[英語English)]


菅総理によるインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙への
寄稿(仮訳)


2011年4月15日

日本 −復興,そして新生への道−
(Japan's Road to Recovery and Rebirth)

日本国首相 菅直人

3月11日,14時46分。我が国は観測史上最大規模の地震に見舞われ,東日本大震災後の数々の惨事からの復旧・復興に向け,国民の総力を挙げて取り組んでいるところです。今回の災害による死者・行方不明者数は外国人の方々も含め,28,000人以上に上ります。

3月11日以来,日本は,世界中の友人からの支援によって強力に支えられています。日本国民を代表して,130以上の国々,40近い国際機関,多くの非政府組織及び世界中の数えきれない人々から受けた多大なご支援と連帯の表明に対し,心より感謝申し上げます。日本国民は,世界中の友人が示してくれた「絆」に深く感謝するとともに,この苦難の中で「まさかの友は真の友」という言葉を強く実感しています。

福島第一原子力発電所において,原子力事故が起きたことを極めて重く受け止め、深く遺憾に思っています。現在,私は,一日も早い事態の収拾を目指し,陣頭指揮に立ち,文字通り政府の総力を挙げてその解決に取り組んでいます。私は原発事故がもたらす危険と戦うべく,第一に,周辺住民をはじめとするすべての人々の健康と安全を最優先に考え,第二に,しっかりとリスクマネジメントを行い,そして第三に,起こりうるあらゆる事態を想定し対応体制をつくる,という三つの原則に立ち,利用可能なすべての資源を動員し対応しています。例えば,海水への放射性物質の流出の件については,その問題に取り組むためにあらゆる努力を行っています。さらに、政府は、すべての食品及び他の製品の安全を確保するため,厳しい科学的基準に基づき,万全の措置を取っています。我が国は高い予防的安全基準を設けており,市場に流通する日本のすべての食品・製品の安全性は確保されていまし、また今後もそうします。今後も,国内はもとより海外の人々からも日本の食品及び製品につき安心して頂けるように,この福島第一原発に関する複雑に変化する情報については,高い透明性をもってその推移をすべての方々に提供して参りたいと思います。

今回の原発事故に関しては今後,速やかにその原因につき徹底的に検証を行い,そこから得られた情報と教訓を世界と共有し,このような事故がなくなるよう原子力発電の安全性向上に向けた国際的議論に積極的に貢献していく所存です。他方,エネルギー政策全体の観点からは,高まる世界のエネルギー需要と地球温暖化問題に闘うための温室効果ガス排出削減努力の必要性の両面をにらみ,同時並行的にクリーン・エネルギーの抜本的推進を含め,世界が直面するエネルギー問題の解決モデルに資する明確なビジョンを,世界へ提示していきたいと考えています。

今回の大地震と大津波は,我が国が戦後直面した最悪の自然災害であり,この災害に見舞われた東日本の復興は決して容易ではありません。しかし,私はこの災害を「日本の新生」のための重要な機会と捉え,「自然災害に強い地域を築く」,「地球環境と調和するシステムの構築」,「人に優しい,弱者に優しい社会の構築」を三本柱として,東日本から世界に,最先端の復興計画を示すべく全力で取り組みます。

我々日本人は,かつて戦後の焼け野原からその底力で立ち上がり,目覚ましい復興を成し遂げ,今日の繁栄を築きました。今回も,この国難に必ず打ち勝ち,復活し,新生し,将来世代に向けてより活力のあるより良い国を創造していくことができるものと確信しています。そして,引き続き国際社会の発展に貢献する国となることが,国際社会が示してくださった「強い絆」と「温かい友情」に応える最高の返礼だと信じています。そのために,未来の夢を先取りする「未来志向」の復興を目指し、私は懸命な努力を続けていきます。海外の皆様からの継続するご支援とご協力に心から感謝申し上げます。

(了)