官報資料版 平成12





海上保安白書のあらまし


海上保安庁は、平成9年版「海上保安の現況」(海上保安白書)を作成し、11月18日の閣議の後、公表した。

海上保安庁


 海上保安庁は、海上における治安の維持、海難の救助、海上交通の安全確保、海洋情報の提供、海洋環境の保全等の各分野において、その時々の経済社会情勢の変化に対応した海上保安業務を遂行してきている。
 「海上保安の現況」(海上保安白書)は、これら海上保安庁が実施している業務について、広く国民に紹介し、理解と協力を得ることを目的として、昭和三十一年から刊行しており、今回は四十二回目に当たる。
 平成九年版「海上保安の現況」は、「海上保安をめぐる主な出来事」、「第1部 青い海を守る」、「第2部 海上保安の動向」の構成となっている。
 「海上保安をめぐる主な出来事」においては、平成八年七月から九年八月までの一年間におけるナホトカ号海難・流出油災害、尖閣諸島領海警備事案等、様々な動きの中で、海上保安業務に対する国民の理解を得る上で特に話題性のある事柄を記述している。
 平成九年一月二日に発生し、日本海沿岸の一府八県に被害を及ぼしたナホトカ号海難・流出油災害、同年七月二日に東京湾で発生したダイヤモンドグレース号底触・油流出事故は、海上保安庁に災害応急対策等を通じて、それぞれ課題を残した。
 第1部では、これを踏まえ、事故の概要、海上保安庁の対応を振り返るとともに、提起された課題、今後の対策に焦点を当てて記述している。
 第1章では、平成九年に発生した大規模油流出災害の概要及びそれに対する海上保安庁及び政府の対応について記述している。
 第2章では、ナホトカ号海難・流出油災害及びダイヤモンドグレース号底触・油流出事故への災害応急対策等を通じて得られた、対策本部の早期設置、「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」(国家的緊急時計画)の見直しの必要性等の課題について、海上保安庁が対応すべきものを中心に記述している。
 第3章では、第2章の課題を踏まえて、情報収集・連絡体制の充実強化、油防除実施体制の充実強化等、今後、海上保安庁が取り組んでいく対策を中心に記述している。
 第4章では、第1章から第3章で記述した以外の防災対策について記述している。
 また、第2部においては、いまだに予断を許さない状況にある尖閣諸島等の領海警備、新しい技術を活用した電子海図による全国海域のカバー、ディファレンシャルGPSの運用開始等、平成八年を中心に、海上保安庁が実施した業務と現況について記述している。

<第1部> 青い海を守る


<第1章> 大規模油流出災害

 油の排出による汚染事故に関しては、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(以下「海洋汚染防止法」という。)に基づいて処理している。
 海上保安庁は、原因者、海上災害防止センター等の防除措置実施者への指導・助言のほか、原因者側の対応が不十分な場合には、排出油の防除を実施している。

1 最近の油流出事故の発生状況及びその概要
・平成八年に防除措置が講じられた油排出事故は百九十七件
(1) ナホトカ号海難・流出油災害の概要
・平成九年一月二日、風速約二十メートル、波高約六メートルの大時化(しけ)の中、隠岐諸島の北北東約百六キロメートルの海域で、船体が折損
・折損した部分からC重油約六千二百四十キロリットルが流出、船首部には約二千八百キロリットルが残存
・流出した油の一部は一府八県に漂着し、甚大な被害。船首部は福井県三国町の海岸に漂着(第1図参照
・政府は、一月十日、ナホトカ号海難・流出油災害対策本部(本部長:運輸大臣、事務局:海上保安庁、対応窓口:運輸省)を設置し、災害応急対策を強力に推進
・一月二十日、関係閣僚会議を設置し、被害対策、再発防止対策等を効果的かつ総合的に推進
・関係地方公共団体においても災害対策本部を設置し、関係機関、ボランティアの協力を得て、沿岸に漂着した油の回収作業を実施
・八月三十一日までに、流出油約五万九千キロリットルを回収、船首部は四月二十日に撤去
・船尾部が沈没した付近で、いまだ湧出油を確認、巡視船・航空機により監視警戒等を実施
(2) オーソン号沈没・油流出事故の概要
・平成九年四月三日深夜、韓国巨済島南方の韓国領海内で、座礁、沈没
・四月四日、韓国海洋警察庁からの事故情報を関係地方公共団体に通報
・本庁に「韓国タンカーO号油防除警戒室」、第七管区海上保安本部に「韓国タンカーO号油防除警戒本部」を設置し、浮流油調査、情報収集を実施
・同日、関係省庁連絡会議を開催し、今後の対応等を申し合わせ
・七日、公海上で浮流油を確認したため、第七管区では油防除警戒本部を油防除対策本部に改組し、浮流油の防除作業を開始、関係機関へ協力を要請
・十日、対馬に浮流油が漂着したため、本庁に対策本部を設置し、巡視船艇延べ三百十八隻等を動員して防除作業を実施
・二十二日、浮流油、漂着油の回収作業が終了し、本庁及び第七管区の対策本部を解散
(3) ダイヤモンドグレース号底触・油流出事故の概要
・平成九年七月二日、横浜市本牧沖約六キロメートルで底触
・当初、流出量は約一万五千キロリットルと推定されたが、その後精査したところ、約一千五百五十キロリットルであることを確認
・政府は、二日午前十一時に防災基本計画に基づく警戒本部(本部長:海上保安庁長官)等を設置し、午前十二時に第一回会合を開催
・同日午後二時には、災害の状況にかんがみ、災害対策基本法に基づく、非常災害対策本部(本部長:運輸大臣)を設置
・三日には、流出油の一部が漂着。巡視船艇、関係機関の船舶等三百三十隻以上の動員体制を確保し、防除作業を実施
・四日夜には、浮流油の濃い部分はおおむね回収終了
・十一日には、所期の目的が達成されたため非常災害対策本部を廃止

2 ナホトカ号海難・流出油災害への対応
(1) 海上保安庁の対応
・平成九年一月二日、遭難信号を受け、巡視船、航空機による乗組員の救助及び航空自衛隊へ協力依頼を実施、乗組員三十二名中三十一名を救助
・浮流油の情報を関係地方公共団体へ通報、関係省庁へ防除活動の協力要請、船主に対する船首部、浮流油の漂着防止指導を実施
・四日に第八管区、六日に第九管区、七日に本庁にナホトカ号海難・流出油災害対策本部を設置し、巡視船艇(最大七十四隻)・航空機(最大十三機)等により、船首部、浮流油の漂着防止、油防除作業等を実施
・十四日、漂着船首部の油を抜き取るため、政府の対策本部の方針決定を受け、海上災害防止センターに必要な措置を指示
・油流出に伴う漂流予測システムの高度化に関する研究の一環として、海水中の油分調査を実施
(2) 海上災害防止センターの対応
・船主代理人から油の防除等の作業の委託を受け、二号業務を発動し、流出油の回収を実施
・海上保安庁長官からの指示を受け、仮設道路を造成し、船首部の油の抜取り等の作業(一号業務)を実施
(3) 政府の対応(第1表参照
・六日、油汚染事故に対する準備及び対応に関する関係省庁連絡会議(十八省庁等で構成)第一回会合を開催し、防除方針の確認等を実施
・十日、政府のナホトカ号海難・流出油災害対策本部を設置。同本部では、応急対策の全般について検討し、船首部の油の抜取り方針、国による防除体制の強化等を決定
・二十日、ナホトカ号流出油災害対策関係閣僚会議を開催。関係閣僚会議の下に必要なプロジェクトチーム(PT)、ワーキンググループ(WG)を設置し、関係省庁により検討実施(第2表参照

<第2章> 今般の災害を踏まえた教訓

 ナホトカ号海難・流出油災害及びダイヤモンドグレース号底触・油流出事故を通じ、主なものとして次のような課題が提起された。
・政府の災害対策本部の設置等、政府としての即応体制
・国家的緊急時計画、排出油防除計画が、外洋での大規模な油汚染事故に不対応
・油防除作業を効率的に行うため、自然的、社会的情報等の整備、精度の高い漂流予測のためのリアルタイムデータの充実等
・荒天下の外洋、高粘度油に対応可能な外洋対応型油回収船、大型油回収装置等の防除資機材の整備
・排出油の防除に関する協議会等の活動海域の広域化及び詳細なマニュアルの整備
・海上災害防止センターの防除措置に要するつなぎ資金の確保方策に係る検討
・油防除資機材の情報の管理体制及び現場への迅速な輸送体制、防除に関する各種専門家の情報の提供体制
・平時における実践的な油防除訓練

<第3章> 今後の取組

 ナホトカ号海難・流出油災害については、関係閣僚会議の大規模油流出事故への即応体制プロジェクトチーム、運輸技術審議会総合部会流出油防除体制総合検討委員会において、今後の油防除体制の検討が進められてきた。
 また、ダイヤモンドグレース号底触・油流出事故については、運輸省の東京湾等ふくそう海域における大型タンカー輸送の安全対策に関する検討委員会において、今後の対応方策を検討している。
(1) 情報収集、通報・連絡体制の充実強化、外国との連絡体制の強化
・防災基本計画の改訂に伴う防災業務計画、地域防災計画の見直しの中で、情報連絡体制を強化
・「一九七三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する一九七八年の議定書」に基づく情報収集について、北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)等の場を利用して提案するとともに、近隣諸国との協力を強化
・沿岸海域環境保全情報の整備及び沿岸域の情報管理体制を確立
・油の拡散効果を組み込んだプログラムの開発及び海況予測の手法の開発による油の漂流予測を高度化
(2) 油防除実施体制の充実強化
・海上事故により油が大量に流出した場合で必要があるときは、警戒本部を設置し、油の漂着を阻止。大規模な被害が発生していると認められる場合は、災害対策基本法に基づく非常災害対策本部を設置し、応急対策を推進
・外洋での大規模な油汚染事故を想定していなかった国家的緊急時計画及び排出油防除計画の総合的な点検、見直しを実施
・外洋において、高粘度油にも対応可能な巡視船搭載型油回収システムの整備を検討
・排出油の防除に関する協議会等の活動海域を広域化するとともに、隣接する各協議会等が連携をとって対処する体制を整備。各協議会等において各機関の役割等を定めたマニュアルを整備
・海上災害防止センターの財政基盤を強化するため、国による無利子貸付制度の導入等を検討。船舶所有者からの委託がない場合における迅速な油防除等の対応を図るための方策を検討
・油防除資機材の早期投入のため、各機関の把握している資機材の情報の管理、関係機関への提供、関係省庁間の相互協力による資機材の迅速な輸送体制を構築
・各機関が把握している各種専門家に関する情報を一元化し、関係機関へ提供
・訓練の事故想定を実態に合わせるとともに、様々な場面を想定した関係機関との連携に重点を置いた実践的訓練の実施、シミュレーション訓練の導入を検討
・ダイヤモンドグレース号底触・油流出事故を踏まえ、事故発生時の防除資機材の迅速な配置、活用体制の確立等のため、排出油防除計画の緊急点検、見直しを実施

 <第4章> その他の防災対策

1 有害液体物質等の防除対策
・船舶所有者に対し、排出事故等が発生した場合の通報を指導
・海上災害防止センターに対し、防除技術に関する調査研究、防除措置の実施体制の整備を指導

2 海上消防対策
・平成八年には、船舶火災は百三十四件発生
・全国の海上保安部署への消防艇等の配置。大型タンカーが海上交通安全法に定める航路を航行する場合の指導等、海上消防体制を確保

3 大型タンカーバースの防災対策
・大型タンカーバースの管理者等に対し、防災資機材の整備等を指導
・大型タンカーバースの建造に際し、防除資機材の配備計画等を指導

4 国家石油備蓄基地の防災対策
・国家石油備蓄基地の建造段階から、海上防災体制の整備強化について指導を実施しており、広域共同防災体制が整備済み

5 海上災害防止センターの指導・監督
・海上災害防止センターでは、排出油等防除措置のほか、資機材の保有、海上防災訓練、調査研究業務、国際協力推進業務等を実施
・同センターの指導・監督等による官民一体となった海上防災体制の確立

6 国際協力の推進
・日本、中国、韓国及びロシア等を対象としたNOWPAPを推進
・海洋汚染防除専門家会議等により、日米、日韓、日ロの間の協力を推進
・開発途上国の油防除技術者の育成を図るため、国際協力事業団を通じて専門家の派遣等を実施

<第2部> 海上保安の動向


<第1章> 海上治安の維持

Ⅰ 領海警備等
・領海内における不法行為の防止、排除等の領海警備を実施しており、平成八年には、我が国領海内で不法行為等を行った外国船舶三百八十五隻(うち漁船二百九十三隻)を確認。このうち、悪質な十四隻については検挙し、その他については、警告の上退去させる等、必要な措置を実施(第3表参照
・平成八年七月以降、活発となった「保釣活動」と呼ばれる活動は、同年九月には、香港からの抗議船から活動家が海に飛び込み、一人が溺死、十月には四十九隻が到来し、四人が魚釣島岩礁に強行上陸
 本年に入っても、五月には、領海内に侵入した抗議船から二名が巡視艇に飛び移るとともに、七月にも領海内侵入事案が発生。これらに対し、不測の事態が生じないよう細心の注意を払いながら、領海警備活動を実施
・平成八年に、我が国が管轄権を有する大陸棚に係る海域において、二十二隻の外国海洋調査船等を確認し、巡視船艇・航空機による追尾監視等を実施
・ロシア等により、漁業水域内、領海内操業等の理由で、平成八年には四隻(五十三名)が被だ捕

Ⅱ 海上における法秩序の維持
・平成八年には八千九百四十一件の海上犯罪を送致。違反の態様が軽微で是正の容易な三千三百七十四件の行政関係法令違反について警告処分(第2図参照
・海事関係法令違反については、プレジャーボートなどの小型船舶に係るものが多く、次いで漁船の順。漁業関係法令違反については、そのほとんどがいわゆる密漁事犯。刑法犯については、業務上過失往来妨害事犯がほとんどで、このうち当て逃げ事件については七五%を検挙
・出入国関係法令違反については、これまで最高の四百九十一件を送致。中国人の不法入国事犯の増加が顕著で、その上陸先は全国に拡大している。形態も悪質化・巧妙化、多国籍化の傾向にあり、海上警戒を一層強化(第3図参照
・薬物関係法令違反については十三件、銃器関係法令違反については十七件を送致。薬物乱用対策推進本部、銃器対策推進本部に参画し、対策を推進

Ⅲ 海上紛争等の警備と警衛・警護
・平成八年は、外国船舶の入出港に伴う警備等七百九件の警備、皇族に対する警衛六十五件及び国内外要人に対する警護六十六件を実施
・いわゆる地下鉄サリン事件の発生以降、カーフェリー等への警乗、不審事象監視・速報体制強化等を実施。また、特殊警備事案に対処するため平成八年五月には大阪特殊警備基地を設置

<第2章> 海上交通の安全確保

Ⅰ ふくそう海域における安全対策
・船舶交通のふくそうする東京湾等の海域及び港は、海上交通安全法及び港則法により、特別の交通ルールを定めて安全確保を推進
・同海域には、海上交通に関する情報提供と航行管制を一元的に行うシステムとして、海上交通情報機構等を整備・運用。来島海域について、平成十年一月の運用開始に向けて海上交通情報機構を整備中
・ダイヤモンドグレース号底触・油流出事故に関し、運輸省内に設置された「東京湾等輻輳(ふくそう)海域における大型タンカー輸送の安全対策に関する検討委員会」において、航法等の当面、中長期の施策について検討中(一部実施済み)
・関西国際空港二期事業等の大型プロジェクトに対する安全対策を推進

Ⅱ 海上交通の安全確保のための指導
・要救助海難の発生原因の六九%が人為的要因によるものであり、海難防止思想の普及・高揚並びに海難防止に関する知識・技能の習得等が有効であることから、海難防止講習会等(平成八年は合計八百八十回)を実施
・タンカー等各種船舶の特性に応じた安全対策を推進

<第3章> 海洋レジャーの安全確保と健全な発展のための対策の推進

Ⅰ 海洋レジャーの現状と今後の動向
・モーターボート等の保有隻数、小型船舶操縦士免許の取得者数が増加しており、海洋レジャーが普及、活発化してきているが、それに伴い事故の増加が懸念

Ⅱ 海洋レジャー事故の発生状況とその原因及び救助状況
・平成八年のプレジャーボート等の海難隻数は六百七十三隻(全要救助船舶隻数の三六%)で、これに伴う遭難者数は一千八百九十八人
・平成八年は、直接救助した百九十九隻を含む四百三十八隻のプレジャーボート及び直接救助した八十九人を含む四百二十五人の海洋レジャーに係る海浜事故者に対し、それぞれ救助活動を実施

Ⅲ 海洋レジャーの事故防止及び健全な発展に資する対策の推進
・海洋レジャーの事故の原因は、初歩的知識・技能の不足等、基本的遵守事項の欠如によるものが多いため、関係者個々の安全意識の高揚が必要
・マリーナ等への訪問指導、海難防止強調運動等のほか、ボート天国の開催、海洋レジャー行事相談室の設置等を推進
・愛好者自らが安全意識を高めていく必要があり、小型船安全協会や民間ボランティア等との連携、プレジャーボート救助事業、レジャー・スキューバ・ダイビング事故に係る応急援助事業を支援

Ⅳ 海洋レジャーに係る救助体制の充実強化
・海洋レジャーに係る事故に対し迅速な救助活動等を行うため、巡視船艇の効果的配備、ヘリコプターによる捜索等、救助体制を強化
・海洋レジャーに係る事故等の情報を収集するため、船舶電話、衛星船舶電話等での緊急通報用電話(呼称「海の一一〇番」)の整備、海上保安部署の加入電話番号の統一等を実施

Ⅴ 海洋レジャーの安全に資する情報の提供
・船舶気象通報の提供のほか、「海の相談室」において海洋レジャーの安全に資する情報を提供

<第4章> 海難の救助

Ⅰ 海難の発生と救助状況
・平成八年の要救助船舶は、一千八百五十八隻、これに伴う遭難者は七千八百二十五人で、このうち死亡・行方不明者は二百十三人
・要救助船舶のうち直接救助した三百七十七隻を含む一千二百五十九隻及び要救助船舶の乗船者のうち直接救助した一千七百六人を含む五千八百五十人に対し、それぞれ救助活動を実施
・海難によらない乗船者の事故者数は八百四十七人で、このうち三百十五人が死亡・行方不明、これらに対し直接救助した百五十四人を含む四百四十一人に対して救助活動を実施
・海浜事故等の事故者数一千六百一人のうち、直接救助した百三人を含む八百四人に対して救助活動を実施

Ⅱ 海難救助体制
・海難救助を迅速・的確に行うため、二十二か所の陸上通信所及びCOSPAS/SARSATシステムの地上施設の運用等により、海難情報を早期に入手
・平成八年にこれらの通信所が取り扱った海難に関する通信は三千四百五十二件
・北西太平洋地域における海難情報の収集処理体制を強化するため、基幹業務管理センター(基幹MCC)の運用を開始
・船位通報制度(JASREP)を有効に活用するため参加促進活動を実施
・全国の海上保安部署等において、二十四時間の当直体制をとるとともに、海難発生のおそれがある海域への巡視船艇の前進配備等による海難への即応体制の整備
・特殊救難体制及び救急救命士の育成等、救急救命体制の充実強化
・平成八年は洋上救急事業として十八件出動し、医師、看護婦等三十八人を輸送
・我が国の船舶が本邦から遠隔の諸外国の周辺海域で海難に遭遇した場合等は、直接又は外務省等を通じた相互の援助の依頼等を実施(平成八年は百三十四隻)

<第5章> 海洋環境保全

・平成八年に我が国周辺海域において海上保安庁が確認した海洋汚染は七百五十四件で、そのうち油によるものが四九%、船舶からの排出によるものが大半を占め、その原因は人為的なものが半数以上
・平成八年に登録された廃棄物排出船により海域に排出された汚泥等の廃棄物の量は、約四千四百六十万トン
・平成八年には、海上環境関係法令違反で七百八十七件を送致。海洋汚染防止法違反がその大部分
・船舶がふくそうする海域、タンカールート海域等の海洋汚染が発生する可能性の高い海域へ巡視船艇、航空機を重点的に配備し、海陸空一体となった海洋汚染の監視取締りを実施
・海洋環境の保全に関する思想の普及・啓発等のため、海洋環境保全講習会(平成八年は六百五十四か所)等を実施
・廃船指導票(通称オレンジシール)の貼付による廃船の適正処理の促進、適正処理体制の確立に向け関係機関等に対し申入れ
・地球温暖化対策に係る海洋環境状況の把握のため、西太平洋海域共同調査(WESTPAC)、日本南極地域観測等に参加するとともに、験潮所等において潮位観測を実施
・我が国周辺海域等における海水、海底堆積物中の汚染物質の状況、廃油ボールの漂流・漂着状況、海上漂流物の実態調査等を実施

<第6章> 自然災害への対応

・災害の発生に備え、二十四時間の当直体制、巡視船艇・航空機の配備、地方自治体の防災会議への参加、関係機関との連携強化等を実施
・横浜海上防災基地の運用、沿岸防災情報図の整備、関係機関との連携を含む防災訓練等を実施
・第七次地震予知計画等に基づいて、相模・南海トラフにおける海底活構造調査、比較的人口密集度の高い沿岸海域等において活断層の分布調査等を、また、第五次火山噴火予知計画に基づいて、航空機等による火山活動の観測等を実施

<第7章> 海洋調査と海洋情報の提供

Ⅰ 管轄海域の確定
・我が国の領海等の限界線の基準となる領海基線を確定するための資料収集・調査等を実施
・国連海洋法条約に基づいて設置された大陸棚の限界に関する委員会に提出する大陸棚の範囲の設定に必要な基礎資料を得るための大陸棚調査を実施
・米国航空宇宙局(NASA)が中心となって推進している測地衛星の国際共同観測への参加、人工衛星レーザー測距装置を利用した観測等を実施

Ⅱ 航海の安全確保のための海洋調査及び情報提供
・航海の安全確保のため、水路測量、海象観測等を実施するとともに、その成果に基づく水路図誌の刊行等の情報提供を実施
・平成八年度末現在、港泊図、海岸図、航海図、航洋図、総図、航海用電子海図等、八百九十六版の航海用海図を刊行
・船舶交通の安全のために緊急を要する情報については、航行警報として提供

Ⅲ 海洋情報の管理・提供
・日本海洋データセンター(JODC)の運営による国内外の海洋データ・情報の収集・提供のほか、インターネットを利用したオンラインシステムの導入、本庁と管区海上保安本部をネットワークで結ぶ海洋データ高度利用システムの運用等、海洋情報の有効利用を促進

<第8章> 航路標識業務への取組

Ⅰ 航路標識の現状と整備
・平成八年度末現在、光波標識五千二百九十九基、電波標識百四基、音波標識二十四基、その他の標識二十七基、合計五千四百五十四基を設置・管理
・平成八年度は、ディファレンシャルGPSの一部正式運用のほか、六十四件の新設整備、五百五十一件の改良改修、四十七件の耐震性の向上を目的とした防災対策を実施

Ⅱ 航路標識の保守・運用
・航路標識のほとんどは自動化され無人で運用、この機能を維持するための巡回保守を実施
・無線回線及び電話回線を利用した監視システム等による運用監視、事故の際の復旧、灯浮標等への船舶衝突事故防止の指導を実施

Ⅲ 船舶気象通報
・全国各地の主要な岬の灯台等四十七か所において観測した局地的な気象・海象の情報を無線電話、テレホンサービス等により、船舶気象通報として提供

Ⅳ 自然エネルギーの利用及び歴史的・文化的施設の保全
・風力、太陽、波力といった自然エネルギーの利用拡大及び歴史的・文化的価値の高い灯台等を保全するための修復工事を実施

<第9章> 海上保安に関する国際活動

Ⅰ 国際機関等における活動
・国際海事機関(IMO)、国際水路機関(IHO)、国際航路標識協会(IALA)等の国際機関等の活動に参画

Ⅱ 関係諸国との協力・連帯の推進
・アジア太平洋地域における捜索救助体制を確立するため、隣接国とのSAR協定(海上における捜索及び救助に関する国際協定)の締結等による協力を推進
・マラッカ・シンガポール海峡における航行安全対策の推進、ロシア国境警備庁等との薬物・銃器の不正取引の動向及び関連情報等の交換、集団密航の防止対策等に関する関係国との当局間協力の推進を実施
・東アジア地域の水路業務に関する調査等の情報交換等のための東アジア水路委員会(EAHC)への参画、ロランC等極東海域における広域電波航法システムの効果的整備等、国際的な連携を推進

Ⅲ 国際協力・国際貢献の推進
・開発途上国における海上保安業務の充実に協力するため、国際協力事業団を通じ、研修員の受入れや専門家の派遣等による技術協力を実施
・エジプトに派遣された国際緊急援助隊救助チームに職員四人が参加

<第10章> 海上保安体制の現状

Ⅰ 組織・定員
・平成九年八月末現在、組織は、管区海上保安本部十一か所、海上保安(監)部署等百十八か所、海上交通センター五か所、航空基地十四か所、特殊警備基地一か所、特殊救難基地一か所、統制通信事務所十一か所、水路観測所四か所、ロランセンター一か所、航路標識事務所八十六か所、教育訓練機関として海上保安大学校及び海上保安学校(分校として門司分校及び宮城分校)
・平成八年度末の定員は一万二千二百四人

Ⅱ 装 備
・平成八年度末現在、警備救難、水路及び灯台業務用の船艇等、合計五百十八隻(十四万八百八十九総トン)、航空機七十機を保有
・国連海洋法条約の締結に伴う業務の増大等、多種多様化する海上保安業務に対するニーズに的確に対応するため、巡視船艇・航空機等の整備が緊急の課題
・巡視船艇・航空機の中には、既に耐用年数を迎え、性能劣化の著しいものもあり、早急に代替整備が必要

Ⅲ 教育訓練体制
・海上保安大学校及び海上保安学校(門司分校及び宮城分校を含む。)において、新規採用職員に対して必要な教育訓練を実施するとともに、職員に対して各種研修を実施

Ⅳ 研究開発
・海上保安業務の業務能率及び精度を向上させるため、海上保安試験研究センター等において、業務に関連した研究開発を実施



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天皇誕生日一般参賀について


宮 内 庁


 天皇誕生日一般参賀は、十二月二十三日、皇居で次のとおり行われます。
1 午前の参賀
 天皇陛下が、皇后陛下、皇太子同妃両殿下、秋篠宮同妃両殿下及び紀宮殿下と御一緒に長和殿ベランダにお出ましになる予定です。入門時間は、午前九時三十分から同十一時までで、参賀者は、皇居正門(二重橋)から参入し、宮殿東庭の参賀会場を経て、坂下門、桔梗門、大手門、平川門又は北桔橋門から退出することになります。
2 午後の参賀
 当日の午後は、宮殿において天皇誕生日の恒例の祝賀行事が行われますので、天皇陛下始め皇族方のお出ましはなく、坂下門内に特設した記帳所において記帳又は名刺をお受けします。
 記帳は都道府県名と氏名を記入することになりますが、筆記用具等は記帳所に備え付けてあります。
 入門時間は、午後零時三十分から同三時三十分までで、参賀者は、坂下門から参入し、記帳所を経て桔梗門、大手門、平川門又は北桔橋門から退出することとなります。
 退出門は午後四時に閉門しますから、参賀者はその時までに退出されるようお願いします。
 なお、当日は退出門からは入門できませんので、御注意ください。
3 皇居東御苑は、天皇誕生日当日は休園となりますが、退出する参賀者は皇居東御苑を通って、大手門、平川門又は北桔橋門から退出することができます。
4 危険物を携行する者、旗ざお、大きな荷物等で参賀行事を妨げ、又は他に危害、迷惑等を及ぼすおそれのある物を携行する者、その他参賀行事の運営上支障があると認められる者は、入門をお断りします。
5 参賀当日は非常な混雑が予想されますので、次の点に御注意ください。
① 午前の一般参賀の閉門時刻は午前十一時となっていますが、多数の参賀者が参集されると思われますので、早めに御入門ください。
② 混雑する場合は、参入の際、あらかじめ、午前は正門前、午後は坂下門前で列を作って入門するようになりますが、入門する場合は、列を崩したり、立ち止まったりなどしないでください。
③ 雑踏による転倒事故が生じやすいので、履物には十分御注意ください。特に、移動コース上には坂道がありますので、ハイヒール、下駄ばきの方は御注意ください。
6 参賀者は、皇居内においては、次に挙げる行為をしないでください。これに反した場合は退去を求めることがあります。
① 立入りを禁じた場所に入ること。
② 喫煙所以外での喫煙等、火災の危険がある行為をすること。
③ 施設その他の物を破損し、又は移動すること。
④ 業として写真又は映画を撮影すること。
⑤ 集会又は示威行為をすること。
⑥ 貼紙をし、又はビラ類を配布し若しくは散布すること。
⑦ その他皇居内の秩序又は風紀を乱す行為等、参賀行事運営上支障があると認められる行為をすること。
7 その他
① 荒天等の場合は、お出ましが中止されることがあります。
② 混雑や危険を防止するため、参入門の外で携帯品をお預かりすることがあります。
③ 駐車場の用意はありませんので、御注意願います。


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景気予測調査


―平成九年八月調査―


大 蔵 省


はじめに
 大蔵省では、企業経営の現状と見通しを調査し、景気の動向を的確に把握することを目的として、金融・保険業を除く資本金一千万円以上(電気業、ガス・水道業は資本金十億円以上)の営利法人約百十一万社のうち約一万一千社を対象として、四半期ごとに大蔵省景気予測調査を実施している。
 以下は、平成九年八月に実施した第五十八回調査結果の概要である。今回の調査では一万一千二百五十五社を対象とし、九千二百五十四社(回収率八二%)から回答を得ている。
 なお、本調査における大企業とは資本金十億円以上の企業を、中堅企業とは資本金一億円以上十億円未満の企業を、中小企業とは資本金一千万円以上一億円未満の企業をいう。

 景 況第1表第1図第2表第2図参照

 九年七~九月期の景況判断BSI(前期比「上昇」-「下降」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも引き続き「下降」超となっている。
 先行きを全産業でみると、大企業は十~十二月期に、中堅企業は十年一~三月期に「上昇」超に転じる見通しとなっている。一方、中小企業は「下降」超の見通しとなっている。
 九年七~九月期の景況判断「下降」の要因(一社二項目以内回答)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「市況の下落、低迷」が最も多く、次いで「国内景気の下降」の順となっている。
 先行きの大企業、中堅企業の景況判断「上昇」の要因についてみると、いずれも「市況の上昇、回復」が最も多く、次いで「国内景気の上昇」や「消費者(利用者)ニーズ・志向の変化」の順となっている。中小企業の景況判断「下降」の要因についてみると、「市況の下落、低迷」が最も多く、次いで「国内景気の下降」の順となっている。

 売上高第3表参照

 九年度上期の売上高は、全産業合計で前年比二・一%の増収見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増収見込みとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、木材・木製品などが減収となるものの、電気機械器具、輸送用機械器具など多くの業種が増収となり、全体では三・六%の増収見込みとなっている。
 非製造業では、建設、不動産などが減収となるものの、卸売・小売、運輸・通信など多くの業種が増収となり、全体では一・六%の増収見込みとなっている。サービス業(新産業分類)についてみると、スポーツなどが減収となるものの、コンピュータ・サービスなど多くの業種が増収となり、全体では、〇・九%の増収見込みとなっている。
 九年度下期の売上高は、全産業合計で前年比〇・九%の増収の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業は増収の見通し、中小企業はほぼ横這いの見通しとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、輸送用機械器具などが減収となるものの、電気機械器具、出版・印刷など多くの業種が増収となり、全体では一・七%の増収の見通しとなっている。
 非製造業では、建設などが減収となるものの、卸売・小売、運輸・通信など、ほとんどの業種が増収となり、全体では〇・七%の増収の見通しとなっている。サービス業(新産業分類)についてみると、エンジニアリングが減収となるものの、娯楽施設、リースなど、ほとんどの業種が増収となり、全体では一・九%の増収の見通しとなっている。
 九年度通期の売上高は、全産業合計で前年比一・五%の増収の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増収の見通しとなっている。

 経常損益第4表第5表参照

 九年度上期の経常損益は、全産業合計で前年比五・二%の増益見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中小企業は増益見込み、中堅企業は減益見込みとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、パルプ・紙・紙加工品などが減益となるものの、電気機械器具、輸送用機械器具などが増益となり、全体では一二・五%の増益見込みとなっている。
 非製造業では、不動産などが減益となるものの、建設、個人サービスなど多くの業種が増益となり、全体では〇・八%の増益見込みとなっている。サービス業(新産業分類)についてみると、コンピュータ・サービスなどが増益となるものの、放送、娯楽施設などが減益となり、全体では六・一%の減益見込みとなっている。
 九年度下期の経常損益は、全産業合計で前年比〇・七%の減益の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業は増益の見通し、中小企業は減益の見通しとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、パルプ・紙・紙加工品などが減益となるものの、電気機械器具、一般機械器具などが増益となり、全体では四・二%の増益の見通しとなっている。
 非製造業では、不動産などが増益となるものの、建設、放送などが減益となり、全体では三・五%の減益の見通しとなっている。サービス業(新産業分類)についてみると、放送などが減益となるものの、コンピュータ・サービス、旅行など多くの業種が増益となり、全体では七・七%の増益の見通しとなっている。
 九年度通期の経常損益は、全産業合計で前年比一・八%の増益の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業は増益の見通し、中小企業は減益の見通しとなっている。
 九年度上期の経常損益見込みを八年度上期と比べると、改善、悪化企業割合では、製造業は改善の割合が高いものの、非製造業は悪化の割合が高く、全体では悪化の割合が高い。
 次に、改善要因としては、製造業、非製造業ともに、「売上数量増」をあげる企業が最も多く、次いで、「人件費減」の順となっている。一方、悪化要因としては、製造業、非製造業ともに、「売上数量減」をあげる企業が最も多く、次いで、製造業では「製品・サービス価格低下」、非製造業では「人件費増」の順となっている。

 中小企業の設備投資第6表参照

 投資については中小企業のみを調査対象としている。今回の調査における全産業の九年度設備投資計画を前年比でみると、土地購入費を含む場合(以下「含む」という)で七・三%減、除く場合(以下「除く」という)で三・九%減となっている。また、前回調査時に比べ、「含む」で一・四%ポイントの上方修正、「除く」で六・一%ポイントの下方修正となっている。
 業種別にみると、製造業では、食料品、窯業・土石製品などが減少となっているものの、出版・印刷、化学工業などが増加となっており、全体では「含む」で一・一%増、「除く」で横這いとなっている。非製造業では、その他のサービス、映画・娯楽などが増加となっているものの、建設、不動産などが減少となっており、全体では「含む」で一〇・七%減、「除く」で五・九%減となっている。
 九年九月末時点の設備判断BSI(期末判断「不足」-「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、全産業は引き続き「不足」超となっている。業種別では、製造業が「不足」超に転じており、非製造業は引き続き「不足」超となっている。
 先行きについては、全産業は引き続き「不足」超の見通しとなっている。業種別では、製造業、非製造業とも引き続き「不足」超の見通しとなっている。

 中小企業の販売製(商)品在庫

 九年九月末時点の在庫判断BSI(期末判断「不足」-「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業いずれも「過大」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業、小売業はいずれも「過大」超となっているものの、「過大」超幅が縮小する見通しとなっている。

 中小企業の仕入価格

 九年七~九月期の仕入価格判断BSI(前期比「上昇」-「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業は「上昇」超幅が縮小し、小売業は「上昇」超から「低下」超に転じている。
 先行きについては、製造業、卸売業では「上昇」超で推移する見通しとなっている。小売業では、「上昇」超に転じた後、再び「低下」超に転じる見通しとなっている。

 中小企業の販売価格

 九年七~九月期の販売価格判断BSI(前期比「上昇」-「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超で推移する見通しとなっている。

 雇 用第7表参照

 九年九月末時点の従業員数判断BSI(期末判断「不足気味」-「過剰気味」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業は製造業を中心に「過剰気味」超となっている。一方、中堅企業、中小企業は製造業、非製造業ともに「不足気味」超となっている。
 先行きについては、大企業は「過剰気味」超、中堅企業、中小企業は「不足気味」超で推移する見通しとなっている。
 九年七~九月期の臨時・パート数判断BSI(前期比「増加」-「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「増加」超となっている。
 先行きについては、大企業、中堅企業は非製造業を中心に「増加」超の見通しとなっており、中小企業は製造業、非製造業ともに「増加」超の見通しとなっている。
 九年七~九月期の所定外労働時間判断BSI(前期比「増加」-「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業は「増加」超となっており、中小企業は「減少」超となっている。
 先行きについては、大企業は「増加」超の見通しとなっている。一方、中堅企業は十~十二月期は「増加」超、十年一~三月期は「減少」超の見通しとなっており、中小企業は「減少」超の見通しとなっている。

 企業金融第8表参照

 九年七~九月期の金融機関の融資態度判断BSI(前期比「ゆるやか」-「きびしい」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業は「ゆるやか」超、中小企業では「きびしい」超となっている。
 先行きについては、大企業、中堅企業においては「ゆるやか」超で、中小企業は「きびしい」超で推移する見通しとなっている。
 九年七~九月期の資金繰り判断BSI(前期比「改善」-「悪化」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、いずれの規模においても引き続き「悪化」超となっている。
 先行きについては、大企業は十~十二月期に、中堅企業は十年一~三月期に「改善」超に転じる見通しとなっている。一方、中小企業は引き続き「悪化」超の見通しとなっている。
 九年九月末時点の金融機関からの設備資金借入判断BSI(前期比「増加」-「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、いずれの規模においても「減少」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても、「減少」超で推移する見通しとなっている。

 中期的な経営課題第3図参照

 中期的な経営課題(一社二項目以内回答)を全産業でみると、大企業、中堅企業では「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が最も多く、このほか、「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」をあげる企業が多い。一方、中小企業では「後継者、人材の確保、育成」が最も多く、次いで「国内販売体制、営業力の強化」となっている。
 業種別にみると、製造業では、いずれの規模においても「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」が最も多く、次いで、「国内販売体制、営業力の強化」、「国内工場・営業所の再編、生産・流通工程の見直し等によるコストの低減」が多くなっている。非製造業では、「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が多い。




 
    <12月10日号の主な予定>
 
 ▽世界経済白書のあらまし…………経済企画庁 

 ▽法人企業動向調査…………………経済企画庁 
 



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