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「坂の都」東京といわれているように、「水の都」、「杜の都」など都市の特徴をとらえた呼び名がいろいろあります。それを官邸に当てはめてみると、「階段の館」といえるかもしれません。
まず、玄関ホールへ入ると、正面には、総理大臣執務室や閣議室などのフロアへつながる、いわゆる「男の花道」と呼ばれる階段がありました。その階段の両側には大食堂、小食堂、喫煙室などに降りるための、すれ違うのがやっとという狭い階段がありました。
正面の階段や西側の階段には、どちらも立派な装飾が施された「欄干」が両側に作られていました。かつて、官邸を訪問した新渡戸稲造博士がこの複雑な装飾を施した階段を見て、「ホコリのたかるように出来ているね」とユーモラスな感想を洩らしたと言われています。
日本の国威を海外に示すため、当時の建築家たちが「総理の館」建設にあたり、あらん限りの知識と技術を注ぎ込んだことは容易に想像できます。
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