緊急経済対策に関する小渕内閣総理大臣記者会見録

(平成10年11月16日)

説明資料

では、総理どうぞ。

○ 小渕総理 おはようございます。
 この内閣を経済再生内閣と銘打ちまして、今日まで最善の努力をいたしてまいりましたが、現下の厳しい国内、国際経済情勢にかんがみまして、私といたしまして、各閣僚に対しまして、緊急経済対策を打ち出すべく知恵を絞って政策を打ち出すよう求めてまいりましたが、今朝、9時から経済対策会議を開きまして、緊急経済対策を決定をいたしましたので、この機会に国民の皆様にも御理解を求めるべく会見をさせていただく次第でございます。

 まず、初めに申し上げたいことは、この緊急経済対策は現在の厳しい経済情勢から抜け出して、日本経済を一両年に回復軌道に絶対乗せていかなければならぬ。その第一歩になるものであると、こう考えておりまして、そのために、まず来る11年度に次の図の3つの目標を達成いたしたいと思っております。

 第1に、自信を持って、はっきりとプラス成長を実現したいということであります。

 第2には、失業者を増やさない、雇用と起業の推進ということでございます。

 第3には、対外経済摩擦を起こしてはならないということでございまして、ひとり日本の経済回復そのものは、我が国の経済を活性化することではございますが、同時に日本の経済の大きさから考えまして、諸外国にいろんな経済摩擦を起こしてはならない、この3つのポイントを中心にして今回まとめさせていただいたということでございます。

 そこで、まず、やらなければならないことは、何と言っても不況の環を断ち切らなければならない。経済の不況時にはごらんの図のような悪循環が生ずるおそれがございまして、すなわち企業その他、ビジネスにおきましては、売上げが減少する。需要が不足をしてくると。当然ですが、利潤が低下してくる。そうなりますと、経営が極めて不安になってくる。そこで企業の信用収縮が起こってくる。

 そうなりますと、金融機関は貸し渋りが起こって、信用収縮になってくる。それが結局、企業はリストラをしなければ経営ができなくなる。同時に、投資も抑制をされる。これはまた、売上げ減少と、こういう循環になりますが、リストラをすれば当然でございますけれども、こちらの方の個人の所得の減少ということにつながってくるわけでありまして、これは当然雇用不安を生ずる。雇用不安が起こってくれば、消費を控えるということが起こってくる。これが売上げの減少と。この2つの循環が重なって、いわゆる悪循環が起こるわけでございますので、この環を是非どこかで断ち切っていかなければならぬ。そのためには、まず金融対策によって貸し渋りを断つ。この信用収縮に対して、どうしても政府としては貸し渋りを断つような政策を行うということが1つのポイント。

 それから、同時に景気回復策によりまして、需要の不足を断つ。この環をどうしても断ち切らなければならないということでございまして、この不況の環を断ち切ることが、まず日本経済の再生に必要なことだと、こういう趣旨をもちまして、今回の対策を打ち出させていただいたということでございます。

 そこで、それでは次にどう対策を講ずるかということでございますが、1つは、総事業費17兆円を超えるところの政策を遂行すると。それに、いわゆる恒久的減税6兆円を含めますれば、優に20兆円を大きく上回るところの規模で活性化を図っていくということでございます。

 その内容とするころは、まず、貸し渋り対策といたしまして、5兆9,000 億程度、それから社会資本整備といたしまして、8兆1,000 億円程度、それから、住宅対策といたしまして、1兆2,000 億程度、これは特に今回雇用対策というものに非常に注意、注目をいたしたわけでございまして、そういった意味で1兆円程度のものをしようと。

 それから、これも御案内のとおりでございますが、地域振興券を0.7 兆、すなわち7,000 億円発行いたしまして、地域振興のためにこれを活用していただくということでございます。

 更に、アジアに対する対策として、1兆円程度でございますが、今回日本の景気後退がアジアに及んでおる。また、アジアの金融・通貨不安が現地における経済活動を停滞せしめている。それがまた、我が国に波及してくる。また、我が国としては、そうした国々に対する輸入が減少する。これがまた、その地における輸出を減少させることによりまして、ある意味で、また東南アジア全体との関係におきましても、日本経済が非常に大きくプラス・マイナス双方に問題を起こしているということでございますので、この点につきましても、海外に対しての政策も今回講ずることが必要であると、こう考えておるわけでございます。

 次に、景気回復策の重点施策でございますが、第1に、21世紀先導プロジェクトという重点的な投資ということでございまして、4つのプロジェクトを考えさせていただいております。もとより、今次、この時点における経済回復、景気回復を図らなければなりませんが、同時に21世紀に向けての先導的なプロジェクトをこの際明らかにして、その端緒も築いていくという必要があるのではないかということで、4つのプロジェクトを考えさせていただきました。

 第2には、生活空間活性化。都市の住空間、高齢者にやさしい空間、安全で環境にやさしい空間づくりに重点的な予算配分をいたしていきたいと考えております。

 第3には、産業再生、雇用対策でございますが、新事業の創出によりまして、良質な雇用の確保と生産性の向上のための投資拡大の重点化を考えております。

 これもしばしば言われることでございますけれども、日米間の開業率・廃業率の比較をいたしますと、米国の場合には開業率13.8%、廃業率11.4%、日本の場合、開業率が3.7 %、廃業率3.8 %、ほんのわずかでございますけれども、日本の場合には廃業率の方の比率が高まっておるということでありまして、雇用を創出するためにも、新しい企業を起こすと、こういう点が極めて重要であるという意味から、この雇用対策の面からも産業を再生をしていく必要があるということで、この重点方針はそのように定めさせていただいております。

 次に、21世紀先導プロジェクト。先ほど申し上げしましたが、未来を先取りするプロジェクトを各省庁連携して取り組んでいくというものでございまして、今般の各省庁、大臣に私は要請いたしまして、それぞれ役所からいろんなプロジェクトが出てまいりましたけれども、そうしたものを総合的に政府としてまとめていく必要があるのではないかということでございまして、関係省庁と横の連絡を十分取り合いながら、同じようなプロジェクトは統一していくということでありますし、また、加速すべきものについては、どこの役所のものだなどと考えずに、政府全体としてやっていかなければならないと考えておりまして、まず第1には、先端電子立国の形成でございまして、たとえて言えば光ファイバー網の整備でございまして、これも従来から政府といたしましても、積極的に取り組んでまいりましたが、この際は本当に従来の発想を超えて、大きく展開していかなければならないということでございまして、今、電話線が、昔の銅線1本であれば、今の光ファイバーは大体10億倍くらいの容量を持つんですが、将来においては、これがその10億のまた100 万倍くらいのペタネットと言われるくらいのものに将来としてはやっていかなければならないと考えております。

 第2には、未来都市の交通と生活でございますが、例えばノンストップ自動料金収受システムなどでございまして、今、高速道路に入りましても、一番渋滞するのは料金所のところなんです。これは既に欧州におきましては、全部の料金の授受するところではありません、一部でいいんでありますけれども、コンピュータによりまして、後払いができるということですから、そこのラインを通った車はすっと通過していけるというシステムが既に欧米では取り入れられておりますが、残念ながら我が国においてはできない。したがって、車は料金所に列をつくるということになりますので、こうしたものを早急に取り入れていく必要があるのではないかと思っております。

 それから、安全、安心、ゆとりの暮らしでございまして、廃棄物の技術やダイオキシン対策などでございますが、特に高齢者の皆さんが歩いて生活のできるまちづくりということを考えておりまして、必ず車でなければ買物にも行けないという現在の発達した購買のシステム、お年寄りは結局、町の中でそういう買物ができるという、これがある意味で安心、ゆとりの暮らしということだろうと思います。

 第4に、高度技術等の流動性のある安定雇用社会の構築でございまして、例えばバイオテクノロジーや、教育訓練など、こうした4つの日本を元気にするというテーマで未来を先取りする、日本全体を元気にするねらいにいたしております。

 次に、恒久的な減税でございますけれども、これは個人所得課税は平成11年から最高税率50%への引き下げ等によりまして、4兆円規模の恒久的減税を実施してまいりますが、当然のことでございますが、地方財政につきましては、円滑な上に十分配慮しての減税を考えてまいりたい。

 第2は、法人課税につきましてでありますが、11年度から実効税率40%程度に引き下げを考えております。

 第3には、政策減税といたしまして、特に住宅建設、民間設備投資など、政策税制について精力的に検討して、早急に具体策を図っていきたいと思っております。  住宅問題につきましては、住宅ローンにかかわる問題、あるいは土地不動産の流動化等につきましても、十分配意していかなければならないことは、かねて言われておることでございますが、これは政府・党を挙げてこれから十分検討して対応していきたいと思っております。

 民間設備投資などの点につきましては、今、コンピュータの2000年問題という重大な問題がございまして、こうした問題については、時限も切られていることですから、これも積極的に取り組んでいきたいと思っております。

 第4に、個人消費の喚起と地域経済の活性化を図るために、これは先ほど申し上げました地域振興券の発行ということを考えております。

 最後に、世界の経済のリスクの対応でございますが、世界経済、アジア経済にとりましては、日本経済の再生が極めて重要であることは冒頭申し上げたところでございまして、密接な相互依存関係にあるアジア経済を支援してまいりたいと思います。時あたかも実は本日の午後からマレーシア、クアラルンプールでのAPECの首脳会議に私、出席する予定にいたしておりますけれども、この中でこれから論議をされますのは、アジア諸国の通貨危機への対応、あるいはアジアの現地日系企業に対する支援の問題等も極めて重要な問題でございまして、アジア通貨危機への対応につきましては、既に御案内のように、宮沢構想ということで、300 億ドル支援することになっております。その内訳等につきましても、現地のそれぞれの国々の御期待、御希望も承りながら、対処していきたいと思いますが、何よりもそうした東南アジアの国々におきましては、我が国に対する輸出というものの大きさを考えますと、この地の経済が活性しなければ、また、我が国にも大きな影響があるということは申し上げたとおりでございまして、例えばタイ、マレーシア、インドネシアの全輸出の25%を日系企業が担っておりまして、そうした日系企業に対しまして、国内で担当してまいりました中小企業金融公庫、あるいは国民金融公庫による融資制度なども考えて、対応していかなければならないと思っております。

 この対策は我が国経済を一両年のうちに回復軌道に乗せるための第一歩でありまして、今後平成12年度までの経済再生を図ることといたしまして、機動的、弾力的な経済運営を行ってまいりたいと考えております。

 11年度ははっきりとしたプラス成長に転換をさせてまいりたい。このような強い決意を持ちまして、緊急対策を講じようとしております。この対策の緊急、かつ着実な実行に改めて尽くしてまいりますことを申し上げ、国民、皆様方の御理解と、また、御支援をいただきたいと思っております。

 若干長くなりましたが、以上、今回の対策につきまして、御報告を申し上げさせていただいた次第でございます。


− 総理、時間がなくなりましたので、端的にお答えをお願いいたします。
 まず、1問目ですが、緊急経済対策では、日本経済を平成11年度にははっきりとしたプラス成長に、また、12年度には本格的な回復軌道に乗せるとの目標を盛り込まれましたが、具体的にはどのような数字を念頭に置かれているのでしょうか。明示していただきたい。 また、その目標を達成できなかった場合には、総理としてどのような責任を取るおつもりなのか、お伺いいたします。


○ 小渕総理 まず、数字でございますけれども、総事業費は17兆円を超えるものである。恒久的減税は6兆円を超えるものでございまして、これを総計いたしますれば、優に20兆円を大きく上回る規模でありまして、また、内容的にも充実した対策であると自負しておるところでございます。

 申し上げたように、はっきりと11年度にはプラス成長、そして、12年度は回復軌道に乗せたいと、こう考えております。


− 2問目ですが、景気対策の一環として、また、自民党と自由党との連立をにらんだ政策協議の中心テーマとして、消費税率の引き下げ、ないしは凍結問題が論議されております。総理御自身の消費税率の引き下げや、凍結に関する御見解を改めてお伺いいたします。

 同時に、消費税の福祉目的税化も議論されておりますが、併せて御見解をお願いいたします。


○ 小渕総理 消費税は実は竹下内閣のとき、私、官房長官でございまして、一緒にあの消費税導入につきまして、苦心、苦労をいたしたわけでございます。この消費税率の引き上げは、少子高齢化の進展という我が国の構造変化の税制面から対応するものでございまして、我が国の将来にとって極めて重要な改革であったと、今でも考えております。

 消費税に限りませんが、いずれにしても税は低い方がいいという面はございますけれども、税財政の在り方を考えますと、消費税率の引き下げは困難でございまして、この点、国民の皆さんに是非御理解をいただきたいと思っております。  申し上げたように、増大する年金・医療・介護等の福祉のための財源をどのようにお願いするかということは、重要な検討課題でございますが、こうしたことを考え、21世紀を展望して、中長期的な税構造はどうあるべきかということは建設的に議論していかなきゃならぬと思っております。

 そこで、福祉目的税化につきましては、受益と負担の直接的な関係がいまだ見出すことができませんで、社会保険方式のメリットが失われないかという問題もございますので、幅広い観点から慎重に議論いたしていかなければならない問題だと考えております。


− では、以上をもって終わります。どうもありがとうございました。


○ 小渕総理 どうも大変、長時間ありがとうございました。