1 我が国を取り巻く経済環境
平成八年度の我が国経済は、景気回復局面にあるものの、当初その回復テンポは緩やかであった。これは、景気回復への好循環が途切れがちであったことによるものであるが、その背景には、バブル期における膨大な設備投資によって生じた過剰設備能力の調整が行われてきたこと、バブル崩壊後の資産価格下落等による財務面の悪化に対応するための企業のバランスシートの調整が長引いたこと等が挙げられる。
しかし、平成八年度半ばごろから、在庫調整が一巡し、次第に景気の回復作用が働き始め、円安傾向によって外需がプラス要因化したことや、雇用情勢の改善を受けて雇用不安が薄らいだこと等が寄与し、民間需要主導による自律的回復がみられるようになった。
このように民間需要主導の自律的景気回復へ移行しつつあるが、中長期的将来への不透明感等から、景気回復感が十分ではない中、我が国経済は、大きな転換期を迎えている。経済のグローバル化が一層進展する等の中で、国際的な大競争時代が到来しており、他方で、長期的には、急速な高齢化の進展に伴い、生産年齢人口の減少、貯蓄率の低下等による経済の潜在的活力の低下が懸念されている。
我が国経済が抱えるこれらの課題を解決し、我が国市場を内外に一層開かれたものとするため、市場原理に立脚した経済構造改革を推し進めて、事業者の創意工夫が最大限発揮される自由で魅力ある市場を創造するとともに、活力ある豊かな経済を実現していくことが求められている。
2 規制緩和の推進と競争政策の積極的展開
政府は、我が国経済社会の抜本的な構造改革を図っていくために、規制緩和の推進を重要課題として位置付け、平成七年度からの三か年の規制緩和推進計画に沿って、規制緩和の推進に取り組んでいるところである。規制緩和推進計画は毎年度改定されることとされ、平成八年三月の改定に続き、平成九年三月二十八日に再改定された。
再改定された規制緩和推進計画においては、我が国経済における公正かつ自由な競争を一層促進することにより、我が国市場をより競争的かつ開かれたものとするとの観点から、引き続き、規制緩和とともに競争政策の積極的展開を図ることとされている。
3 平成八年度において講じた施策の概要
公正取引委員会は、こうした状況を踏まえ、独占禁止法の厳正かつ積極的な運用により、独占禁止法違反行為を排除し、また、政府規制制度及び独占禁止法適用除外制度を見直し、経済環境の変化に即応した公正な競争条件の整備を進めるとともに、経済のグローバル化が進む中、競争政策の国際的展開に適切に対処するよう努めた。
また、規制緩和とともに競争政策の一層の徹底を図るため、独占禁止法の運用機関である公正取引委員会の機能強化が必要であるとの観点から、公正取引委員会の事務を処理する組織として、従来の事務局に代えて事務総局を置くこと、委員長及び委員をより幅広い観点から人選するとの観点から、その定年年齢を引き上げること等を内容とする独占禁止法の改正が行われた(平成八年六月七日成立、同月十四日公布・施行)。
平成八年度においては、次のような施策に重点を置いて競争政策の運営に積極的に取り組んだ。
(1) 独占禁止法違反行為の積極的排除
当委員会は、市場原理が有効に機能することを阻害する価格カルテル、入札談合、再販売価格維持行為、参入制限等の市場アクセス阻害行為などの独占禁止法違反事件に対し、従来から厳正に対処してきており、平成八年度においても違反事件の積極的な処理に努めた。
主な事件についてみると、医療用食品の製造・販売分野における私的独占事件、機械保険及び組立保険の料率カルテル事件、九州大学等が発注する医療用エックス線フィルムに係る入札談合事件、アイスクリーム製品の再販売価格維持・並行輸入阻害事件等において勧告等の法的措置を採った。
また、東京都が発注する水道メーターに係る入札談合事件について、水道メーター製造業者等二十五社及びこれら二十五社の受注業務に従事していた者三十四名を平成九年二月に告発した。
なお、十四件の入札談合事件及び価格カルテル事件について、総額七十四億八千六百十六万円の課徴金の納付を命じた。
(2) 政府規制制度及び独占禁止法適用除外制度の見直し
規制緩和の推進と競争政策の積極的展開を一体的に進めるべきとの立場から、政府規制制度及び独占禁止法適用除外制度について実態調査を行い、その見直しについて検討を行った。
このうち、政府規制制度の見直しについては、「政府規制等と競争政策に関する研究会」を開催し、国内定期航空旅客運送事業分野及び電気事業分野・ガス事業分野について検討を行い、同研究会が取りまとめた報告書をそれぞれ平成九年三月及び四月に公表した。
独占禁止法適用除外制度の見直しについては、個別法に基づく独占禁止法適用除外制度のうち、二十法律三十五制度について廃止等の措置を採るための私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外制度の整理等に関する法律案(以下「一括整理法案」という。)が、第百四十回国会に提出された。同法案は平成九年六月十三日に可決・成立し、同月二十日に公布され、同年七月二十日に施行された。
また、六法律六制度については、個別に法改正等の措置が既に実施済み又は実施される予定である。その他の個別法に基づく適用除外制度(七法律八制度)、独占禁止法に基づく適用除外制度及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外等に関する法律(以下「適用除外法」という。)に基づく適用除外制度については、引き続き見直しを行い、平成九年度末までに具体的結論を得ることとされた。
また、再販売価格維持行為に対する独占禁止法の適用除外制度(以下「再販適用除外制度」という。)に関して、独占禁止法第二十四条の二第一項の規定に基づき、当委員会の指定により再販適用除外が認められている特定の商品(以下「再販指定商品」という。)については、平成九年四月一日から化粧品十四品目、一般用医薬品十四品目の指定を取り消した。これにより、昭和二十八年以降行われてきた再販指定商品の指定はすべて取り消された。
他方、独占禁止法第二十四条の二第四項の規定に基づいて、再販適用除外が認められている著作物(書籍、雑誌、新聞、レコード盤、音楽用テープ及び音楽用CD)については、「政府規制等と競争政策に関する研究会」の「再販問題小委員会」の中間報告書を公表後、関係各方面の意見を聴取するため、関係業界、消費者団体等との間で広く意見交換を行っているが、平成八年度においては、全国七か所でシンポジウムを開催した。平成九年二月から、「政府規制等と競争政策に関する研究会」を開催し、この問題について検討を進めているところであり、同研究会での検討結果等を踏まえて、平成九年度末までに結論を得ることとしている。
(3) 独占禁止法第四章の見直し
独占禁止法第四章に関し、持株会社規制、合併等の届出制度・株式保有の報告制度等について全般的に見直しを行うために、平成七年十一月から「独占禁止法第四章改正問題研究会」を開催し、持株会社規制から検討を行い、同研究会が取りまとめた報告書を同年十二月に公表した。
同報告書等の趣旨を踏まえ、持株会社に係る独占禁止法改正法案の作成作業を進め、持株会社の全面的な禁止を改め、事業支配力が過度に集中することとなる持株会社を禁止すること、大規模会社の株式保有総額の制限に係る適用除外株式を追加すること等を内容とする独占禁止法改正法案が第百四十回国会に提出され、同法案は平成九年六月十一日に可決・成立し、同月十八日に公布された。
同改正法は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされている。
また、平成八年六月から同研究会の下で「企業結合規制見直しに関する小委員会」を開催して、合併等の届出制度、株式保有の報告制度などについて検討を行い、同研究会が取りまとめた「企業結合規制の手続規定の在り方に関する報告書」を平成九年七月に公表した。
(4) 独占禁止法運用の透明性の確保と違反行為の未然防止
独占禁止法の効果的な運用を図り、違反行為を未然に防止するためには、事業者や消費者が独占禁止法の目的、規制内容及び法運用の方針を十分に理解することが必要である。このため、当委員会は、従来から独占禁止法の運用基準(ガイドライン)を作成・公表することによって、どのような行為が独占禁止法上問題となるのかを明らかにするとともに、事業者や事業者団体の相談に適切に対応することにより、違反行為の未然防止に努めている。
平成八年度においては、事業者や事業者団体が消費税の適正かつ円滑な転嫁のために、どのような行為を独占禁止法に違反することなく行えるかについて、具体的かつ分かりやすく示すこと等により、違反行為の未然防止を図るとともに、消費税率引上げ後の消費税等の適切かつ円滑な転嫁に資することを目的として、「消費税率の引上げ及び地方消費税の導入に伴う転嫁・表示に関する独占禁止法及び関係法令の考え方」を平成八年十二月に作成・公表した。
(5) 下請代金支払遅延等防止法による中小企業の競争条件の整備
当委員会は、中小企業の自主的な事業活動が阻害されることのないよう、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)の厳正かつきめ細やかな運用により、下請取引の公正化及び下請事業者の利益の確保に努めている。
平成八年度においては、違反行為が認められた親事業者等に対し、勧告、警告の措置を採った。
また、平成七年度から大規模小売業者と納入業者の取引のうち、下請法に規定する物品の製造委託に該当するもの(プライベート・ブランド商品の納入取引等)を書面調査の対象に加えているが、下請法違反行為又は下請法に違反するおそれのある行為が認められた大規模小売業者に対し、警告の措置を採るとともに、平成八年十一月、関係業界団体に対して、傘下会員が下請法を遵守し、下請取引の適正化が図られるよう要望を行った。
さらに、下請取引適正化のための都道府県との協力体制を推進し、下請法の周知徹底に努めるとともに、平成八年十二月に公表した「消費税率の引上げに伴う下請取引の適正化に関する下請法の考え方」に基づき、下請取引における消費税等の適正かつ円滑な転嫁に資するため、平成九年二月に公正取引委員会委員長・通商産業大臣の連名により、主な親事業者及び関係団体に遵守方の要請を行った。
(6) 不当景品類及び不当表示防止法による消費者行政の推進
当委員会は、消費者向けの財・サービスの種類や販売方法が多様化する中で、消費者の適正な商品選択が妨げられることのないよう、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)の厳正な運用により、不当な顧客誘引行為の排除に努めている。
平成八年度においては、牛乳の品質に関する不当表示事件、中古自動車の走行距離に関する不当表示事件及び電磁界変換方式によるネズミ撃退器の効果に関する不当表示事件に対して、排除命令を行った。
また、景品規制の見直し・明確化の観点から、平成八年二月に景品類提供の上限金額の引上げ等を内容とする告示の改廃及び運用基準の改正を行い、同年四月一日から施行したのに引き続き、その内容に即して、業種別告示・公正競争規約の見直しを図り、平成九年八月までに二十四業種の告示の廃止及び四業種の告示の変更を行った。また、公正競争規約についても、業種別告示の廃止等に合わせて見直しを行った。
(7) 経済のグローバル化に対応した競争政策の展開
経済のグローバル化の進展により、競争政策の国際的調和の推進を図ることが重要になってきている。このため、緊密化している二国間及び多国間の競争政策に関する協力、調整等が円滑に進められるよう、海外の競争当局との意見交換、国際会議の主催・参加等により、競争当局間の協力関係の一層の充実を図った。
また、貿易摩擦問題に関しては、日米包括経済協議の「規制緩和・競争政策」部会、日米フィルム問題に関するWTO協議に対応した。
さらに、平成七年度に引き続き国際協力事業団(JICA)を通じて、アジア・旧ソ連諸国の競争当局等の職員を対象として、「独占禁止法と競争政策」をテーマとする技術研修を実施したのを始め、ロシアその他外国政府が実施するセミナーに参加し、競争法・競争政策に関する技術協力を行った。
独占禁止法制の動き
1 独占禁止法の改正
企業活動のグローバル化、我が国経済における産業の空洞化の懸念といった内外の諸情勢の変化を背景として、主として規制緩和の観点から、持株会社の全面的な禁止を改めること、大規模会社の株式保有総額の制限に係る適用除外株式を追加すること等を内容とする独占禁止法改正法案が、平成九年三月に第百四十回国会に提出された。同法案は、平成九年六月十一日に可決・成立し、同月十八日に公布された。施行日については、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされた。
2 独占禁止法と他の経済法令等との調整
(1) 法令調整
独占禁止法と他の経済法令との調整に関する業務としては、電気通信事業法の一部を改正する法律案、日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律案、国際電信電話株式会社法の一部を改正する法律案、内航海運組合法の一部を改正する法律案等について、関係行政機関が立案するに当たり、所要の調整を行った。
(2) 行政調整
関係行政機関による行政措置等との調整に関する業務としては、シルバーマーク制度、老人保健施設の開設、生命保険業及び損害保険業の相互参入等について、「行政指導に関する独占禁止法上の考え方」の趣旨を踏まえ、所要の調整を行った。
違反被疑事件の審査及び処理
1 違反被疑事件の審査及び処理の状況
独占禁止法は、事業者が私的独占又は不当な取引制限をすること、不公正な取引方法を用いること等を禁止しているが(第三条、第十九条ほか)、当委員会は、一般から提供された情報、自ら探知した事実等を検討し、これらの禁止規定に違反する事実があると思料するときは、独占禁止法違反被疑事件として必要な審査を行っている。
審査事件のうち必要なものについては、独占禁止法第四十六条の規定に基づく権限を行使して審査を行い、違反する事実があると認められたときは、排除措置を採るよう勧告する(第四十八条第一項及び第二項)か、若しくは審判手続を開始し(第四十九条第一項)、又は違反行為がなくなってから一年を経過していることから勧告を行うことができないが、課徴金納付命令の対象となる場合には、同命令を行っている(第四十八条の二)。
なお、相手方が勧告を応諾した場合には勧告審決(第四十八条第四項)、その他の場合は審判手続を経て同意審決(第五十三条の三)又は審判審決(第五十四条)を行っている。
相手方が課徴金納付命令に対して不服申立てをした場合には、審判手続が開始され、同納付命令は失効する(第四十九条第二項及び第三項)。
平成八年度における審査件数は百八十件であり、そのうち平成八年度内に処理した件数は百十件である。百十件の内訳は、勧告十九件、勧告を行っていない課徴金納付命令二件、警告十七件、注意六十一件及び違反事実が認められなかったため審査を打ち切ったもの十一件となっている。
これらを行為類型別にみると、私的独占一件、価格カルテル三十四件、入札談合十件、不公正な取引方法四十一件、その他二十四件となっている。
勧告等の法的措置を採った事件は二十一件であり、この内訳は、私的独占一件、価格カルテル十件、入札談合五件、不公正な取引方法二件、その他三件となっている(第1表参照)。
2 課徴金納付命令
課徴金制度は、カルテル禁止の徹底を図るため、行政上の措置として設けられているものである。
課徴金の対象となる行為は、事業者又は事業者団体の行うカルテルのうち、商品若しくは役務の対価に係るもの又は実質的に商品若しくは役務の供給量を制限することにより、その対価に影響のあるものであり、これらの行為があった場合に、事業者又は事業者団体の構成事業者に対し、課徴金の納付を命じることとされている(第七条の二第一項、第八条の三)。
平成八年度は、十四件の独占禁止法違反事件について、合計三百七十事業者に対して総額七十五億一千六百三十二万円の課徴金の納付を命じた。これは、課徴金額でみると、過去二番目に多いものとなっている。
なお、平成八年度に課徴金の納付を命じた三百七十事業者のうち、二事業者から審判開始請求があり、当該二事業者に対して審判開始決定を行ったことから、当該二事業者に係る合計三千十六万円の課徴金納付命令(平成九年(納)第十九号及び第八十五号)は失効した(第2表参照)。
3 告 発
私的独占、カルテルなどの重大な独占禁止法違反行為については、勧告等の法的措置のほか罰則が設けられており、これらについては当委員会による告発を待って論ずることとされている(第九十六条、第七十三条第一項)。
平成八年度においては、東京都発注の水道メーターについて、受注予定者を決定するとともに、受注予定者が受注できるようにしていたとして、株式会社金門製作所ほか二十四社及びこれら二十五社の受注業務に従事していた者三十四名が、独占禁止法に違反する犯罪を行ったものと思料して、平成九年二月四日、検事総長に告発した(東京高等検察庁は同年三月三十一日起訴)。
審判及び訴訟
1 審 判
平成八年度における審判事件数は、平成七年度から引き継いだもの十三件、平成八年度中に審判開始決定を行ったもの二件の計十五件であり、平成八年度中に、七件(うち審判審決一件、同意審決一件、課徴金納付命令審決五件)について審決を行った。
平成八年度末現在において審判手続係属中の事件は、八件である。
2 訴 訟
平成八年度において係属中の独占禁止法第二十五条(無過失損害賠償責任)の規定に基づく損害賠償請求事件は、岩留工業株式会社による三蒲地区生コンクリート協同組合に対する請求事件一件であったが、本件は平成八年十二月に和解が成立した。また、平成八年度中に新たに提起された事件はなかった。
その他の独占禁止法関係の損害賠償請求事件等として、平成八年度において係属中のものは、旧埼玉土曜会談合事件に係る住民訴訟、日本下水道事業団発注の電気設備工事に係る住民訴訟、デジタル計装制御システム工事の入札に係る住民訴訟、社会保険庁発注に係る支払通知書等貼付用シールの供給業者に対する不当利得返還請求訴訟、アメリカ合衆国を債権者とする資産の仮差押異議申立事件(控訴審)及び米軍厚木基地における入札談合事件損害賠償請求訴訟がある。
審決取消請求事件として、平成八年度当初において係属中であったものは、東京もち株式会社による審決取消請求事件一件であったが、平成八年度中に新たに大日本印刷、トッパン・ムーア及び小林記録紙による審決取消請求事件が三件提起されたため、平成八年度末現在、係属中の審決取消請求事件は四件である。
法運用の透明性の確保と独占禁止法違反行為の未然防止
独占禁止法違反行為の未然防止を図るとともに、独占禁止法の運用を効果的なものとするためには、独占禁止法の目的、規制内容及び運用の方針が、国内外における事業者や消費者に十分理解され、それが深められていくことが不可欠である。このような観点から、当委員会は、各種の広報活動を行うとともに、事業者及び事業者団体の独占禁止法違反行為を具体的に明らかにした各種のガイドラインを公表し、それに基づいて、個々の具体的なケースについて、事業者等からの相談に応じている。
平成八年度においては、平成八年十二月に「消費税率の引上げ及び地方消費税の導入に伴う転嫁・表示に関する独占禁止法及び関係法令の考え方」を作成・公表した。
政府規制制度及び独占禁止法適用除外制度の見直し
我が国では、社会的、経済的な理由により、参入、設備、数量、価格等に係る経済的事業活動が政府により規制されていたり、独占禁止法の適用が除外されている産業分野が多くみられる。
このような政府規制は、我が国経済の発展過程において、一定の役割を果たしてきたものと考えられるが、社会的・経済的情勢の変化に伴い、当初の必要性が薄れる一方で、効率的経営や企業家精神の発揮の阻害、競争制限的体質の助長等、様々な競争制限的問題を生じさせてきているものも少なくない。
このため、我が国経済社会の抜本的な構造改革を図り、国際的に開かれ、自己責任原則と市場原理に立つ自由で公正な経済社会としていくためにも、規制緩和の推進が喫緊の課題となっている。
また、適用除外制度は、自由経済体制の下ではあくまでも例外的な制度であり、適用除外分野においては、市場メカニズムを通じた良質、廉価な商品・サービスの供給に向けた経営努力が十分に行われず、消費者の利益が損なわれるなどのおそれがあり、必要最小限にとどめるとともに、不断の見直しが必要である。
政府規制制度の見直しについては、「政府規制等と競争政策に関する研究会」を開催し、国内定期航空旅客運送事業分野及び電気事業分野・ガス事業分野について検討を行い、同研究会が各分野について取りまとめた報告書を平成九年三月及び四月にそれぞれ公表した。
独占禁止法適用除外制度については、個別法に基づく適用除外制度のうち、二十法律三十五制度について廃止等の措置を採るための一括整理法案が、第百四十回国会に提出された。一括整理法案は、平成九年六月十三日に可決・成立し、同月二十日に公布され、同年七月二十日から施行された。
また、その他の個別法に基づく適用除外制度については、「規制緩和推進計画の再改定について」(平成九年三月二十八日閣議決定)において、六法律六制度について個別に法改正等の措置を実施し、又は実施する予定であり、七法律八制度については、引き続き検討することとされた(第3表参照)。
さらに、独占禁止法に基づく適用除外制度及び適用除外法に基づく適用除外制度については、再改定された規制緩和推進計画において、「適用除外となる行為及び団体の全範囲について、制度自体の廃止を含めて見直し、平成九年度(一九九七年度)末までに具体的結論を得る。この際、適用除外法については、法そのものの廃止を含めて抜本的見直しを行う」こととされた。
価格の同調的引上げに関する報告の徴収
独占禁止法第十八条の二の規定により、年間国内総供給価額が六百億円超で、かつ、上位三社の市場占拠率の合計が七〇%超という市場構造要件を満たす同種の商品又は役務について、首位事業者を含む二以上の主要事業者(市場占拠率が五%以上であって、上位五位以内である者をいう。)が、取引の基準として用いる価格について、三か月以内に、同一又は近似の額又は率の引上げをしたときは、当委員会は、当該主要事業者に対し、当該価格の引上げ理由について報告を求めることができる。
この規定の運用については、当委員会は、その運用基準を明らかにするとともに、市場構造要件に該当する品目をあらかじめ調査し、これを運用基準別表に掲げ、当該別表が改定されるまでの間、同別表に掲載された品目について、価格の同調的引上げの報告徴収を行うこととしている。
平成八年度において、独占禁止法第十八条の二に規定する価格の同調的引上げに該当すると認めて、その引上げ理由の報告を徴収したものはなかった。
また、市場構造要件について調査を実施し、運用基準別表を改定し、平成九年六月一日から実施した。これは、国内総供給価額及び市場占拠率に関する平成六年の調査結果を踏まえて見直しを行ったものである。
経済実態の調査
当委員会は、競争政策の観点から、主要な産業を対象として、継続的取引の要因、株式保有等と取引との関係、排他性・閉鎖性を有する取引慣行や、内外価格差の有無等を含む企業間取引を中心とした市場における競争の実態について、調査を行ってきている。
平成八年度においては、独占的状態調査、一般用カラー写真フィルム及びカラー写真用印画紙の取引に関する実態調査、住宅用資材・設備機器等の取引に関する実態調査、清涼飲料水、食肉加工品及び婦人衣料品の流通・取引慣行に関する実態調査、外資系企業からみた我が国事業者団体の活動に関する調査等を行い、それぞれの業種における取引実態及び競争政策上の観点からの問題点を取りまとめて公表した。
株式保有・役員兼任・合併・営業譲受け等
1 株式保有
① 独占禁止法第九条の二第一項の規定に基づき、大規模会社は株式保有の総額を制限されている。一定の場合の株式保有については、あらかじめ当委員会の認可(第九条の二第一項第六号)又は承認(同項第九号)を要することとされているが、平成八年度に、この認可又は承認をしたものはなかった。
② 独占禁止法第十条第二項の規定に基づき、総資産が二十億円を超える国内の会社(金融業を営む会社は除く。)又は外国会社(金融業を営む会社は除く。)は、国内の会社の株式を保有する場合には、毎事業年度終了後、三か月以内に株式所有報告書を提出しなければならないこととされているが、平成八年度に当委員会に提出された会社の株式所有報告書の件数は九千三百七十九件で、うち外国会社によるものは六百五件であった。
③ 独占禁止法第十一条第一項の規定に基づき、金融会社が国内の会社の株式をその発行済株式総数の百分の五(保険業を営む会社にあっては、百分の十)を超えて株式を保有してはならないこととされているが、金融会社があらかじめ当委員会の認可を受けた場合には、同項の規定が適用されないこととされている。平成八年度において当委員会が認可した金融会社の株式の保有件数は八十八件で、いずれも第十一条第一項ただし書の規定に基づくものであり、同条第二項の規定に基づくものはなかった。
2 合併・営業譲受け等
独占禁止法第十五条第二項又は第十六条の規定に基づき、会社が合併、営業の全部又は重要部分の譲受け等をしようとする場合には、あらかじめ当委員会に届け出なければならないこととされている。平成八年度において、届出を受理した件数は、合併二千二百七十一件、営業譲受け等一千四百七十六件、合計三千七百四十七件であった。
合併の届出受理件数は、昭和五十五年度から増加傾向を示し、平成三年度において二千件を超え、平成七年度には二千五百二十件と過去最高の件数となり、平成八年度は、二千二百七十一件とやや減少したが、過去第二位の件数であった。
また、営業譲受け等の届出受理件数は、昭和四十年度から継続して増加傾向を示しており、昭和五十五年度には六百八十件と約三倍になり、さらに増加を続け、平成八年度は一千四百七十六件と過去最高の件数となった。
平成八年度において届出を受理したもののうち、独占禁止法第十五条第一項(第十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反するとして排除措置を採ったものはなかった。
3 主要な事例
平成八年度の合併・営業譲受け等及び株式保有等の主要な事例としては、新王子製紙株式会社と本州製紙株式会社との合併、三井石油化学工業株式会社及び住友化学工業株式会社による直鎖状低密度ポリエチレンの生産に関する共同出資会社の設立、日本軽金属株式会社による東洋アルミニウム株式会社の株式取得、広島ガスプロパン株式会社ほか四社による共同出資会社の設立、株式会社さくら銀行による株式会社わかしお銀行の株式取得、東京都中央卸売市場世田谷市場花き部へ入場予定の卸売業者五社の統合等があった。
4 独占禁止法第四章の見直し
「規制緩和推進計画について」等の累次の閣議決定を受け、事業支配力の過度の集中の防止という独占禁止法の目的に留意しつつ、持株会社の全面的な禁止を改めること等を内容とする独占禁止法改正法案が、第百四十回国会において可決・成立した(平成九年六月十八日公布)。
また、「独占禁止法第四章改正問題研究会」では、持株会社問題の次に、合併等の届出制度、株式所有の報告制度など、第四章の手続面を中心として検討を行うために、平成八年六月から、「企業結合規制見直しに関する小委員会」を同研究会の下で開催して検討を行い、当委員会は、同研究会が検討結果を取りまとめた「企業結合規制の手続規定の在り方に関する報告書」を平成九年七月に公表した。
事業者団体
独占禁止法第八条は、事業者団体による競争の実質的制限、一定の事業分野における事業者の数の制限、構成事業者の機能又は活動の不当な制限、事業者に不公正な取引方法を用いさせること等の行為を禁止するとともに(第八条第一項)、事業者団体に対して、その成立、変更及び解散の届出義務を課している(第八条第二項から第四項まで)。
1 事業者団体の届出状況
平成八年度における事業者団体の届出状況は、成立届百三十件、変更届一千七百七件、解散届六十二件、合計一千八百九十九件であった。また、平成八年度までに当委員会に対して、成立届をして現存している事業者団体は、全体で一万五千四百三十七団体となっている。
2 事業者団体の活動に関する相談状況
平成八年度においては、事業者団体から相談のあった八百五十六件について回答(指導)を行ったほか、相談のあった事例のうち、他の事業者団体にも参考になると思われるものの概要を主要相談事例集として取りまとめ、平成九年六月に公表するとともに、事業者団体及び関係官公庁に対して説明会を実施した。
国際的協定又は国際的契約
独占禁止法第六条は、第一項において、事業者が不当な取引制限又は不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際契約の締結を禁止し、第二項において、独占禁止法上問題となるおそれのある種類の国際的協定又は国際的契約(以下「国際契約」という。)を締結した事業者に対し、契約成立の日から三十日以内に当委員会に届け出ることを義務付けている。
平成八年度における国際契約の届出件数は七百二件であり、平成七年度に比べて二四・〇%(二百二十二件)の減少となった。
届け出られた国際契約については、その内容を審査し、不当な取引制限又は不公正な取引方法に該当するおそれがある事項を含むものについては、当該事項を修正又は削除するよう指導している。また、当該契約条項の具体的な実施状況によっては、法違反になる旨の注意を促し、法違反の発生の未然防止を図る措置も講じている。
平成八年度における国際契約の指導等の件数は、契約件数で三十三件であった。
また、国際契約の届出制度については、独占禁止法の一部改正により廃止されている。
不公正な取引方法の指定及び運用
独占禁止法第十九条は、事業者が不公正な取引方法を用いることを禁止しており、禁止される行為の具体的内容については、当委員会が法律の枠内で告示により指定することとされている(第二条第九項、第七十二条)。
平成八年度においては、同規定に違反する事件処理のほか、不公正な取引方法の指定に関する調査、不公正な取引方法の防止のための指導業務等を行っており、また、役務の委託取引において大規模事業者が中小事業者に不当な不利益を与える不公正な取引に対して適切に対処するため、貨物自動車運送業等の役務の委託取引について実態調査を行うとともに、「企業取引研究会」を開催して検討を行い、同研究会が取りまとめた報告書「役務の委託取引と独占禁止法」を平成九年六月に公表した。
適用除外カルテル等
独占禁止法適用除外制度により、独占禁止法の禁止規定等の適用が除外されている行為としては、カルテルが大部分を占めており、平成八年度末現在、三十四の法律において、五十三のカルテル制度が独占禁止法の適用除外とされている。
独占禁止法第二十四条の三の規定に基づく不況カルテル及び同法第二十四条の四の規定に基づく合理化カルテルについては、平成八年度において実施されたものはなかった(不況カルテルについては平成元年十月以降、合理化カルテルについては昭和五十七年一月以降、実施されていない。)。
個別法に基づき、当委員会に協議等を行った上で主務大臣が認可等を行う適用除外カルテルの件数は、昭和四十年度末をピークに減少傾向にあり、平成八年度末現在では十二件となっている。
再販売価格維持契約
再販売価格維持行為は、原則として不公正な取引方法(再販売価格の拘束、一般指定第十二項)に該当し、独占禁止法第十九条に違反するものであるが、おとり廉売の防止等の観点から、独占禁止法第二十四条の二の規定に基づき、当委員会が指定する特定の商品及び著作物を対象とするものについては、例外的に独占禁止法の適用が除外されている。
1 再販適用除外制度の見直し
再販適用除外制度については、累次の閣議においてその見直しが決定されており、平成九年四月一日から、すべての再販指定商品の指定告示を廃止した。また、再販適用除外が認められている著作物(書籍、雑誌、新聞、レコード盤、音楽用テープ及び音楽用CD)については、「政府規制等と競争政策に関する研究会」の「再販問題検討小委員会」の中間報告書を公表以降、関係業界、消費者団体等との間で意見交換を行っており、平成八年度においては、全国七か所でシンポジウムを開催した。
また、平成九年二月以降、「政府規制等と競争政策に関する研究会」を開催し、この問題についての検討を進めている。
2 再販売価格維持契約の実施状況
平成八年度における再販売価格維持契約に関する届出受理件数は、変更届二十四件であり、成立届はなかった。
下請法に関する業務
下請法は、資本金一億円を超える事業者(親事業者)が個人又は資本金一億円以下の事業者(下請事業者)に、また、資本金一千万円を超え一億円以下の事業者(親事業者)が個人又は資本金一千万円以下の事業者(下請事業者)に物品の製造又は修理を委託する場合、親事業者に対し下請事業者への発注書面の交付(第三条)並びに下請取引に関する書類の作成及びその二年間の保存(第五条)を義務付けているほか、親事業者が、委託した給付の受領拒否や下請代金の支払遅延等の行為を行った場合には、当委員会は、その親事業者に対して、当該行為を取りやめ、下請事業者が被った不利益の原状回復措置等を講じるよう勧告する旨を定めている。
1 違反被疑事件の処理
当委員会では、下請法違反行為が行われているかを把握するため、主として製造業を営む親事業者及びこれらと取引している下請事業者を対象として書面調査を実施しており、平成八年度には、親事業者一万三千八百五十七社及びこれらと取引している下請事業者七万四百五十三社を対象に書面調査を行った。調査の結果、勧告二件、警告一千四百三十九件の措置を採った。
平成八年度において下請法違反被疑事件を処理した件数は一千五百四十七件であり、このうち、一千四百四十一件(九三・一%)について違反行為又は違反のおそれのある行為が認められた。これら一千四百四十一件のうち、二件については第七条第二項の規定に基づいて勧告を行い、一千四百三十九件について警告の措置を採った。
これらを違反行為態様別にみると、発注時に下請代金の額、支払方法等を記載した書面を交付していないか、又は交付していても記載事項が不備のものが一千九十件、割引困難な手形の交付が二百三十五件、下請代金の支払遅延が二百二十六件、下請代金の減額が百二十三件、受領拒否が八十六件となっている。
下請代金の減額事件については、平成八年度中に、親事業者四十二社により総額一億四千九百七十六万円が三百六社の下請事業者に返還されており、下請代金の支払遅延事件については、親事業者二十四社により総額三千四十九万円の遅延利息が百五十四社の下請事業者に支払われている。
2 消費税率の引上げ等に伴うガイドラインの周知
消費税率の引上げ等に伴う対応として、平成八年十二月二十五日、「消費税率の引上げに伴う下請取引の適正化に関する下請法の考え方」を公表するとともに、下請取引における消費税等の適正かつ円滑な転嫁に資するため、平成九年二月二十八日、公正取引委員会委員長・通商産業大臣の連名により、主な親事業者八千四百五十七社及び三百五十の関係団体(中小企業団体に対しては公正取引委員会事務総長・中小企業庁長官の連名による。)に遵守方の要請を行った。
景品表示法に関する業務
景品表示法は、不当な顧客の誘引を防止するため、景品類の提供について必要と認められる場合に、公正取引委員会告示により、景品類の最高額、総額、種類、提供の方法等について制限又は禁止し(第三条)、また、商品又は役務の品質、規格その他の内容又は価格その他の取引条件について、実際のもの又は競争業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認される不当な表示を禁止している(第四条)。これらの規定に違反する行為に対して、当委員会は排除命令を、都道府県知事は指示を行い、これを是正させることができる。
1 違反被疑事件の処理
平成八年度においては、牛乳の品質に関する不当表示事件一件、中古自動車の走行距離に関する不当表示事件一件、電磁界変換方式によるネズミ撃退器の効果に関する不当表示事件四件に対して排除命令を行い(第4表参照)、景品関係二百十一件、表示関係三百十八件の合計五百二十九件の警告を行った。
都道府県における景品表示法違反事件の処理状況は、景品表示法第九条の二の規定に基づく指示を行ったものはなく、注意を行ったものが一千三百五十三件(景品三百十三件、表示一千四十件)であった。
2 景品規制の見直し
当委員会は、懸賞景品告示に係る上限金額の引上げ等を行うための景品規制の一般規定に係る関係告示及び運用基準を改正し、平成八年四月一日から施行した。この一般規定の見直し・明確化に引き続いて、業種別告示・公正競争規約(業種別ルール)についても、改正後の一般規定の内容に則して見直しを図ることとしており(「規制緩和推進計画の再改定について」)、平成九年八月末までに、二十九の業種別告示のうち二十八業種の告示について所要の見直しを終え、二十四業種の告示の廃止及び四業種の告示の変更を行った。
また、公正競争規約についても、業種別告示の廃止等に合わせて所要の見直しを行った。
3 公正競争規約制度
公正競争規約は、事業者又は事業者団体が景品表示法第十条の規定に基づき、当委員会の認定を受けて、過大な景品類の提供又は不当な表示を防止するために自主的に定める基準である。
平成八年度において新たに認定した規約はなかった。
消費者関係業務
消費者関係業務については、平成八年度において景品表示法の運用業務、消費者に対する不公正な取引方法の指定に関する業務、消費者モニターに関する業務等、消費者利益の確保に関連する業務を一元的に担当する部署として消費者取引課を新設し、消費者利益の確保に一層積極的に取り組んでいる。
1 消費者モニター制度
独占禁止法や景品表示法の施行、その他当委員会の消費者保護の諸施策の的確な運用に資するため、消費者モニター制度を設置し、当委員会の依頼する特定の事項の調査、違反被疑事実の報告、消費者としての体験、見聞等の報告などの協力を求めている。
平成八年度においては、一千名を消費者モニターに選定・委嘱し、三回のアンケート調査を実施し、三千四百八件の意見及び情報の提供があった。
2 有料老人ホームにおける消費者取引の適正化に関する実態調査
関東近県に所在する九十六施設の有料老人ホームの表示・契約等の実態について調査を行い、消費者に対する適切な情報提供等、消費者取引の適正化の観点から検討を行い、その結果を「有料老人ホームにおける消費者取引の適正化について」として、平成九年六月に公表した。
国際関係業務
経済のグローバル化の進展により、競争政策の国際的調和の推進を図ることが重要になってきている。このため、緊密化している二国間及び多国間の競争政策に関する協力、調整等が円滑に進められるよう、海外の競争当局との意見交換、国際会議への参加等により、競争当局の協力関係の一層の充実を図った。
また、貿易摩擦問題への対応に関しては、競争政策の観点から、外国企業の我が国市場への参入に当たり、反競争的行為があった場合には、これに厳正に対処することとし、また、日米包括経済協議の「規制緩和・競争政策」の作業部会等に積極的に対応するとともに、日米フィルム問題に関するWTO協議に対応した。
さらに、平成八年度は国際協力事業団(JICA)を通じて、アジア・旧ソ連諸国における競争当局等の職員を対象として、「独占禁止法と競争政策」をテーマとする技術研修を実施したのを始め、発展途上国や旧社会主義国に対する競争法・競争政策に関する技術協力を行った。
広報及び相談に関する業務
平成八年度においては、百三十九件の新聞発表を行い、また、広報資料を作成・配布したほか、海外向け「FTC/Japan Views」を作成・配布した。
また、全国八都市において、競争政策のより一層の理解を図る観点から、「規制緩和に伴う企業活動の変化と独占禁止法」をテーマとする講演会を開催するとともに、当委員会の最近の活動状況について、各地の主要経済団体等の有識者と当委員会の委員との意見交換を行った。
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◇賃金の動き
十月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は二十九万四千三百五十五円、前年同月比一・五%増(規模三十人以上では三十二万二千八百十七円、前年同月比一・五%増)であった。
現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万九千四百二十五円、前年同月比一・一%増(同三十一万七千三百三十五円、一・一%増)であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十七万六十九円、前年同月比一・二%増(同二十九万一千二百四十四円、一・一%増)で、所定外給与は一万九千三百五十六円、前年同月比〇・一%減(同二万六千九十一円、〇・九%増)となっている。
また、特別に支払われた給与は四千九百三十円、前年同月比三五・九%増(同五千四百八十二円、四五・八%増)となっている。
実質賃金は、一・一%減(同一・〇%減)であった。
産業別にきまって支給する給与の動きを前年同月比によってみると、不動産業三・一%増(同五・八%増)、鉱業一・六%増(同〇・七%増)、製造業一・四%増(同一・三%増)、卸売・小売業、飲食店一・三%増(同二・四%増)、サービス業一・一%増(同〇・九%増)、建設業〇・七%増(同一・二%増)、金融・保険業〇・六%増(同前年と同水準)、運輸・通信業〇・三%増(同〇・三%増)、電気・ガス・熱供給・水道業〇・六%減(同〇・六%増)であった。
◇労働時間の動き
十月の規模五人以上事業所の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は一六〇・五時間、前年同月比〇・六%減(規模三十人以上では一六二・〇時間、前年同月比〇・一%減)であった。
総実労働時間のうち、所定内労働時間は一五〇・二時間、前年同月比〇・五%減(同一四九・四時間、同前年と同水準)、所定外労働時間は一〇・三時間、前年同月比一・九%減(同一二・六時間、同前年と同水準)、季節変動調整済の前月比は一・四%減(同〇・八%減)であった。
製造業の所定外労働時間は一四・一時間で、前年同月比は前年と同水準(同一五・九時間、同前年と同水準)、季節変動調整済の前月比は二・八%減(同二・九%減)であった。
◇雇用の動き
十月の規模五人以上事業所の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・八%増(規模三十人以上では前年と同水準)、季節変動調整済の前月比は〇・一%増(同前月と同水準)、常用労働者のうち一般労働者では〇・二%増(同〇・三%減)、パートタイム労働者では四・一%増(同二・八%増)であった。
常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、建設業四・〇%増(同〇・三%減)、サービス業二・〇%増(同一・六%増)、不動産業一・〇%増(同〇・一%増)、運輸・通信業〇・九%増(同〇・六%増)、卸売・小売業、飲食店〇・二%増(同〇・二%減)と、これらの産業は前年を上回っているが、製造業〇・四%減(同〇・六%減)、電気・ガス・熱供給・水道業一・二%減(同一・二%減)、金融・保険業三・二%減(同三・六%減)、鉱業五・一%減(同一五・一%減)と前年同月を下回った。
主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者一・一%減(同一・二%減)、パートタイム労働者四・六%増(同六・九%増)、卸売・小売業、飲食店では一般労働者〇・三%減(同〇・七%増)、パートタイム労働者一・四%増(同二・五%減)、サービス業では一般労働者一・〇%増(同〇・五%増)、パートタイム労働者七・五%増(同八・三%増)となっている。
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消費税の課税事業者(注)に該当する個人事業者の方は、平成十年三月三十一日(火)までに平成九年分の「消費税及び地方消費税確定申告書」を作成して所轄の税務署に提出するとともに、その消費税額及び地方消費税額を納付してください。
なお、「消費税及び地方消費税確定申告書」には簡易課税用と一般用の二種類があります。
① 平成七年中の課税売上高が、四億円以下の課税事業者で、平成八年中までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している方は、「消費税及び地方消費税確定申告書(簡易課税用)」を提出してください。
② ①以外の方
簡易課税制度を選択していない課税事業者又は簡易課税制度を選択していても平成七年中の課税売上高が四億円を超える個人事業者の方は、「消費税及び地方消費税確定申告書(一般用)」を提出してください。
(注) 「課税事業者」とは、次の方をいいます。
・平成七年中の課税売上高が三千万円を超える事業者
・平成七年中の課税売上高が三千万円以下の事業者で、平成八年中までに「消費税課税事業者選択届出書」を提出している事業者
○ 課税事業者に該当することとなった場合は、速やかに「消費税課税事業者届出書」を提出する必要があります。
○ 平成九年四月一日に消費税率が三%から四%に引き上げられるとともに、地方消費税が創設されました。平成九年分の消費税及び地方消費税の確定申告書を作成するためには、平成九年中に行った課税売上げ、課税仕入れについて、三%の税率が適用されたものと四%の税率が適用されたものとに区分して行う必要があります。
○ 平成九年分から、消費税及び地方消費税の確定申告書に、課税期間中の課税売上げの額及び課税仕入れ等の税額の明細等を記載した書類(付表)の添付が義務付けられました。
○ 個人事業者の平成九年分の限界控除税額の計算方法が変わりました。平成九年分に限界控除制度が適用される方は、申告書に同封の付表3を使用して限界控除税額を計算してください。
○ 平成十年分からは、簡易課税制度の適用に当たっては、簡易課税制度を適用できる基準期間の課税売上高の上限が二億円に引き下げられるとともに、これまで第四種事業とされていた事業のうち、不動産業、運輸通信業、サービス業(飲食店業を除きます。)は第五種事業とされ、そのみなし仕入率は五〇%となります。
(注) 平成八年分の課税売上高が二億円を超えるため、平成十年分について簡易課税制度の適用ができなくなる事業者の方は、仕入税額控除を受けるためには、課税仕入れ等の事実を記載した「帳簿及び請求書等」の保存が必要となります。
○ 納税は、振替納税が便利です。
○ 消費税及び地方消費税の申告・納付の手続等についてお分かりにならない点がありましたら、最寄りの税務相談室又は税務署にお尋ねください。
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