▽通商白書のあらまし………………………………………………通商産業省
▽消費者物価指数の動向(東京都区部四月中旬速報値)………総 務 庁
▽労働力調査(三月及び一〜三月平均結果の概要)……………総 務 庁
▽月例経済報告(六月報告)………………………………………経済企画庁
通商白書のあらまし
第1部 世界経済の動向
第1章 世界経済の動向―主要地域の経済動向
九九年の世界経済は、引き続き好調な米国経済と堅調さを維持した欧州経済に加え、日本経済の回復や、通貨・経済危機の影響を受けたアジア経済が急速に立ち直りを見せたことにより、総じて回復が広がりを見せた。
第1節 好調な米国経済とそのリスク要因
1. 最長記録を更新した米国経済の景気拡大
米国経済の好調さは世界経済を牽引した。九一年三月に始まった今回の米国経済の景気拡大は、二〇〇〇年二月には統計開始以来の最長記録を更新した。九九年は個人消費や設備投資の寄与に支えられ、実質GDP成長率四・二%と引き続き高水準のものとなった。
この要因としては、労働市場の構造変化がインフレなき経済の持続的拡大を可能としたことが挙げられる。また、情報化投資も生産性に寄与したが、今後さらなる効果の広がりが注目される。
2. 米国経済のリスク要因
米国経済が抱えるリスク要因は、@個人消費、A株価、Bインフレ、C経常収支の「四つのリスク」に整理できる。@については、個人消費の高い伸びの背景には家計の貯蓄率低下があり、株価上昇による過剰消費とそれに伴う過小貯蓄が懸念される。Aについては、株価には割高感があり予断を許さないが、財政黒字や金利引下げ余地は今後のマクロ経済の機動的運営を可能としている。Bについては、労働需給の逼迫、原油高、ドル安傾向はインフレへの警戒を必要とさせる。Cについては、経常収支の赤字は拡大しており、為替水準への影響や保護主義の強まりが懸念される。特に、米国への資金流入は民間資本に重点が移り、経済動向の影響を受けやすくなっていることに留意が必要である。
第2節 ユーロ導入による欧州経済統合の強化
1. 九九年の欧州経済
九九年のEU十五か国の実質GDP成長率が二・三%となり、九七年からの景気の改善を持続したことは、世界経済の回復を支える重要な役割を果たした。また、景気の改善に伴い、雇用情勢も緩やかな改善が続いている。
2. ユーロ導入の経済的影響
単一通貨「ユーロ」は、九九年初の導入後、弱含む状況が続いたが、ユーロの国際基軸通貨としての可能性についてみると、貿易決済や準備通貨としての使用に現時点で大きな変化はないものの、金融・資金取引通貨としては、ドルに匹敵する役割を果たし始めている。
ユーロ圏経済への影響としては、ユーロ参加国の財政規律の強化は目に見える成果を既に上げている。また、長期金利面でも効果を上げてきた。ユーロ導入後、欧州市場内の価格収斂には依然課題を残しているが、欧州産業には競争圧力が強まり、合併・買収による再編も加速している。今後は、税制調和や労働市場の改革など、一層の統合深化の検討が進む見込みである。
第3節 回復する東アジア経済とその持続的な成長への課題
1. 通貨・経済危機からの立ち直りを見せる東アジア経済
東アジア経済は九九年には急回復を遂げたが、その背景には輸出の回復や景気刺激策があった。しかし、民間部門の回復、特に設備投資の回復は力強さを欠いており、本格的な景気回復のために必要な経済構造改革に、東アジア各国は独自の方法で取り組んでいる。
2. 東アジア経済の持続的な成長に向けた構造的な課題
過去の東アジア経済の成長は、豊富な資本や労働力の投入によって支えられてきた。今後は労働・資本の制約が厳しくなるため、構造的課題の克服による生産性の向上が必須となる。
持続的な成長に向けた構造的課題としては、@インフラ、A人材育成・技術開発、B金融システム、C法制度が挙げられる。@については、民間活力の活用と質への配慮が必要となる。Aについては、東アジアの教育水準は比較的高いが、産業発展・技術開発に必要な人材は不足しており、研究開発への公的支援に加えて、中小企業政策などによる裾野産業ネットワークの形成が重要である。この点で、タイにおける中小企業育成への支援(いわゆる「水谷プロジェクト」)や中国華南における産業集積の形成の事例は参考となろう。Bについては、間接金融中心の金融システムは不安定性を内在するため、銀行部門の不良債権処理の促進や金融監督体制の整備等とともに、情報開示などを通じて資本市場を整備し、直接金融を強化することも重要となる。Cについては、規制規則制定や司法制度の予測可能性や財産安全・汚職排除の経済成長への寄与は大きい。会社法、破産法などの法制度を整備し、それらの確実な実施体制を確立することが求められている。
第4節 円高と原油価格上昇の日本経済への影響
1. 円高の日本経済への影響
日本経済は九八年夏以降、三割近い円高に見舞われた。為替変動は様々な要因に左右されるが、今回の円高に先行して経常収支黒字の蓄積が進んでいたことは、九五年の円高時と共通している。九九年には日本の経常収支黒字は減少傾向となっている。
円高進行局面で、輸出企業の収益は悪影響を受ける。しかしながら、長期的な円高傾向の中で、輸出企業は海外生産比率を高めるなどの対策を講じ、対応力を高めてきた。ただし、今回の円高の価格転嫁は過去に比べ進んでおらず、懸念材料となっている。
なお、近年、アジア通貨・経済危機やユーロ導入を背景に議論が高まっている円の国際化の促進は、企業の為替リスク低減のためにも有益であろう。
2. 原油価格上昇の日本経済への影響
原油価格は九九年初め以降、二倍以上に上昇した。原油価格上昇の国内価格への影響は、湾岸危機時以降低下しているが、その背景には、@省エネルギーやエネルギー源の多様化、産業構造の変化などの経済構造の変化、A九六年以降のガソリン輸入の自由化という規制改革がある。
第2部 重層的な通商政策の推進に向けて
近年、経済のグローバル化は深化拡大を見せている。情報化や途上国の役割の増大、NGOの活動の活発化などの新たな動きは、世界各地の経済変化を緊密に結びつけ、かつその変化を加速化している。こうしたグローバル時代の国際経済システムに求められるのは、多様な経済の実態への迅速で柔軟な対応力であろう。必ずしも予見しえない多面的変化への適応には、実験的試みや様々な経験からの学習を許容し、促進するメカニズムが必要とされる。
世界の各地域統合の深化拡大や地域統合同士の連携の動きは、変化していくグローバル経済への各国の対応の努力の現れといえる。我が国の通商政策にも、これまでにも増して重層的視点が必要とされよう。世界貿易機関(WTO)を中心とした多角的貿易体制の強化が、我が国の政策の基本であり、その上で、多国間での貿易投資の自由化や国際ルール作り(マルチラテラル)、アジア太平洋経済協力(APEC)をはじめとする地域協力(リージョナリズム)、米国、欧州や東アジアなど各国と日本との二国間通商関係(バイラテラル)などを適切に組み合わせ、グローバル経済の変化のスピードと多様性に対応した国際経済システムを構築していくことが求められる。
第2章 経済のグローバル化に対応した貿易投資の自由化の枠組み
第1節 包括性を求めるグローバル時代の自由化
1. 経済のグローバル化とWTOにおける新たなルール形成
(1) 経済のグローバル化の深化
九〇年代に入り、経済のグローバル化は、一層深化・加速化した。国際的取引は、財の貿易からサービス貿易、さらには直接投資、資本取引へと拡大した。さらに近年ではインターネットの急速な拡大とあいまって、情報・技術の地球規模での流通が活発化している。企業連携は急速に国境を越え、また、地球規模の市場展開を視野に入れたダイナミックなものとなっている。そして、企業間の競争の地球規模への広がりのみならず、様々な制度間でも国境を越えた共鳴現象が強まっている。
このような経済のグローバル化において、途上国が大きな役割を占めてきたことが注目される。途上国は、投資・貿易の依存を高めながら経済を拡大させ、今や経済のグローバル化は途上国抜きでは語れなくなってきている。
(2) 貿易投資自由化の進展
累次のラウンド交渉を通じ、戦前の保護主義への反省による自由化への取り組みは、世界貿易を着実に拡大させた。また、経済グローバル化の多様化とともに、自由化の対象範囲も広がっていった。こうした経済のグローバル化に対応したより広範なルール作りが求められているが、WTOシアトル閣僚会議では合意が得られなかった。
2. WTOにおける貿易投資自由化の着実な前進
―包括的アプローチとアンチダンピング措置濫用の防止
(1) 貿易投資自由化の経済的利益の分析とその意義
財・サービス貿易及び投資の自由化が世界全体にもたらす経済的利益は極めて大きい。通商産業省の実施した経済モデルによる試算によれば、@鉱工業関税の引下げは、特に途上国に大きな経済的利益をもたらす。関税の引下げによって、途上国は繊維や機械など、比較優位財に特化を強め、経済の効率化が可能となる。A投資の自由化は、先進国から途上国への技術移転を通じて途上国の経済成長に大きく寄与する。Bサービス貿易の自由化は、先進国・途上国の双方に大きな経済的利益をもたらす。また、サービス経済化は貿易自由化の利益を一層増加させる(第1表参照)。
各自由化の分野によって先進国と途上国の経済的利益の配分が異なる可能性は、包括的な自由化アプローチが重要であることを示唆している。特に、途上国の役割の拡大をかんがみれば、その一層の参加を促す自由化の進め方が求められる。
(2) 貿易救済措置の経済的分析
アンチダンピング(AD)措置等の貿易救済措置の濫用は、自由化の成果を逆行させる危険性がある。ADの発動件数は、ここ数年急速に増加している。途上国による発動が拡大するとともに、対抗措置的な発動による悪循環に陥っていることが懸念される。
AD措置は、発動国側に大きな経済的コストをもたらすことが経済分析によって示されており、既に調整段階で被課税国側の輸出を抑制する効果が認められ、ダンピングの定義が効率性を阻害する可能性もある。AD措置の濫用防止に向けた冷静な分析に基づく取り組みが必要である。
第2節 貿易自由化と市民社会
経済のグローバル化を背景に国際的NGOの役割が重視されて、九〇年代にその数は急増した。多くのNGOは政府に専門的知識などの面で貢献しており、我が国でも活動範囲が広がっている。
シアトルWTO閣僚会議にはNGOが活発に活動したが、その範囲は環境や労働を含む多種多様な分野に及んでいた。
1. 貿易と環境
貿易と環境をめぐる議論は、九二年リオ地球サミットを始め、様々な国際フォーラムで行われてきた。貿易が環境に与える影響は多様であるが、直接的影響は相対的に小さいことが実証されている。また、貿易自由化の環境に与える影響評価は定性的なものが多い。九四年のOECD報告を含め、多様な方法論が提示されているが、厳密かつ定量的な素材の提供が必要である。
WTO諸協定と多国間環境協定の関係については、今後とも貿易制限措置の扱いの検討が必要である。また、環境問題は貿易措置のみでは解決されないことが多く、環境コストを内部化する経済的手段の活用が有益なことが多い。
持続可能な開発を実現していくには、環境政策と同時に、多角的自由貿易体制の維持・強化を図る必要がある。
2. 貿易と労働基準
貿易と労働基準の議論では、人権保護と保護主義が混在している。シンガポールWTO閣僚会議では、ILOが労働基準の促進を行い、WTOと既存の協力を継続するとしている。低賃金に基づく輸出は、途上国の経済発展に不可欠である。低い労働基準が途上国の輸出競争力を有利にしているかという点については、OECDは有意の関係はないと実証し、経済発展が労働基準の向上を可能にすると示唆した。労働基準は各国がそれぞれ実現に向けて努力すべきであり、貿易制限措置を濫用すべきでない。
3. 貿易自由化と市民社会のかかわり
WTO新ラウンドを含め政策決定プロセスの情報公開、透明性の向上は重要である。また、NGOの果たす役割は今後とも重要であり、市民社会との健全な関係の構築により適切な政策が可能となる。
第3章 地域統合の拡大と深化―相互依存の強まるアジア経済と日本
第1節 相互に依存して回復したアジアと日本経済
九七年七月にタイに端を発したアジア通貨・経済危機以降、低迷を続けていた東アジアの景気も、九八年末には総じて底入れし、九九年には回復基調に入った。他方、九八年にはマイナス成長を記録した日本の景気は、九九年には緩やかながら改善が続いた。こうした双方の経済回復に向けた動きの中で、日本と東アジアの貿易関係は比較的早い立ち直りを見せ、その後の回復も顕著となっている。そして、この背景には、国際分業を通じた日本と東アジアの相互依存関係の深化がある。
1. 日本からの輸出は東アジア回復に明確に連動
アジア向けの日本の輸出は、他地域に比べ迅速に回復した。東アジアの景気回復と通貨価値の回復は、日本からの輸出に追い風となり、東アジアの生産回復と日本の資本財・部品輸出は密接に連動した。このように、日本・東アジア間に形成された国際分業は、日本の景気回復に好影響を与えた。
2. 日本経済の東アジアへの牽引効果
日本の景気回復に伴い、東アジアからの輸入は他地域に先駆けて回復した。家電などの耐久消費財や工業用原料の東アジアからの輸入も増加に転じた。特に、情報関連部品等が回復を牽引した役割は大きい。また、ASEAN4からの輸入増加は、同地域への直接投資の効果に下支えされており、東アジアからの輸入の約三〇%は、日系企業の逆輸入が占める。このように、日本・東アジアの貿易相互依存は景気回復を加速化した。
第2節 アジア諸国における日系企業の現状と課題
1. 粘り強さを見せたアジア諸国の日系企業
アジア通貨・経済危機までは日本の対東アジア直接投資は高い伸びを示したが、危機は直接投資を減退させた。しかしこの間、既に現地に投資した日系企業はほとんど撤退せず、雇用面でも大きな縮小を行わず経済回復に貢献した。
2. 電気機械と輸送機械の両分野における日系企業の対応
内需指向型の輸送機械分野の日系企業は売り上げが大幅に落ち込んだが、輸出指向型の電気機械分野への打撃は小さかった。輸送機械分野を中心に、内需から輸出へのシフト、現地調達率の引上げなどによる努力が続いている。
3. 拡大するアジア向け企業合併・買収
アジア通貨・経済危機後、国境を越えた企業合併・買収が直接投資を牽引している。欧米企業は基礎素材や金融・通信・流通への企業合併・買収を積極化しており、日本企業も守りの姿勢からの転換を迫られている。
4. 迫られる経営スタイルの現地化
欧米企業の東アジア事業では、現地への権限委譲が日本企業よりも格段に進んでいる。多様な東アジアへの展開には経営の現地化が課題となる。
第3節 地域統合の深化に向けて
1. 地域統合の動向と経済的評価ー動態的効果への着目
九〇年代に入って、地域統合形成の動きは世界的に活発化した。地域統合の経済効果は様々であるが、静態的効果と動態的効果に二分される(第2表参照)。さらに、地域統合による直接投資の促進や政策革新の効果も現実には重要である。
実際の経済効果は個々の組合せであり、実証的な問題である。過去の経済的分析によれば、様々な地域統合の域外へのマイナス効果はあったとしても小さかった。最近の分析は、市場拡大や競争促進などの動態的効果が静態的効果よりも大きいことを示しており、所得水準や産業構造の類似した国との地域統合の利益の検討において有益であると考えられる。
2. 地域統合先行事例の進展とその評価ー統合の深化と連携拡大
(1) 欧州連合(EU)
欧州連合(EU)の域内輸出比率は五八年以降持続的に上昇し、サービス規制改革・通貨など統合の深化・拡大が進んでいる。過去の経済効果の分析によれば、域内の経済成長への貢献は大きいと試算されている。
(2) 北米自由貿易協定(NAFTA)
サービス・投資など包括的な分野を対象とした北米自由貿易協定(NAFTA)の域内輸出も、九八年には五〇%を超えた。過去の経済効果の分析によれば、同協定は米国やメキシコ経済に好影響を与えたと評価されている。
(3) 南米南部共同市場(メルコスール、Mercosur)
南米メルコスールでは、統合後、域内輸出比率が三倍以上となった。関税同盟のみならずサービスや競争政策など深化した統合を目指し、同地域への直接投資を強く誘引している。
(4) 地域統合間の連携―新たな動き
最近では、地域統合間の連携など地域統合を超えた動きも活発化している。
3. 日本をめぐる地域統合の展望
(1) 市場先行型のアジアの地域統合
東アジアの地域統合は、市場を通じた経済的相互依存関係の深化が先行した。
@ アジア太平洋経済協力会議(APEC)
アジア太平洋経済協力会議(APEC)は八九年に発足し、開かれた地域主義を推進している。域内貿易投資比率は高く、ビジョンから行動の段階に入っている。
A 東南アジア諸国連合(ASEAN)及びAS EAN自由貿易地域(AFTA)
東南アジア諸国連合(ASEAN)はシンガポールをハブとして貿易が発展してきた。九二年にはASEAN自由貿易地域(AFTA)を設立し、二〇〇二年に自由化を完了することを合意した。
(2) 日本をめぐる投資協定・自由貿易協定の検討
@ 日韓投資協定・日韓自由貿易協定
日韓経済関係が大きく前進する中で、自由貿易協定についての民間レベルの研究が両国において進められている。ジェトロ―アジア研究所(日本)と韓国国際経済政策研究院(KIEP、韓国)がそれぞれ二〇〇〇年前半に報告書を取りまとめる予定である。
A 日シンガポール自由貿易協定
日シンガポール政府間での合意に基づき、二〇〇〇年三月より産学官の専門家による共同研究が行われている。年内を目途に交渉の可否について一定の方向性を得ることを目的として議論を行っている。
B アジア地域以外との二国間協定
アジア地域以外の国との間でも、民間レベルでの自由貿易協定の研究が行われている(メキシコ、チリ)。
(3) 地域統合の進展に向けて
日本をめぐる地域統合は経済実態と適合し、他地域の進展や経済的分析に照らしても経済的に有益であり、多角的貿易体制の補完として位置づけるべきである。
第3部 グローバル経済における日本の針路
第4章 日本の産業競争力の現状と課題
第1節 貿易構造の変化から見た製造業の業種別競争力への動向
1. 日本・米国・東アジアの三極間の貿易構造の変化から見た日本の産業競争力
この十年間、日・米・東アジア三極間の貿易は、双方向で大きく拡大した(第1図参照)。世界輸出に占めるシェアは、最近二十年間を通じて米国が日本を上回り、近年その差は拡大している。米国の輸出数量の伸びの長期持続性は、輸出ベースの広さや資源移動の円滑さを示唆している。
日米とも二十年間で産業構造の転換が進展している。輸出の特化度と高価格性を日米間、日本・東アジア間でみると、日本は自動車では優位性を維持し、コンピュータでは棲み分け、半導体等では優位性を低下させた。
2. 厳しい国際競争に挑む日本の製造業の現状と課題
三極間の競争力・貿易構造の変化を生じさせるに至った日本の製造業の業種ごとの産業変化を掘り下げてみたい。自動車では日本が米国市場で需要の増えた高級車を輸出していることが優位性の背景にある。コンピュータでは日本は高級品を米国に輸出し、普及品を東アジアから輸入する棲み分けが進んだ。半導体等電子部品では米国のように技術集約品に特化できず、東アジアからは追い上げられている。今後の発展が期待されるバイオ産業においても日米間の研究開発投資の格差は歴然としているなど、日本の製造業が直面する国際競争は一層厳しく、リスクの大きな挑戦を迫られている。
第2節 サービス部門の規制改革、イノベーション及び生産性
1. 日米生産性比較から見たサービス産業部門の効率性
製造業の国際競争環境が厳しくなっている一方で、非製造業の生産性向上は九〇年代伸び悩んだ。日米の全要素生産性の水準を九五年のデータで比較すると、非製造業については全般的に米国よりも低い水準であった(第2図参照)。
2. サービス産業部門の規制改革、イノベーションと生産性
米国のサービス産業の生産性の高さは、規制改革による市場競争の効果が大きい。こうした効果は価格低下もあるが、様々なイノベーションにもよっている。
(1) 電力分野における規制改革とイノベーション
電力の規制改革は発電部門の自由化に始まり、利用者が電力供給元を選択する小売市場の自由化についても九〇年代前半から開始された。
米国では七八年改革以降、独立系発電事業者の参入が進み、競争の結果、産業用電力料金は低下してきている。イギリスでは独占体の民営化の後、九九年には小売自由化も実現された。料金が低下し、新規参入、供給事業者の切り替えも進み、ガスとの一括販売という新しいサービスも導入されている。
こうした中で、プールシステムは適正な料金形成のための重要な手段であるが、今後イギリスや北欧などの事例を参考にしながら、実施上の課題を解決していくことが重要である。また、再生可能エネルギーの商品化(「グリーン電力」)には、適切な認証プログラムが有効である。
(2) 電気通信分野における規制改革とイノベーション
八〇年代以降、各国で電気通信サービスに競争を導入する改革が行われてきた。
米国では、長距離通信での実質的自由化が先行し、八四年のAT&T分割を経て、九六年通信法により本格的競争の時代に入った。AT&T分割以降競争の活発化した長距離市場では、料金が低下した一方、ベル系地域会社の地域別独占が続いた地域市場では、料金の低下は見られなかった。売上げシェアで見ても長距離市場での競争は年々強まっている。さらに、低料金を掲げるインターネット電話の登場も競争促進材料である。今後は地域市場へのより一層の競争導入が必要であり、九六年法の有効な実施や、CATV網を利用した新規参入等が課題となっている。
(3) 航空輸送分野における規制改革とイノベーション
米国では、国内航空の参入、価格面での規制撤廃などの改革が、七〇年代後半から世界に先駆けて実施された。競争の活発化は運賃低下と利用客の拡大をもたらし、企業はコンピュータ予約、多頻度利用促進プログラム、ハブアンドスポークなどの革新的な事業手法を相次いで使い始め、消費者へのサービス向上に努めた。
規制改革後は市場集中度が上昇し、規模の経済性は有利化している。こうした中で大手企業の市場支配力の濫用事例が見られ、規制・競争当局は、独禁法などにより競争の一層の促進を図っている。
(4) 金融サービス分野における規制改革とイノベーション
米国の金融イノベーション導入は世界をリードしている。その背景には、米国金融機関による戦略的・持続的な情報投資がある。情報投資は抜本的なコスト削減に寄与し、銀行POS等、新分野への投資も進んでいる。
一方、金利自由化の過程では、規制改革とイノベーションの相乗作用が見られた。銀証分離が原則の法規制の下で、銀行は新規証券業務を拡大したが、監督当局、法廷の場での事後的チェック体制の下で、新たな業務を企画し得た点が重要であった。また、米国ではインターネットによる新たな金融サービスが活発化しており、今後日本市場への影響が注目される。
3. 今後とも続く制度と市場の相乗的改革
米国での事例は、規制制度と企業活動の相乗的な革新促進効果を示しており、こうした効果が生産性の上昇に寄与した。競争が促進された事業分野での成果は、他の分野に比べ成果が明確であった。今後ともこうした過程による生産性の上昇は持続すると考えられる。サービス産業の効率化は、サービス経済化、日本市場の魅力性、サービス貿易の自由化などの面からも重要であり、経済構造改革や規制改革を粘り強く進める必要がある。
第5章 日本経済活性化の機会としてのグローバル経済
日本経済の活性化の上では、グローバル経済を受け身で捉えるのではなく、むしろ新たな発展の好機と捉える視点も重要である。最近増加している対日投資は、外資系企業の持つ優れたノウハウや技術、経営手法を日本経済に持ち込み、日本の企業経営を改善する契機となりうる。また、諸外国で行われている様々な制度改革の経験は、我が国の改革努力に貴重な刺激を与え得る。こうしたグローバル経済からの受益は、先行者である海外事例の模写といった一方的なキャッチアップではなく、我が国経済の発展・成熟化に伴い、より対等な立場からの相互啓発的な過程になってきている。学び、学ばれる国際的に開かれた改革姿勢が企業にも国にも求められている。
第1節 対日投資の日本経済への貢献
1. 過去最高額を記録した日本の対内直接投資額
日本への対内直接投資は九〇年代後半に増加し、九九年には過去最高となった。最近の特色は企業合併・買収(M&A)の増加であり、外資の積極的な経営参加が注目される。
2. 日本企業による外国資本の導入
外資系企業は一般に高収益を上げており、独自の技術や経営ノウハウにより、日本経済の活性化に貢献している。また、企業のグローバル戦略、効率化、経営の透明化・株主重視型への転換などの点でも有益である。
3. 対日投資の促進に資する環境整備
我が国の投資環境は会社法や会計基準を含め整備が進んでおり、外資系企業からは、その評価と一層の改善要望が示されている(第3図参照)。日本政府は対日投資の歓迎を繰り返し明確にしている。
第2節 国際制度間競争と改革の動き―医療・教育制度の事例
経済のグローバル化に伴い、国際制度間競争ともいえる国家間の制度改革の動きが強まってきている。国際的な競争力のある様々な経済的・社会的ルールの整備は、グローバル経済における日本経済の活性化にとって必須の課題である。
こうした国際制度間競争が強まる中で、医療や教育といった、従来国民生活に身近で公的主体の果たす役割が大きかった分野においても、効率化を進め、利用者の選択肢を広げる動きが近年顕著であり、世界各国において、各国の事情を踏まえた各国独自の様々な改革の試みが進行している。こうした改革努力の同時期化や共鳴化現象は、経済グローバル化の現れの一つであり、その底流には、経済活動の基盤をなす公的分野の成果・効率性のいかんが、今後の経済動向全般に大きな影響を与えるという認識があると考えられる。
また、経済のグローバル化や情報化に伴い、各国の改革の経験と評価を、自国の改革において活用することが重要となってきている。
1. 海外の医療サービス改革の評価と日本への意義
(1) 米国・イギリスにおける医療サービスへの競争導入
米国の医療サービス改革は、個人と医療機関を仲介するサービス主体HMO(Health Maintenance Organization)等が主導し、コスト削減に取り組んだ。一方、イギリスでは九〇年改革において、従来の国民健康サービス(National Health Service)制度による公的な医療サービスに、競争要素の導入が試行された。
(2) サービス内容の透明化と評価体制の確立
医療サービスへの競争原理の導入に当たっては、利用者にとっての情報の非対称性を補完する制度的手当が必要となる。米国、イギリスでは、医療技術の標準化が進むとともに、医療機関の第三者機関による評価とその情報公開が進んだ。
(3) 改革と表裏一体で進んだ医療情報化
こうした改革はカルテ等の医療情報の電子化と表裏一体で進み、効率的な医療サービスの供給に大きく寄与した。
(4) 海外医療改革の残された課題
改革によりコスト削減は進んだが、個人の選択幅が制約され、サービスの質の改善には必ずしもつながらなかった。また、米国の国民皆保険制度の欠如など未解決の問題もある。
(5) 日本の医療サービス改革への意義
我が国の医療サービスは、病床数については充実しているが、人材不足の問題がある。また、高齢化社会に向けて、効率的なサービスの供給の実施が重要である。こうした課題に対応していく上で、海外における医療サービス改革の経験と評価を活用することは不可欠である。
2. 海外の教育サービス改革の評価と日本への意義
(1) 米国・イギリスにおける教育分野での競争促進とその枠組み
米国・イギリスの大学では、第三者機関による評価と情報公開が行われ、質の向上に向けた競争が促進されている。
(2) 教育の情報化
情報化技術の進展は幅広い遠隔教育プログラムの提供を可能としており、国境を越えたサービスの利用や、社会人の学習ニーズに応える手段としても遠隔教育の役割が拡大する可能性は高い。
(3) 選択幅の拡大と学校の説明責任の強化を目指す多様な試み
米国では、初等・中等教育において、教育を受ける選択幅を拡げ、学校の説明責任を強化する様々な地域的試みが見られる。
(4) 日本の教育サービス改革への意義
日本の教育については、英語能力や情報化等の点で課題が指摘されており、教育改革国民会議も発足したところである。こうした課題に対応していく上で、海外における教育サービス改革の経験と評価を活用することは不可欠といえる。
第3節 グローバル経済に対応する司法制度改革
1. 司法制度改革の経済的意義
経済構造改革などによって日本経済が現在目指している方向の下では、司法制度に期待される役割は大きく、法律サービスは日本経済の競争力の基盤としても重要である。司法の機能を社会のニーズに応え得るように改革するとともに、その充実・強化を図っていくとの観点から、司法制度改革の検討が内閣によって開始されている。
2. 良質で豊富な法律サービスの供給
我が国の法律サービスは、諸外国と比べ量的な不足が著しい。その要因としては、司法試験の厳しい運用、広い業務独占やその他の規制による利用者の選択幅の制限などが挙げられる。法曹人口の拡大と競争原理の導入は、利用者のニーズに応えたサービスをもたらすといえる。
3. 法律サービスの透明性・アクセス
米国等では七〇年代末以降、法律サービスへの情報アクセスの改善が進んだ。広告解禁の米国判例(ベイツ事件)以降、虚偽・誤解を招くような広告でない限り、弁護士の広告はほぼ自由化されている。
また、米国では判例情報をオンラインや電話で幅広く利用・検索することが可能であり、民間サービスも充実している。我が国でも特許審決例は全件が電子的にアクセス可能となり、利便性が高い(特許庁は「特許電子図書館(IPDL)として二〇〇〇年三月から一般に無料公開している)。
弁護士報酬、訴訟費用負担、訴訟提起手数料などの面で、我が国の訴訟手続きの利用コストは高くなっている。米国では弁護士報酬自由化の米国判例(ゴールドファーブ事件)以降、弁護士報酬は低下したとされ、他地域の弁護士会の報酬規定などの反競争的行為を禁止する判決もその後出されている。
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消費者物価指数の動向
◇四月の東京都区部消費者物価指数の動向
一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇一・一となり、前月比は〇・二%の上昇。前年同月比は一月一・〇%の下落、二月〇・八%の下落、三月〇・七%の下落と推移した後、四月は〇・九%の下落となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇一・三となり、前月比は〇・二%の上昇。前年同月比は一月〇・五%の下落、二月〇・四%の下落、三月〇・四%の下落と推移した後、四月は〇・五%の下落となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇〇・四となり、前月に比べ〇・一%の下落。
生鮮魚介は一・七%の上昇。
<値上がり> いか、えびなど
<値下がり> あじ、まぐろなど
生鮮野菜は三・二%の下落。
<値上がり> ばれいしょ、にんじんなど
<値下がり> レタス、きゅうりなど
生鮮果物は一・三%の上昇。
<値上がり> りんご(ふじ)、キウイフルーツなど
<値下がり> いちご、なつみかんなど
(2) 光熱・水道は一〇一・五となり、前月に比べ〇・六%の上昇。
電気・ガス代は〇・九%の上昇。
<値上がり> 都市ガス代など
(3) 被服及び履物は一〇三・八となり、前月に比べ三・四%の上昇。
衣料は四・一%の上昇。
<値上がり> 背広服(夏物)など
(4) 保健医療は一一三・一となり、前月に比べ〇・七%の上昇。
保健医療サービスは一・二%の上昇。
<値上がり> 入院費(分娩費・国立)など
(5) 交通・通信は九九・二となり、前月に比べ〇・六%の下落。
通信は二・六%の下落。
<値下がり> 通話料
(6) 教育は一〇八・八となり、前月に比べ〇・九%の上昇。
授業料等は一・一%の上昇。
<値上がり> 私立大学授業料など
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
(特になし)
○下落した主な項目
生鮮野菜(一四・四%下落)、外食(一・五%下落)、生鮮魚介(三・七%下落)、通信(二・八%下落)
(注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
季節調整済指数をみると、総合指数は一〇〇・八となり、前月に比べ〇・三%の下落となった。
また、生鮮食品を除く総合指数は一〇一・二となり、前月に比べ〇・二%の下落となった。
◇三月の全国消費者物価指数の動向
一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇一・五となり、前月比は〇・二%の上昇。前年同月比は十二月一・一%の下落、一月〇・九%の下落、二月〇・六%の下落と推移した後、三月は〇・五%の下落となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇一・七となり、前月比は〇・一%の上昇。前年同月比は十二月〇・一%の下落、一月〇・三%の下落、二月〇・一%の下落と推移した後、三月は〇・三%の下落となった。
二 前月からの動き
(1) 食料は一〇一・二となり、前月に比べ〇・一%の上昇。
生鮮魚介は〇・七%の下落。
<値上がり> いか、かれいなど
<値下がり> まぐろ、えびなど
生鮮野菜は六・五%の上昇。
<値上がり> キャベツ、だいこんなど
<値下がり> きゅうり、ピーマンなど
生鮮果物は三・〇%の上昇。
<値上がり> りんご(ふじ)、みかんなど
<値下がり> いちご、オレンジなど
外食は一・三%の下落。
<値下がり> ハンバーガーなど
(2) 家具・家事用品は九二・二となり、前月に比べ〇・五%の下落。
家庭用耐久財は一・〇%の下落。
<値下がり> ルームエアコンなど
(3) 被服及び履物は一〇一・六となり、前月に比べ三・一%の上昇。
衣料は五・六%の上昇。
<値上がり> 婦人ブレザーなど
(4) 交通・通信は九八・一となり、前月に比べ〇・二%の上昇。
交通は〇・五%の上昇。
<値上がり> 航空運賃など
(5) 教養娯楽は九九・一となり、前月に比べ〇・二%の上昇。
教養娯楽用品は〇・七%の上昇。
<値上がり> ペットフード(ドッグフード)、切り花(バラ)など
三 前年同月との比較
○上昇した主な項目
自動車等関係費(一・五%上昇)、家賃(〇・四%上昇)、授業料等(一・七%上昇)
○下落した主な項目
生鮮果物(九・七%下落)、外食(一・一%下落)、家庭用耐久財(五・五%下落)、生鮮魚介(二・一%下落)
(注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
季節調整済指数をみると、総合指数は一〇一・八となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。
また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・〇となり、前月に比べ〇・二%の下落となった。
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◇就業状態別の人口
平成十二年三月末の就業状態別人口をみると、就業者は六千三百四十五万人、完全失業者は三百四十九万人、非労働力人口は四千百十三万人で、前年同月に比べて、それぞれ三十九万人(〇・六%)減、十万人(二・九%)増、八十五万人(二・一%)増となっている。
◇就業者
(1) 就業者
就業者数は六千三百四十五万人で、前年同月に比べ三十九万人(〇・六%)の減少となっている。男女別にみると、男性は三千七百七十九万人、女性は二千五百六十六万人で、前年同月と比べると、男性は十五万人(〇・四%)減、女性は二十四万人(〇・九%)減となっている。
(2) 従業上の地位
就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千二百七十万人、自営業主・家族従業者は一千五十四万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は二十一万人(〇・四%)減、自営業主・家族従業者は十九万人(一・八%)減となっている。
○非農林業雇用者…五千二百三十七万人で、十九万人(〇・四%)減
○常 雇…四千六百三万人で、二十四万人(〇・五%)減、二十七か月連続の減少
○臨時雇…五百十八万人で、十五万人(三・〇%)増、平成八年九月以降、増加が継続
○日 雇…百十六万人で、十万人(七・九%)減
(3) 産 業
主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…二百六十二万人で、二十二万人(七・七%)減
○建設業…六百六十七万人で、十四万人(二・一%)増、四か月ぶりの増加
○製造業…一千二百八十七万人で、二十一万人(一・六%)減
○運輸・通信業…四百十六万人で、一万人(〇・二%)減
○卸売・小売業、飲食店…一千四百四十万人で、三十万人(二・〇%)減、五か月ぶりの減少
○サービス業…一千六百九十二万人で、九万人(〇・五%)増
また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百四十八万人で、五万人(〇・九%)増
○製造業…一千百六十五万人で、二十八万人(二・三%)減
○運輸・通信業…三百九十二万人で、三万人(〇・八%)減
○卸売・小売業、飲食店…一千百六十二万人で、二十三万人(一・九%)減
○サービス業…一千四百五十四万人で、二十五万人(一・七%)増
(4) 従業者階級
企業の従業者階級別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千六百九十三万人で、五十三万人(三・〇%)減、六か月連続で減少
○三十〜四百九十九人規模…一千七百十一万人で、二十五万人(一・四%)減、十か月連続で減少
○五百人以上規模…一千二百六十三万人で、五十一万人(四・二%)増、六か月連続で増加
(5) 就業時間
三月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千三百七十六万人で、二十八万人(二・〇%)減少、二か月連続の減少
・一〜三十時間未満…九百九十万人で、十五万人(一・五%)減少
○三十五時間以上…四千八百三十五万人で、十三万人(〇・三%)減少、十五か月連続の減少
また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四十三・四時間で、前年同月に比べ〇・二時間の増加となっている。
◇完全失業者
(1) 完全失業者数
完全失業者数は三百四十九万人で、前年同月に比べ十万人(二・九%)の増加となっている。男女別にみると、男性は二百十七万人、女性は百三十二万人となっている。前年同月に比べると、男性は十四万人(六・九%)の増加、女性は五万人(三・六%)の減少となっている。
また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非自発的な離職による者…百四万人で、二万人減少
○自発的な離職による者…百十八万人で、十一万人増加
○学卒未就職者…三十二万人で、二万人増加
○その他の者…八十二万人で、前年同月と同じ
(2) 完全失業率(季節調整値)
季節調整値でみた完全失業率は四・九%で、前月と同率となっている。男女別にみると、男性は五・二%、女性は四・六%で、前月に比べ男女ともに〇・一ポイントの上昇となっている。
(3) 完全失業率(原数値)
完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は五・二%で、前年同月に比べ〇・二ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は五・四%で、〇・三ポイントの上昇、女性は四・九%で、〇・一ポイントの低下となっている。
(4) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)
年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
[男]
○十五〜二十四歳…四十九万人(二万人増)、一二・五%(〇・八ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…五十三万人(八万人増)、五・八%(〇・八ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十三万人(同数)、三・〇%(同率)
○四十五〜五十四歳…三十三万人(一万人増)、三・五%(〇・一ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…四十八万人(同数)、七・一%(〇・一ポイント上昇)
・五十五〜五十九歳…二十万人(二万人増)、四・九%(〇・五ポイント上昇)
・六十〜六十四歳…二十九万人(一万人減)、一〇・八%(同率)
○六十五歳以上…十万人(一万人増)、三・三%(〇・三ポイント上昇)
[女]
○十五〜二十四歳…三十六万人(三万人減)、九・七%(〇・五ポイント低下)
○二十五〜三十四歳…三十八万人(一万人増)、六・五%(〇・一ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十一万人(一万人増)、四・二%(〇・三ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…二十二万人(二万人減)、三・三%(〇・三ポイント低下)
○五十五〜六十四歳…十三万人(二万人減)、三・二%(〇・四ポイント低下)
○六十五歳以上…2万人(同数)、一・二%(同率)
(5) 世帯主との続き柄別完全失業者数及び完全失業率(原数値)
世帯主との続き柄別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…九十四万人(二万人増)、三・五%(〇・一ポイント上昇)
○世帯主の配偶者…四十四万人(二万人減)、三・一%(〇・一ポイント低下)
○その他の家族…百六十四万人(十三万人増)、九・〇%(〇・七ポイント上昇)
○単身世帯…四十七万人(三万人減)、六・三%(〇・四ポイント低下)
(6) 地域別完全失業率
平成十二年一〜三月平均の地域別完全失業率及び対前年同期増減は、次のとおりとなっている。
北海道…六・五%(一・四ポイント上昇)
東 北…五・〇%(〇・四ポイント上昇)
南関東…五・〇%(〇・二ポイント低下)
北関東・甲信…四・〇%(〇・四ポイント上昇)
北 陸…四・〇%(同率)
東 海…四・〇%(〇・二ポイント上昇)
近 畿…五・九%(〇・五ポイント上昇)
中 国…三・八%(〇・五ポイント低下)
四 国…四・一%(同率)
九 州…五・七%(〇・五ポイント上昇)
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ナイター
日盛りの暑さを避けて夕方から行われる夜間試合(主に野球)は、ナイターと呼ばれますが、これは、典型的な和製英語です。英語ではナイト・ゲーム(night game)としかいいません。野球のナイターは、毎年四月ごろから十月ごろまでですが、俳句では夏の季語。榎本冬一郎の句「ナイターの投手最も照らされる」には、テレビ中継では味わえない臨場感が感じられるようです。
アメリカの大リーグで初めてナイト・ゲームが行われたのは、一九三五(昭和十)年。日本では一九四八(昭和二十三)年八月、横浜のゲーリック球場(現在の横浜スタジアム)での巨人対中日戦が、プロ野球初のナイターでした。後楽園球場(現在の東京ドーム)に夜間照明が完成したのは一九五〇(昭和二十五)年七月で「ナイター」という言葉はそのころから使われています。ホームランをホーマー(homer)というのも和製英語のように思われますが、これは本来の英語。「ナイター」という和製英語は、案外「ホーマー」がヒントになってできたのかもしれません。
(『広報通信』平成十二年七月号)
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月例経済報告(六月報告)
概 観
景気は、厳しい状況をなお脱していないが、緩やかな改善が続いている。各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響に加え、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが徐々に強まってきている。
需要面をみると、個人消費は、収入が下げ止まってきた中で、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、マンションなどは堅調であるが、全体ではおおむね横ばいとなっている。設備投資は、持ち直しの動きが明確になっている。公共投資は、第二次補正予算の効果もみられるが、高水準であった前年に比べれば低調な動きとなっている。輸出は、アジア向けを中心に、増加している。
在庫は、調整を終了し、生産は、緩やかな増加が続いている。
雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きがみられるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
企業収益は、大幅に改善しており、三月決算では含み損などを処理する動きが広がった。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。
公需により下支えされてきた我が国経済は、自律的回復に向けた動きが徐々に強まっているが、政府は、これを本格的な回復軌道に着実につなげていくとともに、二十一世紀の新たな発展基盤を築くため、大胆に日本経済の新生と構造改革に取り組む。
我が国経済
需要面をみると、個人消費は、収入が下げ止まってきた中で、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、マンションなどは堅調であるが、全体ではおおむね横ばいとなっている。設備投資は、持ち直しの動きが明確になっている。公共投資は、第二次補正予算の効果もみられるが、高水準であった前年に比べれば低調な動きとなっている。
十二年一〜三月期(速報)の実質国内総生産は、前期比二・四%増(年率一〇・〇%増)となり、うち内需寄与度は一・五%となった。
産業面をみると、在庫は、調整を終了し、生産は、緩やかな増加が続いている。企業収益は、大幅に改善しており、三月決算では、含み損などを処理する動きが広がった。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。企業倒産件数は、このところ増加している。
雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きがみられるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
輸出入は、対アジア輸出入を中心に、増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、基調としてはおおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、五月は上旬に百九円台まで下落したが、下旬は百六円台まで上昇した。五月末から六月上旬にかけては百八円台まで下落した後、百五円台まで上昇した。
物価の動向をみると、国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。また、消費者物価は、安定している。
最近の金融情勢をみると、短期金利は、五月から六月上旬にかけておおむね横ばいで推移した。長期金利は、五月から六月上旬にかけて横ばいで推移した。株式相場は、五月は下旬にかけて大幅に下落した後、六月上旬にかけてやや戻したが、月央には再度下落した。マネーサプライ(M2+CD)は、五月は前年同月比二・二%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。
海外経済
主要国の経済動向をみると、アメリカでは、一部に減速の兆しともとれる動きがあるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、九九年十〜十二月期前期比年率七・三%増の後、二〇〇〇年一〜三月期は同五・四%増(速報値)となった。個人消費は増加している。設備投資は大幅に増加している。住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は拡大している。連邦準備制度は、五月十六日に、公定歩合とフェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を〇・五%ポイントずつ引き上げ、それぞれ六・〇〇%、六・五〇%とし、今後の物価及び景気動向に対するリスク見通しをインフレ方向とした。五月の長期金利(十年物国債)は、上旬は上昇し、中旬にやや上下した後、低下した。月初と月末を比較すると上昇した。株価(ダウ平均)は、月前半に上下し、後半は下落した。月初と月末を比較すると、下落した。
西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ伸びが鈍化している。イギリスでは伸びが鈍化している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇が見られるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している。なお、欧州中央銀行は、六月八日、中期的な物価の安定に対する上振れリスクを抑制するために、政策金利(主要オペレート)を〇・五〇%ポイント引き上げ、四・二五%とした。
東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはこのところやや高まっている。物価は、下落している。貿易は、輸出入ともに大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。
国際金融市場の五月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、月前半はほぼ横ばいで推移したが、後半になって減価した。
国際商品市況の五月の動きをみると、CRB商品先物指数は、中旬から上昇基調で推移し、下旬にはほぼ二年ぶりとなる二二五ポイント台を記録した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から上昇基調で推移し、中旬に一時弱含む場面がみられたものの、月末にかけてはほぼ二か月半ぶりに三十ドル台を記録した。
1 国内需要
―設備投資は、持ち直しの動きが明確になっている―
実質国内総生産(平成二年基準、速報)の動向をみると、十一年十〜十二月期前期比一・六%減(年率六・四%減)の後、十二年一〜三月期は同二・四%増(同一〇・〇%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は一・五%となり、財貨・サービスの純輸出の寄与度は〇・九%となった。需要項目別にみると、民間最終消費支出は前期比一・八%増、民間企業設備投資は同四・二%増、民間住宅は同六・六%増となった。公的固定資本形成は前期比七・五%減、政府最終消費支出は同〇・八%増となった。また、財貨・サービスの輸出は前期比五・四%増、財貨・サービスの輸入は同〇・六%減となった。
個人消費は、収入が下げ止まってきた中で、おおむね横ばいの状態が続いている。
家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で三月四・三%減の後、四月(速報値)は一・三%増(季節調整済前月比五・九%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比三・六%増、勤労者以外の世帯では同二・七%減となった。形態別にみると、財、サービスとも増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比一・六%増、勤労者世帯では同三・八%増となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で三月三・九%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で三月三・三%減の後、四月(速報値)は三・四%減(季節調整済前月比〇・〇%)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で三月二・八%減の後、四月(速報値)一・七%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で三月二・八%減の後、四月五・二%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で五月(速報値)は三・六%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で四月は九・七%増となった。レジャー面を大手旅行業者十三社取扱金額でみると、四月は前年同月比で国内旅行が一・七%減、海外旅行は五・一%増となった。
賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模五人以上では前年同月比で三月〇・六%減の後、四月(速報)は一・〇%増(事業所規模三十人以上では同一・五%増)となり、うち所定外給与は、四月(速報)は同四・一%増(事業所規模三十人以上では同四・九%増)となった。実質賃金は、前年同月比で三月〇・一%増の後、四月(速報)は一・九%増(事業所規模三十人以上では同二・四%増)となった。
住宅建設は、マンションなどは堅調であるが、全体ではおおむね横ばいとなっている。新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で三月は二・三%増(前年同月比三・六%減)となった後、四月は〇・四%減(前年同月比〇・一%増)の十万三千戸(年率百二十四万戸)となった。四月の着工床面積(季節調整値)は、前月比二・一%減(前年同月比〇・六%減)となった。四月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比七・五%減(前年同月比一〇・三%減)、貸家は同八・一%増(同〇・九%減)、分譲住宅は同一三・四%増(同二三・八%増)となっている。
設備投資は、持ち直しの動きが明確になっている。
当庁「法人企業動向調査」(十二年三月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、季節調整済前期比で十一年十〜十二月期(実績)五・七%増(うち製造業三・二%増、非製造業五・九%増)の後、十二年一〜三月期(実績見込み)は三・〇%減(同一・三%減、同四・二%減)となっている。年度計画では、前年度比で十一年度(実績見込み)五・一%減(うち製造業九・四%減、非製造業二・八%減)の後、十二年度(計画)は四・七%減(同二・六%増、同八・三%減)となっている。
なお、十二年一〜三月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で三・三%増(うち製造業六・一%減、非製造業七・七%増)となった。
先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で三月は四・九%減(前年同月比六・七%増)の後、四月は一・一%減(同一三・四%増)となり、基調は持ち直しの動きが続いている。
なお、四〜六月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で一・〇%減(前年同期比一五・二%増)と見込まれている。
民間からの建設工事受注額(五十社、非住宅)をみると、一進一退で推移しており、三月は季節調整済前月比三六・八%増の後、四月は季節調整済前月比三七・六%減(前年同月比一一・七%増)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比二二・三%減(前年同月比三九・五%増)、非製造業は同三七・六%減(同五・九%増)となった。
公的需要関連指標をみると、公共投資は、第二次補正予算の効果もみられるが、高水準であった前年に比べれば低調な動きとなっている。
公共工事着工総工事費は、前年同月比で二月は一五・〇%減の後、三月は三・六%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で四月二八・五%減の後、五月は八・六%増となった。官公庁からの建設工事受注額(五十社)は、前年同月比で三月は一七・〇%減の後、四月は三九・三%減となった。
2 生産雇用
―雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きがみられるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい―
鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、調整を終了し、生産・出荷は、緩やかな増加が続いている。
鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で三月二・四%増の後、四月は、輸送機械、一般機械等が増加したものの、電気機械、化学等が減少したことから、〇・六%減となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で五月は電気機械、化学等により〇・四%増の後、六月は輸送機械、一般機械等により、〇・五%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で三月一・八%増の後、四月は、資本財、非耐久消費財等が減少したことから、〇・六%減となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で三月一・三%増の後、四月は、輸送機械、化学等が減少したものの、食料品・たばこ、石油・石炭製品等が増加したことから、〇・四%増となった。また、四月の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は一〇一・五と前月を一・五ポイント上回った。
主な業種について最近の動きをみると、輸送機械では、生産は四月は増加し、在庫は四月は減少した。一般機械では、生産は四月は増加し、在庫も四月は増加した。化学では、生産は四月は減少し、在庫も四月は減少した。
第三次産業の動向を通商産業省「第三次産業活動指数」(三月調査、季節調整値)でみると、前月比で二月一・六%減の後、三月(速報)は、サービス業、運輸・通信業等が増加した結果、同一・五%増となった。
雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きがみられるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、三月〇・五三倍の後、四月〇・五六倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、三月〇・九七倍の後、四月一・〇二倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、三月は前年同月比〇・四%減(前年同月差二十一万人減)の後、四月は同〇・四%減(同二十三万人減)となった。常用雇用(事業所規模五人以上)は、三月前年同月比〇・一%減(季節調整済前月比〇・一%減)の後、四月(速報)は同〇・四%減(同〇・四%減)となり(事業所規模三十人以上では前年同月比一・四%減)、産業別には製造業では同一・九%減となった。四月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差五万人減の三百二十七万人、完全失業率(同)は、三月四・九%の後、四月四・八%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模五人以上では三月前年同月比一四・五%増(季節調整済前月比三・八%増)の後、四月(速報)は同一三・一%増(同二・八%減)となっている(事業所規模三十人以上では前年同月比一四・九%増)。また、労働省「労働経済動向調査」(五月調査)によると、「残業規制」などの雇用調整を実施した事業所割合は、引き続き高い水準となっており、一〜三月期は前期の二六%から二五%になった。
企業の動向をみると、企業収益は、大幅に改善しており、三月決算では含み損などを処理する動きが広がった。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。
十二年一〜三月期の企業収益の動向を前記「法人企業統計季報」(全産業)でみると、売上高は前年同期比で二・六%増、経常利益は同三八・七%増となった。
大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(三月調査)でみると十二年一〜三月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」−「減少」)は、売上高は「増加」超に転じ、経常利益は「減少」超幅が縮小した。また、十二年一〜三月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」−「下降」)は「下降」超幅が若干拡大した。
また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(三月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」−「減少」)は十二年一〜三月期は「減少」超幅が縮小し、純益率D.I.(「上昇」−「低下」)は「低下」超幅が縮小した。業況判断D.I.(「好転」−「悪化」)は十二年一〜三月期は「悪化」超幅が縮小した。
企業倒産の状況をみると、このところ増加している。
銀行取引停止処分者件数は、四月は一千十七件で前年同月比二六・八%増となった。件数の業種別構成比を見ると、建設業(三三・六%)が最大のウエイトを占め、次いで製造業(一八・五%)、小売業(一六・九%)の順となった。
3 国際収支
―輸出は、アジア向けを中心に、増加―
輸出は、アジア向けを中心に、増加している。
通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で三月〇・九%減の後、四月は二・四%減(前年同月比一二・〇%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、一般機械、電気機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。
輸入は、アジアからの輸入を中心に、増加している。
通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で三月三・八%増の後、四月は七・〇%減(前年同月比四・七%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料等が増加した。同じく地域別にみると、中東、アジア等が増加した。
通関収支差(季節調整値)は、三月に九千三百六十七億円の黒字の後、四月は一兆一千三百五十三億円の黒字となった。
国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、基調としてはおおむね横ばいとなっている。
四月の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大し、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、九千五十五億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅が拡大したものの、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が拡大したため、その黒字幅は拡大し、一兆二千七百五十四億円となった。投資収支(原数値)は、四千七百六十七億円の黒字となり、資本収支(原数値)は、四千四百六十四億円の黒字となった。
五月末の外貨準備高は、前月比二十六億ドル増加して三千四百十一億ドルとなった。
外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、五月は上旬に百九円台まで下落したが、下旬は百六円台まで上昇した。五月末から六月上旬にかけては百八円台まで下落した後、百五円台まで上昇した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク十七時時点)は、五月は中旬にかけて一進一退で推移し、中旬は九十六円台まで上昇した。五月下旬から六月上旬にかけては百一円台まで下落した。
4 物価
―国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移―
国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。
五月の国内卸売物価は、非鉄金属(銅地金)等が上昇したものの、石油・石炭製品(燃料油)等が下落したことから、前月比〇・一%の下落(前年同月比〇・三%の上昇)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比一・三%の上昇(前年同月比七・六%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比一・〇%の上昇(前年同月比〇・八%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比〇・一%の上昇(前年同月比〇・六%の下落)となった。
企業向けサービス価格は、四月は前年同月比〇・七%の下落(前月比〇・二%の下落)となった。
商品市況(月末対比)は石油等は下落したものの、鋼材等の上昇により五月は上昇した。五月の動きを品目別にみると、灯油等は下落したものの、棒鋼等が上昇した。
消費者物価は、安定している。
全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で三月〇・三%の下落の後、四月は家賃の上昇幅の縮小等により〇・四%の下落(前月比〇・二%の上昇、季節調整済前月比〇・二%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で三月〇・五%の下落の後、四月は〇・八%の下落(前月比〇・二%の上昇、季節調整済前月比〇・三%の下落)となった。
東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で四月〇・五%の下落の後、五月(中旬速報値)は、個人サービスが保合いから上昇に転じたこと等により〇・四%の下落(前月比〇・二%の上昇、季節調整済前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で四月〇・九%の下落の後、五月(中旬速報値)は〇・九%の下落(前月比保合い、季節調整済前月比〇・二%の下落)となった。
5 金融財政
―株式相場は、五月は下旬にかけて大幅に下落した後、六月上旬にかけてやや戻したが、月央には再度下落―
最近の金融情勢をみると、短期金利は、五月から六月上旬にかけておおむね横ばいで推移した。長期金利は、五月から六月上旬にかけて横ばいで推移した。株式相場は、五月は下旬にかけて大幅に下落した後、六月上旬にかけてやや戻したが、月央には再度下落した。M2+CDは、五月は前年同月比二・二%増となった。
短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、五月から六月上旬にかけて横ばいで推移した。二、三か月物は、五月から六月上旬にかけておおむね横ばいで推移した。
公社債市場をみると、国債利回りは、五月から六月上旬にかけて横ばいで推移した。
国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、四月は前月比で短期は〇・〇九〇%ポイント上昇し、長期は〇・一三〇%ポイント上昇したことから、総合では〇・〇七五%ポイント上昇し一・七四八%となった。
マネーサプライをみると、M2+CD(月中平均残高)は、五月(速報)は前年同月比二・二%増となった。また、広義流動性は、五月(速報)は同三・一%増となった。
企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、五月(速報)は前年同月比四・七%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後二・二%減)となった。五月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなった。また、国内公募事業債の起債実績は五千九百億円(うち銀行起債分二千五百五十億円)となった。
「全国企業短期経済観測調査」(全国企業、三月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いているものの、金融機関の貸出態度は「厳しい」超幅が縮小しゼロとなった。特に、大企業だけでなく、中堅企業においても改善の動きがみられる。
以上のように、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。
株式市場をみると、東証株価指数(TOPIX)は、五月は下旬にかけて大幅に下落した後、六月上旬にかけてやや戻したが、月央には再度下落した。日経平均株価も同様の動きとなった。
6 海外経済
―アメリカ、ユーロ圏、利上げ―
主要国の経済動向をみると、アメリカでは、一部に減速の兆しともとれる動きがあるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、九九年十〜十二月期前期比年率七・三%増の後、二〇〇〇年一〜三月期は同五・四%増(速報値)となった。個人消費は増加している。設備投資は大幅に増加している。住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は四月前月差四一・四万人増の後、五月は同二三・一万人増と拡大しているものの、政府部門を除く民間非農業雇用者数は減少した(一一・六万人減)。失業率は五月四・一%となった。物価は総じて安定している。五月の消費者物価は前年同月比三・一%の上昇、五月の生産者物価(完成財総合)は同三・九%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は拡大している。連邦準備制度は、五月十六日に、公定歩合とフェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を〇・五%ポイントずつ引き上げ、それぞれ六・〇〇%、六・五〇%とし、今後の物価及び景気動向に対するリスク見通しをインフレ方向とした。五月の長期金利(十年物国債)は、上旬は上昇し、中旬にやや上下した後、低下した。月初と月末を比較すると上昇した。株価(ダウ平均)は、月前半に上下し、後半は下落した。月初と月末を比較すると、下落した。
西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。一〜三月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率二・七%増、フランス同二・六%増(速報値)、イギリスは同二・二%増(改訂値)となった。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ伸びが鈍化している。イギリスでは伸びが鈍化している(鉱工業生産は、ドイツ四月前月比一・五%増、フランス三月同〇・五%増、イギリス四月同〇・八%増)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ五月九・六%、フランス四月九・八%、イギリス五月三・九%)。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇が見られるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ五月前年同月比一・四%、フランス五月同一・五%、イギリス五月同三・一%)。なお、欧州中央銀行は、六月八日、中期的な物価の安定に対する上振れリスクを抑制するために、政策金利(主要オペレート)を〇・五〇%ポイント引き上げ、四・二五%とした。
東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはこのところやや高まっている。物価は、下落している。貿易は、輸出入ともに大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。
国際金融市場の五月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、月前半はほぼ横ばいで推移したが、後半になって減価した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(一九九〇年=一〇〇)をみると、五月三十一日現在一一二・二、四月末比〇・三%の減価となっている。内訳をみると、五月三十一日現在、対円では四月末比〇・四%減価、対ユーロでは同二・八%減価した。
国際商品市況の五月の動きをみると、CRB商品先物指数は、中旬から上昇基調で推移し、下旬にはほぼ二年ぶりとなる二二五ポイント台を記録した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から上昇基調で推移し、中旬に一時弱含む場面がみられたものの、月末にかけてはほぼ二か月半ぶりに三十ドル台を記録した。
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