第5回野口英世アフリカ賞授賞式
令和7年8月22日、天皇皇后両陛下御臨席の下、石破総理は都内で開催された第5回野口英世アフリカ賞授賞式に出席しました。
総理は式辞で次のように述べました
「天皇皇后両陛下の御臨席を賜り、第5回野口英世アフリカ賞授賞式が執り行われるに当たり、一言式辞を申し述べます。ロウレンソ・アンゴラ共和国大統領閣下、アフリカ各国の代表の皆様、御列席の皆様、本日は御出席をいただき、誠にありがとうございます。
アブドゥライ・ジムデ博士、DNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative)、『顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ』のルイス・ピサロ代表に対し、心からお祝いを申し上げます。
我々は、アフリカの人々が、深刻な感染症の問題に今もなお直面していることを決して忘れてはなりません。そうであればこそ、そのような課題の解決に地道に取り組んでいる研究者・医療関係者に光を当てなければならないのであります。そこにこそ、黄熱病で苦しむ人々を救うために100年近く前、1927年にアフリカ・ガーナに赴き、人類の健康増進に取り組んだ野口英世博士の名を冠する本賞の意義があると、このように確信をいたすものであります。
ジムデ博士は、『マラリアのないアフリカ』の実現を目指し、長年にわたり、マラリアの制圧に取り組んでこられました。マラリアは、今なお全世界で1年間に約2億6300万人が感染をし、推計で59万7000人が命を失う、これは2023年、WHO(世界保健機関)の発表によるものであります。推計59万7000人が命を失う病気であります。DNDiは、アフリカ睡眠病、すなわち、サブサハラの36か国の風土病で今もなお毎年4万人単位の方々が感染をし、治療を受けられない場合はほぼ100パーセント、死に至ると言われている、そのような病気でありますが、このアフリカ睡眠病に対する初の経口薬の開発と提供を実現をされました。このように『顧みられない病気』で苦しむ人々の治療に多大なる役割を果たしておられる団体であります。いずれも果敢なフロンティア精神と革新的な問題解決を体現する取組であり、本賞にふさわしいものであります。
我が国は、国際保健を外交の柱の一つに位置づけ、人間の安全保障の考え方に基づき、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に力を入れてまいりました。本年、UHCナレッジハブをここ日本に設置をし、12月にUHCハイレベルフォーラムを開催をいたします。今後、アフリカを始めとする開発途上国の保健財政の強化のため、各国の財務・保健当局者の能力構築等の支援を進めてまいります。
アフリカ自身の一貫した保健政策に対する投資を呼び込むことが重要であります。そのために、我が国は、今回のTICAD9(第9回アフリカ開発会議)で表明をした『アフリカ保健投資促進パッケージ』に基づく取組を推進をする考えであります。さらに、Gaviワクチンアライアンスには今後5年間で最大5.5億ドルの貢献を行います。
本日は、『アフリカと共に革新的な課題解決策を共創する』を主要なテーマとするTICAD9に参加をされた皆様、日々グローバルヘルスを推進されているパートナーの方々に御列席をいただいております。野口英世アフリカ賞を契機に、皆様の取組に対する国際社会の関心が一層深まり、国際保健課題の解決に向けた共創の取組が更に広がることを切に願っております。
野口英世博士は、電子顕微鏡もない時代に、細菌に関する研究を重ね、ノーベル生理学・医学賞の授賞候補に3度名前が挙がりました。アフリカの人々のために黄熱病と闘い、黄熱病によりその生涯を閉じました。今般、ジムデ博士とDNDiが、その偉大な業績により、野口英世の名を冠する賞を受賞されたのは、誠にふさわしいことであります。改めまして心からの敬意と祝意を表し、私の式辞といたします。本日は誠にありがとうございました。」