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平成15年度予算編成の基本方針

平成14年11月29日
閣 議 決 定


I 日本経済の再生に向けた構造改革の推進

1 我が国の経済と財政の状況

 (我が国経済の現状)
 世界経済をみると、欧米では景気回復に弱い動きがみられる。こうした中で、我が国経済については、輸出が弱含んでおり、生産は持ち直しの動きがさらに緩やかになっている。景気は、引き続き持ち直しに向けた動きがみられるものの、そのテンポはさらに緩やかになっている。

 (平成14年度及び平成15年度の我が国経済)
 平成14年度については、年初来の輸出の増加や生産の持ち直しの動き等により、景気に一部持ち直しの動きがみられるが、年後半にかけて米国経済への先行き懸念や株価低迷の影響等をはじめとする不確定要因が多く、これらが最終需要の下押し要因となり、年度後半は持ち直しのテンポが更に一層緩やかとなることが見込まれる。平成14年度経済全体としてみれば、GDP成長率(実質)は年度前半の比較的高めの成長の寄与もありプラスとなるものと見込まれる。
 平成15年度については、「改革加速のための総合対応策」や同総合対応策を補完・強化する「改革加速プログラム」及びこれに基づく平成14年度補正予算等を含め政府・日本銀行一体となった政策の効果の発現が見込まれ、企業部門も緩やかに回復していくこと、更には、年度前半には米国経済が次第に再び緩やかな回復軌道を辿ることが期待され、世界経済が徐々に回復していくことが見込まれることから、我が国経済は民需中心の緩やかな回復へと次第に向かっていくことが期待される。物価については、デフレ傾向は継続するおそれがあるものの、需要の回復等によりデフレ圧力は徐々に低下していくことが期待される。しかしながら今後の我が国には、世界経済の動向や不良債権処理加速による影響等、引き続き多くの不確定要因があり、こうした様々な下方リスクが存在することに十分留意する必要がある。
 なお、具体的な経済成長率等については、政府が年末に取りまとめる「経済見通しと経済財政運営の基本的態度」において示されることになる。

 (財政事情)
 我が国財政は、バブル崩壊後、総じて景気回復を優先した財政運営を行ってきた結果、主要先進国中最悪の危機的な状況に至った。平成14年度予算では、財政構造改革に取り組んできたものの税収の大幅な落ち込みも見込まれることから、財政状況は更に深刻化している。
 また、かつてのような高い経済成長に依存した税収の伸びが期待できない中で、急速な人口の高齢化等に伴う経費の増大や公債の累増に伴う国債費の増大等により、歳入歳出構造はますます硬直化してきており、財政構造についての思い切った見直しがなければ、歳出と税収の多額のギャップは年々拡大していく可能性が強い。
 このような財政の持続可能性に対する懸念の増大を放置することなく、財政構造改革に着実に取り組む必要がある。


2 日本経済の再生に向けて −構造改革の推進と我が国経済−

 厳しい経済情勢にあっても、日本経済の再生を図る道は構造改革以外にはない。「改革なくして成長なし」との基本的考え方に立って、経済活性化に向け、「金融システム改革」、「税制改革」、「規制改革」、「歳出改革」という4本柱の構造改革を一体的かつ整合的に実施することにより、デフレに対応しつつ、我が国の持つ潜在力を発揮できる新しい仕組みを作り上げることが必要である。特に、民間需要・雇用拡大に力点を置いた構造改革を進めることが重要である。これに関連して、日本経済を活性化させる大きな柱として構造改革特区を推進する。
 また、日本経済の足かせとなっている不良債権問題の処理と過剰債務問題の解消−金融及び産業の再生−が喫緊の課題である。このため、先般、「改革加速のための総合対応策」をとりまとめたところであるが、既に、これに基づき「産業再生・雇用対策戦略本部」を設置した。また、本対応策に基づき、速やかに産業再生機構(仮称)を新設すること及び産業再生法を改正することにより事業再生・産業再編を推進する。さらに、本対応策を補完・強化するため、経済・社会構造の変革に備えたセーフティネットの構築、構造改革推進型の公共投資の促進を柱とする平成14年度補正予算を編成し、平成15年度の施策への切れ目ない対応を行う。これらの施策により、不良債権問題を終結させる平成16年度末までの2年半の間、「安心して国民が暮らし、企業が事業に専念できる」よう、あらゆる手段を尽くして対応することとする。



II 平成15年度予算の基本的考え方

 (「改革断行予算」の継続)
 平成15年度予算編成に当たっては、活力ある経済社会と持続的な財政構造の構築を図るため、「改革断行予算」と位置付けた平成14年度予算の基本路線を継承する。このため、「官から民へ」、「国から地方へ」の観点に立ち、制度・政策の抜本的な見直しの検討を踏まえ、歳出改革を加速し、歳出全体にわたる徹底した見直しを行う。その際、政策評価の結果を活用する。平成15年度予算においては、一般歳出及び一般会計歳出全体について実質的に平成14年度の水準以下に抑制する。また、平成14年度の「国債発行30兆円以下」の基本精神を受け継ぎ、国債発行額を極力抑制する。
 平成15年度予算においては、予算の配分に当たり、歳出構造改革を推進するとの基本的考え方を踏まえ、活力ある経済社会の実現に向けた将来の発展につながる4分野(『人間力の向上・発揮−教育・文化、科学技術、IT』、『個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方』、『公平で安心な高齢化社会・少子化対策』、『循環型社会の構築・地球環境問題への対応』)に予算の重点的な配分を行う。また、当面の経済情勢を踏まえ、民間の潜在的な活力を顕在化させる効果及び雇用創出効果を重視するとともに、改革に伴う影響に対応し、雇用や中小企業のセーフティネットに万全を期すことが適当である。
 予算配分の重点化・効率化を行うため、一般歳出を「公共投資関係費」、「義務的経費」、「裁量的経費」に区分するほか、二割増の要望を認めつつ厳しい予算配分を行う。このうち、公共投資関係費については、その総額を対前年度△3%の範囲内に抑制する。第二に、義務的経費については、制度・施策の抜本的見直しを行い、歳出の抑制を図る。第三に、裁量的経費については、前年度予算額から2%減算(科学技術振興費に相当する額を除く)した額を上限として縮減を図る。
 また、歳入面において、税外収入については、可能な限りその確保を図る。
 なお、平成15年度財政投融資計画については、行財政改革の趣旨を踏まえ、全体規模を縮減しつつ、構造改革に資する分野に対象事業の重点化を図るとともに、現下の経済金融情勢を踏まえ、企業再生・中小企業金融等真に政策的に必要と考えられる資金需要には的確に対応する。

 (行政改革)
 「聖域なき構造改革」の考え方の下、簡素で効率的な行政システムを確立するため、時代の要請に即応して行政の役割を見直し、行政組織等の減量・効率化や特殊法人等改革など行政の構造改革を推進する。
 国家公務員の定員については、10年で25%純減などスリム化の方針を着実に実施するとともに、行政需要の変動に的確に対応しうるよう、行政組織の見直しや府省間の人的資源の再配分を積極的に進める。このため、平成15年度においては、全政府的見地から緊要な施策に対して、重点的な増員を行う一方で、その他の分野については、一層の新規増員の抑制及び定員削減の実施を図ることとする。あわせて、政府全体としての定員配置の適正化を図る観点から、府省間の定員の再配置を推進する。また、食品安全委員会(仮称)の新設などを行うが、これによりかえって肥大化を招くことのないようにする。これらにより、メリハリのある定員配置を実現するとともに、引き続き国家公務員数の純減を実施する。また、特殊法人等についても厳しい定員削減を実施し、独立行政法人についても、役職員数も含めた一層の事務運営の効率化を図る。さらに、民間の状況を踏まえ、国家公務員の退職手当の支給水準を引き下げる。以上の取組を通じて、総人件費を極力抑制するとの基本方針を堅持することとする。
 特殊法人等向け財政支出については、「特殊法人等整理合理化計画」(平成13年12月19日閣議決定)に基づく事業の徹底した見直しの成果を平成15年度予算に厳格に反映させることにより、同計画に従い設立を予定している独立行政法人等に対する財政支出を含めた縮減・合理化を進める。

 (税制改革)
 税制については、持続的な経済社会の活性化を実現するための「あるべき税制」の構築に向けて、抜本的な改革に取り組む。
 現下の経済情勢を踏まえ、1兆円を超える、出来る限りの規模を目指した減税を先行させる。公正かつ簡素で分かりやすい税制を目指し、多年度税収中立の枠組みの下で、税制改革全体を一括の法律案として次期通常国会に提出するべく、法人課税、個人所得課税、消費税、資産課税等広範にわたり、以下の項目を中心に検討を進める。

 法人課税については、研究開発やIT投資に対する減税、活力ある中小企業の経営基盤強化のための見直し等を検討する。法人税率の取扱いについては、マクロ経済の状況、国際的視野、税体系の在り方も勘案しつつ、引き続き検討する。
 法人事業税の外形標準課税については、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日閣議決定。以下「基本方針2002」という。)に示した考え方に沿って対応する。
 住宅取得(リフォームを含む)促進のための住宅取得資金を含め資産の次世代への移転円滑化の観点からの相続税・贈与税の見直し、土地の有効利用の促進に資する土地税制の見直し、株式に係る課税の簡素化や貯蓄から投資への改革のための金融・証券税制の見直し等を検討する。
 個人所得課税の控除、消費税の免税点制度等の見直しを検討する。



III 歳出の見直しと構造改革の推進

 平成15年度予算は「改革断行予算」を継続し、歳出全体を厳しく見直し大胆な質的改善を図ることとする。我が国経済の活性化を図るため、「基本方針2002」に基づき、以下の1から4までに掲げる4分野で政策効果が顕著なものについて重点的に推進するとともに、5から10までに掲げる社会資本整備、社会保障制度、地方財政等の事項についても制度・施策の見直しを行う。


 人間力の向上・発揮−教育・文化、科学技術、IT

 競争的環境の中で世界最高水準の大学を育成するため、「国立大学法人」化などの施策を通して大学の構造改革を進める。また、初等中等教育について、学校や教員の個性と競争を通じて、豊かな心を持ち確かな学力と創造性を持った人材の育成を図るため、既存施策を見直し、教育改革を推進する。機関補助の在り方について一層の見直しを図る一方、奨学金事業の充実等意欲と能力のある個人の主体的な自助努力を支援する施策を推進する。さらに、文化芸術分野を含め優れた人材育成を図ることにより、心豊かな活力ある社会を形成するとともに地域社会の活性化を図る。
 科学技術創造立国の実現のため、国際的に卓越した基礎研究及び@ライフサイエンス、A情報通信(IT)、B環境、Cナノテクノロジー・材料の4分野などに重点化するとともに、経済活性化のための研究開発プロジェクトを、官民の適切な負担の分担の下で推進し、さらに、科学技術システム改革を進める。その際、施策の優先順位付け(SABCの4段階)を踏まえたメリハリをつけつつ、質的向上を図る。特に、競争的研究資金については、制度の改革と重点的推進を図る。また、民間主導による産学官連携の推進を図る。なお、真に重要な施策に研究開発資源を重点的に配分すべく、公正で透明性の高い研究開発評価システムの改革等を行うとともに、必要な整理・合理化・削減も併せて行う。
 世界最先端のIT国家を目指し、「e-Japan重点計画-2002」(平成14年6月18日)を踏まえ、世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成を始めとする5分野に係る施策を重点的かつ戦略的に実施する。また、施策の推進に当たっては、民間が主導的な役割を担うとの原則に沿って官民の役割分担を明確にするとともに、政府は、電子政府・電子自治体やETC等公的部門の電子化や基盤的技術の研究開発等に重点化する。なお、施策の重複の排除や、成果の検証等の観点を踏まえた既存のプロジェクトの見直しを行う。


 個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方

 我が国の活力の源泉である都市の魅力と国際競争力を高め、都市の再生を実現することが重要な課題である。このことは、資産市場の活性化にも資することが期待される。このため、都市再生プロジェクト等を活用し、各種の都市基盤整備を重点的に進めること等により、民間資金やノウハウ等を引き出し新たな民間投資や消費を喚起する。また、都市再生特別措置法に基づく指定地域において、民間都市開発投資の促進に向けた重点的な支援を行うなど、「都市再生基本方針」(平成14年7月19日閣議決定)に基づく施策を、優先度を踏まえつつ、重点的に実施する。
 また、個性ある地方の自立した発展と活性化を促進するため、市町村合併を効果的に支援する。やる気と能力のある中小企業者への円滑な資金供給等のセーフティネットを確保する。地域産業の活性化、中心市街地活性化、都市と農山漁村との共生・対流、安全な地域づくり等地域の主体的な取組を支援する。さらに、地域社会におけるNPOとの連携施策の推進や、国際観光を振興する。また、住民の安全と治安を確保することにより、安心して暮らせる社会を構築する。


 公平で安心な高齢化社会・少子化対策

 少子化の進展により我が国の人口は2007年から減少に転じ、急速に高齢化が進むことが予測される中で、持続可能な社会保障制度の構築に努めることが重要な課題である。
 仕事と子育ての両立支援のための保育所待機児童ゼロ作戦の推進などに加え、職場や地域ぐるみで子育てを支援する取組を強化することなどにより、少子化の流れを変え、次代の社会を担う子供を安心して生み育てることができる環境の整備を推進する。
 さらに、PFI方式の活用等により介護、保育サービスの供給体制を効率的に整備するとともに、社会の支え手として元気に働き、生活を享受することができる期間が長いという健康寿命の増進や公共施設、公共交通などの公共空間のバリアフリー化による移動手段の確保を図り、高齢者が尊厳を保ちつつ積極的に社会参加をできるような社会の構築を目指す。
 また、「食」の安全に対する消費者意識の高まりや輸入食品の増加等に適切に対応するため、食品安全基本法(仮称)の制定、トレーサビリティシステム(生産流通履歴情報把握システム)の整備、輸入食品の安全対策の充実等を通じて、消費者に信頼される食の安全・安心体制の構築を進める。さらに、健康に対する食の重要性にかんがみ、いわゆる「食育」を推進する。


 循環型社会の構築・地球環境問題への対応

 経済が持続的に成長するためには、自然環境との調和が重要な課題である。このため、廃棄物・リサイクル処理などの環境技術の実用化に向けた研究・開発等を進めることにより、経済活動の環境への負荷を低減しつつ、「環境」を新たな成長分野として捉え、その環境セクターの創出・拡大を図る。また、廃棄物の発生抑制、再使用、リサイクルのいわゆる3Rの着実な実施を図り「ゴミゼロ社会」の構築を目指すとともに、バイオマスの利活用を推進する。
 さらに、京都議定書の目標達成に向けて、国民各層一体となった取組の推進に加え、温室効果ガスの削減に向けた研究・開発等の取組や多様で健全な森林の育成など自然生態系の保全・再生につながる事業で、我が国の温室効果ガスの削減・吸収に顕著な効果があるものについて、関係府省は連携・協力しつつ政府全体として重点的に推進する。あわせて、都市のヒートアイランド対策を進める。


 社会資本整備

 平成15年度予算においては、重点4分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野への重点配分を行う。国庫補助負担金については、その内容を見直すとともに、「構造改革と経済財政の中期展望」(平成14年1月25日閣議決定。以下「改革と展望」という。)に基づく公共投資の抑制を踏まえつつ、これを上回る縮減を目指して実施する。公共投資関係費の水準については、前年度当初予算から3%以上削減する。

 (公共事業関係計画の見直し)
 平成14、15年度を期限とする9本の国土交通関係の公共事業関係計画については、計画策定の重点を従来の「事業量」から達成される成果(アウトカム目標)に変更すると同時に、原則として事業費総額を計画内容としない等、社会資本整備の重点化・効率化を一層推進するとともに一本化し、現行の緊急措置法に基づく体系を見直し、必要な法整備を行う。さらに、真の意味の一本化が達成されるよう、ニーズに応じた資源配分、関連分野間の連携強化等を推進する。他の公共事業関係計画についても、緊急措置法の廃止を含め、上記に準じた抜本的な見直しを行う。

 (特定財源の在り方の見直し)
 道路特定財源については、受益と負担の観点から納税者の理解・納得を得つつ、環境や都市交通への活用等使途の多様化を検討する。

 (公共投資の重点化)
 「基本方針2002」で示した重点分野へ施策を集中する。その際、政策効果が最大限発現するよう重点分野の中においても施策の絞込みを行う。
 また、「平成14年度予算編成の基本方針」(平成13年12月4日閣議決定)で示した厳しい見直しを行うべき分野について、より明確に平成15年度予算に反映する。市町村道や下水道等公共投資に係る国庫補助負担金については、国と地方の適切な役割分担等の観点から見直しを行う。同時に、公共事業から公共事業以外の政策手段への転換(ハードからソフトへの転換)の努力をさらに進める。さらに、地域間の予算配分については、整備状況や事業評価を踏まえて弾力的な配分を行う。

 (公共投資の効率性・透明性の向上)
 公共投資の効率性・透明性の向上に向け、コスト縮減の数値目標を早急に定め、かつそれによって現実のコストが引き下がるよう、コスト構造改革に取り組む。また、一般競争入札の拡大等競争性の向上に向け、入札ボンドの導入等を含めた条件整備をしていく。
 PFIの一層の活用、既存ストックの有効活用、過度の入札制限の見直し、事業の時間管理、各府省の技術基準の統一化などについて具体的な取組を進める。
 評価手法の改善・共通化の推進、第三者による評価内容のチェック機能の強化、人口動態等を踏まえた厳正な需要予測(モデル、データ)など関連情報を含めた情報公開の徹底などを進めることにより、事業評価の仕組みを一層改善する。
 事業評価の結果を予算に十分反映する。事前評価、再評価及び事後評価を公表し、比較・検証した上で、実績の伴わない事業については、予算要求や計画の見直しに活用するとともに、同分野の評価手法や今後の計画・調査等へ反映する仕組みを導入する。

 (既存プロジェクトの見直し)
 時代の変化に伴い必要性の低下した事業を中止するなど、既存プロジェクトの見直しを進める。このため、実質的な着工に至っていない大規模事業、長期間中断されている事業、採択時に想定した利用率やコストに大きな見込み違いが生じた事業について、改めて費用対効果や実施可能性を厳しく検証し直し、実施の当否などを判断する。


 社会保障制度

 社会保障制度は、国民の安心と生活の安定を支えるセーフティネットであり、国民に広がる雇用、老後などの将来不安を払拭するため、総合的・一体的なものとして、将来にわたって持続可能な、一層確固たる制度にしていかなければならない。
 昨年来、その第一弾として医療制度改革を実施してきたが、今後とも、保険者 の統合・再編を含む医療保険制度体系の在り方、診療報酬体系の見直しなど医療  制度の効率化と安定的運営を確保する観点から改革を継続する。平成15年度においては、雇用保険制度の改革に取り組むとともに、その翌年に予定する次の年金制度改革に向けて、国民的議論を行っていく。
 地方分権改革推進会議の意見を踏まえ、国庫補助負担事業の廃止・縮減、一般財源化、統合化等、必置規制の見直しを行うことを検討する。

 (雇用保険制度改革等)
 雇用保険制度については、厳しい雇用失業情勢及び保険財政にかんがみ、将来にわたりセーフティネットとしての安定的運営を確保するため、早期再就職を促進する給付水準の設定、通常労働者とパートタイム労働者の給付内容の一本化、倒産・解雇等による離職者等への給付の重点化、雇用保険三事業の重点化、合理化など抜本的な改革を進める。
 なお、制度の安定的運営を確保するために必要な保険料率の水準については、景気の自動安定化装置としての機能も考慮しつつ検討する。また、労災保険料率も併せて検討する。

 (年金・手当等)
 平成15年度の年金、手当等については、現役世代の賃金が低下している中で、保険料を納付する現役世代との均衡や制度に対する信頼確保の必要性等を考慮し、物価、賃金の状況などを総合的に勘案して一定程度引き下げる。

 (介護保険制度)
 介護保険制度の一層の効率的な運営を行うため、介護保険サービスの利用状況、介護サービス間のバランスなどを踏まえ、在宅に近い居住環境の下でケアを行う 特別養護老人ホームのホテルコストについて自己負担の導入を行うとともに、賃金・物価の下落傾向、介護事業者の経営状況、介護保険料の増加傾向等を踏まえ、介護報酬水準全体を適正に見直す。


 地方財政

 (地方歳出の見直し)
 国の関与の縮減、国庫補助負担事業の廃止・縮減、アウトソーシングの推進など国・地方を通じた事務事業の在り方の見直しも踏まえ、国の歳出の徹底的な見直しと歩調を合わせつつ、地方財政計画の歳出を徹底的に見直すとともに、定員の計画的削減や国家公務員に準じた退職手当の支給水準の引下げ等による総人件費の抑制や地方単独事業の削減を図ることなどにより、地方財政計画の規模を抑制する。また、「改革と展望」の期間を通じ、地方財政計画の歳出の計画的な抑制を図ることにより、計画規模の抑制に努める。

 (三位一体の改革)
 地方分権改革推進会議の意見も踏まえ、福祉、教育、社会資本などを含めた国庫補助負担事業の廃止・縮減について検討し、「改革と展望」の期間中に数兆円規模の国庫補助負担金の削減を目指す。同時に、地方交付税の改革を行う。この改革の中で、交付税の財源保障機能全般について見直し、「改革と展望」の期間中に縮小していく。他方、地方公共団体間の財政力格差を是正することはなお必要である。これらの改革とともに、廃止する国庫補助負担金の対象事業の中で引き続き地方が主体となって実施する必要のあるものについては、移譲の所要額を精査の上、地方の自主財源として移譲する。
 これら国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分の在り方について三位一体で改革を進めるが、平成15年度予算においては以下の措置を検討する。

@ 国庫補助負担金の整理合理化
 国と地方の役割を見直し、国の関与を縮小しつつ地方の自主性を拡大する観点、及び国・地方を通じた行政のスリム化を実現する観点から、適切な財源措置を講じつつ、国庫補助負担金の補助負担対象範囲の見直し、国庫補助金の量的縮減等を進める。また、統合補助金の対象事業の一層の拡充を図る。
A 地方交付税の改革
 「改革と展望」の期間中における地方財政計画の歳出の計画的抑制方針を踏まえ、地方財政計画規模の抑制を図ることにより財源不足額の圧縮を通じて交付税総額の抑制に努める。
 また、地方公共団体の自主的・自立的な財政運営を促す方向で地方交付税の算定方法の見直しを行うこととし、都道府県分について、留保財源率の引上げを行うとともに、引き続き事業費補正及び段階補正について見直しを行う。
B 税源移譲を含む税源配分の見直し
 国庫補助負担金の削減、地方交付税の改革とあわせて税源移譲を含む税源配分の見直しについて検討する。


 ODA

 ODAについては、厳しい経済財政状況の下で、重点化、効率化、透明性の向上を図りつつ、国際的責任の十全かつ適切な遂行に努める必要がある。他方、我が国の経済協力に対する国民の理解と支援を得ることが重要である。
 このため、ODA大綱をはじめとする我が国ODAに関する基本政策を見直すなどにより、政策の目的、重点とする分野や地域、官民の役割分担や連携の在り方等について検討を行う。その際、アジア地域の安定と成長のためのODAの活用、平和構築分野及び教育・人材育成・環境保全といった人間の安全保障分野への重点化、国民参加や顔の見える援助の推進を図る一方、事業コストの見直し、執行の透明性・効率性の向上、評価や監査の強化等を図りつつ、事業の一層の合理化と戦略的援助に努める。
 以上のことを踏まえ、予算の編成に当たっては、その規模を見直す。


 農林水産

 農林水産業については、零細な生産構造から脱却を図り、国民の期待に応える新たな「食料産業」としての再生を目指し、構造改革を加速化する。
 このため、別途決定されるバイオマス・ニッポン総合戦略に基づくバイオマス産業等の育成など、農林水産業の環境保全機能に配慮する一方、これまでの政策を厳しく見直し、意欲と能力のある経営体への施策の集中化、補助金に依存しない体質の確立等、真に消費者を重視した政策への転換を推進する。
 また、今後の米政策は、水田農業の構造改革、効率的な政策運営を基本に、市場メカニズムが発揮され、消費者視点に立った生産・流通システムの構築に向けた取組を着実に推進する。このため、米の生産調整や水田農業関連施策の改革を含む米政策大綱(仮称)を策定する。
 農業委員会・農業改良普及事業に係る制度については、一定の役割を果たしてきているが、必置規制の廃止又は大幅な緩和、交付金の一般財源化等その交付の在り方等について、制度の根幹から検討が必要であるとの地方分権改革推進会議の意見を踏まえ、必置規制の見直しや交付金の削減を含め、その具体的な改革プロセスを着実に推進する。また、農協については、農協を通じた行政運営、他の業者との公正な競争条件等について検討を進め、抜本的な農協改革を促進する。
 さらに、国と地方との適切な役割分担の観点から、地方公共団体を通じた補助事業についても、重点化等その在り方を見直す。


10 エネルギー政策

 エネルギー政策については、環境と経済発展の両立を図る観点から、地球環境対策にも十分配慮したものへの転換を図る。この見直しにあわせ、石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計、電源開発促進対策特別会計については、歳出内容を十分に吟味し、石油公団関連予算や既存の研究開発予算等を大幅に削減し、経済産業省と環境省が連携して推進するエネルギー使用に伴う二酸化炭素の排出抑制に役立つエネルギー関連施策等に配分を重点化するなど、歳出構造の見直しを行う。