産業構造改革・雇用対策本部

新市場・雇用創出に向けた重点プラン

平成13年5月25日
経済産業省




【政策課題(新市場・雇用創出に向けた15の提案)】

I.新産業創出に向けたイノベーションシステムの構築・ベンチャー育成

1.イノベーションの基盤整備

イノベーション・シーズは圧倒的に大学が保有。基礎研究力を持つ大学と産業・ベンチャー企業群の近接性こそが「国際競争力」に直結。

大学発の特許取得件数を10年間で10倍、大学発ベンチャー企業を3年間で1000社にすることを目標に、大学研究における競争導入を徹底的に進めるとともに、大学等の組織運営改革や「学」から「産」への技術移転戦略の構築を急ぐ。

 
2.戦略基盤・融合技術分野への重点投入(産官学総力戦)

 環境、バイオテクノロジー、情報通信、ナノテクノロジー・材料などの重点戦略分野について、研究開発の重点投資を図るとともに、具体的な新産業創出に向けた目的指向の明確な研究開発、ロボット等の分野融合的な研究開発を促進する。

 
3.開業創業倍増プログラム

 我が国風土に「ベンチャー・スピリット」を植え付け、新規開業を5年間で倍増させることを目標として、人材確保・育成、資金調達、経営資源の有効活用などの環境整備を進める。
 また、「地域再生産業集積(産業クラスター)計画」として、産学官の広域的な人的ネットワークを構築し、技術の事業化支援などのための支援策を効果的に投入することにより、地域経済を支え、世界に通用する新事業が次々と展開される産業集積(産業クラスター)を形成する。

4.健康市場の創出

 「健康」は最大の国民ニーズであり、医療・介護分野は、もはや「慈善事業」としてのみ捉えることは適当ではなく、21世紀のリーディング産業として考える必要がある。競争的・効率的な医療・介護システムは、財政の効率化にも資することになる。
 このため、国民への安心と世界最先端の技術・技能を有する医療・介護産業を目指し、膨大な市場ニーズに応え得る競争的な医療・介護システムを構築する。

(医療・健康サービス)

(介護サービス)

5.女性が働き続けられる経済社会基盤の構築(M字カーブ・ボトムアップ計画)

 安定的持続的な成長を実現していくためには、少子化を食い止める一方、女性が働き続けながら安心して子供を産み育てられる環境を整備していくことが不可欠である。育児負担の重い時期と就労意欲の高い時期とが重なることによる女性へのプレッシャーを「社会システム」として解消することが必要である。
 このため、「保育所待機児童ゼロ」と「女性就労率におけるM字カーブのボトムアップ」を目指し、女性の出産・育児・就労を促進する。

6.高齢者の就労促進と充実した消費生活の実現

 高齢社会が進む中、高齢者層の消費拡大が経済浮揚の大きなポイントとなる。金融資産・実物資産の多くを保有する一方、老後の生活不安から、年間可処分所得の20倍以上もの資産を使い切らないまま「意図せざる遺産」として残しているとの実態もある。
 このため、高齢者の就労環境を整備するとともに、安心して充実した消費生活を楽しむことができる環境を早急に整える。

7.環境・エネルギーの成長エンジンへの転化

 環境問題への対応は、21世紀の産業競争力の鍵を握る。すべての産業構造・経済システムを「環境共生型」に塗り替えることが、大きな市場創造をもたらす。
 循環型社会、CO2抑制社会の「新国家モデル」を目指し、ゴミゼロやエネルギー効率の更なる向上のための制度改革・技術革新を加速させる。

(循環型社会)

(新エネルギー・エネルギー効率向上)

8.高度・効率的な物流システムの構築

 日本の事業環境の国際競争力を高めていくためには、港湾等の国際物流拠点の機能強化、各種輸送モードのアクセス改善等を通じた高度・効率的な物流システムを築き、革新的な物流サービスを生み出す公正かつ競争的な物流サービス市場を構築していくことが急務である。
 これについては、別途、早急に「総合物流施策大綱」を策定し、政府一体となって施策を推進する。

9.都市の快適な生活環境の構築・再生

 都市の土地・空間の利用効率の最大化を図り、快適な生活環境を増進す るとともに、都市関連産業を活性化させる。

10.ITによる新しい生活・社会システムの創造

 すべての国民がITのメリットを享受した豊かな生活を実現し、ITの活用を通じた新規産業の創出と既存産業の効率化を達成するために、高度情報通信ネットワーク社会の実現に不可欠なインフラを形成し、これを活用した低廉で質の高いサービスを実現する環境を整備することは喫緊の課題である。
 このため、e−Japan重点計画を強力に推進し、情報通信分野における真に公正な競争環境の確立と徹底した規制改革の推進、電子商取引促進のための法制度等の整備、電子政府の推進、教育の情報化及び情報化人材の育成、ITS・情報家電・ICカードの普及促進など、ITを活用した経済社会システムの実現を急ぐ。

11.新たな経済主体(NPO)の育成

 近年、介護福祉、リサイクル、まちづくり等の分野で先駆的な社会事業を実施する新たな組織形態であるNPOの設立が相次いでおり、その団体数(公益法人等を除く)は約9万に及ぶとの調査結果もある。こうしたNPOは、高齢者、女性、障害者の社会参画や雇用を促進し、充実した自己実現の場を提供するものとして我が国経済社会にとって益々重要な役割を果たすことが期待される。
 このため、経済社会システムにおけるNPOの位置づけについて分析をするとともに、NPOが事業主体、雇用主体として発展する上で隘路となっている人材、資金、活動基盤等に係わる課題を明らかにし、その解決のために必要な環境整備を図る。

II.雇用システム改革とセーフティネットの整備

12.多様な雇用形態の整備

 雇用を取り巻く大きな環境変化の中、事業者側にとっては、長引く景気低迷による過剰雇用感と将来の不確実性の高まりから、従来のいわゆる終身雇用が重荷になって、かえって雇用を手控える傾向がある一方、労働者側にとっても、終身雇用に対する信頼性が低下し、必ずしもそれにこだわらずに多様な雇用形態を求めるニーズがある。
 このため、終身雇用を前提とする制度を見直し、新たな環境変化に柔軟に対応できるよう、多様な雇用形態を整備する。

13.能力開発、外部技能形成システムの整備

 グローバルな競争を通じた厳しい経営環境の下で、個々の労働者の生産性の向上が大きな課題になっているが、事業者側においては、将来の不確実性から、従業員に対する長期的な教育投資を手控える傾向がある一方、労働者側にとっては、外部労働市場が拡大する中で、自らの希望に即し、かつ環境変化に対応した生きた技能、生きた知識を習得したいというニーズが高まっている。
 このため、民間活力を活かしながら、個人主体の能力開発を充実させ、また、大学・大学院改革を通じた高度な人材育成のための環境整備を図ることにより、社会全体として効果的に能力開発を行えるシステムを構築する。

(民間主体の能力開発)

(高度人材育成)

14.労働移動の円滑化

 経営環境の激しい変化の下で、事業者側からは、雇用に対する機動性、柔軟性へのニーズが高まる一方、労働者側からも条件の良い職場、働き甲斐のある職場に円滑に移動できる環境が求められている。
 このため、労働移動の円滑化を進める。

(労働移動の円滑化)

15.セーフティネットの整備

 構造改革の過程では、一時的な失業に対するリスクが高まるおそれもある。
 こうした不安を解消するため、再就職支援の拡充、パート・派遣労働のような雇用形態でも安心して就業できる環境整備など、適切なセーフティネットを整備する。
 また、不良債権の最終処理に伴う直接・間接の影響が中小企業の事業展開に悪影響を及ぼすことのないよう、万全な対策を講じる。

(雇用セーフティーネット)

(中小企業へのセーフティーネット)