【丹羽厚生大臣】 おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから社会保障構造の在り方について考える有識者会議を開催させていただきます。委員の皆様方におかれましては、御多忙中のところお集まりをいただきまして誠にありがとうございます。
私、厚生大臣の丹羽でございます。会議の座長が決まりますまでの間、会議の進行を務めさせていただきます。
まずは、会議の開催に当たりまして小渕内閣総理大臣からごあいさつをお願いいたします。
【小渕内閣総理大臣】 本日はお忙しい中、早朝よりお集まりいただき誠にありがとうございます。
来るべき21世紀に向けて、国民の不安を解消し、将来にわたり国民が安心して暮らせる活力ある社会を築いていくことは政治の大きな課題の一つであります。そのためにも、少子高齢化が進行する中で安定した社会保障制度を構築していかなければなりません。
近年、社会保障の将来について不安を感じているとの国民の声もある中で、かねてより私が申し上げてきた安心への懸け橋としての社会保障が十分にその機能を発揮していくことが強く求められております。
このような観点から、この度、有識者の方々にお集まりをいただき、社会保障構造の在り方について年金、医療、介護など、横断的かつ総合的な議論をお願いすることといたした次第であります。皆様には21世紀の我が国にふさわしい社会保障制度の在り方について、幅広い視点から御検討いただきたいと思います。私といたしましても、この会議の議論を踏まえ、国民の期待にこたえる社会保障制度の構築に向けて努力してまいりたいと考えております。
以上、簡単ではございますが、私からのあいさつとさせていただきます。何とぞよろしくお願いいたします。
【丹羽厚生大臣】 それでは、資料の1と2を皆様方のお手元にお配りをいたしておりますが、本会議は資料の1のとおり「少子高齢化が進行する中で、社会保障制度が将来にわたり安定した効率的なものとなるよう年金、医療、介護など、総合的に、かつ、給付と負担を一体的に捉えて検討する」ものでございます。内閣総理大臣が主宰し、厚生大臣がこれを補佐することになっております。
会議の委員といたしましては、同じく資料の1の別紙に掲げさせていただいております19人の有識者の皆様方にお集まりをいただいております。
また、本会議には政府側として内閣総理大臣、厚生大臣のほか、内閣官房長官、大蔵大臣、自治大臣、経済企画庁長官が参加いたしております。
本会議は、当面月1回程度の頻度で開催し、3月までに社会保障全体の枠組み、社会保障の現状と課題などについて一巡の議論を行っていただき、論点の整理などを行っていただきたいと考えております。
また、若い世代の方々などからのヒアリングなどを行う機会を設け、その後、論点に沿って更に議論を深めていただきたいと考えております。
本会議の運営につきましては、司会進行のため座長を置くこと、会議は非公開とすることや議事録を公表することなど、資料2の運営要領に従って進めてまいりたいと考えておりますが、よろしくお願いいたします。
それでは、座長でございますが、誠に恐縮でございますが、私の方から中央大学教授の貝塚啓明委員にお願いをいたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
(「異議なし」と声あり)
【丹羽厚生大臣】 それでは、以下の進行は座長でございます貝塚先生にお願いをいたします。よろしくお願いいたします。
【貝塚座長】 それでは、御指名でございますので、大変難しい問題であることは重々承知しておりますが、精一杯やらせていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします。
少子高齢化が進行いたしまして、社会保障制度の果たす役割はますます重要になっておりますが、この会議は非常に大きな役割を持っておりまして、ただいま総理大臣から御要請がございましたので、皆様の御協力を何とぞよろしくお願いいたします。
それでは、第1回の会合ですので、今日は皆さん御出席の方々の自己紹介を含めて、社会保障の在り方につきまして順次御発言いただくということであります。
それでは、最初に赤崎義則委員、よろしくお願いいたします。
【赤崎委員】 おはようございます。鹿児島市長の赤崎でございます。
御案内のように、我が国における社会保障制度をめぐる環境は大変厳しいものがございます。少子高齢化がますます進む中で、国民が健康な生活を営み、安心して暮らしていくことができるよう、安定した制度を総合的に構築をする必要があると私どもはかねがね考えております。特に私ども市町村は、医療保険としての国民健康保険、そしてこの4月から始まる介護保険において、保険者としての役割を担うことになっております。介護保険につきましては今、円滑な施行に向けましてそれぞれ懸命の努力をいたしておるところでございますが、準備面における不安もまだ残されております。特に保険料や国、地方公共団体の十分な公費負担の確保など、保険財政面における不安がございます。
なお、介護保険につきましては国において十分かつ必要な措置を講じていただきますよう、かねてお願いをいたしておりますが、今後もこのことにつきましては要請をしてまいりたいと考えております。
一方、国民健康保険につきましては就業構造が変化をいたしまして、急速な高齢化が進展する影響をもろに受けて、70歳以上の被保険者が2割を超え、また職業を持たない被保険者が5割近くを占めておるところでございます。国民健康保険は他の医療保険制度と比べて給付率が低いにもかかわらず、自己負担の保険料が極めて高いという給付と負担の不公平の問題がございます。このため、医療保険制度については被用者保険との一本化を早急に実現をすることが必要であると考えております。
いずれにいたしましても、市町村は住民に最も身近な自治体として住民の福祉の向上と個性豊かな活力あるまちづくりを進めていかなければなりません。地方分権を推進して更に大幅な権限委譲を行う必要がありますが、その際、特に税財源の確実な委譲が何よりも肝要であることを申し添えさせていただきまして、私のごあいさつとさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【貝塚座長】 それでは次に阿藤誠委員お願いいたします。
【阿藤委員】 国立社会保障・人口問題研究所の阿藤でございます。おはようございます。
私自身は、研究所が2つの看板を背負っておりますが、もともとは人口問題の専門家でございまして、そういう意味では社会保障そのものは素人でございます。研究分野として人口推計、出生率、家族計画、家族の問題などを長年研究しておる者でございます。近年における社会保障を考える場合に、もちろん言うまでもなく人口の変化というものは大変大きいわけでありまして、少子化並びに長寿化による超高齢人口減少社会というものが来るということが明らかであるわけでありますが、これに対してどう対応すべきかということがこの社会保障構造を考える際の根本にあるのではないかというふうに考えております。
その際、2つの側面があるわけで、1つはもちろんこの超高齢社会にどう対応していくか。そのために社会保障制度をどういうふうに変えていくか、整備していくかという問題もありますが、もう一つはこの超高齢社会を推し進める少子化についてどう対応するかというのが大変大きな問題ではないかというふうに考えております。それについてはまた是非議論をしていただきたいと思いますが、結局21世紀の社会保障を考えるということの更に根本にあるのは、21世紀のあるべき人間像あるいは社会像を考えるということとほとんど同じことではないかというふうに私自身は考えております。
この社会保障の問題を考える際に基本的な部分でやはり個人の自立ということを根本に置くということが第1。それから、男女共同参画の促進、そういう意味ではジェンダーフリーな制度をつくっていくということが第2点。それから、高齢者の社会参加の促進、そういう意味ではエイジフリーな制度をつくっていくということ。それから、恐らくこれからは外国人との共生ということが大変重要になるだろう。そういう意味では、ちょっと言葉は大きいですが、多民族化という方向も踏まえておく必要がある。そういう中で社会保障制度をどう考えていくかということが大切ではないかというふうに思っております。以上でございます。
【貝塚座長】 それでは、石弘光委員お願いします。
【石委員】 一橋大学の石であります。今たまたま大学の行政職に追われましてアカデミックな生活から決別しておりますが、元来は財政学が専門でありまして、その中でこの社会保障問題というのも講義や研究等々で随分関心があります。2点申し上げたいと思います。
第1点は、この会が非常に重要であるというのは小渕総理も貝塚座長もおっしゃっておりましたが、私の視点から申しますと、税と社会保障負担の2つをまとめて議論できる場を設定していただいたということは非常に私は重要だと思っています。私は長いこと税制調査会の委員もしておりますが、税調では税の負担の話しかできないんです。考えてみますと、国民の側から言うと社会保険で負担しようが、税で負担しようが、財布から持っていかれるのは同じお金なんです。
ところが、役所の側になると厳然と2つに分かれてしまって、それで各々2つで議論をしている。ところが、国民負担という概念がありますように、国民負担率を50%にしようとかしないとかというときに、その配分をちっとも考えていない。今、政治の世界でも税方式か保険方式かなどということが非常に問題になっておりますけれども、そういうところで一本束ねて議論していただかなければならないとかねがね思っておりました。そういう意味で、総理の下で有識者会議というのが開かれたということは非常に画期的なことだし、是非その成果を上げたいものだと思っております。それが第1点です。
第2点は、社会保障構造のそもそも財源の給付の方は「在り方」ということで書いてありますように大きなビジョン、大きな理念が私は必要ではないかと思います。別な言葉で申しますと、社会保障というのは政府が絶対やらなければいかぬということではないんです。国防であるとか、司法であるとか、政府本来の仕事に比べますと、我々の専門用語で申しますと純粋でない公共財とか公共サービスでありますから、民間でも市場でもやろうと思えばできないことはない分野であります。
しかし、高齢化ということでここの期待が高まっている。結局、大きな政府になる根っこはここの社会保障のところにあるわけでありますから、したがって今後これにどう取り組むかという基本的な線を決めませんと、理念なく何かつじつま合わせ的な改革がどんどんいって、結局とんでもないものができるという心配を非常に持っております。そういう意味で、しっかり在り方論、基本論をここで議論すべきだと思っています。
それから、最後にやはり実現をするようなことを何か我々のこの会議での案をくみ上げていたただいて、単に空理空論に終わらないように是非していただきたいと思います。最後は要望であります。以上です。
【貝塚座長】 では、今井敬委員お願いします。
【今井委員】 新日鉄並びに経団連会長の今井でございます。
我々産業界にとりまして、21世紀の最大の課題は産業がグローバル競争に勝ち抜いていくことと並びまして、社会の少子高齢化に的確に対応していくということでございます。この少子高齢化問題の解決のかぎの一つが、持続可能な社会保障制度の再構築でございまして、経団連といたしましても日経連と協力して社会保障問題の具体的解決策を現在検討しているところでございます。
問題は、今までいろいろ御意見が出ましたように、税と、年金介護、医療というものを通じました横断的、総合的な政策体系が提示されてこなかったことでございまして、今回総理主導で社会保障構造を総合的に考える会ができましたことは誠に画期的だと思っておる次第でございます。
具体的な意見につきましては次回以降申し上げたいと思いますが、今後の運営についてひとつ提案したいと思います。ここでの検討課題が、例えば保険と税の関係とか、世代間・世代内の負担と給付の関係とか、あるいは自己負担の問題とか、財源の問題とか、更には政府と民間との役割分担の問題とか、極めて多岐にわたっております。既にこういう問題につきましては、例えば経済戦略会議あるいは自自公の3党合意というものがございまして、個人あるいは政党、それぞれさまざまな意見がございます。したがいまして、ある程度議論が出ましたところで3つぐらいの選択肢を提示してもらって議論することが非常に効率的ではないかと思うわけでございます。ただいま石先生がおっしゃいましたように、少なくとも秋くらいまでには総合的な実行案というものができることを強く希望しております。是非そのようにお願いいたしたいと思います。以上でございます。
【貝塚座長】 それでは、岩男壽美子委員お願いします。
【岩男委員】 武蔵工大におります岩男と申します。
先ほど総理が活力ある高齢社会ということを言われたんですけれども、私はそのためには発想の転換が必要になると思っています。つまり、現役世代と老後のとらえ方に関する発想の転換をする必要がある。これまでは老後というのは余生として現役世代の人生設計を中心に考えるという考え方だったわけですけれども、もちろん老後には不確定要素はありますけれども、それを一応織り込んだ上でどのような老後を送りたいかによって働き方を考えるという形で人生設計、現役世代の働き方を検討する必要があるように思います。
2番目には、阿藤委員もジェンダーフリーの話をされましたけれども、社会保障制度で標準的な被保険者として想定されているのは男性であって、女性は標準的には扶養される妻として想定されているわけですけれども、これは全く実態に合わなくなってきておりますし、それから政府が進めておられる男女共同参画社会の実現というものに対しても矛盾するということで、この点を大きく変える必要があると思います。
3番目には、この2番目の点とも関連いたしますけれども、基礎年金は個人単位になっておりますが、社会保障全体の個人化を進める必要があると思います。そのためにはどうしても税制と合わせて議論をする必要があるということで、石委員がおっしゃったのと全く同感です。
4番目に、これまで私は年金審の委員をしたことがございまして2回ほどその改正にかかわってきたわけですけれども、改正をする度に負担の給付も悪い方向になし崩し的に変わっていくというようなことで、その推計が恐ろしく狂うわけですね。それはなぜ狂うのか、技術的な問題なのかどうか私にはよくわかりませんけれども、ある程度状況が厳しくなるということがはっきりわかっていて、それが動かなければ私たちは長期的にそれに対して準備をすることができるわけで、それが狂っていくというのは非常に具合が悪いことで、これが国民の不信感につながっていくんだと思います。
そこで、その基礎になる人口推計というものが、その技術的な問題は私は専門ではありませんのでわかりませんけれども、例えば出生率を使うことが妥当なのかどうか。労働力率のような新しいもっと別の指標が適当なのかというようなことも含めて検討する必要があるのではないかと考えています。以上です。よろしくお願いいたします。
【貝塚座長】 それでは、木村委員お願いします。
【木村委員】 奈良女子大学の木村と申します。よろしくお願いいたします。
研究領域は国と地方の財政とか、年金、医療、介護、近年では少子化対策も含めた家族問題、家族政策も研究しております。社会保障を研究し始めましてから20年ぐらいたつのですけれども、現在はその20年の中でも構造改革というのがどの国においても必要性が起きたり、あるいは実際に実施されている時期に入ったという印象を持っております。私もこれまで何人かの委員が述べられましたように、21世紀というのは今までの社会よりはかなり個人の生活設計の枠組みとか価値観というものが大きく変わる社会である。そういった社会では個人の生活設計を支援していくのだという観点から、年齢差別をなくしたり、性差別をなくすことは当然ですけれども、そういったことに重点を置いた社会保障の在り方を考えることが重要だというふうに自分では考えております。
社会保障政策というのは、ややもすれば重要でありますだけにいろいろな政策を重複させようといいますか、絡めさせようとしてくる場でもありますが、社会保障政策の中あるいはほかの税制とともに統合とかハーモニゼーション、調和というものが本当に必要な時期に入ったというふうに考えております。
あとの一つは社会保障を契機として、例えば地方分権を進めたり、また別の側面では福祉機器によって新しい産業を興すといったようなことが重要であると思っています。以上です。
【貝塚座長】 それでは次に京極高宣委員お願いします。
【京極委員】 日本社会事業大学の京極です。旧連合政権のときに21世紀福祉ビジョンの起草に携らせていただきまして、社会保障というのは各論があって総論がなかなかないものだなということをつくづく思いました。
今後どういう方向で考えるか、まだ結論的なことはこれからの会議で出てくるわけでございますけれども、生活の質ということが強調される割に社会保障については量だけが割と強調されまして、これから社会保障の量とともに質を考えなくちゃいけない。質は何かといいますといろいろあると思います。年金、医療、福祉その他が連携がとれているかどうかとか、あるいはそれぞれ携る人々のヒューマンパワーの質とか、いろいろなことがございます。
今後のことを考えますと、なかなか答えがあるようでないわけでございまして、例えば社会保障給付ということは非常にみんな関心を持っているわけですけれども、では減税支出みたいな税金でどれだけまけていただいているかなどということは両方合わせて計算したことがないわけで、国民負担率だけではちょっと不十分な状態でございまして、省が縦割りになっているためか、なかなかそういう数字を出すのは大変ということでございます。
今後のことで、差し当たり最小限3点申し上げたいと思いますのは、やはり高齢化、高齢化ということで大分議論されているんですけれども、21世紀は少子化に対してどうするか。社会保障の在り方、高齢者もやはり年金で楽をして生活するということではなくて、生きがいを持って働けるときは働くということも相当考えていかなくちゃいけない。厚生労働省ができますので、その点の在り方についてはまた相当深く考える必要があるんじゃないか。
2番目には、総理のごあいさつでもございましたけれども、社会保障は景気の安定と非常に関係がありまして、何となく景気と切り離して社会保障を議論している向きがありまして、国民の方がなるべく将来どうなるか不安だからお金は使わないでおこうというようなことはありますけれども、その点についてはどうなのかということでちょっと深めて考える必要があると思います。
3点目は、やはり政府の責任も大変大きいわけですけれども、民間や個人の役割も大きいわけで、公私のパートナーシップというのはこれからの社会保障では考えていかないと、何となく行政側も、それから国民の側も、あるいは経済界も、政府が何とかすれば何とかなるという考え方がまだまだ強いような気がしていますけれども、やはりそこは役割分担というのがございますので、今後その辺りを深めて議論していきたいと思っております。
【貝塚座長】 では、行天良雄委員よろしくお願いします。
【行天委員】 諸先生と違いまして、私は実際的な場面とかその後の展開をメディアを通して見るという仕事を続けてまいりました。今、諸先生のお話を伺っていると、何か私も責められている側にいるような気がいたしまして、直接目の前にいらっしゃると、だんだんおしりが落ち着かなくなってくるくらい心配になってまいりました。
私はごらんのとおり26年の生まれでございますので相当高齢部類に入るんですけれども、45年の敗戦のときに横浜におりましたし、当時は食べ物もなかった関係でアメリカ軍のアルバイトのようなことをいたしました。それが偶然人生を変えまして、ちょうど向こうの情報将校が日本に入ってきた最初の先遣部隊であったのですけれども、その方たちとの触れ合いでその後の私の道が随分大きく変わりまして、医学の方を勉強していたのですがメディアに入りまして、約50年という非常に長い期間、NHKを中心にして保健、医療、福祉という、この分野だけをずっと仕事でやってこられたという幸運と申しますか、時代と同じように歩んでまいりました。
特に皆保険につながる問題に関しては、ちょうど原原案といっていいようなものをアメリカのいわゆるハーバードエリート群がずっと持ってまいりまして、それを結構教えてもらったわけでございます。その後、NHKにおりましたときにもひっきりなしに相当強いプレッシャーと申しますか、教育を受けたわけです。78年に3年間ほどかけまして世界の高齢問題というプロジェクトを立ち上げまして、81年に日本のこれからの問題を提起するプログラムをつくりました。これは現在でも相当自負しておりまして、数字さえ変えれば現在とほとんど変わらない視点だというふうに思っております。
その中で開発途上、それから先進国を中心にして非常に多くの国を周り、その専門の方々のお話を伺ったんですけれども、私は結論的には日本の、特に医療の問題でございますけれども、医療保険制度というのは20世紀最大の文化遺産であって、日光、奈良と並んで表彰してもいいのではないかと思うくらい完璧に近い形だと思っております。これによって国民も、また提供の医療側も大変な恩恵を受けたわけでございますけれども、受け過ぎたというところにブレーキを掛けなければいけない時代が来ているように思っております。
ただし、これはあくまでも政治の問題でございまして、各国ことごとくが非常に苦慮しておりますのはすべてが政治に直結いたしまして、ネコの首にだれが鈴を付けるかという重大問題が余りにも切実でございまして、数年前にヒラリーが国保を中心とする調査委員を日本に送り込みましたけれども、その何人かの方に接触いたしましても、いずれも皆さん全部首をかしげ、そして最後に奇跡に近い、どうしてこんなことができるんだろうというようなことを言って引き上げていきました。ことほどさように私は諸先生のおっしゃるとおり非常に難しい問題で、でも結局何かやっていかなければいけないということはもう切実に迫っていると思います。
それから、超高齢社会というのでいつも言われまして、日本の人口の減弱、減衰というものが言われますけれども、私は多民族の交流という外国人の大量導入を前提として考えていかないと、日本のこれからというのは簡単には言えないのではないかと思っておりますので、いろいろとお教えいただきたいと思います。ありがとうございました。
【貝塚座長】 ありがとうございました。それでは木幡美子委員お願いします。
【木幡委員】 フジテレビの木幡美子と申します。現在、週末のニュースを中心に報道番組を担当させていただいております。ニュースを読む一方で臓器移植または医療などの取材を長年続けてまいりまして、昨年から厚生省の公衆衛生審議会の結核予防部会の方でもお世話になっております。
実は社会保障については全くの素人でございまして、専門的なことはわかりません。でも、同世代の人に聞いてみますと、特に年金に関しては私たちの世代はたくさん負担するんだけれども支給は65歳からだし、しかも一体幾らもらえるのか、払った分、返ってくるのか、はっきりしたことはわかりません。みんなかなり不安を抱えていると思います。自分の将来の保障、老後の保障という重要なテーマであるにもかかわらず、今の時点では個人の選択の自由もなければ正確な情報もないという点で不満を感じている人は多いのではないかと思います。しっかりとした情報公開、それから選択の自由、これが私自身のこの会におけるキーワードではないかと考えております。
社会保障と大きなかかわりを持ちます少子化につきましては、私自身結婚はしているんですが子どもはおりません。年も年ですので、よく周りからもいろいろ言われます。この点についても少しは発言できるかと思っております。
とにかく、このような席に参加することにつきまして、余りに重大な役目で正直言って戸惑いを感じておりますけれども、これから何回か議論を重ねる中であえて専門家ではない立場から、また時にはメディアの視点で、また唯一30代ということで若い世代の一人として現場の意見をこと細かにくみ上げて、少しでもこの会に反映できればと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
【貝塚座長】 それでは清家篤委員お願いいたします。
【清家委員】 慶応大学の清家でございます。私はミクロ経済学の応用分野の労働経済学を専攻しております。
何人かの先生がもう既に言われたように、確かに少子化対策というのは大切なわけですが、しかし人口の高齢化そのものは経済成長といいますか、あるいは経済発展の結果として出てきたものですから、これ自体を否定することはできない。つまり、高齢化そのものが問題ではなくて、むしろ問題は高齢化すると困るような仕組みの方にあるということを確認する必要があると思います。特に人口構造が若いときに合理的だったシステムが、人口が高齢化してくると合理性を失ってくる。その典型がこれから議論しようとしている社会保障制度であり、また雇用制度だと思います。つまり、20代から50代ぐらいまでの人が社会保障のコストを負担するという仕組み、あるいは55歳とか60歳ぐらいまでの定年までが本格的な就労期間で、それ以降は老後になってしまうというようなシステム、こういうシステムは人口が若いときには合理性を持っているわけですけれども、人口構造が高齢化してまいりますと合理性を失ってくる。これをどういうふうに変えていくかということだと思います。
そのときに、社会のシステムというのは相互に関連し合っていますから、人口構造の変化に対応して一つのシステムを変えるということがほかのシステムの変化と整合性を持っていなければいけない。この点で特に雇用と社会保障の問題に関して言えば、65歳定年だとか、あるいは場合によっては定年をなくして生涯現役で働ける雇用システムを作るというのが、実は社会保障の負担の裾野を広げるという意味で、社会保障制度のあるべき姿とも整合性を持っているわけです。その面で雇用のシステムについて、例えば雇用の場における年齢差別の禁止を徹底するというような形で生涯現役システムをつくっていく。同時に、社会保障制度自体が高齢者の就労と必ずしも整合的でない部分を持っておりますので、そういうようなものを少なくとも就労と中立的にしていく、あるいは場合によっては就労促進的なものにしていくことが大切ではないかと思います。
もう一つは、先ほど岩男先生が言われたことと関係しますけれども、確かに人口推計が変わる度に年金の給付と負担が変わってくるというのが年金制度の不信の基になっている部分があるのはおっしゃるとおりだと思います。そしてまた、人口推計を正確にしていくということも非常に大切だと思いますが、もう一つ大切なのはそもそも人口の変化の影響を受けないようなシステムにしていくということが社会保障制度のサステイナビリティといいますか、長期持続性を維持するためには大切だと思います。
社会保障制度というのはもちろん助け合いの制度ですから、リスクのシェアといいますか、リスクがなかった人からあった人へさまざまな資源の再配分が行われるというのは当然だと思います。しかし、その際によく世代と世代の助け合いと言われるわけですけれども、世代間の所得の再分配に強く依存しているような制度というのは、特に人口が高齢化する、あるいは少子化する際に非常に脆弱な側面を持ってしまうわけです。つまり、どんどん若い人口が減っていきますと後世代ほど負担が重くなってしまうと今、木幡委員が言われたように、幾らもらえるのかというような考えが出てきてしまうわけですから、もちろん完全に世代間再分配をなくすことはできないとしても、できるだけこの助け合いのシステムを世代間の助け合いではなくて同一世代内でさまざまなリスクを相互扶助していくような性格を強めていくということが、社会保障制度の長期持続性を維持するためにも、あるいは負担の安易な先送りというような誘惑に負けないようにするためにも必要なのではないかというふうに感じております。以上でございます
【貝塚座長】 それでは、袖井孝子委員お願いします。
【袖井委員】 お茶の水女子大学の袖井でございます。専門は家族社会学と老年学という学問領域でございまして、学校でもそういうのを教えています。それで今、少子化がいろいろ言われておりますけれども、少子化の一番大きな原因は出生率の低下ですが、この原因が未婚化、晩婚化の進行と言われております。
なぜ結婚しないのか。これは私も人口問題審議会などでいろいろ議論しているんですが、私はその原因の一つにやはり若い人が将来に対して夢を持てない、将来の先行きが不透明だというところにあると思うんです。その一番大きい原因は、やはり年金といいますか、社会保障制度に対する信頼感が欠けているということだと思うんです。私もクラスでそういうことを授業で話しますと、今よりももっと経済状態が悪くなかったときだったんですが、将来年金制度がどうなるかわからないから民間の個人保険に入った方がいいんじゃないかとか、そういうことを言う学生がおりましたし、それからお茶の水女子大学の学生ではありませんが、実際に国民年金に入らないで民間の保険料を払っている人もいるという話も聞きまして、やはりそれは国に対するというか、国の制度に対する信頼感がないということです。
自分たちが年を取ったときに年金がもらえるのかどうかという不安感を持っていれば、結婚して家庭をつくるという意欲がわかないのも仕方がないんじゃないかと思っているんです。ですから、私はやはりこの際、ちゃんとした社会保障制度についての基本方針を出すのが必要だというふうに考えています。
それで、この会議に期待したいのは、今までのようなばらばらな、例えば福祉は福祉、医療は医療というのではなくて、全体を通しての太いちゃんとした線を出すべきだというふうに思っております。私も京極先生と御一緒に21世紀福祉ビジョンの委員に加わってはいたんですが、あのときは中福祉、中負担というような何かあいまいなところにいってしまったということがまずかったと思うんです。日本の社会保障制度というのは、これはどこの国もそうですけれども、振り返ってみるとかなりちぐはぐでパッチワーク的にできているんです。どこの国もそういうふうにしてやってきたんですが、今こそ統合して見直すべき時だと思いますし、私はラストチャンスじゃないかと思うんです。というのは、2005年ぐらいから日本人口自体が減ってくるわけです。ですから、もうこの10年が本当に正念場で、今できなかったら日本の将来はどうなるかというぐらい私は危機感を持っておりますので、是非ここでちゃんとした将来像というのを描く必要があると思います。
そして、何よりも若い人が将来に対して希望が抱けるようなシステムということですね。日本の社会保障制度を振り返ってみるとびっくりしてしまうんですが、いまだに戦後を引きずっているということです。例えば医療にしましても、4人の患者さんに看護婦1人という、これは世界でも最低のレベルだと思うんですが、これは昭和28年にできたというようなことですので、この際そういう過去から引きずってきたもの、あるいは過去から持ってきたパッチワーク的なものを全部統合してしっかりした制度をつくるということですね。そういうことがこの会議でできたらいいなというふうに思っております。
それからもう一つ、先ほど岩男先生などからも出たことですけれども、これから家族の在り方、世帯の在り方というのはかなり変わってくると思うんです。ですから、男性が世帯主で妻が被扶養者というような家族の在り方というのは、実際には今の日本の社会でマイノリティーなんですね。そういう世帯を前提にした年金制度あるいは社会保障制度というのはこの際、払拭して、やはり一人ひとりが自立して個人として男女平等に社会参加するという社会を念頭に置いた社会保障制度というものを確立していくべきだというふうに私は考えております。
【貝塚座長】 それでは高木剛委員お願いします。
【高木委員】 ゼンセン同盟の高木でございます。
やはり年金が中心ではないかと思います。年金がきちんとしていることで医療、介護等について、例えばお年寄りからも負担をしていただける。今、皆保険皆年金ということで、これが国民の安心を担保してくれる非常に大きいものですが、この皆保険皆年金が一部でうろうろしてきている、その辺をどうやってフォローしていくのか。ここではお金を出す人とお金を受け取る人とのバランスがいろいろ変わってきていますから、財政面も含めていろいろな御論議はあるんだろうと思いますが、やはり国民が納得して払っていける、負担をしていけるという意味では保険の感覚を大事にしていくべきではないかなと。財政というか、税依存型というのは給付も不安定になるでしょうし、ある意味では保険であるがゆえに給付の権利性みたいなものも一方で担保されるべきだろうと思いますから、そういう意味での保険方式みたいなものも大切にして、年金を中心に安心を担保するということではないかと思っております。
【貝塚座長】 それでは坪井栄孝委員お願いします。
【坪井委員】 日本医師会の坪井でございます。総理が経済戦略会議のレポートをお出しになられまして拝見いたしましたが、その後、是非社会保障経済戦略会議というようなものもお開きいただきたいなと発言してまいりましたが、今回は、よりそれよりも視野の広いこういう会を開いていただいたことに関して感謝申し上げたいと思います。
2分でございますから、簡単に項目だけ申し上げます。2つ私は考えることがございます。1つは、今日の資料の中にもありますが、どういう項目について検討するかというお話がありまして、すべて私は賛成でございます。ただ、その方法論としていろいろな動きがあるのではないか。1つは年金とか医療とか介護というその一つの制度、そのものを一つひとつ検討していくというやり方もあると思いますが、私の立場からしますと、例えば医療の立場ですと高齢者対策という一つの政策を中心にしてこれをダイナミックスに動かしていくという意味で年金、医療、介護というような問題をともにしていくという方法論もあるのではないか。中心になる、核になる一つの政策というものが動き出しますと、かなり周りに影響といいますか、いい活性が生まれてくるというようなことを常々私は考えておりますので、そういう方法論もあるということを申し上げたいと思います。
2つ目は社会保障の負担の問題でございます。先ほど御発言もあったようでございますが、私はやはりこの負担の問題に関してはこの会の中で一つのコンセンサスを得た上で国民的な合意をつくるということが必要であろうと思っております。税金、保険、そして自己負担という項目がありますが、これはあくまでも私どもの領域ですと保険料の中の自己負担ということでございまして、この財源の考え方では恐らくこれから後の社会保障、特に医療の問題に関しましては支え切れなくなるのではないか。どうしても国民に自立意識を持った、私は自立投資という言葉を使うんですが、自立投資に依存せざるを得ない部分が非常に大きく出てくるのではないか。もちろんどういうものをそこに依存するかという問題についてはこれから十分に検討しなければいけないと思っておりますが、そういうふうな国民的な合意というものをつくり上げた上で社会保障の負担割合というような問題、いわゆる財源の問題についてしっかりとしたものをつくり上げる時期が現在であろう。それが、総理が考えておられる豊かな老後のための政策となり得るのではないかと思っております。よろしくお願いいたします。
【貝塚座長】 それでは中村博彦委員お願いします。
【中村委員】 全国に1万2,000か所ございます老人ホームとデイサービスの会長をさせていただいております中村でございます。
社会保障制度こそほど国民合意というのが一番必要だと思います。それだけに、私はやはり公平と公正、理解と納得というものをキーワードに大改革をしていただきたい。特に、この給付制度につきましては負担される側の理解と納得、公平、公正感というものが一番必要だと思います。前の委員さんもおっしゃったのでございますが、やはり少子高齢社会ということになりますと負担増は避けて通れません。経済の活力も失うわけにいきません。したがって、負担も限度を伴ってまいります。そのときに給付側がどれだけの痛みを覚悟で改革していくかというのが一番大切ではないかと、このように考えておるわけでございまして、やはり給付の効率化、無駄のないシステム、これが中長期的な社会保障制度の基本をなすものではないか。
そして、小手先だけの改革は絶対にいかぬと思います。一貫性のある朝令暮改にならないような中長期的な社会保障制度をつくっていただきたいと、このように思うわけでございます。
【貝塚座長】 それでは、堀田力委員お願いします。
【堀田委員】 ふれあいボランティア活動を広めるさわやか福祉財団の理事長をしております堀田でございます。
私は、キーワードは個人としての尊厳ある生き方の確保ということであろうと思います。長生きをして幸せに生きるということは人類の夢でありまして、その夢に近付いたわけであります。どんな状態になっても自分の思いを生かしてすべての高齢者が最後まで幸せに生きられる、そういう仕組みをつくるということが最終目標ではなかろうか。そういう観点から2点申し上げたいと思います。
福祉は、人の生き方の問題でありますので、あくまでも高福祉でなければならない。ただ、その高福祉を高負担でやらなければいけないかというと、それはそうではなくて、負担というのはあくまでも経済の問題であります。経済的には中程度の負担であろうと、みんなの共助の仕組み、家族あるいはボランティアなどの助け合いによって精神的に満たされて満足した尊厳ある生き方ができる。そういう社会になればこれは高福祉でありますので、高福祉中負担ということが可能ではなかろうかというふうに考えております。
2つ目は、尊厳ある生き方の基本というのは自立、特に精神的に最後までどんな状態になっても自立して生きられるということが一番大切なことではなかろうか。阿藤委員も個人の自立ということをおっしゃいましたが、それが一番大切だろうと思います。年金というのは、経済的な自由を少しでも確保することによって少しでも思いを生かして生きられるようにするための制度です。ですから、経済的に補助するということ、それ自体に意味があるんじゃなくて、それによって精神的に自立した生き方ができるということに意味があるのでしょう。
医療や介護も同じでありまして、体が不自由になっても医療や介護によりまして体の自由を補うことによって、それぞれが自分の思いを生かして生きられる状態にする。そのことが医療や介護の基本的な目的ではなかろうか。そういうふうに個人の尊厳ある生き方の確保のためには、それぞれの精神的な自立が一番基本だというふうに考えますと今、制度が当面しておるいろいろな問題につきましてもまた違う解決、考え方が導かれると思います。そういう各論的なことはまた追って申し上げたいと思いますけれども、一番の基本は個人の尊厳、精神的な自立の確保、そういう制度をつくることが必要ではなかろうかと考えております。
【貝塚座長】 それでは、宮島洋委員お願いします。
【宮島委員】 東京大学の宮島と申します。専門は財政学でございます。
この会議では年金、医療、介護を中心にして議論することになると思いますけれども、しかし既に御指摘がありましたように、これは税制の問題とも当然リンクいたしますし、雇用の問題とも非常に密接にリンクいたしますし、あるいはバリアフリーということでは社会資本や交通機関の在り方とも無論これもまた関連いたします。あるいは福祉産業でありますとか信託、保険といった産業との関連も非常に強い。あるいは政府、市場だけではなくてNPOとかNGOといったような機関とも絡むということで、総合的な検討という意味は必ずしも年金、医療、介護ということではない、もう少し幅の広い総合的な見方というものが必要であろうと私は考えております。
その上で、現在社会保障をめぐる議論と申しますと、私は実は気掛かりな点がございます。その一つは世代の問題で、世代が非常に利害対立が激しいということが言われますけれども、しかしやや危機感をあおり過ぎていて、世代が対立するほど自立しているとは私にはちょっと思えない。むしろ世代がなれ合っているのが社会の実態じゃないか。その中で、やや世代ということを切り出して、その対立感というものを強調することが果たしていいことなのかどうか、やや疑問に感じております。
ただ、社会保障といいますとどうしても高齢者のためという認識が強過ぎて、例えばヨーロッパですと住宅ですとか教育というための広い意味での社会保障という概念も含まれていて、むしろこれは若い世代のための社会保障だという認識が当然あるわけです。日本は社会保障というと高齢者のためで、どうしても若い世代が負担をするだけの存在という位置付けになってしまう。そういうことがますます世代間の対立をあおることになってしまうんじゃないかという気がしております。
2番目は、社会保険とか税方式という言葉はよく使われますけれども、これは財源問題というよりは国民に対してどういうメッセージを政府が送るかということだと思うんです。社会保険の場合には事前にリスクがあるということを国民に伝える仕組みだと思いますし、税方式はどちらかというと事後的に救済するぞという、この持っているメッセージをどう送るかということの重要性ということでむしろ考えていただきたいと思っております。
それから、高齢者像ということも今後の大きな問題になると思います。昨今議論されていますが、私は高齢者というのは平均的にはかなり豊かだけれども、ただ何かあったらやり直しが効かないという特徴があるということですから、それを踏まえて考えるべきだと思っております。
最後に、最近OECDでの議論で大変面白いと思いましたのは、実は社会保障とか政府の規模に対してはグロスとネットという2つの考え方をしなければいけない。つまり、一見ヨーロッパ諸国は非常に社会保障とか政府の規模は大きいように見えますが、実際のネットの規模は余り日本と違わないかもしれないということがありまして、これはいずれ少し大きな政府とか、その辺を考えるときに、政府が大きい場合、社会保障の場合にはグロスとネットというのを少し分けて考えることも議論したいと思います。どうもありがとうございました。
【貝塚座長】 では、矢崎義雄委員どうぞ。
【矢崎委員】 国立国際医療センターの矢崎でございます。私は医師でございますので自己紹介を兼ねて3点、総論的ではありますが申し上げたいと思います。
1点目は、2025年にピークを迎える高齢化社会は決して暗い話題ではなくて、今でも高齢者で要介護者の占める割合は13%と言われておりまして、今後は医学、医療の進歩により物心ともに活力のある高齢者が活躍できる、明るく発展性のある高齢化社会になるものと私は前向きにとらえていきたいと思っています。
2点目は、医学、医療の進歩はこのような明るい高齢化社会をつくるばかりでなく、決して医療費の増大につながらない。特に小渕総理のリーダーシップで進められておりますミレニアムプロジェクトでゲノム解析ができますれば、個人の特徴に合った的確な予防医学と効率的な医療を進めることが可能となりまして、新しい展開が期待できます。
3点目は、我が国は敗戦後、みんなで支え合って国民生活を安定させるためのシステムをつくりました。それが国民健康保険であり、国民年金制度であったと思います。しかし、40年の間にその本質あるいは精神が失われてしまったのではないかと危惧しています。先週、私は国際医療協力のためにカンボジア国を訪れまして、保健省の長官と今後のプロジェクトの進め方を話し合い、合意に達し、調印してまいりました。フェイズ1のプロジェクトでは日本の援助にすべて依存しておりましたけれども、今回のフェイズ2ではせっかくでき上がった病院システムを自分たちで運営していこうと、多くの困難と貧しさの中でみんなが負担し合い、支える基盤となる診療費、すなわちユーザーフィーを支払う決定をされました。それで、どうしても負担できない方はもちろん無料ですけれども、10%未満だそうです。そこにこの国を再生しようとするかがやき、尊厳あるいは自立という意欲を感じました。奇しくも総理も同じ時期に訪問されまして、総理夫人がわざわざ病院を見学していただきまして保健省の方々が皆、大変感激しておりました。
我が国も既得権の主張に終わることなく、給付、負担につきましてカンボジア国に見られましたように初心に返って議論を進めればと思いました。以上です。
【貝塚座長】 最後に渡辺恒雄委員お願いいたします。
【渡辺委員】 読売新聞の渡辺恒雄でございます。
まず、高福祉低負担というのはあり得ないというコンセンサスを国民の間に広げる必要があると考えます。財源については福祉目的税のような考え方もあるでしょうが、今の税構造というのは何としても課税最低限が高過ぎる。これを下げる努力をしなければ、将来にわたって社会保障の財源というものは確保できないに決まっているんだけれども、それを政治家の先生方はなかなか言いにくいだろうと思いますが、それは考えなければいかぬことだろうと思います。
それから、先ほど袖井さんのおっしゃった、青年にとって将来が非常に暗い。まさにそうであって、日本は非常に消費が低くて貯蓄性向が高い。この間、私は日本の個人の金融資産というものは1,200兆だと思っていたら、去年の6月現在で1,331兆円になっているんですね。百何十兆も個人の金融資産は増えているじゃないか。だから、所得がない、貧乏しているということではないんじゃないか。要するに、将来2025年には年金、医療財政等が全部パンクしちゃうんだという暗い見通しが相当広がっているので、将来の展望が開けないから貯蓄に励む。したがって、景気は悪くなる、税収も減るという悪循環に陥っているんじゃないかと思われるので、やはり何としても若者にとって将来年金、老人医療、介護等、安心してエンジョイできるよというシステムをつくらなければならない。これはどこまでも財源の問題であって、税構造に手をつけずに財源は確保できない。
それから、前に少子化対策国民会議のときに総理が、北欧で人口がずっと減っていたのが増え始めてきたということを発言されたことがあったんですが、少子化はもう必然的なものであっていかんともし難い。老人は増えていく、若者は減るという考え方をどこかで引っくり返す抜本的な政策が考えられないだろうか。私はいろいろなやり方で考えられると思っていますけれども、それを話していると長くなりますからまた後の議題としていただきたいと思いますが、少子化傾向に歯止めをかける方策をとって、少子高齢化が必然だという考え方を変える必要があるんじゃないかと考えます。
それから、ホームレスですね。これは外国から来た人はみんなあきれるだろうと思うんですが、芸術の森と言われる上野などに行ってみればわかるように、上野だけじゃないですね。東京中、大阪もそうらしいですが、ホームレスを放置しておくということは日本の社会保障制度の欠陥のシンボルではないかと思われるんです。ホームレスをなくす対策を何とかおとりいただきたいと思います。以上です。
【貝塚座長】 私も委員の一人ですので一言発言させていただきます。
もう既にいろいろ言われておりますが、私は2点ございまして、やはり社会保障というのは基本的には生活の保障なんです。その生活の保障は、今となっては高齢者だけではなくて全体としての生活を保障するという観点が必要ではないか。そういう意味では、統一的に社会保障というのをもう一度見直すことが非常に重要ではないかと思います。
それからもう一つ、委員の方が言われていることにも関係いたしますが、社会保障に関する不安感というのは基本的には給付の高さ低さだけに依存している話ではなくて、給付の水準は必ずしも高くなくても確実にそれが保障されている。しかも、将来にわたって確実に保障されているということが非常に重要であり、社会保障の給付の確実性ということを個々人が非常に重要と考える点であって、その点は最終的には政治家の方々がおられるわけですが、基本的には政治がそれを保障するということが、必ずしも政党間の違いとか、そういうことではない、全体として政治家の皆さんにその点は十分考えていただきたい点であるということを申し上げまして私の発言とさせていただきたいと思います。
委員の皆様のお考えを聞かせていただいたわけですが、閣僚の方がおられますが、何か御感想はございませんでしょうか。
【堺屋経済企画庁長官】 日本経済が発展するためには、一方では未来に対する夢と希望があり、他方では暮らしの安全と将来の安心がなければなりません。また、選べる楽しみと創造の活気が重要です。つまり、未来にわたって持続確実な社会保障構造と、活気ある経済文化とをいかに両立させるかが重要です。
少子高齢化の進展する中でこれを実現するためには、本有識者会議において新しい高齢者像、数多い高齢者を経済循環の中に織り込んだ産業社会の在り方、こういう福祉、社会保障の支える側の方も議論していく必要があるのではないかと思います。
平均年齢が50歳だった20世紀の初めには、平均勤続年限が約30年、労働年限が30年でしたが、65年になりました今世紀の中ごろでは38年になってしまった。今後人生80年時代になりますと、48年間楽しく働けるような社会というようなものも考えなければならないのではないかと思います。
経済企画庁経済研究所におきましては、少子高齢化社会における産業、雇用、就労、生活及びそれぞれに関する技術、就労環境などを総合的に研究する研究プロジェクトを始めております。ここで何らかの成果が出ましたら、この有識者会議にも御報告させていただきたいと考えております。少子高齢化に伴う将来の不安を払拭するために、本有識者会議おいて経済、社会の変化と社会保障構造の構築との相互影響を含め、広い視野からの御検討をお願いしたいと考えます。
【丹羽厚生大臣】 社会保障の担当大臣として、まず委員の皆様方におかれましては本会議の委員に御就任いただきまして誠にありがとうございます。
私自身も大臣に就任をいたしまして以来、社会保障全体に関する会議を開催したいと、こういうような考え方を持っておりましたけれども、総理とも御相談を申し上げてこの度、政府全体でこのような会議をスタートさせていただくことになったわけでございます。
この場は、御案内のように中長期的な御議論をいただくところでございますけれども、現在社会保障につきましては国会で前国会以来、継続審議になっております年金改正法案、それから通常国会におけます医療保険制度改革、4月からは介護保険法の円滑な施行など、課題が山積をいたしておるわけであります。これらにつきましては担当大臣として全力で取り組んでまいりますが、御案内のように大変急速な少子高齢化が進行する中で、その後の社会保障をめぐる課題が引き続き多いと考えておるわけでございますので、どうかひとつ中長期的な視点から社会保障の基本的な在り方をお示しいただきますよう、是非ともお願いを申し上げます。
今後の社会保障制度につきましては、先ほど総理からお話がございましたし、また各委員からも御指摘がございましたが、率直に申し上げてこれまでどちらかというと年金は年金、医療は医療、介護は介護と、制度ごとに縦割りに議論がなされてきたきらいがあります。こうした点を踏まえまして、制度の横断的、総合的な議論をしていただきたいと、このように考えているような次第であります。
いずれにいたしましても、現在は豊かさの中の不安の時代であると言われているわけでございます。この中で国民の一番の不安は、いわゆる老後の不安ではないかと思います。真に豊かで安心のできる老後の確保を目指し、21世紀においても安定した社会保障制度を構築するよう、私自身も精一杯取り組んでいきたいと思いますので、委員各位の御協力をお願いいたします。以上です。
【小渕内閣総理大臣】 今日早朝からお集まりいただき、それぞれの御専門の立場のお話をお聞きして、私は非常に感銘すると同時に、責任の重さを感じたわけでございます。
現下の状況を考えますと、今、厚生大臣が言いましたように、我々もオールラウンドプレイヤーですからいろいろな法律案については勉強しますけれども、それぞれ専門、特に医療や年金の問題となりますと難しい数字がたくさん出てきて、そればかりやっていたのでは国会議員としてのほかの仕事はできないぐらいのことになっています。そこで、審議会でも立派な先生にお集まりいただき非常に詳しくやっていただくんですが、どうもそれぞれの関連性がない。
やはりマクロの問題、あるいは大きく全体の理念といったものをまずつくり上げて21世紀をスタートしなければならないわけですが、そういう意味では、今日お話を聞いていて、それぞれの専門家の先生方がこれだけ熱心に取り組んでおられる問題について、まずは21世紀に当たってどうあるべきかという統一的、総合的な理念やビジョンをはっきりさせ、そしてその中でいろいろな問題を考えていく必要があるのではないかと考えております。
また、税か社会保険かという問題のお話もありましたけれども、私の知る範囲では、ドイツでは、付加価値税を上げるときには社会保障に関するいろいろな給付についても相当議論した上で、然るべき必要があれば引き上げるということで、国民的理解を得ながらやってきた。しかし、日本は高度成長で税収もあったものですから、こうした点を解決しないできた。それから、先ほど渡辺委員がおっしゃったような課税最低限の問題も、どうも毎年の予算のときに与野党の話し合いの中で上げてきたようなところがあった。ところが、今やそのような状況ではなく、率直に申し上げて、抜本的な改革をしなければならない時期にきているのではないかと感じております。
そういう意味で、実はこの会議のテーマについては、最初は、真に豊かな老後を考えるということも言われたのですが、あえて社会保障構造全体の在り方を考えるということに変えていただいたんです。老後ということには消費の問題や税の問題などもすべてかかわるのでしょうけれども、やはりこの際、社会保障構造の全体をきちんと考えて、新しい構想を練って、その上で諸問題の解決をしなければならないと思うのです。
先ほど座長から政治の責任についてのお話がありましたが、本当にこの問題について何とかしなければならないという気持ちは、議員各位が恐らくみんな持っていると思います。この会議でまとめていただいたものを国会に出せば、議員の良識においてこれを解決しなければならない時期にきていると思っております。
総理大臣のリーダーシップということでも一生懸命努力しますので、是非いいものをまとめていただいて、一日も早く将来の姿というものを明らかにできたらと思っております。何とぞよろしくお願いいたします。
【貝塚座長】 では、大体時間がまいりましたようですので、本日の会合はこれにて閉会させていただきたいと存じます。
次回の進め方につきましては、本日委員の皆様方に御発言いただきました内容を踏まえながら、社会保障の現状と課題について更に議論をしていただきたいと思います。もし委員各位におかれまして特に議論のために必要と思われる資料がございましたら、事務局の方にお申し付けください。できる限り対応してまいりたいと存じます。
どうも本日は朝早くから御多忙のところを長時間ありがとうございました。