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デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会(第3回)
議事録

  1. 日時:平成20年5月29日(木)15:30〜17:30
  2. 場所:知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者
    【委員】 中山会長、上野委員、大谷委員、大渕委員、加藤委員、上山委員、北山委員、東倉委員、苗村委員、中村委員、宮川委員
    【事務局】 素川事務局長、松村次長、吉田次長、山本参事官、大路参事官
  4. 議事:
    • デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について
    • コンテンツの流通促進について
    • 今後のスケジュール(案)について

○中山会長 時間でございますので、ただ今から第3回デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会を開催いたします。本日は御多忙中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、まずこれまでの議論をまとめました「検討経過報告」について検討をしていただくということになっております。この「検討経過報告」の内容は、知的財産推進計画2008に反映されるとともに、6月に開催予定の知的財産戦略本部においても報告をすることを予定しております。
 まず事務局から資料1の説明をお願いいたします。

○吉田事務局次長 今日の議事次第を御覧いただきますと、配布資料3点ございます。最初が、今会長のほうからお話のございました「検討経過報告」でございます。それから、資料2は「コンテンツの流通促進」について、資料3は「今後のスケジュール」という形になっていますので、資料の過不足ございましたら、お申しつけいただければと思います。
 それでは、資料1のご説明をさせていただきます。
 資料1は、ここまでの議論を一度中間的に整理したものでございます。したがいまして、中身のほうは、もう委員の皆様よく御承知の中身でございますけれども、一度ざっとこの説明をさせていただきたいと思います。
 まず最初の検討の背景のところでございますが、第3パラグラフのところを御覧いただきますと、この検討の目的が書いてございます。要約いたしますと、社会全体の社会経済全体の活力の向上につなげるべく、デジタル化、ネットワーク化によってもたらされるメリットを最大限に活かし得る知財制度の構築に向けた総合的な検討を行う必要があるということでございます。
 その下のパラグラフは、これまでの検討経緯などをまとめておりますけれども、3月に設置されて以来、現在までに今回含めまして3回の会合を開催し、デジタル・ネット社会における著作権制度の役割等について議論を行いつつ、解決すべき具体的な問題点の抽出に努めてきた。これらの問題は多岐にわたっており、本専門調査会として引き続き検討を行っていくこととしているが、一部の問題については、緊急性が高い課題であることから、知的財産推進計画2008に位置付けることにより、早急に解決すべき事項として提言することとした。このような形で整理をしております。
 2ページをお開きいただきますと、ここは基本論のところでデジタル・ネット社会における著作権制度の役割ということでございますけれども、この第3パラグラフを御覧いただきますと、特にデジタル・ネット関係の進展により、著作権法がビジネスローとしての性格を強めつつあることに配慮しつつ、新たなビジネスの発展を阻害しない中立的な制度とすることや、著作者の権利保護と利用の円滑化のバランスを図りながら、文化や産業を豊かにすることに資する制度としての役割が重要になると考えられるというような形で整理をしております。
 3ポツのところは、改革が必要な課題についてということでございまして、著作権法制定当時には予想できなかった新しい状況ということで、6つの柱で整理をさせていただいております。最初のものは、単一の利用方法を前提としており、マルチユースに対応していないということで、その中の文章では、第2パラグラフのところでございますけれども、権利処理のコストの問題ですとか、あるいは情報通信技術を用いた技術的解決の話、そういったものもここに盛り込んでおります。また、コンテンツの流通を一層促進する観点から、法的な枠組みについても権利者の利益確保に留意しつつ、総合的な検討が必要であるという形で整理をしております。
 3ページをお開きいただきますと、(2)ということでデジタル・ネット上の豊かな情報を活かした新しい利用方法に対応していないということで、これも2行目ぐらいからでございますが、公共目的や情報の利活用の促進などを目的とした利用で、権利者の利益を不当に害しないものであっても、形式的には著作権が障害となって、コンテンツの利用が萎縮する場合があるということで、利用とのバランスに配慮した権利制限規定をスピーディーに整備していく必要があるという形に整理しております。
 (3)は、技術的過程に付随する行為の取扱いが明確でないということで、通信過程に付随する一時的な蓄積や、コンピュータ・プログラムの相互運用性や情報セキュリティ確保のためのリバース・エンジニアリングの問題について触れております。
 それから(4)は、投稿サイトやブログなどで他人の創作物を相互に利用し合いながら創作するケースなどの新しい創作形態への対応が明確でないということでございまして、ネット上における一般人のコンテンツの創作・公表に伴う法的な課題を解決し、コンテンツの創造と流通を一層促進する必要があるという形にまとめてあります。
 4ページをお開きいただきますと、(5)でございますが、ここは新たな技術やビジネスモデルの出現に際して、柔軟に対応し得る規定がなく、新たな動きが萎縮しがちであるということでございますが、第2パラグラフを見ていただきますと、技術革新や新しいビジネスの創出を促す観点から、今後の技術の進歩や新たなビジネスモデルの出現に対応する一般的な権利制限規定を設け、今後の変化に柔軟に対応できる法制度とすることが考えられると。一方で、情報通信技術の発展に応じた、いわゆる間接侵害に係る法的責任の明確化を図ることにより、新しいビジネスモデルに対する法的評価についての持続可能性を高めることが必要であるという形でまとめております。
 (6)は、ネット上の違法な利用に対する対策が不十分であるということでございますが、これも2行目からございますけれども、コンテンツの違法複製や違法流通の蔓延というのが権利者の適正な利益の確保を阻害しているということで、ネット上の違法な利用に対する対策を一層強化する必要があるという形でまとめております。
 5ページのほうが、早急に対応すべき課題について整理したものでございます。これもその最初の段落の4行目あたりからでございますが、イノベーション創出に関連する以下のものについては、知的財産推進計画2008に反映し、2008年度中に必要な法的措置を講ずることにより、早急に課題解決に取り組むべきことが必要であるということで整理をしております。
 最初の(1)は検索サービスの適法化というところで、背景のところは省略させていただきまして、箱のほうを御覧いただきますと、「検索サービスの円滑な実施に必要な複製、翻案又は公衆送信を行うことができるよう早急に法的措置を講ずるべきである。」と。
 (2)が通信過程における一時的蓄積の法的位置付けの明確化ということで、「通信過程における一時的蓄積についての複製等の問題を解決するため、早急に法的措置を講ずるべきである。」としております。
 6ページをお開きいただきますと、(3)として研究開発に係る著作物利用の適法化ということでございますが、「著作権者に及ぼす影響にも配慮しつつ、研究開発に必要な範囲において著作物の複製や翻案を行うことができるよう早急に法的措置を講ずるべきである。」としております。
 (4)は、コンピュータ・プログラムのリバース・エンジニアリングの適法化ということでございますが、これも7ページのほうに移っていただきますけれども、箱のほうを御覧いただきますと、「相互運用性や情報セキュリティの確保のためのコンピュータ・プログラムのリバース・エンジニアリングに必要な範囲において、その過程で生じる複製・翻案を行うことができるよう早急に法的措置を講ずるべきである。」という、以上の4点につきまして早急に対応すべしという形で、意見をまとめてはいかがかということでございます。
 それから、5のところは、今後の検討課題ということでございますが、先ほど3ポツのところで改革が必要な課題ということで、全体を少し整理したわけでございますけれども、今後この専門調査会として、主にこの3つの点といいましょうか、3つの柱といいましょうか、これを中心に議論を進めてはどうかということでございます。
 この最初の1行目の終わりからでございますが、デジタル・ネット環境を活用した新規ビジネスの創出の観点から重要な法制度上の課題、また、政府部内において十分な検討が進んでいない下記の課題を中心として検討を深めることとするということでございまして、本年末までに全体の報告を取りまとめることとするというような形にしております。
 (1)が、コンテンツの流通促進方策ということでございますが、インターネットを活用した新しいビジネスにおけるコンテンツの二次利用を円滑に進める観点から、コンテンツの流通を一層促進する新たな枠組みについて、権利者の利益確保に留意しつつ、総合的な検討を行うとともに、一般人によるネット上での新しい創作形態への対応方策について検討をすると。
 (2)は、包括的な権利制限規定、日本版フェアユース規定の導入についてということでございます。将来の多様な発展を後押しし、新たなビジネスモデルの開発や新規事業の参入を促す観点から、個別具体の権利制限規定との役割分担を明確にしつつ、著作権者等の利益を不当に害しないと認められる利用を包括的に合法化し得る一般的な権利制限規定、日本版フェアユース規定を導入することについて検討をするとしております。
 (3)は、ネット上に流通する違法コンテンツへの対策の強化ということでございますが、ここは最後の2行を御覧いただきますと、ネット上の違法コンテンツの流通防止策の強化やグローバルに流通する違法コンテンツへの国際的な対策などについて検討をする。 以上のような形で「検討経過報告」として取りまとめをさせていただいたらどうかと思っております。
 以上でございます。

○中山会長 ありがとうございました。
 それでは、議論に入りたいと思います。
 ただ今の「検討経過報告」の内容につきまして、お気づきの点や、あるいは補足すべき点ございましたら、ご発言をお願いいたします。時間の都合上、1人五、六分程度でお願いをしたいと思います。ご意見等ございましたら、お願いします。
 どうぞ、苗村委員。

○苗村委員 前回欠席をしたものですから、あるいは既に議論されていたとしましたら申し訳ございません。単に用語の問題です。内容全般について、私は何も異論ございませんが、3ページの下の(4)の中で2カ所使われている「一般人」という言葉、これは7ページの今後の検討課題の(1)にも出ているんですが、これが何を意味するかというのが一読してわかりにくい。例えば私は大学教育で遠隔教育を推進する立場にありまして、遠隔教育のためのコンテンツの製作、特に共同製作とか流通という話もこれにかぶってくる可能性があるわけですけれども、いずれにしても「一般人とは何か」と言われると、大変議論が捉えにくいので、例えばよく言っておられることは「多数の者による」とか、そういうことを言っておられるのかなと。もしそうであれば、そういう言葉に変えていただくか、あるいは何かもう少し、決して厳密に決める必要はないと思うんですが、何か一般人というと、先ほど申し上げたように大学の教員は入るのか入らないのかとか、あるいはプロのジャーナリストが個人でブログを運営するのは入るのか入らないのかという難しい議論になるので、何か言葉を変えていただけるとよろしいかと思います。

○中山会長 どうぞ。

○吉田事務局次長 確かに3ページの(4)のところに「一般人」という言葉が出てまいります。2回、ここには出てまいります。それから、最後7ページのところでも、(1)のところに「一般人」というのが出てまいります。
 それで、この「一般人」のイメージといたしますと、平たい言葉で言いますと「素人」というか「アマチュア」と言いましょうか、そういうイメージでございまして、著作権の世界で、いわゆる著作者とか実演家とかという方の中に、プロとしてやっていらっしゃる方、その辺りの権利関係をどうするかというのが、著作権法でいろいろな権利関係とかというのを考えていく際に、やはり主に置かれてきたのだろうと思います。
 ところが、最近はデジタル・ネットの環境ではそうではない、これまではプロの方の成果を受容する、享受するという立場だった普通の市民の方々が、自らの創作をデジタル・ネットを使いながら発表していくという、そういったことが非常に増えてきているということはございますので、そういったところを捉えて検討する必要があるということで、そういう意味合いで「一般人」というのを使っております。
 確かに、なかなかこれは概念がはっきりとしない言葉でありますけれども、ちょっとこれ以外にもいい言葉が余り思い浮かばなかったものですから、こんな形にしております。

○中山会長 実は、私もあちこちで「一般人」という言葉を使っているもので、言われてみると確かにそうなのですけれども、今まさに吉田次長おっしゃったとおり、従来は作詞家とか作曲家とか小説家とか、そういう特殊と言ってはなんですが、プロが作り、そして新聞社とか出版社とか音楽会社などがそれを流すという、そういう一部の専門家、プロ集団のものだったが、それが我々―我々というとまた語弊がありますが、そのプロ以外の、むしろアマチュアですね、そういう人が入ってきたという趣旨なんですけれども。そうすると、一般人でなくても「多数の者」と言うと、まだ何かあいまいさは残るような気がしますし。

○苗村委員 実は、多分そこが問題の本質だと私は思っているんです。現実に、例えばオープンソースのプログラムがあれだけ進んだのも、実はプロのプログラマーが個人として、本来の営利目的の活動以外にプログラムを作ったことがかなり貢献しておりますし、今のブログも、例えばプロのジャーナリストが独自に、例えば新聞社に勤めていながら独自にサイトを開いて情報提供したりしている、そういう類のことがむしろこれを支えているので、一般人に限定をしてしまうことが本当にいいのかという問題が一つなんです。
 ですから、したがって、これはあえてプロを除くというのは、例えば非営利目的に限るということを言いたいのか、あるいは1人だけで完成するのではなくて、たくさんの人の協力によって新しい著作物を作るということに、むしろポイントがあるのか。そういうことを多分議論していただく必要があって、「一般人」と呼んだことによって、問題が明確になるのではなくて、むしろ何か本質がそれてしまうのではないかという心配をしています。
 例えば大学の教員の場合もよくあるんですが、大学で教材を作る以外に、自分の専門ではない分野でもいろいろと、むしろまさに一般の人の普及啓発活動のためにコンテンツを作ることがよくあるんですけれども、これも一般人かと聞かれると大変難しいし、境界を明確にする必要は全くないと思うんです。何か一般人という言葉を、例えば「一般の人」ぐらいにでもしておくと、まだいいと思うんですよ。何か「一般人」と、その……何だろうという感じがどうもしまして。

○中山会長 なかなか、いい用語が難しいので、ではちょっと、そこら辺はまた考えさせていただきます。「一般人」ではなくて「一般の人」ですね。

○苗村委員 まだ意味が、まさに一般的な意味なんですけれどもね。「一般人」という言葉は、「人々」でもいいと思います。

○中山会長 人々、わかりました。
 特に、この言葉は法的効果をもたらす言葉でございますので、またちょっと考えさせていただきます。
 ほかに何かございましたら。どうぞ、大谷委員。

○大谷委員 非常に細かいことで恐縮ですが、7ページのところのリバース・エンジニアリングの適法化に関する箱の中でございますけれども、こちらでコンピュータ・プログラムのリバース・エンジニアリングの目的としては、相互運用性とセキュリティの確保という2つが、これは例示的に挙げられているのだと思いますが、そのほかにも、例えばこの欄外の注意書きに意見が出ていて紹介されているものの中には、性能検証ですとかバグの発見や修正ですとか、それ以外のもうかなり広い目的が挙げられておりますので、例示的にこういった目的などというような意味で、「等」という言葉を補っていただいて、コンピュータ・プログラムのリバース・エンジニアリングについては、やはりできるだけ広く複製・翻案が可能な仕組みを検討するという方向性での検討を促すというようにしてはいかがかと思っております。
 コンピュータ・プログラムについては、著作権法の対象として保護される表現を解析しながら、実はその中のアイデアの部分を拾い出し、例えば効率的なプログラム開発の技術、アイデアを学ぶというような面もあるかと思いますので、そういう意味でも間口を余り狭くしないで議論できればということで、「等」という言葉一文字で結構だと思うのですが、補っていただければと思います。

○中山会長 それはよろしいでしょうね。ここに書いていない、例えば訴訟といいますか、相手のプログラムが自分のものを侵害しているかどうかを調査したりとか、いろいろなことがありますので、これは「等」という言葉を入れることにいたしたいと思います。
 ほかに何かございませんでしょうか。どうぞ、東倉委員。

○東倉委員 これは知的財産推進計画として、早急に対応すべき事項を早急に解決していくという姿勢は、非常に結構で私も賛成です。
 それと同時に、長期的なものも考えておかなきゃいけないだろうということで、例えば権利流通プラットフォームをどのようにして共通基盤にしていくかというような、グランドデザインというものを含めて、知的財産計画2010年というような感じの、ちょっと先を見て、ビジョンを持ってこれ全体を包含するような、その中でマイルストーン、ロードマップを作ってやっていくというようなことと並行して進めることが必要ではないかというふうに思います。

○吉田事務局次長 東倉委員のおっしゃるとおりでございまして、早急に対応すべきものは、今回4つの問題をここで切り出しておりますけれども、今おっしゃいました長期的なもの、そういった際に法制度にかかわる事柄もございましょうし、ある意味ではそのシステムづくりにかかわる事柄もあると思います。そういった問題について、まさに今後の検討課題の中で、一応3つ上げておりますけれども、これは法整備にかかわる事柄だけではなくて、そういったシステム開発ですとか、その他のいろいろな課題も含めたご議論をいただきたいというふうに考えております。

○中山会長 よろしいでしょうか。ほかに何かございましたら。
 よろしいでしょうか。では、もし時間が余りましたら、後でご意見をちょうだいするといたしまして、ただいまちょうだいいたしましたご意見は適宜反映させまして、知的財産戦略本部に報告をすることにいたします。
 内容につきましては、最終的に私にご一任いただければと思いますけれども、よろしゅうございましょうか。 (「異議なし」の声あり)

○中山会長 ありがとうございました。
 それでは次に、ただいまの「検討経過報告」におきまして、今後の課題として掲げられております「コンテンツの流通促進」につきまして、ご議論をいただきたいと思います。
 まず事務局より資料2の説明をお願いいたします。

○吉田事務局次長 資料2を御覧いただけますでしょうか。
 先ほど「検討計画報告」のところで、今後の検討課題として整理されました最初の課題、コンテンツの流通促進方策につきまして、この後の時間、様々なご議論をいただきたいと考えております。資料2は、その議論の材料にお使いいただきたいと思いまして、事務局のほうで作ったものでございます。
 2ページをめくっていただきますと、検討の背景というところでございますが、これは「検討経過報告」のところの記述とも相当重なる部分がございますけれども、インターネットの普及あるいはブロードバンド化の進展により、パソコン、携帯端末へのコンテンツの配信、IP技術を用いたテレビへの動画配信など、新たなコンテンツの流通形態が生まれてきていると。こういった新しい流通経路にコンテンツを流通させるためには、権利処理に時間とコストがかかり過ぎるという批判があるということです。民間では、新しい流通形態に対応した円滑な権利処理を実現するために、権利の集中管理の拡大や制作段階から二次利用を想定した契約の締結促進、あるいはコンテンツ情報の集約・公開等の動きがあるものの、なお十分ではないという指摘もあるわけでございます。
 そういうところから、これらの動きを視野に入れながら、ネット等を活用した新しい流通を一層促進するためにどのような法的枠組みが適当かということについて、検討を行う必要があるのではないかということで、これらの背景でございます。
 そこで、その3ページから5ページにかけましては、コンテンツといったときに、特にネットを使って流通が数多く行われておりますものを一つ素材といたしまして、実際に権利処理がどのようになされているのかということを外観させていただいたものでございます。
 最初に音楽のコンテンツ、これはレコードという形になっているものということでございますけれども、この権利処理の現状でございます。
 左側のほうに、これに関連する権利者がございます。この場合、下のほうには、いわゆる音楽の著作権者と言われる方がおります。これらの方々の権利は、著作権等管理事業者、代表的な事業者としてはJASRACがございますけれども、そういったところを通じて権利行使をするというのが主でございます。その上に実演家というのがございます。歌手とか演奏家ということでございますけれども、この実演家の権利は、契約上この右側のほうの原盤製作会社、レコード製作者というところに、一部の権利を除きまして権利譲渡をするというのがほぼ慣行になっているところでございます。
 原盤製作会社と、いわゆるレコード販売を行いますレコード会社は、同じ場合もございますけれども、別の場合もあるということでございますが、この間では権利譲渡が行われたり、あるいは利用許諾契約が行われたりというようなことで、様々な形態がございます。
 さて、この右側のほうでレコードの二次利用といった場合に、一応テレビ・ラジオ放送あるいはレンタル店でのレンタル、さらにネット配信事業者あるいはインターネットラジオ等におけますネット配信、そういったところを「二次利用」ということにさせていただいているわけでありますけれども、テレビ・ラジオ放送でCDをかける、こういう場合には、これは放送二次使用料の世界ということになりますので、これについては許諾は不要でありまして、報酬支払い義務が課されるということでございます。そのCPRA、芸団協のことでございますけれども、実演家の団体でございますが、それを通じて実演家のほうにリターンされていくという形になります。また、レコード製作者の権利については日本レコード協会を通じまして、レコード製作者のほうに分配をされていくというようなことになってまいります。
 一方、ネット配信事業者やインターネットラジオの場合には、これはそれぞれ許諾が必要でございます。ただ、実演家の権利は先ほど申し上げましたように、レコード製作者のほうに、このネット配信に関する権利も譲渡をされております。そういう意味では、二次利用についての許諾は、このレコード製作者がネット配信事業者に対して一括して行うという形になっております。なお、音楽の著作権者につきましては、これはまた別途JASRACなどを通じて行うということでございます。そういったことが下の丸のほうにも書いてございます。
 次に、4ページは、映画のコンテンツの場合でございます。左側のほうに関係する権利者がございます。下のほうには映画の原作あるいは脚本、それから映画音楽等の著作者、さらにはレコード音源が使われる場合にはレコード製作者というようなこともございます。それから、上に実演家というのがおります。まず、その著作権のほうにつきましては、映画製作者が映画を製作する際には、管理事業者などを通じまして、あるいは個別にやる場合も、音楽以外の場合には主でございますけれども、許諾をするというような形になっております。実演家も、これは出演契約ということで、許諾をしているということでございます。
 映画製作者の中には、いわゆる伝統的な映画会社だけではなくて、最近はいわゆる製作委員会方式と申しますか、放送事業者ですとか映画会社、その他のいろいろな方が集まって委員会をつくって、そこで映画製作を行うという実態もございますが、法律的な概念としては一応映画製作者ということでくくらせていただけたらと思います。
 この場合、一応一時利用を映画館での上映という部分にしているわけでございますが、二次利用としては、それを放送やCATVなどで放送する、有線放送する、それからネットで配信を行うというようなことでございます。こうした場合に、映画製作者は当然その著作権の行使を行うわけでありますけれども、映画の著作者であります映画監督ですとか、そういった方には著作権はないわけでございまして、そういった意味では、それらの方々について改めて権利処理の必要性はございません。
 また、俳優さんの場合には、これは出演契約によって、そこでそれ以降については権利行使できないという、いわゆるワンチャンス主義というものがとられておりますので、これについても許諾は改めて必要がないということでございます。
 なお、原作となります脚本ですとか、あるいは映画に複製されております音楽ですとか、そういうものにつきましては、これは二次利用についても許諾が必要になってくるわけでございますけれども、この図の右側のほうにちょっと米印がございますが、二次利用については、通常、音楽を除き映画製作者が権利処理を行うという形になっておりまして、いわゆる原作や脚本というところにつきましても、映画製作者のほうの管理ということが大幅に認められているところでございます。音楽につきましては、JASRACなどの管理事業者が、改めてそこで権利行使をするというようなことがございます。
 なお、製作委員会方式の場合には、参加する企業が映画の著作権を共有するということになりますので、二次利用については、この構成する企業の合意が必要であるというようなことになってまいります。
 それから、5ページのところは放送コンテンツでございます。この放送コンテンツが、従来権利処理に相当の手間暇がかかるというようなことでよく取り上げられるわけでございます。左側のほうに関係する権利者、真ん中に著作権者がおります。その上に実演家、そしてその下にレコードが放送で使われる場合のレコード製作者がございます。
 著作権者のほうにつきましては、放送番組の製作の際に、まずは放送の許諾のみという場合が、まず多うございます。また、実演家についても放送の許諾のみというようなものが多いという実情がございます。そうなってまいりますと、放送については許諾は得られているわけでありますけれども、二次利用ということで衛星放送や、あるいはCATV、さらにネット配信やIPマルチキャスト放送などで、この放送コンテンツを使うという場合には、改めて二次利用についての許諾を得なければならないというようなことになってまいります。
 下の丸3つございますけれども、実演家については映画やレコード、映画の場合には法制的にそういう集中化が図られておりますし、レコードの場合には契約によって集中化が図られていますけれども、放送コンテンツの場合には事情が異なりまして、製作者に権利が集約化されているわけではございません。また、その権利の集中管理も一部ございますけれども、音楽や、あるいは脚本のような集中管理団体で、ほとんどの権利者をカバーしているというような状況にはまだ至っておりませんで、第1回の際に関係する資料としてお配りをした中に、いわゆる芸団協、CPRAと音事協とあわせましてカバーしている割合がおよそ7割というふうなことを申し上げたかと思いますけれども、やはり残りの部分というものがなかなか集中管理のほうにも入ってこないというような状況ではございます。
 また、放送コンテンツの場合には、このそれぞれのコンテンツについての権利情報が十分に集約されていない、また公開されていないと。これも二次利用を進める際の利用者として見ますと非常に不便な点として指摘をされているところでございます。
 なお、二次利用につきまして、放送事業者が他の事業者に放送コンテンツを提供する際には、音楽につきましてはJASRACとか、そういったところが直接事業者とやるわけでありますけれども、他の権利関係につきましては、放送事業者がある意味では集約をして、そして他の事業者に番組を提供する、番組販売を行うというようなものが慣行としてございますということでございます。
 今、レコード、映画、放送というところで権利処理の実情を見ていただきました。レコードと映画につきましては、御覧いただいたように、相当の製作者への権利の集中というのが行われておりまして、やはり放送と比べますと二次利用が比較的円滑に進む環境があるのかなというふうに思われます。問題は、その放送コンテンツの関係でございます。
 6ページのところを御覧いただきたいと思いますが、放送コンテンツの流通の関係でも、幾つか5ページのところでも指摘をしておりますけれども、特にやはり実演家の権利をどういうふうに処理をしていくかというところに課題があるという指摘が多くございます。その中で、これまでに行われてきました事柄あるいは現在進行中の事柄、そのあたりをここで少し整理をしております。
 まず契約ルールの形成ということでございますが、最初に映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会、これは日本経団連が事務局を務めておられたんですけれども、ここの場におきまして、放送コンテンツ製作者と実演家との協議によりまして、制作段階によって二次利用を想定した契約締結を促進すること。また、ネット配信に関する契約ルールの策定といった取組が行われて、一種のガイドラインみたいなものができております。関係者は、これを周知徹底するという活動に取り組んでおるというところでございます。
 また、放送コンテンツにつきまして、コンテンツ情報の集約、公開が問題があるという点を先ほどご紹介しましたけれども、現在、総務省の情報通信審議会におきましては、放送コンテンツの取引市場形成というところで、放送コンテンツの製作者が権利情報を集約し、それを取引を希望する者に対して公開するためのルールや制度の在り方を検討しているというところでございます。
 また、3つ目は集中管理事業の拡大でございます。一つのコンテンツに多数の実演家がかかわるという場合が多うございますので、こういった場合に個々の実演家ではなくて、どこか一括した窓口で許諾が得られるというようなことになりますと、効率化に資するわけでございますが、実演家やそのレコード製作者の権利を、この集中管理という仕組みを通じて円滑に処理をしていこうということで、これは一昨年の10月からでございますけれども、実演家の場合には芸団協、あるいはレコード製作者の場合には日本レコード協会、こういうところが著作権等管理事業法の枠組みを使いまして、応諾義務を伴う一任型の集中管理を始めております。というのは、これにつきましては、先ほどもちょっとご紹介しましたけれども、こういった集中管理事業のカバー率はまだ7割程度であるということでございます。
 それから、4つ目の丸は放送コンテンツだけではなくて、日本のコンテンツ全般について、そのコンテンツ情報を集約し公開する仕組みとして、「ジャパン・コンテンツ・ショーケース」というものの運用が既に始まっておりますが、なおまだこれに登録しているコンテンツの数は限られているという課題がございます。
 なお、この関係では著作権等の権利者団体においては、権利者情報に関するデータベースとして、「創作者団体ポータルサイト」といったものを整備・運用する計画でございまして、このジャパン・コンテンツ・ショーケースとも連携を図る予定であるというふうに聞いておるところでございます。
 それから、5つ目の丸は、所在不明の権利者への対策の強化でございます。過去の放送番組を利用する際に、多数の実演家がかかわっている場合があるわけでございますけれども、その中には、現在はもう俳優をやめてしまったりとか、あるいは所在が不明であるとかというようなことがございまして、実演家となかなか連絡がとれないという場合が出てまいります。そういったときに、どう対応するかという問題でございますけれども、まず暫定的な措置として紹介しておりますのは、これは冒頭紹介いたしました映像コンテンツ大国実現のための検討委員会の場で、一応その合意がなされたものでございますが、そこではこの芸団協、CPRAにおいて、こういった不明な実演家についても捜索をし、またこのCPRAに対して、CPRAがそういったあたりのある種、とり持ちをするというようなことになりますけれども、事後的に使用料を支払うということによって、当面その利用を促進させようと、こういった自主的な取組を始めるということでございます。それから、これについては法的な裏付けはございませんので、あくまでも民間の自主的な取組ということでございます。一方、法的な側面では文化審議会におきまして、今、権利者不明の場合の制度対応について検討をしているということでございます。
 それから、7ページのところを見ていただきますと、ここのところを今日、こういったテーマでご議論いただいたらどうでしょうかということの素材ということでご理解いただければと思いますけれども、まず1番目のものは二次利用に際しての権利関係あるいは権利行使の在り方ということについて、ご議論いただいたらどうだろうかということでございます。
 最初のポツは、そういった意味の全般でございまして、ネットなどを活用した流通における権利関係はどうあるべきかということでございます。映画のところで御覧いただきましたように、法制的にある製作者に権限を集中させることによって円滑化を図るというモデルもございますし、あるいはレコード製作者、レコードの場合のように、製作者に契約によって権利を集中させることによって円滑化を図るといったケースもございます。放送コンテンツは課題が多いということを申し上げましたけれども、放送コンテンツだけに限られないのかもしれませんが、こういったネットを活用した流通において、どのような権利関係が妥当なのかという問題でございます。
 2つ目のポツは、こういった二次利用につきまして、やはり契約の問題あるいは集中管理の問題、そして権利情報の集約・公開といった問題、ここがかかわってくるわけですけれども、こういった取組が6ページのところで御覧いただいたように、それぞれある進展が見られているということはあるわけでございますけれども、それをどう位置付けるかということでございます。
 それから、3つ目のポツは、民間のいろいろな取組として契約、集中管理ということがある程度進んできておりますけれども、なお、やはり明確な契約がない場合あるいは集中管理のアウトサイダーの問題、そういったものは残っているわけでございまして、そういったものの部分に対しまして、どのような対応が考えられるのかという問題があるのだろうというふうに思われます。
 それから、2は写り込みなど付随的な理由に関する法的問題の解決ということでございますけれども、これまた1とは少し局面が違いますが、放送コンテンツなどの場合には、画面にさまざまな町なかの風景、その風景の中には、様々な著作物が含まれているような場合もございます。また、いろいろな公衆が画面の中に移っているといった場合もございますし、あるいはその人から何かインタビューをして、お話を聞いているというようなことがあったりもいたします。
 そういたしますと、最初の放送の際にはそれはそれでよかったのかもしれませんが、それを二次利用するといった場合に、そういった写り込んだコンテンツといいましょうか、著作物などの法的取扱いをどうするかという問題が出てこようかと思います。
 それから、3ポツのところは、またここに先ほどご指摘のありました「一般人」というのが出てくるわけでございますけれども、ネット上における一般人のコンテンツの創作・公表に伴う課題で、ここでは先ほど苗村先生もおっしゃったように、ネット上で多数の者がかかわって、コンテンツがある意味では成長して一定のものができ上がっていく、そういったコンテンツについて権利関係の在り方、あるいは権利の管理の在り方について今後どういうふうに考えていったらいいのかどうかと、一応この3つに整理をしてみました。
 これ以外にもまだ様々な課題があるのかもしれませんけれども、用意したものは以上のようなことでございます。

○中山会長 ありがとうございました。
 それでは、議論に入りたいと思いますけれども、まず、資料自体につきまして、ご不明な点やご質問ありましたらお受けいたしまして、その後で7ページの検討課題について自由な討議を進めてまいりたいと思います。
 まず資料について、何かご質問あるいはご不明な点ございましたら、お願いいたします。
 一つよろしいですか。6ページの「集中管理事業の拡大」で、集中管理のカバー率は、非一任型も含めて70%と、この「カバー率」というのは一体何を意味するのか、実演家の数の7割なのか、それとも何か違う数字なのか、何の7割なんでしょうか。

○吉田事務局次長 実演家の定義というものがあやふやなところもあるんですけれども、ほぼ日本である程度活躍をしているといいますか、俳優とか、あるいは映画のそういうことをして活躍されている実演家の中での割合として、7割程度と。

○中山会長 実演家の頭数の7割。

○吉田事務局次長 はい、そうです。

○中山会長 非常によくテレビに出る実演家も、たまに出る実演家も両方まぜているわけですね。よく聞くところだと、偉いといいますか、有名な実演家ほど余り任せたがらないという話も聞くものですから。

○吉田事務局次長 そのとおりでございます。

○中山会長 それから一任型と非一任型と大分違うと思いますが、両方含めて7割ですが、これは一任型と非一任型の区別のパーセンテージは分かりますか。

○吉田事務局次長 一任型というのは芸団協、CPRAの場合には一任型ということで、もう権利者から、ある意味では権利行使をも一任されて、芸団協で使用料ですとか、そういったものも決めますし、一任型管理の場合も応諾義務といいますか、そのままかかわってまいりますから、もう原則として正当な理由がない限りは利用を拒否できないという形になっております。
 ただ、この非一任型というのは、これはどちらかというと音事協と呼ばれる事業者団体に所属をしているプロダクションあるいはそこに属している実演家の場合でございます。これについては、一応それぞれの実演家のほうに許諾をするのかどうかとか、使用料をどうするかということの最終的な判断権は一応留保されておりますけれども、ただ実態といたしますと、ルール作りを音事協のほうでいたしまして、その後はルールに従って、ほぼそのとおりにプロダクションも許諾をしていくということになりますので、芸団協、CPRAのやり方と相当近いところにあるのではないかというふうに認識をしております。
 この芸団協と音事協の割合というのはちょうど半々ぐらいということです。

○中山会長 ありがとうございます。
 ほかに、資料についてのご質問等ございましたら。
 どうぞ、大谷委員。

○大谷委員 資料の5ページでございまして、放送コンテンツの権利処理の流れをわかりやすく示していただいている部分で、二次利用のところに「放送事業者」という言葉が、ほかのシートには入っているものが外れております。一次利用をした放送事業者が二次利用をするときにも同じ問題が発生していると、私は認識していたのですけれども、それはやはり一次利用をした放送事業者が改めて二次利用をするときの問題点は、余りないと考えていいのでしょうか。わざわざ資料から「放送事業者」という言葉を二次利用のところで外されているので、そういった意味合いを込めて外されているのかどうかを確認させていただきたいと思います。

○吉田事務局次長 放送事業者自身が、自ら二次利用をする場合というのもございます。

○大谷委員 そうですよね。わかりました。ありがとうございます。

○中山会長 ほかに何かございましたら。よろしいでしょうか。
 それでは、先ほど申し上げましたように、7ページの検討課題、これについて自由なご意見をちょうだいしたいと思います。何かございましたら、お願いいたします。
 どうぞ、宮川委員。

○宮川委員 宮川から、検討課題への質問のようなものでございますが、先ほどのコンテンツの流通促進についてのご説明を伺いますと、どうも音楽コンテンツとか映画コンテンツの場合、大分、集中管理ができてきていて、二次利用についても窓口がかなりはっきりしてきているという印象を持ちました。また、契約等についても二次利用を意識した契約の機運が高まっているというか、かなり進んでいるように伺ったのですが、特に放送コンテンツの権利処理というのが、この3つのカテゴリーの中ではまだ進んでいないという理解でよろしいのでしょうか、いかがでしょうか。

○吉田事務局次長 これは、見る人によりまして評価は違うのかもしれませんが、一般的にはレコードや映画と比べますと、放送コンテンツの二次利用の観点ということについては、課題が多いというふうに言われております。

○宮川委員 そういうことですと、今いろいろ資料を拝見させていただきましたけれども、放送コンテンツについてよく思いますのは、テレビ番組というのは、もうほとんど映画と同じようなドラマがありますね。連続ドラマもあります、一話完結のすばらしいドラマもあると思いますけれども、映画に近いものと、それから瞬間芸というものではありませんけれども、その時、その時に番組を流して、その役割は終わっていくような、そういう番組もありますし、かなり番組の内容も違います。その中身の違いも去ることながら、局が製作しているものや外部の製作会社に委託しているものというように、いろいろ性格の違いがあるかと思うんですが、そのようないろいろな違いを踏まえず、テレビ番組の二次利用の問題を一律に議論することで何か問題点が出てきているのではないかというのが、私の感想であります。

○吉田事務局次長 確かに、放送番組も製作の形態はいろいろなものがございまして、例えば外部の番組製作者に委託をしてといいましょうか、そこに作らせているような場合には、権利関係のモデルといたしますと、映画コンテンツのモデルになってまいります。その運用についてはいろいろな、通常の劇場映画とは少し異なった取扱いをすべきじゃないかと、いろいろとご意見もございますけれども、公的な整理とすると映画のモデルという形になってまいります。
 ただ、そういった番組製作者ではなく、放送局が製作するものもあるわけでございますが、結局、放送局が放送するというのが、まず第一義的な契約に際しての姿勢でございますので、放送についての許諾しか得ていないと。放送についての許諾だけで、ある意味では番組のための収録ですとか、そういったものも可能にする仕組みは著作権制度の中では設けられているんですけれども、ただそこで一つのコンテンツができ上がって、それを二次利用するという場合には放送についての許諾しか、最初の放送についての許諾しか得られておりませんので、そうすると二次利用についても、これは改めてやらなくちゃいけないということが出てまいります。
 映画はもう当初から、映画館の上映から何からずっと一つのビジネスモデルとして、ある程度確立されたものがございますので、そういった意味ではそれをにらんで、出演契約の中で処理することもできましょうし、権利関係は先ほど御覧いただいたように、すっきりとした形になっております。
 レコードもそういう意味では、そういったビジネスモデルをある程度確立された上で、こういう契約がとられているということでございます。そういう意味では、この放送コンテンツのビジネスモデルをどう考えるかということも、この課題に関連をしたテーマであろうかと思います。

○宮川委員 ありがとうございます。

○中山会長 どうぞ、中村委員。

○中村委員 今のに関連してなんですけれども、6ページのところに書いてありますようなことについて少し付言をいたしますと、一般論として、私はコンテンツの流通というのは契約とかビジネスが第一の問題であって、そこで折り合いがつけば動いてくれるものだと思います。NHKがユーチューブにチャンネルを作るという具合に、テレビ番組の一部も動き出しているというところだろうと思うんですが、そのための環境整備は非常に重要で、ここに書いてあるような、インフラを整備していくという施策は充実させるべきだというふうに思います。
 その2つ目のコンテンツの取引市場の議論も進んでおりまして、実は間もなくその報告書を取りまとめるための情報通信審議会の会が予定されていて、私はその主査なので、申し訳ありませんけれども、これから中座してそちらに向かいますが、そこではそのコンテンツのデータベースを構築するとか、それから番組を公募してマルチメディアで流通させる実験を行うといったようなことが予定をされておりまして、つまり規制とか強制的な制度ではなくて、支援措置的なアプローチで二次利用を促進しようという、そういうことをあえて出し合っておりまして、そういう措置がまず必要なのではないかというふうに思います。
 ここに書いてありますように、集中管理を進めるということも進めるべきでしょうし、それから権利を持っている方々が自発的に登録することで流通を促すといった仕組みもあっていいと思いますし、そういったことのための、それらを支援するための法的な措置はあってよいのだろうというふうに考えています。
 関連して、その次のページに二次利用に際しての権利関係の辺りですが、同時に強制的に許諾権を制限するとか、そのネット権のような考え方も近ごろ仄聞するところなんですけれども、どうしてもビジネスの折り合いがつかないというときに、そういった強制的な措置ということを考えることも、考えられると思いますけれども、その場合も2点注意しておくということがあるんじゃないかと思います。
 まず第一は、そういった措置が合理性を持つという実態といいますか、データをちゃんと準備して議論することだろうと思います。例えばブロードバンドやモバイルの企業がこれだけの条件を提示し、これだけの金額を提示し、これだけの時間をかけているんだけれども、コンテンツが動かないというような実態があるのであれば、では法的措置はあるのかという、そういう議論になるかと思うんですが、まだ必ずしも、そうした実態やデータすべてが整理されていないんではないかなという気が私はしています。
 それから2点目は、何らかの措置を考えて発動した場合に、果たしてそれはだれが喜ぶ措置なのか、つまり発動した結果どうなるのかということをきちんとシミュレーションしておく必要があると思います。つまり、例えば放送局がそうしたネット上の権利を持つとなった場合に、では番組がネットに安く買って流されてしまうんだったら、実演家はそもそも、その権利を持つ放送局と番組を作るのは嫌だと、ブロードバンドやモバイルの会社とやるよというようなことを考えるかもしれない。だとすると、法的な措置で動かそうとしたなら、逆の方向に行く事態も考えられなくもない。だから、実際に発動したらどうなるのかということも検証しながら制度は考えていく必要があろうかと思います。
 以上です。

○中山会長 ありがとうございました。
 ほかに。どうぞ、苗村委員。

○苗村委員 7ページの一番目の課題というのは、主として放送コンテンツの二次利用に関するものだろうと思いまして、そういう意味でちょっと気づいたことを申し上げます。
 これは中村先生を始め放送に関して非常に詳しい方がいらっしゃる中で、私が少し検討外れなことを申し上げたら恐縮ですが、基本的にここに書いてあるようなことについて、積極的に検討を進めて流通を促進すべきだというのは全くそのとおりだと思うんですが、前の音楽とか映画の場合と、かなり根本的に違う問題が二、三あると思います。
 一つは、有料放送と無料放送の関連ですね。有料放送は極端に言えば映画のコンテンツと同じように、あらかじめその番組ごとにある種の料金がついているわけですから、それをいかにして、どういう料金でネット上で流通させるかという、ビジネスの問題と捉えることができるかもしれませんが、無料放送の場合、例えばNHKの場合は受信料によって動かしているわけで、一般の視聴者はこれが無料であると。全く自分が、そのコンテンツを二次利用で使うためにも、お金を払う必要はないと信じ込んでおりますから、これをネット上で流通するときにどうしたらいいかと。
 また、通常の無料放送の場合は、むしろスポンサーがそのコストを負担しているわけで、それをネット上で流通させるときに無料にするのか、また広告で新たな収入源を得るのか、そのほかの手段があるのか。そういったことによって当然違うわけで、これは当然、映画と音楽のコンテンツとは大分違うということが一つです。
 それから、2番目には、そのコンテンツの種類によって実時間といいますか、日時に応じた、ある種の新しい価値または制約があるものがあると思います。映画の場合も「ニュース映画」というのが昔ありましたが、今は基本的にすべてフィクションですので、したがって、その中でだれかがある役を演じても、それはあくまでもその時点でそういう役を演じたにすぎないわけで、後にその本人が別のことを主張してもいいわけですが、一般の放送の場合は、むしろリアルな実態を世の中に流すということが大前提で作られていると。したがって、ある日、例えばある政治家であれ一般の企業の人であれ、何か発言をしたということが放送された。それが、後にネット上で長く流通していた。その時点で、その専門家が既に見解が変わっていて、別のことを言うというようなこともありますので、単に著作権の問題を超えた、かなり難しい問題があります。そういった点も含めて考えなければならないと。
 それから、3点目に、やはり映画のコンテンツが放送番組の中でも、最も視聴者から再利用を要求されるものだと思いますので、放送コンテンツの流通促進の問題を議論していたところが、実は最終的に映画コンテンツの流通促進の問題になっているという可能性があるのではないかと、その点も考えなければならない。
 それから、最後にもう一つ、かなり複雑なのが国際の問題です。日本国外の問題ですね。映画とか、音楽はちょっとCDで別のファクターがありますが、映画は原則、流通経路、頒布経路を国の中に限るとか、外国の場合は別のルールでやるということができるわけですが、インターネット上の流通で国を限って、国内だけの流通というのは大変技術的には可能ですが、実質的にはほとんど困難なので、その問題も考えてやらなければならない。そういった点が課題に多分、中に含まれているんだと思いますので、私は大いに積極的にやるべきだと思うんですが、そのときに幾つかの前提条件を置いたり、あるいは何か方向性を決めて、特に外国での検討と同期をとりながらやる必要があるかと思います。
 以上です。

○中山会長 ありがとうございました。
 ほかに。どうぞ、加藤委員。

○加藤委員 ここに書いていただいた3つの課題、どれも非常に重要なことで、ぜひ今後の検討課題としていただきたいと思います。
 一般的なコメントなんですけれども、まず2番の写り込みの問題は、新しいいろいろな技術、新しいインターネット技術等の利用によってできてきた、非常に新しい類の問題の側面があると思います。もちろん昔から写真等であったにしても、こういうケースが爆発的に増えているということで、こういう問題はひとつ今まで議論されていた、一般的なフェアユースのような概念があれば、これに限らず、かなりの問題を実際的にはカバーできるのかなというふうに思っております。
 1と3なんですけれども、これも非常に一般的な、抽象的なコメントで恐縮なんですけれども、この問題を見ておりますと、やはりもっと契約というものを重視しますというか、日本がやはりまだ国際社会から見ると、規約を細かくやるというふうには言っていないようなことを感じます。
 著作権法の改正でカバーできる範囲というのは非常に難しいし、細かい問題それぞれについて権利関係でカバーするというよりも、やはり当事者間での契約での解決というのをもっと日本で活用する、それを可能にするということが重要だと思います。
 今のこういう問題を検討するに当たって、国際社会の中で、日本の契約は十分かというのを常に検討をしていくべきであって、そういう観点からすると国際競争力という面でも、まだまだ足りない部分があるのではないかと思います。
 例えば3番目の点に関連して思うのは、オープンソースではGPL、ジェネラル・パブリック・ライセンスという契約でオープンソースのソフトウエアが利用できる。実はこれを知らない技術者も非常に多いと思うんですけれども、そういうことがありますし、文芸著作物の分野では、クリエイティブ・コモンズも同じでありまして、中山会長の前でそれを申し上げるのはあれですけれども、契約があって初めて、みんなが自由に使える。しかも、自分の権利も一定の範囲で守れるということができているわけで、これはもう世界じゅうがそういう約束でできているもので、著作権法を改正するということが直接は必要ない世界だと思います。
 そういうふうに見ていきますと、今回の課題も本当に契約をする努力を関係者がしているのかどうか、実態をもう一度、これはもう何度もやっていただいていることですけれども、国際的にも見て十分かということをまず分析していただくと、検討していただくと。さらには、啓蒙のための努力、それが十分かということがあろうと思います。
 それから、3つ目として、契約を見直す場合に重要な視点として、これから関係者が非常に増えてくる。多くの人がクリエーターになっていくという場合に、多数との契約というものがどういう形で成立して、それを確認していくかというところを、もう少し詰めていただくのがよろしいんじゃないかと思います。クリエイティブ・コモンズの例ももちろんそうですけれども、あれは当然そういう内容、契約の内容を細かく告知して、皆さんにわかりやすく説明をして、法的にはそれに同意があったものとして契約が成立していると。このモデルというのは、いろいろなところで使えるのではないかというふうに思います。そういうふうに考えますと、今議論しているもののかなりが、契約をさらに促進することでカバーできるのではないかというのが私の今の感触でございます。

○中山会長 ありがとうございます。
 ほかにご議論ございましたら。
 よろしいでしょうか。大谷委員、どうぞ。

○大谷委員 今、加藤委員が述べられたことには非常に大賛成です。どちらかというと現在ネット法の議論なども含めて、契約による枠組みで十分に解決できないとあきらめたような議論のほうが先行しているんですけれども、契約でどこまでできるかというのを考えてみると、そして、もしそれで足りないところが見つかったのであれば、その契約を締結できる、それがしやすいような環境を促進するような法制も、制度としては検討していく価値があるというふうに思っておりまして、それにも大賛成ということでございます。
 その観点で、放送のコンテンツですけれども、先ほど苗村委員からもご指摘があったように、放送コンテンツの特性というか、放送業界の特性ということに配慮しなければいけないと思われます。特に放送の世界では、今、二次利用を積極的に放送事業者に取り組まなくても、それなりに十分ビジネスができるという経営環境が整って、成功したビジネスモデルが成り立っているわけですが、いずれの日にか、それは崩れてしまうビジネスモデルではないかと思うのですけれども、それでも現状がそういう状態である以上は、なかなか新たな権利処理について、例えば放送以外の二次利用も視野に入れた契約、出演条件を明確にするといったことが、なかなか促進しないという状況にあると思うので、やはりその放送事業者、特にその一次利用者にとって、何とか二次利用も視野に入れた契約の仕組みに参画できるような、それを促進できるようなインセンティブを与えていくには、どうしたらいいのかというような観点で物事が考えられないかなと常々思っております。
 具体的な案があるということではないのですけれども、今のビジネスモデルだけではなくて、将来像を少し考えて対応していただく、対応の仕方を促進する仕組みを考えられないかということかと思います。
 その関係では、かなり期待されていたダビング10について、なかなか進まないという状態になってしまったわけですが、それもダビング10というのも契約による解決の一つのアイデアだったと思うんですが、そのダビング10について、一定の合意を見た条件というのが、数カ月のうちにいろいろ変わってきたというか、世の中の議論も変わってきたということで、スピードを持って対応すれば合意できたようなものが、長い時間かけているうちに条件が変わっていくことによって、合意に従っての契約が実行できなくなったというようなことだと思うので、何か合意の枠組みを決めたり、やはりスピード感を持って進めないといけないんだろうなというのを、今回の件で相当実感させていただきました。ということで、ちょっと感想めいておりますが、以上です。

○中山会長 ありがとうございます。
 ほかに何かございましたら。どうぞ、上山委員。

○上山委員 課題の3番目のネット上のコンテンツの創作・公表は、具体例としては「電車男」のようなものを念頭に置いているんでしょうか。

○吉田事務局次長 はい。

○上山委員 そうすると、そういったものがまだ成功例としてそんなに出てきていない中で、どれほどニーズがあるのかということも考慮が必要だと思います。また、近々「2ちゃんねる」で多数の人が書き込んででき上がった歌詞をCDとして出すという例もありますが、このような事案の課題は、権利者がだれかを特定するのがほとんど不可能に近いということです。「名乗り出てください。」といった場合、疑わしい人も名乗り出てくる中でだれが真の著作者かを確定することが非常に難しいという点では、前のページの所在者不明の問題よりも難しいんだろうと思います。インターネットではまとまって行動する事業者団体が必ずしも存在しないということもあり、多面的な議論が必要なところなのかなと思います。

○中山会長 確かにおっしゃるとおりで、権利行使をするに際してはまず自分に権利があるということを立証しなければいけないですから、だれが権利者かがわからなければ権利者はいないのと同じで、これは難しい問題ですね。解決策としては、恐らくプロバイダに権利を集中させている契約になるのではないかと思うんですけれども、それに対する反発も強いようで、その契約はけしからんということでつぶれているのが実情のようです。結局どうにもならんから何とかしてくれという話なんですけれども、何とかしようがあるのかないのか、非常に難しいところだと思いますけれども。
 確かに3もそうですけれども、契約の枠組みでうまくいけば、それはそれにこしたことはないので、この会議でも、昔から何とかせいということはもう何回も言われていました。しかし、なかなかうまくいかないという状況であり、確かに加藤委員おっしゃるように、どこがその契約がうまくいかない理由かをちゃんと調べろと、という点もそのとおりなんでございますけれども、なかなか契約が進んでいないので、もうしびれを切らせた人が、では立法だと主張しているのだと思います。
 基本的には、法律でこうだと決めるのは、やはり市場が失敗したときだろうと思います。今失敗しているのか、あるいはもっと成功する可能性があるのかということが問題になると思うんですけれども、何かこの点につきまして、ご意見ございましたら。
 どうぞ、苗村委員。

○苗村委員 私は法律の専門家ではございませんので、勘違いしたら申し訳ございませんが、まず基本的に、契約に基づいて流通促進をすることの重要性というのは全く大賛成です。ただ、先ほど来のいろいろな議論の関連で、私がまだ十分理解できていないのはこういうことなんですが、契約の中で当然有料で、営利目的で、何らかのものを貸すのであれ、あるいは譲渡するのであれ、これは比較的契約としても結びやすいでしょうし、また内容も確定しやすいと。ところが、それが非営利目的である、さらに無償であるという場合の契約について、いろいろと実例も余りないんだと思うんですが、やりにくいのではないかと想像していまして、先ほどダビング10の話も、そもそも無償であるのか有償であるのかが確定しないままルールづくりが進んで、後でそれを有償か無償かの議論をしていたという感じがします。
 先ほどクリエイティブ・コモンズやオープンソースがうまくいっているとおっしゃったのは全くそのとおりなんですが、あれは原則無償であり、もし仮に料金を取ったとしても、それはコスト見合いのもの、非営利であるということを原則としてやった世界で、それが日本にもう、うまく入り込んでいるんだと思うんですが、逆にあのやり方が営利目的、有償の世界にどううまく適合するのかということで、先ほど権利者、例えばオープンソースでつくったプログラムは、本来なら著作者は数え切れないほどいると。彼らが使用料、著作権料を要求しないので契約がスムーズにいっているわけですが、もし要求するとしたらどうするのか、補償金のような形にせざるを得ないかもしれません。
 そういった問題を含めて、多分この、先ほど私が「一般人」についてコメントしたのとつながるんですが、そもそも非営利目的に限定するのか、無償に限定するのか、有償あるいは営利目的も含めて、多数の人が関与するような場合についてのことも考えるのか、何か整理をしないと、すべて契約について契約でやるんだと決めるのが、ちょっと難しいかなと思いながら、今伺っていました。
 以上です。

○中山会長 どうぞ、加藤委員。

○加藤委員 権利者を特定できない点というのは、確かにいろいろ問題は多いと思うんですけれども、これは現実どんな世界にもあるわけですね。特許紛争というのは、だれもやりたくてやっているわけではないですけれども、ある日突然、第三者から警告状が来て紛争になるという例が多いわけです。
 先ほどのオープンソースの例でも、当然GPLを前提にして、その中で活動している方には問題ないわけですけれども、オープンソースのソフトウエア自身にも第三者から特許権の主張があるということで、実際訴訟になっていく例もあるわけです。そういう意味で、あくまで権利者が特定できないという問題はどんな分野にもあるわけで、それをどこまで努力をできる努力をしたか。また、それを特定できるような仕組みに近づけているか、さらに最後はどこまでそれを使うという人がリスクをとるか、その辺のバランスの問題なんではないかと思います。

○中山会長 契約といっても、ここで今一番問題になっているのは契約一般ではなくて、実演家が放送局、放送事業者と契約をするときに、それ以降の利用についてまでまとめて契約をしてくれるかどうかという話でして、それ以外のあらゆる契約を全部含めて議論すると、これまた途方もない、大変なことになるわけですけれども、中心的なのは放送事業者のところでも集中という契約処理ができているかどうかという、そういう話だと思います。そうなると、それは実演家と放送事業者は当然、その間では有償ですね。二次利用以降はわかりませんけれども。
 これも、あちこちの人に聞いてみても、なぜ契約がうまくできないのかということをいろいろ調べたんですけれども、言う人、あるいは立場によって全然違いまして、「これをやればいい。」という妙案は、なかなかないんですけれども。
 何かほかにご意見ございましたら。
 それでは、さきに戻りまして、資料1のほうでも結構でございます。何か全体を含めて、ご意見とか、あるいはご質問ございましたら、お願いいたします。
 どうぞ、上野委員。

○上野委員 それではせっかくの機会ですので、一つだけ確認させていただきたいと思います。資料1の6ページ目に、「研究開発に係る著作物利用の適法化」というのがあがっております。これは前回も議論された論点の一つではありますけれども、ここで「研究開発に必要な範囲において著作物の複製や翻案を行うことができるよう」法的措置を講ずるべきとされていますが、その対象というのは、どういうところまで念頭に置かれているのかについて、もしお伺いできればと思います。
 もちろん、この会議の場というのは大所高所からグランドデザインを描くという位置付けにあるのでしょうから、余り細かい問題について、あらかじめ決めておく必要はないのかもしれませんけれども、いずれこれが文化庁等で検討されるときには、具体的な範囲について検討することになろうかと思います。例えば、民間企業の研究所における科学雑誌のコピーといった複製も今回の法的措置の対象に入ってくるのかとか、あるいはウェブ情報等の蓄積に限られるのかとか、そうした点について、もし事務局の方ですでにイメージがありましたら、ご教示いただければと存じます。

○吉田事務局次長 6ページのところの研究開発の関係では、やはりこれは早急に検討すべきというふうな形で整理しておりますのは、科学技術によるイノベーションの創出ということで、さまざまなネット上などにございます情報や知識といったものを収集して分析をして、新たな、それ自体が技術開発になるのかもしれませんし、それを活用した技術開発がまた行われるというようなこともございましょうけれども、そこのところからこれは入っていくということではございます。
 ただ、議論として前回も上野委員がおっしゃいました、大学や、あるいはさまざまな研究所などでの、こういった研究開発のときの複製、この問題はこの問題として、ある面ではつながっている部分がございますから、検討の視野には当然入れるべきだろうと、こういうふうに思います。
 ただ、学術雑誌のコピーとかという問題になってまいりますと、これまたこれで別の集中管理システムとの整合性をどうつけるかというような課題が出てきたりもいたしますので、少しそのあたりは区別をした議論は必要なのかなという感じは持っておりますけれども、もちろんこれは排除しているということではございません。

○中山会長 よろしいですか。ほかに何かございましたら。
 まだ時間も余っておりますけれども、もしなければ、よろしいですか。
 このコンテンツの流通促進に関しましては、ただいまちょうだいしたご意見を基に次回も議論を進めてまいり、深堀をしていきたいと思います。
 それでは、最後に本専門調査会の今後のスケジュールにつきまして、事務局より説明をお願いいたします。

○吉田事務局次長 では、本日は誠にありがとうございました。
 資料3に、第4回以降3回分の日程をお示しております。次回、第4回は、今、中山会長のほうからお話もございましたように、今日いただきました様々な宿題もこちらのほうで整理しつつ、引き続き、この流通促進方策について、ご議論をいただきたいと思います。それで、第5回から第6回、7月に2回ということでございますが、こちらのほうは2つ目の柱でございました、いわゆる権利制限のご議論をいただければというふうに思っております。それ以降につきましては、また今後ご相談しながら取り進めてまいりたいと思います。
 なお、最後に書いてございますが、20年末、12月までに取りまとめを予定しているということでございます。
 以上でございます。

○中山会長 先ほど大谷委員からお話ございましたとおり、スピードが大事で、1カ月に3回ぐらいの会合がございますけれども、よろしくお願いいたします。
 それでは、ちょっと若干時間を余しておりますけれども、本日の会合はこれで閉会にしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
 第4回は、6月25日水曜日、13時から本日と同じ、知財事務局のこの会議室で開催する予定でございます。
 本日はご多忙中のところ、誠にありがとうございます。これで終了いたします。