NHK「日曜討論」枝野官房長官出演


平成23年3月13日(日)


(島田解説委員)
 総理大臣官邸にいる枝野官房長官に中継で聞きます。  おはようございます。

(枝野官房長官)
おはようございます。

(島田解説委員)
官房長官、被災地では懸命の救援、そして捜索が続いていますけれども、現時点で政府が最も力を入れているのはどの点ですか。

(枝野官房長官)
まだ孤立した状態で救援を待っていらっしゃる方々がたくさんおられます。何としてでもこうした皆さんを、人命第一ということで、一人でも多くの皆さんの命を守る。こういう観点での救難活動・救援活動に最大限の力を注いでいます。同時に、避難所等に来られていらっしゃる方も、東北地方はまだ寒い時期でございます。健康の観点からも、また食糧・水等の確保という観点からも、これも最大限の力で体制を組んで進めております。  こうしたことに加えて、今回は原子力発電所に被害が生じておりますことから、この被害を最小限に抑えて、住民の皆さんの生命や健康に被害が及ばないようにということで最大限の力を注いでいます。  この3点、今、最大限の力を注いで、政府一体となって総力を挙げて全力で取り組んでいるところです。

(島田解説委員)
国の力、そして自治体の力、更には民間の力も結集する必要があると思うんですけれども、その点についての働きかけは、今、順調に進んでいるんでしょうか。

(枝野官房長官)
この間、例えば食糧や水等の確保・供給、それから例えば原子力発電所周辺の皆さんの人の移動については、バス運送事業者の皆さんにも御協力をいただいています。物資の運搬については、トラック関係の皆さんにも御協力をいただいています。勿論、医療関係は国公立のみならず、民間の医療機関の皆さんにも御協力をいただいています。  ここですべてを挙げることはできませんけれども、民間の皆さんにも力を発揮していただいて、そういった意味では国を挙げて被害の拡大防止と、そして避難されている皆さんの支援に当たっているところです。

(島田解説委員)
そうした中で、昨日から東京電力の福島第一原子力発電所で想定を超えるトラブルが発生している。半径20km圏内の住民に避難指示を出すというところにまで事態が動いています。第一原発、第二原発の問題に、これから先、政府として、どう抑え込んでいくんですか。

(枝野官房長官)
とにかく原子力の問題でありますので、住民の皆さんに生命・健康の被害を及ぼさない。そのことのために、リスクをどうやって抑え込んでいくのかということに総力を挙げております。勿論、最初の地震と津波が未曾有のものでございましたので、それに対応するということについては大変な集中力と対応力が求められているところでございます。この間、住民の皆さんを始めとして御心配をされている方も少なからずいらっしゃるかと思いますが、今、何とかぎりぎりのところで、この間、住民の皆さんの健康に直接の大きな被害をもたらさない範囲で、このリスクを抑え込んでおります。  これから若干の期間、こうした最大限の注意を払いながら管理をしていかなければならないと思っておりますが、何としてでも放射能・放射線による大きな健康被害を生じさせることのないよう収拾させてまいりたいと決意をしています。

(島田解説委員)
昨日の第一原発の1号機の爆発のような事象も、幸いなことに原子炉格納容器の損傷につながらなかったということはありますけれども、こうやって抑え込んでいく中で、避難を続けている皆さんは大体いつごろまで避難をしていただくことになるんですか。

(枝野官房長官)
避難されている皆さんの中には、御病気の方、高齢者の方などもいらっしゃいます。できればそうした皆さんの避難の期間を、負担を小さくさせたいという思いがある一方で、まさに万全を期さなければならないと思っています。  現時点では、今、リスクの拡大を防止する。そして小さくしていくという方向に向けて力を注いでいるところでございまして、率直に申し上げて、これからどれぐらいの期間、避難をしていただくのかという想定を申し上げるのは少し早いかなと思っております。  ただ、繰り返しになりますが、何とか住民の皆さんに生命や健康の被害の生じないような管理を、今、全力で進めてまいっております。

(島田解説委員)
そして、今回の東北関東大震災の被害を受けた全体の被災地に対する支援の話に移りたいんですけれども、昨夜も持ち回りの閣議によって激甚災害への指定が決まりました。この点についてはどういう判断だったんですか。

(枝野官房長官)
激甚災害の指定にはさまざまな要件があるんですけれども、これはどう見ても明らかに、その要件を満たしているという判断をいたしまして、詳細なデータの積み上げというよりも、一刻も早くこの指定をすることで、いろいろな意味で、今後の避難されている皆さんを始めとして、復旧に向けた最大限の力を発揮するんだという姿勢をお伝えしたいと思いました。そうした決意の下に進めてまいります。

(島田解説委員)
それによって、ライフラインの確保、そして復旧ということに自治体も、あるいは民間の関係機関も動きやすくなるという御判断ですね。

(枝野官房長官)
そうです。

(島田解説委員)
もう一つ、これから先、津波の被害に遭われた方々の現場では、仮設住宅の必要といったものも切実な問題になってきます。これへの手当ては進んでいるのでしょうか。

(枝野官房長官)
既に国土交通省を中心として、仮設住宅そのものの手配というものは最大限のスピードで進めていただいております。一方で自治体の皆さんに土地を確保していただく必要もありますので、こうしたことは一番被害の大きなところでは、まだその段階には行っていないかもしれませんが、御要請があれば、建物そのものを供給するための体制を整えるとともに、これは被害の状況を考えますと仮設住宅にとどまらず、あらゆる手段を使って、被害に遭われて住まいを失われた皆さんの当面の生活の確保ということについては、準備を進めていかなければならないと思っています。

(島田解説委員)
国の総力を挙げてという中で、自衛隊も災害派遣の規模が過去にないほどの体制で臨んでいますけれども、これは長期化も避けられませんね。

(枝野官房長官)
そうですね。しかし、こうした本当に地震の規模としても、世界的に見ても例のない規模だと聞いております。日本にとっても観測史上最大というものであります。こうした事態に対応するためには、自衛隊を始めとして、関係機関の皆さんには長期間にわたる、そして、大規模な動員ということになりますけれども、まさに国力を挙げて被災された皆さんの支援に当たってまいりたいと思っております。

(島田解説委員)
そうしたこれから一定の時間をかけて、復旧をとにかく早く進めるというためには、補正予算の問題が昨日から与野党の党首会談でも出ておりますけれども、政府としては、この補正予算の措置をどのような段取りでお考えですか。

(枝野官房長官)
これだけの規模の災害でありますので、中長期的にはその必要性があると思っておりますが、今、年度末で予備費も2,000億程度あります。現時点では幾らかかるのかという以前のとにかく目の前の生命に危険のある方、あるいは生命にリスクを生じさせるような問題、そして、孤立している皆さん、避難所にいらっしゃる皆さんに対する対応は、残りの本年度内、3月内の起算2,000億円の予備費で対応できると思っておりますので、金額のこと、お金のことよりも、そうした万全の対応に努力をしています。それ以降については、まさに国会の方とも御相談をしなければなりませんが、まだ少し先のことでございますので、まずは実際に避難されている方、救援を待っていらっしゃる皆さん、あるいは原発のリスクの低減化という作業に全力を注いでまいります。

(島田解説委員)
そうしますと、繰り返しになりますけれども、22年度予算の補正予算として、この災害対策費を計上するという方法と、4月以降の23年度予算の補正予算として計上する。2つありますけれども、現時点ではどちらですか。

(枝野官房長官)
現時点では、今残っている予備費の範囲内で、残りの年度内の対応は可能ではないだろうかという想定で進めておりますが、これは財務省の方で常にそうしたところの資金の状況をチェックしていただきながら、対応をしてまいりたいと思っております。

(島田解説委員)
4月には統一地方選挙が予定されていますけれども、今回のこの大きな被災地の被害の状況を見ますと、すべての地域で統一地方選挙を行うというのは、なかなか難しそうです。政府はどう対応するのでしょうか。

(枝野官房長官)
阪神・淡路大震災の折にも選挙の日時を遅らせるという立法措置が取られたというふうに記憶をいたしております。政府としても、この状況では大変困難であろうということで、そのための想定といいますか、準備はいたしておりますが、まずは政府与党だけで決めて進めるというべき性質のものではありませんので、野党の皆さんを含めて与野党で御協議をいただいて、方針をお決めいただければ、直ちにそうしたことに対して進めていけるよう、総務省の方で準備を進めております。

(島田解説委員)
そして、もう一つ。被災の現場の原点に戻りますけれども、巨大地震、大津波から2日になりますけれども、依然として、その地域の被害状況が把握できない。その地域の自治体の関係者も被災者になってしまっている。こういうケースも三陸海岸周辺で多数見られます。この国と地元自治体との連絡が途絶えていると。これは未曾有の事態だと思いますが、どう対応していきますか。

(枝野官房長官)
既にそうした地域については、自衛隊、警察等が上空等から地域の実状を把握をいたしております。それと県の持っている市町村との連絡情報等を突き合わせまして、法律上の一義的には、そうした市町村に対する支援は県の役割ということでありますが、それを超えて国からも直接的に、役場の機能が事実上停止しているような地域については、対応に乗り出すべく、もう昨日から既に調整を始めて動き出しております。

(島田解説委員)
住民支援のためには、やはり行政支援も重要な柱になってきますね。

(枝野官房長官)
そうですね。今回の場合は役場にとどまらず、さまざまな機関で被災に遭われている当事者の皆さんが同時に住民の皆さんの生活にとって欠かせない役割を担っておられます。そうした皆さんは今、最大限の努力をしていただいておりますが、当然それには限界があります。国の方から全力で、そうした皆さんをバックアップすることによって、被災された皆さんの生活の維持に全力を挙げてまいりたいと思っております。

(島田解説委員)
最後に被災地の皆さん、そして、国民の一言お願いします。

(枝野官房長官)
今回の事態は本当に未曾有の事態。亡くなられた皆さんには本当に心からお悔やみを申し上げますとともに、避難をされている皆さん、救援を待っていらっしゃる皆さんに何とか政府内閣の力にとどまらず、国力を挙げて、あるいは世界の皆さんからの御協力を仰いで、全力で対応をいたしております。是非、被災地以外の国民の皆さんも、そうした思いで被災地の皆さんを御支援いただきたいと思っておりますし、内閣としてもそのための全力を尽くしてまいります。