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第4回 権利保護基盤の強化に関する専門調査会 議事録


1.日 時:平成15年12月11日(木)15:58〜16:48
2.場 所:知的財産戦略推進事務局内会議室
3.出席者:
【委員】阿部会長、伊藤委員、久保利委員、下坂委員、高林委員、竹田委員、中川委員、山田委員、吉野委員
【事務局】荒井事務局長
4.議事
(1)開会
(2)知的財産高等裁判所の創設について
(3)特許審査を迅速化するための総合施策について
(4)閉会


○阿部会長 それでは、委員の先生方おいでになりましたので、ちょっと早いですが、ただいまから「権利保護基盤の強化に関する専門調査会」の第4回会合を開催させていただきます。座ったまま進行させていただきたいと思います。
 ともかくも御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 お手元の議事次第にもございますが、本日は「知的財産高等裁判所の創設について」、いろいろ御議論いただいたものでございます。
 それから、「特許審査の迅速化するための総合施策について」も、とりまとめを行いたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 最初に事務局から配布資料の確認をいたします。

○荒井事務局長 それでは、お手元の配付資料を確認させていただきます。
 資料1は「知的財産高等裁判所の創設について」のとりまとめ案です。
 資料2は「特許審査を迅速化するための総合施策について」のとりまとめ案でございます。 資料3は、日本経済団体連合会から提出されました、知的財産高等裁判所の創設に関する提言です。

○阿部会長 ありがとうございました。
 それでは、本日第1番目の議題であります「知的財産高等裁判所の創設について」とりまとめに入りたいと思います。この件につきましては、第1回以来、活発な御議論をいただきまして、知財高裁の創設の必要性や、その意義と言った大枠については、委員の先生方、ほぼ共通理解を持っているように思いましたけれども、いろいろ論点がございまして、白熱した御議論をいただいたわけで、今日その中から整理、まとめをするというのは大変難しい点もありますが、委員の方々の御協力をいただいて、是非そうさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それにつけましても、前回事務局に最終的なとりまとめを目指した整理という難しい宿題をお願いしましたので、それについて説明いただきたいと思いますが、各委員の御意見を最大公約数的に整理していただいたということではないかと思いますが、資料1であります。
 まず荒井事務局長から説明してください。

○荒井事務局長 それでは、資料1に基づきまして、御説明させていただきます。資料1は今、阿部会長からも御説明がございましたように、これまでの御議論を踏まえますとともに、事前に各委員の御意見をお聞きして、委員の皆様の御意見を最大公約数的にとりまとめたものでございます。委員の皆様に活発に御議論をいただきましたので、前回までの御議論を通じて、知的財産高等裁判所の必要性とその意義につきましては、かなり明確になったと思います。「I 創設の必要性とその意義」では4つの視点からそれを整理してございます。
 1ページの第1点目「知的財産重視の国家的意思表示の必要性」ということでございます。
 2ページにまいりますと、2点目でございますが、「紛争のスピード解決の重要性」でございます。
 3点目は、「技術専門性への対応」でございます。
 3ページ、4点目の「知的財産重視の独立した司法行政の確立」でございます。
 これらの必要性を踏まえまして、4ページに、本専門調査会の提言案をまとめてございます。前回までの専門調査会では知的財産高等裁判所の組織の在り方に関しましては、独立した知的財産高等裁判所を9番目の高裁として創設するA案、東京高裁の中に法律上の知財高裁を設置するというT案の2案がございまして、A案がよいという委員の方もいらっしゃれば、T案がよいという委員の方もいらっしゃいました。そこで最終的にどのような案でいくかという点につきましては、政府の検討に委ねるということで、本専門調査会ではA案とT案の両方に共通する点、ないし最大公約数的な点をとりまとめて、御提言していただいたらどうかということで4ページに整理いたしました。
 以下、簡単に説明させていただきます。
 1.は「知的財産重視の国家的意思表示を内外に示すとともに、知的財産紛争の迅速かつ専門的な解決を図るために、知的財産高等裁判所を創設する」ということでございます。
 2.は「知的財産高等裁判所は、法律に明確に規定された裁判所とし、司法行政面での独立した権限が法律上確保された組織とする。また、人事、予算、訴訟運営などについては知的財産重視の運用を行う」という点でございます。
 A案の場合は、独立した9番目の高裁ですので、当然法律に明確に規定された裁判所として、司法行政面での独立した権限が法律上確保されることになります。

また、T案の場合でも、竹田委員から御説明ありましたとおり、東京高裁の中に設置する知財高裁は法律によって根拠づけられる裁判所ですし、司法行政面での法的措置が講じられるということですので、2の文言の範囲になると思っております。
 第3点目は、紛争のスピード解決と判決の予見可能性を確保するため、5人合議制の活用や知的財産訴訟にふさわしい訴訟運営を行うべきであるという点でございます。
 4点目は、技術の専門性を確保するため、裁判所調査官や専門委員の活用に加えて、技術的素養を持つロースクール出身者や、知財等技術に強い弁護士の任官を進めるということでございます。
 5点目は、地方の司法アクセスの拡大ということで、テレビ会議などの活用に加えて、出張尋問と言った裁判所外での証拠調べを積極的に行うことを記載しております。
 6点目は、以上を踏まえまして、政府は知的財産高等裁判所を設立するための法案を、来年2004年の通常国会に提出すべきことを記載しております。
 なお、とりまとめをいただいた後、政府におきましては、知財高裁の具体的内容について、更に検討を進めることになりますが、その際には、各委員から出された御意見を十分に参考にさせていただくことになろうかと思います。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。事務局にお願いをして、最大公約数的というか、共通部分をまとめていただいたわけでありますが、それととりもなおさず委員の先生方の御意見で、入っていない部分が山ほどあるということにもなりますので、そこは是非お認めいただければと思います。
 もう一つ、言うのを忘れておりましたけれども、前回、とりまとめの段階で事務局にお願いしたときに、時間の関係もあるんで、各委員の先生方にできるだけ案をお示しして御相談くださいということで、多分やっていただいたんじゃないかと思いますが、ありがとうございました。
 私から1点補足をさせていただきますと、本専門調査会の過去の資料や議事録はすべて公開をされております。
 それから、多くの関係者が本調査会での議論を傍聴されておりますので、先ほど申し上げた最大公約数、あるいは共通部分に載っていない貴重な御意見については、たくさんあると思いますが、それにつきましては、当然記録として十分きちんとしているものと理解しているだけでなく、最後の6番目にありました政府において今後、これに基づいて法案を速やかに作成する段階で、ここに載っていない個別の御意見、貴重な御意見については、是非参考にしていただくということ。荒井事務局長もちょっと言っておりましたけれども、会長としても、その点は強くお願いをしたいと思います。
 そういうことでありますが、とりまとめ案に戻りますと、おおむね今、事務局長から説明があった案になるのではないかと私も資料1ですが、落ち着くのではないかと思いますが、特に御意見がある方がおられたら御発言をいただきたいと思います。

○伊藤委員 こういう形でまとめていただいた事務局の努力に敬意を表する次第でございます。私どもの検討会といたしましても、この提言を尊重しながら、合理的な制度設計についての検討を更に進めさせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございます。

○阿部会長 御意見というよりは、今後のために尊重してくださるというお話ですが、いかがでしょうか。
 今までいろんな御意見を出していただきまして、それらは伊藤先生の方で重要参考資料にしていただくと共に、この資料1を尊重してくださるということなので、よろしくお願いしたいと思います。
 特に御意見がないようでしたら、この資料1について、本専門調査会のとりまとめにさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。


(「異議なし」と声あり)

○阿部会長 それでは、確認をさせていただいたことにいたします。ありがとうございました。
 あとは伊藤先生の方を含めて、これから政府としてのいろいろな議論、法案作成について、これは我が事務局も絡むと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、次に移らせていただきたいと思います。
 「特許審査を迅速化するための総合政策について」でございます。これにつきましては、前回特許庁から参考人をお招きいたしまして、説明をいただいたわけでありますが、その際に特許庁とも調整をしてとりまとめ案を作成していただくこと事務局にお願いをいたしました。
 その結果、用意していただいたのが資料でありますので、まず資料2につきまして、荒井局長から説明をちょうだいいたします。

○荒井事務局長 それでは、お手元の資料2に沿いまして、説明させていただきます。 特許審査の迅速化につきましては、前回特許庁から滞貨一掃に向けた総合施策について、説明をいただくとともに、委員の方からは、目標設定や計画を立てて、それを検証しながら迅速化に取り組んでいくべきと言った御意見もいただきました。資料2は、それらを踏まえまして、特許審査を迅速化するための総合施策という形でとりまとめてものであります。
 1ページの最初の四角の中はとりまとめでございますが、「I 総合施策の必要性」。 1.技術革新の加速化と権利の早期確定の重要性」ということにつきましては、(1)の中で、経済のグローバル化や国際競争の中で非常に国際的な技術開発競争が激化しているということが書いてございまして、その次のパラグラフには、早期確定は重複研究の排除や、国内技術開発競争等の活性化等を通じ、研究開発投資の収益貢献度を拡大し、我が国企業の国際競争力の向上に資するということが書いてございます。
 (2)の方に、特許の審査の現状を見た場合には、審査未着手件数、いわゆる滞貨件数は年々増加し、現在50万件、特許審査の順番待ち期間は24か月に達しております。
 加えまして、審査請求期間の変更に伴いまして、「今後、滞貨はさらに約80万件まで拡大することが見込まれている」、こういう状況が書いてございます。
 2ページの「2.特許審査の順番待ち期間の計画的な短縮と総合施策の必要性」でございますか、特許審査の迅速化のためには、目標を立てて計画的に進めていくことが必要だということでございまして、第2パラグラフに、現在、日本の特許庁が特許審査の順番待ち期間を最終的にはゼロとするという、世界に類のない目標を掲げて、滞貨一掃に向けた努力をしているということは評価できるということが書いてございます。
 しかしながら、これを具体的にやっていくためには、中・長期的な目標を設定すること。毎年度の実施計画策定することが有効であること。
 手段として、適切な出願や審査請求に向けた取り組みをすること。特許庁その他の人的・物的体制が充実なことなどの基盤整備強化が必要だということが書いてございます。
 こういう認識の下に、3ページから特許審査を迅速化するための総合施策についての提言でございますが、4行目から「特許審査の迅速化を実効的に進めるため、以下の諸施策に総合的に取り組むべきであり、法律の手当が必要なものについては、特許審査迅速化法案(仮称)として2004年通常国会に提出すべきである」ということでございまして、1は「目標・計画の策定とその検証のための枠組みの構築」でございます。
 (1)特許審査については順番待ち期間を最終的にはゼロとすることを目指し、それをできるだけ短縮するための5年間の中期目標と10年間の長期目標とを推進計画において定めるとともに、経済産業省は、それらの目標を実現するための毎年度の実施計画を策定する。
 中・長期目標及び毎年度の実施計画においては、目標値のほか、特許法その他の制度の改善、特許庁その他の人的・物的体制の充実及び審査効率の向上、出願・審査請求に係る調査環境の整備、特許出願の適切な管理その他特許審査の迅速化のための具体的事項を定める。
 (2)経済産業省は、上記目標及び計画の達成状況について、少なくとも毎年1回、知的財産戦略本部に報告するとともに公表する。
 (3)知的財産戦略本部においては、上記報告について総合的かつ多面的な検証を行い、必要に応じ、政府内外の関係者に対する情報の提供や協力の要請その他必要な措置を講じる。
 ということでございます。
 4ページからは、以上の目標を実現するための各種施策でございますが、(1)は「より適切な出願や審査請求に向けた取組」でございます。
 A先行技術調査の徹底した実施に向けた措置でございます。
 ・特定指定調査機関の調査レポート添付による料金減額を通じて審査請求段階での先行技術調査にインセンティブを付与すること。
 ・特許公報等のインターネット化により、先行技術に係る情報提供を改善し、企業の先行技術査の環境を整備すること。
 ・特許電子図書館の高速化、企業の特許関連の情報提供などを通じ、企業の特許関連の情報提供などを行うこと。
 Bは「実用新案制度の魅力の向上」でございます。
 ・保護期間の延長等により、実用新案制度の魅力を向上させる等を掲げてございます。 Cは「企業経営者への協力要請」でございます。
 ・出願件数上位の企業の経営者に対しては、出願や審査請求を改善するよう協力をお願いしたらどうかということでございます。
 Dは「弁理士の貢献」でございます。
 ・特許制度における中小企業施策の広報活動に協力する。
 ・中小企業が行う先行技術調査に対する指導を行うなど、迅速・的確な特許権の獲得に協力する。
 「(2)審査処理の促進のための措置」でございますが、Aは特許審査官の確保でございまして、必要な審査官、及び任期付審査官の十分な確保を図ること。
 (2)はアウトソーシングの拡充でございまして、民間調査機関等の参入を促進することなど、アウトソーシングの拡充に向けた環境を整備すること。
 (3)は「特許審査迅速化に必要な基盤整備・強化のための措置」でございまして、内外への研修や人材育成機能の強化及び情報サービス機能の強化を図るべく、独立行政法人工業所有権総合情報館に必要な業務を追加し、弾力的な展開を図っていく。
 以上でございます。

○阿部会長 ありがとうございました。事務局から説明のありましたとりまとめ案は、審査の迅速化の目標を立てて、それを実現するための手段として各種の施策を総合的に講じていくということで、全体が資料2にありますように、総合施策についてということでまとめていただいたものでございます。おおむね妥当かなと思いますが、御意見、御質問でも結構ですので、お願いいたします。

○竹田委員 3ページに「法律の手当が必要なものについては、特許審査迅速化法案(仮称)として2004年度通常国会に提出すべきである」とありますが、4ページの2.が具体的な政策になると思いますが、この中には一見しただけでも、これは特許法の改正の必要性のあるもの。実用新案法の改正の必要があるとものというのがわかるものと、協力を要請するというような、特許行政のレベルの問題のものも、いろいろと含まれているわけですけれども、それを2004年の通常国会にどういう形で、例えばこの中からどんなものが法律事項に親しんで、特許審査迅速化法という法律案に盛り込まれるのか。その辺については具体的にどう考えているのかについて、御意見をお聞きしたいと思います。

○荒井事務局長 特許庁から説明させていただきます。

○高倉特許庁特許審査第一部調整課長 4ページの「目標を実現するための各種施策」のうち、法律改正が必要だろうと思われる事項について、若干御説明いたします。
 現在、産業構造審議会、知的財産政策部会の下で実用新案に関するワーキンググループ、あるいは今後の特許戦略に関するワーキンググループ、現在進行形でありますが、そこでの多数意見ということで御報告いたしますと、1つは「(1)A先行技術調査の徹底した実施に向けた措置」、これは法改正事項であります。現在、IPCC、工業所有権協力センターというところが指定調査機関となって、特許庁での審査のための先行技術調査を行っております。現在、これは特例法という略称で呼ばれております法律に基づいて、公益法人であることというのが指定調査機関であるための要件でありますが、これを公益法人改革の一環として、公益法人要件を外し、民間参入を促す。民間企業であっても、一定の秘密保持、中立性・客観性を備えた調査機関は特許庁のサーチ外注を受けることのできる調査機関となる。これは法改正事項であります。
 こうした指定調査機関には特許庁からのサーチ外注を請負うだけではなくて、出願人が審査請求をする際に、自分の出願について、その指定調査機関にサーチ・レポートをつくってもらいたいというニーズもあることを踏まえて、こうした指定調査機関は法律上の概念として、特定指定調査機関と仮称しておりますが、出願人の直接の依頼に基づいて、自分の出願についての先行技術調査をつくってもらう。これを添付して特許庁に審査請求をした場合には、料金を減免するということでありますから、これも法律事項ということであります。
 それから、特許公報等のインターネット化、インターネットを通じた発行でありますが、これも現在、DVDのような電子磁気記録媒体を通じて頒布しておりますが、これを電気通信回線を通じて行うこともできるようにしますので、ここも法律改正事項であります。このことによって、ユーザーにおける特許情報の利便性を更に高めるというのが政策的なねらいであります。
 そのほか、特許電子図書館、これは特許庁のホームページ上のIPDLと略称されております特許電子図書館ですが、このアクセスに若干時間がかかりますので、この高速化を行う。こうしたことは必ずしも法律事項ではなく、特許行政の一環としてやることができるものがかなり含まれていると思われます。なお、この点については、場合によっては法律事項もあるかもしれませんので、更に精査する予定であります。
 2番目、実用新案、これは明らかに法律の改正であります。現在、パブリック・コメントを求めているところでありますが、実用新案の保護期間を現在の6年から10年に拡充する。 あるいは一旦実用新案登録されたものに基づいて特許出願の方に移行する。こういった制度を許容する法改正をするべきであるという提言いただいているところであります。
 それから、3番目、企業経営者への協力要請、これは先ほど竹田委員から御指摘がありましたように協力の要請でありますので、特に法律改正なく行うことができるものです。
 それから、弁理士の貢献についても、その多くは法律改正がなくてもできるではないかと考えておりますが、産業構造審議会の戦略ワーキンググループの中で弁理士会を代表して、委員の方から幾つかの、弁理士としての迅速化に向けた役割という趣旨のご意見をいただいております。
 (2)特許審査官の確保については、法律事項というよりは、予算、機構、定員の問題ではないかと思っております。
 アウトソーシングの拡充、これは説明が先走ってしまったんですが、現在、指定調査機関は、公益法人であることとなっておりますが、冒頭申し上げたように、公益法人要件を削除するという方向で法改正を行う予定であります。
 (3)以上申し上げましたような事項を実現するための基盤整備というのがありますが、1点だけ申し上げておきますと、独立行政法人工業所有権総合情報館という組織が特許庁にあるわけですが、この情報館の機能を更に研修とか情報普及等について拡充するということであります。
 具体的には今後、指定調査機関が拡充することに伴って、指定調査機関に対する研修の協力、こういったことも新たな独立行政法人工業所有権総合情報館の役割として位置づける必要がありますので、ここは独立行政法人工業所有権総合情報館法という法律について、その役割に関する部分の法改正が必要ではないかと考えてございます。
 ちょっと時間が長くなりましたが以上です。

○竹田委員 今の御説明ですと、幾つかの法律にまたがった改正が必要だということになりますが、そういう幾つかの法律にまたがる改正の全体をもって特許審査迅速化法と名付けるという趣旨に理解してよろしゅうございますか。

○荒井事務局長 3ページ、4ページに書いてあるのを、厳密な意味などれが本当の法律事項か。それとどういう体系にしていくかというのをこれから法技術的に詰める必要がございまして、今の考えでは全体を一緒に改正してやっていく必要があるということで、ここでは全体を一緒にしたものを特許審査迅速化法(仮称)と呼んでおります。

○竹田委員 わかりました。

○阿部会長 ほかに御意見、御質問ありますか。

○吉野委員 私、前回欠席したものですから、議事録等は一応目を通しましたが、その中に出ていないことで質問をします。
 滞貨を早くゼロにしようという目標は大変結構だと思いますし、いろんなアイデアがたくさん出されるわけですが、非常に大きな動きの1つとして、産官学連携というのがあって、それが大変な勢いでこれからアウトプットを出してくるんじゃないか。地方へ行って、地方のそういう分野の動きをみていますと、猫もしゃくしも知財化というのを目指しているんです。
 したがいまして、出願の件数辺りがある時間の後、ものすごく出てくるんじゃないかと私は思うんですけれども、それを特許庁の担当の方々はどのくらいに見ておられるのか。ますます滞貨が増えるかもしれない影響があるんです。それをちょっとお聞きしたいんですが、どれくらいに見ておられるか。

○荒井事務局長 数字的なものはあとでコメントいただきますが、全体の流れは、今まで日本の場合は44万件出願していただいていて、大部分は会社の方なんです。大学の先生の場合には、個人で出される方は一部おられますが、大部分は企業の方と組んで出してこられる。大学として出してこられるのは、たしか年間数百件というオーダーで、44万件に比べたら本当にわずかだったんで、これが会社のように何万件までいくかの。それとも今アメリカでも大学の件数が6,000 件くらいなんです。ですから、44万件の問題と、こちらのオーダーがどうかというのは、補足説明してもらいます。
 今まで大学の先生、基本的な研究をされたりしていても、余りそれは特許にならなかった。それは本来なら基本特許のようなものが日本できちんと出てくると。それはいいことだと思っています。

○吉野委員 ある意味では評価の1つの要素にしようみたいなことになってくると、どどっという感じもないではないんです。したがって、数千件程度を見ておられるのか、あるいはもうちょっと。

○高倉調整課長 今の荒井事務局長の説明で大体尽きておりますが、一昨年の実績で出願人が大学またはTLOであるものが、約数百件であります。しかし、これは実はすべての大学発特許出願ではなくて、大学の先生が発明者になって、出願人は企業、例えばホンダとか松下に差し上げるというケースも実はたくさんあるわけで、この数というのは、特許の出願書類を見ただけでは直ちに把握はできません。発明者が大学の先生であるということは、特許公報からは必ずしもはっきりしておりませんので、把握できません。
 いずれにしても、出願人が大学またはTLOであるものが一昨年で、数百件。しかし、最近、非常に件数が伸びております。
 今後、大学知的財産本部が本格化し、法人帰属、法人管理ということになれば、従来発明者が大学の先生で、企業に特許を受ける権利を譲渡していたものが今後大学名義、TLO名義で出てくるでしょう。
 こういったところから見ますと、やはり数千件くらいは多分出てくるだろうと。アメリカが現に数千件近い出願が出てきていること等を考えますと、数千件から、いずれは1万件に近い数字も出てくるのではないかと思われます。こういった議論を総合科学技術会議における知的財産戦略専門調査会で行ったことがありまして、大体そんなものかなと思っております。
 いずれにしても、全体で40数万件あるわけですから、数百件が1万件に仮に増えれば、勿論、それなりに審査は忙しくなるわけですが、それを上回る産業政策上の効果があれば、国としては積極的に取り組むべきであって、特許庁としても、そういった出願については、早期審査の対象にする、あるいは料金減免を行う等によって、むしろいいものをどんどん出してくださいというのが基本的な姿勢であります。

○阿部会長 今の点は大学関係者の立場で見ますと、吉野委員がおっしゃるように、どんどん増えてくる条件が一方では確実にあるわけです。
 もう一つは、来年の4月から法人化されたときに、特許に関する費用の予算化というのはまだ極めてプアーなんです。大学が勝手に稼いできてという御意見もあるんですが、そのためにはいい特許を出さなきゃいけない。要するに、鶏が先か卵が先かという議論がありますが、文部科学省、経済産業省等でいろいろ施策を考えていただいていますので、ある程度それについて費用をカバーできるだろうと思いますが、今のところ飛躍的に増えるという費用の出どころがないんです。

○吉野委員 来年はまだね。

○阿部会長 それがブレーキ要素なんです。ですから、多分変わってくるとすると、数年後ではないかなという気がします。
 それから、今非常に業績のいいTLOはかなり特許を厳選していますので、そういうことで多分大学の知財本部も予算の関係で厳選をするとしますと、残った人たちが今までと同じように企業にお願いしたり、企業と連携をして特許を出すとすると、それは増えるような気がするんです。大学の先生のふところは痛まないですから、そこをどういうふうに位置づけていくかというのは、各大学の知財本部のポリシーにもなりますので、一般的に言えば相当増えていくだろうと思いますが、その読みがなかなか難しいところがあるんじゃないかと思います。

○吉野委員 何年後に数千件くらいの感じなんですかね。

○阿部会長 多分、そんなものでしょうね。今日の議論は、5年後辺りに議論するともっと違った議論をしなきゃいけないかもしれませんで、そこは弾力的にやっていく必要がある。重要な御指摘なんですけれども、なかなか読みにくいところがある。

○吉野委員 もうちょっと厳しくなるのかという感じはしているんです。

○荒井事務局長 件数は、大学の先生は改良特許というよりも基本特許かなということで、件数はそんなに増えない。しかし、難しいのは増えてくる。

○吉野委員 大学部と言っても、工学部などはかなり応用的なものは多いと思うんです。

○高林委員 私は早稲田大学で知的財産本部に関与したり、発明審査員をやったりしておりますけれども、今、会長からお話があったとおり、創立当時はかなりいっぱい出そうという傾向でしたけれども、最近は非常に厳選していこうという傾向でして、月々せいぜい10件程度の審査をやっております。したがって、出願件数が今後飛躍的に伸びていくという状況ではないのかなと、私のところはそう思っております。只今、ご指摘のありましたように費用的なこともありますので。

○吉野委員 力のあるところは厳選できるんです。地方にものすごくいっぱいあるわけだから、猫もしゃくしもそう言っているんです。だから、慣れない人たちが出してくるという部分もあるしね。

○阿部会長 1つはいろいろ議論があるように、いい特許をどうやって早くピックアップできるかということですね。
 それから、下坂先生おられますが、弁理士も日本中を見ると、ものすごく遍在していますね。

○下坂委員 弁護士の先生方と違って、工業とか産業の少ない地域というのがありまして、それを前提にしました場合、弁理士の偏在がなかなか直らないので、少し助力しながら知財の掘り起こしをして、弁理士がまんべんなくいきわたるようにしたいと、今、プランしているところでございます。

○阿部会長 今の吉野委員の御指摘は、戦略本部としても経年的にウォッチしていくべきものなので、施策を立てていただく必要があると思います。

○荒井事務局長 そうですね。大事な御指摘だと思います。

○阿部会長 それから、竹田委員の御質問に関連して申し上げますと、そもそもできるだけ立法化したいという考えがありましたね。法律か法律でないか。その辺は是非特許庁といろいろネゴシエーションしていただいて、この間の議論ですと、かなり精神的なものも、法律化したいという御希望、勿論ふさわしくないものもたくさんあると思います。私はその辺のことは素人でわかりませんが、その精神を生かすとすれば、是非、灰色の部分はできるだけ法律にしていただいて、法律に向かないものは勿論、別扱いになる。

○荒井事務局長 今の点、ちょっとだけコメントさせていただきます。これは委員の先生からも御指摘があって、日本のたまっている特許の待ち時間が長いというので、個別の審査は勿論、質は下げない。むしろ質を上げるような方針でやっていかなきゃいけないわけですが、とにかく待ち時間は短くして、技術開発もスピードアップしている訳ですので、そういう方向でやっていこうと。そのためには、特許庁も頑張ると同時に、企業の方、あるいは弁理士の先生の御協力とともに、政府全体でもいろいろ体制整備とか仕組みをつくったりやっていかなきゃいけないので、できるだけ国全体でそういうことに取り組むという意味で、ここにあります特許審査を迅速化するという意思統一、これは国会も含めてやったらどうかという気持ちでやっておりまして、今、会長から御指摘がありましたように、できるだけそういうことになるようにしたいと思います。
 一方、何を法律にするかというと、これはまた法制局とか法律の専門家の方がいろいろ御意見ございますので、今の会長の御指摘、よく念頭に置いて折衝に当たっていきたいと思います。

○久保利委員 今、事務局長おっしゃったとおり、法律事項としてなじまないものはしようがないかもしれませんけれども、そうなり得るものは、なるべく法律事項にしていただいた方がいいのではないか。特に今、いろんな分野で目標を定めて、その目標に到達しているかどうか検証をして、その検証する主体は第三者評価機関だというのは、大学も何もみんな含めて、そういう流れになっているわけです。
 そういう点からすると、そういう新しい体制をつくって、その検証体制なり何なりというもの、これを大事にしていくということからすると、今まで実はそれは法律事項でないと思われていたことも、法律事項として取り扱った方がいいという問題はたくさん出てくるんだろうと。そういうようなところも配慮をして、是非具体的立法に結び付けていただきたいというお願いでございます。

○阿部会長 ほかにいかがでしょうか。

○小島事務局次長 ただいまの久保利委員の御指摘について補足いたしますと、先ほど3ページで事務局長が御説明しました1.でございます。「目標・計画の策定とその検証のための枠組みの構築」ということで、先ほどございましたように法制的になじむもの、なじまないものいろいろございまして、ここで最初のパラグラフに書いてありますように、目標の設定、それを実現するための実施計画の策定、その達成状況を検証するための枠組みというものを、昨年成立しました、この本部の設置根拠にもなっております知的財産基本法の中の第3章に推進計画というのがございまして、その中で設定する。そしてそれを(2)にありますように、毎年1回知的財産戦略本部で報告する。それを本部において、総合的かつ多面的な検証を行うという形で、法律に基づいた目標の設定と検証のメカニズムを構築するということで、今、久保利委員がおっしゃられましたようなことを確立していこうというのがこの案でございます。

○阿部会長 これは文章がすっと入ってこないところがあるんですが、法律に書けないところは推進計画をリバイズするというふうなことになりますね。そこで、その作業は法律の作業と並行して行われることになるんでしょうか。

○荒井事務局長 作業自身は今の予定では、知財推進計画、これは毎年見直すようになっておりますので、今度の見直しのときに、法律にならないものについては、3ページに書いてあったメカニズムはきちんと推進計画に、法律に基づく推進計画に入れようという考えでございます。

○阿部会長 何かほかに御質問、御意見ございますでしょうか。
 そうしますと、幾つか御意見いただきましたが、吉野委員のおっしゃったことは、この文章化の中に、私はちょっと見て、うまくなじむのかどうかよくわからなかったんですけれども、入れていただいた方がいいかなと思ったんですけれども、どうですか。

○荒井事務局長 これは全く案ですが、入れるとすれば、例えば4ページの(1)のAのところに、大学との関係で、協力というかサポートというか、逆に言うと余り厳選じゃなくて、余り出過ぎないようにということですか。

○阿部会長 大学とうまくマッチした特許迅速化の体制をつくるというか、そういう趣旨のことになりますね。とういう文章がいいかわかりませんけれども、いかがですか。

○吉野委員 具体的な各種施策の4ページの中に企業との絡みが少し入っているんです。したがって、産学官の絡みみたいなものが多少欲しいかなという感じはしますね。

○荒井事務局長 産学官連携に対応したいろんな体制、早期審査制度とかあるから、そういうものでしょうか。

○高倉調整課長 そうですね。もともと全体のタイトルが特許の審査の迅速化に向けた総合施策ですから、吉野委員の御提案のうち、関係するとすれば、大学発の出願については、早期審査を一層PRをし、充実もしていくという書き方であればどこかに入れられるかもしれません。

○吉野委員 法律に関係することはないと思うんです。だから、背景か、あるいは何か具体的にそこにちょっと注目をするというだけの話だと思います。

○高倉調整課長 そうであれば1又は2ページのところに入るかもしれませんね。

○阿部会長 そこは考えさせていただくことにいたしましょうか。
 ほかに何かございますでしょうか。
 それでは、もしよろしければ、今、吉野委員からいただきました点については、事務局で案をつくっていただいて、また、吉野委員ともすり合わせをしていただくということを含めて、会長に一任していただくということでお願いしたいと思います。
 そういう前提の上で、先ほどありましたように、できるだけ法律の中に入れていただくに知恵を出していただくということも含めて、この案でとりまとめをさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部会長 それでは、そうさせていただきたいと思います。資料2の扱いは、そのような形で、それでは御承認いただいたものとさせていただきます。
 以上、本日の議題、宿題につきまして御協力をいただきまして、時間より大分早く予定の議題は終わりましたけれども、若干の補足をさせていただきたいと思います。
 補足と言うか確認でありますが、これまで4回にわたって御議論いただきました知財高裁の創設、それから4回はありませんでしたけれども、いろいろ御審議いただきました特許審査の迅速化するための総合施策につきましては、とりまとめた結果を後日、今月中に行われであろう予定の知財戦略本部会合に報告をさせていただきたいと思います。
 とりまとめに関して、これまで御活発な御議論をいただきましたことについて、会長から御礼を申し上げますとともに、まだ法律ということで、いろいろ仕事が残っておりますので、あるいはいろいろ御助言をいただくことがあるかもしれませんので、その節はよろしくお願いしたいと思います。
 それから、来年の次回以降ですが、既に前回アナウンスさせていただきましたように、模倣品・海賊版対策の検討に入りたいと考えております。
 この問題は、検討範囲が非常に多岐にわたることもありますので、議論をスムーズに動かすためにも、事前にパブリック・コメントの手続を行いまして、幅広く各界、国民の皆様の御意見を伺いたいと考えております。
 それらも参考にして、当専門調査会で御議論をいただければいかがかと考えておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと思います。
 また、模倣品・海賊版対策の検討に関しては、今までと同じように参考人に御意見を伺うことも考えておりますので、詳細が決まりましたら、事務局より追って御連絡を申し上げます。そういうことで進めさせていただきたいと思いますが、何か御質問等ございましたら、よろしゅうございますか。
 それでは、御協力いただきまして、今日は早目に閉会をさせていただきたいと思います。次回は2月18日水曜日午後3時から、本日と同じ場所で開催をいたします。
 本日は御多忙中のところありがとうございました。