分配戦略

     
② 分配戦略

 人への分配は、「コスト」ではなく、未来への「投資」です。
 官と民が、共に役割を果たすことで、成長の果実をしっかりと分配し、消費を喚起することで、次の成長につなげます。
 これこそが、持続可能な経済、そして、成長と分配の好循環による新しい資本主義を実現するための要です。

(1)所得の向上につながる「賃上げ」

 成長の果実を、従業員に分配する。そして、未来への投資である賃上げが原動力となって、更なる成長につながる。こうした好循環を作ります。
 公的価格の引き上げ、賃上げ税制に加え、原油や原材料価格が上昇する中、中小企業等が適切に価格転嫁を行えるよう、環境整備を進めます。

公的価格の見直し
 国が率先して、看護・介護・保育・幼児教育などの分野において、給与の引き上げを行います。

・保育士等・幼稚園教諭、介護・障害福祉職員
 保育士等・幼稚園教諭、介護・障害福祉職員を対象に、収入を3%程度(月額9,000円)、年間11万円程度引上げるための措置を2022年2月から前倒しで実施しています。

・看護職員
 まずは、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、段階的に収入を3%程度、年間14万円程度引上げていくこととし、収入を1%程度(月額平均4,000 円相当)引き上げるための措置を、2022年2月から前倒しで実施した上で、2022年度診療報酬改定において、10月以降収入を3%程度(月額平均12,000円相当)引き上げるための処遇改善の仕組みを創設しました。

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厚生労働省HP「令和4年度診療報酬改定について(10月改定分)別ウィンドウで開く

 
賃上げを行う企業への支援
 民間企業のより積極的な賃上げを支援するため、賃上げ税制を抜本的に拡充しました。 具体的には、大企業については、継続して雇用される従業員の賃上げを評価するとともに、税額控除率を最大30%まで引き上げ、中小企業については、税額控除率を最大40%まで引き上げました。
 あわせて、賃上げに取り組む中小企業の生産性向上を支援するため、事業再構築補助金やものづくり補助金について、大胆な賃上げに取り組む事業者に対し、補助上限や補助率を上乗せする措置を講じるほか、政府調達において、総合評価落札方式による入札に際し、賃上げを表明した企業に対して加点を行う措置を実施しています。

▼詳しくはこちら
ミラサポplus(中小企業向け補助金・総合支援サイト)

「ものづくり補助金とは」別ウィンドウで開く
「事業再構築補助金とは」別ウィンドウで開く
中小企業庁HP「中小企業向け賃上げ税制とは」別ウィンドウで開く

 
下請取引の適正化
 下請事業者への不当なしわ寄せを解消し、中小企業等が賃上げの原資を確保できるよう、9月と3月の「価格交渉促進月間」の周知徹底を図るとともに、「価格交渉促進月間」のフォローアップ調査の結果を踏まえて、下請中小企業振興法に基づき、事業所管大臣から親事業者に対する「指導・助言」を行い、価格転嫁対策の強化に取り組んでいます。
 また、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」に基づく「価格転嫁円滑化スキーム」の創設・実施、独占禁止法や下請代金法の執行強化、倍増した下請Gメンによる実態把握の強化や、大企業と中小企業の共存共栄を促す「パートナーシップ構築宣言」の推進により、賃上げに向けた環境整備を進めています。
 さらに、独占禁止法上の優越的地位の濫用に関する受注者・発注者向けの11万社に対する緊急調査を実施し、調査結果を公表しました。今後、これまで以上に厳正な執行を行うとともに、優越的地位の濫用として問題となるおそれのある行為に関する独占禁止法Q&Aについて改めて周知を行い、更なる調査を実施するなど、引き続きコスト上昇分を適正に転嫁できる環境の整備に取り組みます。

▼詳しくはこちら

内閣官房HP「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」別ウィンドウでPDFを開く
経済産業省HP「取引適正化に向けた5つの取組」別ウィンドウで開く
経済産業省HP「価格交渉促進月間(2022年9月)のフォローアップ調査の結果を公表します」別ウィンドウで開く
適正取引支援サイト別ウィンドウで開く
「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイト別ウィンドウで開く
公正取引委員会HP『「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」に関する公正取引委員会の取組』別ウィンドウで開く

 
最低賃金の引上げ
 最低賃金について、できる限り早期に全国加重平均が1,000円以上となることを目指し、引上げに取り組みます。

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厚生労働省HP「最低賃金制度」別ウィンドウで開く

 
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(2)「人への投資」の抜本強化

 資本主義は多くの資本で成り立っていますが、モノからコトへと進む時代、付加価値の源泉は、創意工夫や新しいアイデアを生み出す「人的資本」、「人」です。
 官民の人への投資を、早期に、少なくとも倍増し、さらにその上を目指していくことで、企業の持続的価値創造と賃上げを両立させていきます。

「人」への投資の強化
 付加価値を創出し、経済的豊かさや力強さをもたらす原動力は、「人」です。働く人が自らの意思でスキルアップし、デジタルなどの成長分野へ移動できるよう、「人」への投資を抜本的に強化します。

▼詳しくはこちら

厚生労働省HP『令和5年度厚生労働省所管予算案関係-成長と分配の好循環に向けた「人への投資」-』別ウィンドウでPDFを開く
内閣官房HP『「人への投資」の提案募集の結果と対応方針について』別ウィンドウで開く

 
リスキリングによる能力向上支援と労働移動の円滑化
 人材の育成・活性化を通じた賃上げの促進、賃金上昇を伴う円滑な労働移動の支援及び雇用のセーフティネットの再整備にも一体的、継続的に取り組むことで、変化に柔軟な対応力を持ち、個人の多様な選択を支える労働市場を整備しています。
 そのため、総合経済対策(2022年)に基づき、働く人が自らの意思でリスキリングに取り組み、キャリアを形成していくことを支援する企業への助成率引上げなど、労働者のリスキリングへの支援を強化しているほか、訓練後に非正規雇用を正規雇用に転換する企業や、賃上げを伴う転職・労働移動の実現に向け、より高い賃金で新たに人を雇い入れる企業への支援の拡充等を行っています。

▼詳しくはこちら

厚生労働省HP「人材開発支援助成金」別ウィンドウで開く
厚生労働省HP「産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)」別ウィンドウで開く
厚生労働省HP「教育訓練給付制度」別ウィンドウで開く
厚生労働省HP「キャリアアップ助成金」別ウィンドウで開く
厚生労働省HP「労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)」別ウィンドウで開く
厚生労働省HP「中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)」別ウィンドウで開く
厚生労働省HP「特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)」別ウィンドウで開く

 
企業の情報開示ルールの見直し
 企業の人的投資を促進するため、人的資本への投資の取組などの非財務情報について、有価証券報告書の開示情報の充実に向けた検討を行い、非財務情報の開示ルールを策定しました。
 あわせて、四半期開示の見直しを検討します。

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金融庁HP「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案に対するパブリックコメントの結果等別ウィンドウで開く
金融庁HP「ディスクロージャーワーキング・グループ」別ウィンドウで開く
金融庁HP「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告の公表別ウィンドウで開く
内閣官房HP「人的資本可視化指針」別ウィンドウで開く

 
多様な働き方の推進
 使用者が適切に労務管理を行い、労働者が安心して働くことができるよう、良質なテレワークの導入・定着を促進します。
 また、兼業・副業の促進、選択的週休3日制度の普及を図ることや、各種手続・規制の見直しなどにより、多様で柔軟な働き方を選択でき、安心して働くことができる環境の整備に取り組みます。
 兼業・副業については、労働者が適切な職業選択を通じ、多様なキャリア形成を図ることを促進するため、2022年7月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定しました。

▼詳しくはこちら

厚生労働省HP「テレワーク普及促進関連事業」別ウィンドウで開く
厚生労働省HP「副業・兼業」別ウィンドウで開く

 
フリーランスの環境整備
 「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」(令和5年法律第25号)が、令和5年2月24日に第211回国会に提出され、4月28日に可決成立し、5月12日に公布されました。
 本法は、公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日に施行することとされており、個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けられることとなります。

▼詳しくはこちら

公正取引委員会HP「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」別ウィンドウで開く
中小企業庁HP「取引適正化に向けた法律の執行」別ウィンドウで開く
厚生労働省HP 「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」別ウィンドウで開く
フリーランス・トラブル110番「フリーランス・個人事業主の方が、契約上・仕事上のトラブルについて弁護士に無料で相談できる相談窓口」別ウィンドウで開く

 
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(3)家計の資産形成支援

 長年の懸案である「貯蓄から投資へ」の流れを実現できれば、家計の金融資産所得の拡大と、成長資金の供給拡大により、成長と資産所得の好循環を実現できます。
 国家戦略として資産形成の支援に取り組み、長期的には、資産運用収入そのものの倍増も見据えて対応していきます。

資産所得倍増プラン
 2022年11月28日に、「資産所得倍増プラン」を策定しました。家計の資産所得倍増に向けて、以下の7本柱の取組を一体として推進します。
① 家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるNISAの抜本的拡充や恒久化
② 加入可能年齢の引上げなどiDeCo制度の改革
③ 消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設
④ 雇用者に対する資産形成の強化
⑤ 安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実
⑥ 世界に開かれた国際金融センターの実現
⑦ 顧客本位の業務運営の確保

▼詳しくはこちら

内閣官房HP「資産所得倍増プラン」別ウィンドウでPDFを開く

 
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