知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第4回)



  1. 日時 : 平成23年1月14日(金)15:00〜17:00
  2. 場所 : 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【担当大臣政務官】 和田隆志 内閣府大臣政務官
    【委 員】 妹尾会長、相澤(英)委員、相澤(益)委員、荒井委員、出雲委員、
    大渕委員、上條委員、岸委員、佐々木委員、佐藤委員、高柳委員、
    中村委員、西山委員、福島委員、山本委員、渡部委員
    【事務局】 近藤事務局長、上田次長、芝田次長、安藤参事官、原参事官、
    山本企画官
  4. 議事 :
    (1)開  会
    (2)産学官共創力の強化について
    (3)知的財産戦略に関する論点整理について(知的財産による競争力強化・国際標準化関連)
    (4)閉  会


○妹尾会長
 それでは、定刻になりました。皆様もお集まりいただいたようですので始めたいと思います。
 皆さん、こんにちは。
 お疲れのようで大変ですが、ただいまから「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会」の第4回会合を開催いたします。本日は、ご多忙のところご参集いただき、ありがとうございます。
 今日は、まず前回会合において再度ヒアリングを行うこととなった「知的財産推進計画2010」のうちの「戦略V 産学官共創力の強化」、これに関する取組の進捗状況について、担当府省からヒアリングを行うことになっております。
 次に、「知的財産推進計画2011」に向けた議論を行うと、こういう予定になっております。
 本日は、江幡委員、小川委員、久夛良木委員、迫本委員、野元委員からご欠席の連絡をいただいております。
 それでは、まず、最初に内閣府の和田大臣政務官にごあいさつを賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。

○和田大臣政務官
 皆様、こんにちは。
 政務官の和田でございます。昨年末から皆様方に鋭意ご議論いただいているところでございますが、いよいよ本日から「知的財産推進計画2011」に向けた本格的な議論を行っていただくことになります。どうぞよろしくお願いいたします。
 この分野、アジア各国もしのぎを削っていろんなものを、要するに世界にプレゼンテーションしていこうとしている時だけに、我が国がそれに負けず劣らずしっかりと国際競争力を維持して、むしろアジアを引っ張っていけるようにということで考えているものでございます。どうぞ皆様方、皆様方のご意見で日本の議論を引っ張っていっていただければと思います。
 それから、先ほどご関心事項であるからご報告されたしとご意向をいただきましたので申し上げます。皆様方もニュースをごらんになったとおりでございますが、本日、ただいまちょうど内閣の改造が行われているところでございます。この科学技術分野につきましては、今日まで私の上司として引っ張ってきてくださった海江田大臣が、今回経済産業大臣になられました。そのため、この分野を引き継いで引っ張っていただく大臣は、玄葉国家戦略担当大臣が国家戦略分野を兼務ということで取り組んでいただくことになりました。引き続き強力な布陣の中でのことでございますので、皆様方、ぜひ玄葉大臣に向けた強いメッセージを発していただければと思っています。
 また、この知的財産推進計画2011を立てていくに当たりまして、本当に民間の皆様方のそれぞれの分野での状況をいろいろ教えていただきながら、民間の皆様方と手を携えてやっていかなければいけない分野だということを、海江田大臣とも打ち合わせてきているところでありまして、きょう以降、玄葉大臣にもしっかりとその旨ご報告しながらご指示を仰いでいこうと思っております。
 どうぞ、皆様方、これからのご議論をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 それでは、早速議題に入りたいと思います。
 まず、第1番目は「戦略V 産学官共創力の強化」についてのヒアリングということで始めたいと思いますが、議題に入る前に、まず事務局からきょうの資料の確認をお願いしたいと思います。
 それでは、原参事官、よろしくお願いいたします。

○原参事官
 それでは、お手元の議事次第の下に資料を並べてございますけれども、ご確認いただければと思います。
 資料1でございますけれども、「産学連携の更なる機能強化に向けて」ということで、文科省・経産省連名でご提出いただいた、この後プレゼンでご使用いただく資料でございます。
 それから、資料2、その次の議題で議論をいただきます「知的財産戦略に関する論点整理」という事務局にて準備いたしましたペーパーでございます。
 それから、資料3は今後のスケジュールについてまとめたものでございます。
 その後、参考資料1といたしまして「知的財産推進計画2010」項目別進捗状況ということでございますけれども、最初のページに、本日ヒアリングをさせていただく関連項目、これを掲載しているところでございます。
 それから、その下の参考資料2は、前回第3回の会合において委員の方からいただきました主な意見をまとめたものでございます。
 それから、最後になります。こちらは佐藤委員からご指示がございまして、メインテーブルのみになりますけれども、1月12日付の日刊工業新聞の記事、及びその解説資料等を配付させていただいております。
 資料の不足等はございませんでしょうか。
 それでは、事務局からは以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 それでは、担当府省からのヒアリングを進めていきたいと思います。
 まず、前回の専門調査会でも議論しました「戦略V 産学官共創力の強化」に関する施策について、担当府省からご説明をいただくということです。
 その後の議論につきましては、次の議題であります「知的財産戦略に関する論点整理」のところで、関連する部分とあわせて議論していただいて効率的に行いたいと思います。ですので、関連するものがありましたら委員の先生方からご議論をいただければと思います。
 ヒアリングに関しましては、担当府省からお二人お見えいただいております。文部科学省研究環境・産業連携課の池田課長、ありがとうございます。
 それから、経済産業省大学連携推進課の進藤課長には何度もご足労いただきまして、ありがとうございます。
 では、皆さん、担当府省の方にも所管の枠を超えて議論に参加していただければと思います。
 それでは、参考資料1の表紙に抜き出してあります戦略Vの工程表をちょっとごらんいただきますと、工程表の18に対応する「既存の大学知財本部・TLOの再編・強化」に関して、文部科学省、経済産業省からご説明をお願いするわけですが、資料は珍しく連名でつくっていただいており、連携が進んでいると理解しております。
 それでは、ご説明をお願いいたしたいと思います。よろしくどうぞ。

○池田課長
 それでは、資料1に基づいてご説明させていただきます。委員長からご紹介いただきましたように、私ども文部科学省の研究環境・産業連携課と経済産業省大学連携推進課と相談の上、共同して提出をさせていただいております。
 まず、1ページをごらんいただきますと、全体の構成でございますけれども、前半が大学の知財本部やTLOにおいて整理すべき課題ということでまとめております。それから後半、今後の方向性についてご説明をさせていただきたいと思います。
 めくっていただきまして、2ページをごらんいただければと思います。
 まず、前回の委員会でご指摘をいただいたご意見をまとめさせていただきました。大きく分けて3点あろうかと思います。
 1つ目は、知財本部とTLOの活動の評価のあり方をどうしていったらいいかということで、適切な評価指標を定めることが必要であるというご意見をいただいていたかと思います。
 2つ目が、知財本部やTLOの整理・統合のあり方をどうしたらいいか、どういう状態に両省として持っていきたいと考えているのか、あるいはどう再編していくのかということでご意見をいただいていたかと思います。
 それから、3点目で両省の連携のあり方についてもいろいろご意見をいただいておりますが、私どもとしては、従来以上に連携を深めてまいりたいと思っており、そういった3つの観点を中心にご説明をさせていただきます。
 もう一枚おめくりいただいて、3ページをごらんください。
 今後の施策の方向性についてでございまして、上の青い枠のところはこれまでの経過が書いてございますが、産学官連携につきましては、ここ十数年の間に、特許の出願件数などの数字の面では一定の成果が上がってきたかと考えております。ただ、成果となる大きな収益になるような特許が少なかったり、アメリカと比べますと実用段階での実績がまだまだ不十分だということで、質的な面では改善の余地がまだ多々あろうかと考えております。
 そうしたことを踏まえて、両省としては各機関が産学連携活動を持続可能な形で自立して実施できるということをまず当面の目標としてやっておりますが、当然ながらその大前提として、この知的財産推進計画にも位置づけていただいておりますけれども、大目標があるわけでございまして、我が国の産業の国際競争力の強化と、そのためにイノベーションを持続的に創出していくということで、そのための手段として産学連携があり、産学連携を持続的に維持していくために各機関の自立化ということを申し上げていると。こういった目標に向かって両省連携して取り組んでいきたいと考えております。
 具体的には下にございますが、まだこれから両省で検討して詰めていく必要があろうかと思いますが、大きく分けると3点ここで挙げております。
 1つは、大学の知財本部やTLOの活動、あるいは効果の見える化ということであろうと思っております。これは、前回ご指摘もいただきましたけれども、産学連携活動をどう評価していくのか。当然ながら、これまでは出願件数やライセンス収入という面に注目が集まっておりましたけれども、それは一面であろうと思いますので、より全体的を見据えながら適切な評価の指標を考えていく必要があろうかと考えております。
 それから、2つ目は知財本部とTLOの機能強化ということでございますが、これは地域特性や分野の特性もございますけれども、そうしたことも踏まえながら、広域化や専門化、あるいは機能強化ということを考えるとともに、その前提として産学官の関係者の対話の場という、これを築いていく必要もあろうかと思います。
 3点目でございますけれども、評価に見合った支援の重点化ということで、めり張りをつけた支援によって整理・統合していく必要もあろうかと考えております。具体的には、最初に申し上げた評価指標も踏まえながら重点的な支援をしていく必要があると。例えば、ここに挙げておりますのは、国内の他機関の模範となるような取り組みを行っている機関もそうですけれども、仮に経営の収支的に赤字であったとしても、地域における存在価値、必要性、こういうものが非常に大きいところにはきちんとそれを評価し、支援していく必要があるのではないかと思います。
 こういった観点を踏まえて、両省共同で審査をしてヒアリングをしてということを考えてございます。
 もう一枚おめくりいただいて、今申し上げたようなことを図にしたものが4ページでございますけれども、全体の政策目標は、右のピンクのところにございますように、各機関が自立して実施できるようにするということですが、これは当然ながら、我が国の産業の国際競争力の強化という大目的のためにこういう政策目標を掲げておりまして、両省が協力して行うということであり、一番左端にございますように、活動や効果の見える化を図っていくと。これは後で詳しく説明いたしますが、さまざまな観点の指標を考える必要があろうかと思います。この指標に基づいた評価の結果、大学の知財本部やTLOのあり方としては、1つは対策2というところにございますが、機能強化ということがあろうかと思います。地域特性や分野にも配慮しつつ、知財本部自体を強化したり、あるいはTLOの広域化ですとか、専門化ということがあろうかと思います。
 それから、対策3としては整理統合の促進でございますが、その実情に合ったような形で、あるところは機関の内部化ということも考えられましょうし、別のところでは再編・統合ということもあろうかと思っております。
 もう一枚おめくりいただきますと、今、対策1のところで若干触れました指標についてでございますが、左側のところに挙げておりますのが、これは現在の主な評価指標であろうかと思いますが、今後これらに加えて右側にある、特に赤い字で書いてあるような面での評価指標というのを、きちっとこれを確立していく必要があろうかと思います。具体的には、例えば特許などの成果で上がってこなくとも、ある共同研究から派生的に次の研究につながっていったりすることもあろうかと思いますし、ライセンス関係でも、ここ赤い字で挙げてございますけれども、高額ライセンスであるとか、あるいは1つの出願当たりのライセンス件数であるとか、いろいろな観点があろうかと思います。それから、社会や地域への投資効果ですとか、雇用創出効果がどのぐらいかと、こういったことも考えていく必要がございます。
 それから、下に2つございますけれども、学内への貢献とか波及という、この辺はなかなか、どう分析していくかというのは難しいかもしれませんが、次に続く研究にどう波及していったか、こういう誘引度のようなものも必要かと思いますし、それから企業の側にとっての満足度、顧客満足度的な指標というのも考えていかなければならないと思っております。
 以上が今後の対策でございますが、その後、参考で2つ資料をつけてございますが、これは山本社長のご指摘をもとに、財務データ等から分析したものでございます。例えば、人件費と特許経費に占めるライセンス収入の割合ですとか、ここに書いてあるような形で分析するとこういった形になりますが、やはり実態としては黒字というところは一握り程度でございますし、アメリカの例を見ても、なかなかすべてが黒字になるということは現実的ではないということもございますので、先ほど申し上げたような、地域にとっての必要性ですとか、あるいは本当に活動の実績が認められる機関と、こういうところについて支援していかなければならないと思っております。
 もう一ページめくっていただきますと、7ページでございますが、今申し上げたような地域特性も踏まえた両省による支援というのを考えていく際に、その前提となる現状を分析したものでございます。青い丸が、これは私どもの自立化促進プログラムで支援している67機関、それから赤い丸が、経済産業省と連携して承認・認定したTLOが全部で50機関ございます。
 あとの資料は、参考までに、これまでの現状と、それからこれまでの経過をおつけしておりますので、参考にしていただければと思います。

○進藤課長
 ご説明は、今ので基本的には尽きておりまして、今回、本当に両省で一緒の資料をつくらせていただきましたけれども、念のため、幾つかあえて補足させていただきますと、私ども、例えばTLOや知財本部の整理・統合と書いてある部分がございますけれども、無理やり整理しろとか、無理やり統合しろということでは必ずしもなくて、今、池田のほうが申し上げたとおり、我が国全体の競争力の強化、そのためのきちっとした産学連携活動という観点から、どういう指標がきちんと活動を評価できるかということを考えまして、それに見合った形で支援を、メリハリをつけてやっていくという形で、自然に進むものは進んでいくというような考え方でとりあえず現在のところおるということが1点でございます。
 ただ、今までの評価指標というのはかなり限定的なものでありましたので、実際には一生懸命それをやっていただいたとしても、本当の産学連携の効果が出ていたかどうかわからないねというふうに皆様からもご指摘をいただいておりますので、5ページにありますとおり、検討すべき評価指標というのをざっと洗い出してみたということでございます。もちろん、これは確定しているというわけではありませんで、これから実際にデータがとれるのかとかいうようなことも含めて両省でも相談し、また関係者とも相談してまいりたいというふうに思っております。例えば、6ページにデータがございますけれども、これはたまたま今私どもにとってアベーラブルなデータでちょっと割り算してみましたみたいなものなわけですけども、実際には本来特許が一つできたものが、実際にライセンスされて事業化に進んでいった。例えば時系列でだんだんずれてきたりするわけですし、そういうものをちゃんとそれに合わせて把握すべきかとか、名寄せすべきかとか、いろんなやり方が実際にはあろうと思いますので、現時点では数字自体もしっかりしたものではありませんし、きちんとデータがとれるかということも含めて、また検討してまいりたいと思っております。
 それから、7ページは前回とにかくTLOと知財本部が一緒になっているマップがないのかということでございましたので、余り十分ではないかもしれませんけれども、まずはファーストステップとしてつくらせていただいたということでございます。
 補足としては以上でございます。ありがとうございました。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 それでは、以上のご説明に基づいて議論を行いますが、その前に事務局のほうから資料2の「知的財産戦略に関する論点整理」のうち今のお話に関連する部分のご説明をちょっと受けておいたほうがよいと思います。産学官共創力の強化に関する部分ですので、資料2の8ページ、9ページだと思います。ここと関連してきますので、これをまず伺った上で議論に入りたいと思います。
 じゃ、原参事官のほうから8ページ、9ページの説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○原参事官
 それでは、資料2の8ページをごらんいただきたいと思います。
 こちらの資料でございますが、大学知財本部やTLOの再編・強化を図るにはどのようなことが必要かという観点でつくったものでございます。
 大学等の産学連携活動の状況の欄にもございますけれども、まずは産学連携活動を適切に評価するということが先決ではないかということを書いてございます。この論点については、今ほどの資料1の中でも触れていただいておるところでございますので、説明は簡単にさせていただきますけれども、特許出願件数、ライセンス件数、それからライセンス収入等の既存のシンプルな指標だけでは各大学の産学連携活動の実効性ですとか、あるいは事業化への貢献等を適切に評価できないのではないかという問題意識がございます。
 右下には、山本委員からもご提案をいただいております新たな評価指標の例というものを示しておりますけれども、先ほどのご説明にもありましたように、まず産学連携活動の効果、それから効率といったものを適切に評価することが重要でありまして、その評価に向けた指標をしっかりと定める必要があるのではないかと、このように整理しているところでございます。
 それでは、1枚おめくりいただきまして9ページでございますが、産学連携においてどのようにして知的財産マネジメントを強化していけばよいのかという観点でございます。
 上半分の点線の枠内に、2008年に国立大学等の研究者の方にアンケートを行った結果というものを抽出してございますけれども、研究の初期段階から企業等を巻き込んだ特許の出願戦略、あるいは事業化戦略を構築できる体制づくりですとか、国外との産学連携を推進する体制、制度、こういったものを整理する必要があるのではないかという指摘がありますことから、研究の初期段階からあるべき知的財産戦略が欠如しているのではないか、あるいは国際的な共同研究や知的財産のライセンスを推進する体制が十分ではないといった課題が浮かび上がってまいります。
 左下でございますけれども、これは2009年に国際特許出願PCTを利用して行った出願について、国別の特許出願に占める大学が貢献している割合を日米で比較しておりますけれども、米国では10%以上ということでございますけれども、我が国では一つ桁が落ちまして1%程度という状況にあることがわかります。右下のグラフを見ましても、ここ二、三年大学からの外国に対する特許の出願件数のみではなく、全出願件数に占める外国出願の割合というものも低下するという傾向にあるようでございます。
 こうした点を踏まえまして、産学連携における知的財産マネジメントをしっかりと行うための体制整備、それからグローバルな事業化も視野に入れた外国特許出願をしっかりと支援していくと、こういったことを取り組みの方向性として示しているところでございます。
 簡単でございますが、事務局からは以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 それでは、担当府省のほうからご説明のあった施策及び今ご説明のあった部分について議論に移りたいと思います。
 早速ですが、まず相澤益男委員からお願いいたします。

○相澤(益)委員
 きょう初めて文科省と、それから経産省が連名で一つのペーパーをまとめたということは、前回から比べると大変な進歩であったろうと思います。
 それで、そのときにちょっと求めました2つの省の大学知財本部とTLOの組織の全国マッピングを1枚の図にしたらどういうことになるのかということを早速実行していただきまして、これがますます問題をクリアにしたのではないかとも思います。そういうようなことを踏まえて、ちょっと伺っておきたいことがあります。
 1つは、これからいろいろと評価指標を定めて進めていくということは、これは結構なことなのできちっと進めるべきだと思います。ただ、これから何をするのかというところが、機能化というところに絞られているわけですが、もう一つは広域化ということも入っておりますけれども、この機能化ということが何を意味しているのかということがなかなかわかりにくいんですね。具体的には、4ページのイメージ図、ここのところで対策2としてある大学知財本部・TLOの機能強化のところで、ここで言っている機能強化はどこに該当するのかというのがわからないんですね。TLOのところには専門化ということが書いてある。それから、知財本部強化のところには、戦略の確立等々が書いてありますが、これが機能化なのかということなんですね。これを両方見て、せっかく2つの組織をこれから機能化し、広域化しようというんですが、こうやってバラバラに書かれてしまうと、またそれぞれが、ただ機能と言っていることをこういうことで、知財本部強化というところに挙がっている内容は、知財本部の内部の機能の強化ということだけを言っている。それから、TLOは専門化ということで、そのTLOのそれぞれのやることが専門化をもっとシャープにするべきだろうということを言っておられるんだと思うんですね。
 ただ、これは一体、今重要なことは、全国の大学知財本部とTLOがどういう方向に何を強化しなければいけないか。せっかくこうやってマッピングをしたり何かしている中でやることが、これでは結局今までと同じように、それぞれがその組織の中だけを強化するということに終わってしまうのではないかということなので、このところが見えないので、もし説明をしていただければありがたい。

○池田課長
 相澤委員おっしゃったように、対策2のところで機能強化というのを書いたつもりでございますが、若干舌足らずなところがあったかもしれません。
 現在、各大学の知財本部とTLOの関係というのは大学によっても違っていると思いますし、それからTLOが内部化しているところもあれば、外にあるところもございますので、基本的にはそれぞれの実態に合った形で機能を強化していただくことになると思います。その際、知財本部とTLOが分かれているところについては、まずその関係のあり方を考える必要があると。その上で、知財本部のところだけに強化とございますが、これはTLOにも言えると思います。例えば人材を継続的に自立化していくためには専門的な人材を養成して、それをきちっと配置していく、確保していく必要もありますし、それから自主的な財源を確保していく必要もございますので、これは、この表では知財本部のところだけに書かれておりますが、それはTLOとのあり方を考える上でTLOにもかかってこようかと思います。
 それから、TLOのほうについて言えば、一つのTLOがその地域の大学と組むところも出てくると思いますし、逆にTLO同士の連携ということもあろうかと思います。
 TLOの専門化につきましても、ここに幾つか例を挙げておりますが、当然それぞれのTLOに強みがありますので、そういったところを強化していくと。その上では、知財本部のところに書いてあるような財源とか、それから人材の育成のようなことも、当然TLOにもかかってきますので、そこは両者のあり方も踏まえつつ、総合的に支援していく必要があるのではないかと思っています。

○妹尾会長
 よろしゅうございますか。

○相澤(益)委員
 何となくわかったような。

○進藤課長
 具体的な説明は池田の申し上げたとおりだと思うんですけれども、恐らく相澤先生のご指摘は、私どもはまだ引き続きTLOと知財本部と分けて考える癖が強くて、強化といったときもTLOだと専門化・広域化と書いてしまう割に、知財本部強化というのは、また別のことを書いてしまっていて、ちょっとその辺まだきちんと融合、協力、連携できていないのではないかというご指摘と受けとめましたので、それについてはここも反省しまして、きちんと一緒にまた考えてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

○妹尾会長
 今の関連で何かありますか。今の問題は、TLOと知財本部の関係を適切にもう一回見直す時期じゃないですかということです。ですので、その両者の関係が今や代替関係になっているから統合したっていいじゃないかというところもあるでしょうし、相互補完関係をつくりつつあるんだったら、その関係性は強化すべきでしょう。
 それから、相乗関係に持ち込むにはどうしたら良いのですかみたいなことが個々の事情の中にあるでしょう。それをまず考えて、それに合ったら、例えばメニューとしては本部強化があるとか広域化があるということはではないでしょうか。こう最初に書かれちゃうと、何かこうせざるを得ないように思ってしまいかねません。、これは例示だというふうに受けとめたほうが良いのかなという気がしますが、いかがですか。

○池田課長
 ご指摘のとおりでございます。

○妹尾会長
 そうですよね。
 それから、もう一つごっちゃになるように見えてしまうのは、今度は大学内の関係性の問題と、大学間の関係性の問題もあるだろうと。だから、広域化というのがそうですね。各大学同士の関係性の見直しもあるよねという話ですから、その辺をもう少し整理していただくと、多分相澤委員のご指摘のところがもう少しクリアにわかるのではないかということかと思います。
 それと関連して、山本委員。

○山本委員
 評価指標を定めるということは、要するに産学連携のゴールを定めるということだと思うんですね。ゴールをどこに持っていくのかということでどう評価するかと。知財本部をどうしようとか、TLOをどうしようという、今ある組織をどうしようという議論にしてしまうと曲がったものになると私は思っていて、どこであっても発明が生まれてきたら発明を発掘して、それを権利化して、特許であれば特許化して、それをマーケティングして、ライセンスをして、今度はライセンスされた産業界で事業化されると、ここのどこが弱いのか、どこを強化するべきなのかということが実はあるべき議論ですよね。
 したがって、そういった観点で評価指標は、私自身はいろんな大学を見ていて、はっきり言えばマーケティングが弱いと思っているので打率を出しなさいと言ったわけです。打率を出せば、打率を意識するようになりマーケティングをせざるを得なくなると思っているわけですが、今申し上げましたように、産学連携は目的ではなくて産学連携を通じていかにイノベーティブな国家をつくるかということで、産業界に貢献できなければ意味がないわけですので、そういう観点で評価指標はぜひつくっていただきたいと思いますし、どこの機能を強化するのかというのがあって、その後組織の話をすればよいと思っております。また、それは国がやることなのか大学がやることなのかという議論があると思っていて、例えば資料1の6ページ目で言えば、これはどうやって出したのかわからないですけれど、うちも聞かれていないなと思って見ていましたけれど、例えばこういうふうにTLOで評価とか、知財本部で評価ではなくて、これはもう大学ごとに出すべきなんですよね。各大学が何件出願して、何件ライセンスをした、これが打率であれば、大学の打率で低い大学があれば、なぜ低いのかと、それはその後に組織が悪いのか、仕組みが悪いのかというような議論があるべきだと私は思っております。例えば、アメリカではAUTMというのがありますが、AUTMでは産学連携がGDPに何%ぐらい貢献したかとか、雇用をどれぐらい創出したかというのを社会にアピールしているわけなんですね。
 私たちもやっぱり科学技術に、今度は国として投資をするというからには、そこがちゃんと出口がどれだけ貢献できているのか。もちろん単年度では簡単にはいきませんし、スタンフォードでも黒字になるまで15年かかっているので時間はかかるんですが、そこをちゃんと定点観測して公表できるようにしていくべきではないかと思っています。
 したがって、まず、今の組織論から議論を始めるのはちょっとやめていただきたいなと思っておりますのと、大学ごとに指標を出したら、やっぱりこれは公表していかないとアカウンタビリティは保てないと思いますので、何かこの資料も席上資料限りみたいになっていたりするのは、疑問に思ってしまうのですが、大学ごとの指標を出していくと、それこそが経済産業省と文部科学省で協調して仕組みをつくっていくということではないかと思っています。

○妹尾会長
 ありがとうございます。今のことに関して、いかがですか。

○池田課長
 おっしゃるとおりです。

○妹尾会長
 おっしゃるとおりだということで、本題にいきます。
 それでは、高柳委員、お願いします。

○高柳委員
 今の山本さんの、本当に目的は産学官の共創力というのは、産業に使えるような技術をつくり出すことですから、その意味では、今の産学連携の視点は大学が研究したものを事業化にライセンスなり、そういう観点でしか考えていないんですけれども、産業界の立場から考えると、大学で研究したものの成果、特許がすぐに実用化できる、事業化できるものは、ほとんど少ないんですね、我々は医薬系ですけれども。
 本当に必要なのは、共同研究とか、まずはいい研究をしてもらわないと、我々も国内だけを相手にしているわけではありませんので、世界最先端の、これはおもしろいぞと、研究していこうという気になる技術をまず研究してもらうことはもちろん重要ですけれども、そういうものに結びつけるような、一番手っ取り早いのは共同研究ですよ。共同研究というのは産業界の企業が、ニーズがあって、大学に声をかけてやりましょうといっていくわけですから、そういうものを呼び込むような活動が次の事業化に結びつくという観点が必要だと思います。大学が独自に研究したものを、TLOさん知財本部に持っていってください。大学が研究したものはいいものに決まっていますから、使わないのは企業が悪いんですみたいなことで、そんなことで事業化なんかできっこないわけですよね。
 ですから、本当に日本の競争力を上げていこうといったら、もっと共同研究とか受委託研究、企業のニーズに結びつけるような活動をしてほしいんですね。それに今知財本部とかTLOがやれるかというと、機能が限定されているとは思いますけれども、でも本当の産学官共創力の強化の観点からは、ここでは研究者のアンケートもありますけれども、本当に企業を最初から結びつけて欲しい。そうしていけば、もう特許の取り方だって全然違うんですよ。研究の進め方だって違ってくる。活用できる特許が欲しいんです。活用のできる研究が欲しいわけです。特許の取れたものを知的創造サイクルで、矢印に従って回していくんじゃなくて、逆方向の目で活用できる知的財産を創り出す、そういう知的財産はどういう研究から生まれるのかというのがニーズです。
 そういう目でとらえるような形で、こういう知財本部・TLOも含めた大学と産業界との連携の仕組みをつくらなければいけないんじゃないかなと私は思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 佐藤委員。

○佐藤委員
 私の席上配付資料というのをちょっと見ていただきたいんですが、これは日刊工業新聞から、きょう著作権の許可をもらって一部だけ、数の制限があったので席上配布資料ということになっていますが、もう既に新聞に載っていますので、ほかの方はごらんいただきたいと思います。
 今のお話の中で、産学連携の機能強化といっても、今議論されているのは「学」の中の機能強化だけで、「産」とどういう形で連携していくかという機能の議論が何もされていないというのはいかがかと思うんです。
 今、お配りした資料は、まさにそれの一つのモデルケースで、東北経産局が医療機器を大学等でシーズを開発したものをいかに事業化するかと、そのためには大学では事業化する、工業化する力がないので、地域の企業とタイアップした研究会をつくるということで、実際にシーズを事業化に向けて、企業と一体になって研究をやっていくというプロジェクトを始めたわけです。そうしますと、当然大学では研究の基礎的な開発はできても、事業化へ行くためにはいろんなツールなり、材料なり、そういうものがなければ事業に結びつかないという意味で、私はこの東北経産局の産学連携の試みは非常にいい試みだと思っています。
 ただ、問題は、そこで出てきたのが大学のTLOなり知財本部では、こういう事業そのものをサポートする知的財産人材が足りないという話になり、それで日本弁理士会に何とかしてくれませんかと投げられたのが去年だったんですね。
 しかし、弁理士会のほうでもそういうシーズの掘り起こしから、事業化までやっていくような人というのは、弁理士の中だってそんなにたくさんいないんですね。また、いろんな専門家が知的財産といっても関与しないとサポートできない。それならば弁理士会がそういう専門家集団をチーム化して支援しましょうといってやったのがこの話なんですね。
 その結果として、いろんな多面的な支援ができたということで評価されて、22年ももう一度やりましょうということになって、ことしは東北経産局だけではなくて、日本弁理士会はほかの経産局も、そういうニーズがあればやりましょうというのが、この新聞に載せた話なんです。
 今、この産学連携は当然大学内の知的財産のファンクションの強化というのは非常に重要なことなんですけれども、むしろ学だけではなくて、産業界とどういうふうに連携をしていくかという、そういう仕組みを強化していくという発想を持たないと、これは大学だけの閉じた世界になってしまうと思うんですね。
 きょうは、残念ながら拝見したペーパーを見る限りでは、知財本部・TLOの機能強化といって、その中だけに閉じた議論になってしまっているというのが非常に僕は残念だなと思っているんです。むしろこういうふうな、今経産省でもいろんな形で中小企業支援、産学連携事業というのはやっているわけです。それとこの話が連携しないと、この話って全然おもしろい話にならないんじゃないかというのが私の感想でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 今、お二人の委員のご指摘は、やっぱり学内に閉じた中での強化策の話ではなくて、産学連携自体の見直しと、その先の展開をどうするかということなんですが、それについていかがでしょうか。

○池田課長
 お二方の先生方からのご指摘はごもっともだと思います。
 高柳委員からのお話について少しコメントさせていただきますと、確かにおっしゃるように、今まではどちらかというと、大学のシーズがあり、企業のニーズがあり、それを前提にどううまくマッチングさせるかというところにやや力点が置かれていた嫌いがございますけれども、日本版バイドール法ができたり、それからTLOができて十数年たっておりますので、この辺から大学と、産業界が早い段階から協調して対話していく場というのを設ける必要があろうかと思っております。
 資料の図のところには入れていなかったのですけれども、そういう趣旨で資料の3ページの対策2のところでは、大学の知財本部の機能強化の後に産学対話の場というのを入れておりまして、こういった早い時期から大学や企業が一緒に対話をしながら話し合って、その中からイノベーションが生まれてくるという、そういうことをこれからは強調していかなければならないと思っています。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 経産省のほうからは何かございますか。

○進藤課長
 高柳委員からご指摘がありましたとおり、大学の研究成果がいいもので、産業界が引き取って事業化しましょうというような単純な思考モデルではないというようなことは、本当にそのとおりだと思っております。
 まだ私どもその評価指標、狭いところから少しずつ広げているんですけれども、今、例えば共同研究をどれだけ引っ張ってこられたかというようなこともきちんと評価指標の中に入れておこうと思いますけれども、そもそも産学連携活動自体がどういうメカニズムなのかということについても、また改めて両省でよく相談、認識していきたいというふうに思っております。
 それから、佐藤委員のご指摘にありました大学、TLOの中に閉じ込められたような発想ではなくて、ほかにもいっぱいつなぐべき仕組みを考えるようにというような、全くそのとおりでございまして、ほかにも私ども事業はあるわけですけれども、引き続き、今回たまたまこういうお題になってしまったので、つい気持ちが縮こまっておりましたけれども、それはまた考えてまいりたいというふうに思っております。

○妹尾会長
 今のと関連して何かございますか、西山委員。

○西山委員
 前回の会議で日本と米国を比較したときに、まだまだ日本は頑張れる余地があるのではないかというコメントが、たしか荒井委員からだったと思うんですがあったと思います。
 要は、ベンチマークを設定して、このぐらいいけるよねと、指標における到達点というものを定めてみてはどうかというコメントがあったというふうに解釈できると思います。
 今回出てきた対策1、2、3、いずれにおいても何がデータであって、何が指標であって、それを達成するためにどうあるかという話ではあるんですが、その結果、どこまで到達するのかという予実管理の予算じゃないですけれども、がないので、どれが指標かみたいな話になってしまうので、むしろベンチマークを何年までに米国の4分の1、何年までに米国の半分、何年後には米国を追い抜くといったようなわかりやすいゴールを数値化するわけですから、せっかく、立てて、そのためにいかなる組織、いかなる統合の議論をしてみてはいかがでしょうかというのが私からの意見です。

○妹尾会長
 というご提案をいただきました。
 佐藤委員。

○佐藤委員
 これは前の専門調査会でも、仮出願の議論をしたときにも申し上げたんですけど、まず東北大、今このペーパーでもテクノアーチは、非常に頑張っていられるんですけども、東北大の知財本部って今4人しかいないんですね。当然、研究者数は多分1,500人から2,000人いると思うんです。その人を4人でサポートしていくというのは非常に困難な状況というか、もうできないんじゃないかと。さらに特任教授という形で3年間しか身分保障されていない。こういう人たちの状況で何かやれというほうが無理でしょうと思います。前に和田大臣政務官にそう申し上げたことがあるんです。
 そういう意味では、こういう数字だけではなくて実際の現場、東北大といえば日本を代表する大学ですらそういう状況にあって、その中で懸命に頑張っているというのは、私の目に見えているものですから、そういうところを何とかしっかりサポートしていくような実態分析をして、本当にどういう形で大学の知財本部なりTLOに国として支援することが彼らの力になるのかということをもっと具体的に検討されたらどうかなと思っております。これが1点。
 この点について、韓国と日本の産学連携を比較すると、私は韓国にもう既に日本は負けていると思っています。それはデータを見たって明らかに負けています。
 日本がバイドール法を使って10年やって、なぜ韓国に負けたのかということを韓国の教授と話をしました。その原因は、彼が言うのには、韓国は産学連携強化を政府でやろうとしたときにその人材がいなかった。したがって、どうしてもいないので若手の優秀な人材を、素人であっても育てようという気持ちでやった。それが3年、5年たった結果として非常に強い力になった。こう言っては何ですけど、今の知財本部、それからTLOにしても、ほとんどの方が企業経験者の方で、むしろ若手が育っていないということが、私は現場として非常に強く感じるんですね。
 そういう意味では、文科省も経産省も、TLOや知財本部を評価するのであれば、優秀な若手をしっかり身分保障して育てるという、そういう中長期的な視点を持った強化策というのをぜひ考えていただいたらどうかなと思っています。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 今のについて何かありますか。

○池田課長
 ベンチマークのご指摘がございましたけれども、先ほど進藤からも申し上げましたように、まだこの指標は私どもで短時間で、とりあえず例として挙げてみたイメージでございますので、今後きちんと議論していく中で、当然そういった数値目標も表わせるものは考えていかなければならないと思っております。
 それから、専門人材の育成でございますけれども、これは直接対応するものではございませんが、実は来年度予算で大学にリサーチ・アドミニストレーターの予算、この知的財産推進計画でも位置づけていただいておりますが、おかげさまで予算が初めてつきましたので、これですべてではもちろんありませんけれども、このリサーチ・アドミニストレーターを、今後各大学にどう普及させていくかということを考える上で、大学のもう少し広い知的財産とか、あるいは産学連携など、全体を含めた人材育成のあり方というのも考えていく必要があると思いますので、そういった中で両省が連携しながら議論していきたいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 相澤委員。

○相澤(英)委員
 せっかく、評価する方向に進んできたので、ぜひ、回帰分析をしていただいて、それぞれの投入がどの結果に対して有意であるのかということを分析していただきたいと思います。これにより、将来の目標設定の時に、どこに何を投入するのが効果的かということに基づいて、議論をすることができると思います。
 それから、組織の見直しですが、本日、提出された資料で、少しずつではありますが、着実に進んでいるということがわかりました。引き続き、見直しを進めていただければと思います。効率のよいところはさらに進めていただいて、効率の悪いところは整理していくということをやらないと、限られた予算が分散化してしまいます。きちんとした分析に基づいて、選択と集中を行っていくべきものと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 ほかには、渡部委員、お願いします。

○渡部委員
 この話をともかくやっていると、どんどん細かくなって、TLOと組織のそれぞれの関係をどうするかとか、こうするかとか、それから国内だけで何か大学の技術を押しつけないでとか、そういう話になるというのが非常に何か違和感があります。本来大事なのは、国際競争の中で産学連携がイノベーションシステムとしての意味があるようにしろということなんですよね。
 ですから、そういう話にならないで、小さな議論になるのが非常に違和感があります。実は日本は経緯があって知財本部とTLOをつくってしまったものですから、そういう議論になりがちですが、相澤委員が回帰分析の話をされたんですけど、実はこれは分析が難しいですよ。2つ主体があって構造が複雑なんでね。知財本部ができる前にTLOの収入と、いろいろなマネジメントファクターとの関係については、かなり分析をやったことがありまして、これは決定係数結構高い値ではっきりしているのは、実は単純な結果です。マーケティングをまじめにやればもうかっているんです。
 それが何でこんなに複雑な話になるのか、細かい話になるのかというのは非常に違和感があって、何とかそれを開放したいというのが前回の私の主旨なんですけれども、なかなかそうなっていないので、そこら辺を根本的に議論していくということを考えたほうがいいと思います。
 あくまで組織に支援するのが目的ではなくて、やっぱりイノベーションシステムとして国際的に本当に効果があるようにする、これがアメリカであればわかるわけです。ジェネンティックが出て、グーグルが出てというような姿があって、個々のTLOが赤字だろうが何だろうが余り関係ないですよね、もうそうなれば。
 それは、たまたま12月のLSのジャーナルがバイドールの特集だったですけれど、アメリカの大学の経営者でも、何でこんなことを支援しないといけないんだと思っている人もいるんですけど、アメリカではその成果が目に見えるんでいいんです。TLOをどうするかではなく、それが目的だということで、議論の整理をぜひしていただきたいと思います。すみません。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 ほかによろしいでしょうか。まだまだご意見があると思いますけれども、ちょっと時間なので。私のほうからちょっと述べさせていただきたいと思います。
 最後に渡部委員がおっしゃられたように、この戦略本部、国の戦略として考えるのが国際競争力強化の専門調査会ですから、そこのイノベーションシステムとして一体どうなのかという大所高所の議論をぜひ両省にはお伺いしたいということかと思います。
 そして、効果の見える化ということをおっしゃっていますが、今までの評価が、例えば出願件数みたいな局所最適化に行っているから、イノベーションとして一体どうなのという全体最適としての評価になり得ていない。その指標をどう工夫するんですかというのが山本委員の先日からのご指摘、ご依頼だったはずです。この理解をもう一回考えたいと思います。それは評価として後でどうだったという成績つけの問題ではなくて、今後の目的関数は何なんですかという、こういう議論だと思います。イノベーションという、あるいは国際競争力強化ということだということだと思います。それを改めて府省にはお願いしたいというのが1点目。
 2点目は、先ほどの高柳委員あるいは佐藤委員からのご指摘にもありましたけれども、ついつい我々は、産学連携をやりますと、学の側から出てきたシーズをどう生かすかという、いわゆるシーズドリブンの話ばかり、これを私フォワードモデルと呼んでいますが、知的財産創出モデルのほうになってしまいます。
 ところが、もう一方でやっぱりリバースモデルと私は呼んでいますけれども、事業側からのイノベーションのシナリオ側から入っていくモデルもあるわけで、この両側が動かないといけないですね。
 最初のほうを私は、最近は技術王道と呼んで、後者のほうを事業覇道と呼んでおります。王道と覇道の違いは、これは中国の文献を読んでいただければおわかりになると思いますが、三国志を読んでいただいても結構だと思います。いずれにせよ、この両輪が動かなきゃいけない。実際は行ったり来たりする振り子のインタラクティブなモデルになるわけですけれども、これを見据えた産学連携に脱皮しなくちゃいけないんじゃないかということが第2点であります。
 第3点は、山本委員が先ほどご指摘されたように、マーケティングということなんですが、これは以前TLOの人材育成なんかにかかわったときに、極めて特徴的に出たのはマーケティングをセールスと勘違いする人たちがたくさんいるということです。
 マーケティングというのは、基本的にマーケットをつくる市場開拓ということですから、特許の売り込みではないということです。人材育成的にいえば、TLOの方で特許を売るは「下」、技術を移転するは「中」、そして事業提案をするが「上」というふうに我々は言っております。ぜひ市場がつくられる、すなわちイノベーションが起こることに貢献する人材の話になろうかと思います。その観点からいくと、このTLOや知的財産人材がどう育成されて、その「知」がどう蓄積、継承、展開されているのかというところにも目をやっていただきたいと思います。先ほどの佐藤委員のご指摘のとおりでありまして、TLOや知財本部の人たちの「知」が本当にこの十数年間蓄積され、継承されて人材育成になっているのか、この検証をしないといけない。特に当初やっていました企業で実績があるから使えるはずだというのは、これは諸刃なんですね。
 というのは、昔のビジネスモデルが頭に入っている人たちだとか、研究開発しか企業で知らない人たちが産学連携を幾らやったって、逆効果を及ぼすという例が山ほど出てきているわけであります。そのことを考えると、実は昔のモデルにとらわれている人たちではない若い人たちが出ることも一方で重要なのです。実績重視主義が、例えばリサーチ・アドミニストレーターの方々の、今後の展開についても弊害にならないようなご注意をいただきたいというのが人材育成の側から見ると極めて重要だと思っております。
 なお、ちょっと伺いたいことが1点、雑談ですけど、ホームランって書いてあるんですけど、ホームランって書いてあると、またこれが一発ねらいで大振りする人たちがふえちゃうんですよね。いいんですよ、デッドボールで出たって、バントでつないで、最後は犠牲フライで得点をすることもこれまた重要なのでありまして、こういうミスリードするような言い方はいかがなものかというふうに私は思います。
 文科省と経産省にお尋ねしたいのは、この話がいつまでにどういうふうに進めるかというスケジュール、工程表はどうなっていますか。これを最後に伺ってこの話を閉じたいと思います。やりますというのは結構なんですが、いつまでにどういう議論を、どういうふうに進めるかということはいかがになっていますか。

○池田課長
 まだ明確な時期というところまでは話し合っていないのですけれども、できれば来年度で何とかというふうには考えております。

○妹尾会長
 もちろん、今すぐにどうのということではないんですけれども、それこそ先ほど西山委員も言われたように、こういうことはスケジュールが重要ですし、かといって拙速をしては元も子もないので、ぜひ委員の先生方のご意見を参考に組み立てをしていただければというふうに思います。どうもありがとうございました。
 それでは、まだご意見もあろうかと思いますが、時間の制約がありますので、次の議題に移らせていただきたいと思います。
 次の議題は、「知的財産戦略に関する論点整理」であります。でも府省の皆さんにも、もしここは言いたいみたいなのがあったら入っていただいても結構です。
 先ほど一部については説明をいただきましたけれども、知的財産戦略に関する論点整理という資料2がきょうございます。これについて事務局からご説明をいただいた上でご議論をいただこうと、こういうふうに思います。
 それでは、原参事官、よろしくお願いいたします。

○原参事官
 それでは、先ほどもごらんいただきました資料2でございますけれども、表紙を1枚おめくりいただきますと、概要とございまして、「1.国際標準の獲得を通じて競争力強化」から、「6.知的財産人材育成の強化」に至るまで並べてございます。
 こういった6つの論点でこのペーパーを構成してございますので、順次ご説明申し上げたいと思います。このうち、「4.産学連携」については、先ほどご説明したとおりでございます。
 それでは、1.から始めますが、1.の部分につきましては山本企画官からご説明申し上げたいと思います。

○山本企画官
 それでは、めくっていただきまして2ページをごらんください。
 国際標準の獲得を通じた競争力の強化につきまして、2ページと3ページのところで2つ論点を挙げさせていただいております。
 2ページの一番上のところ、産業競争力強化のため認証の戦略的活用を如何に図るべきかというのを1点目に挙げさせていただいております。
 まず、現状認識でございますけども、紙の左側、オレンジの枠で囲ってあるところでございますけども、認証を入れた国際標準化というところで、2つポツがございます。欧米では規格策定段階から認証を意識した標準化活動を実施。我が国においても規格策定後のスムーズな認証実施に係る取り組みを促進することが必要と考えてございます。
 真ん中のところ、青色のところですけれども、企業等による認証の戦略的活用の促進というところでは、我が国の企業では新製品、新技術の市場化の加速や製品の優位性確保のために、認証をさらに戦略的に活用していくべきではないかというふうに考えてございます。
 右側のやや緑色になっておる枠のところでございますけれども、下のDのところの表は、我が国及び海外の認証機関の規模の比較でございますけれども、見ていただくとわかりますように、下のほうの我が国の認証機関の規模が欧米の機関に比較してはるかに小さいということがおわかりいただけるかと思います。
 認証機関側の事業展開を拡充いたしまして、総合的なサービスの提供とか、機関内にノウハウの蓄積をしていくということが我が国の認証力の強化ということのために必要ではないかというふうに考えてございます。
 取り組みの方向性といたしましては、一番下のところにございますけれども、標準化等に向けた企業・認証機関間の関係強化、企業等による認証の戦略的活用の促進、それから認証機関の事業展開の促進ということが挙げられるのではないかと考えてございます。
 めくっていただきまして3ページ目でございます。
 論点といたしまして、多様化する国際標準化活動に的確に対処し、競争力強化を図るために、如何なる支援が必要かというふうに挙げさせていただいております。
 資料の左側でございますけども、デジュール標準化における日本のポジションというものを示しております。グラフを見ていただきますと、ISOとIECの場での国際幹事の我が国の引き受け件数の推移というのを書いてございますけれども、我が国の取り組み、着実に伸びてきているというわけですけれども、まだ現状では欧米のレベルには達していないというのがおわかりいただけるかと思います。
 右側のほうは、フォーラム標準でございますけれども、情報通信分野を中心にフォーラム標準の重要性が増してきていますが、さらにデジュール標準との関係においても、ファストトラック制度の活用でフォーラム標準を迅速にデジュール標準にできるという制度がございまして、この点でもフォーラム標準が重要になってきてございます。このため、フォーラム標準の支援について環境整備が必要ではないかと考えてございます。
 取り組みの方向性といたしましては、一番下のところでデジュール標準化における支援施策の拡充、さらにはフォーラム標準への対応施策の検討、実行が重要ではないかというふうに考えてございます。

○原参事官
 それでは、1枚おめくりいただきまして4ページでございます。低コストかつ効率的にグローバルな権利保護を可能とする知的財産システムをどのように構築していくかという観点でございますけれども、特許審査ハイウエイ(PPH)と呼んでおりますネットワークは拡大しておりまして、我が国は現在13の国・機関と実施しているところございますが、他方で出願全体に占める割合という観点からは限界があるのではないかといったことですとか、あと利用率を高める必要があるのではないかといった指摘がございます。
 PPHは第2国で早期審査を行うということを前提としておりますけれども、途上国の中にはこういった早期審査という考え方に消極的な国もございまして、日本の審査結果を途上国で有効に活用していただくという上では課題となっております。
 それから、審査結果に対する相互信頼を醸成して審査結果を相互に利用する、その促進を行っていくために国際的な審査官協議というものも行われているところでございますけれども、右上の数値をごらんいただきますと、大規模に行われているという状況には至ってございません。
 それから、右下でございますけれども、意匠の世界では国際的な登録システムとして、ヘーグ協定というものが存在しておりますが、我が国企業も海外に積極的に事業展開している中、まだ特許商標とは異なりまして、我が国はこの意匠についてのみ国際的なシステムに参加していないという状況でございます。
 こうした点を踏まえまして、一番下の枠でございますけれども、PPHの利便性を高めて中国を含む世界の主要国へもネットワークを広げていくということ。それから、共通特許制度の構築に向けた国際的な審査官協議を拡充していくということ。さらに、ヘーグ協定への加入といった取り組みを掲載させていただいているところでございます。
 では、1枚おめくりいただきまして5ページでございますけれども、我が国企業の活躍をする場であるアジアにおいて、我が国がどのようにして知的財産環境整備をリードしていくかという観点でございます。
 左上でございますが、韓国がアジア、それから世界において知的財産のハブとなるという構想を積極的に展開しておることは、本専門調査会でも報告いただいているところでございます。
 左下に国際特許出願の国際段階の調査あるいは審査に対する日・中・韓と3国の貢献の状況を示してございますけれども、韓国・中国が途上国を中心として他国由来の、他国発の出願の国際段階の調査あるいは審査の代行を積極的に行っているということがわかります。韓国では13カ国、中国については9カ国・地域について代行を行っているということが記載してございます。他方、我が国については4カ国ということでございまして、こうした状況を打破して、我が国としても国際的な貢献を、とりわけ国外からの出願比率が高いということを右側に示してございますのはASEAN地域でございますが、こういった地域を中心に積極的に行う必要があるのではないかと、こうした点を記載させていただいておるところでございます。
 1枚おめくりいただきまして6ページでございます。
 イノベーションを加速するインフラの整備という観点で、権利の安定性を向上させ、権利を適切に保護するにはどうすべきかといった論点を示してございます。
 我が国企業がグローバルに事業活動を安心して行うというためには、海外、国の内外で覆らない安定した権利の設定というのが不可欠であるということは当然でございますが、そのためには先行技術文献として、世界の特許に関連する文献を漏れなく網羅的に検索して、その結果に基づいて的確な判断をしていくということが求められるかと思います。
 右上には、世界の特許文献に占める日本語出願のシェアの変遷をグラフ化してございますけれども、最近10年で日本の出願シェアというものが15ポイント低下しているというところがおわかりになるかと思います。したがいまして、日本語ですとか、あるいは英語の文献のみならず、これからは中国、韓国の特許文献についても網羅的に検索できる環境をしっかりと確保して、その結果に基づいて質の高い審査・判断が行えるような仕組み、これをつくっていくことが必要ではないかということでございます。
 それから、意匠の分野、右下にございますけれども、技術の進展を受けて3Dのファイル等による手続を認める動きがございまして、韓国ではこうした点に迅速に対応しているということでございますけれども、我が国についても、遅れることのないように保護の対象の拡大に向けて検討を進める必要があるのではないかという課題を示しているところでございます。
 さらに、1枚おめくりいただきまして、イノベーション加速関連の2枚目でございますけれども、製造ノウハウ等の営業秘密が流出していくこと、これをどのようにして防いでいくかという観点でございます。
 我が国の製造業における技術流出の問題に関する実態、これを調査した結果によりますと、3割以上の企業から流出があったというような回答がございまして、そのうち「人」、これを介した流出にリスクを感じている企業は8割以上ということでございます。
 他方で、従業員が退職される際の秘密保持契約において、どういった情報を秘密にすべきか、その内容について特定しているという割合は4割以下という状況にございます。
 それから、我々が有識者から意見を伺いました際にいただきましたコメントとして、技術者には自分の技術という意識が強くて、営業上の秘密といった意識が低いのではないかと、あるいは技術者の意識に働きかけて、みずから営業秘密の開示・流出をしない、そういったことを思いとどまるような意識改革を大々的に行う必要があると指摘をいただいております。
 また、営業秘密管理指針を紙の上だけで理解するというのは非常に難しいというご指摘もございまして、技術者に直接働きかける形での周知徹底、それから相談型の個別支援等による営業秘密管理上の課題というものを具体的に改善していくための支援、こういったものについて、一番下の枠の中に書かせていただいているというところでございます。
 それから、8ページ、9ページは先ほどご説明申し上げましたので、10ページをごらんいただければというふうに思います。
 ベンチャー・中小企業等の知的財産活用支援ということで、その1番目として、ベンチャー・中小企業等が知的財産を活用して海外展開をしていくことをどのように支援していくべきかという観点でございます。
 内需が縮小していく中で、中小企業等が大企業の下請という位置づけのみではなくて、独立して事業を展開していくと、その上で国内外で権利の取得をしっかりと行って海外に進出していくというところが不可欠になってございますけれども、外国出願には費用の面ですとかあるいは手続の面で負担が大きいという声が企業の方からも寄せられております。
 左下のグラフを見ますと、出願費用の助成というところはもちろん高いニーズがございますけれども、権利取得後の、例えば模倣品の対策といったニーズも大きいということがわかります。
 現在でも、各都道府県の中小企業センター等を通じまして、地域中小企業外国支援事業等が実施されてございますけれども、必ずしも使い勝手がよいというものとは言えず、その利用実績は残念ながら限られたものであるようでございますし、ジェトロによる中小企業に対する侵害調査に対して調査費用の助成というものを行っておりますけれども、侵害訴訟により近い部分にも支援を広げてほしいと、そういった指摘もございます。
 こうした点も踏まえまして、外国出願の支援の利便性向上のみならず、侵害訴訟に関するコンサルティング機能の強化も含めて、どのように支援を重視していけばいいかと、そういった点について一番下に書かせていただいているところでございます。
 それから、11ページでございますけれども、革新的な技術の創出、それから知的財産を活用した事業展開をどのように支援していくかという観点でございます。
 右側に中小企業の技術革新制度について記載しております。米国では、ベンチャー・中小企業等が有するシーズ、これを革新的技術の創出につなげる多段階選抜型のスキームが確立してございます。年間予算2,000億円程度ということで、フィージビリティー・スタディから本格的な事業化に至るまで3段階で評価を行いつつ、真に革新的な技術を事業化につなげていこうということでございます。
 実際にアメリカの場合、製薬企業のトップ10、これを見ますと、うち7社がそれぞれ創業初期の段階でこうした制度を利用しているということでございます。
 他方、我が国でも日本版のこういったSBIRというものが立ち上がってはございますけれども、大部分既存の補助金を中小企業に振り分けるといった性質が強うございまして、多段階選抜型の資金は、額で見ますと米国の100分の1程度というふうに書いてございます。
 こうした背景から、中小企業発の多様なシーズを多段階で評価して、初期の市場開拓を支援し伸ばしていくべき技術をしっかりと技術化、事業化に結びつけていくことが必要ではないかということを書かせていただいております。
 また、右でございますけれども、本年度から経産省、特許庁の予算によって中小企業に対してアイデア段階から事業展開に至る各段階での多様な相談に対応するためのワンストップの相談の窓口というものを各都道府県に設けるということになってございます。
 真の意味でのワンストップのサービスとなるためには、そのような相談を受ける受け手側が知的財産の戦略だけでなく、戦略にも詳しい、いわば知的財産のマネジメント人材である必要があるのではないかといったご指摘、そうした人材をどのように確保していくのかといった点について記載しているところでございます。
 それから、最後12ページでございます。
 知的財産人材育成の強化ということで書いてございます。知的財産戦略と事業戦略を一体的に展開できるような知的財産マネジメント人材をどのように育成していけばよいかという観点でございます。
 右下の表でございますけれども、こちらにありますように、文科省において国内の全大学に対して調査を行っていただいた結果によりますと、知的財産に関する授業の科目数等、近年増加傾向にはございます。
 また、特許庁においても中小・ベンチャー企業等の経営者に対して研修を実施していただいているというところではございますけれども、反面、知的マネジメント人材に関する先進的な取り組み、これは右の下の部分に例として示させていただいておりますけれども、そういった取り組みは一部の教育機関に限られているということでございます。
 こうした点を踏まえまして、知的財産の権利化や業務管理といったことを行うのみでなくて、知的財産を活用して企業の競争力の強化につなげていく、そういったシナリオが描けるような軍師的な人材を育成するために、知的財産教育をどういうふうにして充実させていくかと。また、マネジメント向け研修の実効性をどうやって高めていくかと、こういった課題について書かせていただいているというところでございます。
 長くなりましたが、説明は以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 以上、論点整理ということであります。もう既に意見を言っていただいた先生方もいらっしゃると思いますけれども、この機会にぜひご意見を今からお願いしたいと思います。
 それでは、佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員
 特に国際的な知的財産の環境整備のところになるのかもしれませんけれども、今、内外国の出願件数というのを見ていますと、もちろん私どももホームグラウンドとして日本の出願が外国の出願よりはるかに多いわけです。
 ただ、これは私どもだけではなくていろんなところで見直そうとしていて、今かなりマーケット連動型の出願をとっているところが多くなってきているやに認識しています。
 このことから鑑みるに、日本は市場とか人口が減少し、それに対しアメリカは人口が増えていますし、もちろん中国、インドは爆発的に増えており、それからいくと総体的に日本の出願件数が減って、今はまだ過去の蓄積もあって日本の特許庁は、世界の冠たる3極のうちの1つ、4極のうちの1つというふうに位置づけられているわけですが、これはそうあってはならないんですけれども、総体的なパワーといいますか影響力が低下していく傾向にあるのではないかなというふうに心配しています。
 そのための施策として、国際調査の引き受けとか、項目はほとんど入っていると思うんですが、ただ、問題はスピードで、この中にスピードというファクターを入れるかどうかは別にしまして、どのくらいのスピードでやるかというのが非常に大問題で、このように項目を並べても、よそにスピードで凌駕されてしまわれては元も子もないので、まずそれを一つここで申し上げたいというのと、もう一つは知的財産の審査を非常に正確に早くするというのが大前提になるんですけど、それと連動してやっぱりとることが目的ではなくて、それをいかに活用できるかというところで、これはベンチャー・中小企業等への支援になると思うんですが、日本の産業力というのは一体どこでしっかり持っていきますかというのは、これは全く私見なんですけれども、大体二.何次産業ぐらいのところが一番いいんじゃないかなと思ってまして、それはどういうことかというと、やはり日本がベンチャーなんかの、世界のベンチャーや何かのインキュベーターになってもいいんじゃないか。
 つまり、日本でまず新しい技術を出願すれば、いち早く特許になって、それは非常につぶれにくい、あるいはそれをもとに事業をしようとしている人に対しては何らかのアドバンテージがあるというような、そのシステムを設けられないかなというふうに思っていまして、法律上無効事由があるものに対して、後からつぶれませんというのは難しいというのは承知しているんですけど、その特許を使ってみずから事業を起こす、あるいは物をつくって実態としていこうということについては特別な支援があっても、これは世界に対しての非常にいいメッセージにもなるというふうに思っていますし、そこのところを何らかの形で項目に入れていただきたいなというふうに思っています。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 荒井委員、お願いします。

○荒井委員
 今のご意見に非常に賛成で、ぜひこの機会に、まさに競争力強化のための戦略ということですから、そんな観点をもっともっと前に出していただいたほうがいいと思います。
 従来、どうしても特許の手続みたいな話が中心だったと思うんです。そういう観点で3項目をちょっとコメントさせていただきますが、第1項目は、今の4ページの関係、まさに佐々木委員がおっしゃったのと同じ関係ですが、日本の特許、知的財産のシステムを世界のリードにするという、いわば特許の国際標準を目指すようなつもりでやったほうがいいんじゃないかということだと思います。
 そういう意味で、左側にあります世界知的財産システムを構築するというのは賛成でございまして、第一歩としてのPPHは、これの趣旨は良いと。特許庁の関係者が国際的に協力するんだということはいいと思うんですが、ただしこれは始まりにすぎないということなんで、右側にあります国際審査官協議、こっちのほうをもっと早くやって、共同審査のほうに引きつけ、そうすればデータベースもみんなカバーできるわけですから、安定的な特許が取れて質もよくなるということになると思います。
 ここには国際審査官協議と書いていますが、こういう審査官交流はもう15年以上の歴史があるわけなんで、こういう段階は終わったんで、もっと具体的な個別の案件について共同審査をするということをやって、そして早く相互承認を目指す、リードしていくということが必要じゃないかと思います。
 ですから、今度の推進計画では、ぜひ共同審査を入れると、それを検討するということじゃなくて、準備をして相手政府と協議を開始するとか、そこまでやらないと、今佐々木委員がおっしゃっていたスピード感が出てこないと思うんです。15年間交流をやっているわけですから、これだけ初めて見ると今すごいと思っても、まだこれだけのことなんで、ぜひそういうスピード感を入れていただきたいと思います。
 それから、6ページの関係ですが、まさにイノベーションを進めるための知的財産ということで、タイトルは大賛成ですし、論点の安定性を向上させ適切な権利の保護というので、左側にあります権利の安定性向上のときに審査のことだけ書いてあるわけです。審査を、だからいい審査をするというのは賛成です。ただし、取った特許が安定していなければいかんということで、残念ながら日本ではダブルトラックが当初の思ったこととは違った形で運用されているんで、非常に日本においては取った特許が保護されない。したがって、事業化にはつながらないという面が出てきていると思いますから、今の特許庁と裁判所でそれぞれ向こうを争うような仕組みで、しかもいつまでもやっているというようなことでは、事業化の阻害になっているわけですから、このダブルトラックを見直しすること。
 それから、そのためには、ぜひアメリカのように特許権の有効推定規定、こういうものを入れて、ちゃんといい審査については有効だというようなことをすると事業化につながりやすいんじゃないかと思います。
 それから、3点目は10ページですが、まさにベンチャーや中小企業が、これから2.5次産業とか、そういうことでやったりするためにも、ぜひこの技術を知的財産で防衛しておかないと事業ができないわけですから、ぜひ項目に力を入れていただきたいと思いますが、海外に行くときに、さっきお話がありましたように、10ページの右側にありますが、海外展開支援は、ここにこうやって書いてあるんですが、実際にはなかなか使いにくい、どこで何をやっているかさっぱりわからないし、件数もそういうことで少ないわけですから、アジアを内需にするとかということであれば外国出願をせにゃいけないわけですので、ぜひこれをもっと使いやすくて件数が増えるようにしていただきたい。そのためにも数値目標をつくっていただいたらいいんじゃないか、センターの設置の数値目標じゃなくて利用件数の数値目標というのがお願いです。
 それから、その関係で外国へ出願する前に、まず国内でしっかりもととなる出願をせにゃいけないわけですから、ぜひこのベンチャーや中小企業のためには特許パック制度みたいなもので、手続と料金、両面において便利なものをつくっていただきたい。すなわち、出願とか審査請求や早期審査請求を手続的に一括でできるような仕組みにする。それから料金についても、それぞれの段階が、それぞれどうなるということじゃなくて、まとめて特許庁に払う金とか、あるいは弁理士にお願いするお金を一括してどのくらいになりそうかと、それをまた割安料金にしていただくということをすれば、ベンチャーや中小企業がこういうところに入っていけるんじゃないかということを思いますのでお願いしたいと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。大きく3点のご指摘をいただきました。
 相澤委員。

○相澤(英)委員
 相互承認については、日本の特許庁が他の特許庁の承認をするだけになって空洞化してしまうということのないように、気をつけていただきたいと思います。
 相互承認をやれば、取得が容易なところに、特許出願が流れ込むことが想定されます。したがって、相互承認を入れた時に、日本で、進歩性の基準を外国よりも高くするというようなことをすれば、他の国へ出願が移行していってしまいますから、その点を注意してやらなければいけないと思います。
 それから、協力対象についても、広い視野でみることが必要だと思います。例えば、日本とタイの特許庁の関係は良好ではないかと思います。ですから、国際化という中では、比較的大きな国に限らず、対象国を広げてやっていかないと、国際的な制度競争に負けてしまうのではないかと思います。
 日本における権利の行使の問題について、現在では、いわゆるダブルトラックは問題ではなく、技術と法律を協調させる制度として、理解されるのではないかと思います。それよりも、勝訴率が外国に比べて低いということは事実でございますから、これは考えていただかなければいけない問題だと思います。
 国際的な中小企業、あるいは、先進的な中小企業に、どのような支援ができるかということを考えていかなければいけないと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 高柳委員。

○高柳委員
 7ページですけれども、競争力の源泉となる製造ノウハウ等の技術流出、これはやっぱりここに書いてございますように、技術者の、人を通じた技術流出というのは、今でも韓国、中国へ行けば日本人が出てくるというようなこと、これからベビーブーマーの退職に伴って、ますますそういう人が増えると思います。
 今の60代、私も含めまして非常に元気です。ですから、あり余る力をブラブラしていろと言ってもなかなか難しいですよ。だから、請われて役に立つところがあれば、韓国、台湾、中国、チベットでもどこでも行きますから、これを今先輩が行っているんだから良いだろうと、ここに書いてあるとおり、本当に意識が、そういう意味では、余り罪の意識も、最初はいろいろ考えても、結局もう出ちゃうということになっているんじゃないかなと思いますね。それでますますそういう傾向になるとしたら、これはゆゆしき問題なので、ここに周知徹底というのがありますけれども、抽象的にやるだけじゃなくて、本当に徹底的にやるべきじゃないかなと。やった後、じゃあどうするんだと、ブラブラしていろというのかという、そういう問題もありますけれども……

○相澤(英)委員
 元気な60代がいらっしゃるということですね。

○高柳委員
 はい。そういうのも含めて総合的に何か考えていかないと、特許で抑えられるものは特許で、これは特許で抑えられない技術ノウハウをどういうふうに防ぐかというのは、本当に国を挙げて考えていかないと、我々の本当の知的財産がただで流用されてしまうということになりかねないので、強くこの辺は施策を講じていただきたいと思います。

○妹尾会長
 具体的に何かご提案はありますか。

○高柳委員
 まずは周知徹底のやり方を、キャンペーンとか、いろんな、企業でも何か、政府、いろんなものがあれば社員教育もするわけですよね。だから、それを産業界、行政も含めて一緒に何かどうやったらいいだろうと、とりあえず。
 それから、法律的なところも、今、営業秘密の、この間インフラの整備のところも、今年中にいろいろできると思いますし、それから法改正はちょっと時間がかかるかもしれませんけれども、法改正も営業秘密を示されたとか、示されたか示されないかというところもやっぱりいろいろ問題があるようですね。そういう法改正もありますけれども、とりあえずできるのはキャンペーン的なやつじゃないかと思います。それをどうやったら一番効果的なキャンペーンになるのかというのを、産業界、官を含めて検討すべきじゃないでしょうか。

○妹尾会長
 相澤委員。

○相澤(英)委員
 問題は、今、高柳委員がご指摘になったところにあると思います。会社が、雇用し続けなくなった人たちが働いていくための職業選択の自由というのは憲法上保障されているものです。それをどうやって守っていくかということも、この国の全体の発展にとっては非常に重要なことです。
 職業選択の自由というものをどうやって保障していってあげるかということを十分に考えていかないと、かえって、企業が、人を整理する自由にも影響してくるのではないかと思います。どこへでも行けるような雇用環境をつくってあげないと、企業の人の整理にも影響がでてくると思います。その辺のお考えを聞かせていただけますか。

○高柳委員
 もちろん、そういう問題があります。そういう問題をクリアしなければいけないんですけど、だからといってこういうものが是認されるような風潮というものをつくるのは困るんです。それをどういうふうにバランスをとるかという問題があるんですけどね。
 ですから、結局ここに書いてあっても、本人の意識にお任せしようみたいな結論になると、これはますます流出に拍車がかかるということになっていくんじゃないかなと思います。もちろん、おっしゃることも非常に重要です。だから、そういう意味ではどっちもそういう問題があるからと、この問題を避けて通ると、結果は流出されっ放しと、流れっ放しと、こういうふうになるんじゃないかと思います。そういう問題も含めて真剣に議論し、何かやっていくべきじゃないかなと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 出雲委員。

○出雲委員
 今の7ページの、競争力の源泉となる製造ノウハウの技術流出を防ぐという観点でお話、職業選択の自由、憲法でもちろん保障されています。一方で、私どもベンチャー企業は大企業を退職される方を積極的に、我々ベンチャー自身がお迎えすることも最近多くなっていますし、もしくは企業を退職された方が東大初めさまざまな大学の客員教授であったり、セミナーの講師として来られて、そういった先生方と共同研究することで、ベンチャー企業が持っているイノベーションの技術と大企業のノウハウとを組み合わせて、私どもは日本で、国内でビジネスさせていただいています。そういう意味では、海外にその方が行かれてしまうのは、恐らくノウハウの技術流出に当たると思うんですけれども、ベンチャー企業や大学がその受け皿として存在しているというのもあります。我々のようなベンチャー企業としては、大企業の退職者というのは非常にすばらしい経験と知識を持っている人なので、積極的にベンチャー企業に転職するような、むしろそういうキャンペーンだったらぜひやっていただきたいなと思うんですけれども、なかなか、大企業が関連の子会社とかに回してしまって、ベンチャー企業に行こうというと、そんな恥ずかしくてできないという方が本当に多くいらっしゃるので、ぜひSBIRとか、アメリカもそうですけれども、ベンチャー企業に行くということは、落ちこぼれているとか格好悪いとかそういうものではなくて、ベンチャー企業で働くということがもっと前向きにとらえられると大変ありがたいなと思っております。
 それともう一つが、この技術流出リスクは会社の社員の人を通じた流出に非常にフォーカスされていると思うんですけれども、産学連携とTLOの部分で、一度も今日は議論になかったんですが、私一度、去年お願いというか申し上げたんですけれども、共同研究やTLO、産学連携本部、知的財産本部を通じて大学と共同研究を実施する際に、ベンチャー企業だろうと、大企業だろうと関係ないんですけれども、かなり研究室の学生、ポスドクも含めて研究室の学生が、例えば私どもと今どういう研究をしていて、どういう課題があるというのを平気でオープンな場でしゃべってしまう。学会でさすがにしゃべるようなことはないですけれども、営業上のノウハウであったり、知的財産や営業の秘密を管理するという意識は、社員だけではなくて、企業の中の問題ではない知的財産本部の方や大学の教職員の方、そしてその教職員の方が余り大っぴらに話していても叱らないというか、それは余り関係ないよねというような風潮も多々ありますので、大学の特殊性を十分踏まえて、企業の側が共同研究なりTLOなりを使いやすくするように、そういう人材を育成していただきたいなと、実際に使わせていただいている立場として強く思っております。

○妹尾会長
 渡部委員、お願いします。

○渡部委員
 今の7ページのところというのは、今回、不正競争防止法の改正になった要件で、「自制」って書いてある、ちょっとこれ「自制」って余り使わないんだけれども、多分、要は法令遵守の範囲で啓発をしてくれということだと思います。「自制」というのは本当に気になるんだけど、法令以上のことを何か自制しようと言っているんじゃないということはちょっと確認したいんですけど、そうであれば、大学がやっぱりもう少ししっかりしろというところはあると思いますね。まだそういう、どういう法改正になっていて、今要件は、図利加害目的で領得まで含むのだという啓発、これはやるべきだと思います。
 その他3点あるんですが、先ほどからもう出ていて、これはそのとおりだと思うんですが、日本の今の相対的な市場が小さくなっていることで、日本の知的財産システムというのが相対的に余り魅力がなくなってくるので、特許出願も、意匠は大分前から減っていますけれども、減っていくと。このままほうっておけば当然もっと減っていくというのに対して、もう何かするかどうかという話なんだと思うんですね。
 ざっくばらんに言って、日本人が日本の中で企業の特許の制度をどうやって使うかということに加えて、海外からやっぱり魅力のある制度になるかどうかということだと思います。日本の特許制度を使ってあるいは意匠制度を使って出願をすれば、こんなにいいことがあると、だから日本に出願するんだというように考えていかないと、多分これから、もうちょっとどっちにしても衰退しちゃうと。
 具体的に特許に関してはともかく、共同調査や何かで質の問題というのはちょっと裏腹のところが確かにあるんだけれども、まず基本は、日本ではきちっと審査をして海外特許、それから取得文献なんかも実は結構問題があるので、そこら辺のところを、ベータベースを整備していくなどということをやって、質の高い特許を取る、質の高い特許が取れたら、それはやっぱりひっくり返らないと、争ってそんなに簡単に負けないというような、まず仕組みをつくるということで、日本に特許を出すことで、日本は知的財産のベースでベンチャー企業を興して、イノベーションを興しやすいということをやるべきだというのが1点だと思います。
 それから、意匠も、先ほどの話で韓国に遅れることなくという何か表現を、たしかしていたかもしれないけど、確かに韓国の場合、オンラインゲームとかそういうのが非常に盛んなので、こういう発想でどんどん来るんですが、今は物品要件も大分緩和して、仮想空間の商品のデザインの模倣に対しても権利が及ぶような検討がなされていると思いますし、韓国だけじゃないですね、欧州でも物品要件を緩和していると聞いています。ぜひ、むしろ世界から集まる、この国の意匠を出すといいことがあるというところまでやっぱり検討していただく必要があるんじゃないかということが第2点です。
 それから、人材育成のところなんですけれども、ここは実は少し問題があるのかもしれないと思って伺いたいんですけども、今回、知的財産人材育成の強化ということで、これはマネジメント人材、知的財産とそれから事業戦略、これを一体的に展開してということで非常に高度の人材育成の提案をされているということで、これは大変結構なことだと思いますが、そもそも知的財産人材育成の計画というのは、これは知的財産戦略計画の中で常に毎年提案されて、初等・中等教育から社会人専門からの教育、いろんなことをやってきているわけです。これは世界でももうそうですし、欧米でもそうだし、今の韓国なんかは、それこそ特許特会使って、中小企業向けの英語の依頼人教材までつくっているというような中で、これは最も知的財産の戦略の中で重要な項目だと思います。
 日本の場合も、2003年から2007年まで知的財産推進計画の中でいろいろな提言をしてきて、それが取り込まれていて、さらにその上にこういう高度な計画を今度は提案すると理解しているんですけれども、実はそうじゃなくて、2003年からやってきたことは、一部はもうなくなっているということではないかという指摘がある。具体的には例えば初等・中等教育の知的財産教育セミナーの開催授業とか、これはもう廃止になっていると聞いております。これは、事業仕分けが経緯だと言われているのですが、私もウエブ上で見ましたけれども、別に教育事業はしっかり行ってくださいと書いてあって、財政規律の問題で特別会計を使うとか使わないとかいうことの指摘があるだけなので、それがそのまま廃止になるというのはいかがなものかという話です。
 法改正だったら法改正をしたら基本的にそこで終わりなんだけれども、人材育成というのは、人材育成を1年やって、もうやめますとか、そういうのはやっぱり良くないと思うんですね。なので、今回のこの提案も、来年はやるけど再来年はやらなくてもいいとか、そういう話じゃないと思うんです。人材育成について、まず事実確認として廃止になっているのかどうか。普通は、廃止にするのだったら、成果を評価して、こういう効果が出て、こういう課題が残ったけどとか、そういうこともやるべきだと思いますし、そもそもそういう状況なのかどうかと。
 そもそもこの知的財産の人材育成の、今回もそうですけれども、積み上げで考えてきたと思うんだけれどもそうではないのかと。もう一回議論し直さないと、全体の優先順位とかやらないといけないのかどうかというようなところをちょっと確認したいということです。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 特に3番目のところの確認について、これは原参事官ですか。

○原参事官
 もちろん、これまで人材についてご議論をいただき推進計画にも盛り込んでまいりました。そういった積み上げが全く無になるということはございませんで、そういったところに加えて、どこにさらに視点を設けるべきかというところで、こういった12ページのような提案といいますか課題設定をして議論をいただきたいという趣旨で、今回提出させていただいたということでございます。

○妹尾会長
 最初のセミナーが中止かどうかという、ここのところのご質問はどうですか。

○渡部委員
 それ以外にも中止になったものがあるというような噂があるんです。

○原参事官
 その初等教育を含めた研修事業につきましては、事業仕分けの議論の中で廃止をすべきというご指示が出たというところは、事務局としても承知しております。
 ただ、その研修自体が否定されたということではないと承知しておりますので、その後必要な研修を具体的にどうやっていくかというところは、まだ課題として残っていると理解してございます。

○渡部委員
 課題が残っているのであって、ここの場で議論ができるようなものであれば、そうしていただく必要があると思いますし、そうでないと、ここでこれからやっていく議論も、どれだけ信頼性があるのかということにもかかわると思いますので、その点は検討していただきたいと思います。
 初等・中等をやっている方々って、なかなか中央から見えなくて、地方で本当に苦労してやっていらっしゃるので、実は相当やっぱりがっかりされているということが、ただ、ここの場では、だれも多分ほとんどご存じないと思うんですね。そういうことを踏まえて、少しご検討いただきたいと思います。

○妹尾会長
 今の最後の部分については、これはたしか指示が出たのは特許庁の所管ではなくて、文科省として継続的に考えるようにというニュアンスでの指示が出ていると伺っていますので、今、渡部委員のお話のように、この人材育成そのものについては一体どうなるのというのは、根本的に考えていきたいと思います。
 私自身もこれは大変な問題意識を持っていますので、ぜひここら辺のところを、次回以降深掘りをしていきたいというふうに思います。
 本当に今ご指摘のあったように、発明教育も含めてあるいは研究教育も含めて、初等・中等・高等教育の先生方頑張っていらっしゃるんですよね。私もその一人ですけれども、そのところではぜひお願いしたいと思います。
 佐藤委員。

○佐藤委員
 先ほど渡部委員からありましたように、世界の知的財産が日本に入ってきて、日本から外へ発信していくんだという世界をやろうじゃないかということは前回も申し上げましたし、先ほど荒井委員からもぜひそれをやるべきだというお話が出ました。
 その中で、特に今まで触れられなかった点だけ触れたいと思うんですけど、5ページのアジアの知的財産環境整備ということが、こういう言い方でとらえられているわけですけれども、実はこのサーチを取り込むということは、ある意味で囲い込みなんですね。また、それができるということは、それがグローバルスタンダードになっていくということなので、この調査をする、発展途上国を含めて調査協力ができる、またしていく、それで喜んでもらえるというのは、これはすごく大きな戦略的な意味があると思っています。
 そういう意味で、単にアジアのための知的財産環境整備だという観点でとらえるのではなくて、ハブ構想のベースになるインフラづくりなんだという位置づけをすべきだろうと思います。
 我々一番最近強く思うのは、日本の企業が世界のライバルの出願状況を見るときに、どこで見たら一番良いかというと、韓国のデータベースを使うのが一番良いということになってしまうんです。そうすると、そこをベースにして出願もするし、またそこから世界に出願が出されていくということになっていくので、そういう意味では、このサーチの部分のインフラ整備、それと海外支援・協力、それを拡大していくというのは非常に大きなインパクトのある事業なので、これは早急に進めなければならないテーマだと思っております。
 それから、2点目は中小企業の海外進出というのはもう不可避でして、これをやらない限り日本の中小企業はもう生き残れないと思っています。しかし、いいシーズがあっても実際に海外展開できることをコンサルし、アドバイスできる機関がない。外へ行きたいのだけれども、誰が助けてくれるんだというのが現実の問題でございます。
 それで行ってこそ初めて海外で技術を生かし、また知的財産も生かせるというビジネスになるんだろうと思うので、この部門をぜひ早急に支援していかないと、日本の中小企業のグローバル展開、またグローバル的なコンペティションに戦っていくという環境は整わないのではないかと思いますので、ぜひこの点も速やかに国として対策を考えていただきたい。
 以上、2点だけ申し上げます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 佐々木委員。

○佐々木委員
 人材育成のところで、ちょっと確認したいんですけれども、標準化人材のところでも多分こういう議論になったと思いますが、企業経営者の知的財産に対する意識が低いと、私は個人的には思っていないんですけれども、どこがボトルネックなのか。例えば、今ここに東大、金沢工大、東工大とありますけれども、供給側で足りないのか、あるいは供給過多なのか。もし先生が足りないということであれば、その先生をやれる人材は多分いると思うんです。ところが大学の先生となると、博士でなかったらいけないとか、何々でなかったらいけないとか、そういうネックがあるのか。その辺もうちょっと具体的に解きあかしてやらないと、この人材育成というのは一歩、本当に具体的な一歩として進まないんじゃないかなと思いますので、どこが一体足りないのか、どこで詰まっているのかというのを、もう一度確認したほうがいいんじゃないかなと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 福島委員。

○福島委員
 先ほど、荒井委員からご指摘のあった3点の中で、国際的な知的財産制度やその環境整備について、私も産業界の一員として、是非とも推進計画に入れてきっちり進めていただきたいと思います。また、もこれは荒井委員が言われるように、推進すべき内容の第一歩であり、それが全てとは考えていません。また、一方では中国やインドを含めて未だ出来ていないところも沢山ありますが、これからのグローバルな事業展開を視野に入れた場合に、非常に難しい問題かもしれませんけれども加速していただきたいと思います。
 また、昨年来、EU共通特許のお話が新聞の色々なところで議論されていると思いますけれども、そういった広域的な共通審査や共同審査のように更に一歩進んだ形の制度のあり方ということも、我々グローバルな事業をする立場から見れば是非とも考えていただきたいと思います。例えば、ASEANの枠組みやAPECの枠組についても、色々な議論があるかとは思いますけれども、そういった広域で同じ権利が同じようなタイミングで取得できる、結果的にコストも安く出来るような制度は、これからグローバルに知的資産を増やしていく上で、我々にとっては有難いものと思っています。
 このような知財制度を議論するときに、少し無理が伴うかもしれませんけれども、先程の佐藤委員からありました調査の議論にも関連して、是非とも日本特許庁における英語審査や英語による権利の表示ということを視野に入れた検討を考えていただきたいと思います。これは、日本で権利化された権利が英語で表現されていれば、諸外国の審査においても当然それが引用される訳ですから、権利の質的な向上にも必ず結びつくと思います。
 また、我々のグローバル展開において、海外にいる社員が生み出した権利を日本で権利化しようとしたときに、もし英語で審査していただけるのであれば、これらの権利を日本へ展開することも、よりハードルが低くなってくるという視点もあると考えています。他にもいろんなメリットやデメリットがあるかもしれませんが、一度ご検討いただきたいと思っています。
 最後に、もう一点あります。これはちょっとした補足です、最後の12ページの標準化人材に関する意見という事務局の資料において、非常に残念に感じているのですけれども、推進計画2010の検討において出しました私の発言とは全く違う方向の表現が書かれていることについて、どう理解していいのかなと思います。そのときにも申しましたように、標準化のための標準化作業をやってこられた方々を企業は評価できせん。しかし、事業に資するような標準化活動をした方々は適正に評価されています。これは、弊社に限らず同業他社を見ても幾らでも事例を挙げることはできます。
 このような認識の中で、何故こういう表現で書かれてしまうのかという展について、ちょっと理解に苦しんでいるところでございます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 最後のところは、何か作文力のご指摘だろうということなので、事務局で考えていただきましょう。
 まだまだご議論があると思うんですが、どうしてもということで、じゃ、上條委員。

○上條委員
 申しわけありません。2点ほど申し上げたいことがございます。まず、人材育成のところで、標準化をするためだけの標準化人材育成にならないようにすべきというお話については、今、福島委員がおっしゃったご意見に、深く賛同いたします。
 2点目として、我が国の知的財産制度の魅力を高めて、世界中の方々に日本へ特許出願して頂き、一方で、日本人が日本だけでなく世界中で知的財産権を取得していく、そういったことを国際競争力強化の観点から目標設定した場合に、どのような知的財産人材育成を行うべきか、を考えますと、先進的な「知的財産マネジメント人材像」をあらためて明確にする必要があると思うのです。世界各国において、例えば、インドや中国でどのように知的財産権を取得できるか、権利侵害にはどう対処したらいいのか等、グローバルに知的財産制度を学べる場が必要になると思います。一方で、日本の知的財産専門職大学院に中国や韓国、東南アジアの方々に、知財を学びに来て頂くことにより、日本の知的財産制度に馴染み、日本の知財人材と交流する場を持って頂くことも重要だと思います。そういったグローバルで双方向的な知的財産人材の育成を推進すべきである点を、ぜひ知財推進計画の文言にに一言入れて頂きたいと思っております。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 今日、今までご議論いただいたところ、大きいのが2つ恐らくあるだろうと思います。
 1つは、日本の知的財産制度そのもの、あるいはその運用、これがアジアの先導的な準拠にならないともうどうしようもないぞということであります。すなわち、知的財産制度間競争が始まっているというか、日本はもう遅れ始めているということの危機意識をもっと前面的に出すべきであるということが、皆さんのご議論の一つであろうということであります。
 世界特許システムということよりも、もっと露骨な言い方になっちゃうんですけれども、日本の知的財産制度がせっかくここまで皆さんのご努力で来て、運用も極めてすばらしいものができているにもかかわらず、なぜ世界の知的財産制度間競争において遅れをとり始めたか、これについての真摯な危機意識を持って戦略を練っていこうと、これが第1点だと思います。
 もう一つは、人材育成のほうで後半ずっと議論が出ました。私も専門としてもう山ほど言いたいことがあるんですけれども。人材育成については。基本的考え方をこの調査会で人材育成についての戦略が構築されてから数年たちます。なので、ここでもう一回根底から考え方を少し整理し直すということが必要なのではないかと思います。
 あと、個々の内容については今までご議論があったと思います。例えばベンチャー・中小企業の支援の仕方についてだとか、海外に向けてとか、いろいろあると思います。
 それから、文中にありましたワンストップ窓口なんかの話もありますけれども、これも人材が全くいないときにこれだけの18億を使って本当に実効が上がるのかどうかというようなことも背後にはあろうかと思います。そういうことも含めて考えていきたいと思います。
 今回だけではなくて、論点整理については次回以降もご議論を続けていきたいと思いますので、そのつもりで皆さんのほうでまだご指摘をいただければと思います。
 あと、そういえばということがありましたら、次回までに事務局ないし私のほうにお話をしていただければと思います。
 なお、5月の取りまとめに向かって2月、3月、これ集中的に議論をしていきますが、今日のお話からいけば、関係省庁に検討していただいて、その上でここに来ていただいてヒアリングをするということも、この専門調査会としては考えたいと思います。そういうことに関しても何かご意見あるいはご提案があれば,ぜひお願いしたいと思います。
 以上でございます。
 きょうご発言のなかった委員の先生方からも、あるいはご発言のあった方もまた追加であれば、ぜひお寄せいただきたいと思います。
 それでは、予定の時刻を超えてしまって恐縮なんですけれども、最後に和田大臣政務官、何か話を伺って、どうでしょう。

○和田大臣政務官
 毎回、皆さん方本当にありがとうございます。
 短く参りたいと思いますが、皆様方のご議論を聞いておりまして、私なりに政治が反省すべき、行政が反省すべきところを考えておりました。
 まず、知的財産の我が国の国際競争力を高めるというのは、何のことを指すんだろうと。ここは今の皆様方のご議論を聞く限りは、もう既にかなり事態は進んでしまっておりまして、日本が日本の技術と人材を持って世界の各国に自分たちのところへ寄ってきてくれと言うには、かなり深刻な事態に至っているのではないかと思わざるを得ないんです。
 そこで、だからといって弱音を吐くのではなくて、ここから先どうやって日本の国際競争力を担保するかということですけれども、一国の力で既にかなり遅れをとっているようであれば、やっぱりグループ化することに、自分たちのアジアのリーダーシップを発揮するというんでしょうか。日本が、例えば韓国が非常に今優位に進めているようでございますが、韓国や中国というアジアの中心となる国々と積極的に知的財産外交を繰り広げるべきではないかということを思いながらお聞きいたしました。これらは、私ども政治の役割でもありますし、またそれについてきていただく民間レベルの交流もやっぱり必要だと思います。
 これから先、こういった現状を踏まえて対処するとすれば、もう日本の技術に韓国も中国も含まった形で、例えば3者連合でアジアをみんなで引っ張っていきましょうというようなメッセージもあってよいのではないかと思いました。知的財産外交について、ちょっと考えさせられた今日の議論でございました。
 最後、もう一点は、先ほどおっしゃっておられた人材の教育についてですが、事業仕分け等で言われた研修の是非ということは、私も実は仕分けにある程度携わったものですから、皆様方に決して誤解をなさっていただきたくないという趣旨で、もう一度だけ申し上げておきたいと思います。
 決してこういった分野の人材育成、人材研修の意義を否定しているわけではなくて、ぜひやるべしだと思っています。これは蓮舫大臣も含めてそう申し上げて良いと思います。しかし、今までの研修のやり方そのものは、実は上がっていないと認定したということでございます。ですから、新たなやり方を模索していただく必要があるという判断で仕分けが行われたと思っていただければと思います。つまり、新しいやり方で研修人材育成をしっかりやってほしいというのが、あの仕分けのメッセージだと思っています。
 ひとつ私なりに、この数カ月間携わってみて思いますのは、日本がしっかりとした研修を行う、つまり人に寄ってきてもらうためには、国内の人間も外国の人間も寄ってきてもらわなければいけないんですが、外国と比べて何が足りないんだろうなと思ったときに、やはり国としてのコミットの仕方が足りない。単年度単年度で、これやりますんで来てくださいと、これが終わったら次あるんですかと言われたときに言葉がない。ところが、ほかのアジア各国は、これをやってくれれば次にもあなたはもっとグレードの高い研修を受けさせてあげます。こんなことを用意していたりします。そういったことで、やっぱりこれらも戦略を持って取り組まなくては、結局中身がいいものをやると仮定したとしても、なかなか外国はついてきてくれないと自省いたしております。
 ですから、先ほど申し上げましたが、これから先、新しい科学技術担当の大臣は玄葉大臣でございますが、玄葉大臣には常々この分野について、中長期戦略が必要だということをご相談申し上げておりまして、国家戦略担当大臣なものですから、その面では非常にご理解ある大臣だと思っています。
 皆様方のお力で中長期的に人材育成って、例えば5年間でこういった人材を育てるべしだと、こんな目標でも立てていただければ非常に政務としても採用しやすくなるんじゃないかと思っています。
 また、次回以降いろんな方面からそういったお知恵を拝借できれば幸いでございます。
 以上です。ありがとうございました。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 今、政務官のお話の根底にありますのは、我々専門調査会が細部にわたる戦術的な末端を議論するんではなくて、大所高所から政策提言を戦略的にできるようにということのご期待のあらわれだと思いますので、我々も頑張っていきたいと思います。
 これから5月まで、かなり皆さんのご予定を縛ってしまいますけれども、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、時間が大幅に過ぎましたので、事務局のほうから何かありますか、連絡事項。

○原参事官
 次回でございますけれども、27日木曜日、10時から12時で開催させていただきたいと考えてございます。
 本日の議論も踏まえまして、引き続き「知的財産計画2011」に向けた論点についてご議論をいただく予定でございます。
 以上でございます。

○妹尾会長
 それでは、以上で本日は終えたいと思います。
 どうも長時間にわたりましてありがとうございました。