|
官邸の正面玄関を抜けると玄関ホールがありました。玄関ホールの中に入ると、アールデコ特有の幾何学的な曲線やジグザグ模様がモチーフとなった装飾が随所に見られ、非常に繊細で伸びやかな空間を創り出していました。
官邸が竣工して、初めて下見に訪れた田中義一総理は、玄関を見回して、 「まるでカフェーのようじゃのう」と感嘆の声を発したといわれます。当時としては、大変「モダン」な建物だったようです。
できるだけ壁では仕切らず、装飾の雰囲気や、床や天井の高さを変えるなどして空間に変化を与えているところは、当時人気の建築家ライトの影響が強く出ていると思われます。官邸の設計者も、インタビューで、「内部の最もライト思想の濃いのは、玄関ホールあたりのインテリアですね」と語っていました。
まさに、玄関ホールは昭和初期に流行した建築や芸術を凝縮した空間と言えるでしょう。
|
|