日本経済団体連合会審議員会
令和7年12月25日、高市総理は、都内で開催された日本経済団体連合会第14回審議員会に出席し、挨拶を行いました。
総理は、挨拶で次のように述べました。
「皆様こんにちは。本日は第14回日本経済団体連合会審議員会にお招きいただき、誠にありがとうございます。経団連の皆様方には、日頃より政府の取組に対して、御理解と御協力を賜っております。厚く御礼を申し上げます。内閣総理大臣に就任してからまだ2か月ほどでございますけれども、これまで国民の皆様が直面している物価高への対応を最優先に、働いてまいりました。国民民主党と公明党の御賛同も得て、補正予算の成立という形で、生活の安全保障という部分につきましては、国民の皆様とのお約束を一歩進める、果たすことができたと思っております。また、強い経済、強い外交安全保障の実現についても、先般成立しました補正予算により、政権として一定の方向性を打ち出すことができたと考えています。今の日本に必要なことは、行き過ぎた緊縮財政によって国力を衰退させるということではなくて、責任ある積極財政によって国力を強くすることだと私は考えております。先週金曜日、与党税制調査会において、令和8年度税制改正大綱が取りまとめられました。税制改正大綱では、『経済あっての財政』の方針に基づきまして、大胆な『危機管理投資』、『成長投資』による力強い経済成長の実現に向けて、大きな歩みを踏み出しています。
近年は欧米各国において国内投資促進策が強化されているということ、そして足元では米国の関税措置の影響など、サプライチェーンや事業見通しに不確実性というものが生じています。こうした中で、我が国も同志国に見劣りしない水準の競争力がある事業環境整備を行ってまいります。その一つが『大胆な投資促進税制』の創設でございます。高付加価値型の設備投資を強力に後押しするものです。全業種を対象に、建物を含めて一定規模以上の高付加価値の設備投資に対して、『即時償却』又は『税額控除7パーセント』が利用可能というものです。事業者の皆様の予見可能性に最大限配慮して、投資収益率や投資規模などの要件を満たす全ての事業者に広く利用をしていただけます。本税制の適用が可能となる投資ですけれども、年間約4兆円を見込んでいます。この税制を利用いただくためには、『3年間の集中的な投資決定期間』に投資判断を行っていただくことが必要です。このほか、量子や宇宙やフュージョンエネルギーなど、成長が見込まれ、かつ研究開発の難易度が高い技術領域について、『研究開発税制』を強化いたします。本日お集まりの皆様には、こうした予算や税制を大いに活用して、『国内設備投資』によって、資本ストックの質を向上させ、供給能力を抜本的に強化いただくことを期待しております。
現在、30年以上ぶりの5パーセントを超える高水準の賃上げを実現していただいております。この流れを確かなものとして定着をさせて、物価上昇を上回る賃上げにつながることが重要です。先般『政労使の意見交換』を開催しました。筒井会長にも御出席を賜りましたが、『政府は、賃上げを事業者の皆様に丸投げせず、継続的に賃上げできる環境を整備する』という高市内閣の方針について御理解をいただきました。政府としては、官公需を含めた価格転嫁、取引の適正化、これを徹底してまいります。また、政府全体で1兆円規模の支援を行いまして、基金も活用して賃上げに取り組む中小・小規模事業者の成長投資を後押しすること、そして『重点支援地方交付金』で、賃上げ税制を活用できない中小・小規模事業者の賃上げ環境整備を強化すること、こういったことを通して、賃上げを持続できる環境整備を強力に後押ししてまいります。2026年の春季労使交渉に向けて、経営者の皆様におかれては、改めて、物価上昇に負けないベースアップの実現をお願い申し上げます。こうした官民連携によりまして、日本経済の供給構造を強化する、そして所得を増やす。所得が増えると消費マインドが上がります。消費が増えると事業収益も当然上がります。税率を上げずとも税収を増加させていける、そのような好循環を実現することによって、国民の皆様に景気回復の果実を実感していただきたいと考えております。今の暮らしや未来への不安を、希望に変える。『強い経済』を作る、日本列島を強く豊かにしていく。そのために、一緒に戦っていただきたいと願っております。
年明けからは成長戦略の具体化を加速してまいります。特にリスクや社会課題に対して先手を打った官民連携の戦略的投資を促進します。世界共通の課題解決に資する製品、サービス・インフラを国内外の市場に展開することによって、更なる我が国経済の成長を実現する『危機管理投資』を進めてまいります。『危機管理投資』、なんだろうと思われる方もいるかもしれませんが、身近なところでは食料自給率、もっと上げましょうよと。そしてエネルギー、自給率上げましょうよ。資源、資源もちゃんと自前で調達できる、そういう環境をつくっていきましょうよ。そしてサイバーセキュリティーも強化しましょう、健康医療、安全保障、こういったこともやっていこう、そして国土の強靱(きょうじん)化、命を守るために大事です。リスクを最小化するために必要な、優れた技術が日本国内にたくさんあるのですね。でもそれが製品になってない、サービスになってない、ああもったいないと思うことが度々ございますから、皆様と力を合わせて、『危機管理投資』を進めたいと思っています。日本成長戦略本部においては、AI(人工知能)、半導体、造船、量子など17の戦略分野について、投資を促進するための多角的・戦略的な対策を取りまとめるように関係大臣に指示をしました。筒井会長にも日本成長戦略会議に参画いただいて、来年夏の成長戦略の策定に向けて具体的な議論を加速してまいります。先ほど申し上げました予算、税制に加えまして、官公庁による調達を通じた新たな需要の創出や拡大策を取り入れるということで、戦略的投資の促進につながる、需要サイドからの政策支援も進めてまいります。例えば、『AIロボティクスの汎用基盤モデル開発』は、戦略投資の目玉の一つです。私は日本が強みを持てると思っています。AIについて、現在は確かに米国や中国がリードしていますけれども、学習しているのは言語や画像にとどまって、そのAIはまだまだロボットなどを自動制御する段階には至っておりません。『ロボットが自律的に人を支援する』、『精密なものづくりを行う工場が無人で制御される』、そういった未来を可能にするフィジカルAIの実現が必要です。このフィジカルAIを実現していくために必要なのが、数多くの『質の高いデータ』、そして、制御に求められる『高い信頼性』です。これが日本の強み。今日お集まりの皆様に代表される日本の製造業やサービス業が積み重ねてこられたものですよね。様々な現場でAIを課題解決に使うことで、質の高い『データ』を集めて、日本の『信頼性』という価値をAIで再現する。これがフィジカルAI時代に競争力を発揮していく、日本のAI戦略の背骨になると考えています。
またこのほかにも、『J-POP』、『マンガ』、『アニメ』、『映画』、『ゲーム』、こういった日本の魅力的なコンテンツを生み出すアーティストやクリエイターの皆様を支援します。先日、私自身、アーティスト・クリエイターの皆様に官邸にお出ましをいただきまして、直接声を伺いましたが、日本のコンテンツ産業を世界一にできるというポテンシャルをしっかりと感じさせていただきました。こうした方々に、より多くの国で新たな活躍をしていただけますように、これも550億円を超える補正予算を活用し、海外売上高20兆円を目標に、複数年での御支援をお約束し、官民連携で強力に後押ししてまいります。加えて、レアアースを含む『サプライチェーンの強靱化』は急務です。私もこれに力を入れております。国民の皆様の生活、そして生産活動の安定性確保の観点から、政府を挙げてリスクを徹底的に洗い出して、補正予算の活用も含めて、躊躇(ちゅうちょ)なく迅速な措置を講じてまいります。あわせて昨今の国際情勢を受けた供給不安定化について、懸念を共有する同志国、多々、たくさんありますので、しっかりと連携強化をして、あらゆる機会をいかして対話を積み重ね、協力関係をつくってまいります。
結びになりますが、経団連の皆様の1年間の御理解と御協力に改めて感謝を申し上げますとともに、来年の皆様の御健康と一層の御活躍をお祈り申し上げます。本年、本当にお世話になりました。ありがとうございました。」