令和3年1月13日新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見終了後の書面による質問と回答

(質問)
 政府の一連のコロナ対応について伺います。GoTo、緊急事態宣言発出、そして今回のビジネス往来一時停止は、総理は当初アクションを取ることに否定的で、批判が上がってから方向転換を迫られました。政府の対応は「先手、先手」ではなかったのでしょうか?批判が起こる前に総理が率先して対策講ずることはできなかったのでしょうか?【ジャパンタイムズ】

(回答)
 御指摘は謙虚に受け止めたいと思います。
 これまでも、専門家の意見を踏まえつつ、最終的には私の判断で対策を実施してきました。
 例えば、緊急事態宣言については、法律に基づく措置によって感染対策を徹底する、強力な手段である一方で、国民の生活を大きく制約することから、発出や変更に当たっては最善の判断が求められるものです。
 昨年3月の特別措置法改正の際の国会の付帯決議においても、緊急事態宣言での措置が国民生活に重大な影響を与える可能性に鑑み、定められた要件への該当性について慎重に判断することとされています。
 今回の緊急事態宣言については、12月の段階では、専門家から「宣言を出す状況にない」という御意見を頂いていました。しかし、12月31日に東京都の感染者数が1,300人となり、生活に大きな制約を課してでも、より強力な措置が不可避と判断いたしました。専門家からも「正に今」宣言を出す時期に至ったとの提言を頂き、緊急事態宣言を決定しました。さらに、全国への感染拡大を防ぐため、対象地域を拡大しています。

(質問)
 首相の呼び掛けの結果の受け止めと、宣言解除の見通しについて伺います。首相は昨年12月25日の記者会見で、感染を抑えるため、国民に「静かな年末年始」を呼び掛けましたが、結果は、緊急事態宣言を計11都府県に出さなければいけない状況となりました。首相の訴えはなぜ国民に届かなかったと考えますか。また、約1か月で宣言を解除するのは至難の業と指摘される中、首相は延長の可能性について、「仮定の質問には答えない」と言及を避けています。国民に制約された生活をお願いするのに、見通しを示さないのは不親切ではないでしょうか。さらに、政府は解除の目安を「ステージ3」としているようですが、そもそも「ステージ3」は「感染急増」に当たります。基準として甘すぎませんか。【東京新聞】

(回答)
 今回、飲食店の営業時間短縮を始めとする強力な4つの対策を一挙に実施することとしております。国と宣言の対象となった自治体が協力して国民の皆さんに呼び掛けを続け、国民の皆さんの行動を変えていただき、何としてもこの感染拡大を減少方向に持っていきます。
 その上で、今は緊急事態宣言の延長の可能性を考えるのではなく、まずは、今回の4つの対策を徹底して実施していただき、1日も早く感染を減少させ、解除できるよう取り組むことが重要だと考えています。
 宣言の解除については、分科会からも、解除の前提として、速やかに「ステージ3」まで下げるよう提言を頂いております。「ステージ3」となった後も減少を目指しますが、まずは緊急事態宣言のレベルである「ステージ4」を早急に脱却し、「ステージ3」の水準を目指してまいります。なお、当然ながら、その際に感染が減少に向かっていることが重要だと考えています。

(質問)
 緊急事態宣言を解除する際の「出口戦略」が明確ではないとの指摘があります。政府としては複数の要因について総合的に検討されるとは存じますが、ここまで達成すれば宣言が解除されるといった、国民に分かりやすい「達成目標」を示すことはできないでしょうか。【共同通信】

(回答)
 分科会からも、解除の前提として、速やかに「ステージ3」まで下げるよう提言を頂いております。「ステージ3」については、病床の状況、新規感染者数などの客観的な指標を基に、判断されます。
 「ステージ3」となった後も減少を目指しますが、まずは緊急事態宣言のレベルである「ステージ4」を早急に脱却し、「ステージ3」の水準を目指してまいります。

(質問)
 総理会見についてお伺いします。今年に入り、年頭会見から数えて3度目となります。総理就任後は会見や取材対応の場が少なかったように思いますが、最近、主要メディアへの出演を含め国民に直接語りかける場を増やしているのはなぜですか。一方で説明の場を増やしても、直近の世論調査を見る限り、政府のコロナ対応を評価する人が減っています。総理のメッセージの伝え方に問題はありませんか。その言葉は、国民に十分届いているという実感はありますか。【京都新聞】

(回答)
 総理就任以来、記者会見や官邸入口でのメディアからの質問への対応、新型コロナウイルス感染症対策本部など様々な機会を通じて、必要な情報を発信しています。国民の皆さんに対する説明責任を果たす、この方針に変わりはありません。
 今、この瞬間にも献身的な治療に当たってくださっている医療従事者の方々の御努力に思いを馳(は)せ、改めて「国民の命と暮らしを守る」ことを肝に銘じて対策を進めてまいります。
 国民の皆さんに御協力を頂けるよう、分かりやすく丁寧な情報発信を常に心掛け、引き続きしっかり取り組みます。

(質問)
 東京オリンピックとパラリンピックについての質問させていただきます。総理が日本の首脳として、東京五輪を実現したい気持ちは、ほとんどの国民は理解できると思います。ただ、感染状況を見ると、「必ず開催します」「やり切る」とは言えないと思われます。最終の決定権はIOC(国際オリンピック委員会)が持つと思います。それを別にしても、総理としてはなぜ国民に「全世界での感染症状況をきちんと分析してからIOCと共同で判断します」とはっきり言わないのでしょうか。【Radio France】

(回答)
 IOCバッハ会長と昨年11月にお会いした際に、東京五輪を必ず実現し、今後とも緊密に協力していくことで一致しました。
 まずは、新型コロナウイルスの克服に全力を尽くします。
 安全・安心な大会を実現するためには、感染対策が極めて重要です。東京都、大会組織委員会、IOCと緊密に連携して、感染対策を始めとして、大会に向けた準備をしっかりと進めてまいります。

(質問)
 今回の一連の緊急事態宣言発出に伴って変更された新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針のうち、対象の都道府県の「外出の自粛」に関して伺います。総理は今日の会見で、「不要不急の外出については、飲食店が閉まる夜8時以降だけでなく、日中も控えていただくようお願いをいたします。」と呼び掛けられました。1月7日の新型コロナウイルス感染症対策本部で変更された基本的対処方針では、外出の自粛について、「特定都道府県は、法第45条第1項に基づき、不要不急の外出・移動の自粛について協力の要請を行うものとする。特に、20時以降の不要不急の外出自粛について、住民に徹底する。」とされました。今回の総理の呼び掛けは、上記、基本的対処方針の外出の自粛についての考え方を変え、「住民への徹底」を日中にも広げるものなのでしょうか。それとも、基本的な考え方は変わらないものの、日中の外出自粛について、より強調をされたものなのでしょうか。また、これに関連し、基本的対処方針の中に「20時」と具体的な時間が明記されたことで、かえって、20時までの外出は大丈夫と、当該地域の住民に誤ったメッセージとして伝わった可能性はないでしょうか。仮に、その可能性もあるとお考えの場合、対象の都道府県だけでなく、政府としても、さらに、地域住民に向け誤解を解くようなメッセージを発出されるお考えはありますか。【CBCテレビ】

(回答)
 今回の措置は、基本的対処方針に「特定都道府県は、法第45条第1項に基づき、不要不急の外出・移動の自粛について協力の要請を行うものとする。特に、20時以降の不要不急の外出自粛について、住民に徹底する」と書かれているとおり、従来から、日中を含めて不要不急の外出の自粛をお願いしているところです。
 今回の会見の発言も、そうした内容と基本的に同様ですが、日中の外出についても不要不急の外出自粛を要請していることを、より丁寧に説明したものです。
 国民の皆様の御理解・御協力を頂けるよう、引き続き、丁寧な御説明を行ってまいります。

(質問)
 政府分科会の報告によると、12月のクラスターの45パーセントは医療・福祉施設、19パーセントが飲食関連です。飲食店に的を絞った対策では不十分で、重症化リスクの高い高齢者や病人がいる医療・福祉施設にいかにウイルスを持ち込ませないかが極めて重要です。具体的には世田谷区のような社会的検査を推進すべきです。このことは随分前から政府も認識していて、昨年8月28日の首相辞任会見で安倍首相(当時)こう言っています。「特に重症化リスクの高い方がおられる高齢者施設や病院では、地域の感染状況などを考慮し、職員の皆さんに対して定期的に一斉検査を行うようにし、高齢者や基礎疾患のある方々への集団感染を防止します」。ところが、9月16日に菅首相が首相に就任してから、この方針を実行に移した形跡が見られない。ようやく、就任から2か月後の11月19日のぶら下がりで「感染が拡大する地域の高齢者施設などで検査を徹底する」と語り、西村、田村両大臣に指示を出したことを明らかにしました。徹底指示により菅首相がこの方針を維持していることは分かるので、やるべきことだという認識はあったのでしょう。もし、菅首相が安倍首相のこの方針をしっかり引き継いで、実行し、冬が来る前に、全国で病院や高齢者施設での定期検査が定着していれば、これらの場所でのクラスターを減らすことができ、救えた命も少なくないのではないか。病院クラスターを減らせれば、医療従事者の待機が避けられた面もあるはずです。どうして、安倍首相のこの方針をしっかり引き継いで実行しなかったのか。防止するとしていた「高齢者や基礎疾患のある方々への集団感染」が現に多発していることに後継首相としてどう責任を感じ、責任を取るおつもりなのか。(やむを得なかった、菅首相に責任はないというのであればその理由を教えてください。現にクラスターは発生してしまっているのですから)併せて、国として定期的検査について今後どう取り組むつもりなのか、具体的に答えてください。【日刊現代】

(回答)
 PCR検査については、検査の必要な方が、検査を受けられるよう、検査体制を拡充してきました。
 その中で、感染拡大地域の医療機関や高齢者施設の入院・入所者など、重症化リスクが高い方々に対しては、重点的に検査を実施する、このことは、政府としての一貫した方針です。このことは、既に8月には、政府として、都道府県に要請しております。
 その上で、11月には、医療施設や高齢者施設等でのクラスターが多数発生している状況等を踏まえ、改めて都道府県に対して重点的な検査の実施を徹底したものであり、政府としては、引き続き、感染拡大防止のために必要な方が迅速・スムーズに検査を受けられるよう検査体制の強化に努めてまいります。

(質問)
 総理は会見で日中の外出自粛を呼び掛けました。7日の会見では午後8時以降の不要不急の外出自粛を、飲食につながるという理由で強調しており、対応が分かりにくい状況です。どのような理由で、国民にどのレベルの外出自粛を求めるのかお伺いします。人の流れが収まらない理由に、総理の発信力不足との指摘があり、覚悟が伝わらないとの厳しい声もあります。指摘をどう受け止め、対応されますか。【北海道新聞】

(回答)
 外出自粛については、基本的対処方針において、「特定都道府県は、法第45条第1項に基づき、不要不急の外出・移動の自粛について協力の要請を行うものとする。特に、20時以降の不要不急の外出自粛について、住民に徹底する。」とされており、感染防止を図るため、日中も含めて不要不急の外出自粛をお願いしているところです。
 なお、御指摘の厳しい声については謙虚に受け止めます。何としても感染を減少方向に持っていくため、国民の皆様の御理解・御協力を頂けるよう、引き続き、丁寧な御説明を行ってまいります。

(質問)
 菅総理は緊急事態宣言を発令して4つの対策を掲げましたが、その対策から家庭内感染の対策がすっぽり抜け落ちています。感染経路不明が現在約6割を占めますが、感染経路が判明している中では、東京都では家庭内感染の割合が50.4パーセントと過半数を超えており、一番高くなっています。背景には入院も施設への隔離もできず、感染が判明していても、自宅療養の人が急増していることが考えられます。実際、11月初旬の調査で全国で約1,000人だった自宅療養者の数は2か月後の1月初旬現在、17倍の約1万7,000人超に急増しています。こうした自宅療養者の急増は、医療機関も満床に近く、軽症者を隔離する施設も確保できていないことが原因と思われます。豪邸に住める一部の富裕層を除き、ウサギ小屋と言われる狭小な住宅に住む大半の庶民の家屋では、感染した家族を自宅に留めれば、家庭内感染が広がるのは必然です。感染症対策の基本は徹底した検査による陽性者の発見と徹底した隔離であると言われています。飲食業の時短や外出の制限やテレワークの推進によって、人々を自宅に押し込めることだけでは、本来の意味での「隔離」とは言えず、逆に家庭内感染を広げてしまう懸念があります。会見中、尾身会長は、「昼夜を問わず、外出しないこと」を国民に求めました。また、菅総理は、「30代以下の若い人が、無症状のまま感染を広げている」と言われました。しかし、無症状者は、自分が感染しているのか否か、検査を受けさせてもらえない限り、知る術はなく、隔離を含めて、どのような行動を選択すべきか、判断できません。前々回の会見で、私は菅総理に、これまでの政府の検査抑制方針を転換し、無症状者を含めて、国民全員に検査を行う考えはないか、お聞きしましたが、総理の御回答は「国民全員に検査する考えはない」というものでした。総理御自身が、無症状者による感染拡大に言及されている現時点で、改めてお伺いしますが、これまでの政府の大方針である検査抑制政策を転換し、無症状者を含めた全量検査を行う考えはありませんか。また、家庭内感染の拡大を食い止めるためには、隔離施設の不足を解消しなければなりません。例えば東京ならば五輪選手村が空いています。1万8,000床分が確保可能ですが、こうした有休施設を積極的に隔離施設に転用する政策は考えておられませんか。また、徹底した検査と施設における隔離を行うには予算が必要です。野党はGoTo政策の予算を組み換えてコロナ対策に当てることを求めていますが、閣僚や与党幹部からは否定的な声が出ています。菅総理には予算の組み換えを行うお考えはないのでしょうか。以上、お尋ねしたいと思います。【岩上安身氏】

(回答)
 年明け以降、30代以下の若年者の感染者が増加しております。若年者の多くは無症状や軽症であり、外出や飲食により、知らず知らずのうちに感染を広げていると承知しております。
 このため、今回の緊急事態宣言では、飲食店の営業時間短縮を始めとする強力な4つの対策を一挙に実施するものです。国と都道府県が協力して呼び掛けを続け、国民の皆さんの行動を変えていただき、何としてもこの感染拡大を減少方向に持っていきます。
 その上で、PCR検査については、検査の必要な方が、検査を受けられるよう、これまでも検査体制を拡充してきました。
 また、症状の有無にかかわらず、感染拡大地域では、高齢者施設や医療機関など、重症化リスクの高い方が多数いる場所、接待を伴う飲食店など、不特定多数との接触があり、感染があった場合に拡大しやすい場所については、優先して積極的に検査を実施するよう都道府県にも要請しております。
 政府としては、引き続き、検査の必要性を踏まえて、検査体制を拡充してまいります。
 軽症者等のための宿泊療養施設を確保することも重要です。政府としては、各都道府県が、その実情に応じて宿泊療養施設の確保を進められるよう、財政支援も含め、必要な支援を行ってまいります。
 なお、御指摘の検査や隔離のための費用も含め、令和2年度第3次補正予算や令和3年度予算では、新型コロナウイルスの感染拡大防止策や、雇用や事業の支援に必要な経費を計上しており、コロナ対策に万全を期しています。

(質問)
 今回の緊急事態宣言への7府県の追加、また、11の国と地域で実施しているビジネス関係者らの往来停止など、政府の対応が「一転二転」「小出し」「後手後手」との批判が出ています。それについての御自身の評価と、責任についてはどうお考えですか。【朝日新聞】

(回答)
 緊急事態宣言については、法律に基づく措置によって感染対策を徹底する、強力な手段である一方で、国民の生活を大きく制約することから、発出や変更に当たっては最善の判断が求められるものです。
 今回の緊急事態宣言の発出については、12月の段階では、専門家から「宣言を出す状況にない」という御意見を頂いていました。しかし、12月31日に東京都の感染者数が1,300人となり、生活に大きな制約を課してでも、より強力な措置が不可避と判断いたしました。専門家からも「正に今」宣言を出す時期に至ったとの提言を頂き、緊急事態宣言を決定しました。
 対象地域の拡大は、新規感染者数、病床の利用率など、いわゆる「ステージ4」に相当する指標が多いことや、大都市圏は人口が集中しており、全国に感染が広がるリスクがあることといった要素に基づいて判断しました。
 また、これまでも、水際からの感染拡大防止に万全の対策を講じてきました。ビジネストラック・レジデンストラックの相手国・地域からの入国者に、変異株の感染が確認された事例はありません。
 しかし、現在の国内の深刻な感染状況に加えて、直近では、英国からの帰国者によるクラスターで変異株が確認された事例、ブラジルからの帰国者で新たな変異株が確認された事例などが相次ぎ、国民の皆さんの不安が更に高まっている現状を重く受け止め、国民の皆さんの命と暮らしに対するあらゆるリスクを予防的に取り除くとの観点から、今回、緊急事態宣言が発令されている間、一時停止することとしました。
 御批判は謙虚に受け止めます。何としても感染を減少方向に持っていくため、引き続きあらゆる方策を尽くし、国民の皆様の命と暮らしを守ります。

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