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第10回「郵政三事業の在り方について考える懇談会」
議 事 要 旨


1 日 時 平成14年9月6日(金)17:15〜18:00

2 場 所 内閣総理大臣官邸大会議室

3 出席者 別紙

4 議事要旨

(田中座長)
  • 本日は、お手元の報告書案を当懇談会の報告書として決定することについてお諮りしたい。
  • 皆様方から頂戴したご意見の趣旨に沿うよう、前回提出した文案を調整させていただいた。また、「民営化の三類型については、よりわかりやすい形で提示すべき」とのご意見については、報告書に類型別の特徴や留意点を一覧表として添付することとした。
  • 本案を当懇談会の報告書として決定することにつき、ご異議はないか。

(「異議なし」との声あり)

(田中座長)

  • それでは、本案を報告書として決定したい。
  • 前回、片山大臣から、国民の側からのいろいろな反応をお聞きするようにというご指摘があった。本報告書を基に幅広く国民的な議論が行われることが公社化後の郵政三事業の在り方を検討する上で極めて重要と考えるので、政府における本報告書の取り扱いをよろしくお願いしたい。

(田中座長より小泉内閣総理大臣へ報告書手交)

(田中座長)

  • 小泉総理からご発言をいただきたい。

(総理大臣)

  • 昨年6月発足以来、1年有余にわたり熱心にご議論いただき感謝。
  • 郵政事業改革は郵政の改革だけではない。行政改革、財政改革、金融改革、特殊法人改革、政治改革、いわゆる構造改革の本丸。それがまだなかなか国民の皆様には理解していただけない。そういうご認識の下にこの1年間、熱心に議論していただいたことに対し、座長をはじめ皆さんに厚く御礼を申し上げる。
  • 来年4月に郵政公社が発足するが、この郵政公社は民営化の準備を始めるのための公社であると認識している。
  • まとめていただいた結論は、今後、いろいろな場で議論されると思うが、どのような場で議論されようとも、この報告書は大いに参考資料として貴重なものである。
  • 今後将来の郵政民営化、抜本的な構造改革に向けて、私も懸命に努力したい。

(田中座長)

  • 郵政三事業の所管大臣である片山総務大臣からもご発言いただきたい。

(総務大臣)

  • 去年の6月から、1年3か月余、田中座長始め委員の皆様に熱心にご議論いただき感謝。自由なご議論をお願いしながら、一方で、国会において公社法案を審議するという制約の中でのご議論でご迷惑をおかけしたのではないかと思うが、国民にわかりやすい良い案をおまとめいただき感謝。
  • 公社の総裁になるべき者として生田さんが決定したところ。スムーズな公社化をいたしたい。
  • 公社化後の在り方については、この報告書が国民の皆様の大きな議論の良い素材になることを私も期待している。

(田中座長)

  • 委員の皆様方から、ご感想を含めて一言ずつご発言をいただきたい。なお、本日ご欠席の池尾委員、葛西委員、清野委員からは書面にてご意見を頂戴している。

(翁委員)

  • 様々な視点から集中的に議論し、取りまとめた本報告書は、今後の郵政三事業の在り方に関する議論の出発点としての役割は果たし得るのではないか。
  • 郵貯・簡保の肥大化は、日本経済、金融、財政の危機的な状況の未来イメージ。郵政事業改革については、日本経済全体の状況を変えていく上で必要な経済構造改革などの改革と合わせ、整合的な全体像とタイムスケジュールを国民にわかりやすく示し、トータルな改革を進めていただきたい。
  • 民営化の三類型が併記されていることに明らかなように、郵貯・簡保の役割は終わったかどうかという点については、意見が分かれているように見える。私自身は、郵貯の大宗を占める定額貯金や簡保は、全額預託の廃止や預金保険制度の整備により、ほぼその歴史的な使命を終えているのではないか、と考えている。
  • 他方、その資金が非常に巨額であるがゆえに、今後自主運用が大きくなるにつれ、万が一金利情勢が非常に大きく変化し、国民負担が発生した場合どうなるかという点を引き続き懸念。経営体として体力以上のリスクを負わないことが望ましい。
  • 今回示された3つの類型は、出発点はかなり違うように見えるが、第1類型、第2類型は、政府保証の廃止により国民負担を縮小しようとしている点で、共通しているものと理解。
  • 三類型のいずれを採用するにしても、収益基盤を確保しながら、公正競争条件をいかに確保するかが重要。また、ユニバーサルサービスをどう確保していくかという点は、非常に大きな事業体であるだけに極めて難しい検討課題として残されていると認識。
  • 今後とも、公社の健全経営を実現するとともに、報告書での議論を生かして、国民経済全体にとってよい方向に郵政事業改革を進めていただきたい。

(風間委員)

  • 経済学に関しては全くの素人、自然科学を専門とする者として、委員を務めた感想を述べさせていただきたい。
  • この懇談会でやるべきことと役割が不明確なまま時間が経過してしまったことが残念。公社化と民営化に関する2つの委員会が同時進行したことで、この懇談会の明確な意義づけが難しく、どのようにして民営化の議論を進めていくべきなのか最後まで不明確だったために、絡まった糸をほぐすようなもどかしさを痛感。
  • 実際にはスタートすらしていない公社について、恐らく公社では問題が解決されることはないだろうという仮想的な評価を余儀なくされるという、種々の不確定な要素を抱えたままの議論展開にならざるを得なかったため、議論が中途半端に終わったような気がしている。
  • 答えが既にあるような議論に関して違和感を覚えた。総理は答えが先にあるのではないと言われたが、現実には白紙の状況から出発した議論展開ではなく、既にある答えに向かって、やや強引と思える議論展開を感じた。そのため、議論する上で、あるいは報告書を仕上げる際、論理構築の甘さを痛感してきた。
  • 立てたモデルや理論を実験によって検証することができないのが政治・経済の世界なので、政策の選択が行われる時点で市民、国を包含した形で実験が展開されることとなるが、その実験をしてきた他国の例を真剣に検討して、評価する作業が余りなされなかったのは、自然科学者の立場から見ると大変不自然。
  • 民営化を実施するに当たって、これまで検討してきたシステムについて、それぞれどの程度メリットやデメリットがあるのか、為政者としては、賭けをするというような姿勢であってはならない。できる限り、関与する可能性のあるファクターをきちんと押える作業が不可欠。
  • 社会状況は時間とともに変化するもの。その変化の中で起きる予期せぬ事態への対処策も含め、今後とも吟味を重ねていくことを希望する。まず、民営化ありきとして突っ走るのでなく、民営化への移行の過程で公社化の評価、吟味を徹底して行うことも科学的立場に立った1つの賢い策だと思う。
  • 言葉を大切にしない国民は滅びる。今の日本は、言葉を大切にしてこなかったことによる言葉による復讐が進行している。物事をきちんと考えるためには、言葉の背後にある事象を厳密に把握することが必要になるが、一般市民はもちろん、政治・行政・学問に携わる方々も無感覚、無感動になっているのではないか。キャッチフレーズ化した言葉の横行が言葉そのものの本来持っているはずの意味をいつの間にか喪失させてしまっている事態に、この国が直面している本当の危機的状況を見る思いがした。

(樋口委員)

  • この会議の位置づけについては、「民営化等の見直しは行わない」という条文に縛られて、どう論議していいか戸惑った時期もあったが、明朗闊達で開放的な会議だったことはよかったと思う。自分が本当に言うべきことを言い尽くせたどうかについては、若干の忸怩たる思いがある。
  • 第8回懇談会に「郵政民営化についてQ&Q&Q」という資料を提出させていただいた。もし民営化を進めるときには、国民にわかりやすい言葉で説明する責任が政府にあると同時に、国民から広く意見を集めていただきたいと思う。
  • 少子高齢化が進む中、構造改革は当然のことであり、郵政事業だけ全く改革をしないで済むとは思わないが、総理は「郵政事業改革は構造改革の本丸である」とおっしゃるのであれば、他の出城や二の丸、三の丸も整合性を持って変革していかなければならない。「なぜ今、郵政事業改革が必要なのか」という理由や「民営化に至る道筋」を、政治家としての自らのお言葉で分かりやすく示していただきたい。
  • 郵政事業が築き上げてきた国民の公的貯金箱と公的金銭出納帳という機能、簡便な情報通信の手段、特に高齢者、一人暮らし、老夫婦の金銭の自立と安全を支える責任は、民営化しようとしまいと、効率や収支にかかわらず、公的に誰かが支えていかなければならないものである。
  • 改革によって、変化が国民一人ひとりに及ぶのであれば、リスクを分散するというだけでなく、誰が「痛み」をどのような形で受ける可能性があり、それを誰が支えていくのかということを、公としてお示しいただきたいと痛切に思っている。

(松原委員)

  • 本懇談会の設置で、郵政民営化の議論が進んだことは、大きな成果。国民の間でも、郵政事業についての関心が高まり理解も深まった。民営化の必要性について合意ができ、三つの民営化類型を提示できたことも大きな成果。
  • この報告書は最終報告だが、内容的には中間報告と思っている。その理由の1つは総理がおっしゃるように、郵政事業改革は金融改革、財政などすべてに関わる問題で大変難しく、1年の議論の中でしっかりとした結論が出せるものではないということ。もう一つは、公社制度が最終的に固まったのが7月末であったため、発足していない公社の後を検討することが難しかったこと。
  • 民営化の第1類型は、特殊会社として三事業一体で経営する案。本来民間でもできるサービスに政府が関わるため、「民業の補完」という視点がしっかり盛り込まれるべき。
  • 第2類型と第3類型に共通することだが、ネットワークを全部生かすということと、民営化することは実はなかなか一致しない。民営化すると不採算地域から自由に撤退してもよいということが大事になる。どのようにすれば、ネットワークないしユニバーサルサービスを維持することができるかしっかり議論しなければならない。第2類型と第3類型に関しては、完全民営化すればネットワークが維持できないのではないかとの懸念がある。政策的対応は、これから先の大きな宿題。
  • 公社化後の検討のためには、公社制度、実際にスタートしてからの公社の経営状況について、民営化、改革が必要だという視点でしっかり議論する必要がある。今まで公社化の議論は、国営の公社でつくることが決まっており、その方向でつくるという議論しかしていなかった。この懇談会でも、その公社について批判的な視点で見極めることが足りなかった。
  • 報告書ではいろいろな論点が出されている。国営公社で問題を解決できるのか、公社制度をある程度修正することで解決できるのかどうかという見極めの議論が一番大事であるが、懇談会では不十分であった。

(森下委員)

  • 郵貯・簡保の問題になると、お金を預けている国民の方からすれば非常に親しみやすく便利である一方、資金の使われ方に問題があるという現実があるが、このギャップが国民にわかりにくい。
  • 是非これから改革に踏み切る場合に、そのギャップを国民に知らせながら、国のためにはこれをやらなければならないということを政府から国民にわかりやすく伝達し、説明していただきたい。
  • 来年4月1日に公社がスタートする。新総裁となられる方も決まり、民間企業的な感覚を入れて大いにやっていこうということなので、是非新たな公社の成果を十分見極めつつ、論議を深めていただきたい。
  • 事業再編を何度も経験しているが、その際、一番大事なことは従業員のモラール。公社のスタートに当たって、また、次の議論が始まる場合には、現場で働いている方々のモラールをどのように向上させていくかという配慮をしていくことが必要。

(若杉委員)

  • 本懇談会としては、結論として、十分な時間軸を設定するならば、民営化には一定の意義があるという点で意見が一致し、3つの民営化の類型を提示したということになると思う。報告書は時間的、政治的に非常に厳しい制約の下で出されたものとしては、評価できるのではないか。
  • 郵政事業の民営化は、構造改革のシンボルとしては非常にわかりやすいが、構造改革の最も根源的なファクターではない。郵貯・簡保の最も大きな問題である「巨大化」は、郵政事業の内的問題から起こったものではなく、財政の肥大化、民間金融機関の失敗、日本企業の失速等による株式市場の低迷によりもたらされたもの。そこにまず手を付けないといけない。
  • まず、抜本的な構造改革によって、民間金融機関の建て直しと企業改革を実現することが大事。その進行に合わせて、郵政民営化を実現していくことが重要。この順序を間違えると、百害あって一利なし。その意味で、この報告書が経済、財政、金融、企業等の改革を優先させて、その進行に合わせて郵政の民営化を進めるべきであるとして、順序と時間軸を設定したことは、特に評価すべきこと。
  • 民間金融機関が再生し、競争力が復活し、かつ、民間企業がガバナンス改革などを通して革新すれば、国民の貯蓄は民間金融機関や株式市場におのずと向かうようになる。そうなれば、郵貯・簡保は自然に大幅に縮小していく。そのときが郵政民営化のタイミング。その場合の民営化のあるべき形態は、分離・分割等を伴わない現状のままの単純な株式会社化。そういう意味では第2類型に近い。
  • 残された議論はたくさんある。そもそも根本的な構造改革とは何か、あるいは郵政事業の民営化の形態とは何かということについて、まだまだ議論が尽くされていない。残された課題が多いが、これから総理が適切な諸判断の下で国民的な議論を巻き起こし、懇談会の議論を発展させていくことを期待したい。

(田中座長)

  • 総理から、座長の依頼があったときに、2つのことを心に決めた。
  • 1つは、根回しをしないということ。32回にわたる懇談会等の場以外で、委員の方々にこういう案にご賛同願いたいとか、この意見は少し修正してくれという依頼は一切していない。
  • もう一つは、ブリンクマンシップ、すなわち瀬戸際政策。現在、持続的な日本社会の構造と求められている改革との間には大きなずれがある。郵政三事業の改革については、一方で持続する安定的なもの、他方で大きな改革を加えなければいけないものの2つがぶつかり合うため、着地点を最初からうまく探すわけにはいかない性格のものと理解。瀬戸際に一旦置いた上で、それぞれに深く考えを求めたことで、委員の皆様に大変緊張を強いたのではないかと思う。
  • 委員の皆様方には、多大な時間とエネルギーを使っていただき、大変申し訳ないと思っているが、ある意味でこれは日本の今置かれた立場からいってやむを得ないこととも思う。事務局の内閣官房の尽力にも感謝。
  • 有識者勉強会における資料については、外部のスピーカーから提出された資料は公開を前提としていないので、今後も公開しないが、 総務省から提出いただいた資料については、広く国民が今後の郵政事業改革について考える上で、非常に有用な資料だと思うので、改めて整頓・整理をしていただき、官邸のホームページ等にご掲載いただきたい。
  • あらためて、これまでの委員各位のご協力に感謝。それでは、本日をもって懇談会を終了させていただく。


(別紙)

第10回郵政三事業の在り方について考える懇談会 出席者

(政府側)
小泉純一郎 内閣総理大臣
福田 康夫 内閣官房長官
片山虎之助 総務大臣
上野 公成 内閣官房副長官(政務・参)
古川貞二郎 内閣官房副長官(事務)

(委員)
田中 直毅 座長・経済評論家
翁  百合 株式会社日本総合研究所調査部主席研究員
風間 晴子 国際基督教大学教授
樋口 恵子 東京家政大学教授
松原  聡 東洋大学経済学部教授
森下 洋一 松下電器産業株式会社代表取締役会長
若杉 敬明 東京大学大学院経済学研究科教授