令和8年度自衛隊指揮官幹部会同 内閣総理大臣訓示

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 ※速報版

(高市総理)
 日本の国防の中核を担う幹部の皆さん。本日、皆さんと一堂に会するに際し、国民の皆様の命と平和な暮らしを守り抜き、そして、国民の皆様の信頼と期待に常に応える自衛隊であり続けるためにどうあるべきかについて、申し上げたいと思います。
 7月の熊本地震に際して、自衛隊は、発災直後から全力を尽くしてきました。航空機による情報収集。イオンモール熊本を始めとする各地での人命救助。被災者の方々の生活を支える、物資輸送、給水、入浴支援。現地でのニーズを踏まえた、看護官による健康面でのケア、艦艇でのキッズスペースの設置など、非常に幅広い支援を行い、感謝のお声をいただいていると報告を受けています。
 正に、政府の「できることは、全てやる」という決意を、現場で具体的な行動として実現してくれています。自らが、又は御家族が被災した隊員もおられたでしょう。困難な状況の中で、身を粉にして任務に当たっている全ての隊員に対し、改めて、心からの感謝と敬意を表します。
 これまで自衛隊は、様々な災害の現場で多くの人命を救い、被災者の方々の暮らしを支えてきました。災害派遣活動への国民の皆様の期待と感謝は、自衛隊にとってかけがえのないものであります。
 また、日本から遠く離れた中東・アフリカ地域では、今この瞬間も、灼熱の中で海賊対処行動や情報収集活動にあたる隊員がいます。日本の領土、領海、領空を断固として守るため、24時間365日態勢で、全力で警戒監視活動にあたる隊員がいます。「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛する」、その自衛隊の最も重要な任務を果たすため、いかなる厳しい訓練にも耐える隊員がいます。災害派遣のみならず、これらの活動を昼夜を問わず真摯に積み重ねてきたことが、今日の国民の皆様の自衛隊へのゆるぎない信頼につながっています。こうした信頼を勝ち得た自衛隊、そして隊員の皆さんは、日本の誇りです。
 自衛隊の活動も、そして、今正に政府として進めている防衛力の抜本的強化も、国民の皆様の御理解と御協力がなければ成り立ちません。幹部の皆さんには、これまで築き上げてきた信頼を守り、それをさらに強固なものとするために、各部隊を力強く導いていくことを期待しています。
 現行の『国家安全保障戦略』、『国家防衛戦略』、『防衛力整備計画』の「三文書」は、今年中に改定し、防衛力強化の新たな方向性を打ち出すことになります。
 2022年の策定から4年足らずの間にも、安全保障環境は一層複雑化し、各国がAIの活用や無人機の大量運用を可能とする体制の構築や、事態の長期化への備えを急いでいます。日本としても、「三文書」改定の検討において、これらを主要な課題と位置づけることになるでしょう。
 昨日までの平和は、明日からの平和を保証しません。変化を恐れず、積極果敢に新たな世界へと飛び込む決意なくして、国民の皆様の命と平和な暮らしを守ることはできません。ここにいる幹部の皆さんが長年培ってきた知恵や経験には心からの敬意を表します。しかし、世界の変わりゆく現実を常に冷徹に見つめ、これまでの「常識」を疑う目も同時に持っていただきたい。そして、AIや無人アセットなど、従来型の装備とは進歩のスピードが全く異なる技術を活用していくため、より一層のスピード感をもって導入することは当然として、既存の組織や制度のままで受け止められるのかということを不断にチェックしていただきたいと考えます。
 実際に技術を活用する現場の隊員が、組織や制度の変革の必要性にいち早く気づき、それを幹部の皆さんが実行に移していく。優れた技術力を十分に活用するには、この好循環が不可欠ではないでしょうか。
 私はかつて、松下政経塾において、現在のパナソニックの創業者である松下幸之助 塾主の薫陶を受ける機会に恵まれました。松下塾主は、「衆知を集める」ことが重要であると説かれました。「衆知」は、「多くの方の知恵」で、「大衆」の「衆」に「知恵」の「知」と書きます。
 一般に、実力組織は厳格な指揮命令系統を持ち、上意下達が基本とされる反面、現場の実態や知見が上に届きにくくなるリスクを内包しています。実力組織たる防衛省・自衛隊は、意識的に現場の声を吸い上げ、「衆知」を結集する仕組みを作ることが、組織の革新と強靱(きょうじん)化のために重要だと考えます。
 今後、国を守っていくためには、伝統的な陸・海・空の装備のみならず、AI、無人アセット、宇宙、サイバー、電磁波という専門領域を理解し、徹底的に活用していく必要があります。それぞれの領域の専門家、現場を知る隊員、そして現場部隊を指揮する指揮官の知恵を結集しなければなりません。他省庁、地方自治体、民間企業、研究機関との連携も、これまで以上に重要になります。
 皆さんには、防衛分野の知識、経験、判断力を遺憾なく発揮しつつも、常に広い視野を持ち、新しい知見を貪欲に取り入れ、これからの時代に必要な防衛力とは何か、考え抜き、そして、果断に行動に移していただきたいと思います。
 十分な予算を確保し、優れた装備品を備えたとしても、最後にそれを動かすのは「人」です。隊員一人一人の力なくして、国民の皆様の命と平和な暮らしを守り抜くことはできません。
 隊員の命を預かる幹部の皆さんに求められるのは、一人一人の持てる力を最大限に発揮できるよう、積極的に創意工夫を生み出せる環境を作ることです。部下を信頼し、耳を傾けながら、最終的な意思決定を果断に下す、そうした姿勢が求められています。
 私としても、隊員の皆さんが、高い士気と誇りを持ち、国防という崇高な任務に邁進(まいしん)することができるよう、自衛官の処遇の改善などを通じた環境整備を進めてまいります。
 国民の皆様の命と平和な暮らしを、断固として守り抜く。そして、日本列島を、強く豊かに。その重い使命を、私は、内閣総理大臣、そして自衛隊の最高指揮官として、皆さんとともに果たしてまいります。
 結びに、幹部の皆さんが、強い覚悟を持って、それぞれの職務に、ますます精励されることを切に期待し、私の訓示といたします。

令和8年9月2日
自衛隊最高指揮官
内閣総理大臣 高市 早苗

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