経済3団体共催2023年新年祝賀会

更新日:令和5年1月5日 総理の一日

 令和5年1月5日、岸田総理は、都内で開催された経済3団体共催2023年新年祝賀会に出席しました。

 総理は、挨拶で次のように述べました。

「皆様、新年おめでとうございます。御紹介にあずかりました内閣総理大臣の岸田文雄でございます。本日は経済3団体の新年祝賀会にお招きいただきました。心から厚く御礼を申し上げます。会員企業の皆様方がこうしておそろいで、健やかな新年をお迎えになられましたこと、心からお慶(よろこ)びを申し上げます。
 先ほど小林会頭の御挨拶の中にもありましたように、今年の干支(えと)は、『癸(みずのと)卯(う)』であります。『癸卯』の『癸』は、十干の最後に当たり、一つの物事が収まり次の物事へ移行する段階を、そして、『卯』は『茂(しげる)』を意味し、繁殖する、あるいは、増える、を示すと言われています。
 この両方を備えた『癸卯』は、去年までの様々なことに区切りがつき、次の繁栄や成長につながっていくという意味があると言われています。
 私は、本年を、昨年の様々な出来事に思いをはせながらも、新たな挑戦をする一年にしたいと思っています。
 政権をお預かりして1年3か月。歴史の大きな分岐点にあって、未来の世代に対し、これ以上先送りできない課題に、正面から愚直に挑戦し、一つ一つ答えを出していく。それが、岸田政権の歴史的役割であると覚悟し、政権運営に臨んでまいりました。
 昨年に引き続き、本年も、覚悟を持って、先送りできない課題への挑戦を続けてまいります。
 具体的には、特に、2つの課題。第1に、日本経済の長年の課題に終止符を打ち、新しい好循環の基盤を起動する、第2に、異次元の少子化対策に挑戦する、そんな年にしたいと思っています。
 この30年、世界では、グローバル化の進展とともに、マーケットも生産・製造も物流も、一体化が進んできました。そして我々は、世界の一体化とともに、垣根が取り払われ、平和と繁栄を手にできると信じてきました。
 しかし現実は、格差の拡大、地球環境問題などの課題の深刻化に直面しています。また、権威主義・国家資本主義的な国々と、自由主義・資本主義を掲げる我々民主主義国家との対立を深刻化させています。
 こうした現実を前に、今こそ、我々は、新たな方向性に踏み出さなければならない、私の掲げる新しい資本主義は、そのための処方箋です。
 官と民の新たな連携の下で、賃上げと投資という2つの分配を強固に進め、持続可能で格差の少ない、力強い成長の基盤をつくり上げていきます。
 まず実現を目指すのは、成長と分配の好循環の中核である、賃上げです。能力に見合った賃上げこそが、企業の競争力に直結する時代です。
 連合は、今年の春闘において、5パーセント程度の賃上げを求めています。是非、インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたいと思っています。政府として、最低賃金の引上げなどの取組を進めてまいります。
 今、日本経済は大きな分かれ道にあります。輸入物価だけでなく、経済全体の物価上昇が欧米のように進行し、賃上げがそれに追い付かなければ、スタグフレーションに陥ってしまうと警鐘を鳴らす専門家がいます。
 一方で、コロナ禍からのリバウンド需要、円安環境をいかしたインバウンドや輸出の増加、GX(グリーン・トランスフォーメーション)等の投資ニーズの拡大など、日本経済の体質転換を図る上で、数十年に一度のチャンスを迎えていると言う専門家もいます。
 どちらの見方にも共通するのは、今年の賃上げの動きによって、日本経済の先行きは全く違ったものになるということです。日本全体の賃上げを引っ張り上げるのは、ここにいらっしゃる企業の皆さんです。グローバル企業から、賃上げに向けた様々な前向きな取組が出てきており、心強く思っています。
 政府は、財政規模39兆円の経済対策、防衛政策、エネルギー政策の大きな転換、そして、GX投資の促進を始め、引き続き、果敢な取組を続ける決意です。
 産業界の皆様にも、是非御協力いただきたいと思っています。
 さらに、この賃上げを持続可能なものとするため、リスキリングによる能力向上支援、日本型の職務給の確立、GXやDX(デジタル・トランスフォーメーション)、スタートアップなどの成長分野への雇用の円滑な移動、これらを三位一体で進め、構造的な賃上げを実現いたします。そのために、本年6月までに労働移動円滑化のための指針を取りまとめ、三位一体の労働市場改革を加速いたします。
 加えて重要な2番目の柱が、国内での研究開発投資や設備投資による、日本企業の競争力強化です。
 一部の権威主義的国家は、サプライチェーンを武器として使い、外交上の目的を達成するために、経済的威圧を使うようになりました。また、世界では、官民連携の下での投資促進によって、技術力・競争力を磨き上げる苛烈な競争が起こっています。
 今こそ、国内でつくれるものは、国内でつくり、輸出する。また、研究開発投資・設備投資を活性化し、付加価値の高い製品・サービスを生み出していく。これらに官民挙げて、取り組もうではありませんか。
 そのために、国が複数年の計画を示し、予算のコミットを行い、企業に対して期待成長率をはっきり示すことで、企業の投資を誘引していく、そうした官民連携を行ってまいります。
 官民合わせて150兆円のGX投資を引き出す成長志向型カーボンプライシングによる20兆円の先行投資の枠組みは、その先行事例の一つです。
 半導体、人工知能、量子コンピュータ、バイオ技術、クリーンエネルギーなど、次世代の経済を支える戦略産業について、強固な官民連携を打ち立て、国内での大胆な投資を進めていこうではありませんか。
 あわせて、民間の皆さんの力を引き出すための、規制改革、スタートアップ育成にも全力で取り組みます。
 そして、今年のもう一つの大きな挑戦は、少子化対策です。
 昨年の出生数は80万人を割り込みました。少子化の問題は、これ以上放置できない、待ったなしの課題です。経済面から見ても、少子化で縮小する日本には投資できない、そうした声を払拭していかなければなりません。
 本年4月に発足するこども家庭庁の下で、今の社会において必要とされるこども政策を体系的に取りまとめた上で、6月の骨太方針までに、将来的なこども予算倍増に向けた大枠を提示していきます。
 対策の大きな柱の一つに、働き方改革の推進とそれを支える制度の充実があります。女性の就労は確実に増加しました。しかし、女性の正規雇用におけるL字カーブは是正されておらず、その修正が不可欠です。その際、育児休業制度の強化も検討しなければなりません。産業界の皆様にも、是非お力をお貸しいただきたいと思っております。
 最後に、外交についても一言申し上げます。本年、我が国はG7議長国を務め、5月には、広島サミットを開催いたします。
 ロシアによるウクライナ侵略という暴挙によって国際秩序が揺らぐ中で、自由・民主主義・人権・法の支配といった普遍的価値を守り抜くため、そうしたG7の結束はもとより、G7と世界の連帯を示していかなければなりません。同時に、対立や分断が顕在化する国際社会を、いま一度結束させるために、グローバルサウスとの関係を一層強化し、世界の食料危機やエネルギー危機に効果的に対応していくことが求められます。
 また、世界経済に様々な下方リスクが存在する中で、G7として世界経済をしっかりと牽引(けんいん)していかなければなりません。
 さらに、感染症対策や地球温暖化など地球規模課題においても、リーダーシップの発揮が求められます。また、被爆地広島から世界に向けて、核兵器のない世界の実現に向けた力強いメッセージを発信してまいります。
 結びに、本日御参加の皆様方、経済3団体の会員企業の皆様によって、本年が実り多い1年となりますことを心から御祈念申し上げまして、年頭に当たっての私の御挨拶とさせていただきます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。」

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