高齢社会白書のあらまし
平成9年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告
平成10年度において講じようとする高齢社会対策
平成九年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告
<概 説> 高齢社会の動向
<第1節> 高齢者の暮らしと意識
1 増加を続ける高齢者人口
○ 我が国の六十五歳以上の高齢者人口は、「人口推計」(総務庁)によれば、平成九年六月に十四歳以下の年少人口を上回り、十年二月には二千万人を超えるなど、増加を続けている。
2 高齢者の家計
○ 高齢者が何から収入を得ているかについて、「国民生活基礎調査」(平成八年)(厚生省)をみると、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、公的年金・恩給の総所得に占める割合が一〇〇%となっている世帯は、半数を超え(五〇・五%)、六〇%以上となっている世帯まで加えると四分の三近くになっている。
○ 貯蓄現在高階級別の世帯分布を「貯蓄動向調査」(平成九年)(総務庁)によりみると、世帯主が六十歳以上の勤労者世帯、無職世帯ともに、三千万円以上の貯蓄を保有する世帯がそれぞれ二三・四%、二六・二%と全体の約四分の一を占めている一方、六百万円未満の世帯もそれぞれ一九・八%、二一・四%と全体の約五分の一を占めており、貯蓄現在高の世帯間の散らばりが大きい(第1図参照)。
3 高齢者の活動等
○ 高齢者の就業状況について、「労働力調査」(平成九年)(総務庁)によれば、六十〜六十四歳の者の完全失業率は六・二%、また、「職業安定業務月報」(平成九年十月)(労働省)によれば、六十〜六十四歳の者の有効求人倍率は〇・〇七倍と、六十〜六十四歳の者をめぐる雇用環境は厳しい状況にある(第2図参照)。
○ 六十歳以上の者が、何歳くらいまで収入のある仕事をするのがよいと思っているかを「中高年齢層の高齢化問題に関する意識調査」(平成十年)(総務庁)でみると、「年齢にこだわらず、元気ならいつまでも働く方がよい」が約三分の一にのぼるなど「六十歳以上」とする者が約九割を占め、六十歳を過ぎても仕事をするという考え方が一般的になりつつある(第3図参照)。
○ 同調査によると、六十歳以上の者の約半数が過去一年間に何らかの活動(趣味、健康・スポーツ、地域行事の世話等)に参加したことがあるが、参加したことがない者について、その理由をみると(複数回答)、「健康・体力に自信がない」が三〇・六%で最も高い割合となっており、以下「参加する時間がない」が二〇・七%、「家庭の事情(病人、家事、仕事)がある」が一九・九%となっている。
○ 六十歳以上の者がどの程度生きがいを感じているかについて、「高齢者の健康に関する意識調査」(平成九年)(総務庁)によると、「十分感じている」と「多少感じている」を合わせると約八割に達している一方、「あまり感じていない」が一五・六%、「全く感じていない」が二・二%となっている。
4 高齢者の生活時間
○ 高齢者が誰と一緒に一日を過ごしているかについて、「社会生活基本調査」(平成八年)(総務庁)をみると、六十五歳以上の単身高齢者については、「一人」でいる時間が十二時間十八分(高齢者が「一人」でいる時間の約二倍)となっており、これに睡眠時間を加えると二十時間四十三分で、単身高齢者は一日の大半を一人で過ごしていることとなる。
5 活力ある高齢社会
○ 高齢者の暮らしは、それまでの生活環境、就業実態や家族構成等の相違を反映して、経済状況や健康状態なども個人差が大きく、高齢者が多様性を有していることが分かる。
○ 今後とも、高齢者の多様性に配慮しつつ、高齢者が生きがいを持って自立した生活が送れるよう支援するとともに、それぞれの経験と能力をいかし、高齢者が社会を支える重要な一員として各種の社会的な活動に積極的に参加できるよう、国及び地方公共団体はもとより、地域社会、企業、若年世代等社会を構成する各主体がそれぞれの立場から努力していくことが重要である。
<第2節> 高齢社会対策の動向
1 高齢社会対策関係予算
○ 一般会計予算における高齢社会対策関係予算については、平成九年度においては八兆六千三百九十六億円、十年度においては九兆八百四十六億円となっている。
○ 施策・事業の主な予算額(平成十年度)をみると、国民年金及び厚生年金保険(国庫負担分)が四兆二千四百五十五億円、老人医療費の確保が三兆五千四百三十五億円、老人保護事業(特別養護老人ホーム等)が四千三百一億円、在宅サービス事業が二千六百七十六億円などとなっている。
2 高齢社会対策の動き
○ 平成九年度に推進された高齢社会対策について、主な動きを挙げれば次のとおりである。
@ 雇用保険法及び船員保険法の改正
急速な高齢化の進展等に対応し、労働者の雇用の安定等を図るため、雇用保険法(昭和四十九年法律第一一六号)及び船員保険法(昭和十四年法律第七三号)の一部改正が行われた。
改正内容は、介護休業制度が平成十一年度から義務化されることを踏まえ、介護休業を行う労働者の雇用の継続を図るため、介護休業を取得した労働者に対する給付(介護休業給付)を創設することなどである。
A 老人保健法の改正
医療保険制度の安定的な運営の確保、世代間の負担の公平等を図る趣旨から、老人医療を受ける者の一部負担金の額の引き上げ、薬剤に係る一部自己負担の創設等の措置を講ずることとし、老人保健法(昭和五十七年法律第八〇号)の一部改正を含む健康保険法等の一部改正が行われた。
老人保健法の改正内容は、訪問指導の対象者を心身の状況や置かれている環境等に照らして療養上の保健指導が必要であると認められる者に広げること、外来一部負担金の額を、保険医療機関等ごとに、一日につき五百円(ただし、同一の月に同一の保険医療機関等において四回を限度とする)とすること、入院一部負担金の額を、保険医療機関等ごとに、一日につき平成九年度においては一千円、十年度においては一千百円、十一年度においては一千二百円とすること、低所得者に係る入院一部負担金の額を、保険医療機関等ごとに、一日につき五百円とすること、外来の際の薬剤に係る一部負担に関し、一日分の薬剤につき、内服薬は、二〜三種類三十円、四〜五種類六十円、六種類以上は百円、外用薬は、一種類五十円、二種類百円、三種類以上は百五十円、頓服薬は一種類につき十円とすることなどである。
B 介護保険法の成立
本格的な高齢社会の到来に対応して、国民の共同連帯の理念に基づき、要介護状態にある者等がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むために必要な保健医療サービス及び福祉サービスが総合的に提供されるよう、介護保険制度を創設する介護保険法(平成九年法律第一二三号)が成立した。
介護保険制度は、市町村及び特別区が保険者であり、国、都道府県等が共同で支える重層的な制度となっており、四十歳以上の者を被保険者としている。被保険者が介護が必要になった場合、保険者による要介護認定を受け、保険給付として介護サービスを利用する。その際、被保険者は、介護サービスの費用の一割を負担する。保険給付に必要な費用は、二分の一を保険料により、残り二分の一を公費により賄うこととしている。
C 児童福祉法の改正
少子化の進行等、児童及び家庭を取り巻く環境の変化を踏まえ、児童の福祉の増進を図るため、児童福祉法(昭和二十二年法律第一六四号)の一部改正が行われた。
改正内容は、市町村の措置による保育所入所の仕組みを保護者が希望する保育所を選択する仕組みに改めること、児童家庭支援センターの創設による地域の相談支援体制の強化を図ることなどである。
D 特定非営利活動促進法の成立
ボランティア活動を始めとする特定非営利活動を行う団体に法人格を付与すること等により、これら活動の発展を促進する特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)が成立した。
同法においては、特定非営利活動法人の設立の認証、定款、認証の基準等、役員の定数や解散事由などの法人の設立、管理、解散・合併等に関する事項が定められている。
<第1章> 高齢化の状況
<第1節> 高齢者人口の状況
○ 六十五歳以上の高齢者人口は、「人口推計」(総務庁)でみると、一千九百七十六万人(平成九年十月一日現在)となっており、総人口(一億二千六百十七万人)に占める割合(高齢化率)は一五・七%となっている。一年前の八年十月一日現在の同調査と比較すると七十四万人の増、高齢化率〇・六ポイントの上昇である。
○ 今後の高齢化の推移を「日本の将来推計人口」(平成九年一月推計、中位推計)(厚生省)でみると、六十五歳以上の高齢者人口及び高齢化率は、平均寿命の伸長や低い出生率を反映して今後も上昇を続け、平成二十七年(二〇一五年)には、高齢者人口は三千百八十八万人となって、高齢化率は二五%を超え、国民の四人に一人以上が六十五歳以上の高齢者という本格的な高齢社会が到来するものと予測される(第4図参照)。
<第2節> 高齢者世帯の状況
○ 高齢者のいる世帯について、「国民生活基礎調査」(平成八年)(厚生省)でみると、六十五歳以上の者のいる世帯数は一千三百五十九万世帯であり、全世帯(四千三百八十一万世帯)の三一・〇%を占める。
○ 六十五歳以上の者のいる世帯の内訳は、「単独世帯」が二百三十六万世帯(一七・四%)、「夫婦のみの世帯」が三百四十万世帯(二五・〇%)、「親と未婚の子のみの世帯」が百八十五万世帯(一三・六%)、「三世代世帯」が四百三十二万世帯(三一・八%)であり、六十五歳以上の者のいる世帯における三世代世帯の割合が低下し、単独世帯及び夫婦のみの世帯の割合が大きくなってきている(第5図参照)。
<第3節> 人口高齢化の要因
○ 我が国の平均寿命については、最近の状況を「平成八年簡易生命表」(厚生省)でみると、平成八年(一九九六年)には男性が七七・〇一年(前年より〇・六三年の延び)、女性が八三・五九年(同〇・七四年の延び)となっている。
○ 出生の最近の状況を「人口動態統計」(平成八年)(厚生省)でみると、平成八年の出生数は百二十万六千五百五十五人で七年と比べて一万九千四百九十一人増加し、出生率(人口千人当たりの出生数)は、八年は九・七で、七年の九・六をわずかに上回った(九年推計値:百十九万人、九・五)。また、合計特殊出生率は、平成八年は一・四三で、過去最低であった七年の一・四二とほぼ同じとなっている。なお、八年は「うるう年」であったが、仮に「うるう年」でないとしてその補整を行うと合計特殊出生率は一・四二となる(第6図参照)。
○ 我が国では婚姻外での出生が少なく、既婚者の出生児数は大きく低下していないことから、出生率低下は、主として初婚年齢の上昇(晩婚化)や結婚しない人の増加(非婚化)によるものと考えられる。晩婚化・非婚化の進行に伴い、結婚する人が減り、結婚に伴う出生が減少して、出生率が低下する。
○ 未婚率の推移を「国勢調査」(総務庁)でみると、昭和五十年頃から二十五〜三十九歳の男性及び二十歳代の女性で上昇が際立っている。また、生涯未婚率は、「人口統計資料集」(平成九年)(厚生省)によれば、平成七年(一九九五年)に男性八・九二%、女性五・〇八%と上昇してきており、初婚年齢も上がってきている。
<第4節> 高齢化と経済
○ 平成九年(一九九七年)の労働力人口総数(十五歳以上労働力人口)は、六千七百八十七万人であったが、そのうち六十歳以上は九百十万人であり、一三・四%を占めた。労働力人口の高齢化は着実に進んでおり、労働力人口総数が二十一世紀に入ると減少していくと予想される中で、今後一層進展していくものと見込まれる。
○ 高齢化の進行に伴い、社会保障給付や公的な負担の増大、さらに家族の私的な負担の高まりが予想される。租税負担、社会保障負担及び財政赤字を合わせた国民負担率(対国民所得)は、昭和四十五年度(一九七〇年度)の二四・九%から平成十年度(一九九八年度)の五〇・七%(当初見込み。ただし、財政赤字のうち、国鉄長期債務及び国有林野累積債務の一般会計承継に係る分という特殊要因を除いた場合には四四・二%)へと上昇している。
<第5節> 高齢者の経済生活
○ 高齢者世帯の年間所得(平成七年の所得)について、「国民生活基礎調査」(平成八年)(厚生省)でみると、三百三十三万八千円であり、公的年金・恩給が五八・七%を占める。高齢者世帯の年間所得は全世帯の半分程度に過ぎないが、世帯人員一人当たりでは大きな差はみられなくなる。
○ 高齢者の就業状況について、「高年齢者就業実態調査」(平成八年)(労働省)でみると、男子の場合、就業者の割合は、六十〜六十四歳で七〇・〇%、六十五〜六十九歳で五三・四%である。不就業者であっても、六十〜六十四歳の不就業者(三〇・〇%)のうち六割以上が、六十五〜六十九歳の不就業者(四六・六%)のうち四割近くが就業を希望している。
女子の場合、就業者の割合は、六十〜六十四歳で四一・一%、六十五〜六十九歳で二八・一%である。不就業者であっても、六十〜六十四歳の不就業者(五八・九%)のうち三割以上が、六十五〜六十九歳の不就業者(七一・九%)のうち二割以上が就業を希望している。
○ 高齢者の就業意欲を外国と比較してみると、「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成七年度)(総務庁)によれば、我が国は、アメリカ、ドイツ等より仕事を続けている者の割合は高く、今後も仕事を続けたいという意欲もアメリカと並び高くなっている。
<第6節> 高齢者の健康
○ 六十五歳以上の要介護等の高齢者の割合について、人口千人当たりの数でみると、在宅の要介護者は四九・三、特別養護老人ホームの在所者は一二・一、老人保健施設の在所者は六・〇となっている。また、病院・一般診療所に六か月以上入院している六十五歳以上の高齢者は、人口千人当たり一五・六となっている。これらの割合は、年齢階層が上がるにつれて大きく上昇する傾向がある(第1表参照)。
○ 六十五歳以上の死亡者の生前の状況やその死亡者の介護者の状況等を調査した「人口動態社会経済面調査」(平成七年度)(厚生省)によると、主に介護をしていた者については、「世帯員」が六六・八%、「世帯員以外の親族」が五・五%、「病院・診療所の職員」が一六・四%などとなっている。
「世帯員」又は「世帯員以外の親族」であった主な介護者の平均年齢は六〇・四歳であり、これが「妻」では七一・四歳、「長男の妻」五四・二歳、「長女」五四・三歳となっている。
○ 親や配偶者など家族が寝たきりになった場合、主にどのように介護すべきかについて、「中高年齢層の高齢化問題に関する意識調査」(平成十年)(総務庁)でみると、四十〜五十九歳の者では、「家族、親族が面倒をみて不足分を福祉施策活用」が四七・二%と最も多く、次いで「家族、親族が面倒をみるべき」三三・五%の順となっている。一方、六十歳以上の者では「家族、親族が面倒をみるべき」が四六・二%と最も多く、次いで「家族、親族が面倒をみて不足分を福祉施策活用」三一・〇%の順となっている(第7図参照)。
○ 六十五歳以上の者で在宅の寝たきり者について、その寝たきりの期間を、「国民生活基礎調査」(平成七年)(厚生省)でみると、「三年以上」の占める割合が、半数近くになっている。
<第7節> 高齢者の活動
○ 高齢者の社会的活動への意識について、「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成七年度)(総務庁)でみると、同好会、サークル活動や種々の行事、催し物への参加を通じて、社会とのかかわりを持って生活したいと思うかについては、意欲を示す者が七割を超える。
○ 高齢者の各種サークルや団体への参加状況について、「高齢者の地域社会への参加に関する調査」(平成五年)(総務庁)でみると、六十歳以上で何らかのサークルや団体に参加している者は六三・〇%となっており、参加している者は一人で平均一・八種類の団体に参加している。
<第8節> 高齢者と生活環境
○ 高齢者が居住地域に感じる問題点について、「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成七年度)(総務庁)でみると、「医院や病院への通院に不便」が二二・九%と最も多く、次いで「日常の買物に不便」二〇・六%、「水害、地震など自然災害が心配」二〇・二%となっている。自然災害への関心は、阪神・淡路大震災の影響のためか、前回調査から大きく上昇した。
○ 高齢者が現在住んでいる住宅に感じる問題点について、同調査でみると、「住まいが古くなりいたんでいる」一九・三%、「住宅の構造や設備が高齢者には使いにくい」一三・五%、「住宅に関する経済的負担が重い」一一・五%などとなっている。
○ 高齢者世帯の住宅について、最低居住水準を満たしているかを「住宅統計調査」(平成五年)(総務庁)でみると、高齢者夫婦主世帯(夫婦のいずれかでも六十五歳以上の夫婦世帯)では九九・二%、六十五歳以上の高齢者単身主世帯では九五・〇%が水準を満たしている。ただし、借家に住む世帯では、水準を満たしていない世帯が、高齢者夫婦主世帯で三・六%、高齢者単身主世帯で一二・三%ある。
○ 高齢者の交通安全に関して、六十五歳以上の高齢者の交通事故死者数を「交通事故統計」(平成九年)(警察庁)でみると、三千百五十二人で交通事故死者全体の三二・七%を占めている。交通事故死者数は、平成四年までは十六〜二十四歳の若者が多かったが、五年以降、高齢者が若者の死者数を上回るようになっている。
○ 高齢者と犯罪、災害に関し、犯罪による六十五歳以上の高齢者の被害について「犯罪統計書」(警察庁)で刑法犯被害認知件数をみると、平成八年は十万二千六百五十四件である。七年に比較すると八千四百五十九件、九・〇%上昇した。被害認知件数全体に占める割合も増加傾向にある。
また、「消防白書」(自治省)によると、六十五歳以上の高齢者の火災による死者数(放火自殺者を除く。)は、平成八年で六百五十七人であり、全死者数の約半分を占めている。
<第2章> 高齢社会対策の実施の状況
<第1節> 高齢社会対策の基本的枠組み
○ 我が国の高齢社会対策の基本的枠組みは、高齢社会対策基本法(平成七年法律第一二九号)に基づいている。
○ 高齢社会対策会議は、内閣総理大臣を会長とし、全閣僚が委員に任命されており、高齢社会対策を総合的に推進するための中心となっている。
○ 高齢社会対策大綱は、高齢社会対策基本法によって政府に作成が義務付けられているものであり、政府の高齢社会対策の基本的かつ総合的な指針となるものである。高齢社会対策大綱は、平成八年七月五日、高齢社会対策会議における案の作成を経て、閣議において決定された。
<第2節> 高齢社会対策関係予算
○ 高齢社会対策は、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、調査研究等の推進という広範な施策にわたり、着実な進展をみせている。一般会計予算における関係予算をみると、平成九年度においては八兆六千三百九十六億円となっている。
これを各分野別にみると、就業・所得四兆三千百七十六億円、健康・福祉四兆一千六百九十八億円、学習・社会参加六百八十六億円、生活環境四百五十二億円、調査研究等の推進三百八十五億円となっている。
<第3節> 分野別の施策の実施の状況
1 就業・所得
○ 高齢者の雇用・就業の機会の確保については、継続雇用の推進、再就職の促進、定年退職後等における臨時・短期的な就業の場の確保等に重点を置いて、多様化する高齢者の就業ニーズを踏まえつつ、総合的な雇用・就業対策を推進している。
○ 六十五歳までの継続雇用を推進するため、継続雇用制度の導入又は改善に関する計画の作成指示、計画の適正実施勧告など事業主に対する指導や相談援助を行うとともに、各種の高齢者雇用関係助成金の拡充を図っている(第2表参照)。
○ 能力開発給付金の支給等による企業における計画的な職業能力開発の推進、中高年齢労働者等受講奨励金の支給による個人の自発的な職業能力開発の推進などにより、労働者自身あるいは企業を通じての職業能力開発を推進している。
○ 男女共同参画推進本部において、「男女共同参画二〇〇〇年プラン」に基づき、男女共同参画社会の形成を目指した施策を総合的に推進している。
○ 平成九年度においては、介護のための勤務時間の短縮等の措置の早期導入を促進するため、当該措置利用者が生じた事業主に対し奨励金を支給する介護勤務時間短縮等奨励金制度を創設した。
○ 公的年金制度の再編成の第一段階として、平成八年六月に改正された厚生年金保険法等に基づき、九年四月に日本鉄道、日本たばこ産業及び日本電信電話の各共済年金が厚生年金に統合されている(第3表参照)。
2 健康・福祉
○ 生涯にわたる健康づくりを推進するため、栄養、運動、休養のバランスの取れた生活習慣の普及・定着による健康の増進及び疾病の予防を目指した第二次国民健康づくり対策(アクティブ80ヘルスプラン)を推進した。
○ 地域の保健対策の総合的な推進を図るため、平成九年度からは母子保健サービスなど住民に身近で利用頻度の高いサービスは、既に市町村で実施されていた老人保健事業とともに、市町村が市町村保健センター(八年度末現在一千四百八か所)等を拠点として一元的に提供し、専門的・技術的サービスは、保健所(八年度末現在七百六か所)が提供している。
○ 高齢者の保健・医療・福祉サービスについては、在宅サービスや施設サービスなど高齢者介護サービス基盤の整備目標、今後取り組むべき高齢者介護サービス基盤の整備に関する施策の基本的枠組みを示した新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)(平成六年、大蔵・厚生・自治三大臣合意)に基づき、保健・医療・福祉サービスの充実を図った(第4表、第5表参照)。
○ 平成九年度から、公衆浴場、公民館等の既存施設を活用した出先(サテライト)を各地に置き、そこに日帰り介護施設(デイサービスセンター)等の職員が赴いてサービスを提供する既存施設活用型日帰り介護(サテライト型デイサービス)事業(実施方式の弾力化)を行っているほか、痴呆性老人が家庭的な環境で共同生活を送ることができるよう食事等の日常生活の援助などを行う痴呆対応型老人共同生活援助事業(痴呆性老人向けグループホーム)への補助を行っている。
○ 平成九年十二月、要介護状態にある者等がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むために必要な保健医療サービス及び福祉サービスが総合的に提供されるよう介護保険制度を創設する、介護保険法が制定され、十二年四月から施行されることとなっている。
○ 国民生活の変化に伴い、健康・福祉サービスに対する高度化及び多様化したニーズに迅速かつ的確に対応し、サービスの効率化を図るためには、民間事業者等の創意工夫をいかし、利用者の選択の幅を広げていくことが重要であることから、民間事業者による健康・福祉サービスの積極的な活用を推進している。
○ 保育対策については、平成六年十二月策定の「緊急保育対策等五か年事業」(大蔵・厚生・自治三大臣合意)に基づき、近年の保育需要の多様化に対応したサービスの供給を推進している。
3 学習・社会参加
○ 地域における生涯学習の推進体制の整備については、生涯学習担当部局の設置(平成八年九月現在四十七都道府県、七百四十二市町村で設置)、都道府県生涯学習審議会の設置(八年九月現在三十三都道府県で設置)、生涯学習推進会議の設置(八年九月現在四十七都道府県、一千九百九十四市町村で設置)等を促進している。
○ 学習機会等に関する各種の情報を適切に提供したり、学習内容・方法等の相談に応じることのできる環境整備が望まれていることから、コンピュータ等を利用して都道府県と市町村を結ぶ生涯学習情報提供システム整備事業(平成九年度現在四十一都道府県で整備)等を実施した。
○ 公民館を始め、図書館、博物館、婦人教育施設等の社会教育施設や教育委員会において、青少年から高齢者まで幅広い年齢の人々を対象とした多くの学習機会が提供されている。この中には、高齢社会について理解を促進するためのものや高齢者を直接の対象とする学級・講座も開設されている(第6表参照)。
○ 高齢者自身が積極的に社会に参加できる各種社会環境の条件整備を図るため、地域においてボランティア活動などを始めとする社会参加活動を総合的に実施している老人クラブに対し助成を行い、その振興を図っている(第8図参照)。
○ 高齢者の持つ豊かな知識・経験や学習の成果をいかした社会参加活動を支援する観点から、高齢者が地域の指導者として社会参加活動を行う際に必要な基礎的素養を養うためのセミナー等の開設に対して補助を行っている。
○ ボランティア活動に対する興味・関心は年々高まっており、平成九年四月におけるボランティア活動者総数は五百四十五万八千人、ボランティアグループ数は七万九千グループに達している(第9図参照)。
○ 学校教育において、ボランティア教育を充実させるため、教員等による研究協議会の開催や指導資料の作成を行うとともに、児童生徒が一定地域において様々なボランティアの体験等を行うボランティア体験モデル推進事業を行っている。
4 生活環境
○ 公営住宅において、老人世帯向公営住宅を供給するとともに、五十歳以上の者の単身入居を認めている。また、公団賃貸住宅においては、高齢者同居世帯等に対して、募集時に当選率を優遇するとともに、一階又はエレベーター停止階への住宅変更を認めるなどの優遇措置を行っている(第7表参照)。
○ 住宅金融公庫においては、高齢者に対応した構造・仕様等をあらかじめ備えた住宅に対して割増貸付けを行うとともに、高齢者用の設備設置を行う場合に割増貸付けを実施している。
○ シルバーハウジング・プロジェクト事業として、生活援助員(ライフサポートアドバイザー)による日常の生活指導や安否確認などのサービスが受けられ、かつ高齢者の生活特性に配慮した設備・仕様を備えた公共賃貸住宅の供給を推進している。
○ 鉄道駅、旅客船・空港ターミナルにおけるエレベーター・エスカレーター等の施設整備を促進している。また、乗合バス事業者が行うノンステップバス等の導入に対して、補助及び融資を行っている。
○ 高齢者等が安全、快適に、また不便なく歩行できるよう、各種施設の整備等を推進している。
○ 高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)に基づき認定を受けた建築物に対しては、補助、税制上の特例措置及び低利融資を実施している。官庁施設については、平成九年度において、二十四施設でエレベーターの整備を実施した(第10図参照)。
○ 市街地再開発事業、土地区画整理事業等の面的な都市整備と併せて、社会福祉施設等の適正かつ計画的な立地を推進している。また、福祉・医療施設と一体となった公園の整備を推進している。
○ 第六次交通安全基本計画等に基づき、高齢者への交通安全意識の普及徹底、高齢者等が安心してくらせる道路環境づくり、高齢者の安全運転対策等を実施した。道路交通法の改正により、平成九年十月から高齢運転者標識(高齢者マーク)制度が新設される等、高齢の運転者、歩行者の保護等が法制化された。
○ 高齢者を犯罪や事故から保護するため、交番、駐在所の警察官を中心に、巡回連絡等を通じて高齢者宅を訪問するほか、痴呆症等によって、はいかいする高齢者の発見、保護する体制づくりを地方公共団体等と協力して推進している。
○ 病院、老人ホーム等の施設を守る土砂災害対策の重点的な実施、高齢化率の特に高い地域等が激甚な水害、土砂災害を受けた場合の再度災害防止を図っている。
○ 都市公園等整備七箇年計画に基づき、都市公園等の緊急かつ計画的な整備を行った。また、福祉施設と生活環境基盤の一体的整備を推進する農村総合整備事業(高福祉型)を実施している。
5 調査研究等の推進
○ 痴呆疾患、骨粗しょう症等の高齢者に特有の疾病については、長寿科学総合研究事業等において調査研究が行われている。平成八年度からは長寿医療の専門家で研究班を組織し、老年病の成因、診断、治療、予防等に関する基礎的、臨床的研究を推進している。
○ 福祉機器に関しては、使用者ニーズに対応する新しい技術の可能性(シーズ)に関する調査のほか、国立研究所を中心に福祉機器基盤技術開発の横断的基盤的技術の研究を強化するための研究の実施を行っている。
○ 情報通信等の新たな技術の活用は、高齢者の生活の様々な局面に利便をもたらすものと考えられることから、ハード及びソフトの両面において研究開発を推進している。
○ 長寿科学研究を推進するため、国立療養所中部病院に設置された長寿医療研究センターを中心に老人性痴呆症や寝たきり予防の研究等に取り組んでいるほか、長寿科学総合研究事業等において、自然科学から人文社会科学に至るまでの幅広い分野の研究を行っている。
○ 科学技術の進歩は、研究開発に携わる人々の能力や創造力に依存する面が多く、科学技術の振興を図るために人材の養成、確保、資質の向上及び流動化に努めている。
平成十年度において講じようとする高齢社会対策
第1 平成十年度の高齢社会対策
1 高齢社会対策関係予算
○ 高齢社会対策は、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、調査研究等の推進の各分野にわたり着実に実施する。
一般会計予算における平成十年度の高齢社会対策の関係予算は、九兆八百四十六億円であり、各分野別では、就業・所得四兆四千七十八億円、健康・福祉四兆五千三百九十五億円、学習・社会参加五百九十一億円、生活環境四百二億円、調査研究等の推進三百八十億円となっている。
2 高齢社会対策の推進
○ 高齢社会対策は、高齢社会対策大綱の基本的考え方に基づいて、策定し、各分野にわたる施策の展開を図る。
大綱の基本的考え方が特に反映されている施策として、平成十年度の新規施策を挙げれば、次のとおりである。
「高齢者の自立、参加及び選択の重視」については、地域住民として充実した生活を送るための地域リハビリテーション支援体制整備推進事業等がある。
「国民の生涯にわたる施策の体系的な展開」については、総合的かつ包括的な国民の健康づくりのための「健康日本21(仮称)」計画を策定するための検討事業等がある。
「地域の自主性の尊重」及び「施策の効果的推進」については、民間非営利組織等の積極的な参加により訪問介護(ホームヘルプサービス)を提供する事業を試行的に行う「都市部等住民参加型在宅保健福祉サービス推進試行的事業」等がある。
「関係行政機関の連携」については、健康福祉の観点からの都市づくりを推進するための健康福祉公園都市づくり促進事業等がある。
「医療・福祉、情報通信等に係る科学技術の活用」については、PHS等簡易無線端末を活用した高齢者等の公共交通機関の利用支援システムの開発、高齢者等が情報通信の利便を享受できる「情報バリアフリー」環境の整備のための研究開発等がある。
○ 国際連合により、一九九九年(平成十一年)が国際高齢者年とされていることからも、高齢者及び高齢社会に関する理解の促進等を図る。
第2 分野別の高齢社会対策
1 就業・所得
○ 六十五歳までの継続雇用を推進するため、継続雇用制度の導入又は改善に関する計画の作成指示、計画の適正実施勧告など事業主に対する指導や相談援助を行うとともに、各種の高齢者雇用関係助成金の活用により継続雇用の促進を図る。
○ 能力開発給付金の支給等による企業における計画的な職業能力開発の推進、中高年齢労働者等受講奨励金の支給による個人の自発的な職業能力開発の推進などにより、労働者自身あるいは企業を通じての職業能力開発を推進する。
○ 男女共同参画推進本部において、平成八年十二月に決定された「男女共同参画二〇〇〇年プラン」に基づき、女性労働者の能力の活用を始めとした男女共同参画社会の形成を目指した施策を総合的に推進する。
○ 公的年金制度については、将来の負担が過重なものとならないよう給付と負担の適正化、公私の年金の適切な組合せ等制度全体の見直しを行うこととし、平成十一年の財政再計算に向け、年金審議会における検討を引き続き進める。
2 健康・福祉
○ 壮年期からの健康づくりについては、老人保健法に基づく保健事業を着実に推進するため、保健事業第三次計画に従い、健康診査、機能訓練、訪問指導の充実等を総合的に推進する。
○ 高齢者の保健・医療・福祉サービスについては、新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)(大蔵・厚生・自治三大臣合意)に基づき総合的に推進する。
○ 各種の介護サービスの量的な充実、質的な向上を図るため、訪問介護員(ホームヘルパー)、寮母・介護職員、看護職員等、OT(作業療法士)・PT(理学療法士)等の高齢者介護マンパワーを確保し、その資質を向上させる。
○ 介護保険制度の円滑な導入に向けて、介護保険法に基づき市町村が策定する介護保険事業計画の作成準備に要する経費の補助等を行う。
○ 民間事業者等の創意工夫をいかし、民間事業者による健康・福祉サービスを積極的に活用する。
○ 「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(エンゼルプラン、文部・厚生・労働・建設四大臣合意)に基づき、子育て支援施策を総合的・計画的に推進する。
3 学習・社会参加
○ 地方公共団体における生涯学習担当部局、都道府県生涯学習審議会、生涯学習推進会議の設置を促進する。
○ 生涯学習情報提供体制整備事業として、生涯学習情報の全国的な提供体制を国立教育会館に整備するとともに、都道府県段階において、コンピュータ等を活用して各種の学習機会に関する情報を適切に提供し、学習の内容や方法について助言・援助する体制の整備を推進する。
○ 放送大学においては、衛星放送を含めテレビ・ラジオの放送を利用して大学教育の機会を提供する。
○ 社会教育施設や教育委員会が開設する各種の学級・講座を始め、地域住民の多様な社会教育活動を総合的に推進するため、市町村が実施する地域社会教育活動総合事業に対し補助を行う。
○ 地域において、ボランティア活動などを始めとする社会参加活動を総合的に実施している老人クラブに対し助成を行う。
○ ボランティア活動入門講座の開催、情報誌の発行、登録・あっせん・相談等を行う市区町村ボランティアセンター活動事業、地域の特性に見合ったきめ細かな福祉サービスが効率的、総合的に提供される体制をつくる地域福祉総合推進事業(ふれあいのまちづくり事業)に対し補助を行う。
4 生活環境
○ 公営住宅については、老人世帯向公営住宅の供給を行うとともに、五十歳以上の者の単身入居を認める。また、公団賃貸住宅においては、高齢者同居世帯等に対する入居又は住宅変更における優遇措置を行う。
○ 住宅金融公庫においては、高齢者に対応した構造・仕様等をあらかじめ備えた住宅に対して割増貸付けを行うとともに、高齢者用の設備設置を行う場合に割増貸付けを実施する。また、平成十年度においては、高齢者向け優良賃貸住宅制度を創設する。
○ 市町村の総合的な高齢者住宅施策の下、シルバーハウジング・プロジェクト事業を推進する。
○ 鉄道駅、旅客船・空港ターミナルにおけるエレベーター・エスカレーター等の施設整備を促進するとともに、乗合バス事業者が行うノンステップバス等の導入を促進する。また、新たに、PHS等簡易無線端末を活用した交通ターミナル内での案内サービス、自動警報など、高齢者等の公共交通機関の利用を支援するシステムの開発を行う。
○ 病院、百貨店、銀行等の不特定多数の人が利用する特定建築物のバリアフリー化を推進する。官庁施設については、身体障害者対応エレベーター、スロープ、視覚障害者用ブロックの整備など高齢者等に配慮した改修等を推進する。
○ 市街地再開発事業、土地区画整理事業等における社会福祉施設等の円滑な導入のための補助を行う。また、福祉・医療施設と一体となった公園の整備等を推進する。
○ 第六次交通安全基本計画等に基づき、高齢者への交通安全意識の普及徹底、高齢者等が安心してくらせる道路環境づくり、高齢者の安全運転対策等を推進する。
○ 高齢者を犯罪や事故から保護するため、交番、駐在所の警察官を中心に、巡回連絡等を通じて高齢者宅を訪問するなどの施策を推進する。
○ 病院、老人ホーム等の施設を守る土砂災害対策の重点的な実施、高齢化率の特に高い地域等が激甚な水害、土砂災害を受けた場合の再度災害防止を図る。
○ 快適な都市環境の形成のため、都市公園等の整備を行う。また、活力ある農山漁村の形成については、平成十年度において新たに高福祉漁村づくりを推進する。
5 調査研究等の推進
○ 痴呆疾患、骨粗しょう症等の高齢者に特有の疾病については、長寿科学総合研究事業等において調査研究を進める。
○ 福祉用具及び医療機器については、医療や福祉に対するニーズの高い研究開発を効率的に実施するためのプロジェクトの推進、多分野にわたる福祉機器基盤技術開発の横断的基盤的技術の研究の強化等を行う。
○ 老人性痴呆の研究等については、長寿医療研究センター等において推進する。
○ 国立大学等においては、老化等の長寿関連の研究を行うほか、科学研究費補助金等により大学等の研究者に対し研究費等の補助を行う。
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平成9年度平均
平成九年度平均全国消費者物価指数は、平成七年を一〇〇とした総合指数で一〇二・三となり、前年度に比べ二・〇%の上昇となった。
(1) 近年の総合指数の動きを対前年度上昇率でみると、消費税の導入などにより平成元年度に二・九%上昇した後、天候不順などの影響により二年度は三・三%上昇、三年度は二・八%の上昇となったが、四年度は生鮮野菜などの下落により一・六%上昇、五年度も衣料などの下落により一・二%上昇と一%台の上昇となった。六年度は耐久消費財を中心とした工業製品の下落幅が拡大したことなどにより〇・四%上昇と昭和六十三年度以来六年ぶりに一%を下回る安定した動きとなり、七年度は工業製品の下落に加え、米類や生鮮野菜が大幅に値下がりしたことなどにより〇・一%下落と、比較可能な昭和四十六年度以降初めて下落となった。八年度は、公共サービス料金などのサービスの上昇幅が縮小したが、工業製品などの下落幅が縮小したことに加え、生鮮魚介や衣料が値上がりしたことなどにより、商品の下落幅が縮小したため〇・四%の上昇となった。
平成九年度は、四月の消費税率引上げの影響などにより、サービスの上昇幅が拡大したことに加え、商品が上昇に転じたため二・〇%上昇と、三年度以来六年ぶりに二%台の上昇となった。
なお、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・四となり、前年度に比べ二・一%の上昇となった。
(2) 十大費目指数の動きを対前年度上昇率でみると、食料は外食などの値上がりにより二・二%上昇、光熱・水道は電気代やガス代などの値上がりにより四・三%上昇、被服及び履物は衣料などの値上がりにより二・八%上昇、保健医療は保健医療サービスなどの値上がりにより七・五%上昇、教育は授業料等などの値上がりにより二・二%上昇、教養娯楽は教養娯楽用耐久財が値下がりしたものの教養娯楽サービスなどが値上がりしたため二・二%上昇、諸雑費は理美容サービスなどの値上がりにより二・一%上昇とそれぞれ総合の上昇率を上回る上昇となった。このほか、住居は一・五%上昇、交通・通信は〇・一%上昇といずれも上昇となった。一方、家具・家事用品は家庭用耐久財などの値下がりにより〇・四%の下落となった。
また、総合指数の対前年度上昇率が平成八年度〇・四%上昇から九年度二・〇%上昇となった主な要因を十大費目でみると、外食の上昇幅が拡大したことなどにより食料が〇・四%上昇から二・二%上昇へと上昇幅が拡大したことや、教養娯楽サービスの上昇幅が拡大したことなどにより教養娯楽が〇・九%下落から二・二%上昇へと前年度の価格水準を上回ったことなどが挙げられる。
(3) 商品・サービス分類指数の動きを対前年度上昇率でみると、商品は、平成六年度に〇・六%の下落と下落に転じた後、七年度一・三%下落、八年度〇・三%下落で推移したが、九年度は工業製品や電気・都市ガス・水道の値上がりなどにより一・七%上昇と、五年度(〇・六%)以来四年ぶりに上昇となった。サービスは、五年度(二・〇%)以降八年度(一・〇%)まで上昇幅は縮小していたが、九年度は個人サービス料金や公共サービス料金の値上がりなどにより二・四%の上昇となり、上昇幅は前年度に比べ一・四ポイント拡大した。
二 費目別指数の動き
(1) 食料は一〇二・二となり、前年度平均に比べ二・二%の上昇となった。生鮮食品についてみると、生鮮魚介は、十月を除く各月で前年を上回る水準で推移し、二・二%の上昇となった。生鮮野菜は、六月以降日照不足の影響などによりおおむね前年を上回る水準で推移し、六・五%の上昇となった。一方、生鮮果物は、十月以降前年を大幅に下回る水準で推移して八・七%の下落となり、生鮮食品全体では一・二%の上昇となった。
生鮮食品以外では、外食が三・一%の上昇となったほか、肉類四・四%上昇、乳卵類一・六%上昇、油脂・調味料一・三%上昇、菓子類二・〇%上昇、調理食品三・〇%上昇、飲料二・五%上昇、酒類一・〇%上昇とそれぞれ上昇となった。一方、穀類は〇・二%の下落となった。
(2) 住居は一〇三・三となり、前年度平均に比べ一・五%の上昇となった。内訳をみると、家賃は一・三%の上昇、設備修繕・維持は二・八%の上昇となった。
(3) 光熱・水道は一〇四・九となり、前年度平均に比べ四・三%の上昇となった。内訳をみると、電気・ガス代は前年を上回る水準で推移し、四・〇%の上昇となった。また、他の光熱は二・七%上昇、上下水道料は五・三%上昇といずれも上昇となった。
(4) 家具・家事用品は九七・〇となり、前年度平均に比べ〇・四%の下落となった。内訳をみると、家庭用耐久財は二・一%の下落となった。一方、他の家具・家事用品は、室内装備品が〇・一%下落、家事用消耗品が一・六%下落とそれぞれ下落したものの、寝具類が〇・二%上昇、家事雑貨が一・一%上昇、家事サービスが三・四%上昇とそれぞれ上昇したため〇・五%の上昇となった。
(5) 被服及び履物は一〇四・一となり、前年度平均に比べ二・八%の上昇となった。内訳をみると、衣料は洋服などの値上がりにより二・七%上昇、シャツ・セーター・下着類はシャツ・セーター類などの値上がりにより三・一%上昇、履物類は二・七%上昇、生地・他の被服類は二・四%上昇といずれも上昇となった。
(6) 保健医療は一〇八・四となり、前年度平均に比べ七・五%の上昇となった。内訳をみると、医薬品は一・五%上昇、保健医療サービスは四月及び九月の診察料の値上げなどにより一四・五%上昇とそれぞれ上昇となった。また、保健医療用品・器具は前年度平均と変わらなかった。
(7) 交通・通信は九九・一となり、前年度平均に比べ〇・一%の上昇となった。内訳をみると、交通は二・〇%の上昇となった。一方、自動車等関係費は五月の自動車保険料(自賠責)の値下げなどにより〇・七%下落、通信は〇・一%下落とそれぞれ下落となった。
(8) 教育は一〇五・二となり、前年度平均に比べ二・二%の上昇となった。内訳をみると、授業料等は四月の私立大学授業料などの値上がりにより一・九%上昇、教科書・学習参考書は二・八%上昇、補習教育は二・七%上昇といずれも上昇となった。
(9) 教養娯楽は一〇〇・九となり、前年度平均に比べ二・二%の上昇となった。内訳をみると、教養娯楽用耐久財は、ワードプロセッサー、テレビなどの値下がりにより三・九%の下落となった。一方、他の教養娯楽は、教養娯楽用品が二・一%上昇、書籍・他の印刷物が二・八%上昇、教養娯楽サービスが三・一%上昇といずれも上昇したため二・八%の上昇となった。
(10) 諸雑費は一〇二・五となり、前年度平均に比べ二・一%の上昇となった。主な内訳をみると、理美容サービスは二・八%上昇、理美容用品は〇・五%上昇、身の回り用品は三・一%上昇、たばこは二・三%上昇といずれも上昇となった。
三 商品・サービス分類指数の動き
(1) 商品は一〇一・〇となり、前年度平均に比べ一・七%の上昇となった。内訳をみると、農水畜産物は、米類が二・五%下落したものの、生鮮商品が二・一%上昇、他の農水畜産物が三・〇%上昇とそれぞれ上昇したため一・四%の上昇となった。
工業製品は、耐久消費財が〇・五%と下落したものの、食料工業製品が二・二%上昇、繊維製品が二・五%上昇、その他の工業製品が一・〇%上昇とそれぞれ上昇したため一・五%の上昇となった。
電気・都市ガス・水道は、三・九%の上昇となった。
出版物は二・八%の上昇となった。
(2) サービスは一〇三・七となり、前年度平均に比べ二・四%の上昇となった。内訳をみると、民営家賃は〇・八%上昇、持家の帰属家賃は一・五%上昇、公共サービス料金は二・九%上昇、個人サービス料金は二・八%上昇、外食は三・一%上昇といずれも上昇となった。
≪別掲項目≫
公共料金は一〇四・二となり、前年度平均に比べ三・二%の上昇となった。これは、四月に鉄道運賃(JR)、鉄道運賃(JR以外)などへの消費税率引上げ分転嫁や公立高校授業料、国立大学授業料の値上げなどがあったほか、四月及び九月に診察料の値上げ、四月及び七月に電気代及び都市ガス代の値上げなどがあったためである。
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【特別減税の対象となる人】
平成十年分所得税について特別減税の適用を受けることができる人は、平成十年分所得税の納税者である居住者又は非居住者(総合課税の対象となる人に限ります。)です。
【特別減税額】
特別減税額は、次の金額の合計額です。ただし、その合計額がその人の平成十年分の所得税額を超える場合には、その所得税額が限度となります。
・本人………………三万八千円
・扶養親族等………一人につき一万九千円
この場合の「平成十年分の所得税額」とは、平成十年分所得税につき、所得税法又は租税特別措置法の規定により、所得控除、税率及び税額控除を適用して算出した所得税の額をいい、また、災害減免法による所得税額の軽減免除の規定の適用を受けている場合は、その適用後の金額となります。
なお、公社債及び預貯金の利子に係る所得税などで、源泉分離課税が適用され又は源泉分離課税を選択した所得に係る所得税は含まれません。
【特別減税の実施方法】
1 給与所得がある人
「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している給与所得者(いわゆる甲欄適用者)については、原則として、その給与の支払者のもとで次により特別減税額の控除が行われます。
(1) 平成十年二月以後最初に支払われる給与に係る源泉徴収税額からの控除(平成十年二月一日現在の甲欄適用者に対するもの)
源泉徴収されるべき所得税額から改正前の特別減税額(本人一万八千円・扶養親族等一人につき九千円として計算した金額)が控除されます(控除しきれない部分の金額は、以後平成十年中に支払われる給与について源泉徴収されるべき所得税額から順次控除されます。ただし、次の2により加算される金額を除きます。)。
(2) 平成十年八月以後最初に支払われる給与に係る源泉徴収税額からの控除(平成十年八月一日現在の甲欄適用者に対するもの)
源泉徴収されるべき所得税額から特別減税額の引上額(本人二万円・扶養親族等一人につき一万円として計算した金額。なお、平成十年七月三十一日において前記(1)による控除の未済額がある場合には、その未済額を加算した金額)が控除されます(控除しきれない部分の金額は、以後平成十年中に支払われる給与について源泉徴収されるべき所得税額から順次控除されます。)。
(注) 前記(1)の改正前の特別減税額(又は前記(2)の特別減税額の引上額)は、平成十年二月以後(又は八月以後)最初に給与が支払われるときにおける扶養親族等の数に基づいて計算することとされていますので、その後の扶養親族等の数の異動によって生じる特別減税額の差額は、通常、年末調整の際に精算されることになります。
(3) 年末調整時における平成十年分の給与に係る年税額からの控除
年末調整の際に、その年税額から特別減税額が控除(前記(1)及び(2)による控除額を精算)されます。
※給与が二か所以上から支払われている場合の従たる給与については、源泉徴収の段階で特別減税の適用はありませんので、確定申告の際に特別減税額を精算することになります。
※@給与の額が二千万円を超える人、A年の中途で退職した人で年末調整を受けなかった人、B労働した時間や日によって給与の支払を受ける給与所得者(いわゆる丙欄適用者)は、確定申告によって特別減税の適用を受けることになります。
2 公的年金等の雑所得がある人
「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出している公的年金等の受給者については、原則として、その公的年金等の支払者のもとで次により特別減税額の控除が行われますが、最終的な特別減税額の精算は、確定申告によって受けることになります。
(1) 平成十年二月以後最初に支払われる公的年金等について、源泉徴収されるべき所得税額から改正前の特別減税額(本人一万八千円・扶養親族等一人につき九千円として計算した金額)が控除されます(控除しきれない部分の金額は、以後平成十年中に支払われる公的年金等について源泉徴収されるべき所得税額から順次控除されます。ただし、次の(2)により加算される金額を除きます。)。
(2) 平成十年八月以後最初に支払われる公的年金等について、源泉徴収されるべき所得税額から特別減税額の引上額(本人二万円・扶養親族等一人につき一万円として計算した金額。なお、平成十年七月三十一日において前記(1)による控除の未済額がある場合には、その未済額を加算した金額)が控除されます(控除しきれない部分の金額は、以後平成十年中に支払われる公的年金等について源泉徴収されるべき所得税額から順次控除されます。)。
3 事業所得や不動産所得などがある人
確定申告を行う事業所得や不動産所得などがある人については、次により特別減税額の控除が行われます。
(1) 平成十年分の予定納税額からの控除
平成十年分の予定納税額がある人については、予定納税特別減税額が、減税前の第一期分の予定納税額、減税前の第二期分の予定納税額から順次控除されます。
なお、平成十年分の第一期分の予定納税額の納期は、七月から八月に変更されています。
(注) 予定納税特別減税額は、平成十年分の予定納税基準額の計算の基礎となる扶養親族等の数に基づいて計算することとされていますので、平成十年中の扶養親族等の数の異動によって生じる特別減税額の差額は、確定申告によって精算することになります。
(2) 確定申告における平成十年分の年税額からの控除
確定申告を行う人については、その確定申告の際に、平成十年分の所得税額(特別減税を適用する前の税額)から特別減税額が控除(前記1による控除額がある人については、その控除額を精算)されます。
※給与所得や公的年金等の雑所得と予定納税額がある人については、給与や公的年金等に係る源泉徴収と予定納税のそれぞれの段階で特別減税の適用を受けた上、最終的には、確定申告の際に特別減税額を精算することになります。
4 退職所得がある人
退職所得については、その支払を受ける際の源泉徴収の段階では特別減税の適用がありません。このため、その退職所得を含めて平成十年分所得税の確定申告の時期に確定申告書を提出することにより、退職所得から源泉徴収される所得税について特別減税の適用を受けることができる場合があります。
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〔毎月公表されるもの〕
▽消費者物価指数の動向………………総 務 庁
平成九年十一月の消費者物価指数………1・21…H
〃 十二月 〃 ……2・18…F
平成十年一月 〃 ……3・18…H
〃 二月 〃 ……4・1…I
〃 三月 〃 ……5・20…K
〃 四月 〃 ……6・24…F
▽家計収支………………………………総 務 庁
平成九年十月分家計収支…………………1・28…M
平成九年十一月分家計収支………………2・25…J
〃 十二月分 〃 ……………3・11…N
平成十年一月分 〃 ……………4・1…M
〃 二月分 〃 ……………6・10…H
〃 三月分 〃 ……………6・24…D
▽労働力調査(雇用・失業の動向)……総 務 庁
平成九年十月分結果の概要………………1・7…J
〃 十一月分 〃 ………………2・4…I
〃 十二月分 〃 ………………4・1…G
平成十年一月分 〃 ………………4・30…G
〃 二月分 〃 ………………5・27…J
〃 三月分 〃 ………………6・17…M
〃 四月分 〃 ………………6・24…I
▽月例経済報告…………………………経済企画庁
平成十年一月報告…………………………2・4…K
〃 二月報告…………………………2・25…L
〃 三月報告…………………………3・25…L
〃 四月報告…………………………5・6…H
〃 五月報告…………………………5・27…M
〃 六月報告…………………………6・24…M
▽毎月勤労統計調査
(賃金、労働時間、雇用の動き)……労 働 省
平成九年十月分結果………………………1・14…H
〃 十一月分結果……………………3・4…L
〃 十二月分結果……………………3・18…E
平成十年一月分結果………………………5・13…H
平成十年二月分結果………………………6・3…L
〃 三月分結果………………………6・17…J
〔四半期ごとに公表されるもの〕
▽法人企業動向調査……………………経済企画庁
平成九年十二月実施調査結果……………3・11…G
▽普通世帯の消費動向調査……………経済企画庁
平成九年十二月実施調査結果……………3・18…K
平成十年三月 〃 ……………6・10…J
▽法人企業の経営動向…………………大 蔵 省
平成九年七〜九月期………………………2・18…I
〃 十〜十二月期……………………4・15…R
▽景気予測調査…………………………大 蔵 省
平成九年十一月調査………………………2・12…K
〔そ の 他〕
▽税金365日…………………………国 税 庁
税を滞納すると……………………………1・7…M
消費税・地方消費税(個人事業者)の
確定申告が必要な人は…………………1・14…K
所得税の確定申告は正しくお早めに……2・4…N
消費税・地方消費税(個人事業者)の
確定申告は正しくお早めに……………2・25…O
海外勤務者と税……………………………3・4…O
申告納税制度を支えるために……………4・1…O
サラリーマンと税…………………………4・8…J
契約書や領収書と印紙税…………………5・20…N
帳簿書類の電子データ保存………………6・10…O
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