官報資料版 平成16年1月14日




                  ▽警察白書のあらまし……………警 察 庁

                  ▽月例経済報告(十二月)………内 閣 府

                  ▽労働力調査(九月)……………総 務 省











警察白書のあらまし


組織犯罪との闘い


警 察 庁


第1章 組織犯罪との闘い

第1節 我が国における組織犯罪の現状

1 来日外国人犯罪の変質
 社会・経済のグローバリゼーションの進展に伴い、犯罪のグローバリゼーションともいうべき問題が発生している。なかでも国際組織犯罪(注1)の深刻化が進んでおり、我が国に流入した外国人が、我が国国内で犯罪グループを形成し、あるいは我が国の暴力団や外国に本拠を置く国際犯罪組織(注2)と連携をとるものがある。
 このような国際犯罪(注3)対策の問題は、平成六年のナポリ・サミット以降、頻繁にコミュニケ、議長声明等で取り上げられており、国際協議の場でも重要なテーマとなっている。
 (注1) 国際組織犯罪とは、各国間の協議の場等では、国・地域や手段を問わず国境を越えて組織的に行われる犯罪全般を指すことが多い。
 (注2) 国際犯罪組織とは、本白書では、国際犯罪を行う多数人の集合体のことをいい、外国に本拠を置く犯罪組織や不法滞在外国人によって構成された外国人犯罪グループ等がこれに当たる。
 (注3) 国際犯罪とは、外国人による犯罪、国民の外国における犯罪その他外国に係る犯罪をいう。
(1) 統計でみる来日外国人による犯罪
 外国人入国者数及び来日外国人(注1)検挙状況は、第1表第2表のとおりである。
 平成十四年中の来日外国人犯罪(刑法犯及び特別法犯)の検挙件数・人員は三万四千七百四十六件(前年比二五・二%増)、一万六千二百十二人(前年比一〇・六%増)で、ともに過去最多を記録した。
 (注1) 来日外国人とは、我が国にいる外国人から定着居住者(永住者等)、在日米軍関係者及び在留資格不明の者を除いたものをいう。
 また、十四年中の凶悪犯の検挙件数・人員はともに増加しているほか、来日外国人の共犯事件比率(注2)は、六一・五%と、その高まりが顕著であり、組織化の進展がうかがわれる。
 (注2) 共犯事件比率とは、刑法犯検挙件数のうち、共犯事件(二人以上の共犯者による事件をいう)の占める割合をいう。
 また、発生地域別に十年前と比べると、東京以外の他の地域では約五〇%以上増加しており、首都圏での集中発生に始まって全国に拡散を続けていることを示している。
 十四年中の来日外国人犯罪における国籍・地域別の状況をみると、中国(台湾、香港等を除く)が検挙件数、人員ともに際立って多い(一万二千六百六十七件(三六・五%)、六千四百八十七人(四〇・〇%))。
 十四年中の来日外国人の総検挙人員に占める不法滞在者の割合は五一・九%であった。
(2) 第一線からみた来日外国人犯罪の実態
 警察庁では、都道府県警察の第一線で来日外国人犯罪の捜査に携わる警察官に対してアンケート調査(注)を実施した(第3表第4表第5表参照)。
 (注) アンケート調査は、平成十五年三月、都道府県警察において来日外国人犯罪捜査に関係の深い部門(国際犯罪対策、銃器対策、薬物対策等)に所属する警部補以下の階級の警察官一千人に対し、犯罪捜査活動、情報収集活動等における経験等に基づき回答するよう依頼したものである。
 回答者に今後の来日外国人犯罪の防止又は捜査に必要なものはどのようなものが考えられるかについて、自由に回答を求めたところ、
 ・「捜査員の不足の解消」等の捜査体制の強化を求める声
 ・「留置場の増設」等の捜査関係施設や装備の増強等を求める声
 ・「入国管理局をはじめとする関係行政機関との連携強化」等、警察のみの力では、この問題の解決が難しいとの声
 ・「入管法違反に対する罰則の強化」等、思い切った制度改正により大量の事件処理を迅速的確にできるようにすることを求める声
等がみられた。
(3) 来日外国人等によって構成された犯罪組織
 ア 中国人犯罪組織
  留学生・就学生制度の充実等により来日経験を持つ帰国者が増加し、こうした者を中心に、「経済格差により一攫(かく)千金をねらうことができる」などの風評が立ち、また、不良中国人の間には「犯罪を犯しても取締りや量刑が軽い」などの風評が広がったことなどにより、資金獲得を目的に来日を目指す中国人が増加し、来日した中国人のうち一部の者が犯罪を犯し、それらが組織化したものとみられる。
  中国人の犯罪グループの構成をみると、上海市出身者(上海グループ)、福建省福清市、長楽市出身者(福建グループ)等、地縁を結合の中核としたものが一般的である。
  最近は、高度に組織化された犯罪組織になりつつあるものも現れてきており、一部の組織は、強い影響力を持つ首領の下、グループに分かれ、役割を分担して効率的に犯罪を敢行しているなどの状況がみられる。
 イ コロンビア人窃盗グループ
  コロンビア人窃盗グループには、祖国での貧困等を理由に正業を求めて来日する者や、「日本では泥棒で簡単に金を稼ぐことができる」、「日本では売春で祖国の数倍稼ぐことができる」などの風評から、そもそも売春、窃盗等の違法行為を敢行する目的で来日した者らが、相互に仲間を募り合いながら我が国国内で窃盗グループを形成する例や、コロンビアであらかじめ犯行の役割分担、成功時の利益配分等を打ち合わせた上、グループで入国する例等がみられる。
  窃盗グループの規模・構成は、概して、数人から十数人のメンバーが友人関係に基づくなどして、緩やかにつながっているものとみられる。
 ウ イラン人薬物密売組織
  イラン人薬物密売組織は、主として本国の出身地ごとに構成され、首領の下、電話の受付、薬物の保管・見張り、客引き等の役割を分担して、薬物密売を行っており、「薬物のコンビニ」とも言われるほど、覚せい剤、コカイン、大麻、MDMA、LSD等の多種多様の薬物を扱っている。密売は携帯電話を用いるなどして、客との間で取引場所や方法を指定して行われているほか、都市部では、街頭でイラン人密売人が通行人に公然と無差別に声をかけて行われている。
  イラン人薬物密売組織は、警察の取締りを逃れるため、薬物の隠匿場所や取引方法を巧妙化させている。また、その居住場所等の特定を困難とするため、日本人名義の居住場所や携帯電話を使用する事例がみられるほか、イラン人密売人同士の情報交換を活発に行い、検挙されても、薬物の入手先や組織実態等の供述を行わないことが多い。
(4) 海外に本拠を置く国際犯罪組織
 ア 「蛇頭」
  国際的な密航請負組織である「蛇頭(じゃとう)」は、営利を目的として、中国での密航者の勧誘、引率、搬送、船舶や偽造旅券の調達、我が国での密航者の受入れ、隠匿、搬送等を行うなど、国境を越えて暗躍し、世界各国の出入国管理を脅かす犯罪を組織的に敢行している。
 イ ロシア人犯罪組織
  ロシア人犯罪組織は、ソ連崩壊に伴う混乱や市場経済への移行の過程の中で、国内の様々な分野に浸透し、国外では薬物の取引等の非合法ビジネスを行っているといわれ、我が国に関係するロシア人犯罪組織の活動としては、カニをはじめとする海産物の密漁、密輸入、及び盗難車の密輸出が重要な資金源となっているとみられる。
 ウ 韓国人すりグループ
  来日韓国人すりグループは、二、三人から十人程度のすり常習者によって形成されており、各グループを統括する上位者の存在等はなく、基本的に各グループ単体で活動しているものとみられる。
 エ 香港三合会
  香港三合会(以下「三合会」という)とは、十七世紀に清朝の支配に抵抗するために生まれた政治的な団体が、その後、次第に変質して香港において売春、賭(と)博等を支配する犯罪組織になったものの総称である。資金獲得は、縄張内の風俗店等からのみかじめ料徴収、賭博場の経営、薬物取引、管理売春、債権取立て等、多様な非合法ビジネスを行いつつ、運送業や娯楽産業等の一般社会の経済分野にも進出しているとみられる。
 オ 台湾人犯罪組織
  台湾における犯罪組織は、台湾内で公共工事の談合、用心棒料の徴収等、社会経済に影響力を行使して様々な資金獲得を図っているといわれている。近年、台湾内の犯罪組織の関係者が台湾で犯した犯罪の取締りを逃れて来日し、長期間にわたって不法滞在していた例がみられたり、首都圏に限らず台湾人グループによって、多様な犯罪が敢行されている。
 カ マレーシア人カード偽造グループ
  我が国でクレジットカードに係る犯罪を行うグループは、中国人(香港を含む)からなるグループとともにマレーシア人のグループ(以下「マレーシア人グループ」という)が目立っている。

2 暴力団情勢の変質
(1) 不透明化
 平成四年三月、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴力団対策法」という)が施行され、指定暴力団の構成員がその暴力団の威力を示して一定の不当な要求行為等を行うことが規制されたことから、同法の施行以後、暴力団は、同法の適用を逃れるため、回状、名札、暴力団の名称を印刷した名刺等の使用を控え、組織実態を隠ぺいするようになった。
 また暴力団は、組織実態を不透明化させる一方で、健全な企業による事業活動、政治団体による政治活動、人権や環境問題等に係る社会運動等を装いながら巧妙に資金獲得活動を行うようになった。
 さらに、近年、暴力団構成員及び準構成員による犯罪の検挙状況をみると、恐喝、脅迫、傷害、暴行等の暴力団の威力をあからさまに示す形態の犯罪の検挙人員は、横ばい又は減少しているのに対して、強・窃盗等の必ずしも暴力団の威力を示す必要のない犯罪の検挙人員が、増加傾向にある。
(2) 資金獲得活動の多様化
 暴力団は、その伝統的な資金獲得活動である覚せい剤取締法違反、恐喝、賭博及びノミ行為等の不法行為による資金獲得活動に加え、近年、表の経済社会への進出を活発化させている。
 ア 各種の事業活動へ参入する資金獲得活動
  (ア) 金融業
   中小企業等における資金需要が増大していること、また、一部の市民の間に安易に借金をする風潮が生じていることなどを背景として、暴力団員等が貸金業を資金獲得活動の手段とする状況が一層顕著にみられるようになった。これらの貸金業者は、貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という)に定められた都道府県知事等への登録をせずに貸金業を営み、又は出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という)に定められた上限金利を大きく上回る金利による貸付けを行うなど、違法な営業活動を行っている。
  (イ) 産業廃棄物処理業
   産業廃棄物処理業においては、処理費用を抑えるために不法投棄等の不適正処理を行えば、多額の収益をあげることができる。近年、暴力団によるこの分野への介入が著しい。
  (ウ) 建設業
   暴力団による公共事業への参入は、以前からみられた形態であるが、バブル経済崩壊により景気が低迷するなかで、暴力団は、暴力団関係企業を利用するなどして、建設業への進出を一層強めている。
 イ 行政対象暴力による資金獲得活動
  近年、暴力団等が不正な利益を得る目的で、地方公共団体等の行政機関又はその職員を対象として行う違法又は不当な行為が、一段と顕著にみられるようになっている。
 ウ 債権回収に介入する資金獲得活動
  いわゆるバブル経済期に地上げ等で資産を得た暴力団は、バブル経済が崩壊した後は、不良債権の処理に介入して違法、不当な行為を行う動きを強めている。
 エ 公的融資制度等を悪用する資金獲得活動
  暴力団員等が、会社経営者と共謀するなどして、中小企業金融安定化特別保証制度、中小企業雇用創出助成金制度等を悪用して、融資金又は助成金を詐取する事犯が十一年から十四年にかけて多発した。
(3) 国際化
 近年、暴力団が、来日外国人や国際犯罪組織と連携して行う各種犯罪が多発しており、その形態も多様化している。
(4) 寡占化
 暴力団の寡占化が進行し、平成十四年の暴力団構成員及び準構成員の総数に占める山口組、稲川会及び住吉会(以下「主要三団体」という)の暴力団構成員及び準構成員の割合は、六九・一%にまで増大している。
(5) 第一線からみた暴力団情勢の変質
 警察庁では、各都道府県警察の暴力団対策部門、暴力団犯罪捜査部門の警察官を対象にアンケート調査(注)を実施した(第6表第7表第8表第9表第10表参照)。
 (注) アンケート調査は、平成十五年三月、都道府県警察の暴力団対策部門、暴力団犯罪捜査部門に所属する警部補以下の階級の警察官三百五十人に対し、犯罪捜査活動、情報収集活動等における経験等に基づき回答するよう依頼したものである。
 さらに今後の暴力団対策を進める上で必要なものについて、自由に回答を求めたところ、
 ・警察内部の部門間、都道府県警察間で、限られた貴重な情報を共有するための組織改正、情報システムの整備等を推進すること。
 ・情報収集を容易にするための新しい捜査手法等(通信傍受法の要件緩和、司法取引、犯罪組織結成罪)に関する法制度の整備を図ること。
 ・関係行政機関との協力体制の確立を図ること。
などを求める意見が多かった。

3 銃器情勢の変質
(1) 厳しさを増す我が国の銃器情勢
 ア 銃器発砲事件数の傾向
  過去十年間の銃器発砲事件数(発砲総数)は、平成五年の二百三十三件、六年の二百四十九件以降は、暴力団の対立抗争が多発した十三年の二百十五件を除き、毎年百五十件前後の高水準で推移している。十四年は百五十八件であり、銃器発砲による死傷者数は五十八人であった。
 イ 銃器使用事件数の傾向
  過去十年間の銃器使用事件(銃器様のもの(注)を含む)の発生件数は、五年の百八十件以降増加傾向にあり、十四年は三百七十五件であった。
 (注) 「銃器様のもの」とは、銃器らしきものを突き付け、みせるなどして犯行に及ぶ事件について、被害者、参考人等の供述により、銃器と推定されるものをいう。
 ウ けん銃の押収丁数の傾向
  過去十年間のけん銃の押収丁数は、七年をピークに年々減少しており、十四年は七百四十七丁であった。これは、押収に伴い国内に出回っているけん銃等の違法銃器が減少したためではなく、依然として国内への違法な銃器の流入が続いている一方で、隠匿方法の巧妙化等により、発見・押収がますます困難になっているためであると考えられる。
(2) 第一線からみた銃器情勢の変質
 警察庁では、平成十五年三月、都道府県警察の銃器捜査に従事する警察官を対象にアンケート調査(注)を実施した(第11表第12表第13表参照)。
 (注) アンケート調査は、十五年三月、都道府県警察の銃器捜査に従事する警部補以下の階級の警察官百八十二人に対し、犯罪捜査活動、情報収集活動等における経験等に基づき回答するよう依頼したものである。
 銃器捜査の困難化に対して、法整備を含め、事件の核心に触れる情報や供述の獲得に資する捜査手法の検討を求める意見が多く寄せられた。さらに、一見警察車両と分からない車両の配備等、尾行や張り込み用資機材の整備を求める意見が多くみられた。
(3) 銃器の不正流通と犯罪組織の関与
 暴力団は銃器の最大の買い手であり、また、暴力団に所持された銃器は使用される危険性が高く、銃器発砲事件のうち例年七割から八割に暴力団が関与している。平成十四年の銃器発砲事件百五十八件中、暴力団によるものとされる発砲事件は百十二件(七〇・九%)であった。
 我が国で犯罪に使用されている真正けん銃のほとんどは外国製のものであり、国外から密輸入されたものである。製造国及び仕出地等の分析から、我が国へのけん銃の主な密輸入ルートとしては、「フィリピンルート」、「米国ルート」、「ロシア極東ルート」、「中国ルート」その他のルートが考えられる。
 十四年のけん銃密輸入事件の検挙は五件七人、押収したけん銃は十丁であり、低い水準にとどまっている。過去十年のけん銃押収全体に占める水際での検挙の割合は、二・六%に過ぎず、密輸方法の巧妙化や、GPSや国際携帯電話等の普及により洋上での取引が容易になったことにより、水際での検挙が困難となっている。
 銃器密売を含め、銃器犯罪は秘匿性及び組織性の高い犯罪であり、隠匿の巧妙化が顕著となる一方、協力者(情報提供者)を犯罪組織から秘匿・保護することが要請されるなど、その捜査をめぐる情勢は極めて厳しい。

4 薬物情勢の現状
(1) 深刻な薬物情勢と薬物犯罪に深く関わる犯罪組織
 現在、我が国の薬物情勢は第三次覚せい剤乱用期にあるといわれ、中高生をはじめとする少年の乱用が目立つとともに、覚せい剤事犯の初犯者の占める割合が全検挙人員の約半数を占めるに至るなど、覚せい剤乱用のすそ野が拡大している(第14表参照)。
 我が国では、従来暴力団が薬物の不正取引の中核的な存在であり、国際的な薬物犯罪組織と結託して、覚せい剤をはじめとする薬物を密輸入し、国内で組織的に密売を行っている。また、イラン人による薬物事犯は、特に、覚せい剤事犯の検挙人員の増加が顕著となっており、その内容も、営利犯(営利目的所持及び営利目的譲渡をいう)の占める割合が高くなっている。
(2) 犯罪組織による薬物の不正取引の実態
 国内で乱用されている薬物のほとんどは海外から密輸入されており、現在の第三次覚せい剤乱用期における主な密輸ルートは、中国ルート、北朝鮮ルートとなっている。
 過去三年間(平成十二〜十四年)の覚せい剤の大量押収事犯(一キログラム以上)の主な密輸手口別の押収状況は、洋上取引やコンテナ貨物を利用した密輸入が顕著となっている。
 暴力団は、国際的な薬物犯罪組織から薬物を密輸入し、組織的に密売しており、密輸入された薬物は、暴力団が支配する元売、中間卸、小売等の段階を経て、末端乱用者に供給される。
 末端乱用者への密売は、他人名義の携帯電話や転送電話を利用して、指定された口座への送金を確認した後に宅配便や郵便で薬物を送付したり、末端乱用者からの連絡後に場所を決めて落ち合い、薬物を引き渡すなどして行われており、警察の取締りから逃れるため、その手口は巧妙化している。
(3) 第一線からみた薬物情勢の変質
 警察庁では、都道府県警察の薬物犯罪捜査に従事する警察官を対象にアンケート(注1)を実施した(第15表第16表第17表第18表参照)。
 (注1) アンケート調査は、平成十五年三月、都道府県警察の薬物捜査部門に所属する警部補以下の階級の警察官百八十人に対し、犯罪捜査活動、情報収集活動等における経験等に基づき回答するよう依頼したものである。
 さらに薬物犯罪組織の壊滅のため、「通信傍受を効果的に実施できるようにしてほしい」、「警察官による薬物の譲受け捜査(注2)を積極的に実施すべきだ」などの声が聞かれた。
 (注2) 譲受け捜査とは、薬物に関する犯罪捜査に当たり、警察官等が薬物の密売人等に接触し、薬物を譲り受けるなどする捜査手法をいう。

5 暴力団と国際犯罪組織との重なり
 警察庁では、平成十年から十四年までの間に暴力団員等と来日外国人が共犯関係等を構築して敢行し、警察に検挙された事件で、警察庁に報告のあったもののなかから、三十五件を抽出して、その実態に関する詳細な調査(以下「共犯事件に関する調査」という)(注)を行った。
 (注) 共犯事件に関する調査では、十年から十四年までの間に全国の都道府県警察が検挙し、その概要が警察庁に報告された事件で、暴力団員等と来日外国人が共犯関係等何らかの関係を構築して敢行したと思われるもののうち、約百数十件の報告内容を精査し、それぞれの事件の捜査過程で、暴力団員と来日外国人の関係が比較的解明されているものを三十五件抽出した。さらに、その三十五件の事件について、警察庁職員が当該事件の捜査を担当した都道府県に赴き、捜査記録を閲覧するなどして、@暴力団員等と来日外国人が接点を持ち、共犯関係を構築するに至った経緯、A暴力団員等と来日外国人の犯行時における役割分担、B犯罪収益の分配状況等について、可能な限り詳細な調査を行った。
(1) 暴力団員と来日外国人が共犯関係を構築した経緯
 共犯事件に関する調査においては、暴力団員等と来日外国人が共犯関係を構築した経緯として、以下のようなものが見受けられた。
 ○テキ屋を資金源の一つとしている暴力団員が、日当稼ぎのためにテキ屋の手伝いをしていた中国人と親交を持ち、当該中国人又はその者から紹介された中国人と共犯関係を構築するに至った。
 ○暴力団員及びロシア人の双方が、暴力団員の所属する暴力団の縄張内にあるロシア人が多く集まる飲食店に客として来店した際に知り合いとなり、何度か飲食を共にする過程で相互に共犯関係を構築するに至った。
 ○日本に永住した中国残留孤児の子息である暴力団員が、他の暴力団員と不良中国人グループとを結びつけ、双方が共犯関係を構築するに至った。
 ○暴力団幹部が、韓国からの留学生を配下の暴力団員とし、その者に指示して韓国人の友人数人を集めて、共犯関係を構築するに至った。
 ○日本人の不動産ブローカーが、取引先の中国人から犯行を持ちかけられ、知人の暴力団員を紹介したところ、当該暴力団員と中国人が共犯関係を構築するに至った。
 ○暴力団員が商用で中国に渡航した際、常習的に集団密航を行っているとみられる中国人と面識を持ち、帰国後、当該中国人から紹介を受けたと自称する在日中国人から、集団密航の手伝いをするように依頼され、共犯関係を構築するに至った。
(2) 暴力団員と来日外国人の犯罪における役割分担と収益の分配
 ア 集団密航事件における役割分担
  集団密航事件は、特に中国人と暴力団員が共謀して敢行されることが多い犯罪である。
  大半の集団密航事件は、中国人が首謀者であるため、密航者の募集、密航計画の立案、密航代金の設定と徴収、密航用船舶の手配、日本における船舶の接岸場所の選定等は、すべて、中国人が行っている。暴力団員は、日本に在住する中国人から、接岸場所での密航者の受入れと輸送、密航者の一時的な滞在場所の確保とそこでの監視等の役割を分担するよう依頼されるが、集団密航計画の全体を把握していない場合が多い。
 イ 強盗事件における役割分担
  強盗事件における暴力団員と来日外国人の関係は、共犯事件に関する調査によれば、具体的な犯行計画を積極的に持ちかけるのは、暴力団員である場合が多い。
  来日外国人側の首領格の者は、自分の手足となる数人の来日外国人を誘い入れ、これらの者と共同して、暴力団員が策定した犯行計画に従って、犯行を行っている。
 ウ 海外輸出目的の高級自動車窃盗における役割分担
  暴力団員等は、豊富な情報収集力と動員力を利用して、国内において海外輸出目的の高級自動車窃盗グループを形成し、来日外国人は、母国出身者の人脈と既存の海外輸出ルートを利用して、暴力団員等から盗難自動車を買い取り、海外に輸出、販売する役割を担っている。
  この種の犯罪においては、輸出、販売を担当する来日外国人側が、犯行全般において主導的な立場に立っている。
 エ 不法就労事犯における関係
  共犯事件に関する調査から判明した代表的な形態は、次のようなものである。外国を拠点とする犯罪組織が、母国において、日本で性風俗関連の仕事に就くことを望む女性を募集し、数人単位で日本に引率した上で、暴力団員等に一定の金額の現金と引き替えに引き渡す。女性が来日する際は、観光目的等の短期入国資格で入国する。暴力団員は、日本における性風俗関連営業の就労先を探し、そこでの就労をあっせんする。外国人女性が性風俗関連営業の就労先で稼いだ収益は、就労先の事業者と暴力団員が一定の割合で分配する。女性は、日本に滞在する間は、住居、食事のほかには、小遣い程度の金銭を与えられるだけであるが、短期の滞在期間を経過して母国に帰国した後に、外国の犯罪組織の者から一定の金額の報酬を受け取る。
  このように、外国人犯罪組織と暴力団とが、直接取引をしている事例のほか、外国に本拠をおく日本人プロモーターが、日本の暴力団員と取引をしている場合や、日本側の外国人女性の受入れ組織が、暴力団の庇護を受けたプロモーターである場合もある。
 オ 薬物の密輸・密売事犯における関係
  薬物密輸の多くは、海外の密輸組織と暴力団等とが結託して行われている。近年では、海外の密輸組織が密輸した薬物をその構成員等が我が国で保管し、暴力団に譲り渡している事例がみられるようになっている。
 カ 銃器の密輸・密売事犯における関係
  共犯事件に関する調査では、日本向け貨物船のフィリピン人船員が、フィリピン国内において、フィリピン人から日本へのけん銃の密輸を依頼され、一定額の報酬と引き換えに運び屋となって、日本側荷受人である暴力団関係者に引き渡そうとするなど、日本の暴力団組織と外国のけん銃ブローカーが密接な関係を構築していると推察される事例が見受けられた。
  また、けん銃不法所持事件では、台湾マフィアがけん銃の譲受け・譲渡しを通じて、暴力団と密接な関係を有していることがうかがわれる事例が見受けられた。
 キ 対立関係
  このように、暴力団と来日外国人との関係が密接になるにつれて、対立関係も生じている。
  平成十四年九月には、都内において、些細(ささい)なトラブルから、指定暴力団員が中国人数人の暴行を受けたことに端を発し、暴行を受けた組員に係る治療費等の請求をしようと交渉に臨んだ指定暴力団幹部等に対して、中国人グループが、一般人の客や従業員のいる喫茶店内で発砲し、一人を殺害、一人に重傷を負わせる事件が発生した。
  この事件は、暴力団員と来日外国人の関係が相当程度密接になっていることがうかがわれる事例であると言える。また、この事件においては、中国人グループが当初からからけん銃を隠し持って暴力団幹部との交渉に臨んでおり、外国人犯罪組織が必ずしも暴力団をおそれていないこと、また、その凶暴性が高まっていることがうかがわれる。

第2節 我が国における組織犯罪対策の軌跡

(1) 麻薬新条約の締結、麻薬特例法の制定及び警察庁薬物対策課の設置
 麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(以下「麻薬新条約」という)が採択された昭和六十三年、警察庁では、同年、刑事局保安部に薬物対策課を新設した。平成元年十二月には、我が国は、麻薬新条約に署名し、三年十月、同条約の批准に必要な国内法整備の一環として、麻薬特例法を制定した。
(2) 暴力団対策法の制定と警察庁暴力団対策部の設置
 平成三年五月、暴力団対策法が制定され、また警察庁では、四年、刑事局に暴力団対策部を設置し、暴力団情勢に応じて、暴力団対策法の改正を検討し、五年及び九年にそれぞれ暴力団対策法が改正された。
(3) 銃刀法の改正と警察庁銃器対策課の設置
 平成五年、銃刀法及び武器等製造法の改正が行われたが、これを受け、警察庁では、六年七月、生活安全局に銃器対策課を新設した。
 さらに、七年に銃刀法が改正・施行され、不特定又は多数の者の用に供される場所等においてけん銃等を発射する行為の禁止、けん銃実包の所持の規制、けん銃等の密輸入に関する罰則の強化、クリーン・コントロールド・デリバリーの実効を上げるための罰則の新設、けん銃等に関する犯罪の捜査に当たり警察官等が行うけん銃等の譲受け等に関する規定の新設等所要の規定の整備が図られた。
(4) 国際協力の推進と警察庁国際部の設置
 国際犯罪が我が国の治安上の大きな問題となったことに伴い、外国警察機関等との情報交換、捜査協力、技術協力等の必要性が高まり、これらの業務を全庁的な見地から、戦略的、専門的に行うための部署として、平成六年七月、警察庁は、長官官房に国際部を設置した。
(5) 組織犯罪対策三法の成立
 平成十一年には、組織的犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という)、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(以下「通信傍受法」という)等からなるいわゆる組織犯罪対策三法が成立した。
 組織的犯罪処罰法は、一定の組織的犯罪に関する刑の加重、犯罪収益全般に関するマネー・ローンダリングの処罰と没収・追徴、金融機関による「疑わしい取引」の届出等、組織犯罪捜査に不可欠な規定を整備している。通信傍受法は、限定された犯罪について、極めて厳格な要件の下ではあるが、捜査機関が通信傍受を行うことを可能とした。
(6) 省庁横断的な組織犯罪への取組み
 平成十三年七月、政府は、内閣官房長官を長とする国際組織犯罪等対策推進本部を設置し、@不法入国・不法滞在、Aピッキング用具使用の組織的窃盗、B自動車の盗難と盗難自動車の不正輸出、C偽造・変造クレジットカード等の課題に積極的に取り組んだ。
 また、捜査現場等でも横断的な組織犯罪への取組みが行われており、例えば、警察及び海上保安庁では十四年中に検挙した集団密航事件合計二十五件のうち、十一件の事件で合同捜査を実施した。

第3節 海外における組織犯罪の現状と対策

1 主要な組織犯罪の概要と対策の推進状況
(1) 米国
 米国では十九世紀の終わりころから、イタリア系移民を中心として犯罪組織が形成され始めた。これら組織は、時代の移り変わりとともに活動内容や組織形態を変化させつつ、ニューヨークやシカゴ等大都市を中心に規模を拡大させ、マフィアと呼ばれるようになった。代表的な組織には、ラ・コーザ・ノストラ(La Cosa Nostra)があり、多種多様の非合法活動(殺人、恐喝、薬物密輸、汚職、賭(と)博、正当な企業活動への浸透、高利貸し、売春、税に関する詐欺、株価操縦等)に関与している。
 一方、近年の情報通信技術等の発達によって、犯罪や犯罪組織のグローバル化がもたらされており、例えば、米国以外の国を拠点として行われる金融市場での詐欺や薬物密輸等の犯罪は米国の経済・社会に強い影響を与えるようになっている。また、ロシア・東欧系やアジア系の国際的な犯罪組織が、従来米国内で形成されていたラ・コーザ・ノストラや薬物密輸組織と連携を強めつつあることや、犯罪組織がプリペイド型の移動通信の活用及び頻繁な通信手段の変更等を行うことにより捜査当局の監視を逃れつつ犯罪を敢行していることなどの実態から、将来、国際的な犯罪組織が米国社会に深刻な脅威となることが懸念されている。
 このような組織犯罪に対しては、米国では、連邦捜査局(FBI)の犯罪捜査局のなかに組織犯罪対策を所管するインテリジェンス部門を設けて、他国の警察機関等と連携して情報の収集・分析を行っているほか、捜査の初期段階から、検察と緊密に協調しながら、通信傍受、いわゆる覆面捜査(法執行機関の者が犯罪者の振りをしたり、犯罪者が利用するビジネスを営んだりすること)、匿名の情報協力者の利用等の高度な手法を用いた捜査を進めている。
(2) 英国
 英国における組織犯罪としては、不正な薬物や銃器の取引、人の密輸、詐欺、マネー・ローンダリング、児童ポルノ等が挙げられ、そのなかには英国以外の国の出身者らが関わっているものも多くみられ、社会に深刻な脅威を与えている。ほとんどの組織犯罪は経済的利益を求めて行われており、その活動範囲は裏社会にとどまらず、合法的なビジネス活動の形態をとることも少なくない。
 こうした状況に対応するため、英国においては、組織犯罪に関する情報の収集と分析に力を入れており、そのための組織として、NCIS(National Criminal Intelligence Service)が設置されている。
(3) フランス
 フランスには、都市郊外に北アフリカ等の出身者等により構成された粗暴犯罪や強窃盗を行うグループ(ギャング)が存在していることに加え、最近はパリ市内にも勢力を伸ばしてきているといわれているが、これらの集団そのものは、マフィア等と違い一時的なグループであることが多い。これらグループは、誘拐、強窃盗、恐喝等の多くに関与しており、これに対処するため、組織化されたギャングによる誘拐等の犯罪には、加重処罰が行われている。さらに、粗暴犯罪グループから発展した一部の集団は、フランス国内のみならずヨーロッパ諸国において若い女性を対象とした人身売買にも関与しているが、集団そのものは一時的なグループであることが多い。
 また、犯罪グループによって文化財や盗難自動車の不正取引も行われており、これらの取引がマネー・ローンダリングに利用されることもある。さらに、カンナビス(インド大麻)、ヘロイン及びコカイン等薬物に関する犯罪においては、国境を越えて不正に薬物が輸出入されていることに加え、医療用の薬品が利用されることもあるため、警察だけでなく医療担当部局とも連携を強化し情報の一元化を図るための不正薬物取引中央総局(OCRTIS)を設置して対策を進めている。
 こうした組織犯罪に対しては、様々な形態の組織犯罪を担当する国家警察の刑事司法警察局(DCPJ:la direction centrale de la police judiciaire)が取締りを行っているほか、七つのセントラルオフィスが国内の関係機関の連携調整も行っており、専門知識が必要な捜査や専門家の育成を行うとともに、情報の一元化や犯罪防止のための施策を推進している。
(4) ドイツ
 ドイツにおいては、比較的小規模かつ流動的ではあるものの犯罪者の組織化が進んでおり、それらの一部が相互の連絡を密にし、緩やかなネットワークを形成しつつ組織犯罪を敢行している。また、これら犯罪組織の大半は国際的な結合関係を明確に有しており、国境を越えた活動を強化している。
 ドイツでは、このような組織犯罪に、主として連邦刑事庁(BKA)、連邦国境警備隊(BGS)及び税関が対策を行っているが、一般の警察事務を担当する州警察も多くの組織犯罪を捜査している。連邦政府は、組織犯罪の収益に対する規制を強め、犯罪組織の国際的な結合を阻止するため、重罪については前提犯罪の如何を問わずマネー・ローンダリング行為を処罰するなどの対策を行っている。また、組織犯罪対策の国際的連携を強化するため、リトアニア、スロベニア、ポーランドと対策の共同作業に関する協定を締結し、犯罪組織の国境を越えた活動に対処する施策を推進している。

2 国際社会における組織犯罪への取組み
(1) 国際連合における取組み
 二〇〇〇(平成十二)年十一月、国連総会において採択された国際組織犯罪防止条約(本条約)は、重大な犯罪に関する共謀やマネー・ローンダリングの犯罪化等の各国の国内法制充実のための諸規定及び犯罪人引渡し、国際捜査共助等の国際協力の充実・強化のための諸規定から構成されており、国連においては、本条約の早期発効に向け、開発途上国に対する条約締結のための技術協力等を推進している。
(2) サミット等における取組み
 二〇〇〇(平成十四)年六月に開催されたカナナスキス・サミットにおいては、薬物の密輸、移住者の密輸、渡航文書の偽造、火器の不法取引及び資金洗浄等の犯罪活動とテロ組織との潜在的な結びつきを踏まえつつ、G8としてテロの脅威を減少させるための持続的かつ包括的な行動をとることが各国首脳間で確認された。またG8国際組織犯罪対策上級専門家会合(リヨン・グループ)では国際組織犯罪対策のための国際協力の枠組みづくり等の取組みを行ってきた。
(3) 国際的なマネー・ローンダリング対策
 ア 金融活動作業部会(FATF)の活動
  FATF(Financial Action Task Force)は、一九八九(平成元)年のアルシュ・サミットで設置が決定されたマネー・ローンダリング対策に関する国際協力を推進するための国際フォーラムであり、二〇〇三(平成十五)年六月末現在、我が国を含む三十一か国・地域及び二国際機関が参加している。
 イ アジア・太平洋マネー・ローンダリング対策グループ(APG)の活動
  APG(Asia/Pacific Group on Money Laundering)は、一九九七(平成九)年にタイで開催されたFATF第四回アジア・太平洋マネー・ローンダリング・シンポジウムで、域内のマネー・ローンダリング対策を推進するため設置が決定され、二〇〇三(平成十五)年六月現在、我が国を含む二十六か国・地域が参加している。
(4) アジア諸国との連携の強化
 我が国において活動する国際犯罪組織は、アジアに本拠を置くものが多く、その実態解明と検挙の推進には、関係各国による共同の取組みが必要であり、中国との間では、二〇〇二(平成十四)年治安当局者協議第三回会合を開催するなど連携を強化している。

第4節 今後の組織犯罪対策の取組み

1 組織犯罪対策の充実強化
(1) 捜査力・執行力の充実強化等
 ア 捜査体制の整備
  我が国の治安情勢が今まで述べてきた組織犯罪の深刻化をはじめとして年々厳しさを増していることをふまえ、地方警察官の計画的増員を行い、その一部を来日外国人組織犯罪捜査の強化、不法滞在者対策の強化、薬物の密輸密売組織に対する取締りの強化等に割り当てている。
  国際捜査体制の整備については、都道府県の刑事部門において、昭和六十三年に全国で初めて国際捜査課が警視庁に設置されて以降、専任捜査体制が拡充されている。
  広域的な組織犯罪、特に複数の都道府県にまたがるような組織犯罪に対しては、平成八年の警察法の一部改正により、都道府県警察は、その固有の判断と責任の下に管轄区域外においてその権限を行使することができるように、また、さらに警察庁長官が都道府県警察の役割分担等について指示を行うことにより、広域組織犯罪等に対処するための態勢を迅速かつ的確に整備することが可能となった。
  また、十三年に管区警察局の組織改編により広域調整部を設置し、広域犯罪の捜査等の広域的対応を必要とする警察事象その他国の公安に係る警察事象に関する警察活動につき、管轄区域内各府県警察に対して調整を行うこととしている。
 イ 専門捜査力の強化、教育訓練の充実
  警察大学校、管区警察学校及び都道府県警察学校において、知能暴力犯捜査、薬物事犯捜査、銃器捜査、国際捜査等の特に専門的知識や技能を必要とする捜査に従事する捜査員に対し、その捜査要領や技能について教育訓練を行っている。
 ウ 捜査手法の充実
  警察では、薬物犯罪組織に対して、四年七月に施行された麻薬特例法による薬物犯罪収益等の隠匿、収受及び仮装(マネー・ローンダリング)の事件化、薬物犯罪収益等の没収、追徴及び保全の徹底等の薬物犯罪収益対策を強力に推進しているほか、コントロールド・デリバリー等の効果的な捜査手法を積極的に活用している。
  また、十二年二月に施行された組織的犯罪処罰法により、十四年中に加重規定(第三条第一項等)を十三件適用するとともに、犯罪収益等隠匿(第十条第一項)を十九件、犯罪収益等収受(第十一条)を九件検挙している。また、警察の請求により起訴前における没収保全命令(第二十三条第一項)が五件発出されている。
  十二年八月に施行された通信傍受法に基づき、十四年中は、組織的な薬物密売事犯二事件に関して、合計四件の傍受を実施し、その結果、合計七人の密売人等を逮捕した。
  一方、今後の銃器事犯捜査には、銃器そのものの押収という観点に加えて、銃器を不正流通させ、所持する犯罪組織そのものに打撃を与え、これを壊滅させていくという、組織犯罪対策的な観点が求められる。
 エ 通訳体制の整備
  来日外国人犯罪の増加に伴い、高い語学能力を備えた者を警察職員として採用しているほか、通訳の一部を部外の通訳人に依頼して対応している。また、夜間等に突発的に発生する事件に迅速に対応するなどの必要があるため、都道府県警察に通訳センターを設置するなどして、その体制の整備に努めている。
 オ 国際的な連携の強化
  国際犯罪の増加に伴って、従来に増してICPOルートや外交ルート等による外国捜査機関との情報交換をはじめとした相互協力の必要性が高まっている。
  国際刑事警察機構(ICPO−Interpol)は、国際犯罪捜査に関する情報交換、犯人逮捕と引渡しに関する円滑な協力の確保等の国際的な捜査協力を迅速かつ的確に行うための各国の警察機関を構成員とする国際機関であり、二〇〇二(平成十四)年末現在、百八十一か国・地域が加盟している。
(2) 暴力団対策の充実強化
 ア 暴力団周辺者対策の強化
  指定暴力団の構成員ではないが、その威力を背景として違法又は不当な行為を行う周辺者に対しては、指定暴力団の資金基盤を支える者として、その違法行為の徹底検挙と不当な行為に対する行政命令の的確な発出に努めていく必要がある。
 イ 表の経済社会からの暴力団排除
  平成十一年二月、債権管理回収業に関する特別措置法(以下「サービサー法」という)が施行された。同法は、
  ・暴力団員又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者が事業活動を支配する株式会社
  ・暴力団員又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者が役員等に就任している株式会社
  ・暴力団員又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者をその業務に従事させ、又はその業務の補助者として使用するおそれのある株式会社
を債権管理回収業の許可に関する欠格要件とし、法務大臣は、債権管理回収業の許可をしようとするときは、警察庁長官に対して、許可申請者がこれらの欠格要件に該当するか否かについて、意見聴取できることとした。また、同法は、警察庁長官が、既に債権管理回収業の許可を受けている株式会社について、これらの欠格要件に該当すると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、法務大臣に対して、当該債権管理会社に対して適切な措置を講ずべき旨の意見を述べることができることとした。
  その後、廃棄物処理法に定める産業廃棄物等の処分、運搬業等、使用済み自動車の再資源化等に関する法律に定める解体業者及び破砕業者についても、サービサー法と同様の仕組みが、法律の規定により設けられた。また、特定非営利活動促進法に定める特定非営利活動法人の認証・監督についても、所轄庁と警察当局との連携についての規定が設けられた。
  さらに公共工事からの暴力団排除、行政対象暴力排除についても積極的に推進していく必要がある。
 ウ 暴力団の国際化への対応
  警察庁では、元年以後、「アジア地域組織犯罪対策セミナー」を毎年開催し、東南アジア、中国等のアジア諸国と組織犯罪対策の手法等について情報交換、協議等を行ってきた。
  また、多数の暴力団員の渡航先となっている韓国とは、情報連絡担当者を両国の警察当局に相互派遣し、平素から、犯罪組織の動向等に関する情報交換を緊密に行っている。
  さらに中国とは、十一年以後、中国公安部長と我が国の国家公安委員会委員長が、集団密航事件への暴力団の関与、国際組織犯罪に対する両国の協力等について、継続的に意見交換を行っている。
 エ 暴力団被害者への支援強化
  民事訴訟という手段によって暴力団を排除し、また、その不法行為による被害を回復しようとする動きが活発化している。
  今後も弁護士会との緊密な連携の下に、暴力団情報を訴訟当事者に提供するなどして民事訴訟支援を更に推進していくことが重要である。
(3) 銃器対策の充実強化
 ア 政府における総合的な銃器対策の推進
  平成七年九月、内閣官房長官を本部長とする「銃器対策推進本部」が設置され、同年十二月、「銃器対策推進要綱」が決定された。各省庁においては、毎年度「銃器対策推進計画」を策定し、相互に緊密な連携を図りながらその諸対策を推進している。
 イ 銃器摘発の推進
  警察は、暴力団等犯罪組織によるけん銃密輸・密売事件や武器庫等の摘発を重点とした取締りを行うほか、水際での銃器取締りを強化するため、税関、海上保安庁等との共同捜査や合同訓練の実施、連絡協議会の開催等関係機関との連携を推進している。
 ウ 国連銃器議定書の早期締結
  銃器議定書は、国際組織犯罪防止条約(本条約)を補足する三議定書の一つとして位置づけられ、銃器、同部品及び弾薬の不正な製造及び取引を犯罪化するとともに、銃器への刻印、記録保管、輸出入管理等に関する制度を確立し、法執行機関間の協力関係を構築するための条約であり、我が国は、十四年十二月九日に銃器議定書に対する署名を行った。今後は、銃器議定書の早期締結に向けた作業を進めることとしている。
 エ 外国捜査機関等との連携
  警察庁は、銃器取締りに関する国際協力の円滑化を図るとともに、関係国における適切な銃器規制に寄与するため、七年からODA事業の一環として、各国の実務担当者を毎年、東京に招いて「銃器管理セミナー」を開催してきた。
  また、国際銃器捜査の進展と情報交換等を目的として、五年から各国の捜査機関の幹部を招いて国際会議等を開催しており、今後も、連携を一層強化していく必要がある。
(4) 薬物対策の充実強化
 ア 政府における総合的な薬物対策
  平成九年一月、内閣官房長官を本部長とし総理府に置かれていた「薬物乱用対策推進本部」(昭和四十五年設置)は、閣議決定により、内閣総理大臣を本部長(国家公安委員会委員長は副本部長)とし内閣に設置されることとなった。
  また、十年五月には、「薬物乱用防止五か年戦略」が策定され、関係省庁が連携して薬物乱用対策を戦略的に講じることとなった。十五年七月二十九日には、「薬物乱用対策推進本部」は、新たに「薬物乱用防止新五か年戦略」を策定するとともに、薬物の密輸入阻止のために緊急に水際対策を講じるため、「薬物密輸入阻止のための緊急水際対策」を策定した。
 イ 警察における薬物対策
  麻薬特例法のほか、組織的犯罪処罰法及び通信傍受法を活用しつつ、薬物組織犯罪の実態解明を進め、薬物犯罪組織の壊滅に努める。また、末端乱用者に対する取締りを徹底するとともに、広報啓発活動、相談活動等を充実し、薬物乱用を拒絶する社会環境を構築していくこととしている。

2 深刻化する組織犯罪の脅威と取締り戦略
(1) 犯罪組織の壊滅に向けた戦略的な取組み
 組織の中枢で組織を動かしている者を検挙するための方策、組織の資金源に関する事件を検挙するための方策等、犯罪組織の壊滅に向けた方策を検討し、これら事件化に当たっては、現在、部門間や都道府県間において捜査が競合することにより効果的に組織犯罪対策が推進できていない場合もあることから、警察庁が適切な役割を果たしつつ、捜査調整を可能とする仕組みを導入することが必要である。
 このような取組みを具体的に検討するに当たっては、入国管理局、税関、海上保安庁等の関係機関との合同取締りが有効であり、これらの関係機関との連携・協力を一層強化することが必要となる。
(2) 情報の集約及び分析
 これまで、警察の組織犯罪対策は、暴力団関係は暴力団対策部門が、来日外国人犯罪は罪種ごとの事件担当部門が、薬物関係は薬物対策部門が、銃器関係は銃器対策部門がそれぞれ実施してきたところであるが、(1)で述べたような戦略的取組みを実施するために、それぞれの部門が培ってきたノウハウや知見を活かしつつ、幅広く収集した情報を集約し、横断的・多角的な分析を加えていくことなどが必要となっている。
(3) 組織の整備・総合的な取組み
 平成十五年二月に、各都道府県ごとに情勢に合わせた自主的な取組みが可能となるよう警察法施行令が改正され、「警視庁及び道府県警察本部の内部組織の基準」が弾力化された。これを受け、警視庁では、十五年四月、組織犯罪対策部を設け、新たな総合的な体制を整備した(注)。
 警察では、引き続き、組織犯罪対策に関する総合的な取組み、警察庁及び都道府県警察の組織の在り方について、不断の検討を行うこととしている。
  (注) 警視庁では、十五年四月、刑事部にあった捜査第四課、暴力団対策課、国際捜査課、生活安全部にあった銃器薬物対策課、国際組織犯罪特別捜査隊、公安部にあった外事特別捜査隊の各課・隊を移行・再編して、組織犯罪対策部を新設した。
(4) 新たな捜査手法等についての検討
 近年では、先述した麻薬特例法や通信傍受法等、新たな捜査手法を可能とする法令の整備が進んでいる。今後も、法整備の必要性等も念頭に置きつつ、組織犯罪の取締りに資する新たな捜査手法の検討を進めることが必要である。
 また、暴力団員の違法行為について、当該暴力団の代表者等に対する責任を追及し、暴力団被害者の救済を充実させるための法制の整備を検討する必要がある。

第2章 生活安全の確保と警察活動

第1節 街頭犯罪及び侵入犯罪の発生を抑止するための総合対策

 犯罪情勢は厳しさを増しており、なかでも、街頭において敢行される犯罪や住宅等に侵入して行われる犯罪等、国民が身近に不安を感じる犯罪が急激に増加している。警察は、街頭犯罪等抑止計画に基づき、犯罪抑止のための検挙・防犯活動を推進するとともに、「犯罪に強い社会」の構築に向け、国民の自主防犯行動を促進し、生活安全産業の育成を図るなど、街頭犯罪及び侵入犯罪の発生を抑止するための総合対策を推進し、良好な治安の回復に努めている。

第2節 国民の身近な不安を解消するための諸活動の推進

 地域における安全と平穏を確保するため、地域警察官は、交番、駐在所を拠点として、犯罪多発地域・時間帯におけるパトロールをはじめ、地域に密着した活動を展開し、事件・事故への即応体制を構築している。また、ストーカー事案や配偶者暴力事案への対応等、女性や子どもを守る施策を推進するとともに、警察安全相談の充実強化を図り、地域住民の立場に立った積極的な取組みを行っている。

第3節 高度情報通信ネットワーク社会の形成に対応した警察活動の推進

 高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性を確保するため、ハイテク犯罪対策に係る体制や法制の整備を図り、違法・有害コンテンツ対策や情報セキュリティ意識の向上等の取組みを推進している。また、G8における検討や欧州評議会の「サイバー犯罪に関する条約」への署名を踏まえ、国際的な連携を強化するとともに、プロバイダ等連絡協議会等を通じて産業界等との緊密な連携を確保する。

第4節 少年の非行防止と健全育成

 深刻な少年非行情勢に対処するため、少年事件捜査力の充実強化を図るとともに、少年サポートセンターを中心に少年相談活動や不良行為少年に対する継続補導、少年の社会参加活動をはじめとする居場所づくりの推進等の少年非行抑止対策に取り組んでいる。また、少年の保護対策として、「出会い系サイト」に係る犯罪被害の防止、児童虐待の早期発見と事件化、少年の薬物乱用の防止等を推進している。

第5節 良好な生活環境の保持

 風俗営業の健全化と風俗環境の浄化を図るとともに、ヤミ金融や悪質商法等の経済事犯、偽ブランド品の販売等の知的財産権侵害事犯、食品の安全に係る事犯等の保健衛生事犯の取締りを強化し、正常な経済活動を確保する。また、悪質な産業廃棄物不法投棄等の環境犯罪への対策を推進し、環境被害の拡大防止を図っている。

第3章 犯罪情勢と捜査活動

 平成十四年の刑法犯認知件数は、戦後最多を記録しており、その内容も、街頭犯罪や侵入犯罪の増加、来日外国人犯罪の深刻化等、極めて憂慮すべき状況にある。このような厳しい犯罪情勢に対応し、治安の回復を図るため、捜査体制の整備、科学技術の活用等により、捜査力・執行力の総合的な充実強化に取り組むとともに、関係機関・団体との連携を強力に推進している。
 さらに融資過程又は債権回収過程における詐欺、背任、競売入札妨害等の金融・不良債権関連事犯の捜査を徹底的に行い、不正事案の摘発及び防止に努めている。

第4章 暴力団総合対策の推進

 暴力団が市民生活に対する重大な脅威となっている情勢に対処し、暴力団を壊滅させるため、暴力団犯罪の徹底検挙、暴力団対策法の適正かつ効果的な運用及び暴力団排除活動の積極的推進を三本の柱として暴力団総合対策を強力に推進している。

第5章 安全で快適な交通の確保

 交通安全教育指針に基づく段階的かつ体系的な交通安全教育の推進や、悪質・危険性、迷惑性の高い違反に対する取締りの強化等、交通事故を防止し、その被害軽減を図るための施策を総合的に展開している。また、交通渋滞や交通公害、地球温暖化が大きな社会問題となっていることから、ITS(高度道路交通システム)の推進を図るなど、快適な交通の確保のための諸施策を推進している。

第6章 公安の維持

 最近の厳しい国際テロ情勢を踏まえ、各国治安機関との情報交換等内外の情報収集・分析を進め、捜査活動を一層強化するほか、テロ対処部隊の充実強化、重要施設の警戒警備、生物化学テロ対策、ハイジャック対策、サイバーテロ対策、国際協力等を積極的に推進する。また、極左暴力集団及び右翼による「テロ、ゲリラ」事件の未然防圧と各種違法事案の取締りを推進している。
 地下鉄サリン事件等凶悪なテロを行ったオウム真理教は、現在も無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認められ、公安審査委員会により観察処分の期間更新決定を受けている。警察は、特別手配被疑者三人の発見検挙に全力を尽くすとともに、教団信者による違法行為の厳正な取締りを推進している。また、住民の平穏な生活を守るため、必要な警戒警備活動を行っている。

第7章 災害、事故と警察活動

 警察では、平素から災害危険箇所等の実態を把握しているほか、災害発生時に的確な初動措置をとることができるように、体制の整備に努めている。
 また、災害発生時には、災害警備本部等を設置し、関係機関との連絡体制の強化を図るとともに、現場には広域緊急援助隊をはじめとする警察部隊やヘリコプター等を派遣し、情報の収集、救出救助、行方不明者の捜索、住民の避難誘導、交通規制等、所要の災害警備活動を行っている。

第8章 国際化社会における警察活動

 世界的規模で急速な国際化が進展するなかで、関係機関・団体等との連携を強化し、来日外国人との共生のための各種活動を推進するとともに、海外における邦人に対するテロ、誘拐、襲撃事件等に対する様々な安全対策を推進している。
 また、我が国警察の有する警察運営、交番制度、捜査手法、犯罪鑑識等の技術やノウハウに関する技術協力等を推進するとともに、海外における大規模な災害の発生に際して行っている国際緊急援助活動に関し、これを迅速かつ効果的に実施するために必要な各種訓練等を推進している。

第9章 公安委員会制度と警察活動のささえ

第1節 適正な警察活動の確保

 公安委員会の管理機能の充実・活性化、警察における監察機能の充実・強化、警察職員の職務執行に対する苦情の適正な処理、警察署協議会の適切な運営による地域住民の要望・意見の把握、情報公開の推進、職務執行による責任の明確化により、警察活動の一層の適正化を図っている。

第2節 警察活動をささえる基盤の強化

 組織、人員の効率的運用、教育の充実による職員の実務能力と資質の向上、業務推進方法の見直し、装備資機材の高度化等を更に推進するとともに、人的体制の整備を図っている。
 また、職員の高い士気を維持するため、福利厚生の充実、勤務制度の改善等に努めるとともに、今後の警察を担う優秀な人材を確保するため、人物重視の採用方法、中途採用等の採用の複線化等を積極的に推進している。

第3節 警察の情報通信システムの充実及び事案に即応する体制の強化

 事件、事故及び災害に迅速かつ的確に対応するため、各種情報通信システムの充実強化を図るとともに、機動警察通信隊の体制強化に努めている。

第4節 被害者対策の推進

 被害者への支援をより充実させるため、犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律の適正な運用を図るとともに、被害者に対する情報提供、相談・カウンセリング体制の整備、捜査過程における被害者の負担の軽減及び関係機関・団体等との連携等の各種施策を一層推進している。




暮らしのワンポイント


自慢の味・ぬかみそ漬け

昆布や唐辛子が隠し味

 漬物は、季節の野菜をおいしく食べる料理の一つです。
 ぬかみそ漬けは、まず、ぬかと塩水で「ぬか床(どこ)」を作ります。おなべにお湯を沸かし、塩を溶かして冷まし、塩水を作ります。塩の量は好みですが、ぬか一キロと水四合(約〇・七二リットル)に対し、塩百五十グラムの割合が標準です。
 ぬかと塩水を、おけなどの容器に入れ、手にべとつかない程度の固さにこねます。朝、昼、夕の三回、よくかきまぜます。これを一週間続け、ぬか床を作ります。
 こうして作ったぬか床に、いきなり野菜を漬けてはいけません。最初は大根や白菜などの切れ端、くず野菜を木綿の袋に入れて、三日ほど漬けておきます。野菜から水分が出て、ぬか床が柔らかくなり落ち着きます。
 その後、本格的に野菜を漬けますが、“自慢の味”を出すには昆布、いった煮干し、唐辛子、ニンニクなどを好みに合わせ、ガーゼなどに包んで容器に入れておくと、独自の風味を出すことができます。容器は、冷暗所に置くようにしましょう。
 ぬかみそ漬けをおいしく食べるには、一にも二にも手入れが大切――毎日必ず一回は、底から十分にかき回してください。こうすると、酵母菌が空気に触れて働きが活発になり、漬物が酸っぱくなりません。ぬか床が水っぽくなったらぬかを補充し、みそぐらいの固さになるまで、かき混ぜます。
 卵の殻を数個分砕いて、布にくるんで入れておくと、殻の成分の炭酸カルシウムがぬかの乳酸に作用して、酸味を中和します。夏ミカンやレモンの皮を一緒に漬けると、酸味を消しますし、臭みをとる効果もあります。




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月例経済報告(十二月)


―景気は、持ち直している―


内 閣 府


総 論

(我が国経済の基調判断)

 景気は、持ち直している。
 ・設備投資は増加している。企業収益は改善が続いている。
 ・輸出は緩やかに増加しており、生産は持ち直している。
 ・個人消費は、おおむね横ばいで推移しているが、底固さがみられる。
 ・雇用情勢は、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。
 先行きについては、アメリカ経済等が回復する中で、景気の上向きの動きが続くものと見込まれる。一方、今後の株価・為替レートなどの動向には留意する必要がある。

(政策の基本的態度)

 政府は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三」の早期具体化により、構造改革の一層の強化を図る。また、十二月五日、「改革断行予算」を継続するとの方針を示した「平成十六年度予算編成の基本方針」を閣議決定した。
 政府は、十二月一日、金融危機を未然に防ぐため、足利銀行の特別危機管理を開始するとともに、同行が業務を行っている地域の金融及び経済の安定に万全を期すこととした。また、同行に対し、日本銀行は、業務継続に必要な資金を供給する方針を決定した。
 政府は、日本銀行と一体となって、金融・資本市場の安定及びデフレ克服を目指し、引き続き強力かつ総合的な取組を行う。

各 論

一 消費・投資などの需要動向

◇個人消費は、おおむね横ばいで推移しているが、底固さがみられる。
 個人消費は、おおむね横ばいで推移しているが、底固さがみられる。この背景としては、所得がおおむね横ばいとなっていることに加え、消費者マインドが持ち直していることが挙げられる。需要側統計(家計調査)と供給側統計(鉱工業出荷指数等)を合成した消費総合指数は、十月は前月に比べて増加している。
 個別の指標について十月の動きをみると、家計調査では、実質消費支出が前月に比べて減少した。一方、販売側の統計をみると、小売業販売額は、秋冬物衣料や乗用車の販売が好調であったことから、前月から増加した。チェーンストア販売額は、二〇〇二年六月以来十六か月ぶりに前年を上回った。百貨店販売額は、前年を上回った。新車販売台数は、十月は七か月ぶりに前年を上回ったが、十一月は大きく減少した。家電販売金額は、DVDやデジタルカメラなどの売れ行きが好調であることなどから、引き続き前年を上回った。旅行は、国内旅行は前年を上回った。海外旅行は引き続き前年を下回ったが、減少幅は縮小している。
 先行きについては、当面、現状のような推移が続くと見込まれるが、家計の所得環境が改善していけば、個人消費にも徐々に持ち直しの動きが出てくるものと期待される。

◇設備投資は、増加している。
 設備投資は、企業収益の回復や資本ストック調整の進展等を受けて、増加している。これを需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、季節調整済前期比で平成十四年十〜十二月期に持ち直しに転じ、増加基調にある。また、ソフトウェア投資は、おおむね横ばいとなっている。
 日銀短観によれば十五年度設備投資計画は三年ぶりに全規模全産業で増加に転じ、設備投資の動きに先行性がみられる設備過剰感も改善の動きが続いている。また、先行指標をみると、機械受注は基調としては緩やかに増加しており、建築工事予定額はおおむね横ばいとなっている。先行きについては、企業収益の改善が続くものと見込まれること等から、当面増加傾向で推移するものと見込まれる。

◇住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
 住宅建設は、平成十五年度に入って、一時的な増加と反落があったものの、おおむね横ばいで推移している。総戸数は、十月は、持家は減少したものの、貸家、分譲住宅が増加したことから、前月比六・八%増の年率百二十万四千戸となった。総床面積も、おおむね総戸数と同様の動きをしている。先行きについては、雇用・所得環境が持ち直すなど、消費者の住宅取得マインドが改善に向かえば、住宅着工は底固く推移していくことも期待される。

◇公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共投資は、国、地方の予算状況を反映して、総じて低調に推移している。
 平成十五年度の公共投資の関連予算をみると、国の公共投資関係費においては、前年度比三・七%減と規模を縮減しつつ、「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」など重点四分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野へ重点化している。また、平成十五年度における地方財政計画においては、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比五・五%減としつつ、計画的な抑制と重点的な配分を行うとしている。
 このような状況を反映して、公共工事受注額、公共工事請負金額及び大手五十社受注額は、平成十五年七〜九月期も、前期に引き続き、前年を下回った。
 十〜十二月期の公共投資については、十月、十一月の公共工事請負金額なども前年を下回っており、国、地方の予算状況を踏まえると、引き続き前年を下回るものと考えられる。

◇輸出は、緩やかに増加している。輸入は、横ばいとなっている。貿易・サービス収支の黒字は、横ばいとなっている。
 輸出は、緩やかに増加している。地域別にみると、アジア向け輸出は、中国向けの電気機器を中心として緩やかな増加基調にある。アメリカ向け輸出は、輸送用機器が足元で減少しているものの、全体としては横ばいとなっている。EU向け輸出は、機械機器を中心にこのところ増加している。先行きについては、世界の景気は着実に回復していることに伴って、緩やかに増加していくものと考えられるものの、為替レートの動向には引き続き留意する必要がある。
 輸入は、事務用機器等の機械機器が増加基調にあるものの、鉱物性燃料が減少していることから、全体としては横ばいとなっている。地域別にみると、アジアからの輸入は、鉱物性燃料や繊維製品が減少しているものの、全体としては横ばいとなっている。アメリカからの輸入は、機械機器を中心に、減少している。EUからの輸入は、月々の振れが大きくなっているが、基調としては減少している。
 国際収支をみると、海外旅行客の回復に伴いサービス収支の赤字幅が拡大している一方、輸出数量は持ち直しており、輸入数量が横ばいになっていることから、貿易・サービス収支の黒字は、横ばいとなっている。

二 企業活動と雇用情勢

◇生産は、持ち直している。
 鉱工業生産は、輸出の持ち直しや設備投資の増加などをうけて、情報化関連生産財や資本財の増加等から持ち直している。在庫は低水準で横ばいとなっており、企業は在庫積み増しに慎重になっている。在庫率は低下している。
 先行きについては、世界の景気が着実に回復していることに伴って、輸出を通じた生産の持ち直しは続くものと見込まれるほか、在庫率の低下も今後の生産増加につながることが期待される。なお、製造工業生産予測調査においては、十一月は増加、十二月は減少が見込まれている。
 また、第三次産業活動は、横ばいとなっている。

◇企業収益は、改善が続いている。また、企業の業況判断は、改善がみられる。倒産件数は、減少している。
 企業収益の動向を「法人企業統計季報」でみると、人件費削減を中心とする企業のリストラ努力や売上高の増加等を背景に、平成十五年七〜九月期においても前年比で増益が続いており、季節調整済前期比でみても増益が続いている。「日銀短観」によると、十五年度は引き続き増益が見込まれている。業種別にみると、製造業で前年比二桁の増益見込みであり、非製造業でも増益が見込まれている。規模別でみると、大企業・中小企業とも増益が見込まれている。
 企業の業況判断について、「日銀短観」をみると、製造業では引き続き改善がみられるほか、非製造業でも改善がみられる。先行きについては、全産業でやや悪化が見込まれている。
 また、企業倒産は、セーフティーネット保証の適用件数が増えていること等を背景に、減少している。

◇雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移し、雇用者数がこのところ弱含むなど、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。
 企業の人件費抑制姿勢などの労働力需要面の要因や、雇用のミスマッチなどの構造的要因から、完全失業率が高水準で推移するなど、厳しい雇用情勢が続いている。
 完全失業率は、十月は、前月比〇・一%ポイント上昇し五・二%となった。就業者数が減少し、非労働力人口が増加したほか、完全失業者数も微増となった。
 新規求人数は、増加傾向となっており、有効求人倍率も緩やかに上昇している。一方、雇用者数はこのところ弱含んでいる。製造業の残業時間については、増加傾向となっている。七〜九月期に「残業規制」等の雇用調整を実施した事業所割合は、低下した。また、企業の雇用過剰感は低下傾向にある。
 賃金の動きをみると、十月の定期給与は前年同月比、前月比とも減少したものの、基調としては、横ばいとなっている。

三 物価と金融情勢

◇国内企業物価、消費者物価は、ともに横ばいとなっている。
 国内企業物価は、横ばいとなっている。最近の動きを類別にみると、電気機器などが引き続き下落しているが、堅調な市況を反映して鉄鋼、非鉄金属などが上昇しているほか、冷夏による米不作の影響により、農林水産物が上昇している。また、輸入物価(円ベース)は、為替の影響により、緩やかに下落している。
 企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
 消費者物価は、平成十二年秋以降弱含んでいたが、このところ一部に物価を下支えする動きもあり、前月比で横ばいとなっている。最近の動きを類別にみると、一般商品は、米類の上昇により、前年比下落幅が縮小している。他方、一般サービスは、おおむね横ばいで推移しているが、このところ企業の低価格戦略には一部変化の兆しもあり、外食が前年比で上昇している。また、公共料金は、前年比で上昇している。
 なお、国内企業物価・消費者物価は現在横ばいとなっているが、物価を下支えする要因が一時的なものにとどまる可能性があることから、物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。

◇株価は、おおむね一万円台で推移している。為替レートは、おおむね横ばいで推移している。
 株価は、十一月中旬に九千円台後半(日経平均株価)まで下落したが、その後はおおむね一万円台で推移している。対米ドル円レートは、十月以降おおむね百八円台から百九円台で推移しているが、一時円高が進み百七円台となった。ユーロレートは対円、対米ドルともに上昇し、対米ドルではユーロ創設以来の高値となっている。
 短期金利は落ち着いている。長期金利は横ばいで推移し、このところ一・三%前後となっている。企業の資金繰り状況は改善しており、民間債と国債との流通利回りスプレッドは低水準で推移している。
 マネタリーベースは、日本銀行の潤沢な資金供給などを背景に高い伸び(日本郵政公社当座預金を除く伸び率は一四・一%)が続いている。M+CDは、このところ伸びが低下している。

四 海外経済

◇世界の景気は着実に回復している。
 アメリカでは、景気は力強く回復している。
 七〜九月期の成長率は前期比年率八・二%と十九年振りの高成長となった。これは、消費、設備投資が高い伸びを示したことによる。労働生産性上昇率は二十年振りの高い伸びとなり、企業収益は大幅に増加している。
 また、生産が増加し、企業の雇用意欲も改善しており、雇用は持ち直している。これにより、消費者マインドは改善し、消費は基調として増加傾向にある。
 今後も、消費、設備投資が増加することが期待され、四%前後の高成長が見込まれている。
 十二月上旬に行われた連邦公開市場委員会(FOMC)では、望ましくないディスインフレの起こる可能性はこのところ低下し、インフレ率が高まる可能性と同程度と判断したが、現行の金融緩和政策については、相当程度の期間にわたって維持する方針が引き続き示された。

◇アジアでは、中国、タイ等で景気は拡大が続いており、その他では景気回復の動きがみられる。
 中国では、消費の堅調な増加や輸出の高い伸びから生産が増加するなど、景気は拡大が続いている。タイでは、消費や投資を中心に景気は拡大している。マレーシアでは、消費や輸出が増加するなど、景気は緩やかに拡大している。台湾では、消費が緩やかに増加し、輸出や生産も増加するなど、景気は回復している。シンガポールでは、輸出や生産の伸びが高まるなど、景気は持ち直している。韓国では、消費が増加に転じ、輸出や生産も増加するなど、景気に持ち直しの動きがみられる。

◇ユーロ圏では、景気は持ち直しており、イギリスの景気は回復している。
 ユーロ圏では、外需主導により成長率が3四半期振りにプラスに転じるなど、景気は持ち直している。ドイツでは、受注の持ち直しから生産が下げ止まりつつあり、さらに企業マインドの持続的な改善がみられるなど、景気は下げ止まっている。フランスでは、外需がプラスに転じ、消費、設備投資ともに緩やかに増加しており、景気は持ち直している。
 イギリスでは、消費の増加が続いており、住宅着工が増加傾向にあるなど、景気は回復している。

国際金融情勢等

 金融情勢をみると、アメリカの株価は、景気が回復していることなどからおおむね上昇基調で推移し、ヨーロッパでも株価は上昇している。アジアの株価はおおむね横ばいとなっている。主要国の長期金利は、十一月上旬以降おおむね横ばいで推移している。ドルは、貿易収支赤字が拡大したことなどから減価している。
 原油価格は、冬場の需給ひっ迫懸念などから上昇基調で推移した。


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九月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成十五年九月等結果の概要―


総 務 省


◇就業状態別の人口

 平成十五年九月末の就業状態別人口をみると、就業者は六千三百四十六万人、完全失業者は三百四十六万人、非労働力人口は四千二百七十四万人と、前年同月に比べそれぞれ七万人(〇・一%)減、十九万人(五・二%)減、五十七万人(一・四%)増となっている。

◇就業者

(1) 就業者

 就業者数は六千三百四十六万人と、前年同月に比べ七万人(〇・一%)の減少となり、二か月連続で前年同月の水準を下回った。男女別にみると、男性は三千七百二十六万人、女性は二千六百十九万人で、前年同月と比べると、男性は十五万人(〇・四%)減、女性は七万人(〇・三%)増となっている。

(2) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百二十八万人、自営業主・家族従業者は九百九十三万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は十四万人(〇・三%)減、自営業主・家族従業者は四万人増となり、雇用者は二か月連続で前年同月の水準を下回った。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千二百八十八万人と、十六万人(〇・三%)減、二か月連続の減少
 ・常 雇…四千五百六十四万人と、二万人(〇・〇%)減、三か月連続の減少
 ・臨時雇…六百四万人と、十五万人(二・四%)減、二か月連続の減少
 ・日 雇…百二十万人と、二万人(一・七%)増、二か月ぶりの増加

(3) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…二百九十八万人と、十二万人(四・二%)増加
○建設業…五百九十二万人と、二十九万人(四・七%)減少
○製造業…一千百七十六万人と、七万人(〇・六%)減少
○運輸業…三百三十二万人と、三万人(〇・九%)増加
○卸売・小売業…一千百十七万人と、一万人(〇・一%)減少
○飲食店,宿泊業…三百四十九万人と、十万人(二・八%)減少
○医療,福祉…五百五万人と、二十三万人(四・八%)増加
○サービス業…八百六十二万人と、六万人(〇・七%)増加
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…四百八十九万人と、十六万人(三・二%)減少
○製造業…一千八十九万人と、五万人(〇・五%)減少
○運輸業…三百八万人と、一万人(〇・三%)増加
○卸売・小売業…九百六十万人と、二万人(〇・二%)減少
○飲食店,宿泊業…二百五十三万人と、十二万人(四・五%)減少
○医療,福祉…四百七十万人と、二十八万人(六・三%)増加
○サービス業…六百九十八万人と、一万人(〇・一%)減少
 (注) 日本標準産業分類の改訂に伴い、平成十五年一月結果の公表以降、新産業分類で表章している。

(4) 従業者規模

 企業の従業者規模別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百二十三万人と、同数
○三十〜四百九十九人規模…一千七百七十九万人と、二十三万人(一・三%)減、三か月連続の減少
○五百人以上規模…一千二百十五万人と、十八万人(一・五%)増、九か月連続の増加

(5) 就業時間

 九月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千四百四十一万人と、六十一万人(四・一%)減少
 ・うち一〜三十時間未満…一千六十一万人と、十一万人(一・〇%)減少
○三十五時間以上…四千七百八十四万人と、五十九万人(一・二%)増加
 ・うち四十九時間以上…一千九百二十万人と、七十一万人(三・八%)増加
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四二・九時間で、前年同月と比べ〇・三時間の増加となっている。

◇完全失業者

(1) 完全失業者数

 完全失業者数は三百四十六万人と、前年同月に比べ十九万人(五・二%)減となり、四か月連続で前年同月の水準を下回った。男女別にみると、男性は二百十三万人、女性は百三十三万人で、前年同月に比べ、男性は十二万人(五・三%)の減少、女性は七万人(五・〇%)の減少となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○定年等…三十六万人と、同数
○勤め先都合…百十万人と、十二万人減少
○自己都合…百十五万人と、一万人減少
○学卒未就職…十八万人と、一万人増加
○新たに収入が必要…三十八万人と、三万人減少
○その他…二十四万人と、三万人減少

(2) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は五・一%と前月と同率となっている。男女別にみると、男性は五・五%、女性は四・七%と、前月に比べ男性は〇・二ポイントの上昇、女性は〇・一ポイントの低下となっている。

(3) 完全失業率(原数値)

 完全失業率は五・二%と、前年同月に比べ〇・二ポイントの低下となっている。男女別にみると、男性は五・四%、女性は四・八%と、男性は〇・三ポイントの低下、女性は〇・三ポイントの低下となっている。

(4) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 [男]
○十五〜二十四歳…三十七万人(一万人減)、一〇・七%(〇・一ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…五十七万人(同数)、六・二%(同率)
○三十五〜四十四歳…二十八万人(五万人減)、三・五%(〇・七ポイント低下)
○四十五〜五十四歳…三十七万人(五万人減)、四・三%(〇・四ポイント低下)
○五十五〜六十四歳…四十五万人(二万人減)、六・三%(〇・六ポイント低下)
 ・五十五〜五十九歳…二十万人(一万人増)、四・八%(〇・一ポイント上昇)
 ・六十〜六十四歳…二十六万人(二万人減)、九・〇%(一・〇ポイント低下)
○六十五歳以上…九万人(一万人増)、二・九%(〇・四ポイント上昇)
 [女]
○十五〜二十四歳…二十六万人(二万人減)、八・〇%(〇・四ポイント低下)
○二十五〜三十四歳…四十三万人(三万人減)、七・〇%(〇・五ポイント低下)
○三十五〜四十四歳…二十六万人(四万人増)、四・八%(〇・七ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…十八万人(八万人減)、二・九%(一・〇ポイント低下)
○五十五〜六十四歳…十八万人(二万人増)、四・〇%(〇・二ポイント上昇)
 ・五十五〜五十九歳…十万人(一万人増)、三・六%(〇・一ポイント上昇)
 ・六十〜六十四歳…八万人(一万人増)、四・五%(〇・三ポイント上昇)
○六十五歳以上…二万人(同数)、一・一%(同率)

(5) 世帯主との続き柄別完全失業者数

 世帯主との続き柄別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…九十二万人と、四万人減少
○世帯主の配偶者…四十四万人と、五万人減少
○その他の家族…百六十一万人と、二万人減少
○単身世帯…四十九万人と、八万人減少

(6) 地域別完全失業率

 平成十五年七〜九月平均の地域別完全失業率及び対前年同期増減は、次のとおりとなっている。
北海道…五・六%(〇・三ポイント低下)
東 北…五・六%(〇・四ポイント上昇)
南関東…四・九%(〇・五ポイント低下)
北関東・甲信…四・二%(同率)
北 陸…三・九%(同率)
東 海…四・〇%(〇・一ポイント低下)
近 畿…六・二%(〇・九ポイント低下)
中 国…四・二%(〇・三ポイント低下)
四 国…五・三%(〇・一ポイント上昇)
九 州…六・一%(〇・二ポイント上昇)













    <1月21日号の主な予定>

 ▽独占禁止白書のあらまし…………公正取引委員会 

 ▽毎月勤労統計調査(九月)………厚生労働省 




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