、市場展開するということで、そのときに国際標準というものが大きな重要な柱になるわけでございますし、また医療機器や医薬品の薬事審査制度等々のような制度改革あるいは安全対策といった制度改革というものも必要になる。
 更に新たなブレイクスルー、技術的ブレイクスルーを見出すためには技術の融合・合流というものが必要である。
 それから、こういう研究開発の過程をスピードアップするためには研究開発過程、特にこれは政府が関わる研究開発過程ですけれども、そういう予算とか契約制度とか会計制度の弾力化が要るということでございます。
 それを図示したのが右側の図でございまして、その図の一番左側に出口としての国際標準、制度改革、あるいはその過程における制度・システム改革が重要だということが書いてあります。
 こういうイノベーション創出の過程において国際標準というのは非常に重要な位置付けがあるということで2ページ目にいって、私は両方主題だと思っているのですけれども、事務局の言う本日の主題について御説明をいたしたいと思います。
 2ページ目の一番左側は現状ですので、時間の関係で省略しますが、現在はそういう重要な国際標準化、あるいは市場展開をする上で非常に重要な国際標準化ではございますが、実際に国際標準にするためには一般の工業製品についてはISO・IECで国際標準を確保する必要があるわけでございますけれども、一番下のグラフでその重要な役割を担う幹事国の数というものが、欧米の諸国は上の方で委員会の数で言えば100以上ですが、日本も数年前にここにいる藤田事務局次長が国際標準課長になってからぐっと伸びていますが、なお欧米から比べると半分以下という状況です。
 そこで、これではいかぬということで「基本的な考え方」は上にございますけれども、まずこういう標準は欧米でも同様ですし、国内でも技術開発をして製品を出していくのは民間企業でございますので、まず民間企業が主たる担い手、中心的な主役として頑張ってもらう。それを政府がバックアップする。
 1つには、日本が先導しているような先端技術について、例えば光触媒ですとかナノテクですとか燃料電池とか、そういったものはまず政府が先導役を果たしますし、それから環境とか安全とか、あるいはユニバーサルデザインといった公共的な要素の高いものについても政府が先導する。それ以外のものについては民間を主体に政府が国際委員会の場あるいは人材育成という面でバックアップするということで、その具体的な取り組みが右の欄にございます。
 まず産業界において一番重要なことは先ほど冒頭に申しましたように、企業においても国際標準というものが必ずしも浸透していない。国際標準するということが大事だということが、あるいは経営者の耳にもなかなか止まっていない。
 先ほどの国際幹事国をとった中で、ある国際委員会の事務局もついこの間までは日本の企業の課長さんがやっていたのですが、頻繁に国際出張をするので社内では非常に冷たい目で見られているということとか、この3番目に書いてあるわけですけれども、最近知財部長さんとかが皆、役員になったりして評価が高くなっているのですが、標準をやっている人は課長か、せいぜい次長止まりで、役員になった人はいまだかつていないという人事面での枠を設けていないということで、こういうところから変えていかなければいけないのではないかということです。
 それはそれぞれの団体でやっていただきたいのですが、特に先端技術については大学の研究者が入ってやって、その後フォローしてもらうというのは技術的にもいいわけですし、大学の先生は我々と違って人事異動もないので同じ分野をやっていただけるのでいいんですが、大学において国際標準活動をするということが余り評価されない。論文の代わりにならないと教授になるときに評価されないというので、それでディスカレッジする先生もいるので、是非大学においても国際標準化活動というのが正当に評価されるようなことをしてもらいたい。 それから、政府に云々というのは先ほど申しましたような環境とか安全といった分野、あるいは先端的な分野で、国は研究開発をするところには当然国際標準化というものをビルトインする。それから、民間の標準活動を支援するということで、国際標準化支援センターとか、そういったところでの人材の育成、あるは海外出張の支援です。それから一番下にありますけれども、外国における活動においては、10名程度ですが、海外に経産省は標準アタッシェというものを置いていますし、いろいろな国際的な枠組みにも参加しておりますので、そういったことで支援をしていきたいということでございます。以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。御質問もあろうかと思いますが、次に総務省の取り組みについて田中参考人から御紹介をいただきます。よろしくお願いします。

○田中参考人 御紹介いただきました総務省情報通信政策局通信規格課長の田中でございます。私の方からは資料3に従いまして、情報通信分野の標準化活動の現状について御紹介させていただきたいと思います。ただいま小島局長の方からいろいろ基本的なことの御説明がありましたが、私どもも同じような気持ちで取り組んでおりますが、まず今日は現状を御紹介させていただきたいと思っております。
 資料を1枚めくっていただきまして1ページ目から御説明させていただきますが、通信放送の分野におきましてはそもそも情報の受け渡し、お互いが意思疎通のルールを決めておかないとつながらないということで、電信が発明された当初から国際ルールづくりというものがスタートしておりまして、現在は国際電気通信連合というところを中心に標準化の作業がなされておりますが、その前身は1865年にできたもので、日本としてもその14年後の1879年に加盟して長い活動が行われてきている国際電気通信連合、ITUは電気通信、無線通信、放送の分野の標準化活動をずっと続けておりますが、この中で我が国は主要メンバーといたしまして民間の専門家の方々が多数積極的に参加されて、今まで貢献されてきていると思っております。
 一方、1980年、90年代ごろから右側の方に書いておりますが、民間のフォーラム活動というものが非常に活発になっておりまして、インターネットに代表されるような新しいものが、元はアメリカの政府かもしれませんが、規格としましては民間フォーラムのような形をとって出てきている。そんな中でITU、国の主体、国がメンバーの組織でございますけれども、ITUと民間フォーラムの連携が非常に重要な課題になってきている。我が国の国内におきましては国際標準づくりに積極的に参加するとともに、それに準拠する形で、これはいろいろオプションの選択とかありますので、国内標準づくりを民間の標準機関でつくってやっているところでございます。
 2ページ目はITUの組織図をお付けしておりますが、先ほど御紹介しましたとおり、国連の専門機関として現在191か国の政府がメンバーステイツという形で参加するとともに民間企業、約650の電気通信事業者あるいはメーカー等の企業がセクターメンバーということで直接活動に参加していろいろ提案もできる体制になっております。
 ITUの中は大きくは3つに分かれておりますが、ITU−Rと言われる無線通信部門、それからITU−Tと呼ばれる電気通信標準化部門、ここが標準化の主な舞台となっております。御参考までに申し上げますが、ITUの現在事務総局長は日本から内海善雄事務総局長が来年の1月までの任期で、一応2期8年の任期を終えられる予定になっております。後ほど御紹介いたしますが、ITU−Tの事務局の方の局長は現在中国のツァオさんという方がおられますが、この方も2期8年で満期ということで、今年の11月に後任の選挙がありますが、日本から候補者を立てているということで後ほど御紹介させていただきます。
 次の3ページ目をごらんいただければと思います。ITUの現状ということでごくかいつまんでトピックス的に御紹介いたしますが、ITU−Tには現在14のスタディグループ、委員会がございますけれども、その中で日本から議長さんが2名、副議長さんが8名ということで、議長、副議長を合わせて10名というのは今、一番多い状況になっております。ただ、これは過去の先輩方の成果が今、実っている状況なんですけれども、こういうことがいつまでも続く状況にはない。
 それから、標準に含まれる知財の取扱いについてはパテントポリシーをITU−Tの方でつくってきておりまして、現在ISO・IECと、そのポリシーの共通化といったことをITU−Tとしても積極的に取り組んでいるところでございます。
 IT−Rにつきましては8つの委員会で無線システムの標準化等を進めておりますが、現在副議長4名ということで、来年でひと区切りつくんですけれども、その後の4年間の会期に向けましては議長さんを是非出していきたいと考えているところでございます。
 ITU全体にとっての課題を下に書いておりますが、最初に申し上げましたとおり民間フォーラムは非常に活動が活発化しておりますので民間フォーラム活動との連携、それからもう一つ最近言われておりますのが、ITUは国連の専門機関でございますので途上国の参加ということで非常に途上国も関心を持っておりまして、先進国と途上国の間の標準化ギャップ、スタンダディゼーション・ギャップという言葉を国際的に使っておりますが、それをいかに解消していくかということが課題になっております。そのほか、国際機関として共通ですけれども、財政基盤の強化という課題がございます。
 4ページ目でございますが、そんな中で今、私どもといたしまして力を入れていることを3点ばかり書かせていただきました。
 1つは、知財計画等でも御指摘されております国際標準獲得に向けた研究開発の推進ということで、プロジェクト型あるいは競争的研究資金の委託研究、多々やらせていただいておりますけれども、この成果を国際標準提案するよう、迅速にするよう進めている。
 それから、アジア・太平洋諸国との連携強化ということで、欧米諸国が地域内で共同するブロック活動的な活動も強めているということで、アジア・太平洋諸国との連携強化に努めているところでございます。現在ASTAPという組織をつくってはおりますが、標準化そのものをつくるというよりは、まだいろいろな技術協力というか情報交換、それからITUの場に共同提案という形で日本やアジア、韓国等が共同提案の形に持っていくというような活動が中心になっております。その中で、中国、韓国との間では日中韓の情報通信大臣会合の下で連携強化とか、あるいは3か国間の標準化機関の定期的な会合を持つようになっておりましたので、そういう活動を促進しているところでございます。
 3点目といたしましては人材の育成・排出ということで、これが一番切実な難しい問題かと思っておりますが、先ほどお話ししましたとおり議長、副議長について、現在は世界最多という形になっておりますが、その副議長さんの一歩手前、いろいろ標準を具体的にまとめるラポーターと呼ばれるような肩書きのポストなどを見てみますと、実は中国、韓国の人の方がむしろ多いくらいの状況になっておりまして、今後そこは継続的に若手人材育成をしていかないと5年、10年後に非常に深刻な問題が起こるかなと考えております。そのために、現在表彰制度の充実だとか、あるいは実践的なセミナーの開催等に取り組んでおりますが、さらなる策等を検討していきたいと考えております。
 それから、先ほどちょっと申し上げましたけれども、今年の11月にITUの最高の意思決定機関である全権委員会議というものがございますが、そこでITU−T、電気通信標準化局の局長選挙が行われまして次の4年間の局長を選ぶことになりますが、そこに我が国からNTT取締役でおられます井上友二さんを擁立しておりまして、現在政府を挙げて、それからまた民間の方々各社さんとも御協力しながら各国の支持獲得に努めているところでございます。11月まで残すところわずかですので、選挙運動は頑張っていきたいと思っております。
 5ページ目は今、御説明しましたITUを中心とする情報通信分野の標準化活動の全体の連携を図にさせていただきました。一々の御説明は省略させていただきますが、ITUは最初に申し上げましたとおり電気通信事業者あるいは放送事業者、メーカーの方々もそれぞれセクターメンバーということでメンバーが参加できるようになっておりまして、標準化提案、総務省の方の審議会で国内意見として調整等はさせていただいていますが、直接提案もされている。それから、専門家はもちろん民間の方が多数参加されているという状況にございます。
 こういう活動を通じまして、今まで日本が情報通信分野、ITU、それから最近は他の民間フォーラムでもございますが、確立してきている日本の地位を引き続きしっかり高めるように、民間の専門家の方々と連携して取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
 6ページ、7ページは参考として最近取り組んでいる課題を付けさせていただきましたので、説明は省略させていただきたいと思います。御説明は以上でございます。

○阿部会長 どうもありがとうございました。それでは、国際標準総合戦略の検討課題について藤田次長から御説明してもらいます。

○藤田次長 時間も押しておりますのでごく簡単に御説明を申し上げたいと思いますが、最初にやや補足をさせていただきたいと思います。
 後ろの方に参考資料1という色刷りの資料がございますので、これをごらんいただきたいと思います。そのうち2枚目で、3ページと右下に書いてあるページをごらんいただきます。今、標準というお話がございましたけれども、標準には大きく言って3種類ございまして、デジュール標準というものがISOとかITUでつくられている、いわば各国がきちんと国を代表して参加した場所で手続を経てつくられる標準でございます。
 それから、フォーラム標準というのはここに書いてございますように、関心のある企業が集まってフォーラムをその業界の中でつくり、それが国際標準に事実上なるということで、DVDなどはその典型的な例でございます。
 それから、デファクトは企業の標準が世界中で市場を獲得して、実質上それが支配的になっている。例えばマイクロソフトのウインドウズのようなものを指しております。それで、今回御議論いただいておりますのは、今までの御説明はデジュール標準のところが中心でございましたけれども、フォーラムとかデファクトに関わる部分もあると事務局としては考えております。
 次に4ページをごらんいただきますと「標準化の基本的な意義」ということで、昔から標準化というのはあるわけでございまして、例えば世界中で単3電池と言えば同じサイズの同じボルトのものが出てくる。これは標準化の例ですし、あるいは世界中でコンセントの形が違うというのは標準化が失敗した例でございますけれども、そういう互換性・相互接続性あるいは標準を獲得すれば市場が拡大する。それから低コスト化・調達の容易化、技術の普及、品質・安全等々、こういういわばオーソドックスな意義があるわけでございますが、近年環境変化が非常に著しいというのは次の5ページでございまして、WTO/TBT協定が結ばれて、各国ばらばらの標準は貿易障壁になる。したがって、世界中でその標準の規格を統一しましょう。何に合わせるかというとISOとかITUという国際規格に合わせましょうということで、例えば日本のJISもISOに一生懸命規格を合わせなければいけない事態になってきているということで、国際規格の重要性が格段に高まっている。
 それから、そういう標準化活動の中でアメリカ、欧州あるいは最近は中国もそうでございますけれども、標準をてこに世界の市場を獲得しようということで、いわばビジネス戦略として標準を用いるということが打ち出されております。
 それから、従来は標準の中に特許が含まれることはほぼなかったわけですけれども、近年国際規格の中に特許がたくさん入ってくるようになりまして、DVDとかMPEGとか情報通信の分野に多いわけでございます。したがって、その国際規格の中に自分の会社の特許が含まれればそれでロイヤリティをきちんと獲得できるとか、そういうビジネス戦略上の意義も拡大をしている。あるいは、日本で評判の悪いISOの9001とか14001といった新種の、会社のマネジメントに関わる規格なども出現してきているという中で、国際標準の重要性が高まっており、我が国としてもしっかり対応する必要があるのではないかという背景でございます。 資料4に戻っていただきまして、先ほど来、経産省、総務省からもう項目は出ておりますので、私の方からは1ページの項目の御説明だけにさせていただきます。解説的なことは後ろに書いてございますけれども、検討課題として大きく5つ挙げております。
 第1は「産業界の意識を改革し、国際標準化への取組を強化する」ということで、経営者の意識の改革、企業の組織体制の強化、多様なスキームを活用する、知財の活用を図る、産業界自身によるアクションプランの策定、実行、マネジメント分野の取り組みの強化、産業界の自主活動を促す国としての支援策の強化というような項目でございます。
 第2が「国全体としての国際標準化活動を強化する」ということで、国の研究活動と国際標準化活動を一体的に推進する。国際議長・幹事を積極的に引き受ける。これは、議長とか幹事ポストの数が日本国全体として少ないと、例えば理事会などの大事な機関で日本が代表を送り込めない事態になるわけでございまして、そういう意味では個別の業界の問題だけではなくて国全体の問題にもなるということであります。あるいは環境・安全・福祉等の分野で世界に貢献をする。
 第3が国際標準人材の育成ということで、先ほども出ました次世代の国際標準人材の育成、あるいは国際標準人材間のネットワークの構築、大学における標準教育、あるいは顕彰制度を充実させる。
 第4が「アジア等の諸外国との連携を強化する」ということで、例えば今、御説明する時間はありませんけれども、国際規格の世界というのは欧州にかなり有利なレジウムになっておりまして、そういう中で欧州以外のアジア・太平洋諸国がどういうふうに連携できるかが課題でございますので、「アジア・太平洋標準化イニシアチブの推進」、あるいは最近台頭著しい中国や韓国との協力の推進ということが課題である。
 最後の5でございますが、「国際標準化のための環境とルールを整備する」ということで、より公平でオープンな国際標準化システムの実現を目指す。あるいは、知的財産の取扱いルールの明確化を図る。こうしたことが課題かというふうに事務局としては整理をさせていただきました。以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。余り時間がないのですが、議論に入らせていただきたいと思います。
 どなたでもいいのですが、先ほど田中委員の名前が出てきましたので、国際標準についてこういう検討課題で進めるということを中心に何かございましたらお願いします。

○田中委員 資料6−2を準備してまいりましたが、私の資料の3ページ、4ページ、5ページというところがそれに当たると思います。

○阿部会長 では大変恐れ入りますが、短目にお願いしたいと思います。

○田中委員 はい。全体的に国際標準化に関しては経済産業省や総務省を中心に検討が行われているわけですけれども、一般の人たちにはそんなになじみがないという状況もございます。私がここにまとめたのは課題の一部だと思いますが、具体的にこういうことをしていったらいいのではないかということで、まとめさせてもらいました。
 1つ目はフォーラム規格(トップランナー方式)の標準化活動の支援強化です。各企業とも、どのようにしたら国際標準につなげていけるのかということについて戸惑いもありますので、いわゆるデジュール標準の活動支援とともに、フォーラム規格への支援強化も必要だろうと思います。
 2つ目は、日本規格協会に設立された国際標準化支援センターの機能強化です。各学会ですとか工業会ですとかいろいろな機関で国際標準の活動をしている、あるいは標準化の技術的な検討をしています。しかし、学会や工業会がそれぞれどのような活動をしているのか、全体としてどこも明確に把握していないということがあります。先ほど企業の方ももっときちんと対処しなければいけないというご指摘がありましたが、政府としても是非この点に関してはやっていただきたい。
 3つ目は、中国独自の国家規格策定についてです。今、企業として非常に大きな問題になっておりまして、これについてもきちんとした対応をしていく必要があるだろうと思います。
 次のページにいきます。知的財産の取扱いルールの整備についてです。ISO、IEC、ITUにつきまして、日本からも積極的に働きかけて知財取扱いルールの整備が動き出しておりますが、更に加速する必要があります。それから、今回啓蒙活動というものも非常に大きな形で取り上げられています。ISO、IEC等の委員会の主査や参加している人からの意見ですが、日本で国際会議を開催しようと考えたときに、自分で手弁当で全部やらなければいけない。
 国際標準化支援センター等でそういったことをきちんと支援してくれれば、日本で国際会議が開催しやすくなる。非常に高いレベルの会議からテクニカルコミッティレベルの会議までいろいろなものがありますけれども、それが比較的日本で開催されていない。したがいまして、支援するところがきちんとあれば、手弁当ですべて自分でやらなければいけないということもなくなります。開催できれば日本人の参加者ももちろん増えるわけですし、人材教育や啓蒙活動につながっていくことになろうかと思います。
 それから、「標準と知財」に関する啓蒙活動の強化です。今、知的財産を抜きに国際標準というものは語れません。パテントテロリスト等が特許権を利用し不当に金を集めるということが起こっていますので、それについてもきちんと対処していく必要があると思います。
 最後のページは私どもの事例でございます。1997年にキヤノンでは国際標準企画センターという組織をつくりまして、工業会ですとか、あるいは国際の場における国際幹事ですとか、そういう仕事をやってきております。今年それを廃止いたしまして、今、再編のための検討をしております。大きなポイントは、知的財産活動と標準化と両方を見据えながら再編を行うということで、今年中あるいは遅くとも来年早々には新たな組織をつくって、対応していこうと考えております。以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。
 指名をして申し訳ないのですが、野間口さんにはせっかくおいでいただいたので、何か御注意とかコメントをいただければと思います。

○野間口本部員 資料4の中身は十分把握していないのでありますけれども、先ほどの標準についての基礎概念のところで整理いただきましたように、デジュールだけではなくてフォーラム、デファクト、広い概念で標準をとらえようというのは、私は誠に適切で、そうでなければいかぬと思っておりまして大変ありがたいと思っております。
 先ほどのお話にもありましたけれども、知財戦略大綱が出ましたときに国際標準と知財戦略との関係がもうひとつはっきりしなかったのが、お陰で大変よい形で連携がとれてきたのではないかと思っておりまして、知財活動の成果が恐らく一番大きな形で出るのは標準を獲得したときだと思いますので、ここに論じられたような形で大いに進んでいくように期待しております。
 このJISCさんとか、あるいは情報通信審議会、電波産業界等、具体的な取り組みが非常に一般の我々企業人からも見えるようになりました。これはこういった議論のお陰だと思っておりまして、これからは具体的な成果を上げていくときかという考えで斜めに読ませていただいたんですけれども、少し気になりますのは、例えば国のプロジェクト等で成果が見えまして、これは将来国際標準という形で闘うべきとき、そういう課題が見つかったときに戦略的にどう育てていくか、取り組んでいくかというのがもう一つ見えないのではないか。田中課長とか小島局長の話にも恐らく入っていたのだろうと思いますけれども、アクションプラン、アクションアイテムとして、ではこの課題はここに相談しようというようなところがもう少し見えますと、更にこの検討課題の中身が使いやすいものになっていくのではないかと思いました。
 それから、つい最近、経団連の知財委員会に関係することになりまして、そういう関係で言うわけではありませんけれども、経団連という表現が2ページにいっぱい出てきまして少々気になっております。こういう形でまとめてしまうと、企業という立場で考えますと、おれのことではないのかなとなっていくのではないか。産業界としてはとか、そういう形でとらえていただいた方が、自分が担当している事業分野でこういうふうにチャレンジするんだと。それが、そういう動きをやっていく上で業界としてまとまって、国としてこういうサポートの在り方が望ましいとなれば経団連としては大いに意見を申し上げたい。そういう形でとらえていただいた方がいいのではないかと思いました。少し雑駁な意見ですみません。

○阿部会長 ありがとうございました。研究開発の種類とか分野にもよりますけれども、標準化にかなり早い時期からいろいろなサゼスチョンをいただいた方がいい分野とかケースもたくさんあるので、そういうときにも今、野間口さんが言われたように、一体どこに相談したらいいかというようなこともあろうかと思います。
 吉野さん、いろいろ御苦労されているところがあるのではないかと思いますが、資料4をそのうちリファインしていくのですが、それに関係なくても結構でございますが、いかがですか。

○吉野委員 今はまだ資料をいただいて時間がなくて消化不良という感じの段階でありますが、標準よりも更にポピュラーで幅の広がったものが常識みたいなところにあるのだと思うんですけれども、私どもは一部、常識破りみたいなことに生きがいを感じてきた企業ですから、ややまだ違和感もあるんです。
 したがって、資料4の最初に掲げている経営者の意識を改革するというのは私に該当するのではないかと思っているのですが、例えばここは今、国対国ないしは国対地域みたいな構図で論じられていますけれども、工業界などを考えた場合でも自動車の場合、外資がドミナントな企業が増えているわけです。したがって、日本の中でも工業界でもまとめるのはかなり難しいという項目もいっぱいあると思うんです。そういうことが、他の産業ではどういうトレンドかは知りませんが、いずれそういうトレンドになっていくのだろうと思います。
 したがって、単純にこういうふうにはいかなくて産業界、工業界なり協会の中でさえなかなかまとめ切れない部分が増えてくる。そのときに、多分まとめ役とか仲裁役という役回りを演じるところが出てこないと、これは大きな意味で標準協会かもしれませんし、更に政府かもしれませんが、そういう構図がだんだん増えてくるのかなという一つの難しい面があろうと思います。
 それから、全体として例えば日本の関与度あるいはトレセンスみたいなものが世界的な標準化活動の中で増えてはいるけれどもまだ低いという認識の中で、どちらかというと人材などは当然時間がかかりますから、やや初めから張り切り過ぎではないかという感じもします。これは時間がかかる話ですから、余り張り切り過ぎて途中でしりすぼみになっちゃうようなことがあるとむしろマイナスだから、確実にそういうことが進展していくというようなことも考えていいのではないかという印象を受けました。今日は以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。自動車などを念頭に浮かべますと、国対国などというものはだんだんなくなってきているということかもしれません。

○吉野委員 非常に難しいですね。

○阿部会長 そういうことも考えていかなければいけませんね。
 では、妹尾先生、前田委員とお願いします。

○妹尾委員 知財の教育をやっている者の観点で申し上げると、研究開発を全部やったけれども、結局国際標準をほかに取られたために、その研究開発は全部無駄になるという事例を多くみます。そういうことを考えると、やはり知財創出に関わる標準化の問題というのは大変大きいのではないかと思っております。それで今、日本弁理士会さんと御一緒に標準化のゼミを2つほど後期から立ち上げて取り組み始めました。
 我々人材育成をやっている人間から言うと、標準化人材をどうやって育成するかを考えるときには、ロールモデルをつくって、アクションイメージを想定して、スキルインベントリーとナレッジインベントリーを構成して、それをどういう教育カリキュラムで学んでもらおうかと考えます。
 そのときに必要なのは、現在の状況はどうなのか、という点です。今、恵まれないとか、いろいろネガティブな話がありましたが、実際はどんな方がどういうふうに取り組んでいてどんな問題があるのか。また、海外でサクセスするような標準人材はどのような方がおられるのでしょうか。海外がどうなっているか、よく話には聞きます。欧米では弁護士の方が多いけれど日本はまじめな技術者が多いので負けてしまうとか、そういううわさはよく聞くのですが、国内外での実態調査はどのぐらいされているのでしょうか。その状況がきちんとわかると、あるべきロールモデルが立てられることになるのですが。経済産業省と総務省はどの程度調査をされておられるか、ちょっと伺えればと思います。

○阿部会長 その前に前田委員が手を挙げておられたので、もしかしたら質問もあるかもしれません。ないかもしれませんけれども、どうぞ。

○前田委員 的確な表現ではないかもしれませんが、何でもブームにしてしまうことが質・量を高めるのに大事なのではないかと思います。知的財産も国を挙げてブームにすることで、(ブームという言い方をすると怒られてしまうと思うのですが、)やはりたくさんお金が付いて重んじられることで質の高い人がそこに入ってきました。
 もともと私が二十数年前に社会人になった時には、どちらかというと知的財産の関係の方というのは縁の下の力持ち的なイメージがあったと思うのですけれども、現在のように、かなりいろいろなところで謳われるようになってくると、現在いらっしゃる方もより力を発揮されますし、新しい方もどんどんその世界に入ってきますので活性化されて良い方向へ進むと思います。また、標準化しない戦略、標準化する戦略、どちらもあっていいと思います。業種によっては、むしろ標準化しない方が良いという方向性もあると思いますので、多くの質の高い方に戦略を考えていただいて、進んでいくということが大事だと思います。人材育成も、いろいろなところからお金が付いてある意味ブームになっていくことで、優秀な方がそこに入っていっていろいろな考えが出ていくようになるのではないかと思っています。
 現在、私は文部科学省の振興調整費のプログラムで自動車用のリチウム電池の標準化のところに関わらせていただいているのですけれども、自動車のリチウム電池が本当に標準化できるのかどうかは別として、このようなテーマにお金が付いて検討するというのはある意味で良いことなのかなと思いますし、国が取り上げていくことで、標準化をしない戦略・する戦略をきちんと分けていく。質の高い人がそれをつくっていくということが大事なのかと思いました。

○阿部会長 ありがとうございました。それでは小島さん、さっきの人材を中心にお願いします。

○小島参考人 人材だけとくぎを刺されましたので、人材だけについてお答えします。
 日本の場合、欧米はすべて民間企業、民間団体主導で動いている。日本の場合も実質の標準化活動をしていただいているのは民間の人ですが、日本の独特のものでして、経済産業省に普通の工業標準については日本工業標準調査会という政府機関が設置されていて、その委員会組織の中で業界の企業の方、業界団体の方、それから大学の先生方をオーガナイズして標準を作成していくということで、分野ごとに業界団体、化学の業界団体とかでオーガナイズしてもらっているところもありますし、先ほども出ていました日本規格協会のようなところが先生方とか企業の人をオーガナイズするということで、分野ごとにそれぞれ標準に関わる人を、実は先ほど申しましたようにそんなにたくさんいるわけではないので、ほぼ網羅的に把握していて、そういう人がどういう形で標準に携わっているか、あるいはどういうキャリアパスを通っているかというのは今、直ちにはお答えできませんけれども、整理できるかと思います。

○阿部会長 後で、我々の方にも教えていただけるようにお願いいたします。
 では、田中さんお願いします。

○田中参考人 御質問のありました、標準化に携わっている人材はどういう経歴を持っていらっしゃるかというようなことにつきましては、残念ながら網羅的に調査したようなことはまだございません。個別に国によって弁理士のような資格をバックグラウンドに持っておられる方、そういう分野をバックにしていらっしゃる方がかなりおられるというのはいろいろ情報としては入ってきますし、また最近、韓国の様子などを見ていますと、いわゆる技術をバックグラウンドにしていない人たちがかなり入ってきている。それから、標準化活動も情報通信の分野は基本的に電気通信事業者、キャリアの人材の方が中心だったのですけれども、韓国などでは大学の先生方をかなり巻き込むような形で人材を広げているような動きがあるということは把握しております。
 国内について見ますと、現時点ではいろいろITU活動等に貢献していただいている方々は基本的には技術をバックグラウンドにした方がほとんどでございます。ただ、それぞれの社の中ではいろいろ知財の関係をやっていらっしゃる法律が御専門の方とチームを組むような形でもやっておられるとは伺っておりますが、私どもは実際に国際の場合へ出ていくというところは技術の方が今はほとんどかと認識しております。

○阿部会長 では、どうぞ。

○妹尾委員 現状がどういう人材であるかということと、今後国際的に活躍できる人材はどうなのかという間には恐らく大きなギャップがあるはずなので、国際的に活躍している方のプロファイルというものも是非教えていただければありがたいと思います。 今の印象を言いますと、標準化人材とは、昨年度、この場で作成した知財人材総合戦略に出ている融合的知財マネジメント人材と全く同じ構成をしていると考えられます。つまり、テクノロジーとリーガルとビジネスの3つの融合人材です。けれども、日本の場合はどうも技術の方だけでやっている。リーガル人材とチームは組むかもしれないけれども、でもビジネスは足りないねというような状況に見えます。ただし、そこはある程度の絵が描けるのではないかということが1点です。
 余談ですが、先ほどブームという御発言に多分違和感を覚えた方がいると思うので私がちょっとフォローさせていただきます。研究分野というのは旬な時期があると思った方が良いということです。例えば今のITで言えばユビキタスだとかグリットだとかが旬な時期で、そこには一点集中的に全部の研究者や教育者や関係者が集まります。集まるとそこで一点集中、全面展開の突破ができる。その意味での標準化をやるんだったら、多分一点集中をやる時期というものが今なのかなという感じがあります。もちろんこれは業界ごとに違うと思いますが。

○阿部会長 ありがとうございました。人材はそういう意味では学生から見てもロールモデルがどのくらい見えるかということで、見えないのとでは大違いなので難しいんですけれども、しかし進めていかなければいけないというのは妹尾先生などのお立場だと思います。
 余り時間がないのですが、あとお1人かお2人から御意見をちょうだいしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○野間口本部員 少し先ほどからの議論で気になりますのは、標準をやっている人は評価されないとかというお話がありましたけれども、決して私はそうではないと思うんです。ある意味で標準をやって世界的な場で交流して活躍しますから、技術者としてはむしろ非常に恵まれていて、標準の会合というのは風光明媚なところでやるんです。そういう意味でも、恵まれています。
 それから、役員になった者はいないという話がありましたけれども、標準を大変理解して大事にしてそうした事業を伸ばして役員になった例というのはたくさんあるのではないかと思います。100%標準はやっていないけれども、これからの時代はこういうことが大事なんだ、しっかりやれということでリーダーシップを発揮する。
 広い意味でいくと、私などもそうだと思いますし、田中さんなどもまさにそうだと思います。標準、標準とはやられなかったと思いますけれども、そういう部下を大いにアクティベートしてやられたから今日のキヤノンさんがあるんだと思いますし、そういうふうにとらえた方が先々やっていく上でも元気が出るんじゃないかと思います。

○田中委員 人材についてですが、私も経済産業省 日本工業標準調査会(JISC)の標準部会やその下の国際専門委員会に委員として参加していますので、若干コメントさせていただきます。今ISOの会長は日本から出ています。また、IECの方は前委員長が日本からです。ITUの方もかなりのポジションを占めている。そういうこと自体がまだまだ日本で認識されていません。
 ISO、IEC、ITU等もそうですけれども、例えば、標準化の委員会にもTC(テクニカルコミッティ)、SC(サブコミッティー)、WG(ワーキンググループ)など、いろいろな階層があります。WGの主査はもちろん技術者がメインで、実際の仕様を作成するのが役割です。階層ごとに役割が異なりますので、それも含めてどういう人がどういうポジションにつくかが重要です。海外で弁護士や弁理士が参加しているという話もありますけれども、それはどの階層の委員会でどういうポジションについているか、ということを含めて考える必要があります。それから、ISO、IECは日本では経済産業省の所管でございまして、ITU−Tは総務省、これも一括して所管する必要はないのかもしれませんけれども、連携プレーをとる、あるいはもう少し何か効率的に動く方法はないかというところも検討していく必要があるのではないかと思います。以上です。

○阿部会長 今、最後におっしゃったところはそれ以外の省も含めて、今日は非常に実績のある2つの省に来ていただいたということですので。
 では、中山先生、最後にお願いします。

○中山委員 私は標準は素人なんですが、技術はいいけれども標準が取れないために損をしているという話はしょっちゅう聞いておりまして、その意味からここに書いてある検討課題に私は全面的に賛成したいと思います。しかしここでの議論は、標準化すべきものについて、いかにしてわが国が指導権をとって標準化すべきかという問題ですが、先ほど少し前田委員の話もありましたが、標準化するということはある意味では技術の発展を阻害してしまう面もないわけではない。特に製品そのものではなくてISOの9000とか14000とか、果たしてこういうものは本当に標準化した方がいいのかという議論も一方では必要だろうと思います。

○阿部会長 それでは、時間の関係もありますので、小島さんは御発言されたいようですが、野間口さんのようなポジションの方がおっしゃっていただいてそういう方が増えてくると、大分雰囲気が変わってくるのではないかと思いますのでよろしくお願いします。 若干時間がオーバーしていますので先に進ませていただきますと、次回の第7回においても引き続き御議論をいただき、第8回において取りまとめたいと思います。つきましては、本日の御議論を踏まえて事務局で国際標準総合戦略のレポートの案をつくってもらいまして、次のこの会に提出してもらいたいと思います。その際に、今日いろいろ御意見がありましたけれども、特に資料4について短期間でまとめることにもなりますので、更に御意見がある場合にはメモをお出しいただけないか。大変恐縮ですが、10月6日金曜日までに御提出をいただきたいと思います。
 ここで野間口本部員は御退席をされます。それから小島さんと田中さんも御退席をされます。なお、またメモでもいただければこちらで責任を持ってやらせていいますので、お忙しいところ御出席いただきましてありがとうございました。御礼を申し上げます。

(野間口本部員、経済産業省・総務省関係者退室)

○阿部会長 それでは、次の議題に移らせていただきます。知的創造サイクルに関するテーマであります。まず事務局から説明をさせます。お願いします。

○藤田次長 それでは、資料5に基づいて御説明をさせていただきます。ちょっと厚い資料でございますので、時間の関係で主なポイントのみ御説明をさせていただきます。
 この資料は知的創造サイクルに関する創造、保護、活用、各分野における今の取り組み状況と今後の課題について事務局としての案をまとめたものでございます。
 1ページからが、まず創造の分野でございます。1の「推進計画2006の取組状況」といたしましては、例えばですけれども、(1)でございますが、文科省の審議会におきまして国際的な産学官連携ポリシーを策定するべきだというレポートが取りまとめられております。あるいは(3)でございますけれども、ライフサイエンスの分野、リサーチツール等の問題につきましては総合科学技術会議にプロジェクトチームが設置されまして、第1回目の会合が一昨日開催されたところでございます。
 次の2ページをごらんいただきますと創造分野の「今後の課題」ですけれども、「(1)大学等の知財活動体制の抜本的強化」ということで、本年度末で国立大学に対する特許料の減免の特例措置が終了する。あるいは、知財本部整備事業が来年度で最終年度になるということで、せっかくこれまで構築されてきた大学の知財体制が弱体化する懸念も指摘をされております。そういう状況の中で、今後どのような総合的な対策を講ずるべきかということです。
 それから(2)でございますけれども、第3期科学技術基本計画ではイノベーションの創出ということが正面から打ち出され、5年間で25兆円の投資を行うということ、あるいは本年6月には総合科学技術会議でイノベーション創出総合戦略というものが取りまとめられたわけでございますが、こうしたイノベーションの戦略の中で知財にどのように取り組んでいくか。あるいは2つの目の段落でございますけれども、研究開発独法のさまざまな制約、あるいは政府の契約とか会計制度の問題についてどのように考えていくかということもございます。
 それから(3)の1)ですけれども、大学の知財本部とTLOの一本化とか連携強化という取り組みをどうしていくか。あるいは、知財本部が整備されていない大学においてどういう体制を検討するのかということも課題かと存じます。
 次に3ページで一番上の2)ですけれども、大学において国際的な権利取得あるいは産学連携を促進していくためにどのような取り組みをするべきかということ。あるいは(5)でございますが、「産学官連携に係る人材の確保」ということで、産学官連携とか知財マネジメントに係るキャリアパスの構築といったようなことも課題かと考えております。
 次の4ページからは、今度は保護の分野でございます。「推進計画2006の取組状況」といたしましては、まず(1)の1)が特許審査の迅速化で、特許庁が目標を定めまして今年度は29万6,000件を審査するという目標の設定がなされました。
 それから2)でございますけれども、特許を取り下げますと審査請求料を全額返還するという1年間の時限的な措置が講じられております。  それから3)でございますが、先週公表されました特許の年次報告書の中におきまして、特許出願件数上位200社のグローバル出願率、特許査定率等が公表されております。この下の表は、特許出願件数が多い順に第1位から第5位まで書いてございますけれども、ちょっと調べましたら出願上位20社をながめてみますと審査請求率、これは出願をしてなお審査請求をどれぐらいしたかということがございます。それから海外出願の比率、結果的に特許として認められたという特許査定率、これを上位3社調べてみますと、本田技研工業がいずれもベストスリーに入っている。吉野委員がいらっしゃるから言うわけではないんですけれども、そういうことが判明をいたしましたが、企業もこうやっていろいろ横並びを見ていただくと、うちの会社はここが問題かというようなことが御認識いただけるのではないかと思います。
 それから、同じ年次報告書に弁理士事務所の特許査定率とか記載要件充足率で平均より高い事務所の名前が全部書いてございまして、こうした情報の開示というのも試みられております。
 次に5ページでございますが、「特許出願による技術流出の防止」ということで本年6年に先使用権制度の事例集が公表されております。それは(3)ですが、農水分野においても家畜の遺伝資源の保護・活用の在り方の検討がなされております。
 あるいは(4)の「審査結果の相互利用と相互承認」ということでは「1)特許審査ハイウェイ」ということで、7月3日から日米の特許庁間で1年間の試行がなされております。あるいは2)でございますが、3局の特許庁会議において日本がこの相互承認につきましてワーキンググループの設置を提案いたしております。
 次に6ページをごらんいただきますと、これは保護分野の「今後の課題」でございますけれども、(1)は「特許審査の迅速化・情報提出の充実」ということで、「1)特許庁全体の業務の最適化・合理化」というものをどのように図っていくのか。2)はユーザーの利便性向上のためのいろいろな施策をいかに早期に実現をするのか。
 「(2)出願構造改革」としては、先ほど年報で公表されましたさまざまな指標をどういうふうに活用していくのかということがあるかと思います。
 それから2)でございますけれども、これもさっきの年報で紹介されておりますが、日本企業あるいは日本人の海外出願の数を見ますと1位はアメリカで、これは変わらないわけですが、中国向けの特許出願が欧州向けを上回ったということが出てきておりまして、そういうアジアシフトという動きが見られるわけでございますけれども、従来日本企業はともすればアジア地域における出願が後手に回っていた面もございまして、そうした環境変化の中でどういうふうにアジアでの知財の保護戦略を立てていくのかということも課題かと存じます。
 次の7ページをごらんいただきますと「審査の判断基準の統一」でございまして、1)は「特許審査における進歩性の判断基準の統一」ということで現在、事例研究あるいは実態調査をやっておりますので、その検証をしていく。2)は、商標審査における判断基準の明確化をしていく。
 (4)ですが、農水分野における知財戦略を一層進めていただく。
 (5)は、特許は相互承認実現に向けた取り組みを強化する。
 (6)は、国際公共政策に配慮した国際ルールを構築する。
 このようなことを明記してございます。
 次の8ページが「模倣品・海賊版対策」でございます。まず2006の取組状況でございますが、先週の9月15日に関係省庁の連絡会議を開きまして、この場におきまして「模倣品・海賊版対策アクションプラン2006」を決定いたしました。
 それから(2)ですが、「模倣品・海賊版拡散防止条約構想」につきましては7月のサミットの成果文書の中にこうした国際的な法的枠組みの検討が盛り込まれております。
 それから「(3)個人輸入規制」でございますが、1)は外為法に基づく輸入規制について経産省において検討をしているということ。それから2)ですけれども、財務省は税関に対しまして知財侵害疑義物品が1個である場合にも、原則として認定手続をとることを明確化した通達を発出しておりまして、税関の現場におきまして厳しく模倣品・海賊版の日本への流入をウオッチしていただいているということでございます。
 次に9ページで「インターネットオークション対策」ですが、「1)特定商取引法の執行強化」ということで、これは販売業者の定義を明示したわけですけれども、それに基づいて表示義務違反者のIDの公表というものを7月から開始をしております。
 2)ですけれども、「出品者情報の開示請求手続の円滑化」ということで、総務省におきまして発信者情報開示ワーキンググループを設置しまして、来年の3月を目途にガイドラインを策定するということで作業に入っていただいております。
 (5)は余りいい話ではないんですけれども、本年8月に世論調査をいたしましたところ、今なお模倣品・海賊版を購入してもいいのではないかという容認する回答が50%近くございまして、日本の消費者の意識はまだ十分ではないということが判明したということで、政府としても一層啓発活動を強化しなければいけないのではないかということでございます。
 次が「今後の課題」でございますが、(1)は条約構想の実現に向けての議論を加速していく。
 それから次の10ページでございますけれども、ネットオークションにつきましては例えば今、商標とか意匠については侵害物品を広告すること自体も権利侵害として罰則をかけているわけですが、音楽CD等の海賊版につきましてはそういう広告行為の規制がございませんので、そうしたことの検討をする余地はあるのではないか。
 あるいは2)でございますけれども、ノーティス・アンド・テイクダウン制度の導入の検討ということで、オークション事業者が権利侵害品だと言われて、それをネットオークションから削除するに当たって、小さい字の2行目のところでございますが、「権利者から一定の形式的要件を備えた侵害の通知を受けた場合、これに従って出品情報の削除等を行ったオークション事業者は免責を受けること」がアメリカでは定められておりまして、こういう制度に類似する何かの手は打てないかということでございます。
 (3)は、消費者の意識改革に向けて一層取り組みを強化するということでございます。 次に11ページで、今度は活用でございますが、2006の取組状況といたしましては、例えば「(1)CIPO等の設置」の機会をとらえて企業に促している。あるいは(5)でございますけれども、「知財信託制度の活用」を促すためにさまざまなメリットとか活用事例を経産省がホームページで公開しております。
 次に12ページで活用分野の「今後の課題」でございますけれども、(1)は前回も久保利委員から御指摘いただいたところでございますが、「知財経営に関するIR活動の促進」ということで、知財に関する経営情報の開示の在り方について検討をする。
 あるいは「(2)ライセンス収支バランスの改善」ということで、日本はグループ内企業からの特許料収入はプラスになっているわけですけれども、それを除きますとまだまだマイナスということで、もっと海外からライセンス料をしっかり取れるような検討があり得るのではないかというようなことでございます。
 次に14ページで中小・ベンチャーと地域でございますけれども、まず2006の取組状況といたしましては(1)で7月に全国3,000か所に「知財駆け込み寺」というものが設置されましたが、これも設置されたものの、まだ必ずしも活発に活用されているという状況ではないようでございますし、例えば商工会議所の会頭さんも自分の商工会議所にこういう窓口ができたことを知らないというような例もあるようでございまして、一層こういう対応の強化をして周知して利用していただくことにしてはどうかということでございます。 (2)は中小企業ベンチャーに対する料金減免制度の拡充で、1)はそう大幅にということではございませんけれども、対象が拡充されている。それから、手続がややこしいという御批判もあったわけですが、手続の簡素化も一部図られてきております。
 次の15ページに飛びまして「今後の課題」でございますが、まず「中小・ベンチャー企業の支援」としては「海外展開の支援」、これは板井委員などからも再三御指摘いただいているところでございますけれども、外国出願への支援あるいは権利侵害対応への支援、それから次のページでございますが、「3)海外における活用の支援」というようなことを検討すべきではないか。
 それから(2)ですけれども、「特許関連費用の減免措置」の拡充を検討すべきではないか。
 それから(4)でございますけれども、「政府調達の充実」ということで中小・ベンチャー企業に対するさまざまな制度的な支援措置というものを考えるべきではないか。
 それから(6)でございますが、「弁理士・弁護士情報の拡充」ということで、1)は「弁理士情報」、現在も弁理士ナビというものを拝見しますと随分さまざまな弁理士さんの情報が掲載されておりますけれども、なお一層その情報の充実を図っていただくということはどうか。
 あるいは17ページの2)でございますが、「弁護士情報」についても「弁護士知財ネット」のホームページの充実を図れないかということでございます。
 それから、「地域の振興」としてはブロックごとに地域知財戦略本部というものができておりますけれども、もっと経産省以外の行政機関とか地元の公的な機関、あるいは弁理士さん、弁護士さんたちと連携強化を図っていくべきではないか。
 最後に、人材が19ページからでございます。2006の取組状況といたしましてまず(1)ですけれども、本年3月に発足した人材育成推進協議会において提言を取りまとめていただいたということ。
 それから(2)で知財教育に関してですが、特許庁がe−ラーニング研修、これは本来特許庁の職員向けであったわけですが、これを特許庁の外部に開放をいたしました。あるいは妹尾先生のお骨折りで放送大学において知財の科目が開設されるに至っております。
 それから(5)ですけれども、2006年度から新たな司法試験が開始されて知財法の選択者が354人ということで、選択科目の中では上から3番目に多くの受験者が知財を勉強したということでございます。
 次に20ページで「今後の課題」でございますが、(1)は研修機関間の情報交換あるいは相互協力を一層どのように図っていくのか。
 (2)は「大学等教育機関と研修機関との連携」をどのように図っていくのか。
 (3)は各種学会、特に自然科学とか経営とか、直接知財という位置付けのない学会において知財についての理解を深める場をどうやってつくっていっていただくか。
 (4)は、国際的な知財専門人材育成の取り組みをどういうふうに強化をしていくのか。 次に21ページで最後でございますが、(5)でイノベーション創出を支える知財人材育成の強化をどのように図っていくか。
 (6)は、知財に強い法曹をどのように養成していくのか。
 こうしたことが検討課題かということでございます。
 ちょっと説明は長くなりましたけれども、以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。推進計画2006ができてまだ3か月少しくらいだと思いますが、随分取り組みが動き出したと思うところもありますけれども、大半はまだまだということで、きちんとこれはウオッチをしていかなければいけないと思いますし、今後の課題についても事務局でかなり要領よくまとめていただきました。
 それで、特に知的創造サイクルに関する課題についてこれからどういうことをやっていったらいいかということで、最終的には2007に対するスタートになるわけですが、今日はフリートーキング的にお願いしようと思ったのですが、全員からお話を伺う方がいいということになりましたので、大変恐縮ですが、50音順で御発言をお願いしたいと思います。それで、これまた申し訳ないのですが、とりあえず2分少しくらいでお話をいただければ、時間が余りましたらもう一回議論の時間を取らせていただきたいと思いますので、トップバッターの板井委員からお願いします。

○板井委員 私も特許の方は素人でございますけれども、大学の研究者から研究開発型ベンチャーの社長を10年やってまいりまして、資産と言ったら特許とか知的財産しかないという会社でございます。特許戦略とか特許制度の重要性を日々感じているところなのですけれども、個別の努力ももちろん重要かと思うのですが、制度面とか仕組みの面を使いやすくしていただくという行政の方の助けが本当に必要だろうと思っております。
 何と言っても小さい会社ですから、地理的条件とか言語からくるコミュニケーションのハンディとか文化の違いといったようなものの中で、自分たちの創造した技術を取られないように守って使っていくということを是非ともしていかなければならないのですけれども、そういう上では特許というのは文字として残りますし、それが国際出願すれば国際的に承認されて、その仕組みをうまくやっていけば本当に我が国の国益を守っていくのに重要なとりでとなり得るものだろうと思います。
 ですから、他の国よりも我が国のメリットの方がすごく大きいと思うので、何とかうまく利用していく技術とともに土俵をできるだけ私どもにも有利なようにというか、いつも欧米に有利なように土俵が決まっていくような感じもありますので、是非そういうことを省庁の壁を越えてやっていっていただきたい。そういう意味では、知財推進計画2006というのはそれに向けての第一歩ということで大変よくできていると私は思っております。
 あとは、大分入れていただいたのですごい進歩だと思うんですけれども、やはり国際出願しておりましても、そして侵害が明らかにされているのがわかっていても何もできないという現状がありまして、世界特許であるとか相互承認制度をもうちょっと多国間でできるようにしていただくとか、審査基準の標準化といったものをもう少し進めていただきたいと思います。
 中小零細企業といたしましては、外国からの侵害についての問合せとか相談窓口みたいなものを設置していただけたら、その国の状況ですね。要するに、どのくらい原告が勝つ確率があるのかとか、どの程度複雑な裁判制度になっているのかとか、無効審判がどうとか、そういったような情報がもう少し手に入れられたらいいなと思っています。
 それからもう一つは、文科省を始めとして各省庁が税金で随分研究費を出していらっしゃると思いますけれども、結構その研究で特許侵害を起こしているんです。うちなどはそういうことがありまして、これをどこに持っていったらいいんだろうということがあります。ですから、国の資金で研究をしているところの特許侵害について文句を言っていく先をつくっていただけたらいいと思っております。ですから、研究費の採択とか、中間審査とか、終了後のチェックとかあると思うんですけれども、そういったものも活用できたりするんでしょうが、未来技術として申請して、それでどうのこうのと、侵害する予定はなかったかもしれないけれども、結果として侵害してしまったというようなこともあるかもしれません。
 でも、いずれにしても民間から、これは侵害ではないかと言ったときに、研究者同士ですとどうしても顔を知っていたりするのでやりにくいんです。そういうことで、何か窓口があってそれにストップをかけられれば、税金で民間企業の大事な特許を侵害されるということもなくなると思いますので、是非お願いしたいと思います。
 本当に素人で余りよくわからないんですけれども、とにかく自分の権利を保護していただく代わりに他人の権利も守るという権利意識を育てていけたらと思っております。

○阿部会長 ありがとうございました。では、加藤委員お願いします。

○加藤委員 一般論の人材育成ということをよくおっしゃるのですが、我々が痛感するのは、報道関係や省庁において、バイオの技術のことをおわかりの方が非常に少ないということです。例えば、ご理解いただいていると思って一生懸命話していると、最後にDNAというのは何ですかなどと聞かれることもあるんです。要するにIT、バイオと一般的によくおっしゃるのですが、バイオの中身をよく御存じない方が省庁を始めたくさんおられるのではないかと思います。
 当社のことを言って申し訳ないんですけれども、今、遺伝子治療が世界中で激しい競争になっています。遺伝子治療の基本技術の一つである高効率遺伝子導入法、つまり細胞の中に治療用の遺伝子を高効率に導入するという基本特許を当社が保有しています。その技術を利用して、アメリカの国立がん研究所、東京のがんセンター、三重大学等でがんを対象とした遺伝子治療プロジェクトが進められていますが、アメリカはもう間もなく商業化の段階まできているんです。なぜ当社がそんな世界のデファクト標準の技術を開発できたかというと、基礎研究をアメリカの大学と共同で行ったからです。日本では、日本の研究者だけでプロジェクトを進めるといった話になりがちですが、私の持論は中国であろうが韓国であろうが、よくできるグループと組んで世界デファクトを取ればそれでいいということです。当社とインディアナ大学が高効率遺伝子導入法を開発して10年以上経過していますが、その後どんどん発展しており、米国スローンケタリングのがん研究所が当社の技術を使用しがんを対象とした遺伝子治療の臨床試験を始めようとしています。
 このように当社はなんとかこの高効率遺伝子導入法の技術を世界に広めようとしておりますが、日本企業が保有する技術を世界に広めるためのバックアップが欲しいという気がします。そのためにも、IT、バイオという言葉でなくて、中身を考える若い方々を育成してもらわないと困るんです。当社は遺伝子治療に関する特許を押さえにかかっているんですが、当社だけではできない面がたくさんありますので、是非バイオをわかる方を育成していただきたいと思います。

○阿部会長 お話を伺っていたら何かやらなきゃいけないなという気になりました。
 では、久保利委員お願いします。

○久保利委員 お手元に資料6−1というものを配付させていただきましたので、不足する部分はこれを見ていただければと思います。
 まず1つは、資料5の「今後の課題」の中の16ページなんですけれども、「弁理士・弁護士情報の拡充」ということで総論は全くおっしゃるとおりだと思います。ただ、弁護士情報として弁護士知財ネットのホームページに出ている会員のところに実績とか報酬表とかを出してくれとのことですが、これは実はなかなか難しくて、特に弁護士の場合には守秘義務というものがあって、クライアントからどこの仕事をしているかも言わないでくれという契約で縛られているケースが実は相当あります。
 もう一つは、弁護士自身が何かそういうものは事件あさりになるのではないかという心配です。この本は、『ビジネス弁護士大全』という日経ビジネスから出ているもので、こんなふうに顔写真入りでどんな弁護士かということがキャリアから何から全部載っている本なんです。
 しかし、この本の中でも自分がどんな仕事をしたかとか、どこが顧客であるかということについては非開示というふうに言っている弁護士が圧倒的に多いんです。日本を代表すると言われる森・濱田松本、西村ときわ、あるいは長島・大野、いずれも非開示です。ということは、逆に言うと、開示をするのは相当困っているから売上げが欲しくてやっているんじゃないかと思われるということから、かなりこの辺りは慎重になっている人が多い。私などはこれを全部オープンにしているものですから、久保利はそういうところはすごくフランクだと言われている一方で、あんなにオープンでいいのかと言われるところもあるくらいです。したがって、そういう意味でなかなか開示は難しい。
 もう一方で、報酬です。実は日弁連には従来、報酬表があったんです。ところが、規制改革会議が、こういうものを弁護士会がやるのは規制である。したがって、これをなくせというのでそれに従い全部なくしました。その結果どうなったかというと、一件一件個別見積もり方式でやる。お話し合いでということになってしまいました。実はこれで皆、困っていると思うんです。弁護士も困っているし、お客さんも困っている。
 そこで弁護士知財ネットの方では、とにかく相談にお見えになったら最初の1時間は1万円で受けます。その1時間の中で今後の報酬体系がどうなるか。この事件の見通しはどうかということも含めて御相談くださいということを、千数百人の弁護士知財ネットのメンバーが合意をいたしました。これはホームページに載っておりますので、そんな形でとりあえずアクセスをしていただくということが必要なのかと思います。誠にごもっともな要望だと思いますが、なかなか難しいということが1点です。
 もう一つは最終ページの21ページでございますけれども、知財に強い法曹をと私もずっと叫んできて、ロースクールもそういう形で立ち上がった。74校すべてに知財の講座ができて、354名の受験者があったというのは大変喜ばしいと思います。
 ただ、問題は354人という数字は大変多いと思いますが、74校あって、今回は2年制の既修者コースだけが受けたわけです。その2年制の既修者コースを輩出した学校が幾つかあるかはわかりませんが、仮に50校だとすると実際は1つの学校から平均で7人なんです。7人というのは、私が教えている大宮で言うとどういう人かというと、まず大宮は3年コースのみですから今年は受けていないんですが、例えば第1期生で来年受ける人は、特許庁の方が3人います。弁理士さんも数人います。お医者さんが10人います。それ以外に、それこそ立派な企業の特許部で働いている人、あるいは自分自身が特許を持っていて開発をしている人、こうした人がごろごろいます。
 そういうことをベースに考えると、この受けた人たちのレベルというのはすごく高いんじゃないだろうか。そうすると、相当難しい問題がきても相当高得点を取るだろう。高得点を取ると、よその科目と比べるとやたらとここは高いぞというので、これはちょっと問題がやさしかったのではないかと言って、知財の方でいい点数を取っていてもそれを調整によって逆に下げられてしまうという危険はないだろうか。
 仮に本当に問題がうんと難しくて、そんな練達な連中でもほとんど解けないということになりますと、本当はむしろ下駄をはかせてもらいたいということになりますが、それもどうなのかという算定の実績のデータが何もないんです。
 そういう点で文科省、法務省を通じてその辺りのデータをしっかり取っていただいて、せっかく知財を一生懸命やろうと思って弁護士になろうとしている人たちを疎外しないように、何らかの工夫が必要ではないかということが第2点目でございます。以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。いずれも核心に触れています。
 では、下坂委員お願いします。

○下坂委員 3点ばかり、現状と要望でまいりたいと思います。
 まず国際標準化に関しましては、弁理士会と日弁連でつくっております日本知的仲裁センターというところがあります。そこで国際標準に係る必須特許の権利処理の重要性という観点から、センター必須判定の業務というものを既に開始しております。具体的には、この秋から地上波デジタル放送等に使用されます規格の必須特許の選定を弁理士、弁護士が鑑定人となってやっております。弁理士会の方では100名を超える弁理士の応募者で構成されております。
 この業務は世界でも初めての組織的な必須特許鑑定機構であるということを言えと弁理士会から言われているのですが、私は調べていないのでよくわかりませんが、そうだそうでございますので、中立・公正な判定が図れると考えます。そこで、地上波デジタル以外の技術につきましても広くその利用を働きかけていって、必須特許判定のさらなる活用を図り、標準化を活性化していきたいと考えておりますので、皆様方の御協力をよろしくお願いいたします。
 それから、国際標準の中でも情報通信技術分野ではパテントプールが活発に活用されていますけれども、その他の技術分野では円滑な権利処理の仕組みづくりが進んでいないように思います。例えば、リサーチツールに関するバイオ医薬分野では特許問題が指摘されていながら解決策が見出せない状況であると聞いています。また、光触媒技術については日本がリードして国際標準化が試みられていますけれども、特許の処理については問題棚上げのように思われます。したがって、今後は権利処理のメカニズムを各技術分野に拡大、普及させることが課題であり、政府及び関係機関の積極的な取り組みを是非お願いしたいと思います。
 次に、国際標準化活動に関する人材育成の役割についてですけれども、国際標準化活動では先ほどから何度かお話が出ていますように技術者、研究者が中心となって国際会議などに出席をされておりますが、韓国では先ほど学者が参加されているというお話がありましたけれども、技術者と知財担当者がチームとなって出席することによっていち早く標準化の必須特許を出願するという行動をとっているようです。
 そこで、日本においても標準化に強い人材づくりに際しましては、具体的な活動場面や役割分担などを想定した人材育成も必要ではないかと考えております。例えば技術者と弁理士とか知財の方たちとがペアとなって標準化の策定に取り組むというような方法は、必須特許取得には効果的な方策だろうと考えております。

○阿部会長 問題はどんどん提起していただいて結構ですが。

○下坂委員 それから、特許審査の迅速化に関しましては、先ほど弁理士と弁護士のいろいろな人材育成の問題が出てまいりましたけれども、どうしても出願件数の縮減と、それから弁理士の質の悪さというところに集中する傾向にありまして、弁理士の質の悪さを解決するために成功率とか、出願件数とか、今いろいろなデータが公表されております。ただ、データの公表だけで質がよくなるのであればどんどんお出しいただければよろしいですけれども、やはり質の向上という点はもっと違う面からも考えていかなければいけない問題だと思います。これは一つの問題提起とクレームでございます。以上です。

○阿部会長 どうもありがとうございました。それで、妹尾委員お願いします。

○妹尾委員 私は人材育成のところに限ってお話をさせていただきます。
 先ほど藤田次長さんからお話があったとおり、人材育成はお陰様で戦略を中心に動き出しました。それで、高度化については非常によく進んでいるのですが、広域化と融合化については所轄団体だけではできないので、それがこれからどういうふうに政策的に広げていくかかというのが1点目です。
 2点目は、専門職大学院は随分出てきたのですが、もう専門になっている方の再教育はまだまだです。専門家の再教育は経営の世界でも非常に重要視され始めていますが、専門家そのものの再教育による広域化・融合化をどういうふうにやっていくか。これが今後の課題になってきます。
 3点目は先ほど加藤委員の方からお話と関連すると思うんですが、知財ジャーナリストをいかに育てていくか、ここにはまだ手が広がっておりません。残念ながら私は数年来、知財ジャーナリスト教育の予算が、ことごとくはねられておりまして残念なのですが、そろそろ手を付けたいなと思っております。
 4点目は、先ほどのショッキングな話です。知財に関する50%以上の人が海賊品・模倣品OKというような話でした。これは、昨年度出しました「知財民度」の問題で、国民の品格が問われる時期にきているということがあります。ですので、小さい子から大人までの知財民度向上策として何があるかということですが、子供と合わせて学生ですとか地方の中小企業さんなどへの知財普及方策として一つ御提案させていただきたいことがあります。IPコミュニケーターのプールないしはバンクをつくってはどうかと考えます。現在サイエンスコミュニケーターということで科学技術の振興は進んでおりますけれども、いよいよ今度は知財においてIPコミュニケータープールあるいはバンクをつくり、そこへ訓練した人たちを登録し、求めに応じてその人たちが出前授業なり出前の派遣ができるというような形がそろそろ政策的に行われてもいいのではないかと思います。
 5点目は、地域格差の問題がいよいよ前面に出てきたと思います。地方の中小企業その他で幾ら弁理士さんを増やしても、弁理士さんはやはり都心にいるだけで地方へは出ていかないというような状況が明らかになってきました。これは何の状況に近いかと振り返りますと、かつてのお医者さんの状況に近いだろうと思います。そうすると、ここで手を打つのは少しアナロジーですけれども、いわば自治医大のように地域の知財とか産学連携とイノベーションを活性化する人たちを育てる仕組みをつくれないかと思います。医大並みにはできないでしょうが、何かそういう地域で活躍する方を育てて、例えば5年間地域で活躍していただくというような政策的支援もあっていいのかなというアイデアです。
 最後に、今日の資料で3ページ目に面白い部分がありました。「産学官連携に係る人材の確保」というところの最後の行のところです。「この際、イノベーションの触媒的機能を果たすものとして、研究開発独法は、技術支援、人材育英の役割を強化すべきではないか」。これは大変良いことだと思うのですが、ちょっと私はニュアンスが違います。現実に例えば産総研の評価その他をやっておりますと非常に気が付くのが、研究機関から民間へ技術を移転するときに、知財だけではなくて人材とともに派遣をしないと本当の技術移転はできないということです。
 つまり、技術開発に関わった人たちが企業側から独法に入って訓練されてから企業へ持って帰っていくことと、それから独法の研究機関にいた人がその技術を持って企業に行くことと。いわばバトンゾーン、あるいはのりしろの重ねがないといけない。そういうことで、技術移転は知財と人材のペアで行わなければいけないのです。その意味では、独立行政法人関係の研究機関は人材育成機能はやっちゃいけないみたいな雰囲気が非常にあるし、教育機関ではないからという言い方をされてしまうことが多いようなのですが、技術移転を進める人材のための育成機関としての認識をしていくべき時期にきていると思います。これも問題提起させていただければと思います。以上です。

○阿部会長 ありがとうございました。では、田中委員お願いします。

○田中委員 資料がありますので、それを見ていただきたいと思います。
 表紙をめくって2枚目で、これは当然の話ですけれども、第2期ということで第1期の3年間の活動成果、政府、大学、企業に対して更に加速すべき課題、方向を修正すべき課題、新しく取り組むべき課題、こういったものを調査分析してきちんと盛り込んでいく必要があります。既にパブリックコメント等が準備されているようですから、よろしくお願いしたいと思います。
 それから6ページで、幾つか簡単な事例だけを紹介したいと思います。「「知」の創造」というところですけれども、私どもの事例ですが「宇都宮大学との産学連携」があります。これは私どもの光学部門はすべて宇都宮に集結しておりまして、近場の大学と徹底的に連携プレーしようというものです。場合によったら、光学関連の学部や学科を一緒につくろうではないか。講師もキヤノンから出してもいいじゃないか。そういうようなことを今、検討しております。一つの事例として参考になればと思います。
 2つ目は、九州の講演で御手洗会長が提案したものですが、もっと特徴のある大学ということで「大九州大学」をつくって、全世界の人がそこに来れば世界のトップレベルの研究ができるというふうに大学を再編成したらどうか。これは非常に難しいとは思いますけれども、一つの考え方かと思います。
 7ページですが、模倣品・海賊版に関する中国問題については、いろいろな視点で活動してきて、それなりの成果というのは十分上がってきています。まだまだこれからの部分もありますが、次のステップとして東欧、ロシアがあります。これは中国が源でそういった地域を経由してヨーロッパに流れるなど、いろいろなフローができておりまして、なかなか大変な状況です。警察が摘発しても袖の下を持ってくればそれをきちんと対処してやる。持ってこなければ何もしないとか、そういうことが幾らでも平気で起こっております。これは東欧・ロシアだけではなく、南アメリカ等でも同様です。
 それから8ページで人材育成の問題ですけれども、全体的に実務能力が低下している。これは企業の知財部門もそうです。弁理士の資格を持っていても実務能力が低下してきているのではと思うこともあります。弁理士の合格者数を増やせば実務能力の低い人も合格してくるというのは当然のことでございまして、専門職大学院等をせっかくつくったわけですから、そういったところで徹底的に鍛えるということをやればいいのではないかと思います。
 私どもでもアメリカのロースクールに1人送りましたが、昼間仕事をして夜間ロースクールに行っています。夜間ではあっても法律書を毎日数十ページ読み込み、しっかり予習しなければいけない。それから、夏期はインターンシップを受けています。
 よく話には聞いていますけれども、米国では徹底的に鍛え上げる。実務能力をつけて、世の中に出たらすぐ仕事ができる。日本の大学あるいは教育は知識の切り売り的なところが多くて、世の中に出ても何も仕事ができない。知識だけはある。そういうこともそろそろ変えていく必要があるのではないかと考えております。以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。それでは中山委員、お願いします。

○中山委員 知財改革の大きな課題、目玉というものは大体出尽くしているのではないかと私は考えております。現に資料5の課題を見ましても、特に今回新しいというものではない。したがって、これからは今まで出してきた課題の収穫期だという感じがいたします。収穫期というのは余り目玉がないような、あるいは地味なような感じは受けますけれども、実はこれが一番大事で、目玉を打ち出すよりもずっと大変な作業だと思っております。 中でも大事なのは、人材とエンフォースメントであろうと思っております。人材は私も何回か言いましたから詳しいことは言いませんけれども、ちゃちな知識を植え付けるのならば簡単なセミナーで幾らでもできるんですが、やはり本当の人材養成は10年単位でやっていかなければいけない。しかし、その人材が出るためには社会、特に会社、官庁でその人をしかるべく処遇するということがなければいけない。それがなければ大学で幾ら教育しても学生は乗ってきません。社会がどう処遇するか。これが非常に大きな問題だろうと思います。もちろん大学も改革をしてやっていかなければいけない。
 エンフォースメントは特に言われていますけれども、主として海賊版・模倣品の問題だろう。これを放置いたしますと法が弛緩する、モラルハザードが起きるわけでありまして、これは強力に取り締まらなければいけない。あるいは、外交問題としてやっていかなければいけない。
 これには恐らく異論はないと思うんですけれども、問題は、これはもう終わってしまったことなので今更言ってもしようがないんですが、例えば工業所有権の侵害は10年以下のの懲役になり、著作権は今度の国会で同様の改正が行われると思います。物の窃盗の場合は何を盗んだかということを盗んだ人はちゃんとわかっているわけで、罪を重くすれば威嚇効果は強くなりうると思うんですけれども、知的財産というのは侵害と非侵害の境界が非常にあいまいで、何が侵害かわからないというときに、うかつに刑罰を強化するとどういうことになるかというと、チリングエフェクトが出てくるわけです。もっと言えば、相手方は脅しに使える。
 従来5年以下の懲役刑だったわけですけれども、それでも実刑などは1件もなくてほとんど使われていなかったので、10年以下になっても使われないということになるかもしれませんが、仮に10年以下という重い刑が実効性をもってくると、これは脅しに使えるます。弁護士のところに相談に行けば、多分安全な線で答えを出すことが多いだろと思います。そうすると、改良発明を抑制するという効果もある。
 したがって、エンフォースメントを強くする場合には先ほど言った海賊版や模倣品は当然なんですけれども、それ以外の場合はよほど注意しないと、それが産業発展、文化の発展に役に立つのか、阻害するのか、そこら辺を十分検討し、衡量しててやってもらいたい。

○阿部会長 ありがとうございました。前田委員どうぞ。

○前田委員 大学における知的財産活動の諸問題などをお話ししたいと思います。
 いろいろな問題があるのですが、とにかく人材不足が大きな問題になっています。
 先日、医科歯科大学の主催で「知の時代とライフサイエンス」と題してシンポジウムを開催させていただきまして、ここにいらっしゃる何人かの方々にも御参加いただきましたし、荒井さんには第3部での「日本のライフサイエンスの発展」と題したパネルディスカッションのパネリストとして御協力いただきました。ありがとうございました。
 ここでの課題も、人材育成と知的財産戦略が鍵という結論になりました。人材育成に関してですが、イノベーション創出ということで研究者の人材育成と、生み出された知をいかに生かすかという観点で産学連携の人材育成、その両方が必要というまとめになりました。研究者の育成という観点では、日本人・日本企業特有のメンタルクライメートの変革が必要ではという話が挙がりました。独創性・個性を大切にする雰囲気や、学の中で産業化に関わることは、まだまだ学者として二流という風潮が残っているのではないか。そういう意識を変革していこうなど、すぐには実行できないものもありますけれども、どのような人材を育成するかという目標を明確にすることが重要だという話がありました。
 また、産学連携に携わる人の育成に関しては、様々な方がいろいろなところでおっしゃっていただいていますように、やはりダブルメジャーや異なる分野にまたがる人材が必要という意見でした。そして、研究者の邪魔にならないライセンスを心掛けて、経験者、これは成功者だけではなくて失敗経験を持っている方からの経験のお話からも学ぶことが重要ということも挙がりました。
 また、ライフサイエンスに限ったことではありませんが、知が世の中で生かされるようにするには知的財産戦略が鍵だということも挙がりました。効果的な特許戦略をつくることが重要です。例えば基本特許・応用特許の的確なマッピングに基づく戦略や、特許権利の経時的戦略、ライフサイエンス分野では特に特許切れを考慮して経時的な戦略で権利保護を行うことが必要となってきますので、このような戦略が重要となります。さらに、有効な特許、利用範囲の広い・ライセンスのできるような特許、また、そのライセンスのできる機関・人材が必要だという話になりました。
 そして、このような知財戦略が立案できるすばらしい人材が育った後、雇用できるようなシステムづくりが大切です。現在の大学の知財本部というのは企業で定年になった方を雇用しているケースが珍しくありません。これは経験豊富な方を大学に迎えたいという思いと同時に、費用不足から、企業年金と併用で給与をもらうという方を雇用したいという思惑もあるからだと思われます。(こんなにはっきり言ってしまっていいのかどうか問題はあるのですけれども・・・)貴重な若年層の方に、経験豊富な方々の知識・ノウハウを継承してもらえるような雇用体制を整える必要があります。若い人が入ってこられる・来たくなるような大学知財本部をつくらなければならないと思います。
 繰り返しになりますが、ライフサイエンスの分野は特に人材が不足しております。この問題が急務になっておりますので、一日も早く体制の整備が必要かと思っています。

○阿部会長 ありがとうございました。それでは、吉野委員お願いします。

○吉野委員 今後の課題ということですけれども、資料5で相当網羅されている。むしろトゥーメニーだという感じがいたします。もう少しどちらかというとウエイト付けをした方がいいのではないかというような感触を私は持っていますが、先ほど標準化のところでもちょっと出ていましたけれども、成功事例と失敗事例みたいなものをもう少しちゃんと集めて整理しましょうということは、多分私はこのサイクルの中の各フェイズについても言えることで、最終的には活用してこその知財なんです。
 したがって、その中でも特に成功事例みたいなもの、これは開示の問題があるかもしれませんけれども、それが一番元気が出るんです。失敗した事例で失敗してはいかぬというようなことだと手足がそんなに伸び伸びしないわけで、むしろその分野の、特に活用分野の成功事例みたいなものをなるべくたくさん集めることによって、それが実際に活用につながって元気が出ていくということが言えるのではないかと思いまして、そういうことが追加されればと思います。以上です。

○阿部会長 ありがとうございました。
 さまざまな御意見をいただきまして、最後に私から意見を述べろと書いてあるのですが、時間がなくなってしまいましたし、この議論は今後も続きますのでそのときに述べさせていただくことで御容赦をいただきたいと思います。
 次回のことは先ほど事務局から説明がありましたけれども、国際標準総合戦略について御議論をいただくとともに、知財創造サイクルについては創造分野の推進方策について御議論をいただきたいと考えておりますのでよろしくお願いします。
 それから、今後この専門調査会において国際標準総合戦略及び知的創造サイクルの推進方策の検討を進めていくに当たりまして、幅広く国民の皆さんの御意見を伺うべくパブリックコメントの手続を並行して進めたいと思っております。そこで出された御意見も、当専門調査会の検討の参考に是非したいと考えておりますので、御了承いただければありがたいと思います。
 次回の専門調査会でありますけれども、10月25日水曜日15時から17時に本日と同じこの場所で行います。
 それではこれで終わらせていただきますが、何か事務局からありますか。
 それでは、長時間にわたってありがとうございました。