第1回 ユニバーサルデザイン2020評価会議 議事録 日時:平成30年12月4日(火)17:45 - 18:30 場所:総理大臣官邸4階大会議室 出席者: 【議長】 平田 竹男   内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会 推進本部事務局長 【構成員】 阿部 一彦   社会福祉法人日本身体障害者団体連合会会長 久松 三二    一般財団法人全日本ろうあ連盟事務局長 伊藤 和男   社会福祉法人日本盲人会連合副会長 久保 厚子   全国手をつなぐ育成会連合会会長 小幡 恭弘   公益社団法人全国精神保健福祉会連合会事務局長 市川 宏伸 一般社団法人日本発達障害ネットワーク理事長 長井 浩康   社会福祉法人全国重症心身障害児(者)を守る会事務局長 今西 正義 特定非営利活動法人DPI日本会議顧問 大日方 邦子  一般社団法人日本パラリンピアンズ協会副会長 大濱 眞  公益社団法人全国脊髄損傷者連合会代表理事 斉藤 幸枝   一般社団法人日本難病・疾病団体協議会理事 朴 善子    公益財団法人日本補助犬協会代表理事 松本 江理   特定非営利活動法人日本補助犬情報センター理事 秋山 哲男   中央大学研究開発機構教授 橋 儀平   東洋大学ライフデザイン学部教授 中野 泰志   慶應義塾大学経済学部教授 星  祐子   独立行政法人国立特別支援教育総合研究所インクルーシブ教育 システム推進センター長 山崎 泰広   順天堂大学医学部非常勤講師 山崎 まゆみ  VISIT JAPAN大使 議事: 【内閣官房 橋統括官】 ユニバーサルデザイン2020評価会議を開催いたします。 本日はご多忙の中、また遅い時間の開催となりましたにもかかわらずご参集いただきましてありがとうございます。 本日は冒頭報道関係者に公開させていただいております。開会にあたりまして、議長を務めます東京オリパラ推進本部事務局長平田よりご挨拶いたします。 【平田議長】 本日はご多忙の中、「ユニバーサルデザイン2020(ニーゼロニーゼロ)評価会議」にご出席いただき、ありがとうございます。  2016年の2月、東京大会を契機として、心のバリアフリー、ユニバーサルデザインの街づくりを推進し、大会のレガシーとして残していくため「ユニバーサルデザイン2020関係府省庁等連絡会議」を立ち上げました。皆さまと一年間にわたる議論を重ねた結果、昨年2017年2月、関係府省庁等連絡会議を関係閣僚会議に格上げし、障害者団体の皆様や安倍総理大臣のご出席もいただき、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を決定いたしました。 行動計画を踏まえ、昨年に学習指導要領が改正され、2020年から全ての子どもに心のバリアフリー教育を実施することが正式に決定されました。また、今年5月に改正バリアフリー法が成立するとともに、バリアフリー基準が順次見直されるなど、ユニバーサルデザインの街づくりも大きく進捗しました。 このような施策の進捗状況について、障害者団体や学識経験者の皆さまに評価していただくべく、先ほどの第三回関係閣僚会議において、「ユニバーサルデザイン2020評価会議」の設置が決定されたところでございます。 行動計画に基づき各省庁が実行している施策について、皆様からの評価を踏まえ、改善を重ねることにより、行動計画の実行を加速してまいります。評価会議を通じて、行動計画の実行を加速し、レガシーとしての共生社会の実現につなげていきたいと考えておりますので、何とぞ今日の議論をよろしくお願いいたします。ありがとうございます。 【内閣官房 橋統括官】 平田議長、ありがとうございました。早速でございますが、議事1、評価会議の設置趣旨について簡潔にご説明申し上げます。 資料1「ユニバーサルデザイン2020評価会議の開催について」をご覧ください。UD行動計画に基づき評価会議の開催を先程の関係閣僚会議で決定いたしました。 今回の参加者につきましては資料2をもって代えさせて頂きます。 続きまして資料3でございます。ユニバーサルデザイン2020行動計画の実効性担保の枠組みの横紙をご覧ください。東京オリパラ推進本部の下に関係閣僚会議がございます。そこで先ほど申し上げましたようにこの評価会議の決定をいただいたところでございます。左下でございますが、毎年度評価会議のPDCAサイクルを実行的に回していくということでございます。内閣官房におきまして各年度省庁においてどのような施策を実施したのか、実施結果、それから取組みの予定、進捗を確認して皆さま方にわかりやすくお示しをし、評価会議において改善を議論いただきご提案頂くと。右下でございますが、それを踏まえ、関係各省において提案に基づき施策の検討を行い改善等を措置する。それをまたぐるっとまわりまして内閣官房にて進捗を確認し皆さま方に進捗を報告し、また改善を図ると。このPDCAサイクルを年度ごとにきちんと回していかせていただきたいということでございます。 次に議事2今後のスケジュールでございます。資料4をご覧ください。まずは直近のスケジュールということでございます。本日12月4日、第1回評価会議を開かせていただきまして、設置趣旨を申し上げて今後のスケジュールについてお諮りを頂きまして皆さま方からざっくばらんにご意見を頂戴したいと思います。そのうち、今年度末を目途と致しまして第2回の会議を開かせていただき、行動計画に係る各省の取組、本日も関係各省から担当者同席しておりますのでここでいただきましたご意見は直ちに関係各省と共有させていただきます。第2回の評価会議でそれを踏まえて各省の取組についてまたご報告を申し上げ、障害者団体あるいはその関係者の皆さま方からご意見を頂戴して直近のスケジュールにつきましては、こう考えてございます。プレスの方々、頭撮りは以上にさせていただきますので、ここでご退場いただきますようお願いいたします。 それでは早速でございますが、意見交換に移りたいと思います。順番自由でご意見のおありになる方からお手を挙げていただいて。 【日本身体障害者団体連合会 阿部会長】  日本身体障害者団体連合会の阿部でございます。ユニバーサルデザイン2020行動計画は、先ほどのお話にもありましたが、人々の心のあり方を変え、そしてまた環境も変えるということでアクセシビリティとても大事なことだと思います。 この評価会議に関してましては、やっぱり、地方部といいますか地域の状況もしっかり評価する必要があろうかと思いますのでそのへんのところもよろしくお願いしますということと、あとは参考資料の行動計画の真ん中くらいに、2017年から2020年の間というようなことが書いてあると、先程もパーソンズ会長もこれを触媒に発展していくものだということですので、この評価会議は2020年で終わるようなものではないとは思いますけれどもそのへんを確認させていただきたいというのと、先程ご意見でも申し上げましたけれども、ともすると障害領域に限られたものだという風に多くの国民の方に理解されたらとてもまずいことだと思いますので、多くの方々を巻き込む、企業を巻き込む、地域団体を巻き込むという取組みになるようによろしくお願いしたいと思います。以上です。 【日本難病・疾病団体協議会 斉藤理事】 日本難病・疾病団体協議会の斉藤でございます。確認がひとつあります。2020の行動計画の13ページ、先程閣僚会議の時にも申し上げたのですがBのところ下の方です。法定雇用率の見直しということで平成30年度35年度と書いてあります。30年度は今までの身体・知的に加わって精神の障害者の方々が入ったと認識しております。次は難病患者も含めて違う障害が入ると考えてよろしいでしょうか、というのが1点でございます。 次は報告めいた形なのですが、今年の2月に東京都内の小学校に行って参りました。そのときにオリパラの教育アワード校に指定されてまして、子供たちがその成果を発表していたり、お医者様になった完全に耳の聞こえない不自由な方の講演がありました。非常に子供たちも感銘を受けながら、障害者とともに一緒に生きていくんだということを、そこは特別支援教育で障害者を受け入れているところなんですが、より強く認識をしていたように感じました。小さい時からの心のバリアフリー教育がいかに大事かを感じてまいりましたので、進めて行っていただければと思います。私共としても協力させていただければと思います。 【DPI日本会議 今西バリアフリー担当顧問】  DPI日本会議の今西でございます。これまで行動計画に基づいて「街づくり」や「心のバリアフリー」について、様々な施策を各省庁で取り組んできたと思います。そうした取組が、今どこまで進んでいるかなかなか見えてこない。その点について、早い段階で進捗をHP等で周知していく必要があると思います。同様に、この過程の中で取り組まれた好事例も相当数出てきていると思う。この好事例についても、例えば新国立競技場でのUDワークショップや、成田空港のUD委員会など、こうした取組みは、多様な障害者の参画のもとで議論を重ねてやっているものです。こうした取組みを含めて周知していくことが必要と思います。それから、この評価会議ではPDCAサイクルで進めていくわけですけれども、最終的にレガシーとして何を遺していくのかというところです。例えば国土交通省では、バリアフリー法第4条の国のスキームの中に「評価会議」を入れています。他の省庁でも同様にこういった評価会議を設置し評価を行うことをレガシーとするべきではないかと思います。その後何を遺していくかをきちんと検討する必要があると思います。以上です。 【日本補助犬協会 朴代表理事】 公益財団法人日本補助犬協会代表理事の朴善子と申します。まずは、私共、身体障害者補助犬の分野から、ユニバーサルデザイン2020関係省庁連絡会議や心のバリアフリー分科会をはじめとする、一連のユニバーサルデザイン関係の会議に委員として参加させていただきまして、また本日も、この評価会議にお招きいただきまして心から御礼申し上げます。2002年に身体障害者補助犬法が施行され、三種の補助犬が、身体の不自由な人の社会参加に寄与する犬として法律で認められて16年になります。しかしながら、まだその認知度は充分でなく、未だに、社会生活を営む上で利用する店舗から断られてしまったという訴えが後を絶ちません。このことから、ユニバーサルデザイン2020行動計画の中に、「身体障害者補助犬を同伴する人」という言葉を、敢えて各所に明示的に盛り込んでいただきましたことは、補助犬の認知度を高めるうえで、大変意義深いものになりました。ありがとうございます。このたび、ユニバーサルデザイン2020行動計画が単なる計画で終わらないために、この評価会議が設置されました。これからはこの評価会議の一員として、行動計画策定の初心に今一度立ち戻りたいと思います。共生社会創設に向けてその精神が計画に則って行動に移されているのかどうか、この評価会議で改めてよく考察していきたいと思います。また折に触れ、補助犬を取り巻く環境の課題を解決するための日本補助犬協会としての取組につきましても発表させていただければと思っております。これからもどうぞよろしくお願いします。 【全国精神保健福祉会連合会 小幡事務局長】 全国精神保健福祉会連合会の小幡です。先ほど今西さんからもお話がありましたが、評価を行っていく上で、現状の進捗状況を管理し、ハード面の数値目標があるものは比較しやすいと思いますが、教育を含むソフト面の評価の仕方をどのようにしていくのかという点が非常に気になります。とりわけ、社会モデルを中心に障害の有無を感じさせない成熟した社会というのが行動計画の趣旨になるかと思いますが、これについて、どのような評価軸をもっていくのかという点を、是非、私達とも意見のすり合わせをしながら軸を定めていただきたいと思います。 【全国手をつなぐ育成会連合会 久保会長】 ありがとうございます。全国手をつなぐ育成会連合会の久保でございます。私どもは、障害者の権利の充実を進めるため、28団体が集まって活動しております。私どもは、オリンピック・パラリンピックに向けて、というよりも「beyond」と考えておりますので、来年度から、障害者の文化別に、全国7〜8か所でトーチが運ばれていくよう計画をしております。文化庁や厚生労働省と協議をさせていただいているところでございます。各地で、いろんな障害者団体が一緒になってやろうという動きでございますので、その中で、この行動計画のことも一緒に見ていきたいと思っております。私たちが、障害者の芸術や文化を進めると同時に、この行動計画のことを広く国民の皆さんにもお知らせし、そして私達自身も再確認しながら進めていきたいと思っております。是非、一緒に連携しながら進めさせていただきたいと考えておりますのでどうぞよろしくお願いいたします。 【全国脊髄損傷者連合会 大濱代表理事】 脊髄損傷者連合会の大濱です。このPDCAサイクルの中で「評価会議にて改善を提案」と具体的に書かれていますが、実際のところ、いろんな課題があると思います。その課題を、この評価会議の中で何が問題なのかということをきちんと課題整理をしないとまずいのではと。例えばUDタクシーは手を上げても止まらないとか、実質的にUDタクシーが使えていないという現実があるわけです。UDタクシーに車いすを乗せるには20分くらいかかるとか、私などは止まってもらえない。そんなUDタクシーが走っている現状を変えるために、具体的な問題点について改善案をここで提案していかないといけないと思います。次は3月末までにもう一度あると思いますが、具体的にどうしていくのかという方向性を位置付けてもらえればと思います。以上です。 【内閣官房 橋統括官】 ありがとうございます。ただ今大濱様におっしゃっていただいたことについてですが、本日は第一回目ですので、皆様が「特に」「何を」感じておられるかをざっくばらんにお伺いしたいと思います。おっしゃっていただいたように、具体的に、どういうところをどうしていかないといけないのかというのを、評価会議でお話させていただきたいと思います。阿部様からいただいたように、「地域の状況をきちんと踏まえる」あるいは、今西様がおっしゃっていただいたように「HPで好事例を含めて周知をする」、「他省庁にも評価会議の取組みを広げていく」というお話がありました。また、阿部様の「しっかりと実のある会議にする」、小幡様の「ソフト面の取組みをどう評価していくのか」という点についても話をしていきたいと思います。また、久保様からは「障害者の文化・芸術の取組み」についてお話いただきました。 また、本日は厚生労働省が来ておりますので、先ほど斉藤様がおっしゃった件で、もしこの場で確認が取れるのならご発言いただきたいと思います。 【厚生労働省】 厚生労働省でございます。現時点ではまだ検討中かと思いますが、正確なところは事務局を通じて回答させていただければと思います。 【日本難病・疾病団体協議会 斉藤理事】  はい。率の数字だけなのか、幅なのかという点をお願いします。 【厚生労働省】  担当に伝えます。 【内閣官房 橋統括官】  1つ1つ深くお答えして頂く時間がございませんので、この後は学識者の皆様のご意見もお伺いしていきたいと思いますが、その前に、団体の皆様から他にご意見はございますでしょうか? 【日本盲人会連合 伊藤副会長】  日本盲人会連合の伊藤と申します。様々なバリアフリーの対策の中で情報提供といったようなことも含まれていますが、私ども視覚障害者というのは情報の獲得が非常に難しいということがあります。例えばホームページ等に情報が掲載されたとしても、そのホームページが視覚障害者にとってまだ読みにくい、読めないものがたくさんあります。 また、今日は点字版の資料をいただいており、ありがたいと思っておりますが、こういった会議において、資料をデータでいただく際、テキスト情報があれば音声で読めます。しかし、資料が文字情報のない画像のPDFの場合もあり、このあたりの徹底がまだないと感じています。 つまり、情報の伝達は、まだまだ視覚障害者にとっては非常に厳しい状況にあると思っています。それについて今回あまり触れられておらず、もう少し考えて頂ければと思います。たとえば官公庁の様々なホームページにおいて情報を公開いただいても、それが視覚障害者に読めないものであれば何もバリアフリーになっていないのではないでしょうか。そのあたりを検討していただければと思います。 【全日本ろうあ連盟 久松事務局長】 全日本ろうあ連盟の久松と申します。一つお願いがございます。今回の東京オリパラに対して大変興味を持っている障害当事者がたくさんいらっしゃいます。ボランティアとして関わりたい、大会運営を援助したい、支援したいという方の意見を聞きますが、関わり方がわからないという声もございます。障害当事者も関わりを持って経験を積むこと、全国各地でスポーツ大会の運営を担っていくこと、2020年の経験を今後に生かしていくために、今から全国各地で広げていくことも大切ではないかと考えております。 また、東京2020大会で手話のできるボランティア募集もありました。手話のできるボランティアをどう活用するか検討していると聞いています。組織委員会では手話のできるボランティアをどのように生かすのか、この経験をさらに拡げていくことをご検討いただければありがたいと思います。 【日本パラリンピアンズ協会 大日方副会長】 今後評価会議にて改善を提案させて頂けるということですので、私から3つのご提案をさせていただきたいと思います。 一つは移動の円滑化に関わる問題であります。障害者手帳を持っておりますと、航空運賃や乗車券の割引制度というものがございまして、社会において活動するために非常に有意義な制度でありがたいと思っており、事業者の方々に深く感謝をしております。現在割引を受けるためには窓口で障害者手帳を都度提示して、割引の運賃を適用していただくことが必要でして、利用者が集中すると待ち時間が長くなってしまう状況が発生しています。現在の社会ではクレジットカードなどによる電子決済が進んでいますので、障害者割引を適用する際のインターネットでの予約対応や障害者手帳の電子情報化をぜひ進めて頂くとありがたいと思っております。すでに中国ではこういった電子カードが発行されている例もあると聞いておりますのでご検討いただけるとありがたいと思います。  二つ目はホームページについて、先ほどご発言がございましたけれども、ホームページを読み上げ機能を実際に使ってみると、かなりばらつきがあるというのが実態のようでございます。読み上げにどのように対応していくかというガイドラインはすでにあるかと思いますが、あまり徹底されていないというように思いますので、ぜひ障害当事者の意見も聞いていただきながら進めて頂きたいと思います。  最後三つ目は心のバリアフリーの啓発について、もう少し工夫が必要なのではないかなと思っております。例えば「誰でもトイレ」という言葉がありますけれども、これがやや間違って使われていて、誰でも使っていい、つまりそこに健常者も長い列を作ってしまえば障害当事者が使いたくても順番を待たなければいけない「誰でもトイレ」という誤解を生んでいるような状況もございますので、もう少し心のバリアフリーが正しく使われるように工夫を一緒にしていければと思います。 【日本補助犬情報センター 松本理事】  日本補助犬情報センターの松本です。当会では補助犬の育成や、認定業務などは行っていないのですが、補助犬を伴って社会参加をする障害を持っている方の、社会に出る時のバリア等についての相談を受けるだけではなく、そういった補助犬を連れた人を受け入れる側の業者や企業、街等の受け入れに対する迷いや不安に関する相談を受けることがよくあります。社会に対しての啓蒙や、学びの場を提供したり、情報提供を当会の機能として行っていますが、そのような意味で、一当事者としてお願いするだけでなく、受け入れる社会の側の迷いや悩みにも目を向けながら、歩み寄りができるような形を目指していきたいと思っておりますので、当会の機能が少しでも寄与できれば良いなと思いますのでよろしくお願いします。 【全国重症心身障害児(者)を守る会 長井事務局長】 全国重症心身障害児(者)を守る会の長井と申します。よろしくお願いいたします。私共の会は、重度の身体障害と重度の知的障害を併せ持った重度心身障害児者と呼ばれる「最も弱い者」と私共は思っておりますが、その「最も弱い者」をひとりももれなく守るという考え方のもとに活動をしております。各省庁の皆様の支援なくしては、子供達の生命の維持、日々の生活が成り立ちません。東京オリンピック・パラリンピックを契機として、障害者に対する理解が進むことに期待しており、オリンピックはスポーツの祭典ではありますけれども、全国手をつなぐ育成会の久保会長からもお話のあったとおり、28団体が集まって芸術や文化も取り入れた文化プログラムの計画が進められているところですので、私共も、スポーツですと少し遠い感じがいたしますけれども、芸術ですと、例えば28団体の中にハンドスタンプアートという、障害のある子供自身の手とか足によるスタンプを使って大きなアートにする活動もございます。私共もオリンピック・パラリンピックに参加しているという実感を持ちたいと考えておりますので、よろしくお願いします。 【内閣官房 橋統括官】 ありがとうございます。音声情報の伝達のお話、あるいは、ボランティアとして大会運営に積極的に関与していきたいというお話、あるいは、障害者手帳の電子情報化のお話、心のバリアフリーの「伝え方」のお話など、いろんな視点を頂戴しました。学識の方々にも、ここまでのお話をお聞きいただいて、ご意見をいただければと思います。 【中央大学 秋山教授】  今研究している最中の、成田空港の、障害当事者十数人と、学識経験者10人くらい、事業者10人くらいの約30人体制で、毎回7時間くらいで30回くらいやり終えたんですが、そこでどうしても抜けるのがソフト的な部分で、イギリスとアメリカ、欧州の調査をした結果なんですが、障害者を誘導するソフト的なしくみがないんですね。具体的に申し上げますと、IPCは国間のガイドラインは、国間で異なってはいけないということがあります。ところが、JALとかANAとかいろんな航空会社でサービスに凹凸があります。その凹凸を無くすために、アメリカの航空会社は1つの会社に集約して委託をして、お手伝いが必要な人にきちんとサービスをすることで凹凸がなくなるように配慮しています。EUでは、2009年に法律ができ、エアラインが独自のサービスをやってはいけない、したがって、空ビル会社がそれをきちんとやりなさいという法律が既にできている。残念ながら、10年経っても日本はそこがゼロですね。日本のユニバーサルデザイン、空港については、細かいところはすごく頑張っていて、欧州にもアメリカにも勝っています。ところが、大きなところ、全体を見渡すとやはり欧米より劣っている。このハードと人的支援のバランスが大切であるということに気付いてないというのが、空港の設計をやっていてつくづく感じるところです。これが第1点です。それ以外に、先ほど情報(ICTなど)の問題が視覚障害の方から出ましたが、これが色んな面で遅れていて、IPC(国際パラリンピックコミッティ)のガイドラインにもほとんど書かれてない状態です。IPCは、古いタイプの情報の「これを守りなさい」というレベルなので、これでは間に合わない。新しくしっかりと作らないといけないというのが情報の問題です。そして交通については「MaaS:Mobility as a Service」という、フィンランドで、スマホ1つで全ての交通手段を使える、あるいは一定お金額で1ヶ月間自由交通をに使えるというシステムが完成しています。こういうことを考えると、なんと日本は遅れちゃったのかなというのがこのICTの世界です。それから、UDタクシーにつきましては、大濱さんの言うとおり、横乗りするには5ナンバーでは小さすぎるのか?あるいは教育が行き届いていないということと、乗車拒否が極めて多いということで、「使えない」という状況に陥っている障害者がたくさんいます。これについては、国が指導しないとまずいなと感じています。教育はしているといっても、タクシー会社の末端まで行き届いていなかったり、あるいは教育がずれていたりということもありますので、ここは是非強化をしていただきたいと思います。以上です。 【VISIT JAPAN大使 山崎先生】 はい。先ほど伊藤さんから、旅館やホテルに関するバリアフリー表記がまだまだされていないというお話がありましたので、私はそれの専門なのでお答えさせていただきます。昨年度、私も委員を務めさせていただいたんですが、国交省、観光庁は、旅館やホテル、観光地に関するバリアフリー表記について、努力を義務づけるという法案を検討してきました。そして、義務づけられたことが宿泊団体にも通知されています。それは先月のことです。そして、表記の好事例として、表記の仕方みたいなものも、旅館組合などに届いたそうです。2020年に向けてそういったことが行われているということ、そして、旅館、ホテルのバリアフリー改修に関する補助もされています。並びに、接遇マナーについても、しおりが宿泊施設や観光施設に届いていると思います。こうしてUD行動計画に基づき、少なくとも私の専門の国交省や観光庁では進んでいます。ただ、現場の観光地、温泉、旅館、ホテルの現場の様子を見ておりますと、こうした観光庁の動きが、これからの超高齢化社会に向けたものとか、まさにUD行動計画の基本理念である、こちらの1頁にある「共生社会の実現に向けての社会のあり方を大きく変えるための絶好の機会である」ということが何か抜けており、ユニバーサルデザイン2020行動計画で決まった基本理念を、観光に関わることだけでなく、様々な分野で基本理念の周知を徹底した方が良いと現場を見て思いました。以上です。 【東洋大学 橋教授】 東洋大学の橋です。まず1つは、私は先週、2012年ロンドン大会のレガシー調査に行きました。そこで障害者団体やレガシー団体の話を聞いたのですが、障害者団体の評価はかなり厳しいものが正直なところ出ておりました。街に出ても、ユニバーサルデザインやバリアフリーが進んでいない状況もありました。私達が2020を超えた時点で、やはりこの行動計画を具体的に評価していく、先ほど阿部さんからも「継続してほしい」という話がありましたが、私も、できるだけ早い段階で、遅くとも2020年の段階では評価をきちんとして、そしてその後の本格的な超高齢化社会、2020年問題や2030年問題に対応するレガシーをしっかりと作っていく、そういうプランがこの行動計画の中で求められているのではないかと思います。それからもう1点は自治体への波及です。大都市圏ではいいですが、地方都市の様々なバリアフリー条例も含めて、これは国土交通省が所管をしているところですが、 そういった波及が速やかに進められていくことによって、様々な小規模店舗の問題や、身近な交通機関のつなぎの問題などが解決していく可能性が高いので、できれば国も地方も一体になっていくような、単に分権だけで片付けられないところも評価していけるような体制作りが求められていると思います。以上です。 【慶応大学 中野教授】  中野でございます。心のバリアフリーについてです。UD2020行動計画では、心のバリアフリーは、単なるソフト面の配慮ではなく、ハード・ソフトを含めた社会の構築のされ方、あり方の問題、つまり、障害の社会モデルの観点から捉える必要があると位置付けられたわけです。ところが、現在、各省庁等で行われている実践では、必ずしも、障害の社会モデルの観点が共有されていないと感じますので、そこをしっかり押さえることが必要だと思います。例えば、今回、学習指導要領の中に、心のバリアフリーを入れていただいたのは非常に素晴らしいことだと思っていますが、残念ながら、心のバリアフリーの捉え方が、この行動計画に記されている定義と必ずしも一致していないように思います。交流および共同学習をすることが心のバリアフリーを醸成するかというと、必ずしもそうではなくて、交流や共同学習で何を学ぶかが大切で、障害の社会モデルの考え方を子供達にわかるように伝えていく必要があると思います。これは情報保障の話でも同じで、様々な情報機器を使うと、アクセシビリティが上がると考えられていますが、そもそも、それぞれがアプリを作ったり機器を作ったりする時に、社会モデルの考え方や障害当事者参加が実現されなければ、新たなバリアを産み出してしまうことになりかねません。このように、全ての省庁で、心のバリアフリーの本質的な意味を正確に共有した上で、進めていただきたいと思います。 【順天堂大学 山崎非常勤講師】 山崎でございます。先ほど、車いすの方のお話を聞いて、やはり皆さん同じことを思っているのだと感じました。私もUD2020関係府省等連絡会議に参加させていただいて、行動計画が完成した時は本当に多くの期待を持っていました。あれから、実際に街に出てみてどうかというと、あまり実感できないところがあります。その中でも、UDタクシーの乗降や乗車拒否は大変大きな問題になっていますね。これは、ソフトだけで解決できるかというと、僕は解決できないと思います。スロープのシステム自体が間違っていると思うので、スロープや収納方法を変えないと、乗降時間を短縮することはまず無理だろうと思います。それから、今はまだ話題になっていませんが、パラリンピックには、もっと身体の大きな車椅子使用者が大勢外国からいらっしゃると思いますが、その対応ができないのではないかと心配しています。対象者についてもっと具体的に考える必要があります。実は、2016年の会議の時に、私は「タクシーは大丈夫ですか」という発言をしました。その時タクシー開発企業の方は「全ての方のことを考えていますから大丈夫です」とおっしゃっていたんですが、結局こうなってしまったというところを見ると、やはり当事者の方にしっかりと意見を聞いていなかったのではないかと思います。ですから、今回、この会議で、当事者の方がこれだけ多く集まって意見を言える、それに対応していくということですので、私はすごく大きな期待をしています。次に新幹線ですが、私も出張が多いのですが、切符購入については何も変わっていませんね。先日、「身障者手帳のカード化」というニュースが出ていましたが、「ICカード」とは書いていなかった。ただカードにするだけなら何も意味がないので、この際にICカード化して、例えば交通系ICカードと連携したりしていかないと意味がないと思います。ですので、是非それも実現していただきたいと思います。最後にもう1つ、私は関東身体障害者水泳連盟の会長もしていて、今年は日本選手権が三重県でありました。そのための練習を皆していたんですが、実は練習する場所が東京近辺にはありません。これは、2020年に向けて改修工事をしているプールや施設がたくさんあって使用できないからです。選手達は「トップの選手はNTC等練習する所があるが、私達は練習場所を失っている」と嘆いています。これもバリアと言えるのではないでしょうか。こういった声が上がってきていますので、2020年に向けて全ての人が「オリンピック、パラリンピックが東京で、日本で開催されてよかった」と言えるよう、是非対応を考えていただきたいと思います。以上です。 【特別支援教育総合研究所 星センター長】 私は、国立特別支援教育総合研究所インクルーシブ教育システム推進センターという、非常に長い名称の所属なんですけれども、教育の分野において、共生社会の実現をどう担っていくのかというのが私共の大きな課題ではあるんですが、今日お話を伺いながら、ソフト面をどう評価していくのかというところが非常に大きな課題で、難しいけれどもそこをやっていかなければならないのだということを非常に強く感じました。やはりこれから先、未来を担っていく子供達こそ、本当に共生社会実現の主体者になっていってほしいと思うので、その子供達にどうやってこのユニバーサルデザイン2020行動計画を真に実効あるものとして身につけてもらうのかというところがとても大きいと思っています。当事者の気付きを皆さんの気付きに、そして日本国民皆の気付きにしていくような取組ができればいいなと感じたことと、現状についての評価をきちんとしていくことが今後、2020年以降につながっていくのではないかと感じましたので、皆さんのいろいろなご意見を聞きながら、一緒に考えていければと考えております。ありがとうございます。 【日本発達障害ネットワーク 市川理事長】 日本発達障害ネットワークの市川と申します。私共はまさしく、ハードよりソフト面を重視するというのは大変ありがたいことだと思いますし、それが重要であると思います。私の経験では、障害の多様性がありまして、場面場面での対応が必要であろうと思います。例えば、音に対して過敏な方もいれば、音によっても違ったりします。明るさについても、この明るさでも眩しく感じる人もいたりします。是非きめ細かい対応をお願いしたいと思います。今後ともよろしくお願いします。 【内閣官房 橋統括官】 ありがとうございます。今日は皆様1回ずつの発言となってしまい申し訳ありませんでした。ただ、皆様の「特に」という部分はお聞きできたと思います。今日は自由なご発言とさせていただきましたが、次回は、これらの問題意識をどう具体に議論をまとめていくかというところがとても大事ですので、各省の対応方針含めて、今日いただいた問題意識をどう具体的なものに今後まとめていけるかということを事務局で知恵を絞らせていただいて、わかりやすい形で議論できるよう工夫させていただきます。最後に平田事務局長から一言お願いします。 【平田議長】 今日は率直なご意見をどうもありがとうございました。先ほどの閣僚会議の中でも具体的なお話をしていただきまして感謝申し上げます。私は今の仕事をして6年目になります。その間、オリンピック・パラリンピックの準備、そしてパラリンピックを通じたバリアフリー、ユニバーサルデザインを社会に進めるための仕事をしてきました。前回まで全部出席して皆さんにお会いしているわけでありますが、こうやって皆様方が具体的におっしゃるテーマがより細分化していること自体が我々の望んでいたことであると思うわけであります。個別の案件をおっしゃっていただきましたけれども、個別のことに全てのことが宿るわけでして、これを1つ1つ解決していこうと思っています。それはソフト、ハード、そして情報と、いろんなテーマがあるわけですが、テーラーメイド的な解決を試みていきたいと思います。それと2020年以降どうするのかとか、地方をどうするのかとか、あるいは地方と国と企業が一緒になって応援するのかとか、そういったフレームワーク的なことがあります。残念ながら、私共の組織は2020年でおそらく、2021年3月で何か取りまとめて終わるような気がするんですが、そういったものをどのように政府の中に残していくのかということも、勉強して実現したいと思っております。そして最後になりますが、私、6年間見てきまして、霞ヶ関の皆さんからしたら大変なことなのかもしれませんが、著しく変わってきたというのが私の率直な印象であります。私共は人事院の公務員研修においても、心のバリアフリー等いろいろな研修をしておりますし、国土交通省さんでも研修をやったり、財務省さんでも初任者研修で研修をさせていただいております。あるいは各関係部局、霞ヶ関のあらゆる部局が、バリアフリー、ユニバーサルデザインに関連する部局なんですけれども、人事異動があると、新しく来られる方皆さんが一生懸命この分野に取り組んでいただけるようになりまして、これも、パラリンピックが日本で開催されることになってよかったなと思っているところであります。そういうことなので、若い世代の公務員の皆さんのやる気を結集して、この評価会議を良いものにしていきたいと思いますので、頑張っているからといって力を緩めずに、率直にご意見をおっしゃっていただければと思います。そして、有識者の皆様も、長年ご貢献いただいておりますけれども、有識者の皆様も手を緩めずに我々を叱咤激励していただければと思います。今日は長くなりましたけれども、どうもありがとうございました。