岸田内閣総理大臣記者会見

更新日:令和4年8月10日 総理の演説・記者会見など

【岸田総理冒頭発言】

 政策断行により、数十年に一度とも言われる難局を突破するため、経験と実力に富んだ、新たな自民党・公明党の連立政権を発足させました。
 新型コロナ(ウイルス)、ウクライナ危機、台湾をめぐる米中関係の緊張、そして国際的な物価高、引き続き我が国の内外で歴史を画するような様々な課題が生じています。
 先の参議院選挙において、国民の皆さんから頂いた岸田内閣への信任を一刻も早く形にし、皆様の期待に応える、有事の内閣を速やかに整えていくため、内閣改造を断行いたしました。
 今後、8月末の概算要求を皮切りに、年末の予算編成、税制改正、そして来年の通常国会への法案提出等、お約束してきた政策を本格的な実行に移す段階となります。また、国際情勢が緊迫する中で、ポスト冷戦期の次の時代の新しい国際秩序をつくり上げ、我が国の平和と安全を守るために全力を尽くしてまいります。
 今回の内閣改造では、骨格を維持しながら、有事に対応する「政策断行内閣」として、山積する課題に対し、経験と実力を兼ね備えた閣僚を起用することといたしました。
 まず、政権の骨格として、松野博一官房長官、林芳正(よしまさ)外務大臣、鈴木俊一財務大臣、斉藤鉄夫国土交通大臣、山際大志郎経済再生担当大臣には留任いただきます。
 その上で、重点的に5つのことに取り組んでまいります。
 第1に、この国の安全と安心を守るための体制を強化いたします。年末に向けた最重要課題の一つが防衛力の抜本強化です。必要となる防衛力の内容の検討、そのための予算規模の把握、財源の確保を一体的かつ強力に進めていきます。そのため、防衛政務次官、防衛庁副長官、そして防衛大臣を歴任し、更に自民党国防部会長や衆議院安全保障委員長も経験し、正に我が国の安全保障、防衛政策を熟知する浜田靖一(やすかず)氏に防衛大臣への再登板をお願いし、強いリーダーシップを発揮していただきます。
 第2に、経済と安全保障が一体化する中で、経済安全保障推進法を実行に移し、機微技術の流出防止や、サプライチェーンの強靱(きょうじん)化等を急ぐ必要があります。そこで、これまで自民党の政調会長として経済安全保障本部を牽引(けんいん)し、経済安全保障政策を推進してきた高市早苗氏を大臣に起用し、関係省庁や産業界等との調整に当たっていただきます。
 第3に、岸田内閣の最重要課題である新しい資本主義の実現を通じた経済再生です。人への投資、スタートアップの育成、グリーン・トランスフォーメーション、デジタル・トランスフォーメーションなどの実現に向けた体制を強化いたします。
 まず、新しい資本主義の全体調整とスタートアップ担当大臣については、実行計画の取りまとめを担当した山際大臣に引き続き担当いただきます。特に、人への投資は新しい資本主義実現に向けた肝です。過去20年間で2番目に高い、プラス2.07パーセントとなった春闘、4年ぶりの増加となったこの夏のボーナス、そして過去最大となった最低賃金の引上げに続き、更なる賃上げに向けた環境整備や職業訓練の強化など、人への投資を抜本的に強化していきます。
 その上で、新しい資本主義における重要な投資分野であるデジタル・トランスフォーメーションを強力に推進するため、河野太郎氏を起用することとしました。発足から間もなく1年となるデジタル庁の業務を更に活性化し、デジタル改革を強力に進め、諸外国から後れを取っている我が国のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を一気に加速するため、持ち前の実行力、突破力で進めてもらいたいと思います。
 デジタルとともに重要なグリーン・トランスフォーメーション担当大臣、そして経済産業大臣については、経済再生担当大臣などを歴任し、エネルギーや経済産業政策に深い専門性を持つ西村康稔(やすとし)氏を起用いたします。グリーン・トランスフォーメーションの前提となる、安価で安定的なエネルギー供給の確保についても、冬の電力需給ひっ迫への対応や、原子力の活用も含め、しっかり検討を進めてもらいます。
 第4に、コロナ対策の新たなフェーズへの移行と対応の強化です。コロナ対策については、現在、第7波の荒波の中から、少しずつ感染者数が減少に転ずる地域が出てきています。国民の皆さんの御協力、医療・福祉関係者の御努力に心から御礼を申し上げます。
 今後、新型コロナ(ウイルス)の感染症法上の取扱いをどうするかを始め、ウィズコロナに向けた新たな段階への移行を、時機を逸することなく進めなければなりません。あわせて、次の感染症危機に備えて「感染症危機管理庁」(仮称)でありますが、こうした組織の創設といった新たな挑戦を進めてもらう必要もあります。山際大臣に引き続きコロナ対策をお願いするとともに、厚生労働大臣には、官房長官や厚生労働大臣を歴任してきた加藤勝信氏に再登板をお願いし、医療・保健体制の確保に万全を期してまいります。
 第5に、こども政策、少子化対策の強化です。来年からスタートするこども家庭庁の設立準備を着実に進めるとともに、こども政策、そして少子化対策を抜本的に強化するため、若い、フレッシュな目線で対応できるよう、現在、党の青年局長を務める小倉將信(まさのぶ)氏を起用いたします。
 こうした重点課題を内閣一体となって進めていくためにも、各分野における安定した行政運営が不可欠です。
 とりわけ、国家公安委員会委員長兼防災担当大臣については、これから災害の多い季節を迎える中で、速やかに責任ある体制を整備しなければなりません。また、国家公安委員会委員長として、安倍元総理殺害事件をしっかりと検証し、警備体制を立て直す必要があります。このため、これまで復興副大臣や、衆議院国土交通委員長などを歴任し、また、阪神・淡路大震災において兵庫県庁の現場で陣頭指揮を執って以来、一貫して災害対応力の向上に取り組んできた谷公一氏にかじ取りをお願いすることにいたしました。
 総務大臣には、総理補佐官や総務副大臣などを歴任してきた寺田稔(みのる)氏を起用し、電気通信事業の立て直し、携帯電話料金の着実な引下げ、5G、光ファイバーなどのデジタルインフラの整備、マイナンバーカードの普及の加速化等を進めていただきます。
 法務大臣には、2度にわたり法務副大臣を歴任し、衆議院法務委員長としても豊富な法務行政経験を持つ葉梨(はなし)康弘氏を起用いたします。
 文部科学大臣については、文科副大臣や衆議院文科委員長を歴任してきた永岡桂子氏を起用し、教育、科学技術政策を推進いただきます。
 農林水産大臣は、ロシアのウクライナ侵略を受けて食料価格の高騰や、食料安全保障が大きな課題となっている中で、農水政務官、自民党の農林部会長を歴任した農林水産政策の専門家である野村哲郎氏にお願いすることといたしました。
 環境大臣には、官房副長官や、国交副大臣などを歴任し、自民党2050年カーボンニュートラル実現推進本部を事務局長として推進してきた西村明宏(あきひろ)氏を起用し、2050年カーボンニュートラルに向けた社会づくりを進めていただきます。
 東日本大震災からの復興は、引き続き岸田内閣の重要課題です。復興大臣には、宮城県出身で、復興副大臣や衆議院東日本大震災復興特別委員長を歴任し、復興に尽力してきた秋葉賢也氏を起用いたします。
 地方創生大臣兼沖縄及び北方対策大臣には、官房副長官や財務副大臣などを歴任してきた岡田直樹氏を起用し、「強い沖縄経済」の実現、北方対策の推進とともに、我が国のイノベーション力の世界への発信、デジタル田園都市国家構想を始め、地方創生に全力を挙げていただきます。
 以上、閣僚人事の考え方について申し上げましたが、あわせて、いわゆる旧統一教会に関連する問題について申し上げます。
 まず、私個人は、知り得る限り、当該団体とは関係がないということを申し上げます。その上で、個々の政治家は、国民の皆さんからできるだけ幅広い支援を頂くため、政治活動の一環として様々な方々と交流をしております。信教の自由については憲法上保障がなされているものでもあります。しかし、社会的に問題が指摘されている団体との関係については、国民に疑念を持たれるようなことがないよう十分に注意しなければなりません。
 国民の皆さんの疑念を払拭するため、今回の内閣改造に当たり、私から閣僚に対しては、政治家としての責任において、それぞれ当該団体との関係を点検し、その結果を踏まえて厳正に見直すことを言明し、それを了解した者のみを任命いたしました。
 その上で、2点の指示をいたしました。
 第1に、憲法上の信教の自由は尊重しなければなりませんが、宗教団体も社会の一員として関係法令を遵守しなければならないのは当然のことであり、仮に法令から逸脱する行為があれば、厳正に対処すること。
 第2に、法務大臣始め関係大臣においては、悪質商法などの不法行為の相談、被害者の救済に連携して、万全を尽くすこと。これらを岸田政権として徹底し、国民の皆さんから信頼される行政運営を行ってまいります。
 昨年総理大臣に就任して以来大切にしてきた、国民の声を丁寧に聞き、信頼と共感を得る政治を実現するという基本からぶれることはありません。2度の国政選挙で国民の皆さんから頂いた信任を、政策を進める力に変え、政府・与党が力を合わせて、全身全霊で政策を断行し、この難局を突破してまいります。国民の皆さんの御理解と御協力をお願いいたします。

【質疑応答】

(内閣広報官)
 それでは、これから皆様より御質問をいただきます。
 指名を受けられました方は、お近くのスタンドマイクにお進みいただきまして、社名とお名前を明らかにしていただいた上で、1人1問、御質問をお願いいたします。
 まず、幹事社から御質問をいただきます。
 それでは、共同通信、手柴さん。

(記者)
 幹事社の共同通信です。よろしくお願いします。
 今回の内閣改造、党役員人事についてお伺いします。党では副総裁、幹事長が留任し、内閣では官房長官、財務大臣、外務大臣ら政権の骨格は維持したものの、14閣僚が交代する大規模な人事となりました。新型コロナウイルス対応や物価高といった内政問題、北朝鮮やロシア、中国をめぐる外交・安全保障問題への対応が迫られています。憲法改正や人への投資など新しい資本主義も道半ばだと思います。こうした課題がある中で、今回の人事で重視した点は何でしょうか。また、総理として今回の内閣にネーミングをつけるとするならば、どういったものになるのかというのと同時に、先ほど重点課題として5つを挙げられましたが、この内閣では何を最優先に政策を進めていくお考えでしょうか。よろしくお願いします。

(岸田総理)
 まず、今御質問いただいたように、我が国は国の内外で数十年に一度とも言える様々な課題に直面しています。そうした中で、今回の内閣改造では、まず基本的な部分での政策の継続性を担保すること、そしてスピード感を持って新たな体制に移行すること、そして経験と実力を兼ね備えた閣僚を新たに起用することにより、有事に対応する「政策断行内閣」として、山積する課題を乗り越えていくための体制をつくることに腐心をいたしました。よって、御質問のネーミングは何かということについては「政策断行内閣」としたいと思っております。
 そして、今後、8月末の概算要求を皮切りに、年末の予算編成、税制改正、そして来年の通常国会に向けての法案提出等、これまで約束してきた政策を本格的に実行に移す段階に入ります。そして、その中で何を最優先するかという御質問でありますが、特に新型コロナ(ウイルス)を乗り越え、経済を再生し、そして持続可能な経済社会をつくり上げていく、この点と、それから、国際情勢が緊迫する中で、我が国の平和と安全を守り抜くため、ポスト冷戦期の次の時代の新しい国際秩序をつくり上げていく、この2点に特に力を注(そそ)いでいきたいと思います。あらゆる政策を総動員することで、この2点を中心に、しっかりと政策を成し遂げていきたいと考えております。
 以上です。

(内閣広報官)
 続きまして、幹事社の東京新聞、金杉さん。

(記者)
 東京新聞・中日新聞の金杉です。よろしくお願いいたします。
 旧統一教会の問題についてお聞きします。首相は、国民に疑念を持たれることがないよう、この社会的に問題が指摘されるような団体との関係については十分注意しなければならないと発言されました。国民から信頼される政治ということもおっしゃいました。自民党は党として組織的関係はないとして、各議員任せの対応で、党としての全体調査を行わないようですが、被害弁護団などからは、旧統一教会と政界との関係をきちんと調査し、検証を求める声も上がっているほか、世論調査では政界との関わりについて実態解明の必要があるとの答えが8割に上っています。党総裁として、霊感商法などの問題が指摘されている旧統一教会との関係について、国民に信頼を得られるように、党として調査し、検証し、実態を解明する考えはありますか。
 そして、選択的夫婦別姓やLGBTへの対応、改憲の内容など、旧統一教会と自民党の考えが重なるとの指摘もあります。旧統一教会が自民党の政策に与えた影響についてどう考えますか。
 また、安倍晋三元首相は、旧統一教会の友好団体の会合にビデオで出演し、韓(ハン)総裁に敬意を表していました。この行動は問題があったと思いますか。

(岸田総理)
 まず、自民党と旧統一教会との関係については、先ほども冒頭の発言の中で少し触れさせていただきましたが、御指摘のように、組織的関係はないという認識を従来から示させていただいています。
 しかし、国民から信頼される政治を行っていく観点から、党所属国会議員に対し、政治家としての責任において、当該団体との関係をそれぞれ点検し、その結果も踏まえて適正に見直す、こういった指示を行ったところであります。そしてあわせて、先ほども触れさせていただきましたが、関係省庁に対して、宗教団体も社会の一員として関係法令を遵守しなければならない、これは当然のことであり、仮に法令から逸脱する行為があれば、厳正に対処することと、法務大臣を始め、関係大臣において、悪質商法などの不法行為の相談、被害者の救済に連携して万全を尽くすこと、この2点を指示したということであります。こうした取組を通じて信頼回復に努めていきたいと考えております。
 そして、自民党の政策に影響を及ぼしたのではないか、こういった指摘でありますが、自民党の政策決定に当たっては、幅広く国民の皆さんの声を聞く、また関係省庁からの説明、有識者、専門家との議論、こうした様々なプロセスを経て政策を決定しております。こうした自民党の政策決定のプロセスを考えた場合に、旧統一教会の政策が不当に自民党の政策に影響を与えたとは認識はしておりません。
 そして、安倍元総理がビデオメッセージを送ったということにつきましては、これは、当時の安倍元総理の判断でありますが、どんな状況の中で、どのような判断をしたのか、私自身、今となって承知はしておりませんので、それについて直接コメントすることは控えます。
 しかし、いずれにせよ、今後は国民に疑念が持たれることがないように、政治家としての責任において、当該団体との関係を厳正に見直していく、自民党関係者として、そうした厳正な見直しを行っていく必要があると認識をしております。
 以上です。

(内閣広報官)
 ここからは幹事社以外の方から御質問をお受けいたします。御質問を希望される方は挙手をお願いいたします。こちらで指名いたしますので、マイクにお進みください。
 それでは、TBSの中村さん。

(記者)
 TBS、中村と申します。
 対中国政策についてお伺いします。中国は、アメリカのペローシ下院議長の台湾訪問に反発する形で、大規模な軍事演習を今月の4日から7日まで実施した上で、継続して、8日、そして昨日、今日も実施しました。台湾への軍事的な圧力を常態化してきているのが今の現状で、4日には日本の排他的経済水域内に中国の弾道ミサイルが初めて落下しました。対話に応じない姿勢を続ける中国に対して、日本として具体的にどのように向き合っていくお考えでしょうか。
 また、総理は中国との首脳会談を行う用意もあるのでしょうか。あわせて、中国側の、日本は台湾問題についてとやかく言う権利はないという主張に対して、日本政府としての見解をお願いします。

(岸田総理)
 まず、中国が発射した弾道ミサイルが我が国の排他的経済水域を含む、我が国近海に着弾したことは、我が国の安全保障、また国民の安全に関わる重要な問題であり、中国に対して強く非難をし、そして抗議を行いました。それとともに、今般の中国側の行動は、国際社会の平和と安定に深刻な影響を与えるものであり、軍事訓練の即刻中止を求めた次第です。
 中国との間においては、主張すべきものは主張し、そして責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含め対話を重ね、共通の課題については協力をする、こうした建設的で安定的な関係を双方の努力で構築していく必要があると従来から申し上げてきました。今のようなときこそ、しっかり意思疎通を図ることは重要であると考えています。
 そして、日中首脳会談については、現時点で何も決まったものはありませんが、我が国としては、中国側との対話については、常にオープンであると考えております。
 そして、台湾問題についての我が国の立場でありますが、我が国の台湾に関する基本的な立場、これはもう従来から一貫しております。1972年の日中共同声明を踏まえ、非政府間の実務関係として維持をしていくこと。また、国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定が重要であり、台湾をめぐる問題が、対話により平和的に解決される、これを期待するというのが我が国の基本的な立場です。台湾海峡を含む地域の平和と安定の重要性について、引き続き中国側にも直接伝えるとともに、各国共通の立場として明確に発信をしていくこと、これも大事だと思っています。
 同時に、今後とも米国を始めとする同盟国、同志国と緊密に連携しながら、両岸関係の推移、これを注視していきたいと考えています。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。それでは、NHKの伏見さん。

(記者)
 NHKの伏見と申します。総理、よろしくお願いいたします。
 経済対策についてお聞かせいただければと思います。新型コロナ(ウイルス)の長期化に加えて、物価の高騰によって経済面での国民生活への影響というのは一層大きくなっております。総理は8月6日の記者会見で経済対策についても議論していかなければならないと発言されましたけれども、秋の臨時国会に向けて改めて補正予算案を編成するお考えはありますでしょうか。お尋ねします。

(岸田総理)
 まず、足元の喫緊の課題である新型コロナ(ウイルス)あるいは物価高騰に対して、必要な財政出動はちゅうちょなく、そして機動的に行い、切れ目のない対応を行ってまいります。コロナの対応によって国民生活と我が国の経済、これを守り抜いていきたいと考えます。そして、いかなる事態が生じても対応できるよう、先般の補正予算で5.5兆円の予備費を確保いたしました。まずはこれを機動的に活用していくことをしっかり考えてまいります。そしてその上で、その後については、物価、景気両面の状況に応じて迅速かつ総合的な対策に切れ目なく取り組んでまいりたいと思います。よって、この予備費を機動的に活用した上で、状況をしっかり見極めた上で、その後の対策については判断をしていきたいと考えております。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。それでは、読売の海谷さん。

(記者)
 読売新聞の海谷と申します。よろしくお願いします。
 総理が最重要課題に挙げた防衛力の抜本的強化についてお伺いします。総理が政治的意思を引き継いでいきたいとしている安倍元総理は、かねてから防衛予算の対GDP(国内総生産)比2パーセント目標をきちんと明示し、5年以内に達成することを国家意思として示す必要があると強い危機感を持って訴えてきていました。一方で、総理御自身は数字ありきの議論ではないとも繰り返されていますが、今後本格化する防衛費をめぐる議論では、安倍元総理の主張に沿った形で進めるべきだとお考えでしょうか。
 またあわせて、防衛大臣を務められていた岸信夫氏を今回補佐官に起用されましたが、その理由についても併せてお聞かせください。

(岸田総理)
 まず、我が国を取り巻く安全保障環境、これはますます厳しさを増しています。その中で外交・安全保障への取組、これは一刻の猶予も許されない、こうした認識を持っております。こうした中で、本年末までに新たな国家安全保障戦略等を策定し、そして我が国自身の防衛力を5年以内に抜本的に強化していく、こうした方針を従来から申し上げております。その際、いわゆる反撃能力を含め、国民の命や暮らしを守るために何が必要なのか、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討していく、あわせて、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化していく、こうした方針を従来から申し上げております。こうした方針に基づいて、年末に向けて、国家安全保障戦略を始めとする安全保障の3文書の策定、そして予算についても議論を進めていきたいと思います。その議論の際に、今、御指摘があった安倍総理の様々な御意見、これも参考にしながら、念頭に置きながら議論を深めていきたいと思っております。
 そして、岸前防衛大臣を総理補佐官に任命したということですが、岸前防衛大臣については、是非引き続きその安全保障における豊富な経験や知識、見識、これを発揮していただきたい。そうしたことから、安全保障担当の総理補佐官という立場で引き続き貢献していただくことをお願いし、御本人の了解を得たということであります。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、次の方。京都新聞の国貞さん。

(記者)
 京都新聞の国貞と申します。よろしくお願いします。
 安倍元総理の国葬についてお伺いします。痛ましい銃撃事件から1か月がたったわけですけれども、各報道機関の世論調査などを見ていますと、反対の声というのが比較的多くなっています。全額公費負担することへの疑問の声も聞かれるわけですけれども、その中で半数を超える人が反対というような、そういう世論調査もあります。その中で、なぜ反対の声が一定程度あるのかということについて、総理はどのようにお考えなのかということを一つ聞きたい。
 もう一点、国論が二分されていくことになると、国民が分断されるおそれがあります。そういう意味で、近年の首相経験者のように内閣と自民党の合同葬にするとか、そういった別の形での実施についてはもう総理の頭の中には検討するということはないのでしょうか。よろしくお願いします。

(岸田総理)
 まず、安倍元総理の国葬儀については、御指摘のようにいろいろな意見があるということ、これは承知をしております。まず、安倍元総理については憲政史上最長の8年8か月にわたりリーダーシップと実行力を発揮し、内閣総理大臣として重責を担われました。また、民主主義の根幹たる選挙運動中の非業の死でありました。これについては他に例を見ないものであるということであります。そして、その業績についても、東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開など、様々な業績を残されたと認識しておりますし、それに対して国の内外から高い評価と幅広い弔意が寄せられています。特に海外においては、国によってはその国の議会において安倍元総理に対する追悼の決議を全会一致で可決するとか、あるいは国によっては服喪に関する政府の決定を行った国もあります。また、国によってはその国のランドマーク、様々な公共施設を白と赤でライトアップするなどの形で弔意、そして敬意を表している国もあります。こうした国際社会が様々な形で安倍元総理に対する弔意や敬意を示している、こうした状況を踏まえまして、我が国としても故人に対する敬意と弔意を国全体として表す儀式を催し、これを国の公式行事として開催し、その場に各国代表をお招きする、こうした形式で葬儀を行うことが適切であると判断をしたところであります。
 そして、今、国費からの支出についても御指摘がありましたが、国葬儀の具体的な規模、あるいは内容については、今、正に検討中であります。こうしたものもしっかりと明らかにしながら、今後様々な機会を通じて丁寧に説明を続けていきたいと政府としては考えております。こうした努力を続けていく、これが政府の基本的な方針であります。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、次の予定でありますので、大変恐縮ですが、あと2問とさせていただきます。
 BBC、鄭さん。

(記者)
 台湾人記者、BBCワールドサービス中国語担当の鄭仲嵐(テイチョウラン)と申します。よろしくお願いします。
 経済安保政策に関連してお伺いします。今回、経済安全保障担当大臣に任命された高市早苗氏は、過去に台湾の蔡英文(さいえいぶん)総統と意見交換を行うなど、台湾情勢、また香港情勢などについても関心を示しておられます。特にこうした関連で、総理の高市氏に対する具体的な期待があればお伺いできればと思います。
 同じく経済安保政策に関し、半導体サプライチェーン同盟、チップ4参加に関する日本、米国、台湾、韓国のIT連携などについて、総理の具体的なお考えがあれば伺えればと思います。よろしくお願いします。

(岸田総理)
 今、現代社会においては、経済と安全保障が一体化していると言われています。そうした中にあって、急速に厳しさを増す国際情勢に対応していくためには、機微技術の流出防止、またサプライチェーンの強靱化等の経済安全保障の強化、これが急務であると認識しています。高市氏はこれまで自民党の政調会長として経済安全保障対策本部を牽引するなど、我が国の経済安全保障政策の中心となって推進してこられた方ですので、是非引き続きこの分野でリーダーシップを発揮していただきたい、こうした期待を持っているところです。
 半導体の供給は、グローバルなサプライチェーンによって成り立っています。よって、1国で全てを賄う、これは現実的ではないと思います。このため半導体の安定供給確保については、国内における産業基盤の整備とあわせて有志国、地域との連携強化を進めていかなければなりません。そういった観点から、5月の日米首脳会談においても、共同タスクフォースの設置に合意をしましたし、先月の経済版2プラス2においても協力を具体化していく、こういったことを合意しています。
 そして、具体的な連携についてどう思うのか御質問がありましたが、具体的な国際連携の在り方については、関係国とも引き続きしっかりと議論をしていきたいと思っています。
 現状は以上です。

(内閣広報官)
 それでは、その次の方。では、ジャパンタイムズのフィーさん。

(記者)
 ジャパンタイムズのウィル・フィーと申します。
 先日、日本の感染者数が世界最多となり、海外からの観光客を制限して感染の広がりを抑えることへの意味がなくなってきましたが、今後、入国規制を緩和する考えはありますでしょうか。よろしくお願いします。

(岸田総理)
 まず、新型コロナ(ウイルス)対応に当たっては、引き続き感染防止に最大限の警戒を保ちつつ、経済社会活動の回復に向けて取組を段階的に進めていく、これが基本的な政府の考え方です。
 そして、その中で水際対策についても感染拡大の防止と社会経済活動のバランスを取りながら、他のG7諸国並みに円滑な入国が可能となるよう、緩和の方向で進めていきたいと考えています。
 しかし、具体的な措置については、内外のニーズ、あるいは検疫体制等を勘案しながら、内外の感染状況もしっかり踏まえた上で適切に判断していきたいと思います。
 是非、この感染対策と、そして経済社会活動のバランスを取るという基本的な考え方に基づきながら、できるだけG7諸国並みの入国が可能となるよう、緩和を進めていきたいとは基本的に考えております。

(内閣広報官)
 以上をもちまして、本日の記者会見を終了させていただきます。
 大変恐縮ですが、現在挙手いただいている方につきましては、後ほど1問担当宛てにメールでお送りください。後日、書面にて回答させていただきます。
 御協力ありがとうございました。

関連リンク

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