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知的財産による競争力強化専門調査会
ライフサイエンス分野プロジェクトチーム会合(第1回)
議事要旨

日 時 2007年9月5日(水)16:00〜18:00
場 所 知的財産戦略推進事務局会議室
出席者 長岡委員(主査)、石川委員、田島委員、辻村委員、前田委員
(事務局)松村次長、山本参事官、平岩参事官

ライフサイエンス分野における知的財産に係る課題及びその知的財産戦略の在り方について議論。各委員の意見の概要は以下のとおり。

【ライフサイエンス分野の特徴】
長期間の研究と巨額の投資が必要。ごく一部しか商品化されない。
低分子の医薬品の開発が21世紀になって減少している。
近年は、抗体医薬、たんぱく質医薬、アンチセンス、遺伝子治療などバイオ医薬品の開発が非常に増加。
【パテントフロンティア】
パテントフロンティアは非常に重要。日本は、バイオ産業の将来をよく見据えて、欧米がやっていないところを狙う必要がある。
日本はシステム系が非常に得意。ヒトゲノムのパテントをクリアは困難。ヒト以外の食品、動物、バクテリア、ウイルスが参入しやすい。
公的資金を使ってできた成果物を利用することが重要。
公的資金を適切に配分するためには、権威に頼らない技術評価手法を作り出すことが必要。
発酵技術の物の生産への応用、糖鎖技術の診断・治療方面への応用、糖鎖技術の食品・材料分野への応用等、異業種分野に進展していくということが不足。
【産学連携等】
論文をそのまま特許出願すると、権利範囲の狭い特許になってしまい、独占できないので企業が事業化しにくい等の問題がある。論文を基本特許に育てる人材が必要。プレマーケティング、特許マップを用いて研究の指針としての活用も有効。「特許は数ではない」という意識・風潮が重要。
ライフサイエンス分野で特許出願が増加したが、十分な応用研究、十分な基礎研究ということではなくて断片的な研究内容の特許出願も多い。この場合、改良発明の取得を困難にする場合や、第三者の参入障壁となる広い範囲の権利取得が困難になるなど、場合によっては将来の産業化を阻害する特許になってしまう。
研究者の論文と特許のプライオリティ確保の両立には、とくに優先権主張期間を活用した改良発明を含めた特許の出願を行う場合に、アメリカ的なグレースピリオドが三極ハーモナイゼーションして導入されることが必要。このような制度は、重要な基礎研究であり、かつ産業の要請があるようなものについて望まれる。
大学発ベンチャー企業が1,500社。この中にはよい種があるので、精査していいものを送り出していくということが重要。
基礎研究と応用研究の間のシーズとニーズのマッチ、トランスレーショナル・リサーチの促進がなお一層必要。
基礎研究の充実、研究マネジメント能力の担保をしていく必要がある。
知財本部・TLOは、特許の取得・売買等だけではなく、大学の研究自体の充実化を主たる目標として、共同研究、受託研究、寄附講座など企業との連携、競争的資金の獲得の支援、知的財産の目利き人材の養成等の活動もすべき。
基本特許の取得のためには、応用を見据えた研究が必要。ただし度が過ぎると、イノベーティブな研究ができない。大学が独立行政法人になって、基礎的研究に割合を割けていないという印象。企業としても自前主義に陥っている面がある。
大学における研究の評価として、資金獲得で評価をされる面もあり、大学の企業化のような面がある。企業は大学への研究委託、共同研究として、非常に答えが出やすい研究テーマを選ぶ傾向。大学の研究者の評価方法は根底の課題。
【海外出願】
JSTの大学に対する外国出願の費用の支援の制度が非常に有効。来年以降も助成を継続すべき。ライセンス先がある等の場合が優先的に合格するが、基本特許になるだろう特許こそ救うべきで、JSTの支援に基本特許を生み出す政策をぜひ盛り込むべき。
医薬の分野の外国出願国が欧米企業に比較して相対的に日本が少ないという理由の一つは、特に非英語圏の翻訳費用の問題あり。大学も含め翻訳費用について考えるべき。
【予見性】
アメリカでは裁判に行かないとわからない。三極での予見可能性の向上は重要。三極特許庁の比較研究は大変参考になったので、今後とも推進を期待。
【存続期間の延長】
遺伝子組み換え植物の特許権の存続期間の延長を検討すべき。
特許期間延長は、許認可のための手続として実施できなかった期間について特許期間を回復すべきだという基本的な考え方に基づく。遺伝子組み換え植物に拡大の余地があるのではないか。
期間延長制度の欧米との相違の問題は、先発メーカーの医薬の試験データを保護することにより研究開発投資・回収の機能がある医薬の再審査制度とセットで総合的に考えていくべき。
DDS、再生医療等に延長の範囲を広げるべき。
【先端医療技術の保護】
前回の審査基準の改訂は一歩前進した。しかし、副作用を軽減したものは基本的に用途が拡大したという見方をしていないので、特許が取れない。
医師の医療行為に対する特許権の効力範囲の例外規定について法制化をすべき。その上で、先端医療について、必要に応じた拡大をすべき。
体から取り出した物の措置方法等については特許法の対象になるが、本来、医療技術は体から取り出して戻すところまでが全部セットで保護されることが望ましい。
増殖因子や遺伝子等の処置に使うものが欧米で既に特許を取られているので、応用特許の取得を可能として対抗するためにも、保護を拡大していくべき。
医師の医療行為には特許権の効力が及ばないようにすべき。
【研究成果の利用促進】
リサーチツールのライセンス料の相場観の育成が重要。そうすれば、裁定までいかなくても、公的な仲裁機関でも対応が可能。統合データベースをつくって事例集を集積することを是非促進すべき。円滑化に関するリサーチツールの指針は、外国企業との間では指針どおりにいかないので、一定の強制力、拘束力が必要。基礎的な発明については広い権利を与えた上でうまく活用される、権利者と利用者との関係がうまく図られる仕組みをつくった上で権利が広がっていくことが本来必要。
遺伝子の基礎研究は病気の診断、新薬開発等医療の分野において極めて大切な状況。遺伝子はスクリーニング時のふるいとして代替手段がなく、独占は研究活動阻害の問題を生じる。
国レベルで統合データベースを作成することが重要。また、大学等様々な場所で広報活動、説明会等で周知徹底を図ることが重要。データベースがあれば、ライセンス料が高いのか低いのかの判断の基準となる。
相場観の熟成が重要。非常に重要な措置としてデータベースをつくることを確実に進めることが重要。リサーチツールのライセンスの考え方は職務発明の問題と類似する点があり、研究開発の失敗の可能性も考慮して事前に交渉すれば、高額にならない場合が多いのではないか。