第56回国家公務員合同初任研修 岸田内閣総理大臣訓示

更新日:令和4年4月6日 総理の指示・談話など

 国家と国民のために尽くしたいという高い志と使命感を抱き、晴れて国家公務員に採用された皆さんを、内閣総理大臣として心から歓迎したいと思います。
 私から、期待と激励を込めて、一言申し上げます。
 今、時代は大きな転換期を迎えようとしています。
 これまでの当たり前や、常識が通じない時代。皆さんは、そんな時代に、社会人としてのキャリアをスタートさせます。何よりも、そうした時代認識を持たなければなりません。
 皆さんの仕事は、そうした先が見えない時代において、必死に挑戦を続けながら、新しい時代を切り拓(ひら)いていくことです。
 例えば、新型コロナウイルスへの対応。
 数年前には、多くの皆さんが、こんな状況が訪れると想像もしなかったのではないかと思います。我々政府は、立ちすくむことなく、新型コロナによって浮き彫りになった、様々な課題に立ち向かっていかなければなりません。
 次の全く新しい感染症の危機に対し、社会全体として、どのように備えていくのか。新型コロナで傷ついた経済をどのように回復させるのか。人と人とのつながりが失われたことで、孤独や孤立に苦しむ人たちにどのように寄り添うのか。遅れが顕在化した、日本社会全体のデジタル化をどのように進めていくのか。
 いずれも、前例の踏襲によって、簡単に解決できるような課題ではありませんが、国民のために、しっかりと答えを見いだしていかなければなりません。
 例えば、急速に厳しさを増す国際情勢への対応。
 国際社会が、長きにわたる懸命な努力と多くの犠牲の上に築き上げてきた国際秩序の根幹が、ロシアのウクライナ侵略により、脅かされています。
 力による一方的な現状変更の試みは、欧州のみならず、アジアを含む国際社会の秩序を根底から揺るがそうとするものです。
 こうした事態に直面し、自由、民主主義、法の支配といった普遍的価値を共有するパートナーとの結束を大切にしながら、どのように、ポスト冷戦期のさらにその次の時代の国際秩序を作り上げるのか。
 我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、現実を直視しながら、国民の生命と財産を守るためにはどうすれば良いのか。
 こうした問題も、我々が、正面から取り組まなければならない極めて重要なものですが、これまでの延長線上に、答えを見いだしていくことはできません。
 これら以外にも、様々な課題があります。持続可能な経済を作り上げるための「新しい資本主義」の実現に向けた挑戦、イノベーション・科学技術の推進、地球温暖化問題への対応、大胆な「人への投資」強化、地域が主役となるデジタル田園都市国家構想の推進、農林水産業・観光業・中小企業などの成長力強化、激甚化する災害への備え。
 この場で、我々が直面する全ての課題について言及することは到底できませんが、今申し上げただけでも、皆さんが取り組まなければならない課題の大きさ、使命の大切さの一端をお伝えできたのではないかと思います。
 とても重要な、しかし、とても難しい様々な課題に答えを見いだし、新しい時代を切り拓いていくのは、どこかの誰かではなく、今ここにいる皆さんお一人お一人であるということを、今一度、しっかりと胸に刻んで欲しいと思います。
 行政の悪弊として、よく、「前例踏襲」、「縦割り」、「上から目線」といったことが指摘されます。しかし、今私がお話ししたような諸課題に真剣に向き合おうとするならば、そうした態度では、問題解決など到底できないでしょう。
 是非、これからの時代を担う皆さんには、「前例を新しく作る」、「縦割りでなく横串」、「国民目線・現場目線」を心掛けて、仕事に臨んで欲しいと思います。
 もちろん、新規採用されたばかりで、すぐに全てのことができるということではないでしょう。
 是非、皆さんには、国内外の様々な事柄に関心を持ち、常に自己研鑽(けんさん)に励み、専門性を高めることで、行政のプロになって欲しいと思います。
 そのためには、まずは、日々の仕事での経験が大切です。配属された場所で目の前の仕事に一つ一つ真剣に向き合って欲しいと思います。時には失敗することもあるでしょう。しかし、それが貴重な経験となって、やがて大きな成功につながります。
 そして、そうした失敗も、成功も、様々な経験の蓄積が、行政のプロとしての自信につながっていきます。
 最後に、もう一つ大切なことを申し上げたいと思います。皆さんは、採用されたばかりではありますが、国民から見れば、一人の立派な国家公務員です。
 「新人だから仕方ない」とは誰も言ってくれません。皆さんには、既に自分が一人の国家公務員だという自覚を、しっかりと持っていただきたいと思います。
 そして、国民の皆さんから、常に見られているということを忘れないようにして欲しいと思います。
 疑念を抱かれるような行動は厳に慎み、国民の皆さんから信頼を得られるように、常に謙虚に、己を律しながら、国民全体の奉仕者として、職務に当たってもらいたいと思います。
 今、皆さんの心の中には、期待と不安が入り混じっていることと思います。しかし、怯(ひる)むことなく、様々な課題に立ち向かっていただきたい。これからの我が国と国民の未来は、皆さんにかかっています。
 共に困難を乗り越え、世界に誇れる日本の未来を切り拓いていこうではありませんか。
 皆さんの大いなる活躍を心から期待します。
 これから一緒に、頑張っていきましょう。