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知的財産による競争力強化専門調査会
ナノテクノロジー・材料分野プロジェクトチーム会合(第1回)
議事要旨

日 時 2007年9月3日(月)16:00〜18:00
場 所 知的財産戦略推進事務局会議室
出席者 渡部委員(主査)、河内委員、宍戸委員、中冨委員、平本委員
(事務局)松村次長、山本参事官、平岩参事官

ナノテクノロジー・材料分野における知的財産に係る課題及びその知的財産戦略の在り方について議論。委員から主な意見の概要は以下のとおり。

【業種の特性】
化学産業は、素材、部材、ナノも含めて材料を取り扱っているが、同業者同士で共同開発できず、また同じ材料を売るのはビジネスにならない。
企業としては大学の基礎研究への期待が大きい。企業の役割として大学の基礎研究をいかにニーズにつなげていくかという点と、素材、部材を如何に出口産業との間で共同しつつ、最終製品に仕上げていくかという点が重要。
基礎研究から材料を開発する期間、また材料を開発してからその材料を用途につなげて仕上げるまでの期間が非常に長い。したがって、最初の発見段階で取得した基本特許が、実用化の段階では権利が終了していることもあり得る。
マーケットで製品が流通する段階において特許が切れている状況の下、如何に新たな知財戦略を立てて実行するかが重要。
ナノテクの裾野を拡大するため、「ナノテクノロジービジネス推進協議会」を2003年10月に設立しているが、後々の標準化等で非常に役立っている。
明確な「出口」があって、そこに向けて一直線で事業化できるものではなくて、試行錯誤しながらやるという、シーズをベースに事業をスタートしている。このため、シーズとニーズをマッチングできるかが判らないところがある。
物質基本特許から応用特許まで関係することから、特許期間の延長やライフサイクルのマネジメントなどを考慮する必要。
この分野は産業として非常に大きく、また技術が非常に急速に進歩。ただし、簡単には技術を変えられるものではなく、良い研究をしても、実用化には非常に時間がかかる。
製品開発等を成功させるためにはコスト分散等の観点からも企業等との連携・提携が必要。そのためには、特許やノウハウが非常に重要になってくるが、それを確実に守っていくことが必要。
基本特許も大事ではあるが、実用化に何十年も要することを考慮すると、川下に出てくる中間領域の知財が知財ビジネス上は重要な場合が多い。
【技術の特性】
ナノの領域において、もうこれ以上小さくならない、限界であるという意味において、微細化限界ということがよく言われている。他方、技術が大きく変わる可能性もあり、基礎研究も非常に重要とされる。このような二面性を持つ分野であるが、特に後者が国策として重点化され、基礎研究とともに基本特許取得の重要性が謳われている。
新技術が従来技術を完全に駆逐するということは、もう起こらないだろうと思われるが、技術が融合していく可能性が高くなる。そのような融合が起こる分野は知財の宝庫。基本特許+応用特許+用途特許の組み合わせで様々なバリエーションが考えられる。
本分野は、比較的非連続な変化、新材料の発見とか新しいメカニズムを利用することなどを通じ、イノベーションに対して比較的大きな貢献。累積的な発展に比較して非連続な変化の方が知財の価値を考えやすい。
産学にしても、基礎研究から実用化にしても「中間」という概念がしばしば出現。中間領域のところで用途開発を繰り返すというようなことが行われているが、ビジネス的に余り進歩がないように見えるため資金に乏しい。こういう研究開発は、最初、何か発見するとそこの前後には資金が入って、しばらく乏しい状態があって、本当に商品開発になるときにまた資金が入ってくる。その真ん中をどうやって乗り切るかというのが共通の課題。
欧米ではかなり、ナノバイオ(生態系に影響を及ぼすナノテクノロジー)の研究が盛んに実施。本PTにおいても議論の対象とすべき。
【産学連携】
大学における基礎研究の活用方策は、将来においても、競争力の源泉となる。
大学知財本部やTLOなどの組織があるが、技術開発の連携から成果物としての知的財産の取扱いまでワンストップで実施できる体制が最も機能的。
独創的、高リスク、長い研究開発期間が必要なものについては、産学連携して研究するべきで、資金的な面での支援も必要。
True Nanoや革新的材料の知財を1企業によって囲い込むと、本来、非常に幅広い用途に展開できる可能性があるものを絞り込んでしまう可能性がある。いかに、用途や応用を考慮して特許を取得していくかが重要。非常に高度な知財戦略が立てられるような能力が必要。
本分野のような萌芽的技術には高度な知財戦略が必要。大学の知財能力向上のため、専門的に知的財産を扱うスタッフの整備等、組織強化が必要。
大学関係者と話している限りでは、特許出願自体が目的化しており、その後のフォローがなく、戦略性が感じられない。今後は出願後の管理もしっかりと行うべき。
ここ数年、大学では出口志向の研究が非常に多くなっているような印象を受ける。もっと基本的な基礎研究に注力して欲しい。また、競争的資金等、国はそれをもっとサポートしていくべき。
基本特許が重要であり、当然大学の位置づけも重要。したがって、産学連携が非常に重要になってくる。
研究者が行くような各種フォーラムにおいて、ビジネス関係者や異業種の人が立ち会うことはまずない。両者が接触を持つような機会を広く持てるような場所を設定すべき。
産学連携展示会はあるが企業から人があまり来ない。マーケットサイドが興味を持つようなプレゼンになっていない可能性がある。
本分野は大学との連携及び異業種との連携というのが非常に重要な分野である。
企業は知財を前提に大学との共同研究している。基礎研究的なところ以降の知財は企業にある程度任せても良いのではないか。
技術移転の段階で大学と産業界との間に価値観のギャップ(不実施補償、出願費用問題等)があると聞く。産業の特色を踏まえた形でこの問題を検討する必要がある。
特許権の所有権は大学と企業との共有でも構わない。しかしながら、実施権については少なくとも一定期間、独占的に与えてもらわないと共同研究に出資するのは難しい。当然、一定期間経過後に実施がなされていなければ他へのライセンスをしても構わない。
企業と基礎研究者を仲介して技術開発を企画実行するプロデューサーが不足。スケールメリットを活かせるよう中小TLOの統合も図りつつ、基礎研究と実用化を結びつける人材が必要。
産学官連携大型プロジェクトの成果に関する知財権の混乱を事前に防止するため、知財戦略のモデルを示すことが必要。中間機能的なところの知財マネジメントを上手にやる機能が必要。
【標準化活動】
材料分野に関しても、最近、特許権との関係で国際標準化活動の競争が発生。もっと重視することが必要。
材料が強いのであれば、標準化をセットにしてやっていくべき。
【その他】
グローバル化が謳われているが、そのためにはもっともっと頭脳(アイデア)を利用する機会が必要。人、情報、モノ、金の流動化が不足しているのではないか。
日本の現行「バイドール法」において、何れかの企業に所属した特許権が、例えば中国企業に買収されたときにそのまま流出してしまうという指摘。「バイドール法」については、アメリカの「バイドール法」は国内産業保護の条項だとか中小企業優遇の条項などが存在するが日本の場合は殆ど無制約。
海外での知財確保も重要。
本分野においても世界特許システムはありがたい。
マイクロカプセル製剤について、剤型に特徴があるにも拘わらず、これについて特許権の存続期間延長が認められないとした判決例がある。
知財とノウハウの切り分け、用途発明の保護、機能クレーム、数値限定発明による保護の可能性の明確化が必要。これらについての外国での動向を踏まえた海外出願戦略の構築が必要。
適正な実施態様の記載についての明確化が必要。
標準化に関して、業界のキーマンを育てるなど人材育成が課題。