共同通信加盟社編集局長会議 菅総理スピーチ

更新日:令和2年10月16日 総理の演説・記者会見など

 御紹介にあずかりました、内閣総理大臣の菅義偉であります。共同通信より講演の御依頼を頂きまして、出席させていただきました。
 私自身、内閣総理大臣に就任して、今日でちょうど1か月であります。今日、官邸に入る際に1か月の感想を聞かれまして、私はこう答えました。もう1か月経ってしまったのかなと、そんな思いですよと、そういうことを申し上げました。そして同時に、やるべきことを躊躇(ちゅうちょ)なく実行に移していく。例えば、携帯料金の引下げを始めとして、できることからスピード感を持って取り組んでいく、そして更にいろんな問題が次から次へと出てくるわけでありますけれども、そうした問題に対しては、初心を忘れずに着実に一つ一つ実現していく、そうしたことを申し上げました。
 私自身、自民党の総裁選挙で出馬表明の際にいろんなお約束をさせていただきました。その中でも何といっても大事なのは、この新型コロナウイルス、爆発的な感染拡大を絶対に防ぐ。そして、国民の皆様の命と健康を守る。さらに、その上に立って社会経済との両立を図っていく。こうしたことを、両立を図らなければ、国そのものが立ち行かなくなるからであります。このコロナウイルスの感染拡大、そして経済は4月ー6月期のGDP(国内総生産)については、戦後最大の下落であります。正に、この国難とも言える中にあって、内閣総理大臣として私に対しての最大の使命というのは、国民の皆さんお一人お一人が安心して安全で元の暮らしに戻ることのできる、そうした環境をつくり上げる、そのことだというふうに思っております。
 総理大臣に就任して早速、冬のインフルエンザの流行期に備えて、一日当たりの平均検査数を、インフルエンザの検査数と同等程度の約20万件、確保する予定であります。同時に、高齢者の方や基礎疾患のある重症化リスクが高い方々を重点的に検査して、インフルエンザ、コロナウイルス、こうしたことに対応する体制をしっかりとつくり上げていきたい、そのように思っております。
 正に、そういう状況の中で、経済は未(いま)だに厳しい状況にあることも事実であります。
 雇用を守るために、最大200万円の持続化給付金、さらには4,000万円の無利子・無担保の融資、こうしたことをしっかりと続けてまいりたい、このように思っております。
 また、この7月からは、GoToキャンペーンを開始いたしました。これまで、約2,500万人の方が延べ人数で利用いただいてます。その中で、感染が判明した方というのは20数名であります。30人まではいってません。正に、事業者の皆さんが感染対策をしっかりと講じた上で、利用する方々は、いわゆる3密をしっかり守っていただき、マスクをする。そうしたことであれば、この移動によって、あるいは宿泊によって、このコロナウイルスが感染する可能性は極めて低いということが、この2,500万人の方が利用して、結果として確か27名でありましたと思いますけれども、そうした数字に明らかになっているのではないでしょうか。
 そして、こうしたコロナ感染拡大を防ぎ、来年の夏には、人類がこのコロナウイルスに打ち勝った証として、東京オリンピック・パラリンピック競技大会、このことを是非実現したい、このように思っています。私、先般もバッハ会長と就任の電話会談を行いました。安倍総理のときにも電話会談に私は同席しております。当時とは、一変したと言ってもいいと思います。オリンピック開催に強い意欲を持っての電話でありました。私もこのオリンピックは何としても実現したい。東京都や組織委員会、そして国、しっかりと今、連携してこのオリンピック開催に向けての対応策を採っていることも事実でありますので、皆さんに申し上げたいと思います。
 このコロナとの闘いを通じて明らかになったことの一つに、行政サービスや民間でのデジタル化の遅れなど、様々な問題が浮き彫りになったと思っています。私の内閣では、規制改革の一丁目一番地としてデジタル化を早急に進めて、経済社会を一変させる、そうした転換期にしたいと思っています。
 実は昨年の6月に骨太で保険証とマイナンバーカードの一体化を決めて、そして来年の3月からこの一体化はスタートさせる、そうしたことを決めておりました。そしてまた、マイナンバーカードをこれから2年半の間で全世帯に普及させる、このことも骨太で昨年6月に決めております。こうしたことを実現して、役所に行かなくてもあらゆる行政手続を可能にする、そうした改革を進めてまいります。
 このデジタル行政というのは、皆さん御承知のとおり、総務省、経産省、内閣官房、それぞれが行ってます。こうした、省庁のシステム、さらに自治体のシステムそのものも自治体によって異なります。こうした縦割りを打破して、5年で自治体システムの統一・標準化を行って、国民の皆さんがどの自治体にお住まいになっても行政サービスをいち早くできるようにしたいと思ってます。正に、省庁のシステム、そして地方の皆さんのシステム、こうしたものの一体化というものも行っていきたい、このように思います。
 こうした改革を進めていくために、強力な司令塔機能を持たせるために、デジタル庁を来年には設立したいと思います。そのために、年内に基本的な方針を取りまとめたい、このように思っております。そのために、官民問わず高い能力の人材を集めて社会全体のデジタル化をリードする、そうした組織をデジタル庁として来年には立ち上げたいというふうに思っています。国民の皆さんが当たり前に望んでいるサービスを実現し、デジタル化の利便性を実感できる社会というものをつくっていきたいと思います。
 この夏の補正予算で、このデジタル化の基盤となる光ファイバーの整備も進めています。当時、予算作成の段階で、総務省に光ファイバーの整備のための予算要求は、聞きましたら300億円でありました。このようなコロナ禍の中でデジタル化の遅れがはっきりしましたので、私は、国、全国の全てに光ファイバーを敷設すべきだということを考えまして、総務省に、離島を含む場所まで通信インフラが行き渡れば、テレワークも可能になりますので、さらには、遠隔教育だとか、あるいは遠隔診療、こういう基盤になりますので、全国全てにこの補正予算で行うべきだと、そう総務省に指示しまして、予算要求を500億円にしました。来年度中には全国津々浦々まで光ファイバーを敷設することが可能になります。こうしたことによって、サテライトオフィスの整備だとかワーケーション、こうしたことも進め、地方で都会のサービスを得ながら暮らす、地方と接点を持ちながら暮らすことのできる、そうしたライフスタイルも可能にする環境整備というもの責任を持って取り組んでいきたいというふうに思います。
 私自身、高校まで秋田で生まれ育ちました。そういう中で、やはり地方の活力なくして、国の活力なし。総務大臣当時から、私はその発想でありました。今、全国の消費額を見てみますと、東京を中心とするいわゆる1都3県の消費額は3割に過ぎません。7割が地方です。ですから、地方が元気にならなければ、国全体の経済を再生させることはできないのであります。そうした中で、私自身、正に地方創生の切り札として二つを考えておりまして、一つは観光です。そして一つは農業の輸出です。こうしたことを、私自身、第二次安倍政権発足して官房長官になってから、こうしたことを陣頭に立って指揮もしておりました。
 私事で恐縮ですけども、30年以上前に、私は全く地縁、血縁、何もないところから政治の世界に飛び込みました。横浜の小此木彦三郎さんという国会議員の秘書になりました。26歳の時です。そして、38歳の時に横浜市会議員に当選しました。その時の選挙の経験が私の政治家の原点でありますけれども、当時、市会議員の定数は2名でありました。先輩の議員の方がおりまして、そこへ私が割り込む形で出馬をしたわけですけれども、そこで私について、地方出身だ、地元出身でなくて田舎出身だから、選挙で負けたらすぐ田舎に帰って来ると、そういうキャンペーンを張られまして、私は逆にポスターにも名刺にも大きく秋田県出身と書いて選挙運動をやってやったんです。そしたら、それを見た秋田の人はもちろんですけども、東北の人、「俺は東北だから、応援してやる」、あるいは、地方から出てきている人が「俺も田舎から出てきたから、応援してやる」、そういう輪がどんどんと広がったことも事実であります。私はその選挙を何とか当選させていただいた中で、地方から都会に出てきている人は自分を育ててくれたふるさとに何らかの貢献をしたい、また自分の両親がお世話になっているふるさとに何らかのつながりを持ちたい、多くの皆さんが、そういう方がいらっしゃいます。それで私自身、衆議院当選は47歳でありますけど、ふるさと納税というのをつくる、そこの原点がこの選挙だったんです。
 高校まで地方の市町村では、将来を担う子供たちのためと言って、約1,600万円を子供たちの教育に拠出します。しかし、いざ働いて税金を納めるとなると都会ですから、何らかの形でふるさとに貢献できるようにする、その中でふるさと納税を私はあたためておりまして、総務大臣の時にこのふるさと納税というのを創設したんです。
 しかし、役所は大反対でありましたから、使われないような設計になっていたんです。官房長官になるまで、ふるさと納税というのは、毎年100億円いってなかったんです。私が官房長官になって、ワンストップサービスにしたい、そして住民税(の所得割額の)2割までにしたい、これ当時1割でしたから、ワンストップもできませんでしたから、そうしたことをもう一度、私の当初の目的に戻って設計をし始めました。結果として、5、6年100億円程度だったものが、400億円になって、ワンストップする、更に住民税の(所得割額の)2割までにする、結果として1,700、2,800、3,700、5,000億と、そういう意味で一挙にこのふるさと納税が多くの皆さんに利用してもらえるようになりました。こうしたことも、私自身として正にこの地方の活性化に一つ大きく役立っているのではないかなというふうに思っています。
 それと、先ほど申し上げましたように観光と、農林水産品の輸出に力を入れてきました。
 観光については、政権交代前は(訪日外国人旅行者数は)836万人でしたけど、昨年は3,200万人まで増えました。そしてこの観光と農林水産品も4,500億円の輸出だったのが、昨年は9,000億円までいったんです。
 こうしたことによって、地方の地価が、今日は地方の方がたくさんいらっしゃいますけど、27年ぶりに値上がりを始めたのが去年でした。しかし、残念なことに今日(こんにち)コロナによって、このような状況になったわけでありますけれども、何とかこのコロナ禍を耐えて、そしてもう一度観光を、インバウンドを復活させたいと思います。予定では、今年4,000万人でした。そして、2030年に6,000万人の目標を考えています。この目標は、そのままにして、この6,000万人に向かっての様々な対策、そうしたものを年内にも取りまとめたいというふうに思います。
 そして、私自身がGoToキャンペーン、このGoToトラベルを7月に実施するときに、皆さんからもいろんな批判を受けました。早過ぎるんじゃないかと。しかし、私自身これを7月のたしか20日前後だったと思いますけど、これについて進めました。もちろん、私はこうしたコロナ問題について判断するときに、専門家の委員の皆さんの中から1週間に1回位いろんなお話を伺う中で判断してきたんです。この7月のGoToトラベルの判断をしたときには、移動では感染は拡大しないと、ホテルでも旅館でも大声出したり飲んで騒がなければ、感染は大丈夫だと思いますよということだったんです。そうした先生方からの御示唆、さらに当時地方の状況を考えたときに、旅館やホテルの稼働率が2割でした。さらに、観光は非常に裾野が広くて、例えば、タクシーだとかバスだとか、あるいは食材提供業者だとか、お土産屋さんだとかいろんな人が、約900万人の方がこの観光に携わっております。そうした人たちのことを考えるときに、GoToトラベルに踏み切りました。結果として、先ほど申し上げましたように約2,500万人の人に延べで御活用いただいて、コロナに感染された方は27名という報告を受けてます。ですから、感染拡大を防ぐための3密を防ぐための対策をしっかり行うことによって、こうしたことが実現できる一つの大きな自信につながったことは事実であります。
 現在では、開始当初は反対しました地方自治体の皆さんも、高い評価をいただいてます。旅をすることは後ろめたいことではない、そうしたお墨付きも頂いた、このようにも思っています。現在、当面の観光需要を進めていくためのプランについて、総力を挙げて作業を進めているところです。先ほど申し上げましたけれども、正に年内までに仕上げていきたいというふうに思います。
 また、先ほど申し上げました農業でありますけども、政権交代前は4,500億円で、昨年8年目で1兆円を目標にしました。残念ながら9,000億円でありましたけれども、この日本の農林水産品は特にアジアにおいて非常に高い評価を頂いております。ちなみに今年ですけれども、確かに4月から6月くらいまでは物もなかなか動かなかったんですけれど、8月は対前年11パーセント増なんです。ですから今年の農林水産品の輸出というのは、去年と比較して全体としてプラスにすることができるのではないかなというふうに思っております。特に凄まじいのがドン・キホーテです。アジアで次から次へと開店しております。毎年倍以上の伸びをこのところ示しております。現状は数百億円程度ですけれども、毎年倍々くらいの勢いで、今、農林水産品だけのお店が増えてます。私、創業者の人にお会いしました。安田さんという方ですけれど、この方は官邸に来て講演もいただきました。ドン・キホーテとして1兆円は請け負いますと言って帰ってくれましたけれども、というのは農林水産品の世界の市場というのは150兆円あるんです。アメリカが15兆円、そして10兆円がオランダです。九州と同じ規模のオランダが10兆円あるんです。その中で、私たち日本とすればですね、この2025年には2兆円、2030年には5兆円の目標を掲げております。こうしたことを、しっかり実現することによってインバウンドが回復する、そして農林水産品の輸出が回復する、伸び続ける、こうしたことによって地方の所得を引き上げていきたいというふうに思っております。こうしたことにも全力で取組んでいきたいと思います。
 今、先週から今週にかけて台風が日本にも到来して多くの雨風であります。実は私、昨年台風19号が日本を覆ったときに、多摩川、荒川の濁流を見るにつれて、もしあの2つの川が氾濫したら数百万人の方に大きな影響を受けることになります。その中で、何とか持ちこたえたんですけれども、次の日に関係局長を私の部屋に来てもらいまして、来年の台風シーズン、今年ですよね、までにできる対策を何でもいいから挙げるようにという指示をしました。そしたら、結果として、皆さんも御承知かと思いますけど、同じダムであっても経産省の所管する電力会社のダムや農林水産省の所管する農業用のダムというのは事前放流ゼロだったんです。それぞれ、電力、農業、そのための利水のダムだからこれは使わない、そういう事実が明らかになりましたんで、私の下へ両省も呼びまして、とにかく来年の台風シーズン、いわゆる今年のシーズンまでに、それぞれが事前放流をするという覚書を国交省とそれぞれの省庁と結ぶようにしまして、今年から事前放流ができるようになりました。これは、気象庁も中にはいってまして、気象庁は3日前であればどれくらいの雨が降るかわかると言うんです。それだけ、精緻になっていると。ですから事前にそうしたダムも放流することによって、国民の皆さんの正に被害を最小限に抑えることができる、そうした体制を今年から採っています。その中で、どれくらい可能性があるかということを調べさせましたら、何と、八ッ場ダム1個造るのに50年5,000億円かかるんです。あれの50個分の放流が事前でできるというんです、増えるというんです。これは画期的なことだったと思います。これは、国所管している一級河川だけです。県が所管しているダムも今、加えさせていますから、これによって八ッ場ダム57個分の事前放流ができるということです。正に、この行政の縦割り、こうしたものを打破する、既得権益を打破する、悪しき前例主義を打破する、こうしたことによって、正に現実として、このダムの例を挙げるまでもなく、できるわけです。
 こうした事例というのが、いくらでもあります。私がインバウンド政策を取り仕切りましたけれども、これもそうだったんです。国土交通省、観光庁は何としてもインバウンドを増やしたい。外務省もそうです。しかし反対をしていたのが法務省と警察だったんです。治安当局が反対したからできなかったんです。ビザ緩和できなかったんです。ビザ緩和をすれば、悪い外国人が日本に来る、犯罪が起きる、そう言われたら大臣だって簡単にうんと言えないですけども、少なくとも世界と同じようなレベルにしろというふうに私は指示してこれを始めたんです。結果として、面白いように増えて836万人から3,200万人になっても犯罪は横ばいですから、今までは何だったんだろうと思いましたけれども、こういうことがある意味いくらでもあるというふうに思っています。私は河野大臣に徹底してこうした事例を明らかにするように指示しました。その上で、こうしたことをしっかり是正していきたい、このように思っています。
 最後に、外交について少し話させていただきたいと思います。
 私は就任してから十数か国の首脳と電話会談を行いました。そして、非常に感じることは、やはり安倍前総理の外交というのがものすごく高く評価されているということです。
 トランプ大統領との電話会談で、トランプさんは、晋三は本当に大丈夫かと、おれは本当に友達なんだと、非常に心配をしてお見舞いを言ってくれということでした。そして、私に対して、24時間いつでもいいと、何かあったら電話くれと、必ず出るからとまで言ってくれました。あるいは、ロシアのプーチン大統領も、安倍前総理のことを非常に心配されておりましたし、中国の習近平国家主席、とにかく日本と中国の果たすべき役割、こうしたことにも言及をされました。ヨーロッパの首脳もそうです。こうした、首脳間の電話の中で手応えを感じることもできました。いずれにしろ、こうした首脳とも直接お会いして、日本の立場、日本として言うべきことはしっかり言う、主張するということです。こうしたことで、この外交、安全保障には取り組んでいきたいというふうに思います。
 明後日からは、総理就任後の初めての外遊として、ベトナムとインドネシアを選びました。それは、ASEAN(東南アジア諸国連合)の議長が今、ベトナムであります。そして、インドネシアは正に要の国でもあります。自由で開かれたインド太平洋を実現していく上で、不可欠の両国であります。日本が、この地域の平和と繁栄に貢献する、こうしたことを主導するということを、国の内外にしっかり示していきたいというふうに思います。
 帰国すれば、臨時国会が始まります。私自身、初めての所信表明に臨むわけでありますけれども、この所信表明に向けて何度も私自身の思い、そうしたものを推敲(すいこう)しながら今、文案をつくっているところであります。
 今日は、もう間もなくでありますので、皆さんにそうしたことについて非常に微妙な時期でありますので、講演することはできませんけれども、とにかく私自身は初心を忘れずにやるべきことは躊躇なく実現していく、特に総裁選挙で約束した、この不妊治療を始めとする子育て支援、全体の社会保障制度、今まではどうしても高齢者の方に偏っていたものを、これからの子供たちとのバランスも考えるべきだというふうにも思っています。こうしたことをしっかり実現して国民の皆さんの期待に応えていきたいと思います。与えられた時間がもう過ぎておりますので、これで終わらせていただきますけれども、正にこの日本を更に前に進めるために全力で頑張りますことをお誓いをして私の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

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