令和7年度 防衛大学校卒業式 内閣総理大臣訓示

更新日:令和8年3月14日 総理の演説・記者会見など

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 本日、伝統ある防衛大学校の卒業式が挙行されるに当たり、我が国の防衛の中核を担うことになる卒業生の皆さん、そして卒業生の御家族の皆様に、心からお祝いを申し上げます。
 卒業おめでとうございます!
 晴れて自衛官に任官され、陸海空それぞれの現場に巣立っていく。そのような記念すべき日に、鋭気に満ちた皆さんの姿に接し、自衛隊の最高指揮官として、大変頼もしく、また、心強く思います。
 皆さんは、ここ防衛大学校で、志を同じくした同期の仲間と助け合い、きずなを深め、自分たちの力と知恵を振り絞りながら、学業や訓練、校友会活動などに励み、この日を迎えられました。時には、壁にぶつかったこともあるでしょうし、その道のりは、決して平たんではなく、険しいものであったと思います。しかし、ここで過ごした4年間の日々は、ほかのどの場所でも経験ができない、かけがえのないものだと思います。
 皆さんは、これから、国民の皆様の期待を背負い、幹部自衛官としての崇高な任務に従事することとなります。皆さんの自信に満ちた表情、凛(りん)とした姿に接し、必ずや国民の皆様の期待に応えてくれるものと確信するとともに、自衛隊の最高指揮官として、深甚なる敬意を表します。
 皆さんが入校した2022年には、ロシアによるウクライナ侵略が始まりました。また、我が国の周辺においても、核・ミサイル能力の強化、急激な軍備増強や、力又は威圧による一方的な現状変更の試みが一層顕著になっていました。そうした中、我が国は国家安全保障戦略を始めとする「三文書」を策定し、戦後の安全保障政策を実践面から大きく転換しました。
 現在、我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑なものとなっています。皆さんの入校以降、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序への挑戦が勢いを増すとともに、インド太平洋では、中国・北朝鮮の更なる軍事力の増強、中国・ロシアや、ロシア・北朝鮮の連携強化などがみられます。また、各国は、ロシアによるウクライナ侵略を教訓として、無人機の大量運用を含む「新しい戦い方」や、長期戦への備えを急いでいます。こうした変化が加速度的に生じています。
 厳しい現実を前に、皆さんの先輩方は、ミサイル防衛、東シナ海での警戒監視、スクランブルなど、緊張感を途切れさせることなく、日々、最前線で任務に当たっています。こうした中、政府としても我が国が直面する厳しい現実から目を背けることなく、「三文書」を前倒しで今年中に改定すべく、検討を進めています。
 我が国の領土、領海、領空、国民の皆様の生命と財産を断固として守り抜くために、防衛省・自衛隊の組織の在り方も含め、あらゆる選択肢を排除せずに検討し、防衛力の抜本的な強化に取り組んでいきます。
 自衛隊は、厳しさを増す現実にどう対応すべきか、今後、皆さんは幹部自衛官として、激動の最中にある国際情勢や安全保障環境に常に目を配り、我が国の防衛の責任を全うすべく努力しなければなりません。世の中の変化のスピードは、ますます増しています。例えば、生成AI(人工知能)は、経済社会活動に大きなインパクトをもたらしていますが、注目を集めるようになったのは2022年からです。皆さんがここで学んでいる間に急速に普及し、発展しています。
 最先端の科学技術は、今後も加速度的に進展していきますので、国の防衛のありようにも大きな変化が生じるでしょう。これから皆さんが幹部自衛官として我が国の防衛力の中核を担うに当たっては、未経験の変化に対応していくことも必要となりましょう。現場で部下に適切な指示を行い、命を守る統率力のみならず、我が国の防衛の責任を全うするため、過去の常識にとらわれない柔軟な発想力・対応力を併せ持つこと。これを心掛けて、自己研鑽(じこけんさん)に励んでください。
 厳しさを増す国際秩序を前に、国民の皆様の自衛隊への期待や思いは、より一層強くなっています。昨年、政府が行った世論調査の速報では、自衛隊に良い印象を持っている方の割合が93.7パーセントで、過去最高となりました。これは皆さんの諸先輩が、安全保障環境の急速な変化に適切に対応し、強い覚悟を持って、我が国の独立と平和、国民の皆様の命と平和な暮らしを守り抜いてきた努力のたまものにほかなりません。最高指揮官として、大変誇らしく思います。
 防衛力の中核である皆さんが、自衛官としての誇りを持ち、国防という極めて枢要な任務に専念できるよう、自衛官の処遇・勤務環境の改善や新たな生涯設計を確立するための取組を、着実に進めています。安心して自衛官としての新たな一歩を踏み出してください。
 我が国そして地域の平和と安全のために、我が国自身の努力が必要なのは言うに及びませんが、同時に、同盟国や同志国との連携も不可欠となっています。
 日米同盟は日本の安全保障の基軸です。直面する課題に対し、日本と米国はしっかり連携し、日米同盟の抑止力・対処力を高めています。また、日米同盟を基軸とした、日米豪、日米韓、日米フィリピン、日米豪印などの多角的な安全保障協力も深めています。
 そして、「自由で開かれたインド太平洋」、FOIPを、外交の柱として力強く推進しつつ、時代に合わせて戦略的に進化させ、そのビジョンの下で、基本的価値や原則を共有する同志国やグローバルサウス諸国などとの連携強化に取り組んでいます。
 留学生の皆さん。本日をもって、防衛大学校での留学生活を終えることになりますね。慣れ親しんだ母国を離れ、日本の文化に戸惑い、悩まれることもあったでしょう。しかし、この防衛大学校での留学生活を通じて、得た知識や経験、そして一緒に学んだ多くの仲間とのきずなは、皆さんにとって生涯決して忘れることのない、かけがえのないものになったはずです。皆さんは日本を離れても、防衛大学校の卒業生です。このことを誇りに、今後、それぞれの母国で活躍されること、また、母国と日本との友好と連携の架け橋となられることを切に願っています。母国の皆様にも、是非、防衛大学校の、また、日本の魅力を伝えてください。
 御家族の皆様。卒業生は、皆、頼もしい姿に成長しました。彼らの大きな支えになってくださったことに、心から感謝申し上げます。厳しく、しかし崇高な任務に就く彼らが、万全の環境で勤務に当たることができるよう、最高指揮官として全力を尽くしてまいります。
 卒業生の皆さん、
 「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえる」
 私も、この自衛官の宣誓を胸に刻み、日々職務に当たっています。皆さん一人一人が、国民の皆様の命と平和な暮らしを担う砦(とりで)であるという強い自覚を持ち続けてください。そして、国民の皆様の信頼と期待に常にこたえる自衛隊であり続けるよう、崇高な任務に皆さんが全力で当たることを期待します。
 結びに、学生の教育に尽力をしてこられた久保学校長を始め、教職員の皆様に敬意を表し、そして防衛大学校の一層の発展を祈念して、私の訓示とします。

令和8年3月14日
内閣総理大臣 高市 早苗

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