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 トップ会議等一覧IT戦略本部e-Japan重点計画-2004 印刷用(PDF形式)


〔1−2〕先導的7分野

 「先導的7分野」は、IT利活用の推進の観点から、「e-Japan戦略U」で取り上げた国民に身近で重要な7つの分野である。これら7分野において、先導的にIT利活用を行うことによって、社会的に大きな効果が期待できることから、本重点計画においても引き続き遂行すべき分野として取り組んでいく。

  1. 医療

    (1) 基本的考え方

     我が国の医療は、誰でも最適な医療を受けられる医療提供体制の整備と国民皆保険制度の下で発展し、世界最高水準の健康水準を達成するに至っている。しかしながら、患者のニーズの多様化、医療の高度化・専門化等が進む中で、患者本位で、より質が高く効率的な医療を提供するための環境整備が課題となっている。
     こうした課題を解決する方策として、ITは有効なものである。
     患者や医療機関に関する情報をITによって共有化を図ることにより、患者が複数の医療機関において継続性のある治療が受けられ、専門家の意見を踏まえながら適切な医療機関を選択できるなど、患者基点の医療体制を整備する必要がある。
     また、医療機関における業務のIT化を推進することにより、各種の重複(検査、投薬、事務作業等)の削除等、医療機関の経営効率と医療サービスの質の向上を図る必要がある。特に、レセプトの電子化により、診療報酬請求業務の効率化・合理化を推進する必要がある。
     さらに、ITの活用により、医学情報の整理・収集・公表や遠隔サービスを推進する必要がある。

    (2) 具体的施策

    1) ITを活用した医療情報の連携活用
    成果目標:電子カルテのネットワーク転送、外部保存等により、患者本人の意思とセキュリティに十分配慮しつつ、必要に応じて患者の医療情報を医療・保健機関間で連携活用できる仕組みを2005年度までに確立し、患者が複数の医療機関において継続性のある治療が受けられるようにする。

    ア) 保健医療分野における認証基盤の開発・整備(厚生労働省、経済産業省)
     患者本人の意思とセキュリティに十分配慮しつつ、必要に応じて患者医療情報を医療・保健機関間で連携できるようにするため、2005年までに、保健医療分野における認証基盤を開発・整備する。

    イ) 電子カルテの医療機関外での保存の容認(厚生労働省)
     医療機関等のネットワーク化を推進するとともに、電子カルテの保存や情報機器の維持管理等に関する医療機関の負担を軽減するため、個人情報保護と管理の遵守義務等を含む要件設定を前提とし、2004年度中に電子カルテの医療機関外での保存を容認する。

    ウ) 電子カルテの連携活用に対応したセキュリティ等に関するガイドラインの作成(厚生労働省)
     電子カルテの連携活用に対応し、セキュリティ等の確保を図るため、2005年度までのできるだけ早期に具体的な各種ガイドラインを作成する。

    エ) 電子カルテの連携活用を行う医療機関への支援(厚生労働省)
     電子カルテの連携活用を行う医療機関に対して、財政中立の下で国による支援方策を検討し、2005年度中に結論を得る。

    2)ITを活用した医療に関する情報の提供
    成果目標:医療機関についての情報(診療実績、サービス内容等)を第三者機関が内容の信頼性を審査のうえ国民に開示する取り組みの推進(2004年度末までに2000医療機関の機能評価の実施)等により、患者が適切に医療機関を選択できるようにする。

    ア) 医療機関の機能評価等(厚生労働省)
     2004年度末までに2000医療機関の機能評価を実施するため、機能評価を行う第三者機関への支援を引き続き行う。また、治癒率、術後生存率、再入院率等について、その定義・検証方法などの研究・検討を進め、2004年度中に結論を得る。

    イ) 医療情報のデータベース化、インターネットによる情報提供(厚生労働省)
     医療に関する情報を広く国民に提供するため、診療ガイドラインと関連する医学文献等の各種の医療に関する情報をデータベース化し、インターネット等を利用した情報提供を2004年度以降も引き続き推進する。

    ウ) 医療機関の情報公開の促進(厚生労働省)
     ホームページを持っている病院の一覧の公開など医療機関の情報公開を促進するための具体的方策について、ホームページの運用のあり方なども含めたインターネットによる医療情報の信頼性の確保方策と併せて検討を行い、2005年度中に結論を得て、速やかに所要の措置を講ずる。

    3)電子カルテの普及促進
    成果目標:電子カルテの普及促進(2004年度までに全国の二次医療圏の中核的な病院、2006年度までに400床以上の病院及び全診療所のうち6割以上)や診療情報の電子化の促進等により、医療の質の向上と医療機関の経営効率化を実現する。

    ア) 電子カルテの用語・コードの標準化及び相互運用性の確保(厚生労働省、経済産業省)
     電子カルテの普及促進を図るため、引き続き用語・コードの標準化を推進する。また、電子カルテが包含する様々な医療情報システムや業務に関する標準化のあり方を検討するとともに、2006年度までに異なるベンダーにより構築されたシステムであっても相互運用が可能となる環境を構築する。

    イ) 診療情報の電子化など医療分野でのIT利用促進(厚生労働省)
     医療の質の向上と効率的な医療提供体制の構築に向けて、処方せん、診断書、出生証明書をはじめとする様々な診療情報の電子化など医療分野のIT利用促進を図るための方策を包括的に検討し、2004年9月までに結論を得る。

    ウ) 医療情報化に係る人材育成(経済産業省)
     医療の情報化に精通した人材を育成し、電子カルテやレセプト電算化を普及させるため、2006年度までに、医療情報化に係る人材育成プログラムを作成し、実際の大学等における研修カリキュラムでの利用を図る。

    4)レセプトの電算化及びオンライン請求
    成果目標:レセプトの電算化及びオンライン請求の普及(電算化:2004年度までに全病院レセプトの5割以上、2006年度までに全病院のレセプトの7割以上 オンライン請求:2004年度から開始し、2010年までに希望する医療機関等に対して100%対応可能)を促進し、診療報酬請求業務の効率化及び合理化を図る。

    ア) 医療機関への普及促進(厚生労働省)
     医療機関におけるレセプト電算化及びオンライン請求を普及促進するため、医療機関側のコストを軽減するための具体的な方策を検討し、2004年度中に結論を得る。

    イ) 審査支払機関及び保険者における電子レセプトへの対応整備(厚生労働省)

    a)審査支払業務を電子レセプトを前提としたものにするため、審査支払機関の業務改革を含めたシステム最適化計画を2005年度中に策定する。また、紙レセプトに対応するための方策を検討し、2004年度中に結論を得る。
    b)審査支払機関から保険者へのレセプトの提出について、保険者の求めに応じ電子的提出が可能となるよう検討を行い、2004年度中に結論を得て、速やかに所要の措置を講じる。
    c)保険者が電子レセプトに対応可能となるよう必要な方策について検討し、2004年度中に結論を得る。

    ウ) オンライン請求開始に向けた体制整備(厚生労働省)
     2004年度のオンライン請求の開始に向けて、受け入れ体制の整備、セキュリティ等のガイドラインの作成、認証基盤の確立を行うとともに、実際にオンライン請求をする医療機関に対して、実運用に向けた体制や要件、スケジュール等の情報提供を早急に行う。

    5)遠隔医療の普及促進
    成果目標:2005年度までに全都道府県において遠隔医療サービスを受けられるようにする。

    ア) 遠隔医療のシステム整備支援(厚生労働省、経済産業省)
     遠隔診断・治療システムの高度化・整備に対して支援を行うことにより、2005年度までに全都道府県での導入を目指す。


  2. (1) 基本的考え方

     BSEの発生や偽装表示の対応のため、牛の生産段階から牛肉の流通段階までの個体情報について記録・伝達を義務付けた「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」が2003年6月に制定され、2004年12月からは国内飼養牛の精肉(「挽肉、小間切を除く。」以下同じ。)への個体識別番号の表示が義務付けられることとなっている。また、牛肉以外の食品についても、民間の自主的な取組を主としたトレーサビリティシステム 7が導入されつつある。今後、これらの取組を一層進め、消費者が生産流通履歴をインターネット等で確認できるようにしていく必要がある。
     また、良質な食品が消費者に合理的な価格で安定的に提供されるようにするためには、流通・生産を通じた高コスト構造の是正を図る必要がある。このため、食品の取引の電子化により、食品の流通に係る物流、在庫等の流通コストを削減するとともに、経営にITを活用する農林漁業経営を大幅に増加させる必要がある。

    (2) 具体的施策

    1) 牛肉の履歴情報に係るトレーサビリティシステムの普及
    成果目標:2004年までに、100%の国内飼養牛について、個体識別番号により、BSE発生等の場合に移動履歴を追跡できる体制を整備し、2005年までに、100%の国内飼養牛の精肉について、消費者が生産履歴情報をインターネット等で確認できるようにする。

    ア) 牛肉の履歴情報に係るトレーサビリティシステムの普及(農林水産省)
     「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」に基づき、2004年12月1日から実施される国内飼養牛の精肉への個体識別番号の表示の義務化が円滑に実施されるよう、義務付け制度について各方面に周知徹底するともに、牛個体識別台帳(データベース)の作成・管理等を行う。

    2) 牛肉以外の食品のトレーサビリティシステムの普及
    成果目標:牛肉以外の食品について、その特性に応じたモデル的なトレーサビリティシステムを2005年度までに開発し、生産者、事業者の自主的な取組を支援することにより、消費者が生産流通履歴情報をインターネット等で確認できるようにする。

    ア) 牛肉以外の食品のトレーサビリティシステムの普及(農林水産省)
     青果物、米などの牛肉以外の食品について、食品の特性に応じたモデル的なトレーサビリティシステムを開発するため、2005年度までに、地域や流通・加工段階を横断した相互運用性あるトレーサビリティシステムの開発及び運用体制の整備に向けた実証試験の実施を支援する。また、生産者、流通業者等の自主的な導入の取り組みを基本としつつ、トレーサビリティシステムの普及を促進するため、必要なデータベースの構築、情報機器の整備等を支援する。
     生産履歴情報の信頼性確保に関しては、生産情報公表JAS規格 8の対象食品を、2004年度以降、消費者のニーズ等を考慮しつつ増やしていくことを検討する。また、第三者によるトレーサビリティシステムの監査体制を確立できるよう、2005年度まで情報提供等を通じ支援する。

    イ) 輸入食品への対応(農林水産省)
     国内におけるトレーサビリティシステムの普及活動と併せ、日本発の安全な食品流通の仕組みが海外においても導入され輸入食品へも普及するよう、2005年度までにガイドラインの作成等により情報提供を行う。

    3) 食品の取引の電子化
    成果目標:2005年度までに、食品流通業者のおおむね半数程度が電子的な取引を実現し、電子的取引を開始したおおむねすべての事業者において、物流、在庫等の流通コストを削減できるようにする。

    ア) 生鮮食品流通におけるEDIシステムの普及(農林水産省)
     研修等の実施により、生鮮食品流通の取引・物流効率化の基盤となる取引EDIの普及定着を図り、2005年度までに、生鮮食品流通に携わる事業者の少なくとも過半数が電子的な取引を実施できるようにする。

    イ) 生鮮食品流通における無線ICタグを活用した物流管理システムの開発(農林水産省及び関係府省)
     卸売市場等の物流業務における無線ICタグの実証実験を2005年度までに実施し、2006年までに生鮮食品流通の検品、分荷等の物流業務における無線ICタグを活用した新しい物流管理手法を構築する。

    4) 農林漁業経営のIT化
    成果目標:2004年度までに、ITを活用する農林漁業経営者をおおむね4割とすることにより、消費者嗜好、市況情報などを収集・活用した効率的かつ安定的な経営が行えるようにする。

    ア) 農林漁業経営に役立つデジタルコンテンツやIT利活用システムの整備(農林水産省)
     2004年度までに、ほぼすべての地域農業改良普及センターにおけるホームページの作成及びレガシー情報のデジタル化等、情報受発信機能を充実強化するとともに、地域情報化の拠点となる高度情報化拠点施設の整備の推進及び温室等の遠隔環境制御・監視システム等のIT利活用システム整備に対する支援を実施する。

    イ) 農業者等のIT活用能力の向上(農林水産省)
     2004年度までに、約5.5万人を対象とした農業者等に対するIT講習等を実施するとともに、普及職員や農業関係者等に対する農業IT指導者育成のためのIT講習等を実施し、指導人材を約1万人養成する。


  3. 生活

    (1)基本的考え方

     我が国の65歳以上人口は、2004年2月現在2452万人で、総人口の19.2%を占め、主要国の中でも高い水準となっている。今後も65歳以上人口は増加傾向が続き、2015年には3277万人、総人口の4人に1人が65歳以上になると見込まれている。また、65歳以上の単身世帯は2002年時点で340万世帯に達しており、こうした社会の変化に対応し、世界に先駆けて高齢者等が安心して生活できる環境を実現していくことが求められる。例えば在宅健康管理サービスなど、ITは、より高度な安全や快適が確保された生活環境作りの原動力として大きな力を発揮するものであり、今後、ITを用いたサービスの選択肢を拡大していく必要がある。そのため、家庭でのサービス提供に必要な基盤の整備費用低減やシステム間の相互接続性等の確保を図る必要がある。

    (2)具体的施策

    1)温かく見守られている生活の実現と生活の利便性向上(1)
    成果目標:2005年度までに、緊急車両が現場に到着するまでの時間を短縮するとともに、家庭において日常の健康管理などに利用するための必要なシステムを実現する。

    ア)緊急時の即応体制と安全便利を実現する環境の整備

    a)緊急事案への対応を迅速化するためのシステムの推進(警察庁)
     緊急車両が現場に到着するまでの時間の短縮を図るため、緊急車両に優先信号制御を行う現場急行支援システム(FAST)を2005年度までに主要都市へ整備することを目指す。
    b)健康サービス産業の活性化(経済産業省)
     ITの活用による健康・医療・福祉情報の提供や健康サービス産業の活性化に向け、2004年度以降先進的な健康サービス提供のための事業構築に取り組む地域に対して事業の立ち上げを支援し、その成果の普及を図る。
    c)住宅等への情報通信システムの導入の推進(国土交通省)
     高齢者対策、防犯対策、省エネルギー等、住宅における高度な安全性・利便性を実現するため、先導的な情報システム導入実験を2004年度中に実施し、情報システム導入の課題の整理及び普及策の検討を行う。
    d)ケーブルテレビの利用高度化(総務省)
     2005年度までに、全国的にケーブルテレビネットワークのブロードバンド化や、その利活用についての諸課題を検討する。また、ケーブルテレビによる緊急時自動通報システム、在宅健康管理システム及び遠隔教育等の公共的アプリケーションの提供を実現するため、行政、業界団体の間での情報の共有化を図り、技術の標準化及びユーザーが利用しやすいアプリケーションの導入を支援する。

    2)温かく見守られている生活の実現と生活の利便性向上(2)
    成果目標:2005年度までに、家庭を便利にし、安全などの付加価値をもつ情報家電を少しでも安価に利用できるようにするために必要な仕様の共通化を行う。

    ア)情報家電の普及促進

    a)情報家電に係る主要技術の共有化・標準化(総務省・経済産業省)
     多様な技術仕様の乱立を避けるため、情報家電の主要な技術項目について、2005年度までに重要度に応じて段階的に共有化・標準化を実施する。
    b)情報家電の普及のための実証実験(経済産業省)
     2005年までに、ユーザーインターフェイス等国民のニーズに応えるべき分野において情報家電の有効性を実証し、その普及を促進する。

    イ)電気、ガス、水道等のメーターのコストダウン化に係る規制緩和(経済産業省)
     消費者保護と検針情報の公正な利用を考慮の上、コスト負担の在り方の検討を踏まえつつ、メーターのコストダウン化に係る規制の見直しを2004年までに行う。また、2004年度中に、電気計器本体のコストアップ要因について調査・検討を行い、同年度中に結論を得た上で、2005年度中に措置する。


  4. 中小企業金融

    (1) 基本的考え方

     中小企業の経営状況については、持ち直しの動きが見られるものの、大企業よりも厳しく、長期的に低迷している。中小企業は全企業数のうち、9割以上を占めるなど、日本経済の基盤をなすものであり、中小企業の経営状況が改善しなければ、日本経済の活性化は困難である。
     また、中小企業、特にベンチャー企業の中には、新しい分野へ進出するものや、従来とは異なる新しい手法によりビジネスに取り組むものも多い。これら中小企業の経営を改善することができれば、日本発の新しい先進的なビジネスが創出され、日本経済の活性化に大きな役割を果たすと考えられる。
     しかし、中小企業が事業を遂行する上で、必要な資金の調達・回収をすることが困難であるとの声も多い。このため、ITを活用することにより、これらの問題点を改善する方策を講じる必要がある。

    (2) 具体的施策

    1) 中小企業の資金調達環境の整備
    成果目標:2005年までに、中小企業と金融機関等がITを利用して債権情報や信用情報等を入手し、債権の売買等により必要な資金を得ることのできる電子債権市場を活性化するために必要な制度整備等を進め、中小企業が電子的な信用供与を活用できるようにする。

    ア) 電子的手段による債権譲渡の推進(法務省、経済産業省及び関係府省)
     電子的な手段による債権譲渡を推進するための施策について、新たな法律の制定も視野に入れて検討し、2004年中に結論を得る。検討の結果を受けて、2005年までに制度の骨格を明らかにする。

    イ) 電子債権市場活性化のためのモデル事業(経済産業省)
     2004年度に、モデル事業等を通じて、電子上での債権の売買や信用リスク評価・随時モニタリングなど電子債権市場活性化のために必要なシステム環境整備等について検討を行う。

    2) 信用保証の利用に係る事務手続のオンライン化
    成果目標:2005年までに、中小企業の信用保証の利用に係る事務手続をオンラインで行えるようにする。

    ア) 信用保証の利用に係る事務手続のオンライン化(経済産業省)
     2005年までに、中小企業の信用保証の利用に係る事務手続をオンラインで行えるようにするため、2004年度中に、オンライン化に関する標準的システムの仕様を開発するとともに、オンラインの導入に伴う法的問題等の整理検討を行う。

    3) 売掛金回収リスク軽減のための環境整備
    成果目標:中小企業が売掛金回収のリスクを軽減できるようにするため、2005年までに、エスクロー 9サービス提供事業者の拡大を図るとともに、エスクローサービス提供事業者が搬送状況トレースを活用できる環境が整備されるようにする。

    ア) エスクローサービス提供事業者の拡大(金融庁、法務省、経済産業省及び関係府省)
     2004年度にエスクローサービスなどの提供事業者の実態把握及び中小企業のニーズを把握するとともに、出資法第2条を含め、エスクローサービスなどの拡大の支障となっているとの意見がある制度等について、関係府省間で連携を図りつつ検討を行い、その拡大のための方向性を示す。

    イ) 搬送状況トレースの活用(経済産業省)
     エスクローサービスにおいて、売買の対象物の搬送状況を迅速かつ正確に把握することを可能にすることにより、エスクローサービスをより便利なサービスとするため、2004年度に、エスクローサービス提供事業者が搬送状況トレースを活用できるよう、その基盤となる商品トレーサビリティに必要な環境整備を行う。


  5. (1)基本的考え方

     我が国の国際競争力を維持・強化していくためには、高度で専門的な知識や技術について継続的に学習できる環境を整備する必要がある。一方、生きがいのための生涯学習のニーズも高まっている。このため、従来の講義形式のみならず、多様な教育方法を充実させていく必要があるが、特にITを活用した遠隔教育は、学習者にとって時間や場所の制約を克服できるものであり、有効な教育方法である。すでに、大学等においてインターネット授業を実施している事例もあるが、今後もITを活用した遠隔教育を一層推進していく必要がある。
     また、コンテンツに関しては、日本のゲーム、アニメ、漫画等は海外でも高い競争力を誇っている。この他に、我が国には伝統文化や地域文化等の優れた文化が存在している。しかしながら、権利処理作業の負担、不正コピーの危険性等の要因から、こうしたコンテンツの海外へのオンライン配信のみならず、国内でのオンラインコンテンツ市場についても十分には発展していない状況にある。我が国のコンテンツ産業の競争力の向上を図るためには、これらの課題を解決するとともに、我が国の知的財産を利用したコンテンツの創造を活性化させる必要がある。さらに、海外における日本文化の理解向上を図るために、様々な分野の情報をデジタルアーカイブ化し、海外に発信する必要がある。

    (2)具体的施策

    1) ITを活用した遠隔教育の推進
    成果目標:国際的な労働市場における我が国の人材の競争力を向上するため、専門職、社会人等が遠隔教育により継続的に知識の向上ができるようにする。この一環として、2005年度までに遠隔教育を実施する大学学部・研究科を2001年度の約3倍とすることを目指す。

    ア)大学等のe-Learningの推進(文部科学省)
     2005年度までに、ITを活用した遠隔教育を実施する大学学部・研究科を2001年度の約3倍とすることを目指し、遠隔教育を可能とするための環境整備を行う。

    イ)インターネット大学・大学院の設置基準の改正(文部科学省)
     インターネットのみを利用して授業を行う大学・大学院の設置基準について、どのような設置基準が適切であるかを検討するため、2004年度中に実験的に設置基準を改める。

    ウ)大学の公開講座の全国配信(文部科学省)
     2004年度までに、衛星通信を活用して大学の公開講座を全国の公民館等に配信する総合的なシステムの管理・運営方法等に関する検討を行い、その結果を具体化するための調査研究を実施する。

    エ)技術者の継続的能力開発・再教育(文部科学省)
     技術者の継続的能力開発や再教育を支援するため、時間や場所を選ばずに能力開発ができる技術者向け自習教材を2006年度までに700テーマ開発し、インターネット等を通じて提供する。

    オ)教育情報衛星通信ネットワークの全国展開(文部科学省)
     2005年度までに、衛星通信を活用して提供される学校教育・社会教育に関する情報・研修番組や学習番組等が全国で受信できるなど生涯学習の振興に資するために、社会教育施設、学校、教育委員会等において必要な受信設備の配置を行えるようにする。

    2)コンテンツ産業の国際競争力強化(1)
    成果目標:2005年度までに、世界的に評価される魅力的なコンテンツが数多く制作され、デジタルコンテンツ市場において流通されるようにするとともに、2005年度までに、ネットワーク上のデジタルコンテンツ市場規模を1兆円程度に拡大することを目指す。

    ア)人材の育成

    コンテンツ制作者等の養成(文部科学省)
     2004年度以降も引き続き、我が国のコンテンツ制作者等の実践的な海外留学・国内研修、 統括団体が行う養成・研修事業や新人コンクール等への支援、海外の優れたコンテンツ制作者等 の招へいにより、コンテンツ制作者の養成を行う。また、2004年度より、映像コンテンツ分野における学生の現場実習を支援し、専門性の高い職能人材の養成を行う。

    イ)コンテンツ制作の活性化

    a)映画・アニメ等のコンテンツ制作等への支援(文部科学省)
     2004年度以降も、我が国の映画・映像水準の向上や新人監督等の育成、地域の活性化などを目的とした製作支援を行うとともに、製作環境の高度化、顕彰の実施などにより、魅力ある日本映画・映像の創造を支援する。また、映像等のコンテンツの制作・流通促進に資するため、映像等のコンテンツの評価手法の調査研究を行う。
    b)地域の特色ある文化等に関するデジタルコンテンツの制作・流通等の促進(総務省)
     地域の多様なデジタルコンテンツの制作・流通等に向けた取り組みの促進を図るため、2004年度中に、地域の特色ある文化等に関する映像コンテンツの制作・流通等におけるケーブルテレビ等の役割及びデジタルコンテンツの制作・流通等の促進方策について検討を行なうとともに、魅力的なコンテンツの制作が促進されるよう、優れた業績を残した人材を顕彰する取組を幅広く支援する。
    c)地域における新たなコンテンツ創出の促進等(経済産業省)
     地域の再生等を目的に、地域の関係者(自治体、商工業者、宿泊施設、交通機関、NPO、大学等)が一体となって、ITを活用して低コストで地域の特色を活かした新たな集客交流コンテンツを創出するとともに、国内外を問わずに情報発信するシステムを確立できるよう、2004年度以降、ITを活用したマーケティング手法や地域ブランド確立手法、情報フォーマットの標準化等を推進する。

    3)コンテンツ産業の国際競争力強化(2)
    成果目標:2005年度までに、知的財産の権利が正しく保護されたデジタルコンテンツを公正かつ容易に利用できるようにするとともに、コンテンツの海外展開規模については、2005年度までに5,000億円程度に拡大することを目指す。

    ア)デジタルコンテンツの流通環境の整備

    a)著作権契約に関する制度的枠組みの整理
    自由利用マークの普及・意思表示システムの整備(文部科学省)
     2004年度以降、著作物の利用に関する権利者の意思を簡便に表示できる「自由利用マーク」の普及を図る。さらに、その普及状況を踏まえつつ、権利者の意思をより詳細に表示できる意思表示システムのあり方についての検討を行う。
    b)著作権権利処理の円滑化
    i)著作権等のクリアランスの仕組みの開発・実証(総務省)
     2004年度中に、著作権に関する情報等のコンテンツに関する情報(メタデータ)を相互に交換し、不正利用を防ぎつつ流通するための権利処理システムを開発することにより、放送コンテンツを権利者と利用者との間で安全・確実に取引する市場形成を図る。また、当該システムを利用し、コンテンツの流通等に関する多様なビジネスモデルの試行を行い、民間における権利処理ルールの確立を支援する。
    ii)過去に放送された放送番組の二次利用にかかる契約の促進(文部科学省)
     過去に放送された放送番組の二次利用に係る契約を促進する仕組みの構築に向け、関係者間の議論を促進し、2004年度中に方向性を得る。
    iii)文書による著作権契約を促進するための「標準著作権契約書作成システム」の構築(文部科学省)
     誰でもできる著作権契約のため、2004年度中に、「標準著作権契約書作成システム」を構築し、ホームページで公開する。
    c)多彩なコンテンツ流通基盤の整備(総務省)
     2007年度までに、整備が進む情報通信インフラにおいて拡大しつつあるコンテンツの流通をさらに加速化するため、ユビキタス時代の多彩な流通形態や利活用形態に対応して安全かつ適切にコンテンツの取引・制御が可能となるよう、権利管理情報やコンテンツID等のコンテンツ流通基盤の整備を図る。
    d)コンテンツ流通に関する研究開発
    i)コンテンツの生体への影響に関する調査・研究(経済産業省、総務省)
     映像コンテンツが生体に対して与える影響について、物理的・医学的な基礎調査および研究を行い、2005年度までに、映像の生体安全性評価手法を開発するとともに、映像コンテンツの光刺激等に対する生体安全技術を確立する。
    ii)ブロードバンド・コンテンツ流通技術の開発・実証(総務省)
     2004年度までに、メタデータを活用したコンテンツの多様な視聴や高度な権利保護を実現する技術、WDM 10によるコンテンツ配信技術等、放送コンテンツ等の大容量映像デジタルコンテンツの光ネットワーク上での流通に関する技術の開発・実証を行う。
    iii)デジタルコンテンツの複製防止技術等の確立のための環境整備(経済産業省)
     デジタルコンテンツ流通拡大のために、2004年度中に、複製防止技術等のブロードバンドコンテンツ流通のボトルネックとなっている課題の解決に向けた取り組みを行う。

    イ)デジタルコンテンツ市場の拡大
     どんなに魅力的なコンテンツでも、市場で利用者に購入されなければ、ビジネスとして成り立たない。その一方で、著作権等に対する意識が低い利用者が多く参加する市場では、権利侵害の危険性が高いため、魅力的なコンテンツが市場に供給されない。そのため、デジタル時代に対応したコンテンツ市場の形成を図るとともに、そこに参加する利用者に対して著作権についての啓発活動を行う。

    a)デジタル時代に対応したコンテンツ市場の形成
    i)ブロードバンドコンテンツ流通に係る新たな事業モデルの構築支援(経済産業省)
     2005年度までに、ブロードバンドコンテンツ流通にかかる新たな事業モデルの構築に必要とされる円滑な権利処理や取引契約を含む適切な商慣行の構築、セキュア技術やコンテンツID付与技術、EDI機能を含む、商慣行の実体に則したシステムの確立に向けた民間の取り組みを支援する。
    ii)コンテンツフリーマートの形成促進(総務省)
     2005年度までに、著作権管理等を適切に行いつつ、個人が自由に利用、加工し流通させることができるコンテンツを増大させるための方策を検討する。
    iii)デジタル技術を活用したコンテンツの権利者と劇場等上映施設との間の仲介システムの実用化及びデジタルシネマの推進(経済産業省、文部科学省)
     デジタル映像技術を活用し、これまで十分な上映機関のない地域において、新たな地域上映経路を立ち上げるため、2005年度までにコンテンツに関する権利者と劇場等上映施設の間の仲介システムを実用化するとともに、引き続きデジタルプロジェクター等といった上映技術の普及や総合的な視野を持つ上映事業者等の人材育成を図る。また、デジタル映像技術を活用した上映を推進するため、2004年度中にデジタルシネマ推進フォーラムを創設する。
    iv)「日本映画情報システム」の開発・整備(文部科学省)
     2004年度中に、映画作品に関する情報提供や映画製作者と上映事業者等との交流の場として、インターネット上に「日本映画情報システム」を設ける。
    b)コンテンツ利用者に向けた著作権についての啓発活動
    i)学校における著作権教育の支援(文部科学省)
     ネットワーク整備の進展やネットワークコンテンツの普及にともない重要となる著作権に対する知識や意識を涵養するため、2004年度中に、子どもたちが楽しみながら著作権が学べるソフトを開発し、ネットワークにより全国に提供するなど著作権に関する総合的な教育事業を実施する。
    ii)国民一般のための著作権に関する知識・意識の普及(文部科学省)
     著作権に関する知識や意識を高めるために、2004年度中に、広く多くの国民を対象とした著作権講習会を10回程度開催する。また、これまでに実施した広く多くの国民を対象とした著作権講習会等を踏まえ、2004年度までに、著作権に関する疑問・質問を集積し、それらに対する回答とともにインターネットを通じて情報提供を行うシステムを整備する。
    a)海外展開のための環境整備
    i)コンテンツ産業の海外展開(経済産業省)
     東京国際映画祭にマーケット機能を付与することにより、2006年度までに日本コンテンツ情報発信のコアとして確立するとともに、カンヌフィルムマーケット等国際コンテンツ見本市への出展支援を行い、我が国コンテンツ産業の積極的PRを行う。
    ii)放送番組の海外展開(総務省)
     我が国の代表的な映像コンテンツである放送番組の海外展開を促進するため、2004年度以降、諸外国における放送番組に関する流通の状況等も勘案した推進方策について検討を行う。
    iii)アジア地域におけるデジタルコンテンツ国際間電子取引基盤の実用化(総務省)
     2004年度も引き続き、デジタルコンテンツの国際間取引を可能とする技術の実用化を推進すると共に、アジアにおける多言語環境への対応の充実及び開発・実証された技術の標準化に貢献し、アジアにおける普及・促進に努める。
    iv)アジア地域における著作権に関する知識・意識の普及(文部科学省)
     2004年度以降も引き続き、アジア地域の一般国民を対象とした教材のマスター版を作成・配布し、インターネット上の著作物の保護を含む著作権教育を実施するためのセミナーを各国で開催する。
    v)海賊版対策に向けた国際機関の積極活用(文部科学省、外務省)
     2004年度も引き続き、世界貿易機関(WTO) 11や世界知的所有権機関(WIPO) 12等の国際機関を活用し、我が国著作物の海賊版が流通している国々に対して、法制度整備、エンフォースメントの強化を働きかける。
    vi)日中等著作権関係協議(文部科学省)
     インターネット上の著作物の著作権の適切な保護のため、2002年度に開始された中国等との協議について、2004年度についても、引き続き協議を行う。
    vii)アジア地域著作権制度普及促進事業(文部科学省)
     2004年度も引き続き、WIPOの協力を得て、新条約加盟促進を目的とするシンポジウムの開催、電子的権利システムの構築を支援するための専門家の派遣、権利侵害の紛争処理に必要とされる人材育成のための研修を実施するとともに、新たにネットワーク社会において著作権保護が及ぼす経済的効果をテーマとしたシンポジウム等を実施する。
    viii)WIPOにおける著作権についての国際的なルールの構築(文部科学省、総務省、外務省)
     2004年度以降も、WIPOにおける「視聴覚的実演に関する条約(仮称)」及び「放送機関に関する条約(仮称)」についての議論に積極的に参画し、インターネットの発達などに対応した著作権に関する新たな国際ルールの構築を図る。あわせて、アジア地域を中心に、すでに発効しているWIPO新条約(WCT(著作権に関する世界知的所有権機関条約)、WPPT(実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約)を締結するよう働きかけを行う。
    ix)海外での著作権執行推進の支援(文部科学省)
     2004年度も引き続き、対象国のインターネット上の著作物の保護を含む著作権法制度、水際での取締りを含む権利の執行等をJETRO等の協力も得た上で調査を行い、対象国での著作権等の紛争解決を行うためのマニュアルを作成し、著作権関係企業、団体に配布する。
    x)日本映画・映像の海外発信支援(文部科学省)
     2004年度以降も引き続き、海外映画祭への出品等の支援や国内における国際的な映画祭等を支援することにより、日本映画・映像の海外への発信支援を行う。

    4)多様なコンテンツ資産の有効活用
    成果目標:2005年度までに多種多様なデジタルコンテンツ資産を統合的かつ簡便に利用できるようにする。

    ア)デジタルアーカイブ化及び国内外への発信

    a)デジタルアーカイブ化の推進(内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省及び関係府省)
     2005年度までに、放送・出版、映画等のコンテンツや、美術館・博物館、図書館等の所蔵品、Web情報、地域文化、アジア諸国との関係に関わる重要な公文書等について、デジタル化・アーカイブ化を推進し、インターネットを通じて国内外に情報提供が行われるよう必要な措置を講ずる。
    b)文化遺産オンライン構想の推進(文部科学省、総務省)
     デジタルアーカイブ情報の検索を容易にするため、2005年度までに、国や地方公共団体、私立の美術館、博物館のネットワークの充実を図り、共通索引システムを整備する。また、2006年度までに、全国で1000館程度の美術館、博物館等が参加する文化情報に関するポータルサイトの確立を目指す。

    イ)アーカイブ流通のための技術開発の推進

    a)映像表示・伝送技術の確立のための技術開発(総務省)
     高品質のアーカイブを円滑に流通させるため、2005年度までに、実物の色、質感・立体感・光沢を忠実に再現する映像表示・伝送技術の確立を目的とした研究開発を実施する。
    b)安全・円滑な流通のための技術開発(総務省)
     アーカイブ化されたコンテンツのネットワークによる利用を促進するため、2004年度も引き続き、メタデータを活用した一元的な高速検索技術やコンテンツ保護技術等、その安全・円滑な流通を可能とする技術の開発、実証等を推進する。


  6. 就労・労働

    (1)基本的考え方

     近年の我が国の雇用情勢は、完全失業率が約5%という高水準で推移する等、依然として厳しい状況にある。こうした情勢に適切に対応するため、政府では各種の総合的な雇用対策を図っているところであるが、こうした方策を一層効果的なものとするためには、人材等資源の柔軟かつ機動的な再配置を促すITの適切な活用が不可欠である。例えば、求人・求職活動や民・官間の人材交流において、誰もが必要な情報を時間や場所の制約なく一元的に入手し、比較検索できる電子的な仕組みを整備・充実させることで、労働力需給のミスマッチの一層の解消につながり、人材資源の移動の円滑化が図られ、一人ひとりが適材適所で能力を発揮できる社会が実現される。
     また、国民のライフスタイルに対する価値観の多様化等に伴い、個々人のニーズに応じた柔軟な就労形態に対する需要が労使双方において顕在化しているが、高速・低廉でセキュリティの高い通信ネットワークや、テレビ会議システムなどの近年の情報通信技術の進展は、多様な就労形態の選択肢を拡大するものである。こうした情報通信技術を活用した、能率が最も高まり、また創造性が最も発揮されるような場所と時間を選択した働き方の典型であるテレワーク 13や裁量労働については、日本においても近年導入する企業の増加が見られ、また、改正労働基準法により民間における裁量労働制の拡充が行われている。しかしながら、欧米諸国に比べた導入の遅れや、また、裁量労働制に関する手続きの一層の緩和、労働時間管理に縛られない法制度設計の必要性も指摘されているところである。このような、個々の人生設計に対応した多様な就労形態の選択を可能とすることで、一人ひとりがより創造的な能力を最大の能率で発揮しうる社会が実現され、ひいては、就業と家事・育児・介護の両立が可能となるなど、男女が共同して参画する社会の実現にも資する。
     さらに、IT革命が雇用面に与える影響として、企業等の業務効率化に伴う雇用削減の可能性も予想されるところであるが、これに対しても適切な対応を図るため、IT関連も含めたベンチャー企業の創出・育成などを通じてセーフティネット(安全網)を整備していくことも重要である。こうした観点から、電子的手段を活用し起業・事業拡大の容易化を実現するとともに、特にIT関連分野における新事業創造支援を推進することを通じ、就業機会の創出・拡大を図っていくことが必要である。

    (2)具体的施策

    1) 人材資源の移動を円滑化し、一人ひとりが適材適所で能力を発揮できる社会の実現
    成果目標:2005年までに、電子的な手段で情報を入手し職を得る人が年間100万人となるとともに、女性の25歳以上44歳以下の労働力率 14を70%になるようにする。さらに、企業年金における確定給付型年金の中途脱退者の通算制度の拡大を実現する。

    ア) 官民連携した雇用情報システム(しごと情報ネット)の充実(厚生労働省)
     全国の民間職業紹介事業者や公共職業安定所が保有する求人情報を、インターネットや携帯電話を利用して誰もがどこからでも容易に入手し、一覧、検索出来る官民連携ポータルサイト「しごと情報ネット」(2001年8月から稼動)について、2004年度中に、障害者の求職情報の提供、職業能力開発情報とのリンケージを図ることにより、失業者の早期再就職、在職者の失業なき労働移動の一層の実現を図る。

    イ) 長期雇用を優遇する制度の見直し(厚生労働省)
     従来型の年金に関わる制度や退職金に関わる税制等、長期雇用を優遇する制度が人材資源の流動化を阻害することのないようにする必要がある。このため、長期雇用を前提とした制度の見直しや、退職金に関する制度の中立性の確保等についての検討を進める。
     特に企業年金については、確定給付型年金の中途脱退者の通算制度の拡大など確定給付型年金のポータビリティ 15向上等につき、2005年度の国民年金法等の一部を改正する法律の施行等を踏まえ、必要な措置を講ずる。

    ウ) 官民間での人材交流の円滑な推進に向けた諸方策の検討(内閣官房、人事院、総務省、及び全府省)
     民・官の間での双方向のオープンな人材交流を推進するため、公務の中立・公正性の確保を踏まえつつ、2005年度末までに、官民人事交流制度、任期付職員制度において民間企業との雇用関係の継続を認めることとするなど、民・官間の人材の兼業規制を含む服務上の規定等の必要な見直しを行う。また、官民人事交流促進に関する方針を策定するなど人材交流の円滑な推進や有能な民間人の登用の促進に向けた諸方策の検討を行う。

    エ) 女性のチャレンジ支援のためのネットワーク環境の整備(内閣府及び関係府省)
     再就職等の雇用や起業、NPO、農林水産、まちづくり、地域社会等の様々な分野でチャレンジしたいと考える女性が、必要なときに必要な情報を効率的に入手できるような総合的な情報提供システムの構築を進めるため、「チャレンジ・サイト」(内閣府ホームページ内に設置)の内容の充実を引き続き図るとともに、2004年度から、都道府県におけるモデル事業として「地域におけるチャレンジ・ネットワーク環境整備推進事業」を実施し、その成果の全国普及を図る。

    2) 多様な就労形態を選択し、より創造的な能力を最大の能率で発揮しうる社会の実現
    成果目標:生産性の向上、通勤負担の軽減、仕事と生活の調和等に向けた就業環境の整備を前提とした上で、就業者全体に占めるテレワーク 16人口比率を現在(2002年)の6.1%から2005年で10%になることを目指すとともに、現在未導入である国家公務員(中央官庁)におけるテレワークについても、2005年に導入開始することを目指す。

    ア) 企業によるテレワーク導入支援(総務省・厚生労働省・国土交通省・経済産業省)
     民間におけるテレワーク勤務等については、2003年度に策定した「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」や2004年度中に整備・周知される「企業によるセキュリティの高いテレワーク環境の導入を支援するためのガイドライン」及び「民間におけるテレワーク人口比率等の調査結果」等を踏まえ、2005年度早期に企業、労働者双方に配慮した統一的なガイドブックを作成する等民間における多様な勤務形態が選択可能な制度の導入が促進されるよう適切に施策を講じる。

    イ) 労働者が創造的能力を発揮するための労働関連制度の整備 (厚生労働省)
     職種の急速な多様化等の環境変化に俊敏に対応し、労働者が創造的能力を発揮できるよう、労働関連制度について、改正労働基準法の施行状況を把握した上で、米国のホワイトカラーイグゼンプション 17の制度等も参考にしつつ、従来型の規制の在り方について引き続き検討を行い、必要に応じて措置を実施する。

    ウ) 地方公務員のテレワークに関する制度等の環境整備(総務省)
     地方公共団体におけるテレワークの導入の検討に資するため、引き続き情報提供等の必要に応じた措置を行う。

    3) 起業・事業拡大支援による就業機会の創出・拡大
    成果目標:2005年までに、起業家・経営者が、起業や事業拡大時等に関する情報等を効率的に入手でき、また、必要な手続きが簡易にできるようにするとともに、起業希望者に占める実際に起業した者の割合を、男女とも30%となるようにする。

    ア) 起業・事業拡大等に関する情報等を効率的に入手できる仕組みの構築(総務省)
     情報通信ベンチャーの経営に必要な情報をワンストップで提供するポータルサイトを整備し、情報通信ベンチャー及びこれらの企業の創業を目指す個人を支援する様々なサービスを提供する。独立行政法人情報通信研究機構のホームページ上に開設している「情報通信ベンチャー支援センター」について、引き続き専門家による経営相談、助成金等の支援情報のワンストップ検索等の既存のサービスに加え、2004年度中可能な限り早期に交流を希望する会員間のマッチングを自動化するシステム等の運用を開始する。

    イ) 起業・事業拡大時に必要な手続が簡易にできる仕組みの構築(内閣官房、財務省、法務省、厚生労働省、経済産業省及び関係府省)
     税務関係登録、社会保険・労働関係申請、その他起業時に必要となる行政機関及び民間企業等への各種手続きを簡易化するため、2004年度より関係省庁連携の下に検討を行い、2005年度より、民間事業者によって運営される官民連携ポータルサイトの実証実験等できる限り早期に必要な手続が簡易に行える仕組みを構築する。

    ウ) 起業機会の拡大等

    a)ITベンチャー企業等への資金助成(総務省)
     2004年度中に、先進的な技術の研究開発を行うITベンチャーに対し、研究開発資金の一部の助成を行う。また、創業後間もない段階のITベンチャーに対し、民間投資が行われることを要件として、新規ビジネスの事業化に必要な資金の一部の助成を行う。
    b)中小ITベンチャー企業の事業化支援(経済産業省)
     2007年度までに、1億円以上の売上高を達成する企業を10社育成することを目標に、優れた技術シーズを持つ中小ITベンチャー企業に対し、市場を見据えたソフトウェア製品の完成のための技術開発支援と、その事業化までの支援を行う。
    c)戦略的なIT利用のための投資促進(経済産業省及び関係府省)
     企業活動の抜本的な合理化や経営革新につながる戦略的IT投資に係るプロジェクトの活性化を図るため、戦略的IT投資に積極的な事業者の連携、研鑽及び情報の収集を引き続き支援するとともに、戦略的なIT投資を支援するプラットフォームとして「IT経営応援隊」を設置し、企業経営におけるIT投資の意義等についての普及を行う。このような取り組みを通して、2005年度までに先進事例となるようなプロジェクトがおおむね1万件創出されることを目標とする。
    d)市民活動活性化モデル事業(市民ベンチャー事業)(経済産業省)
     まちづくり、生活支援等の分野で女性や高齢者が中心となって行う市民活動等のうち、ITを有効に活用して地域の新事業・雇用の創出に寄与する特に優れた事業を、2002〜2004年度において50件程度選定し、活動の立ち上げ、企業化を支援するとともに、全国への普及を図る。


  7. 行政サービス

    (1) 基本的考え方

     行政の情報化は、行政分野へのITの活用により、国民の利便性の向上と行政運営の簡素化、効率化及び透明性の向上を図ることを目的とするものであり、こうした目的を達成していくためには、先述したとおり、ワンストップサービスの整備、業務・システムの最適化等を着実に進めていく必要があるほか、行政運営に関する情報を国民がわかりやすく知ることができるよう行政ポータルサイトの整備や情報システム調達の改善に取り組んでいく必要がある。

    (2) 具体的施策

    1)行政ポータルサイト等の整備
    成果目標:2005年度末までに行政ポータルサイト等を整備し、これを活用しつつ、政策立案過程、実施状況、事後評価等行政運営に関する情報を国民がわかりやすく知ることができるよう情報提供を行い、広く国民の行政への参画を容易とする。

    ア)行政ポータルサイトの整備(総務省及び全府省)
     「行政ポータルサイトの整備方針」(2004年3月31日各府省情報化
    統括責任者(CIO)連絡会議決定)を踏まえ、2005年度末までに以下の取り組みを行う。

    各府省は、国民等利用者のインターネットによる行政情報の入手を容易にするため、書面で公表する情報はすべてホームページに迅速に掲載するなど、情報提供の一層の充実を図る。
    報道発表資料、パブリックコメント、政策評価等全府省がホームページ上に共通のカテゴリーを設け掲載する情報について、掲載項目の見直し、掲載情報の充実、ホームページ上の表示位置の整合性を図る。
    電子政府の総合窓口(以下「e-Gov」という。)及び各府省ホームページについて、高齢者・障害者にも利用しやすいものとするため、ウェブコンテンツ(掲載情報)に関する日本工業規格(JIS)策定動向を踏まえ、必要な改善を図る。
    e-Govから案内するホームページを地方公共団体、国会、裁判所等に拡大する。
    e-Govの利用方法等の問い合わせに一元的に対応するため、電子政府利用支援センターを整備する。

    イ)政府統計の利用環境の整備(総務省及び関係府省)
     政府統計について、データベース化を進め、政府と地方公共団体間で情報の共有化を図るとともに、分析ツールの提供等による統計分析の支援環境の整備、公開可能な統計情報のインターネットによる提供を推進する等、政府全体の業務・システムの最適化を図りつつ、国民や企業における統計利用の環境を整備する。
     このため、上記の内容を含めた最適化計画を2005年度末までのできる限り早期に、総務省が中心となって策定する。

    ウ)地上デジタル放送及びケーブルテレビの利活用に関する研究(総務省)
     地方公共団体や住民にとってより身近な媒体である地上デジタルテレビの通信機能やケーブルテレビ(CATV)を活用して、行政サービスを提供するための諸課題の解決策及び普及のための施策を検討し、全国において地上デジタル放送が開始されることとなる2006年に向けて、今後の地方公共団体における行政サービス等の提供への活用を促進する。

    2)政府調達の電子化、情報システム調達の改善
    成果目標:政府調達の電子化、情報システムに係る政府調達の改善を推進し、調達手続の合理化・透明性の向上、調達費用の低減を図る。

    ア) 政府調達の電子化

    契約の電子化(総務省及び全府省)
     政府調達における契約の電子化について、2004年度内に具体的な実施方策を検討し、これを踏まえ、政府調達に係る業務・システムの最適化を図るため、契約の電子化を着実に推進する。
    公共事業支援統合情報システム(国土交通省)
     公共事業支援統合情報システム(CALS/EC)を2004年度までに構築するとともに、その後更なる高度化を図る。

    イ) 情報システムに係る政府調達の改善(総務省、経済産業省、財務省及び全府省)
     各府省は、「情報システムに係る政府調達制度の見直しについて(2002年3月情報システムに係る政府調達府省連絡会議了承 2004年3月改定)に基づき、総合評価落札方式における加算方式による評価、低入札価格調査制度の活用、競争入札参加資格の柔軟な運用、開発工程管理手法(プロジェクトマネジメント手法)の活用を通じた調達過程の適正な管理等、質の高い低廉な情報システムの調達に必要な取り組みを推進する。


7トレーサビリティシステム:生産・加工・流通等の各段階において、食品等とその情報を追跡し、遡及できる仕組み。

8生産情報公表JAS規格:生産者等が自主的に食品の生産情報を消費者に正確に伝えていることを第三者機関が認定する規格

9エスクロー:第三者預託。金融においては第三者が金銭や品物の受け渡しの仲介をすることにより、取引の安全性を高めるサービスをいう。

10WDM:wavelength division multiplexing(波長分割多重)。1本の光ファイバで波長が異なる複数の光信号を伝送することにより、光ファイバ上の情報伝送量を飛躍的に増大させることが可能となる。

11世界貿易機関(WTO):国際貿易を管理し、貿易の自由化を促進する機関。1995年設立。WTOはWorld Trade Organizationの略。本部はジュネーブ。

12世界知的所有権機関(WIPO):工業所有権や著作権等の知的所有権保護の国際的な促進を目的として、知的所有権分野における国際的規範と基準の確立、関係諸条約の管理、知的所有権に関する法的・技術的情報の提供及び開発途上国における知的所有権制度の確立のための援助を行う国連の専門機関。1970年設立。本部はジュネーブ。WIPOはWorld Intellectual Property Organizationの略。

13テレワーク:従来の定まった場所で定められた時間働くという考え方から離れて、効率や成果が最も高まるような場所と時間を選択して、ITを活用して仕事をすること。企業に雇用される「雇用型」と自営形態で行われる「非雇用型(自営型)」に大きく分類される。

14労働力率:全人口に占める就労者の割合

15ポータビリティ:「携帯性」。年金のポータビリティとは、転職時等に年金資産を移管できることをいう。

16テレワーク:ここでは、情報通信手段を週8時間以上活用して、時間や場所に制約されない働き方と定義する

17ホワイトカラーイグゼンプション:管理的被用者や専門的被用者であること、過給額が一定水準以上であること等の要件に該当する者について、時間外賃金の支払いを適用除外する制度。