平成8年12月
税制調査会委員等名簿
本答申の審議に参加した委員及び特別委員は、次のとおりである。
| 委 員 | ○ | 石 弘 光 | ○ | 竹 内 佐和子 |
| 大 宅 映 子 | 谷 野 伊 藏 | |||
| ○ | 貝 塚 啓 明 | 中 西 真 彦 | ||
| 片 岡 輝 昭 | ○ | 花 岡 圭 三 | ||
| ○ | 加 藤 寛 | ○ | 本 間 正 明 | |
| 川 上 哲 郎 | 松 浦 幸 雄 | |||
| 栗 田 幸 雄 | ○ | 松 尾 好 治 | ||
| 幸 田 正 孝 | ○ | 松 本 作 衞 | ||
| 古 賀 憲 介 | ○ | 水 野 勝 | ||
| 後 藤 森 重 | ○ | 宮 島 洋 | ||
| 小 長 啓 一 | ○ | 森 田 明 彦 | ||
| 今 野 由 梨 | 諸 井 虔 | |||
| 堺 屋 太 一 | 吉 永 みち子 | |||
| ○ | 島 田 晴 雄 | 鷲 尾 悦 也 | ||
| ○ | 杉 田 亮 毅 | 和 田 正 江 | ||
| 特別委員 | 伊 藤 三 郎 | 土 井 定 包 | ||
| 大 澤 雄 三 | ○ | 水 野 忠 恒 | ||
| ○ | 大 田 弘 子 | 柳 島 佑 吉 | ||
| 川 岸 近 衛 | 吉 田 文 一 | |||
| ○ | 河 野 光 雄 | 若 井 恒 雄 |
(○印を付した委員及び特別委員は、臨時小委員会に所属した委員及び特別委員である。)
目 次
一 基本的考え方
1 消費税率の引上げ及び地方消費税の創設
2 経済社会の構造変化と税制
3 経済及び財政の状況
4 地方分権の推進と地方税源の充実
二 平成9年度の税制改正
1 平成9年度特別減税
2 酒税
3 土地税制
(1) 基本的考え方
(2) 土地保有課税
イ 固定資産税
ロ 地価税
(3) 土地取得課税
イ 登録免許税
ロ 不動産取得税
4 租税特別措置、非課税等特別措置の整理・合理化
5 道府県から市町村への税源移譲
三 法人課税
四 その他
1 外国為替管理制度の抜本的な見直しに伴う税制面の対応
(1) 外国為替管理制度の抜本的見直し
(2) 民間国外債の利子非課税制度
2 利子及び株式等譲渡益課税
3 納税者番号制度
(参考1)平成6年秋の税制改革における増減収フレーム(地方税関連)
(参考2)納税者番号制度に関するアンケート調査結果(抄)
編集者注:文字化けを防ぐため、答申本文中の「丸付数字の見出し」は「(a)、(b)、(c)」などとした。
当税制調査会は、平成6年6月「税制改革についての答申」を、同年12月には「平成7年度の税制改正に関する答申」(以下「平成7年度答申」という。)を、昨年12月には「平成8年度の税制改正に関する答申」(以下「平成8年度答申」という。)をそれぞれとりまとめた。さらに、本年6月には「消費税率に関する意見」をとりまとめた。
この間、中期的な観点からの税制のあり方を念頭に置きつつ、昨年春以来議論を深めるとともに、法人課税については、昨年10月に設置された「法人課税小委員会」において、課税ベースの問題を中心として、26回にわたり広汎な議論を行い、本年11月26日に「法人課税小委員会報告」(以下「小委報告」という。)が総会に提出された。
以上のような審議を経て、11月末から、当面の課題である平成9年度の税制改正について検討を行った。
一 基本的考え方
1 消費税率の引上げ及び地方消費税の創設
平成9年4月からの消費税率(地方消費税率を含む。以下同じ。)の5%への引上げは、平成6年秋の税制改革において、所得税・個人住民税の恒久的な制度減税(3.5兆円規模の負担軽減)と概ね見合うものとして一体的に措置された。この税制改革は、税制面から我が国経済社会の構造改革を進めるものである。このうち、所得税・個人住民税の制度減税は平成7年度から先行的に実施されており、法律の規定どおり消費税率の引上げを行わなければ、危機的な財政構造を更に悪化させることになる。
以上を踏まえ、当調査会は本年6月、「消費税率に関する意見」をとりまとめ、「法律の規定通りの消費税率は、平成9年4月1日から確実に実施する必要がある。」旨を確認した。
この税制改革については、消費税率の引上げのみが注目されがちであるが、所得税・個人住民税の恒久的な制度減税は平成7年度から既に始まっており、さらに平成7年度及び平成8年度は景気対策として特別減税(2兆円規模)が上乗せされている。
また、地方分権の推進、地域福祉の充実等のため、平成9年4月に消費譲与税に代えて地方消費税が創設されることとなっており、地方税源の充実が図られている。
この税制改革に関連して、当調査会は、国及び地方において行政改革、歳出削減を中心とする財政構造改革等に取り組む必要性を強く訴えてきた。今後とも、これまで以上に真剣に取り組んでいくことを求めていきたい。
2 経済社会の構造的変化と税制
(1) 当調査会は、昨年春以来、経済社会の構造的変化を踏まえた中期的な観点からの税制のあり方を念頭に置きつつ、様々な議論を行ってきた。議論を重ねるにつれ、少子・高齢化による財政負担の増大にどう取り組んでいくのか、国際化(ボ−ダ−レス化)、情報化の進展の中で税制はどう対応していくのか、といった問題意識を強く持つようになった。
当調査会は、今回、国民への問題提起、あわせて次期調査会への申送りといった意味合いで、上記の問題意識を本答申とは別にとりまとめることとしている。
(2) 納税者番号制度、利子及び株式等譲渡益の総合課税化、法人課税の見直しといった当調査会の過去の答申において指摘してきた検討課題は、経済社会の構造的な変化に税体系や各税の仕組みをどう対応させていくかという問題である。
特に、法人課税については、公正・中立で透明性の高い税制を構築するという基本的視点に加え、我が国産業の国際競争力の維持や企業活力の発揮、新規産業の創出の観点とともに、法人課税が財源・税体系に占める重要性に留意しつつ、「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」との方向に沿って検討を行った。
3 経済及び財政の状況
(1) 我が国経済の現状は、所得減税の先行実施や累次の経済対策の実施等により、個人消費は緩やかな回復傾向にあり、住宅建設は高い水準で推移するなど、民間需要は堅調さを増しており、景気は回復の動きを続けている。
(2) 我が国の財政は、平成8年度予算において、特例公債を含め21兆円に上る公債を発行するなど、主要先進国中最悪ともいえる危機的な状況にある。地方財政は、3年連続して大幅な財源不足が続いており、平成8年度の財源不足額は過去最大の8.6兆円となっている。
急速に進展している少子・高齢化などを踏まえれば、財政構造改革を従来にも増して強力に推進していかなければならない。政府は、平成9年度予算において、「財政構造改革元年」にふさわしいものとして、過去最大の公債減額幅を上回る3兆円以上の公債減額の実現を目標に掲げている。これが中期的な財政健全化に向けた第一歩となることを強く期待したい。
さらに、当調査会としては、国・地方を通じた行政改革、財政構造改革、社会保障制度改革、地方分権等について、関係審議会等と密接に連携を取り、今後とも真剣な議論を進めていくこととしたい。
(3) 平成9年度税制改正においては、経済社会の構造的変化とそれに対する様々な制度改革の取組みや、足元の経済・財政事情に十分に留意して検討を進めることが必要である。財政構造改革元年にふさわしく、引き続き経済動向に配慮しつつも、全体として、財政赤字を拡大しない方向で対応すべきである。
4 地方分権の推進と地方税源の充実
地方分権は時代の要請であり、今後、地方分権を推進していくに当たっては、地方団体自らが、住民の意向を十分踏まえて、事務事業の見直し、組織・機構の簡素・合理化など幅広く行財政改革を積極的に進めるとともに、その財政基盤となる地方税について課税自主権を尊重しつつ充実確保を図り、安定的な地方税体系を確立することが必要である。
二 平成9年度の税制改正
1 平成9年度特別減税
上述のとおり、平成7年度、平成8年度の所得税・個人住民税の特別減税は、当面の景気対策の観点から、消費税率引上げに先行実施している制度減税に上乗せする形で、それぞれ1年限りの措置として実施されてきた。
平成9年度については、我が国経済は回復過程にあること、特別減税実施の財源は赤字公債によらざるを得ず、危機的な財政状況を更に悪化させ財政の対応力を損なうとともに、我が国経済の活力を蝕んでいくおそれがあること等を踏まえると、特別減税を実施することは適当でない。
なお、厳しい財政状況を理解しつつも、景気対策として公共事業を拡大する余地があるのであれば特別減税を行う方がよいのではないかとの意見、平成9年度の景気が腰折れするおそれがあるとすれば特別減税を行うべきではないかとの意見があった。
2 酒 税
(1) 昨年夏、我が国酒税法におけるしょうちゅう(甲類及び乙類)と他の蒸留酒間の税率格差について、EU、米国、カナダがWTO(世界貿易機関)に対し提訴した。以来、政府において、WTOの紛争解決手続きに従って、関係各国の理解を得るべく協議を重ねてきた。しかしながら、本年11月、当該税率格差について、ガット協定に適合させるべき旨のWTO勧告が出された。
(2) 今回の勧告に誠実に対応するためには、平成9年度税制改正において、しょうちゅうの税率を引き上げ、ウイスキー類の税率を引き下げることで思い切った格差の縮小を図らざるを得ない。これに関連して、スピリッツ類やリキュール類の税負担のあり方についても検討することが必要である。その際、これらの改正により酒類消費者の総体の税負担が少なくとも増加することのないよう留意すべきである。なお、大幅な税率引上げによる消費者や製造者等への影響に十分配慮し、適切な激変緩和措置を講ずることが適当である。
3 土地税制
(1) 基本的考え方
本年11月に、土地政策審議会の答申が公表され、土地の有効利用を促進することが今後の土地政策の基本的方向である旨が示された。土地基本法を基礎とする現行の土地税制は、まさにそのような観点を踏まえて構築されたものである。また、平成8年度税制改正において、平成3年度の土地税制改革後の土地を巡る状況変化等に対応して、基本的な枠組みを維持しつつ、土地の保有・譲渡・取得の各段階にわたり総合的な見直しが行われている。
平成9年度は、固定資産税の評価替えの年であるため、当調査会は、固定資産税を中心に関連する税目について議論を行った。具体的には、固定資産税や登録免許税等の税負担に対する負担調整措置等について検討した。土地保有課税のあり方については、固定資産税と地価税の関係も含め、中長期的視点に立った幅広い検討が早急に必要である。
(2) 土地保有課税
イ 固定資産税
市町村の基幹税目である固定資産税については、税源の普遍性や税収の安定性に富み、市町村税として最もふさわしい税であって、これまでも市町村財政の中で重要な役割を果たしてきているところであり、その安定的確保を図ることを基本とすべきである。
また、固定資産税の土地の評価については、土地基本法等の趣旨を踏まえ、市町村において、地価公示価格の7割程度を目標とした評価の均衡化・適正化を実施している。
今回の審議においては、現在の税率水準のまま地価公示価格の7割評価に基づいて課税した場合の税負担水準、3年ごとの評価替えのあり方や負担調整措置のあり方などの論点が指摘されており、これらについて更に議論を深めることが必要である。したがって、今後、これらの点を含め固定資産税のあり方を早急に検討する必要がある。
当面、平成9年度以降の税負担については、最近の地価の動向に配慮した措置を講ずるべきではないかとの意見があるとともに、市町村の基幹税目であり市町村財政に及ぼす影響が非常に大きいとの意見があり、これらを踏まえて検討すべきである。
なお、これに関連して、市町村はまず歳出の抑制に全力を挙げて取り組むべきであるとの意見があった。
ロ 地価税
地価税負担については、法律上定められた5年ごとの検討の期限よりも1年前倒しで見直しが行われ、平成8年度税制改正において、税率を半減する軽減措置等が講じられた。地価税は、土地の毎年の資産価値の変動に応じた適切な負担を求めるために、長期的・体質改善的な措置として導入された税であり、引き続きその役割を果たしていく必要がある。
(3) 土地取得課税
イ 登録免許税
土地に係る登録免許税の課税に当たっては、その課税標準に固定資産税評価額が用いられている。平成6年度評価替えにおいて土地の固定資産税評価が大幅に引き上げられたことから、登録免許税の課税標準についての負担軽減措置が平成8年度末まで講じられている。
平成9年度の評価替えにおいて固定資産税評価は前回よりも大幅に引き下げられるが、課税実績や土地取引の状況等を総合的に勘案し、引き続き一定の調整措置を講じることが適当である。
ロ 不動産取得税
また、土地に係る不動産取得税についても、平成6年度の固定資産税の評価替えによる課税標準の上昇に配慮し、宅地等について負担軽減措置が平成8年末まで講じられている。
平成9年度の評価替えにおいて固定資産税評価は前回よりも大幅に引き下げられるが、課税実績や土地取引の状況等を総合的に勘案し、登録免許税と同様に引き続き一定の調整措置を講じることが適当である。
4 租税特別措置、非課税等特別措置の整理・合理化
(1) 租税特別措置及び非課税等特別措置は特定の政策目的を実現するための政策手段であり、税負担の公平・中立・簡素という基本原則の例外措置として設けられている。
租税特別措置等に係る課税の適正化は、消費税率の「検討条項」において「勘案項目」の一つとされ、当該条項に基づいて、平成7年度、平成8年度と抜本的な整理・合理化が行われ成果をあげてきた。平成9年度税制改正においても、「財政構造改革元年」にふさわしく、徹底した整理・合理化を行っていくことが重要である。
(2) 企業関係の租税特別措置等は、経済構造改革の一環としての規制緩和や、行政改革を進めていく上での行政の関与のあり方の見直しといった流れに反するのではないかとの指摘もある。個人関係の租税特別措置等については、(a)住宅取得促進税制、(b)生命保険料控除・損害保険料控除、(d)老人マル優等、(e)複利型預貯金商品等(利子にかかる課税繰延べ商品)に対する課税のあり方、等の課題がある。これらについては、平成8年度答申で当調査会の考え方を示しており、その方向で整理・合理化を行っていくことが適当である。
特に、金融システム改革が進められる中、税制においては、その中立性が強く求められていることから、生損保控除や課税の繰延べ等を見直し、金融商品や業態に対する中立性を増していくことが重要である。
(3) 地方税の非課税等特別措置について整理・合理化を行うに当たって、特に事業税における社会保険診療報酬に係る課税の特例措置については、累次の答申においても指摘してきたとおり、これを見直すことが適当である。
5 道府県から市町村への税源移譲
平成6年秋の税制改革に伴う地方税関連の増減収については、個人住民税の制度減税、地方消費税の創設及び消費譲与税の廃止により、平成9年度以降、道府県においては増収、市町村においては減収が見込まれることから(参考1を参照)、市町村の減収補てんのため、道府県から市町村への税源移譲を行うことが必要である。
この移譲に当たっては、納税者の総合負担を変えない方向で、かつ、現行の地方税体系の基本的枠組みの範囲内で措置すべきであり、具体的には、道府県民税所得割の一部を市町村民税所得割に、道府県たばこ税の一部を市町村たばこ税に移譲することが適当である。
三 法人課税
1 近年、我が国においては、国際化、自由化の進展、国の内外における競争の激化等を背景に、経済社会構造改革の推進、新規企業・産業の創出等による経済の活性化が求められている。
国税である法人税の税率は、昭和63年の税制改革で、37.5%に引き下げられており、先進諸外国の法人税率との格差はかなり縮小してきているものの、我が国の法人課税(地方の法人事業税及び法人住民税を含む。)の表面税率(調整後)が他国と比べて相対的に高いことは事実である。
(注)表面税率(調整後)とは、事業税の損金算入を加味して国税・地方税の表面税率を足し合わせたもの(従来の「実効税率」)をいう。
2 このような状況の下、企業活力や産業の国際競争力に配意する観点から、法人課税の税率を引き下げ、税負担を実質的に軽減していくべきではないかとの強い意見があった。
しかし、現在の厳しい財政事情の下では、税負担の軽減の財源を公債発行で賄うことは適当でない。また、他税目の増税を財源にするのであれば、所得・消費・資産等のバランスのとれた税体系全体のあり方について検討し、国民の合意を得て決定していく必要があろう。したがって、法人課税の税率を引き下げようとすれば、当面、法人課税における税収中立を前提とせざるを得ない。
3 一方、法人課税については、我が国産業の国際競争力が維持され、企業活力が十分発揮できるよう、産業間・企業間において中立的で経済活動に対する歪みをできるだけ小さくすることがますます重要になってきている。また、税制の公正・中立や透明性・明確性を求める声が一段と強くなってきており、これらの観点から、課税ベースの適正化が求められている。昭和40年の法人税法の全般的な整備以後の社会経済情勢の変化も踏まえ、課税ベースについて適正化の観点から全般的な点検を行うことが必要である。
税率引下げの検討を行うためにも、この課税ベースの適正化を図ることが重要である。
4 以上の点からすれば、小委報告の検討の成果を踏まえて、課税ベースを適正化の観点から再点検し、その結果、課税ベースの拡大の余地があるならば、法人税の基本税率を引き下げ、他の主要先進諸国並みに近づけることが望ましい。
また、地方の法人課税についても、税収中立を前提として、同様の見地から、税率を引き下げていくことが望ましい。
5 なお、本年の銀行法等の改正により、金融機関等の行うトレ−ディング勘定に関して時価基準が採用されている。これに対応して、法人課税についても所要の法整備を図ることが適当である。
四 その他
1 外国為替管理制度の抜本的な見直しに伴う税制面の対応
(1) 外国為替管理制度の抜本的見直し
金融システム改革の一環として、我が国金融・資本市場の一層の活性化を図り、欧米先進諸国並みの自由な対外取引環境を実現すること等を目指して、我が国外国為替管理制度の抜本的な見直しが鋭意進められている。
外国為替取引が既に自由化されている欧米では、自由化が脱税やマネ−ロ−ンダリング等の不適正取引を助長することのないように環境整備を行っている。例えば、一定額以上の現金の移動や送金等について、金融機関等のクロスボーダー取引関係者に対し税務当局への報告を義務付けている。
当調査会としても、外国為替管理制度の見直しは我が国経済の国際化の流れに沿ったものと考える。その場合、税制の面からは、課税回避資金の海外への送金・隠匿、クロスボーダー取引を利用した租税回避行為の増大、海外における資産収益の把握の困難化、といった問題が生ずる。これらの問題に対しては、欧米諸国の例を参考に、課税の適正化のための諸措置を検討することが適当である。
(2) 民間国外債の利子非課税制度
また、民間国外債の利子等については、非居住者が受け取る場合に限り非課税とする特例が設けられているが、外国為替取引の自由化に伴い、居住者による本非課税制度の濫用の機会が増えていくことも考えられる。こうした問題に適切に対応するためには、国外債であっても、国内債と同様に、原則として発行体が利払いをする段階で源泉徴収をするとともに、利子受領者が非居住者であることが確認できる場合にのみ非課税とする等、手続の整備を進めていくべきである。
2 利子及び株式等譲渡益課税
(1) 利子所得に対しては、昭和63年4月より、所得把握の限界や費用面、手続面等にも配慮し、現実的かつ実行可能な制度として一律源泉分離課税が採用された。同時に、いわゆる金融類似商品についても幅広く利子所得並みの課税が行われた。
他方、株式等譲渡益については、長年の間、原則非課税とされていたものが原則課税に移行した。その際、証券市場への影響等に配慮して、申告分離課税とみなし譲渡利益率を用いた源泉分離課税の選択を認める制度が導入された。
(2) 当調査会は、従来から、利子・株式等譲渡益について、基本的に総合課税を目指すべきであるとの考え方を表明してきた。
これに対して、累進税率や所得把握を嫌った資金の海外シフトのおそれ、各金融資産の税引後収益が納税者毎に異なること、年末調整の対象になる大多数のサラリーマンに膨大な申告事務負担をもたらす懸念があること等の問題を指摘する意見があった。
また、所得課税の税率構造のフラット化が進めば、公平性の観点から総合課税化する必要性は少なくなるのではないかとの意見があった。
こうした議論を踏まえると、利子・株式等譲渡益課税のあり方については、今後、総合課税と分離課税のメリット・デメリットを勘案しつつ、所得課税における課税ベースと税率のあり方について、幅広く国民的な議論を行っていくのが適当である。
(3) 株式等譲渡益課税のあり方については、証券税制全体の中での検討も必要であるが、当面の方向としては、現在の所得把握体制の下でも、分離課税制度の枠組みの中で課税の適正化を検討することが適当である。
3 納税者番号制度
(1) 納税者番号制度については、その目的・効果に関し、平成7年度答申で、(イ)税務行政の機械化・効率化による課税の一層の適正化、(ロ)総合課税の実施、(ハ)相続税等の資産課税への利用という3つの類型を示した。
他方、累次の答申において、納税者番号制度は国民生活に少なからぬ影響を及ぼすものであることから、官民のコスト、資金シフト等の経済取引への影響、プライバシーの問題等について、国民の受止め方を十分に把握しながら、更に子細な検討を行う必要があると指摘してきた。
(2) 今回の審議では、上記の指摘を踏まえ、国民の受止め方を把握するために、納税者番号制度に関するアンケート調査結果の聴取を行ったところ、国民の理解はいまだに十分ではないとの意見があった。(参考2を参照)
また、番号利用に係る行政コストの試算結果について報告を受けたところ、今後、番号利用による行政の効率化等のメリットや民間のコストをも考慮して、更に検討を進めることが有益であるとの意見があった。
(3) 従来、納税者番号制度については、利子・株式等譲渡益の総合課税化との関連で議論されることが多かった。先に述べたように、利子・株式等譲渡益課税のあり方については、所得課税の問題として、別途十分な議論を行っていく必要がある。
それと同時に、納税者番号制度については、税務行政の機械化・効率化に資する観点から、また、一定の限界はあるものの、納税者の所得等の把握により所得・資産課税の適正化に資する観点から、多角的に検討を進めていくべきである。
国際化、情報化等の動きを踏まえると、クロスボーダー取引、電子商取引等に関連して発生する所得を把握する手段として、納税者番号制度を活用できるか否かという新たな視点からも検討を行っていくことが適当であろう。
(4) 今後とも、納税者番号制度については、国民の受止め方を十分に把握するとともに、納税者番号として利用しうる番号の整備状況を見極めつつ、プライバシーの問題等、従来指摘してきた諸課題や、今回指摘した新たな課題について幅広い観点から議論を深めていく必要がある。
(5) 当調査会としては、納税者番号制度についての国民の理解が更に深められ、活発な議論が行われることが重要と考える。政府においても、本年作成した納税者番号制度に関するパンフレットのように、制度の具体的なイメージを抱けるような素材を国民に提供していくことを期待したい。
(参考1)
平成6年秋の税制改革における増減収フレーム(地方税関連)
(単位:億円)
項 目 | 道府県 |
市町村 |
| 個人住民税の制度減税(A) | △1,820 | △8,470 |
| 消費譲与税の廃止(B) | △7,800 | △6,500 |
| 地方消費税の創設(C) | 24,490 | − |
| 地方消費税交付金(1:1) (D) | △12,245 | 12,245 |
合 計(A+B+C+D) | 2,625 | △2,725 |
(参考2)
納税者番号制度に関するアンケート調査結果(抄)
○ 納税者番号制度に関するアンケート調査(大蔵省・自治省)(抜粋)
・実施時期:平成8年3月
・対 象 者 :20歳以上の一般個人 2,500人
あなたは、「納税者番号制度」という言葉をご存知でしたか。該当するものを1つ選び、番号を○で囲んで下さい。
( 3.4%)1.詳しく内容を知っていた
(34.3%)2.少しは内容を知っていた
(37.3%)3.言葉は知っていたが、内容は知らなかった
(25.0%)4.初めて聞いた(内容は全く知らなかった)
あなたは、納税者番号制度を導入することに対してどのようにお考えですか。該当するものを1つ選び、番号を○で囲んで下さい。
(11.1%)1.賛成である
(29.8%)2.どちらかといえば賛成である
(25.4%)3.どちらかといえば反対である
( 9.4%)4.反対である
(22.1%)5.どちらとも言えない
( 2.2%)6.分からない
あなたは、今後どのように納税者番号制度の検討を進めていくべきであるとお考えですか。該当するものをいくつでも選び、番号を○で囲んで下さい。
( 8.5%)1.納税者番号制度の導入の是非について、早急に結論を出すべきである
(58.1%)2.納税者番号制度に関係する諸問題について、今後とも慎重に検討を続けていくべきである
(65.6%)3.納税者番号制度に対する国民の理解が深まり、活発な議論が行われる必要がある
( 3.2%)4.納税者番号制度について検討や議論をする必要はない
( 1.9%)5.その他
( 2.9%)6.分からない
(参考)前回アンケート調査
○ 税制度に関するアンケート調査(大蔵省・自治省)(抜粋)
・実施時期:平成4年9月
・対 象 者 :20歳以上の一般個人 1,500人
あなたは「納税者番号制度」という言葉をご存じですか。該当するものを1つ選び、番号を○で囲んで下さい。(○は1つだけ)
( 1.5%)1.詳しく内容を知っている
(16.8%)2.少し内容を知っている
(38.9%)3.言葉は知っているが内容は知らない
(42.6%)4.まったく知らない(はじめて聞いた)
あなたは、「納税者番号制度」を採り入れることについてどのようにお考えですか。お考えに近いものを1つ選び、番号を○で囲んで下さい。(○は1つだけ)
(10.9%)1.採り入れるべきだ
(70.3%)2.採り入れるかどうかについては、プライバシー保護などをさらに検討すべきだ
(11.5%)3.採り入れるべきではない
( 2.2%)4.その他