日韓首脳共同記者会見


平成21年10月9日

日韓首脳共同記者会見の写真

■冒頭発言

李明博大統領
(1)本日の鳩山由紀夫総理御夫妻の韓国訪問を心から歓迎する。鳩山総理の今次訪韓は、就任以後二国間の次元で初めての海外訪問であり、これは韓日両国関係が、それほど近いということをよく示していると言うことができる。
 私は、鳩山総理とは、総理就任前の今年6月に会い、既に相互信頼を築いていたが、今回の訪問を契機に、その関係がさらに強固なものになったと考える。この機会に、日本の民主党政権の発足を改めて今一度お祝い申し上げる。また鳩山総理の卓越した指導力の下、日本が引き続き発展することを確信する。
 両首脳は、本日の会談で、韓日間協力関係が、両国はもちろん、北東アジア地域の平和と繁栄のためにも極めて重要であるという点で一致した。私は、鳩山総理が過去を直視する中、誠さと開かれた心で、韓日関係を未来志向的に発展させていくという立場を明らかにされた点を高く評価し、両首脳は今後「近くて近い」韓日関係発展のため、緊密に協力していくことで一致した。
 私と鳩山総理は、中小企業間の協力を含む民間経済協力を強化するために、両国政府が一層関心を持って、相互協力していくことを確認した。また最近、東京で開催された韓日共同おまつりが成功裡に開催されたことに対し評価し、今後もこうした行事を続けて行うことで一致した。また、第3期韓日文化交流会議を早速発足することに合意する等、両国間の文化交流をさらに拡大していくことで一致した。さらに、両首脳は、新成長動力としての「韓日グリーン・パートナーシップ」構想の具体的方策についても協議していくことで一致した。

(2)北朝鮮の核問題を解決するためには、北朝鮮の根本的な態度に変化が必要であるという点で見解を共有した。このために、両国が国連安保理決議を忠実に履行していくと同時に、対話の門を開き、北朝鮮が六者会合に速やかに復帰するよう外交的努力を持続していくことを確認した。
 北朝鮮の核問題と関連し、長年続いてきた過去の交渉パターンが反復されることがないよう、根本的かつ包括的な解決策が必要であるという点で意見を共にし、このために一括妥結(「グランド・バーゲン」)提案について、その他の六者会合関係国と緊密に協議していくことで一致した。

(3)来年韓国と日本において開催されるG20サミット及びAPEC首脳会議の準備過程において、日韓両国が緊密に協力することとした。気候変動への対応、東アジア地域協力等の分野でも協力を拡大することとした。
 私は、今回の鳩山総理の訪韓が、個人的信頼を含め、韓日関係だけでなく、世界が直面している主要懸案を解決していくための協力関係を一段階さらに発展させる重要な機会となったと確信している。
 改めて、鳩山総理ご夫妻とご一行の訪韓を心より歓迎したい。


鳩山総理
(1)本日、李大統領夫妻が私ども夫妻をソウルに招待してくださったことに心から感謝申し上げる。私どもは韓国の社会や文化が大好きであり、ほとんどの日本国民が同じ気持ちではないかとの思いをお伝えしたいと常々思っている。李大統領も記者会見の冒頭に述べられたとおり、総選挙直前の6月に、私は李大統領を往訪した。今回の訪韓は、総理就任後3週間、初めての海外訪問先として韓国を選んだのはまさにこの思いからであり、日韓両国が「近くて近い」関係になるようにとの思いを、本日の会談で李大統領と共有することが出来たことを嬉しく思う。日韓両国は、価値観を共有する重要な隣国関係であり、アジア外交の核となるものである。更に多くの分野で協力を深めることにより、東アジア共同体構想の実現に一歩踏み出すことが出来るものと考える。この点についても李大統領と考えを共有できたことを嬉しく思う。
 当然、韓国と日本との間にはいろいろな懸案があるが、新政権は歴史をまっすぐ正しく見つめる勇気を持った政権である。ただし、何でも解決できるわけではなく、時間的な猶予が必要である。未来志向で日韓関係を良好に発展させていくことは、アジアのみならず、世界の経済及び平和にとって重要であり、この点につき大統領からも共感が示された。

(2)本日の会談では、東アジア共同体構想や北朝鮮問題について話し合うことができた。北朝鮮問題については、李大統領が提唱する「グランド・バーゲン」は極めて正しい考えであると思う。北朝鮮の核及び弾道ミサイルといった問題を包括的に位置づけ、北朝鮮による具体的な行動や意思が示されなければ、経済協力を行うべきではない、むしろ、経済協力の前提として意思が示されることが必要である、という誠に正しい考え方であると思う。拉致問題の解決について、韓国にとっても同種の人権問題がある旨指摘したところ、李大統領からは当然、拉致(問題の解決)も、この包括的なパッケージの中に入っているとの発言があり、大変ありがたく感じた次第である。このように、日韓間の協力、又、米国及び中国との協力を通じ、北朝鮮を六者会合の舞台に戻すべく、引き続き協力していくことをお互いに確認した。

(3)拡大会合の中では、日韓両国で中小企業が苦しんでいる中、悩みや関心を共有しつつ、金融危機で経済が厳しい状況の中で、「逆見本市」の成功のほか、更に、さまざまなレベルで協力していくことを確認した。また、若い世代による文化交流及び大学間交流を拡充していくことで一致した。李大統領からは、私の妻(幸夫人)が、韓流ブームに乗って韓国人スターに強い関心を有していること、又、先日東京で行われた「おまつり」に参加したことを褒めていただき、嬉しく思った。李大統領とは、若い世代が心の通う交流を積み重ねれば、政治的懸案も解消していくのではないかとの思いを共有した。
 今回の首脳会談は短い時間であったが、極めて有意義な意見交換であり、このような機会を設けていただいた李大統領の厚意に感謝したい。日韓関係が大きく発展することに希望を抱いた。ありがとう。カムサハムニダ。

■質疑応答

(問)
 先週、まさにこの場所で、李大統領が記者会見を行い、今や我々が南北問題、その中でも北朝鮮の核問題において主導権を持つ時が来たと述べたが、その後に我々が北朝鮮に提案した「グランド・バーゲン」について、北朝鮮は拒否する意思を明らかにした。北朝鮮の金正日委員長は、朝米対話の成果を見た上で、六者会合に復帰するか否かを決定するとし、朝米関係により比重を置く発言を行った。こうした状況で、我々がどのように主導的役割を果たすことができるのか、大統領の考え如何。また併せて、北朝鮮の六者会合復帰の可能性をどのように見ておられるか伺いたい。

(李明博大統領)
 簡潔にお答えする。我々は北朝鮮が核開発を始めて以来、長い交渉を続けながら、多くの経験をしてきた。そのため、今や我々大韓民国は北朝鮮の核問題において、当事者としての考えがなければならない。そこで、我々は一括妥結するための「グランド・バーゲン」提案を行い、多くの国々が同感を表明した。特に、北朝鮮は今後、我々が提案したこの問題について、深く検討するであろうと考える。なぜならば、これは北朝鮮が核を放棄できる道を開くものだからである。結局、最後の選び得る道であることを北朝鮮も理解するであろう。また、先般の温家宝首相の北朝鮮訪問については発表があったが、六者会合についての詳細な部分は明日の韓日中首脳会談で温首相から聞くことになろう。今や北朝鮮も六者会合に出なければならないのではないか、出ないようではいけないという雰囲気が国際社会に形成されている。我々は中国の役割について高く評価し、時間の問題はあるが、米朝会談を通じ、六者会合に復帰するという可能性について確信している。

(問)
 質問が重なるものの、北朝鮮について伺いたい。先ほど総理が会見でも述べていたが、核開発や拉致問題について包括的に解決していくことで一致したということであるが、六者会合再開に向けた具体的な手法をどのようにとっていくかなど、突っ込んだ意見交換は行われたのか。

(鳩山総理)
 どこまでを突っ込んだ意見交換と言えるのかは分からないが、私が申し上げることができるのは、私の方からは、まず、中国の温家宝総理が金正日国防委員長と会談をした、そこでかなり突っ込んだ議論がなされたのは事実だと思う。その中でも六者会合の可能性も言及されているように仄聞している。また、米朝会談が行われる見通しになっているが、私は先般ニューヨークに行った時にオバマ大統領との首脳会談の中で、私は米朝会談を支持する、ただ、支持する前提として、六者会合に是非導いていただきたいということを申し上げ、そのところでも、拉致問題の必要性も言及申し上げたところである。オバマ大統領もそのことを十分に理解する中で米朝協議に臨むという姿勢を示したと私は理解している。
 このように、中国、あるいは米国が先行して北朝鮮との交渉を進めているところだが、それはあくまでもその先に北朝鮮が六者会合に復帰する、その復帰をした中で李明博大統領が提唱されているように、完全に具体的な北朝鮮のメッセージとして、すなわち意思表示、具体的行動として核を廃棄する、あるいは我々からすれば拉致問題の解決を尽くすというようなことをパッケージとして示していく、その時に必要なことは、六者会合の中の五者がお互いに共同歩調をとるということだと理解している。共同歩調をとることができれば、その先に大きな光明を見出すことできる。
 私たちはそのような思いを今日の首脳会談の中で見出した。

(問)
 鳩山総理は、本日も韓日の歴史問題に対し、前向きな立場を明らかにした。若干の時間的な余裕を置きたいと述べていたが、もう少し、歴史問題に対する具体的な構想を伺いたい。特に李大統領は、来年の韓日併合100年を迎え、天皇が韓国を訪問するならば、両国関係の大きな転換点となることを期待し、訪韓を招請する意思を明らかにした。これに対し、日本側ではどのような、そしてどれほどの関心を持っているのか、また、実現する可能性はどれほどあるかを伺いたい。併せて、在日韓国人の地方参政権問題について、鳩山総理の意見を伺いたい。

(鳩山総理)
 私は常に、歴史に対して前向きに、常に正しく歴史を見つめる勇気を持たなければならないと申し上げてきたところであり、そのことを新しい政権の中でも大変重要な考え方として位置づけていきたい。すなわち言うまでもないが、かつてのいわゆる村山談話、その思いを一人一人の政府あるいは国民が大変重要な考え方だと理解することがまず非常に重要なことだと考える。これは日韓関係に関わることであり、ややもすると感情的になりやすい部分を押さえていかなければならないため、国民の皆様に理解いただくには若干時間がかかるということを申し上げたところであり、ぜひ御理解願いたい。
 そして、その問題(歴史認識の問題)の一つとして、いわゆる在日韓国人の皆様の地方参政権の問題もその中に入っている議論だと思っている。私個人の意見は皆様もあるいは既に御存知かとも思うが、私はこの問題について前向きに結論を出していきたいと心の中ではそう思っている。ただ、この問題についても、今申し上げたとおり、国民の皆様の感情、あるいは思いがまだ必ずしも統一されていない。そのことのために、これからしっかりと内閣としても議論を重ね、政府として結論を見出していきたいと思っており、このことに関しても時間というファクターを御理解願いたい。
 また、天皇陛下の訪韓に関しては、私は天皇陛下御自身もその思いを強く持っておられると理解している。ただ御高齢のこともあり、また、日程的なこともあり、更には、総理大臣がどこまでこのことに関して関われるかという問題もある。したがって、私からはこれ以上のことを申し上げることはできないが、(先般)李明博大統領からそのような御示唆をいただいたことに関しては感謝申し上げたい。この問題に関して簡単に分かったということを今申し上げることができない環境であることもぜひ御了承願いたい。

(問)
 今回の首脳会談で、鳩山総理が掲げる東アジア共同体構想に関して、李明博大統領からは、どのような考え方を示されたのか。また、今回の首脳会談を通じて、鳩山総理との個人的な信頼関係はより強まったと考えているか。

(李明博大統領)
 鳩山総理が東アジア共同体の構想について述べられた。私は、世界が地域別の共同体として進んでいると考えている。EUを始め、南アメリカ、北アメリカは言うまでもなく、アジアの複数の国家がASEANとして共にあることから、大きな東アジア共同体は非常に正しい構想であると同意する。しかしこれを解決するためには、前提であるいくつかの事案が解決されなければならない。時間はかかるが、私たちがより開かれた心で、(鳩山総理は)先ほど友愛という表現を使われたが、そうした精神で私たちが努力をしていけば、世界がすべて共同体として向かっているのに、東アジアだけそうならないということはあり得ないと考える。これについては肯定的に考えている。
 そして鳩山総理との個人的な信頼は、冒頭にも発言したが、選挙の直前に会い、多くの意見交換を行った。私たちの考えは、多くの部分で同じであり、共通点も多い。韓国も現在、多くの変化を追及しており、グローバルな立場からすべてのことを考えている。日本も経済大国の一国として多くの変化を成し遂げている。また世界と共に進もうとする精神、個人的な考え、政策の方向性が、相当部分で共通していることから、私はそのような点から高く信頼している。鳩山総理も私と同じ気持ちであるかどうかは分からないが(笑い)。
 以上の点から、歴代どの政権時よりも強い信頼感を持ち、多くの両国間の問題、東アジア地域問題、世界的な問題について、共にうまくやっていきたいという期待感を持っている。