令和5年度 防衛大学校卒業式 内閣総理大臣訓示

更新日:令和6年3月23日 総理の演説・記者会見など

 本日、防衛大学校の卒業式に当たり、卒業生諸君と、御家族の皆様に、心よりお祝いを申し上げます。
 諸君、卒業おめでとう!
 諸君がここ小原台(おばらだい)で過ごした4年間は、他のどの場所でも経験できない、濃密な4年間であったと思います。全寮制での団体生活、高度な専門教育、そして肉体の限界を極める訓練や部活動。それら全ては、自衛隊の幹部自衛官となるために必要な試練でした。
 こうした試練の意義、自分たちの将来、この国の未来について、多くの苦悩を抱え、仲間たちと論じ合う夜もあったと思います。そうした日々の中、諸君は万里一空(ばんりいっくう)の境地を貫き、刻苦勉励して「広い視野」と「科学的思考力」、そして「豊かな人間性」を養って、本日の卒業に到達しました。諸君の比類なき努力と不屈の精神力に、心からの賛辞を贈りたいと思います。
 この4年間は、同時に、世界にとっても激動の4年間でありました。新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延(まんえん)により、多くの方々が苦しめられ、地球規模で多大な影響を受けました。諸君も入校式を開催できず、校内活動に様々な制約を受けたと聞いています。
 2年前にはロシアがウクライナを侵略し、既存の国際秩序に挑戦する動きが顕在化するとともに、インド太平洋地域を中心に、地政学的な競争の激化と歴史的なパワーバランスの変化が生じています。
 特に、我が国周辺においては、核・ミサイルを含む軍備増強が急速に進み、力による一方的な現状変更の圧力が高まっています。このように、我々は世界の歴史の転換期を目の当たりにしており、我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境のただ中にあります。
 こうした安全保障環境の中において、私は、我が国の主権と独立を維持し、我が国の領域と国民の命を守るため、国家安全保障戦略を始めとする三文書を策定しました。その重要な目標は、武力侵攻といった脅威が我が国に及ぶことのないよう、有事の発生を抑止することにあります。
 諸君が学んできたように、抑止の重要性は、古来より洋の東西を問わず、強調されています。古代ローマでは、「汝(なんじ)平和を欲さば、戦いに備えよ」と戒められ、中国の孫子も、「戦わずして人の兵を屈するは、善の善なるものなり。ゆえに上兵は謀を伐つ」と記し、戦争を未然に防止することこそ、最善の策としています。
 平和を希求する我が国においても、平和を維持し、有事の発生を抑止するため、外交力の強化とともに、防衛力の抜本的強化を目指しており、三文書に掲げた目標の実現に向け、政府を挙げて取り組んでいます。
 防衛力の強化は、しかし、ただ自衛隊の装備を増やし、新しくするだけで実現できるものではありません。防衛力の中核は、自衛隊員です。装備を扱う個々の隊員が最大限に能力を発揮し、組織的・効果的に運用できて初めて、防衛力の機能が発揮されます。隊員の能力を引き出し、部隊を組織し、作戦を立案し、実際に指揮して運用する、これこそが幹部自衛官に求められる役割です。
 諸君は、任命・宣誓式を経て幹部候補となり、更なる研鑽(けんさん)を積んで、全国各地に配属されます。成すべき目の前の仕事は多岐にわたりますが、全ては防衛力を機能させるための重要な任務です。任務に当たる諸君自身が防衛力の中核であり、諸君の努力が防衛力強化に不可欠であること、そして、諸君の存在そのものが抑止力となることを忘れないでほしいと思います。
 自衛官となることは、社会から隔絶した存在となることではありません。自衛官であると同時に、社会の一員でもあることを常に自覚し、国民としての権利を守り、義務を果たしていただきたい。そして、国民に期待され、信頼される自衛官に相応(ふさわ)しい高い規律をもって、任務に当たってほしいと思います。
 そして、留学生の諸君。文化の違いから戸惑うことも多々あったと思いますが、本日、無事に卒業の日を迎えられたことに心からの敬意を表します。諸君の先輩達は、母国で各方面のリーダーとして活躍されておられます。諸君におかれても、本校での経験を活(い)かして必ずや大成され、また、日本との友好の架け橋となっていただくことを強く希望いたします。
 御家族の皆様。大切な御家族を本校に預けていただき、深く感謝申し上げます。卒業生諸君が任務を行うに相応しい勤務・生活環境の整備に、政府を挙げて努めてまいります。
 最後になりましたが、平素より御支援・御協力を賜っております御来賓の皆様に深く感謝を申し上げるとともに、日々情熱をもって学生の教育に当たられた久保文明学校長始め教職員各位に深甚なる敬意を表し、そして、防衛大学校のますますの発展を祈念して、私の訓示といたします。

令和6年3月23日
自衛隊最高指揮官
内閣総理大臣 岸田 文雄

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