産業構造改革・雇用対策本部

産業構造改革・雇用対策本部 中間とりまとめ

平成13年6月26日
産業構造改革・雇用対策本部決定

 21世紀を迎え、我が国は、バブル崩壊後の経済の停滞状態から決別し真に豊かな国を構築するか、国全体が地盤沈下していくかの重大な岐路に立っている。
 今まさに求められているのは、不良債権の最終処理などの「過去の清算」と、21世紀にふさわしい競争的経済システムの構築という「未来への挑戦」の両面から構造改革を断行することである。その際、不良債権の最終処理などを進めていく過程で懸念される雇用情勢の変化に的確に対応し、痛みを乗り越えて改革を断行していくことが重要である。

 このため、産業構造改革・雇用対策本部において、聖域なき構造改革を断行するという哲学の下、全閣僚の叡知を結集し、

  1. 新市場、新産業の育成による雇用創出
  2. 人材育成・能力開発の推進
  3. 安心して働ける就業環境の整備
  4. 労働市場の構造改革に適した雇用面のセーフティネットの整備
について、具体的な施策の実現に向けて精力的に検討を行い、今回、その基本的な方向性について中間とりまとめを行った。
 政府としては、この中間とりまとめで示した方向性に基づき、成長の源泉となるイノベーションの基盤整備、重点戦略分野での研究開発、ベンチャーの振興を実施するとともに、各分野での規制・制度改革などにより新たな市場と雇用を創出していく。さらに、能力開発の推進、多様な雇用形態の整備、円滑な就業の促進など、雇用システムの改革とセーフティネットの整備を推進していく。

 なお、この中間とりまとめの内容を具体的施策に結実するため、我が国企業における国際競争力の向上及び新規雇用の創出という観点も含め、引き続き項目の洗い出しを徹底して行うとともに、制度改革等、必要となる施策の内容の更なる具体化、スケジュールの明確化に鋭意取り組み、本年9月を目途に、総合的な政策パッケージをまとめ、新市場・雇用創出のための対策を決定する。


1.新市場、新産業の育成による雇用創出

○世界最高水準の大学の実現等によるイノベーション基盤の確立、リスクマネー供給の円滑化等創業・開業の増大に向けた環境整備、インキュベーション促進のための環境整備等を通じたベンチャー振興

○イノベーションの基盤整備

 イノベーション・シーズは圧倒的に大学が保有。基礎研究力を持つ大学と産業・ベンチャー企業群の近接性こそが「国際競争力」に直結。
 大学発の特許取得件数を10年間で15倍、大学発の特許実施件数を5年間で10倍にすることを目標に、世界最高水準の大学作りに向けて教育研究における競争導入の徹底、大学等の組織運営改革、大学発の新産業創出の加速を進めるなどにより「学」から「産」への技術移転戦略の構築を急ぐ。
 また、独立行政法人等公的研究機関においても新産業やイノベーションの創出に努められるよう環境整備を行い、これらを総合的一体的に推進することにより、大学その他の公的研究機関からのいわゆる「大学発ベンチャー」が3年間で1000社に達することが可能となるよう、イノベーションの基盤を整備する。

【大学への競争原理の導入・徹底による世界最高水準の大学の育成】

○厳格な客観評価を基にした重点投資 

○多元的評価の導入と情報公開の徹底

○経済社会ニーズに対応した組織編成の弾力化

○人材流動化の促進 
【大学発ベンチャー・新産業創出の加速化】
○若手人材の育成

○企業ニーズに基づいたリスクマネー供給の円滑化

○TLOの機能強化等によるインキュベーションの充実

○発明に対する研究者のインセンティブ強化 

○産学連携、研究成果の帰属・移転等に関するルール整備

○エクイティを活用した利益還元手法の構築

○ベンチャー休職制度の創設 

○企業からの支援拡大のための環境整備

○産学官の対話による相互理解の促進

○知的クラスターの創出 
【民間の発想を活かした新しい国立大学経営システムへの転換】
○国立大学法人化の早期実現
【独立行政法人等公的研究機関の活用】
○独立行政法人のメリットを最大限に活かした新産業の育成

○戦略基盤・融合技術分野への重点投入(産学官総力戦)

 ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の4つの重点戦略分野について、研究開発への重点投資を図るとともに、具体的な新産業創出に向けた目的指向の明確な研究開発、ロボット等の分野融合的な研究開発を促進する。

○「競争的資金」の拡充 

○4分野への重点投資と専門家による一元的プログラム管理による効率化 

○知的財産権保護政策の強化等

○開業創業倍増プログラム

 我が国風土に「ベンチャー・スピリット」を植え付け、新規開業を5年間で倍増させることを目標として、人材確保・育成、資金調達、経営資源の有効活用などの環境整備を進める。
 また、「地域再生産業集積(産業クラスター)計画」として、産学官の広域的な人的ネットワークを構築し、技術の事業化支援などのための支援策を効果的に投入することにより、地域経済を支え、世界に通用する新事業が次々と展開される産業集積(産業クラスター)を形成する。

○「大学発ベンチャー1000社」体制の構築
(○イノベーションの基盤整備の項参照のこと)

○産業集積の形成

○地域における雇用創出

○ベンチャー企業の事業環境整備

○証券関連税制

○企業再編環境の整備

○SBIR制度の拡充及び中小企業・ベンチャー向け需要拡大

○「創業塾」などの創業支援の展開

○中小企業の経営革新支援の更なる充実

○情報通信、医療福祉、環境、物流、都市・土地、住宅等の分野における新たな市場・雇用創出のための規制・制度改革等

○健康市場の創出
 「健康」は最大の国民ニーズであり、医療・介護分野は、もはや「慈善事業」としてのみ捉えることは適当ではなく、21世紀のリーディング産業として考える必要がある。競争的・効率的な医療・介護システムは、財政の効率化にも資することになる。
 このため、国民への安心と世界最先端の技術・技能を有する医療・介護産業を目指し、膨大な市場ニーズに応え得る競争的な医療・介護システムを構築する。

【医療システム改革と新たな医療市場の創出】

○医療機関の経営形態のあり方の見直し

○病床規制の見直し

○国公立病院経営の合理化

○資機材の内外価格差の検討

○特定療養費制度の積極的な活用の検討

○電子カルテ・レセプト電算システムの普及などIT化の推進

○医療データベースの構築

○慢性期疾患への包括払方式の促進等診療報酬体系の見直し

○保険者自らがレセプトの審査支払いを行うことの検討

○情報開示ルールの確立

○医療評価システムの構築

○個人の体質に応じた革新的医療及び機能性食品の開発・普及のための環境整備

○画期的な新薬の開発を促すための治験制度の整備や薬価制度の見直し

○持続可能な「高齢者医療制度」の検討

【競争的な介護システムの構築と新たな介護サービスの育成】

○ケアハウスへの民間参入及び公設民営方式

○ケアハウスに対する助成措置のあり方を見直し、公的機関と民間事業者との競争条件を整備

○高齢者の多様なニーズに応えうる民間介護サービス事業者の育成

【保育サービスの充実】

○保育所の待機児童ゼロ作戦の推進等

○認可保育所への民間参入の促進

○保育サービスの第三者評価の充実

○地域における子育て支援策の推進

○環境・エネルギーの成長エンジンへの転化

 環境問題への対応は、21世紀の産業競争力の鍵を握る。すべての産業構造・経済システムを「環境共生型」に作り替えることが、大きな市場創造をもたらす。
 循環型社会、温室効果ガスの排出削減が組み込まれた社会の「新国家モデル」を目指し、ゴミゼロやエネルギー効率の更なる向上のための制度改革・技術革新を加速させる。

○廃棄物・リサイクル関連法の運用強化・見直し

○自動車リサイクルの推進

○ゴミゼロ作戦の推進

○ダイオキシン対策の推進及び安全で適正な廃棄物処理施設の整備の推進

○廃棄物埋立跡地等の環境修復事業の展開等

○技術開発等の推進

○事業活動における環境保全のための取組の促進

○新エネルギー・分散型電源の開発・導入の強化

○低公害車等の開発・普及の促進

○グリーン調達の推進

○住宅等の省エネ・新エネ対策の推進

○温室効果ガスの排出削減が組み込まれた社会

○高度・効率的な物流システムの構築

 日本の事業環境の国際競争力を高めていくためには、港湾等の国際物流拠点の機能強化、各種輸送モードのアクセス改善等を通じた高度・効率的な物流システムを築き、革新的な物流サービスを生み出す公正かつ競争的な物流サービス市場を構築していくことが急務であることから、早期に「新総合物流施策大綱」を策定し、政府一体となって施策を推進する。

○都市の快適な生活環境の構築・再生

 都市の土地・空間の利用効率の最大化を図り、快適な生活環境を増進するとともに都市関連産業を活性化させ、国際競争力のある世界都市の形成を推進する。

○都市関連産業の活性化等に資する施設の積極的な整備

○遊休地を含む土地の有効利用

○不動産の証券化

○都市再生、土地の流動化のための規制改革等

○住宅市場整備の推進

○違法駐車、駐輪対策

○ITによる新しい生活・社会システムの創造

 すべての国民がITのメリットを享受した豊かな生活を実現し、ITの活用を通じた新規産業の創出と既存産業の効率化を達成するために、高度情報通信ネットワーク整備と人材育成により高度情報通信ネットワーク社会の実現に不可欠なインフラを形成し、電子政府・電子商取引等の促進により、このインフラを活用した取引や活動を活性化することは喫緊の課題である。
 具体的には、電気通信分野における徹底した規制改革の推進など公正競争条件の整備、公正取引委員会の機能強化、電子商取引の促進・電子公告などITによる会社負担の軽減の促進のための法制度等の整備、申請・届出の電子化等電子政府の推進、国民に対するIT学習機会の提供等教育の情報化及び情報化人材の育成、ITS・GIS等公共分野の情報化、情報家電、ICカード、IPv6等の研究開発・普及促進などITを活用した経済社会システムの実現を急ぐ必要がある。
 このため、「e−Japan重点計画」を着実に実行するとともに、IT革命推進の中間目標を定めた「e−Japan2002プログラム」を作成し、IT施策を集中的かつ戦略的に推進する。

○新たな経済主体(NPO)の育成

 近年、介護福祉、環境・リサイクル、まちづくり等の分野で先駆的な社会事業を実施する新たな組織形態であるNPOの設立が相次いでおり、その団体数(公益法人等を除く)は約9万に及ぶとの調査結果もある。こうしたNPOは、高齢者、女性、障害者の社会参画や雇用を促進し、充実した自己実現の場を提供するものとして我が国経済社会にとって益々重要な役割を果たすことが期待される。
 このため、経済社会システムにおけるNPOの位置づけについて分析をするとともに、NPOが事業主体、雇用主体として発展する上で隘路となっている人材、資金、活動基盤等に係わる課題を明らかにし、その解決のために必要な環境整備を図る。

○NPOの位置付けについて分析

○NPOによる経済社会インフラ整備の促進

○NPO活動の環境整備

○NPO法の見直し

○NPO会計基準に関する考え方の整理   

○NPO法の適切な運用

2.人材育成・能力開発の推進

○個人の主体的な能力開発を推進するシステムの整備
○民間活力を生かした能力開発の抜本拡充等民間機関の活用、社会人教育・能力開発面での大学・大学院等高等教育機関等の積極的活用などによる多様な能力開発機会の確保・創出に向けた環境の整備

○個人の主体的な能力開発を推進するシステムの整備

 労働移動の増加、就業ニーズの多様化等により、様々な変化に対応できる職業能力の開発・向上が求められる中で、企業主導の能力開発だけでは限界が生じている。
 このため、こうした企業の取り組みに加え、個人の主体的な能力開発を推進するシステムを整備する。

○個人の主体的な能力開発を推進するシステムの整備

○民間活力を活かした多様な職業能力開発機会の確保・創出に向けた環境整備

 経済のグローバル化や技術革新、労働者の就業意識の多様化等に的確に対応した人材育成を展開するため、民間活力を活かした能力開発を抜本拡充するなど、多様な職業能力開発機会の確保・創出に向けた環境整備を図る。

○民間活力を活かした多様な職業能力開発

○大学・大学院等を活用した高度な人材の育成

 経済のグローバルな競争が激しくなる中で、我が国の財産である人的資源を有効に活用し、中長期的に安定した発展をしていくためには、成長を支える高度な人材を育成していくことが不可欠である。
 このため、大学・大学院等の積極的な活用により、世界にも通用する高度な人材育成のための環境整備を図る。

○高度な人材の育成

3.安心して働ける就業環境の整備

○女性・高齢者等の就業環境整備
○パート・派遣労働者に対する社会保険の適用の在り方の見直しを含めた就業環境の整備
○有期雇用の見直し等就業形態の多様化に対応した労働法制の在り方の検討

○女性が働き続けられる経済社会基盤の構築(M字カーブ・ボトムアップ)

 男女がともに暮らし、子供を産み育て、安心して働ける社会を実現するため、また、安定的持続的な成長を実現していくためには、女性がその能力を活かしながら働き続けられる環境を整備するとともに、職場及び家庭における男女の共同参画についての意識を醸成することが必要である。
 このため、「保育所の待機児童ゼロ作戦」の推進などにより、子育て支援サービスの充実や、仕事と子育ての両立支援のための雇用環境の整備を図るとともに、女性労働者の能力発揮を促進するため、男女の均等な機会及び待遇の確保のための対策を推進する。

○保育所の待機児童ゼロ作戦の推進等(再掲)

○認可保育所への民間参入の促進(再掲)

○保育サービスの第三者評価の充実(再掲)

○地域における多様な子育て支援策の推進(再掲)

○子供を産み育てるための安全な環境整備

○雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保

○仕事と子育ての両立支援の推進

○高齢者等の就業促進と充実した消費生活の実現

 高齢社会の進む中、働く意欲のある高齢者が、その能力に応じて十分に働ける環境を整備していくことが必要である。経済社会の活力を維持する観点からも、高齢者の就業は重要である。
 また、高齢者が自らの資産を活かしながら、満足のいく消費生活を送ることができるようにしていくことが重要である。
 このため、高齢者等の就業環境や、充実した消費生活の実現へ向けた環境の整備を図る。

○高齢者等の就業環境の整備

○リバースモーゲージ制度普及促進の検討

○就業形態の多様化に対応した環境整備

 就業形態に対するニーズが多様化してきている中、様々な働き方を選択できるような環境や、パート・派遣労働のような雇用形態でも安心して就業できる環境を整備する。
 また、個々の労働者と事業主との間の紛争の迅速かつ適正な解決を図るため、個別労働紛争解決の着実な推進を図る。

○有期雇用等の見直し

○パート・派遣労働者等の就業環境整備

○個別労働関係紛争解決の着実な推進

4.労働市場の構造改革に適した雇用面のセーフティネットの整備

○不良債権処理に関係する業界との連携による労働移動の円滑化
○労働者派遣・職業紹介の規制改革、雇用情報のワンストップ・サービス化の促進

○労働移動の円滑化

 経営環境の激しい変化の下で、事業者側からは、雇用に対する機動性、柔軟性へのニーズが高まる一方、労働者側からも条件の良い職場、働き甲斐のある職場に円滑に移動できる環境が求められている。
 このため、円滑な労働移動と就業促進を行える環境を整備する。

○円滑な移動と就業を支える環境整備

○年金のポータビリティの確保

○セーフティネットの整備

 構造改革の過程では、一時的な失業に対するリスクが高まるおそれもある。
 こうした不安を解消するため、再就職支援の拡充など、適切なセーフティネットを整備する。
 また、不良債権の最終処理に伴う直接・間接の影響が中小企業の事業展開に悪影響を及ぼすことのないよう、万全な対策を講じる。

○再就職支援の拡充

○不良債権処理に対応した就業促進

○中小企業の連鎖倒産防止など金融面での適切な対応