岸田総理によるノティシアス紙への寄稿文

更新日:令和5年5月3日 総理の指示・談話など

 問1.日本はモザンビークの発展を支える主要なパートナーの一つ。両国の協力関係についてどのように評価しているか。

 モザンビークは、アフリカ有数の天然ガス埋蔵量を誇り重要鉱物資源に富む南部アフリカの主要国であり、また、本年から両国は共に国連安保理非常任理事国を務めている。モザンビークは我が国にとって非常に重要なパートナーであり、共に手を携えて法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け協力していく。また、スーダン情勢を始めとするアフリカの平和と安定についても一層緊密に連携していく。
 1977年の外交関係開設以降、日・モザンビーク関係は良好。モザンビーク内戦終結後の1993年、我が国はアフリカ地域において初めて、モザンビークのPKOに自衛隊を派遣した。その後も、モザンビークが有する大きな潜在力を国の発展につなげるため、アフリカ南東部の大動脈であるナカラ回廊の開発をはじめ、人材育成、保健医療、教育、農業など、幅広い分野で協力してきた。日本企業も、大規模プラントへの投資等、モザンビークの成長に貢献してきた。
 こうした積み重ねの上に築かれた良好な日・モザンビーク関係を、今般、日本の総理大臣としては9年ぶりの訪問を通じ、更に一段高いレベルへ昇華させたいと考えている。モザンビークの方々にお目にかかることを心から楽しみにしている。

 問2.モザンビークと日本との貿易は成長傾向にある。今後投資が拡大すると期待される分野についてお聞かせ願いたい。

 この数年は新型コロナの影響があったものの、二国間の経済関係は年々強固なものとなっている。10年前と比較すれば、モザンビークから日本への輸出はおおよそ2倍、日本からの輸入は2.5倍に増えている。
 モザンビークが有する大きな経済的潜在力を誘因として、日本企業のモザンビークへの関心が高まっている。今回、私の訪問に合わせてモザンビークを訪問するアフリカ貿易・投資促進官民合同ミッションに多くの日本企業が参加していることがその証左である。本ミッションの派遣を皮切りに、エネルギー・資源分野にとどまらない重層的なビジネス関係を構築し、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の連結性を高めていきたい。  今回蒔(ま)かれた具体的なビジネスの芽が開花するよう、引き続き、日本政府としても、民間の動きを力強く後押ししていく。

 問3.日本が二国間開発協力、つまり国際協力機構(JICA)を通じて、実現したい開発目標は何か。特にモザンビークの発展の為に必要な経済協力案件の今後の拡大について伺いたい。特に日本の国道の橋梁(きょうりょう)の修繕支援は、モザンビークの喫緊の課題であるインフラの改善に貢献しているとお考えか。

 我が国とモザンビークとの開発協力の重点分野として、保健サービス向上、教育の質の改善等の人間開発・社会開発、経済成長・生産性向上・雇用の創出、天然資源・自然環境の持続可能な利用、平和構築・治安対策が挙げられる。
 経済成長の基盤となるインフラ整備を支援するという方針のもと、我が国は、技術協力「橋梁維持管理能力強化プロジェクト」を進めてきている。日本の大学も含めた産・官・学連携体制の下、モザンビークの道路公社や民間企業が適切な橋梁維持管理を行うために必要な技術移転を実施し、実際に日本の技術を活用した橋梁補修工事が現地で行われるなどの成果を上げている。
 また、我が国は、インド太平洋における連結性強化に資するナカラ回廊開発の一環として、円借款にてナカラ港の開発を支援(371億円(2.7億米ドル))したほか、今般、航空輸送の機能強化のため、30億円(2230万米ドル))の航空管制関連機材の供与を決定した。
 ポストコロナの人的・物的往来の増加を見据え、これらの支援が、交通インフラの連結性を高めることに繋がることを期待している。

 問4.日本は農業支援や技術・職業訓練(キャパビル)支援を重視しているが、総理から見てモザンビークの若者の為の技術移転のプロセスはうまく活用されていると考えるか。

 自分は、TICAD8でも表明したとおり、「人への投資」を重視。モザンビークにおいては、我が国は無償資金協力を通じて職業訓練センター、教員養成校、医療従事者養成学校などの施設を整備し、国の未来を支える人材を育成してきた。また、農業分野においても、ザンベジア州では技術協力「コメ生産性向上プロジェクト」を実施し、稲栽培技術の普及、種子生産管理体制の改善、灌漑(かんがい)施設維持管理などを支援してきた。

 その他、ABEイニシアティブ(※1)や「資源の絆(きずな)」(※2)を通じ、産業や鉱物資源、農業等の幅広い分野において、モザンビークの若者が日本で専門的な知識や技能を身につける留学の機会を提供している。その成果として、例えば、「資源の絆」のこれまでの参加者の中には、日本留学からの帰国後、今ではテテ工科大学の学部長として活躍している方もいる。また、ABEイニシアティブの参加者には、帰国後、ADIN(北部統合開発庁)と共に北部地域の住民の支援を行っている方もいる。
 また、モザンビークへのJICA海外協力隊の派遣は今年で20年を迎え、教育・保健医療・社会福祉・青少年活動等の分野でこれまでに累計約350名の隊員が活動してきた。私も、モザンビーク滞在中に現在派遣中の隊員の方々とお話する予定。
 TICAD8において、私は、アフリカと「共に成長するパートナー」として、「人」に注目した日本らしいアプローチで取組を推進していくことを発表した。今後も、多様なスキームを組み合わせ、包括的なアプローチで人材育成に取り組んでいきたい。
(※1)アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ
アフリカの産業人材育成と日本企業のアフリカビジネスをサポートする「水先案内人」の育成を目的として、アフリカの若者を日本に招き、日本の大学での修士号取得と日本企業などでのインターンシップの機会を提供するプログラム

https://www.jica.go.jp/africahiroba/business/detail/03/index.html 
(※2)途上国の鉱業行政を担う行政官や、鉱業人材を育成する大学教員・研究者を対象に、技術的な観点のみならず、鉱業開発を進める上で必要となる社会・経済分野の知見についても習得し、総合的な能力開発を目指すもの
https://www.jica.go.jp/publication/pamph/issues/ku57pq00002izsm8-att/japanbrand_09.pdf

 問5.モザンビークはガス輸出国の仲間入りをした。日本は、この(天然ガス)施設を最大限に活用し、生産量を引き上げるためにどのような協働を想定しているか。

 カーボデルガード州では、三井物産とJOGMECが投資するアフリカ最大規模のLNG(液化天然ガス)開発事業が進行中。この事業は、モザンビークの経済発展に大きく貢献するのみならず、世界のエネルギー安定供給に大いに資する非常に重要なプロジェクト。
 武装集団による周辺地域への襲撃により停止している生産設備の建設を近く、再開できれば、モザンビーク全体の発展にも資する。このため、モザンビーク政府や関係国と連携しつつ、北部地域の治安向上に資する支援を重点的に実施してきている。
 この一環として、昨年末、5つの国際機関に計760万ドルを拠出し、カーボデルガード州復興のための人道・開発支援を実施した。
 こうした支援が、モザンビーク政府による北部地域の早期の安定化に向けた取組の強化に貢献することを期待する。今後も、エネルギー安定供給のためにモザンビークの方々と緊密に連携していきたい。