NBCテロ対策会議

NBCテロ対策に関する施策の推進状況





平成13年4月16日
NBCテロ対策会議


 関係各省庁等の連携・分担によるNBCテロ対策に関する施策の推進状況及び今後の課題については次のとおりである。

1.これまでに講じられた施策

 平成7年の「地下鉄サリン事件」等を踏まえ、関係各省庁はそれぞれ連携・分担してNBCテロ対策のための施策を推進している。これまでに講じられた主な施策としては、以下のとおり、現場対処能力向上のための組織・装備・マニュアル整備等の施策、医療関連の体制整備に係る施策、原子力・化学分野における専門家ネットワークの構築、発生防止のための法律の制定や管理徹底と悪用防止の指導等がある。
  •  先進国の状況等の調査、専門部隊・組織等の新設、防護服・測定器材等の整備、対処マニュアル等の作成と訓練の実施、専門知識・対処要領等についての研修の実施等
  •  救急救命センター等への医療資器材の整備、中毒情報センターによる治療情報等の提供、被害者のストレス障害(PTSD)に関する研修の実施、その他治療薬リストの作成等
  •  原子力・化学分野における、専門家の知見を迅速に入手し必要な協力を得ること等を目的とした、専門家ネットワークの構築
  •  「サリン等による人身被害の防止に関する法律」の制定、化学物質の管理徹底と悪用防止の指導

2.現在推進中ないしは推進を検討中の施策

 平成13年度以降も継続され、あるいは新たに取り組まれるNBCテロ対策のための施策、さらには現在検討中の施策としては、引き続き現場対処能力強化のための体制整備が進められるとともに、以下のとおり、セミナーの開催や訓練等への参加による一層の国際協力の推進、各種調査や検討委員会・ワーキンググループ等の設置・運営による更なる検討課題の整理、また、関係省庁・機関の連携による現場対処マニュアルの策定等がある。
  •  セミナー開催や訓練等への参加による先進各国との一層の国際協力の推進
  •  原子力施設防護、生物兵器対処、生物剤管理体制、緊急時医療等についての各種検討委員会やワーキンググループの設置・運営による検討課題の整理
  •  人命救助、原因物質特定・分析、除染等に関する関係省庁・機関共通の現場対処マニュアルの策定

3.今後の課題

 以上を踏まえ、今後の課題としては、原子力施設防護体制の強化、NBCテロの発生に備えた医薬品備蓄体制の確立、また、現地関係機関等の連携確保に向けた措置等が挙げられる。
  •  原子力施設及び物質に係る国による脅威評価枠組みの確立と原子力施設警備・防護体制の強化
  •  ワクチンや治療薬等核・生物・化学テロの発生に備えた医薬品備蓄体制の確立
  •  初動措置に従事する現地関係機関等の連携確保に向けた関係省庁間の連携による指導・調整

 以下、別紙のとおり、NBCテロ対策それぞれの分野ごとに、1.既に講じられた施策、2.現在推進中ないしは推進を検討中の施策、3.今後の課題の順に、実施(予定)年度、関係省庁名を添えて取りまとめた。

NBCテロ対策会議事務局
:内閣官房副長官補(安全保障、危機管理担当)付


別 紙

I. 核物質を用いたテロへの対策のための施策推進状況

1.既に講じられた施策

(1)調査等の実施 ・先進諸国のNBCテロ対策に関する委託調査(平成11年度)警察
(2)部隊・組織の整備 ・警視庁及び大阪府警察にNBCテロに対応するための専門部隊を創設(平成11年度)警察
 ・警備局警備課に「重大テロ対策官」を設置(平成12年度)警察
 ・陸上自衛隊研究本部に「特殊武器研究官」及び「医学・特殊武器衛生研究科」を新設(平成12年度)防衛
 ・陸上自衛隊化学学校に「化学教導隊」を新設(平成12年度)防衛
 ・主として特殊な災害に対応するための消防応援活動を行う特殊災害部隊を緊急消防援助隊の都道府県隊の部隊の編成に追加(平成12年度)消防
(3)資機材の整備 ・防護服や個人用線量計等の資機材整備警察、防衛、海保
 ・市町村による原子力災害発生時に安全かつ効果的な救助活動を行うための放射線防護服、放射線測定器及び個人用線量計の整備に対する国庫補助を実施(昭和62年度以降)消防
(4)マニュアル等の作成 ・陸上自衛隊における対処要領(医療従事者用)の作成(平成11年度)防衛
(5)訓練の実施 ・主要都道府県警察の機動隊員を対象にしたNBCテロ対策に関する訓練の実施(平成12年度)警察
(6)研修等の実施 ・都道府県警察の警部を対象に、警察大学校においてNBC物質に関する基礎知識、NBCテロ発生時の対処要領等に関する研修を新設(平成11年度)警察
 ・主要都道府県警察の機動隊員を対象にしたNBCテロ対策に関する研修の実施(平成12年度)警察
 ・消防大学校に消防機関の隊長クラスを対象とする放射性物質災害講習会を新設(平成12年度)消防
(7)医療関連の施策 ・被害者の外傷性ストレス障害(PTSD)に関する、医師、看護婦、保健婦等を対象とする研修制度を創設(平成8年度)厚生労働
 ・原子力施設立地地域(16地域)における二次被ばく医療施設の救急救命センター等に、除染室・無菌室、被ばく線量評価機器等を、また、同地域の国立病院に、被ばく線量評価機器等を整備(平成11〜12年度)厚生労働
(8)専門家ネットワークの構築 ・「原子力災害危機管理専門家ネットワーク」の発足(平成12年度)内閣官房、文部科学

2.現在推進中ないしは推進を検討中の施策

(1)調査等の実施 ・セミナー開催等による先進各国との国際協力の推進内閣官房、外務ほか
 ・核物質防護に関するIAEAガイドラインの国内体系取り入れに関する委託調査(平成11年度から)文部科学
(2)部隊・組織の整備 ・主要都道府県警察における警視庁及び大阪府警察と同様の専門部隊の設置を検討中警察
 ・陸上自衛隊化学防護隊の装備の充実強化防衛
(3)資機材の整備 ・防護服等の資機材の更なる整備・充実警察、防衛、海保
 ・市町村による原子力災害発生時の救助活動に使用する資機材の整備に対する国庫補助の継続消防
 ・原子力施設周辺の水道事業者等が事故時等に放射線量の確認を行うための分析機器整備に対する国庫助成を実施(平成11年度から)厚生労働
(4)マニュアル等の作成 ・人命救助、原因物質特定・分析、除染等に関する関係省庁・機関共通の現場対処マニュアルの策定内閣官房ほか関係省庁
 ・自衛官用の原子力災害対処マニュアルの作成(平成13年度)防衛
 ・原子力災害時の食品衛生上の対応マニュアルの作成(平成12年度から)厚生労働
 ・原子力災害時の海上保安官の現場活動のガイドラインとなるマニュアルの作成(平成13年度)海保
(5)研修等の実施 ・既設の研修の継続警察、消防
 ・米国における対処訓練の研修(平成12年度から)防衛
(6)医療関連の施策 ・原子力安全委員会の「緊急時医療検討ワーキンググループ」による被ばく医療に関する最終報告書を踏まえ今後必要な施策を検討厚生労働
(7)発生防止のための施策 ・脅威想定、施設防護体制等に関するワーキンググループによる検討(平成12年度から)内閣官房ほか関係省庁

3.今後の課題

(現地関係機関間の連携確保) ・現地関係機関等の連携の確保に向けた関係省庁間の連携による指導・調整内閣官房ほか関係省庁
(原子力施設の防護体制強化) ・原子力施設及び物質に係る国による脅威評価枠組みの確立と原子力警備・防護体制の強化文部科学、経済産業、警察ほか関係省庁
(医療関連の施策) ・治療薬等医薬品備蓄体制の整備厚生労働ほか関係省庁
 ・重傷者を放射線医学総合研究所に搬送するための広域搬送体制の構築厚生労働ほか関係省庁
 ・二次被ばく医療施設への巡回指導の定期的実施及び同施設への技術的相談窓口の設置厚生労働
(その他) ・中期防衛力整備計画(平成13〜17年度)に盛り込まれた趣旨に基づくNBC対処能力の充実及び強化防衛
 ・より高度な測定用器具、隊員保護用器具等の導入、原子力災害に関する研修の充実等による市町村の消防本部におけるより安全かつ効果的な救急・救助活動を行うための体制の整備の促進消防

II. 生物剤を用いたテロへの対策のための施策推進状況

1.既に講じられた施策

(1)調査等の実施 ・先進諸国のNBCテロ対策に関する委託調査(平成11年度)警察
 ・「生物兵器への対処に関する懇談会」における報告書のとりまとめ(平成12・13年度)防衛
 ・エボラ出血熱の大規模発生地であるウガンダに医師を派遣し、国内に存在しない感染症に関する調査を実施(平成12年度)厚生労働
(2)部隊・組織の整備 ・科学警察研究所に「法科学第三部化学第四研究室」を設置(平成8年度)警察
 ・警視庁及び大阪府警察にNBCテロに対応するための専門部隊を創設(平成11年度)警察
 ・警備局警備課に「重大テロ対策官」を設置(平成12年度)警察
 ・陸上自衛隊研究本部に「特殊武器研究官」及び「医学・特殊武器衛生研究科」を新設(平成12年度)防衛
(3)マニュアル等の作成 ・陸上自衛隊における対処要領(医療従事者用)の作成(平成11年度)防衛
 ・検査機関における病原体検査実施体制の評価、病原体検査マニュアル(8疾患)の策定(平成12年度)厚生労働
(4)訓練の実施 ・主要都道府県警察の機動隊員を対象にしたNBCテロ対策に関する訓練の実施(平成12年度)警察
(5)研修等の実施 ・都道府県警察の警部を対象に、警察大学校においてNBC物質に関する基礎知識、NBCテロ発生時の対処要領等に関する研修を新設(平成11年度)警察
 ・主要都道府県警察の機動隊員を対象にしたNBCテロ対策に関する研修の実施(平成12年度)警察
 ・特殊武器防護研修及び衛生技術情報収集のための専門医官研修の新設(平成12年度)防衛
(6)医療関連の施策 ・被害者の外傷性ストレス障害(PTSD)に関し、医師、看護婦、保健婦等を対象とする研修制度を創設(平成8年度)厚生労働
 ・使用される可能性の高い治療薬のリストを作成(平成12年度)厚生労働

2.現在推進中ないしは推進を検討中の施策

(1)調査等の実施 ・セミナー開催等による先進各国との国際協力の推進内閣官房、外務ほか
 ・生物化学武器防護の状況調査(平成13年度)防衛
 ・大規模感染症発生時の緊急対応のあり方に関する調査(平成12年度から)厚生労働
(2)部隊・組織の整備 ・主要都道府県警察における警視庁及び大阪府警察同様の専門部隊の設置を検討中警察
(3)資機材の整備 ・研究用器材として生物剤検知装置や医学研究用器材の取得(平成13年度)防衛
(4)マニュアル等の作成 ・人命救助、原因物質特定・分析、除染等に関する関係省庁・機関共通の現場対処マニュアルの策定内閣官房ほか関係省庁
 ・病原体検査マニュアルの拡充厚生労働
(5)研修等の実施 ・既設の研修の継続警察、防衛
 ・米国における対処訓練の研修(平成12年度から)防衛
(6)医療関連の施策 ・国内に存在しない感染症の診断技術向上のための研修の実施(平成13年度から)厚生労働
(7)発生防止のための施策 ・生物剤の管理体制構築に関するワーキンググループによる検討内閣官房ほか関係省庁
(8)専門家ネットワークの構築 ・「バイオハザード専門家ネットワーク」(仮称)の構築内閣官房、厚生労働

3.今後の課題

(現地関係機関間の連携確保) ・現地関係機関等の連携の確保に向けた関係省庁間の連携による指導・調整内閣官房ほか関係省庁
(医療関連の施策等) ・ワクチン、治療薬等医薬品備蓄体制の整備厚生労働
 ・現在国内で実施できない検査の実施方針の決定及び施設等の整備の検討厚生労働
(その他) ・中期防衛力整備計画(平成13〜17年度)に盛り込まれた趣旨に基づくNBC対処能力の充実及び強化防衛
 ・生物剤を原因とする災害発生時の安全且つ効果的な救急・救助活動のあり方に関する検討消防

III.化学剤を用いたテロへの対策のための施策推進状況

1.既に講じられた施策

(1)調査等の実施 ・先進諸国のNBCテロ対策に関する委託調査(平成11年度)警察
(2)部隊・組織の整備 ・科学警察研究所に「法科学第三部化学第四研究室」を設置(平成8年度)警察
 ・警視庁及び大阪府警察にNBCテロに対応するための専門部隊を創設(平成11年度)警察
 ・警備局警備課に「重大テロ対策官」を設置(平成12年度)警察
 ・陸上自衛隊研究本部に「特殊武器研究官」及び「医学・特殊武器衛生研究科」を新設(平成12年度)防衛
 ・陸上自衛隊化学学校に「化学教導隊」を新設(平成12年度)防衛
 ・一部の市町村の消防本部が化学災害の専門部隊又は専門資機材を保有消防
 ・主として特殊な災害に対応するための消防応援活動を行う特殊災害部隊を緊急消防援助隊の都道府県隊の部隊の編成に追加(平成12年度)消防
(3)資機材の整備 ・防護服や検知器等の資機材整備警察、防衛、海保
 ・市町村による化学災害発生時に安全かつ効果的な救助活動を行うための防毒衣、防毒マスク及び有毒ガス測定器の整備に対する国庫補助を実施(昭和62年度以降)消防
 ・75ヶ所の救急救命センターに高速液体クロマトグラフ等の分析機器を整備(平成10年度)厚生労働
 ・全国9ヶ所に設置された高度救命救急センターに元素分析装置を始めとする分析機器を配備(平成10年度)厚生労働
 ・救急救命センターに簡易毒劇物検査キット、除染設備、防護服を配備(平成12年度)厚生労働
(4)マニュアル等の作成 ・陸上自衛隊における対処要領(医療従事者用)の作成(平成11年度)防衛
 ・水質汚染に関する危機管理実施要領策定マニュアルを都道府県等に提示し、各都道府県における危機管理対応マニュアルの作成を指導(平成10年度)厚生労働
(5)訓練の実施 ・主要都道府県警察の機動隊員を対象にしたNBCテロ対策に関する訓練の実施(平成12年度)警察
(6)研修等の実施 ・都道府県警察の警部を対象に、警察大学校においてNBC物質に関する基礎知識、NBCテロ発生時の対処要領等に関する研修を新設(平成11年度)警察
 ・主要都道府県警察の機動隊員を対象にしたNBCテロ対策に関する研修の実施(平成12年度)警察
 ・特殊武器防護研修の実施(平成12年度)防衛
 ・市町村の消防職員を対象とする研修を陸上自衛隊化学学校に委託して実施(平成9年度から)消防
 ・救急救命センター、災害拠点病院に勤務する医師等への中毒原因物質特定、急性中毒処置に関する研修の実施(平成12年度)厚生労働
(7)医療関連の施策 ・被害者の外傷性ストレス障害(PTSD)に関し、医師、看護婦、保健婦等を対象とする研修を実施 (平成8年度から)厚生労働
 ・昭和61年度から中毒事件に関する情報提供、治療に必要な中毒情報提供等を行ってきている(財)中毒情報センターに、症状から中毒起因物質を推定するシステムを整備(平成10年度)厚生労働
 ・薬物中毒に関する専門家リストを作成し、救急医療関係者等に情報提供開始(平成10年度)厚生労働
 ・使用される可能性の高い治療薬のリストを作成(平成12年度)厚生労働
(8)専門家ネットワークの構築 ・「重大ケミカル・ハザード専門家ネットワーク」の発足(平成11年度)内閣官房、警察、厚生労働
(9)発生防止のための施策 ・「サリン等による人身被害の防止に関する法律」の制定(平成7年度)警察
 ・日本化学工業協会等に対し、法律で規定されている特定物質等に関して、企業等に適切な管理を行うことの徹底を依頼(平成7年度)経済産業
 ・日本化学工業協会に対し、化学物質の悪用防止に関し、業界における自主的な流通管理の推進を行うよう依頼(平成8年度)経済産業

2.現在推進中ないしは推進を検討中の施策

(1)調査等の実施 ・セミナー開催等による先進各国との国際協力の推進内閣官房、外務ほか
 ・生物化学武器防護の状況調査(平成13年度)防衛
(2)部隊・組織の整備 ・主要都道府県警察における警視庁及び大阪府警察同様の専門部隊の設置を検討中警察
 ・陸上自衛隊化学防護隊の装備の充実強化(平成13年度)防衛
(3)資機材の整備 ・防護服等の資機材の更なる整備・充実警察、防衛
 ・神経剤治療用自動注射器及び化学剤検知器の取得(平成13年度)防衛
 ・市町村による化学災害発生時の救助活動に使用する資機材の整備に対する国庫補助の継続消防
(4)マニュアル等の作成 ・人命救助、原因物質の特定・分析、除染等に関する関係省庁・機関共通の現場対処マニュアルの策定内閣官房ほか関係省庁
(5)研修等の実施 ・既設の研修の継続警察、防衛、消防
 ・米国における対処訓練の研修(平成12年度から)防衛
(6)発生防止のための施策 ・法律に基づき、特定物質許可使用者等に対して立ち入り検査を定期的に実施経済産業
 ・化学兵器禁止条約附属書で規定されている物質のうち、従来日本になかった物質を海外から入手し、分析に必要なデータを蓄積することを(財)化学物質評価研究機構に委託経済産業

3.今後の課題

(現地関係機関の連携確保) ・現地関係機関等の連携の確保に向けた関係省庁間の連携による指導・調整内閣官房ほか関係省庁
(医療関連の施策) ・治療薬等医薬品備蓄体制の整備厚生労働
 ・特殊物質・微量物質を速やかに分析できる機器の全国的な整備厚生労働
 ・広域災害・救急医療情報システム活用に関する更なる周知徹底厚生労働
(その他) ・中期防衛力整備計画(平成13〜17年度)に盛り込まれた趣旨に基づくNBC対処能力の充実及び強化防衛
 ・より高度な測定用器具、隊員保護用器具等の導入、化学災害に関する研修の充実等による市町村の消防本部におけるより安全かつ効果的な救急・救助活動を行うための体制の整備の促進消防