司法制度改革審議会

別紙4

「国民がより利用しやすい司法の実現」及び「国民の期待に応える民事司法の在り方」に関するユーザー委員からの提言内容の整理

平成12年5月30日

基本的考え方

(国民・ユーザーの視点の重要性)

○「国民がより利用しやすい」「国民の期待に応える」「国民の参加」「統治主体意識」「法の血肉化」「法の支配」・・・が、国民の側から実感されるような司法改革の実現を国民は強く期待していることをユーザーの立場から重ねて訴えたい(木)
○法曹三者間の理念面での対立により、一般国民や企業といったユーザーのための司法の見直しがほとんど顧みられないまま、過去何十年にわたり放置。今回の審議会は、司法のユーザーの目線から、司法制度を見つめ直すことに最大の眼目あり(山本)
○司法制度は国民の生活、幸福追求のための「道具」として機能しなければならない。何時でも、だれでも、どこでも、気軽に利用できる司法制度であると同時に、国民が納得できる紛争処理のための国民参加の仕組みの構築が重要(吉岡)

(民事司法改革の視点)

○民事司法についての基本的視点として、「国民に対するサービスとしての民事司法」「民事司法と法の実現」「行政権の行使のチェック」の3点を指摘したい(木)
○我が国社会は、規制緩和の進展による自己責任・自助努力の必要性、あるいは経済活動における国際性やスピード感の高まりなどから、司法の重要性が増大。こうした情勢に対応した司法制度の議論を進めていくことがことに重要。活きた経済活動や市民生活のニーズに応え切れていない、現行司法制度の機能面の改革に大いに力を注ぐべき。現在の我が国の民事裁判に基本的な信頼が失われているわけではないと考えるが、ユーザーにとって欠けている機能、不足している機能は多く、これらの充足を積極的に求めていきたい(山本)
○国民が利用しやすい司法の実現には、裁判所および弁護士へのアクセスの困難性の解消が第一要件であり、さらに利用者である国民の視点、殊に”弱者の視点”に立った司法の実現が不可欠。法曹人口の拡充、弁護士や裁判所の情報不足の解消、裁判手続外の各種紛争解決手段(ADR)の在り方等について検討すべき(吉岡)

(審議の進め方)

○明治以来基本的な見直しのないまま今日に至っている司法制度の根幹について「改革」の名に値する抜本的な見直しが強く求められていることを常に念頭におき論議を進めるべき。現状にこだわり改良型のアプローチにとどまるのでなく、21世紀の日本の司法が目指すべきものは何かを想起しながら、司法制度のグランド・デザインを骨太に描き、そのデザイン実現のために必要な方途・方策を具体化の手順も含めて固めていくというアプローチの仕方。枠組み自体の変更が問われていることを常に銘記すべき(木)
○まず何が改革になるのか、何のために改革するのか、という基本的なコンセプトを論議し、その上で各論に入るべき(木)

A 制度的基盤に関わる項目

I.裁判所へのアクセスの拡充

1 訴訟費用の負担の軽減

(1)提訴手数料
・スライド制の見直しの要否(仮に維持するとした場合の低額化の在り方)

○提訴手数料はかなり高額であり、訴訟提起を抑制する効果を生じており、軽減すべき(木)
○提訴手数料が正当な訴訟を抑制するものになっているとは思われず、スライド制は基本的に維持すべきだが、相続を巡る個人訴訟等、低額化を考慮の余地あり(山本)
○現行のスライド制の手数料体系により、訴訟の価額が大きい場合に提訴手数料が大きくなり、それが国民のアクセス障害となっていることは否めない。手数料体系の見直し、低額化の検討が必要(吉岡)

・訴訟費用額確定手続の簡素化

○現行の訴訟費用確定手続は、わずかな費用の回収のために煩雑な手続が必要で実際にはほとんど利用されていないことから、訴訟費用は類型ごとに定額化し、附随請求たる訴訟費用の確定手続も別個に行うのではなく、主たる請求の審理の中で実施するなど、訴訟費用確定手続を抜本的に簡素化(山本)

(2)弁護士費用の訴訟費用化

・弁護士費用の合理化・透明化

○裁判費用のかなりの部分は弁護士費用であり、弁護士の競争を通じた合理化・透明化が何よりも必要。日弁連と単位弁護士会が定めている報酬基準規定は一つのよりどころではあるが競争制限的に機能する恐れもなしとせず、むしろ個々の弁護士の情報公開による報酬基準の明確化や相談に応じる際の報酬の合理的説明を徹底(山本)
○司法を利用するのに要する費用の中でウェートが高いのは弁護士費用であることから、その合理化・透明化を図り、アクセス障害にならないようにする必要あり。利用者の立場からは、どの程度の弁護士費用がかかるか予測できることが重要であり、また、費用がその事件での弁護士業務に見合った額であることが求められる。弁護士報酬について、利用者にわかりやすく、透明度の高い公正な情報提供が必要。このような見地から、タイムチャージ制の拡大も含めて検討することが必要。さらに、弁護士報酬といえども契約の一種であることを考えれば、予測可能性を高める判例等の裁判情報が開示されることを前提に、「見積もり書」の作成についても検討すべき(吉岡)

・弁護士費用の敗訴者負担制度導入の可否

○弁護士費用の敗訴者負担制度も、訴訟提起を促進するという観点から検討を行うべき(木)
○弁護士費用の敗訴者負担は、正当な理由のある訴訟の提起の促進に繋がる一方、不合理でほとんど根拠のない不当訴訟の抑制作用を有するものであり、制度化すべき。公平の観点から原告・被告ともに敗訴した場合の負担、負担すべき合理的弁護士費用を法定化も検討の要。なお、労働訴訟の原告などケースによっては、例外扱いも必要(山本)
○敗訴者負担制度を導入した場合、弁護士費用の高さから訴訟に踏み切れなかった者が訴訟を利用しやすくなり、同時に濫訴や審理の不当な引き延ばしの予防効果にもつながる。しかし、一方では、敗訴した場合の相手方の弁護士費用の負担を予想して、提訴をためらう可能性もある。司法へのアクセスという観点からは、算定方法や手続をどうするかの問題もあるが、弁護士費用の負担のあり方についても検討する必要あり(吉岡)

(3)訴訟費用保険

○司法の利用者にとっては、訴訟保険が有益であり、保険制度の導入は今後の課題。紛争解決費用を保証する保険もしくは共済制度が開発され、その保険等が裁判や各種ADRと連携することになれば、紛争発生段階で、その解決までのトータルコストを視野に入れた解決の方策を考えることも容易になろう。ただここでも、保険市場を形成していくためには、算出根拠として欠かせない弁護士費用の実情を透明化して、広くマーケットに明らかにしていく必要あり(吉岡)

2 法律扶助の充実

(裁判費用援助の在り方)
○合理的で節度ある利用を前提とする法律扶助制度の拡充(山本)
○依然として諸外国にくらべると比較にならないほどの些少な額であり、法律扶助制度の整備が必要(吉岡)
○(国レベルの法律扶助制度の整備と同時に)地方自治体の条例による訴訟援助が実質的に活用されるように制度見直しを含め、拡充していく必要あり(吉岡)
○訴訟費用保険の導入の検討(吉岡)(再掲)

(法律扶助制度の対象範囲)
○今後の紛争処理システムにおいて育成を図っていくべきADRについて対象化(山本)
○民事だけでなく、刑事についても法律扶助制度の拡充を検討する必要あり(吉岡)

(運営主体・実施体制)
○公的資金を投入する以上、運営主体が中立公平であるとともに、的確な質の弁護士サービスが提供されるような制度面での工夫が求められる。何時でも、どこでも、だれでも公平に利用できるサービスの提供が保証される体制を整えることが肝要。その意味で、サービスの主体である弁護士の態勢、地域偏在の解消などの問題を視野に入れる必要あり(吉岡)

3 裁判利用相談窓口(アクセス・ポイント)の設置

・司法に関する総合的な情報を提供できる仕組みの工夫 /
窓口事務の在り方

○司法の利用に関する総合的情報提供・相談窓口機能は、基本的に弁護士・弁護士会の役割が重要だが、加えて、裁判所自身による充実強化が必要。具体的には、総合的相談窓口を例えば全地裁に設置し、裁判手続のみならずADRも含めた「紛争解決手続のメニュー」を集約し、相談に応じる。また、集約した情報をインターネット、パンフレット等の媒体により提供(山本)
○司法の利用者の立場からすると、裁判手続をはじめとする紛争解決手段に関する情報を収集できるポイントが明らかにされており、かつ、そこでトータルとしての情報が収集できることが便宜である。裁判所は、公平性、中立性を損なわない限度において、裁判に関する総合的な情報を提供するよう努めるとともに、裁判所もADRなどを含む関係機関と連携し、多様な手続に関する情報提供を進めていくことが必要。さらに、国民がトラブルに巻き込まれた時に、もっともアクセスしやすい期間を中心とするネットワークを形成するとの観点から、例えば消費生活センターなど、一般の市民の身近にある相談窓口で、司法に関する総合的な情報提供や法律相談ができる仕組みが必要(吉岡)

4 裁判所の管轄・配置等

(1)人事訴訟の家庭裁判所への移管の可否

(2)簡易裁判所の事物管轄の見直し、少額訴訟の上限額の見直しの要否

○多様な訴訟手続を用意する観点からの改革の一環として簡裁の事物管轄(現行90万円以下)を引き上げ、少額訴訟(現行30万円以下)の対象を拡大(山本)

(3)裁判所の配置の在り方

○裁判所に行くために長時間を要することは適当でなく、裁判所は交通の便の良い場所に設置されるべき(木)

(4)裁判所施設の在り方

(訴訟手続への情報技術の導入)
○現在の情報技術の発展はめざましく、当然訴訟においてもその活用が考えられるべき。新民事訴訟法による準備手続へのTV会議の導入に加え、さらにインターネットによる書類の提出・交換など、他の分野での情報技術の積極的な利用が望まれる(山本)

5 開廷日、時間の柔軟化

・夜間、休日法廷の可否

○昼間しか裁判所が開廷していないことは、多くの勤労国民にとっては、アクセスの大きな障害である。国民に対するサービス機関としての裁判所としては、裁判官及び裁判所スタッフの労働条件に配慮しながら、休日・夜間の執務を行う方策を検討すべき(木)
○国民の司法に対するニーズの多様化により、裁判所の各種サービスについて、夜間や休日の利用に対するニーズがあるものと思われる。裁判所等の労働条件に配慮しつつ検討する必要あり(吉岡)

II.民事裁判の充実・迅速化−一般民事訴訟(少額訴訟を含む)

1 証拠収集手続・証拠方法等に関する手続法等の見直しの要否 /

2 審理期間の制限の当否等

(計画審理など)
○民事裁判の迅速化、紛争処理のために必要なコスト負担と時間の予測可能性を高めるという観点から、審理期間や手続の節目の期間などを予め計画化すること(計画審理)が有益だが、そのためには新民事訴訟法の趣旨を実務に活かしきり、定着化していくことが先決(山本)
○新民事訴訟法の趣旨を踏まえ、両当事者の予測可能性を保ちつつ、(予め類型ごとに標準的な審理期間を示したり、それを参考に予め複数の期日や書面の提出期限を指定したりするなど)裁判官の訴訟指揮権を積極的に活用する工夫が必要(山本)

(裁判手続の多様化)
○多様な訴訟手続を用意することは、簡易な訴訟をスピーディに処理するとともに、複雑・高度な事件に、限られた裁判所のリソースを集中させることにより、全体としての効率性を高める。このため簡易裁判所の事物管轄の引上げ、少額訴訟の対象拡大等を行うとともに、地裁段階においても、英国のように訴額に応じた複数の裁判手続の導入を図る(山本)

(証拠収集手続)
○(医療過誤事件のように、証拠が偏在している当事者間の訴訟について、迅速かつ適正な裁判を制度的に担保するため)早期に争点を整理するとともに証拠収集手続を見直す必要。具体的には、要件や手続をきちんとした上でのディスカバリー制度の導入、強力な証拠保全手続の採用が必要(木)
○米国流のディスカバリーについては日本企業が多くの苦い経験をしており、その導入の可否については極めて慎重な論議が必要。まずは新民事訴訟法では、広範な論議を経て文書提出命令の拡充、当事者照会制度の導入などが図られており、これらに対応した実務の定着を図ることが重要(山本)
○事業者と消費者との間の情報格差を是正するためには、双方が持っている情報を開示することを法的に義務付ける必要あり。ディスカバリーは、公平な土俵で対等に争うために必要な手段の一つではないか。ディスカバリーは濫訴につながる、著しく時間と費用がかさむ、戦略的に利用され、経済力の弱い当事者に不利に働くなどの批判があるが、米国の場合、ディスカバリー・カンファレンスの整備により裁判所がディスカバリーの終了期日を設定するようになっているし、プリトライアルの間に和解や調整が進みトライアルに至る前に解決する例も少なくないようであり、トライアルとなっても裁判期間は非常に短縮されることになる。もとより我が国の民事訴訟制度においても、証拠保全、当事者照会、文書提出命令等証拠開示制度等があるが、国民の利用しやすい民事司法の実現を考えると、トライアル以前に徹底した証拠開示が行われるディスカバリーの導入について検討することは重要(吉岡)

III.専門的知見を要する事件(知的財産権・医療過誤・建築瑕疵紛争・労働関係各事件)への対応

1 専門家を裁判体に取り込むこと(専門参審制、特別裁判所など)の要否・専門家を補助機関に取り込むことの要否 /

2 専門家の意見を早期の段階で取り入れる特別の手続(鑑定レフェレ、独立証拠調べなど)の要否

(知的財産権関係事件への対応強化)
○専門部の増部・増員などの努力を評価するが、そうした専門部の機能をさらに発揮させるため、知的財産権訴訟を専門部の設置された特定の裁判所の専属管轄とする(山本)
○裁判官が専門部などにおいて専門事件に長期専念できるような人事ローテーションの工夫など、裁判官自身の専門性を向上させる施策が必要(山本)

(労働関係事件への対応強化)
○裁判所は労働事件固有の組織や手続(大陸諸国にみられる労使代表の関与、調整手続と判定手続の結合、解雇事件の優先的処理等)を持たないために、紛争処理手続が厳格で、時間と費用がかかる。また、裁判所では、当該紛争を背景事情ぬきに断片的にきりとり、しかも権利義務の存否の観点からのみみるために、労使関係や雇用関係のあり方に配慮を欠く判決がみられたり、労働事件や労使関係の特性に応じた解決(集団的紛争では労使関係の信頼関係の回復、個別労使間紛争では労働者の紛争解決目的に応じた柔軟な解決)が行われにくい。このため、労働者が裁判所による解決を求めることを結果として抑制している側面も否めない。その上、集団的紛争に関する労働委員会と裁判所の接合のしかたが悪く、事実上の5審制となっている。したがって、不当労働行為に関する労働委員会の命令についての取消訴訟は、高等裁判所に提訴するものとし、(「実質5審制」といわれる)審級数の削減を図るべき。加えて、労働委員会における事実認定は、実質的な証拠書として裁判所は採用(事実認定が実質的証拠によって支持されている場合は裁判所は覆さない)すべき(木)

(鑑定制度の改善)
○専門事件にとって不可欠な存在となっている鑑定人に関しては、鑑定人が決まるまでに相当な時間を要しているという問題があることから、組織的に鑑定人の数を十分確保することが必要。例えば、鑑定人の人材を広く全国に求め、名簿を整備し、ネットワークを確立することが必要(山本)
○また、鑑定人が直接の尋問にさらされる負担を軽減するため、例えば、予め尋問事項を出してもらい、裁判官を通じた尋問を行うなどの工夫(山本)
○さらに、インセンティブとして、鑑定人としての実績について名誉称号を考えるなども必要(山本)

(専門参審制、特別裁判所など専門家の取り込み)
○今後、個別労働紛争の大幅な増加に対処するため、(労働委員会が個別労働紛争も取り扱いうることとすること等に加え)ヨーロッパ型の労働裁判所の設置を行い、判定的処理手続の整備をも行うことが不可避。その際、陪・参審制を採用すべき(木)
○調査官制度、司法委員制度、専門調停制度の拡充に加え、専門参審制の導入が考えられる。参審制に関しては、あくまで諮問機関にとどまるのか、評決権を有する形にするのか制度の工夫が必要(山本)
○いずれにせよ、専門家の裁判手続での活用に関しては、ある特定の形態に特化するのではなく、事案の性質に応じた多様な専門家活用システムが用意されることが望ましい(山本)
○医療過誤や知的財産権など専門的知見を要する訴訟の場合、専門家を参加させる参審制度(専門参審)は訴訟の迅速性、的確な判断という利点がある一方、裁判の公開性の阻害要因となり得る、適切な専門家の選定が困難などの批判もある(吉岡)

3 弁護士の専門化等

○専門事件への対応のためには、弁護士自身の専門化が不可欠であり、また個々の弁護士が専門領域に特化するためには、弁護士事務所の法人化や共同化が必要(山本)
○弁護士改革を通じた将来的な弁護士の専門性強化には期待するが、当面の改革としては、隣接法律専門職種を訴訟やADRで活用することが重要。弁護士と専門家がチームとして機能(総合事務所化)するための障害となっている弁護士法を見直し。さらに、隣接法律専門職種に対して情報の開示と研修強化を前提に、当該専門分野に関する訴訟代理権を付与(山本)

IV.民事執行制度の在り方

・担保権実行等についての執行妨害、少額の権利の有効な実現方法の不備等のため判決を得ても強制執行による実現が困難である場合が少なくないとの指摘を踏まえた改善策

(民事執行の改善の意義)
○裁判の結果得た判決は、最終的には、強制執行手続によって実現されざるを得ないところ、法改正により改善されてきたとはいうものの、強制執行が困難な事例はなお少なくないようである。判決の実現が困難であることは、まさに法の支配に対する信頼を揺るがすものであり、なお一層の改善がはかられなければならない(木)
○判決に至る裁判手続は、国民の権利実現のための課程の一部であり、最終的な紛争の解決は、判決が確実に履行されることによりはじめて完結する。その意味で、民事執行制度の充実は、民事司法全体に対する国民の信頼を確保する上で極めて重要な課題(山本)

(民事執行の人的基盤)
○執行官の増員等の強化策が図られ、一定の成果を上げているとのことであるが、その方向でのさらなる充実(山本)

(履行促進、財産隠匿・不法占拠への対応策等)
○財産の隠匿に対しては、独、仏、英の制度を参考に、裁判所が敗訴者に自己の財産状況を開示するよう命じる「財産状況申告命令」や、雇用主や銀行等第三者に対して敗訴者の財産に関連する情報の提供を求める「財産照会手続」を創設すべき(山本)
○現行制度では、敗訴者が判決に従わない場合に一定の金銭の支払いを命じる間接強制は、直接の執行が不可能な場合にのみ認められているが、少額事件のように、直接の執行をすると費用倒れになることもあるなど問題があり、間接強制の適用範囲の拡大が必要(山本)
○執行妨害の道具とされてきた短期賃貸借の廃止なども行うべき(山本)

V.司法の行政に対するチェック機能の在り方について

(審議の進め方)
○行政事件訴訟法の改正は、当事者適格を始めとして、法の目的の明記、対象の拡大、排他的管轄、訴えの手数料、被告適格、管轄裁判所、出訴期間など多岐にわたる要改正点があり、具体的な改正論議は別途の場に検討を付託して成案を得るという進め方も考えるべき(木)
○21世紀の司法のあり方を考える上で、重要な課題の一つであるが、各個別行政法規、行政事件訴訟法の個別改正の問題でもあり、この審議会で問題点の所在を確認した上で、法制審議会等のしかるべき審議の場に委ねることが適当(山本)

(行政実体法規の見直し)
○行政に広範な裁量権を与えている行政実体法規の内容自体が見直され、行政権の裁量の範囲をなるべく限定するように規定しなおすべき(木)

(訴訟要件の緩和等)
○当事者適格の要件はなるべく緩和される必要があり、行政事件訴訟法等の改正が検討されるべき。さらに、法の目的の明記、対象の拡大、排他的管轄、訴えの手数料、被告適格、管轄裁判所、出訴期間など多岐にわたる要改正点がある(木)(再掲)
○当事者適格:行政に対するチェック機能としては行政訴訟があり、取消訴訟が中核となっているが、行政権の行使に関して司法が判断を覆すということであるから、司法が慎重になるためか、行政訴訟での原告勝訴は少ない。利用者である国民の立場からは、司法の行政庁に対するチェック機能は国民主権につながる重要な問題(吉岡)

(裁判官の在り方)
○裁判官には、国民の側に立って行政権の行使をチェックするという意識よりも、「官」を守るという意識が強かったのではないか。いくら制度を改めても、裁判官の意識が変わらなければ、行政へのチェック機能は期待できない。そのような行政権の行使をチェックできる裁判官をどのように確保するかという文脈で、現在のキャリア制(官僚制)裁判官の適否が問題にされざるを得ないという批判も多い(木)

VI.裁判手続外の紛争解決手段の在り方

・ADRの拡充を考えるのか、まず司法の拡充を考えるのか。

○裁判外紛争処理の多元化と充実。ただし、ADRは、裁判の選択肢として存在しており裁判所の機能を全面的に代替するものではなく、本来の司法の拡充を先に議論して、そこで残った問題をADRで補うという議論の仕方をすべき(木)
○紛争の類型に応じた多様な裁判手続が必要であるとともに、裁判外でも多様なADRの充実が必要。ADRは裁判に比べて廉価、迅速であること、特定の専門分野について高度な専門性を備えることができること、利用者のニーズに柔軟かつ機動的に対応できること等様々な利点を有しており、その育成、充実を図るために多面的な施策が必要(山本)
○社会で生起する紛争には大小種類さまざまあるが、事案の性格や当事者の事情に応じた多様な紛争処理の仕組みを用意することも、司法を国民に近いものとする上で大きな意味を有する。国民の法的ニーズに対応するためのメニューの一環として、裁判外の紛争処理機関(ADR)の充実を図ることも必要。ただし、ADRの活動が多様な国民の紛争解決に寄与する反面、国民の裁判を受ける権利を侵害することがあってはならない(吉岡)

・仮にADRの拡充を考える場合、拡充を図るADRの範囲、手続的保障、担い手、裁判手続との連携をどのように考えるのか。

(拡充・改善を図るADRの範囲)
○(裁判所の調停だけでなく)仲裁を含む民間のADRがもっと発展し、仲裁センターの数が増加していくようサポート体制を強化すべき(木)
○労働委員会において(集団的労働紛争に加え)個別労働紛争のあっせん、調停、仲裁手続をも行いうるようにすべき(木)
○多様なADRの充実とその利用を促進する仕組みづくり(山本)
○民間型のADR機関として発足した13のPLセンターの中には問題も指摘されている(吉岡)

(手続・担い手)
○時効中断、執行力など、ADR利用に対するメリット付与(山本)
○信頼性を高めるため、裁判官OB、隣接法律専門職種など幅広い活用を図る(山本)
○ADRの活動が多様な国民の紛争解決に寄与する反面、国民の裁判を受ける権利を侵害することがあってはならない(吉岡)(再掲)

(裁判手続との連携、法律扶助との関係)
○労働委員会における事実認定は、実質的な証拠書として裁判所は採用(事実認定が実質的証拠によって支持されている場合は裁判所は覆さない)すべき(木)(再掲)
○不当労働行為に関する労働委員会の命令についての取消訴訟は、高等裁判所に提訴するものとし、(「実質5審制」といわれる)審級数の削減を図るべき(木)(再掲)
○訴訟からADRへの移行など訴訟との連携を図り、紛争に応じた柔軟な対応(山本)
○法律扶助の対象について、今後の紛争処理システムにおいて育成を図っていくべきADRについて対象に入れる(山本)(再掲)

(情報提供・相談窓口)
○司法の利用に関する裁判所の総合的相談窓口において「紛争解決手続のメニュー」を情報提供(そもそも一般国民は、そうしたADR機関の存在すら知らない人が大部分であることを想起すべき)(山本)(再掲)
○司法の利用者の立場からすると、裁判手続をはじめとする紛争解決手段に関する情報を収集できるポイントが明らかにされており、かつ、そこでトータルとしての情報が収集できることが便宜である。裁判所は、公平性、中立性を損なわない限度において、裁判に関する総合的な情報を提供するよう努めるとともに、裁判所もADRなどを含む関係機関と連携し、多様な手続に関する情報提供を進めていくことが必要。さらに、国民がトラブルに巻き込まれた時に、もっともアクセスしやすい期間を中心とするネットワークを形成するとの観点から、例えば消費生活センターなど、一般の市民の身近にある相談窓口で、司法に関する総合的な情報提供や法律相談ができる仕組みが必要(吉岡)(再掲)
○法律相談の充実について、隣接法律職種との連携、消費生活センター等を含め各種ADRの活用など弁護士法の見直しを含め検討する必要あり(吉岡)

VII.司法に関する情報公開の在り方

・裁判例等に関する情報提供の充実

○裁判所が、裁判例や係属中の裁判に関する情報を積極的に提供することは、紛争防止や解決にとって重要。その際、出版物だけでなくインターネットも活用も有効な手段。すでに、最高裁のホームページを通じて、知的財産権関係事件の判決が「速報」として提供され、また、先例価値のある最高裁判決が公開されており、こうした判決情報の公開がさらに拡大されていくことが望ましい。裁判所が広く開示を行えば、検索システムもビジネスとして出現すると期待できる(山本)
○判決のみならず、現在係属中の裁判の情報についても、マスコミ報道やキーワードに基づく問い合わせ(例えば、次回期日)に、裁判所の窓口で対応できるようにすべき(山本)
○最高裁の判例情報および知的財産権訴訟のみならず、下級裁判所の判例情報の公開についても、当事者へのプライバシーへの配慮や、法制度面の手当ての要否、技術面での課題等を視野に入れつつ、検討する必要あり(吉岡)

・一般情報提供の充実

○司法の利用に関する総合的情報提供・相談窓口機能は、基本的に弁護士・弁護士会の役割が重要だが、加えて、裁判所自身による充実強化が必要。具体的には、総合的相談窓口を例えば全地裁に設置し、裁判手続のみならずADRも含めた「紛争解決手続のメニュー」を集約し、相談に応じる。また、集約した情報をインターネット、パンフレット等の媒体により提供(山本)(再掲)
○司法に関する情報の公開・提供を推進し、ADRも含む司法に関する情報に国民が容易にアクセスできるような仕組みの在り方について検討する必要。(吉岡)
○司法の利用者の立場からすると、裁判手続をはじめとする紛争解決手段に関する情報を収集できるポイントが明らかにされており、かつ、そこでトータルとしての情報が収集できることが便宜である。裁判所は、公平性、中立性を損なわない限度において、裁判に関する総合的な情報を提供するよう努めるとともに、裁判所もADRなどを含む関係機関と連携し、多様な手続に関する情報提供を進めていくことが必要。さらに、国民がトラブルに巻き込まれた時に、もっともアクセスしやすい期間を中心とするネットワークを形成するとの観点から、例えば消費生活センターなど、一般の市民の身近にある相談窓口で、司法に関する総合的な情報提供や法律相談ができる仕組みが必要(吉岡)(再掲)

VIII.その他

(懲罰的賠償、クラスアクションなど)
○懲罰的損害賠償、クラスアクション制度の導入は、国民による訴訟提起を促進する文脈において検討されるべき(木)
○米国流のクラスアクション、懲罰的賠償などについては日本企業が多くの苦い経験を有しており、その導入の可否については極めて慎重な論議が必要。まずは新民事訴訟法による選定当事者制度の拡充などに対応した実務の定着を図ることが重要(山本)
○消費者被害の典型的なものには、少額多数の被害が少なからず発生している。ここの被害額が少額である場合、泣き寝入りをする消費者が多く、結果として悪徳事業者に不当な利益をもたらす。また、被害の拡大を予防するためには早期発見とともに早期に事業活動を停止させるなどの措置が必要。消費者被害の予防および権利回復を保障するためには、消費者団体等への差止め請求・団体訴権の付与をはじめ、クラスアクションについても検討が必要(吉岡)
○悪質な不法行為による被害の場合、現行の損害賠償額は余りにも低額である場合が多い。国民の利用しやすい司法を考える時、懲罰賠償は必須である。(同制度に反対する意見として、米国で陪審が「法外な」懲罰的賠償を認定したとされる訴訟が引き合いに出されることが多いが)懲罰的賠償が法外な価額かどうかは、被害者である弱者の視点を持つか、どうかの問題ではないだろうか(吉岡)

(国民の司法参加)
○医療過誤や知的財産権など専門的知見を要する訴訟の場合、専門家を参加させる参審制度(専門参審)は訴訟の迅速性、的確な判断という利点がある一方、裁判の公開性の阻害要因となり得る、適切な専門家の選定が困難などの批判もある(吉岡)(再掲)
○陪審制度についても裁判の長期化、冷静な判断ができないのではないか、日本人の国民性になじまないなど多くの批判や不安要因が語られているが、アメリカの事情を視察した限りにおいては、このような意見は杞憂にすぎないものと思われる。陪審制度の復活は、国民の司法参加意識を涵養し、より良い法治国家の形成に役立つものと思われる。積極的に検討する必要あり(吉岡)

B 人的基盤に関わる項目
(上記の司法機能充実の観点からその充実策を検討)

I.裁判所の執務態勢の充実(人的基盤)

(裁判所の人的体制)
○現在でさえ多くの事件を処理せざるを得ず、負担が多すぎると思われる裁判官の大幅増員は必須。現在の裁判が充実していないと感じられるのは、裁判官の中に忙しさのために、当事者の気持ちに十分配慮することなく、言わば一丁挙り的に処理件数を増やすことだけに関心を持つ裁判官が少なくないことと、転勤のために長期に渡る事件の場合には途中で裁判官が何回も交代することに起因している部分が少なくないといった批判もある。裁判官の増員とともに裁判官を支える裁判所スタッフの大幅増員も合わせて行われなければならない。裁判官が一件一件の事件に必要にして十分な時間を割くことができてこそ、国民は裁判に納得し、裁判を信頼し、また迅速な裁判をも実現することができる(木)
○民事裁判の充実・迅速化にあたっては、すでにこの審議会で意見が一致している裁判所の人的物的体制の拡充が不可欠(山本)
○法曹人口は、弁護士のみならず裁判官、検察官を含めて少ないことは当審議会でも一致した見解(吉岡)

(裁判官の資質など)
○国民の期待に応え、国民が司法を利用することを促進するためには、裁判が充実し、判決が国民の立場からみて納得のいくものであることが不可欠。社会の実情に関心を持ち、国民の苦労を理解する裁判官を裁判所に得ることが前提となる。具体的には、司法以外に救済を求めることのできない市民・労働者、国際競争の中で生き残りをかける大企業、さらに厳しい経営環境にある中小企業のそれぞれの状況を理解して、判決が下されているのかという観点からの裁判所の現状に対する真摯な反省が、新しい民事司法を構築する議論の出発点。要は、経験豊かなハートのある裁判官をどのように確保するかという見地から、法曹一元、裁判官の独立の問題が、民事司法の改善についても課題とならざるを得ない(木)
○裁判官には、国民の側に立って行政権の行使をチェックするという意識よりも、「官」を守るという意識が強かったのではないか。いくら制度を改めても、裁判官の意識が変わらなければ、行政へのチェック機能は期待できない。そのような行政権の行使をチェックできる裁判官をどのように確保するかという文脈で、現在のキャリア制(官僚制)裁判官の適否が問題にされざるを得ないという批判も多い(木)(再掲)
○裁判官が専門部などにおいて専門事件に長期専念できるような人事ローテーションの工夫など、裁判官自身の専門性を向上させる施策が必要(山本)(再掲)

II.弁護士の数、業務態勢の充実(人的基盤)

(弁護士の数)
○裁判所へのアクセスの拡充の第一歩として、また、民事裁判の充実・迅速化にあたって、弁護士改革が重要。弁護士の大幅な増員という人的基盤の拡充をベースとして、弁護士情報の開示、弁護士事務所形態の見直し、企業法務、隣接法律専門職種への法律事務の開放等々が必要。経済界が求める弁護士改革の要は、大幅増員や自由化のもたらす「競争」を通じた弁護士の法的サービスの向上。弁護士は、「国民の社会生活上の医師」であると同時に、経済活動の国際性、専門性の高まりの中で、ますますニーズの高まっている法的ビジネスの担い手でもあることに留意すべき(山本)
○法曹人口は、弁護士のみならず裁判官、検察官を含めて少ないことは当審議会でも一致した見解であるが、国民の期待に応え得る法曹人口を思量すると、まず弁護士人口の大幅増加を検討することが必要であり、中坊委員が提言しているフランス並み(5〜6万人)を目指すのが妥当ではないか(吉岡)

(公益性)
○プロボノ、ボランティア活動など社会還元への積極的な取組み(吉岡)

(弁護士と隣接法律専門職種等との関係)
○弁護士による法律事務独占は、弁護士によるサービスが全国どこでも容易に受けられることを前提としているが、現状はこれと大きく異なる。また、司法制度を担う法律専門家についても弁護士に限定すべき必然性はない。司法制度において、法律事務のうち、特定の専門的分野を弁護士以外の法律専門職に開放することは、法律事務を行うために必要な法的知識や実務に関する要件をクリアーすることを前提にすれば合理性がある。ただし、隣接職種といわれる法律専門職については、法律家としての独立性の強化を図る必要がある。すでに、専門職団体からは、制度改革の提言も出されており、隣接職種への専門分野に関する法律事務の開放とともに、それらの制度の改革を同時に行う必要(木)
○弁護士改革を通じた将来的な弁護士の専門性強化には期待するが、当面の改革としては、隣接法律専門職種を訴訟やADRで活用することが重要。弁護士と専門家がチームとして機能(総合事務所化)するための障害となっている弁護士法を見直し。さらに、隣接法律専門職種に対して情報の開示と研修強化を前提に、当該専門分野に関する訴訟代理権を付与(山本)
○企業法務、隣接法律専門職種への法律事務の開放(山本)(再掲)
○法律相談の充実について、隣接法律職種との連携、消費生活センター等を含め各種ADRの活用など弁護士法の見直しを含め検討する必要あり(吉岡)(再掲)

(弁護士へのアクセス)
○弁護士費用の合理化・透明化(山本、吉岡)(再掲)
○弁護士費用の敗訴者負担制度(木、山本、吉岡)(再掲)
○弁護士情報の開示(山本)(再掲)
○司法の利用に関する総合的情報提供・相談窓口機能は、基本的に弁護士・弁護士会の役割が重要(山本)(再掲)
○法律相談の充実(吉岡)(再掲)
○弁護士過疎地対策として、(法人化、支店設置に加え)公設弁護人事務所の設置を検討(吉岡)
○弁護士報酬について、利用者にわかりやすく、透明度の高い公正な情報提供。弁護士費用の実情を透明化して、広くマーケットに明らかにしていく必要あり(吉岡)(再掲)
○専門分野に関する情報については、弁護士会の広告規制緩和をさらに進め、情報開示を拡充(吉岡)

(職務の質、執務態勢)
○専門事件への対応のためには、弁護士自身の専門化が不可欠であり、また個々の弁護士が専門領域に特化するためには、弁護士事務所の法人化や共同化が必要(山本)(再掲)
○弁護士と専門家がチームとして機能(総合事務所化)するための障害となっている弁護士法を見直し(山本)(再掲)
○弁護士事務所の法人化を早急に進めると同時に、規模の拡大により、弁護士過疎地に支店を設置(吉岡)

III. その他

(一般への司法教育)
○国民が民事司法をより利用するようになるためには、国民が統治の主体として司法にどのように係わるべきかについての教育が不可欠。そのため、小学校段階から、司法教育の機会を設ける必要あり(木)
○中等教育段階までの法学教育(特に消費者教育)の充実(吉岡)