郵政三事業の在り方について考える懇談会
第1回「郵政三事業の在り方について考える懇談会」
議 事 要 旨
1 日時 平成13年6月4日(月)11:45〜12:50
2 場所 内閣総理大臣官邸大食堂
3 出席者 別紙
4 議事概要
(1)総理挨拶
- 郵政事業の問題は、私が常々日本の成すべき改革の中でも最重要課題の一つとして挙げてきた問題。これからの議論の行方は、今後の行財政改革にも大きな影響を与える。言わば、小泉内閣の目玉の政策の一つ。
- これまでは、郵政三事業の民営化問題はタブーになっていた。今回初めて小泉内閣として民営化も含めて検討することは大きな変化。
- 私自身、郵便局をなくせと言ったことはない。郵便局を民間に任せると、もっといろいろな利点がある。
- 郵政三事業の改革は、財政投融資制度、特殊法人の大改革にもつながるものであり、そういう点も含めた議論を期待。
- 私自身、郵政民営化論者であるが、考えを押し付ける気はない。独断と偏見を排して、多くの皆さんの知恵を借りながら、郵政三事業のあるべき姿を率直に語り、郵政公社後の郵政三事業の在り方はどうあるべきかについて忌憚のない御意見をいただきたい。一年ぐらいかけて成果を得られるような案を出していただきたい。
(2)出席者紹介(別紙)
(3)座長指名
総理の指名により、田中委員を座長に選任した。
(4)運営方法等
ア 懇談会の議事の公開等について、以下を確認した。
- 会議の状況については、会議後に座長より記者会見を行うこと。
- 発言者名を記載した議事要旨を官邸ホームページに公表すること。
- 会議で配付した資料は原則公開とし、例外的に非公開とすること。
イ 検討スケジュールについて、以下を確認した。
- 今後、1年くらいをかけて議論を進めていきたい。
- 開催頻度は、月1回程度。議論を煮詰める必要がある場合は、委員に諮りもう少し頻度を高めることもあり得る。
(5)総務大臣挨拶
- 平成10年に成立した中央省庁等改革基本法により、13年1月に中央省庁が再編され、郵政省は総務庁、自治省と一緒に総務省に統合された。郵政事業は企画・立案部門が総務省の内局の郵政企画管理局、実施部門は外局の郵政事業庁になり、平成15年中に国営公社に移行することとされた。
- 国営公社の基本的な考え方は、独立採算、自律性と弾力性を重視した経営形態とすること。企業会計原則も取り入れ、中期経営目標を設定、評価も行う。ただし、職員は国家公務員で、団結権と団体交渉権はあるが、争議権はない。更に、郵便事業への民間参入を併せて実施することとなった。
- これらの措置を行うことにより民営化等の見直しは行わない旨確認的に規定されている。
- 平成15年中に国営公社に移行するため、今年中に制度設計を行い、来年の通常国会に法律案を提出する。
- 郵便事業への民間参入は、総理の「民間にできることは、できるだけ民間に任せる」という大原則のもと、国民の利益も最大限に守っていくということとの調和の中で、予断を持たずに検討する。
- 公社の検討については、総務省に民間の専門家や学識経験者に入ってもらう研究会を設置し、そこで方向づけをしたい。当懇談会からお話があれば、途中経過の説明も考えている。
- 公社移行後の郵政事業の在り方については、民営化を含めて当懇談会で大いに議論して意見を集約していただきたい。それについて我々も万般の協力をしたい。
(6)委員の自己紹介等
(池尾委員)
- 我々が抱えている問題の一番の根本は、官民関係の見直し、再定義をしないできたということ。
- 明治以来、100年以上かけて欧米の先進国に追い付くための経済発展ということに努力。直接追い付くというような形の経済発展のプロセスは、1970年代の半ばの時点で一応到達。80年代以降、日本経済は次の発展段階に入った。そういう大きなステージの転換があったときに、官民関係の在り方を改めて見直していくことが必要だった。
- 郵政三事業の在り方の見直しも、そういった官民関係見直しの観点から考えていきたい。
(翁委員)
- 郵便貯金の問題というのは、日本の構造問題、金融システムの根幹に関わる問題。公的金融の改革というのはこうした観点から待ったなしと考えている。
- 今回財政投融資改革に伴い、郵便貯金が自主運用を開始しており、非常に巨大なビッグプレイヤーが金融市場に7年間かけて参入することで、新たな金融市場や金融システムに影響を与え得る問題もある。
- 公社化後の議論ということだが、ここでの議論が公社化の際の議論にも生かせるようにと考えている。
(葛西委員)
- 国鉄は昭和39年から赤字になり、事業は悪化に悪化を重ねるという状況だった。
- 国鉄の中では分割民営化は口にしてはならなかったが、結果として、第二臨調ができ5年後には分割民営化された。
- 国鉄の経営は、不十分で不徹底な改善策を繰り返すことによって問題を一層悪化させたという歴史。実践経験ということで、この会議に貢献したい。
(風間委員)
- 郵政三事業に関しては素人であるが、議論の中から新たに結論を生み出していくということが大切と考える。
- 前もって結論を用意してそこに何かを結びつけることが、いろいろ大きな問題を生み出していると痛切に感じているので、フリーな立場から、いろいろなことを申し上げ、お役に立ちたい。
(清野委員)
- 経済理論の観点からは、官対民の視点より、規制や制度により民間のインセンティブが阻害されていないかが重要。その意味で、現在の郵政事業において不必要な規制がないのか、本来発揮されるべき郵便局職員のインセンティブをもう少し活用できないか、という観点から改革が進んでいけばと考えている。
(樋口委員)
- 21世紀のキーワードは対等なパートナーシップ。国と地方、官と民、女性と男性の対等なパートナーシップがある。郵政事業の民営化ということも、その流れの中で見て、タブーをつくらず理解しなければならない。
- 介護保険の創設時の取材調査の中で、地方のお年寄りにとっていかに郵便局が頼りにされているかということを痛感。
- 年金を預け、そこからまた零細な貯金をする。その郵便局への信頼というものをどうしていくか。そうやって集めたお金がブラックボックスの中へ入ってしまうようなことがあっては絶対にいけない。
- 全国隅々に生きる、なけなしの預金を持って安らかに老いていきたいと願っている地域の中高年の立場で、民営化がその人にとってどんな影響を与えるか考えていきたい。
(松原委員)
- 郵政事業については、民営化の方がいいと学問的に確信しているが、この場では素直に皆さんの意見を聞きながら、もう一度勉強し直したい。
- 郵政民営化というと、常に全国ネットワークがすぐなくなるという観念が国民の中にも、学者の中にも結構強くあるが、この点さえ納得できるような形で議論ができれば、問題は解決するのではないか。
- 郵便局を民営化することによってコンビニみたいになったらもっと便利で、経営もよくなるのではと考えている。この可能性を含めて、もう一度白紙で、しっかり勉強していきたい。
(森下委員)
- 民間企業のトップとして今まで経営をやってきた立場から、公社後の民営化等も含めたあり方論議に参加したい。
- 企業経営に当たっては、国民・消費者といった顧客への利便性をより高めていくという視点が必要。一方、サービスの提供には、経済合理性という視点が不可欠である。その両立を果していくための方法を考えることが重要。
- 顧客の利便性と経済合理性、マクロとミクロ、時間的な短期と長期というマトリックスの中で問題を整理し、日本の郵政事業のあるべき姿という視点で議論に参加したい。
(若杉委員)
- 企業とか会社は、だれが所有するかということより、ガバナンスが明確であり、きちんとした目的と具体的な目標を持っていることが重要であるという基本的な考え方を持っている。
- 日本では、民間にそれだけの能力があるということで、株式会社制度をとり、民間に企業の運営を委ねることを基本としてきた。しかし、国でなければできない、あるいは民間ではできない事業がある。郵政三事業はそういうものとして国が行ってきたのだと思う。
- しかし、状況が大きく異なってきているので、郵政三事業のあり方を現時点で見直すことは非常に重要なことである。私は郵政審議会委員として郵政事業にも関わってきたが、できるだけ先入観を持たずに、客観的な立場から国民にとって最も望ましい結論が出るよう議論したい。
(総務大臣)
- 我々の推進している市町村合併が進めば、住民から役場の距離が遠くなる。そこで、郵便局でワンストップ・サービスを行い、住民票の写しや証明書がもらえるようにする法案を提出している。
- この他、外務職員による独り暮らしのお年寄りに声をかけるサービスもしている。また、昨年12月から4,000の郵便局でお年寄りなどを中心にIT講習を実施。将来、地方のIT化や情報化を進めるとすれば、郵便局もお役に立てるところがあるのではないかということでやっている。
(田中座長)
- 郵便局に関わる方々の積み重ねを今後の21世紀の中にうまく生かすためにも、民営化は不可避だというのが私の基本的な姿勢。
- 郵貯、簡保で集めている金額が膨大であって、民間の補完に徹するという姿にはなっておらず、日本のマーケットに歪みをもたらしている。
- 日本では、本来資金運用の前提となる国債の流通利回りそのものも、政府等の影響を受けており、予測がつかないのが現状である。リスクとリターンを投資家が見極めをした上で運用することが極めて難しく、これを是正することなくして、高齢化社会を迎える21世紀の日本はない。
- 本懇談会は、結論を最初に押し付けるというような性格のものではないし、討論を通じてお互いが学び合うということが不可欠。座長心得として自らに抑制を期し、いろんな意見を聞こうと思っている。議論の過程は明解なものでなければならず、基準はその都度明解でなければならない。
(7)閉会
(田中座長)
- 今後の懇談会の運営については、月1回程度ということで日程を事務局で調整してもらい、1か月後ぐらいに開催したい。そのときは、総務省の方から郵政三事業について概要説明を願いたい。
- 郵政公社になり、赤字が出たら納税者に押し付けるというのでは困るので、どのように運営がなされているのか、赤字が発生しているならば地域別、あるいは分野別にどういう形で起きているのか、ディスクロージャーを拡大願いたい。
- 総務省から具体的な説明を受ける際、こういうデータは出して欲しいというものを用意した。これに付け加えるべきテーマがあれば、それも総務省に提示してもらうということで、次回は進めていきたい。
(別紙)
第1回郵政三事業の在り方について考える懇談会出席者
(政府側)
| 小泉純一郎 | 内閣総理大臣 |
| 福田康夫 | 内閣官房長官 |
| 片山虎之助 | 総務大臣 |
| 安倍晋三 | 内閣官房副長官(政務・衆) |
| 上野公成 | 内閣官房副長官(政務・参) |
| 古川貞二郎 | 内閣官房副長官(事務) |
(委員)
| 田中直毅 | 座長・経済評論家 |
| 池尾和人 | 慶應義塾大学経済学部教授 |
| 翁 百合 | 株式会社日本総合研究所調査部主席研究員 |
| 葛西敬之 | 東海旅客鉄道株式会社代表取締役社長 |
| 風間晴子 | 国際基督教大学教授 |
| 清野一治 | 早稲田大学政治経済学部教授 |
| 樋口恵子 | 東京家政大学教授 |
| 松原 聡 | 東洋大学経済学部教授 |
| 森下洋一 | 松下電器産業株式会社代表取締役会長 |
| 若杉敬明 | 東京大学大学院経済学研究科教授 |