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仲裁検討会(第7回)議事録

司法制度改革推進本部事務局



1 日時
平成14年7月8日(月) 13:30〜17:40

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室(永田町合同庁舎2階)

3 出席者
(委 員)
青山善充(座長)、秋吉仁美、谷口園恵、中野俊一郎、中村達也、本東信、松元俊夫、三木浩一、山本和彦、吉岡桂輔(敬称略)
(事務局)
大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、近藤昌昭参事官、後藤健企画官、内堀宏達参事官補佐

4 議題等
(1)開会
(2)検討事項案その12(第11 消費者保護について)
・ 建設工事紛争における仲裁合意の実態について
・ 仲裁法に関する検討項目についての提言(国内消費者保護の視点から)
1 消費者と事業者の間の仲裁契約の効力について
2 消費者と事業者の間の仲裁契約の方式について
3 書面による通知の方法について
4 国際的な要素を含む消費者仲裁について
(3)検討事項案その13(第12 時効中断について)
(4)検討事項案その14(第13 証拠調べに関する裁判所の援助について)
1 援助の請求権者について
2 対象となる証拠調べの範囲について
3 裁判所が援助を行うための要件について
4 裁判所の決定に対する不服申立てについて
5 援助に係る証拠調べの在り方について
6 仲裁廷が行う証拠調べの援助について
7 援助に係る証拠調べの費用について
8 援助に係る証拠調べの結果の取扱いについて
(5)検討事項案その15(第14 多数当事者仲裁について)
1 多数当事者仲裁が認められるための要件について
2 多数当事者仲裁における仲裁廷の構成について
(6)検討事項案その16(第15 裁判所の管轄等について)
1 事物管轄について
2 土地管轄等について
(7)次回の予定等、閉会

5 議事
(□:座長、○:委員、●:事務局)

【開会】

□ それでは、予定した時間が参りましたので、第7回仲裁検討会を開会させていただきます。
 本日は、炎天下の中、また御多忙の中を御出席いただきまして、ありがとうございます。
 はじめに、皆さんには個別的にごあいさつがあったかと思いますが、経済産業省の○○委員が、このたび他の部署に異動されることになりまして、当検討会も後任の方と交替されることになりました。
 後任は、○○委員でございます。今日は、ほかの用事があるということで御欠席でございますが、次回からは御出席いただきます。どうぞ、よろしくお願いしたいと思います。
 次に、私の方から御報告させていただきます。司法制度改革推進本部の顧問と、各検討会の座長との懇談会というのがございまして、これについてはそういうことがあるということだけ前回申しましたけれども、ここで簡単に御報告させていただきます。
 6月19日の16時から18時までということで、ここでございました。
 顧問の先生で御出席されたのは、佐藤幸治座長と、奥島孝康顧問、小島明顧問のお3人だけで、そのほかに副本部長の森山法務大臣が御出席でございました。
 検討会の方は、すべての検討会から、座長又は代理の者が出席いたしました。推進本部事務局からは、山崎事務局長ほかの方が御出席されました。
 各検討会の座長あるいは代理から、それぞれ検討会の検討状況について報告があり、若干の質疑応答がありました。私からは、仲裁検討会につきましては、任務は仲裁法制の早期の整備、国際的な動向をにらんで仲裁法制を整備するということで、UNCITRALやニューヨーク条約に準拠し、また最近は国内でも仲裁法の研究が盛んになり、あるいは弁護士会の仲裁センターが各地に広がっていることもあり、仲裁法を整備することが今最も時宜に適しているということで、委員11人全員非常に頑張っていただいているし、また事務局もそれに対して適切な資料を提供いただいている。そして、来年の2月までには何とか任務を果たしたいというような報告をさせていただいたところでございます。
 質疑応答がございましたけれども、質疑は大体、ロースクール問題、法曹養成検討会の方に集中いたしまして、仲裁については、どなたからも質問もございませんし、私も発言する機会もございませんでした。
 以上でございますけれども、事務局の方で何かありますでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、検討会の方に戻りまして、本日は、2読の最終回ということになります。前回までで全体につきまして検討が終わりましたので、今回は、なお議論の残っている幾つかの論点について検討していただきたいと思います。
 検討項目は、既にお配りしている5つの資料がございます。第1が消費者保護の問題、2番目が時効の中断、3番目が証拠調べに関する裁判所の援助、4番目が多数当事者仲裁、最後が裁判所の管轄等ということでございます。
 今日は、この順序で検討させていただきたいと思いますが、消費者保護につきましての検討に先立ちまして、○○委員から中央建設工事紛争審査会における仲裁の状況について、消費者が当事者となるということもありまして、そういう状況を中心に御紹介いただく予定になっております。
 その後、○○委員から、前回出していただいたペーパーに基づいて御説明をいただきたいと思っております。
 それでは、まず本日の資料につきまして事務局から御説明をいただけますでしょうか。

● 本日、議論をしていただきます事項を記載した資料については、第7回仲裁検討会配布資料目録記載のとおり、検討会資料25から29までで、事前に送付させていただいているところです。○○委員から提出の「建設工事紛争における仲裁合意の実態について」というペーパーを本日席上に配布させていただいています。
 また、前回最後のところで申し上げましたが、○○委員から提出された意見書、それから金融オンブズネットコーディネーターの原早苗氏から提出された意見書、全国消費者団体連絡会の事務局長の神田敏子氏から提出された意見書、これについても、今回参考になるということでお持ちいただければということを申し上げたと思うんですが、もしも、お持ちいただいていない方がいらっしゃいましたら、事務局の方で余部を用意してございますので、配布させていただきたいと思います。
 席上に全国証券問題研究会所属の弁護士からの意見書が提出されてございます。これも本日の消費者問題について関連するところですので、紹介したいと思います。
 ほかに、「国民一人ひとりが輝く透明で開かれた社会を目指して」というペーパーと、内閣総理大臣あいさつ要旨というペーパーを席上に配らせていただいております。これについて若干説明します。
 7月5日に開催されました顧問会議におきまして「国民一人ひとりが輝く透明で開かれた社会を目指して」と題するアピールが取りまとめられ、司法制度改革推進本部長である、小泉内閣総理大臣に提出されました。
 このアピールは、司法制度改革推進本部令に基づき、顧問会議が司法制度改革推進本部長に意見を述べたものであり、同時に国民に向けたアピールとしての意味を有するものと位置づけることができます。
 このアピールを受けて、小泉内閣総理大臣も、全国どの町に住む人にも法律サービスを活用できる社会を実現すること、裁判の結果が必ず2年以内に出るようにすることなどを具体的な目標として改革を進める必要があるとして、改革に向けた強い決意を述べられたところです。
 本検討会においても、これらの趣旨を踏まえて検討を進めていただければと存じます。

【消費者保護について】

□ 資料の確認はよろしいでしょうか。それでは、早速検討に入りたいと思います。
 まず、はじめに資料25の消費者保護についての検討事項全体について、事務局から御説明をいただけますでしょうか。

● この問題は、消費者を当事者とする仲裁においては、消費者と事業者の情報、交渉力等の格差により、消費者が仲裁の意義を理解しないまま、または仲裁につき事業者と交渉することなく、事業者と仲裁契約を結んでしまうということが考えられることに鑑み、消費者契約法等の消費者保護関係法規の理念を考慮して、消費者仲裁につき何らかの配慮をすることができないか御議論いただくものです。
 ここでは、仲裁契約の効力及び方式の問題、消費者への書面による通知の問題及び日本の消費者と外国の事業者が仲裁契約を締結した場合の問題を取り上げました。個々の問題については、問題を検討する際に説明いたしたいと思います。

□ これが、資料25の全体的な御説明ですけれども、最初に申し上げましたとおり、まず○○委員から中央建設工事紛争審査会の、消費者を当事者とした仲裁の状況等につきまして御紹介いただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。

【建設工事紛争における仲裁合意の実態について】

○ それでは、資料に基づきまして御説明させていただきます。
 資料の1ページでございます。建設工事の請負契約について、一番一般的に用いられている約款であると言われておりますのが「民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款」でございます。
 これは、日本建築学会を始めとする7つの団体によって作成されているものですけれども、かつて4つの団体でございましたので、旧四会連合約款あるいは四会連合約款というふうに今でも呼ばれております。
 この資料の3ページでございますけれども、この34条が紛争解決条項でございまして、まず、第1項といたしまして、建設工事紛争審査会のあっせんまたは調停によってその解決を図るということでございます。
 第2項といたしまして、それによって紛争を解決する見込みがない、あるいはあっせん調停打ち切りという場合には、当事者は仲裁合意書に基づいて審査会の仲裁に付することができるという規定でございます。
 その仲裁合意書というのが、資料の4ページでございまして、約款34条2項の規定に基づき仲裁に付すということで、当事者がここに請負契約書とは別に記名、押印するというスタイルでございます。
 この仲裁合意書は、表裏1枚の紙になっておりまして、5ページ目が仲裁合意書の裏面でございます。裏面におきましては、建設工事紛争審査会とは何かということをまず説明いたしました上で、2)のところで「適法になされた審査会の仲裁判断は、裁判所の確定判決と同一の効力を有し、たとえその仲裁判断の内容に不服があっても裁判所で争うことはできなくなる」ということを御理解いただいた上で仲裁合意していただくという仕組みになっているところでございます。
 実は、この約款は昔からこういう形式になっておったわけではございませんで、昭和56年9月に改正されてこのようになっているということでございます。
 改正前は、この資料の6ページでございますけれども、やや今の条文よりも簡単な形で、約款の一条項として30条が置かれているというだけの形だったということでございます。
 このように改正された経緯でございますけれども、7ページに最高裁昭和55年6月26日第一小法廷判決というのを付けさせていただいております。
 これは、四会連合約款に基づく仲裁契約が成立しているかどうかということが争われた判例でございまして、必ずしも当事者が消費者ではございませんで、建設業者と法人である注文者との紛争でございます。建設業者から注文者に対する工事残代金の請求がありましたところ、注文者の方から本件については四会連合約款に基づいて仲裁契約があるということで抗弁が提出されたということでございます。
 本判決におきましては、原審の判断を支持いたしまして、仲裁契約の成立を認めたわけでございます。
 しかしながら、中村治朗裁判官の反対意見がございまして、8ページ以下でございますけれども、我が国においては仲裁手続の利用実績が乏しいとか、一般国民の間では仲裁の意義、効果などについて知識を持っていないということを踏まえまして、本件上告人である業者は、仲裁手続に関して十分な認識、理解を有していたとは到底考えられない、漫然と契約書に署名、押印したものと見るのが自然の道理に合致するということを述べられたわけでございます。
 その上で、10ページ目のところでございますけれども、中村裁判官とされましても、工事請負契約というものは、かなり専門技術的な問題を含んでおりますので、そういう問題の適切かつ迅速な解決のためには、仲裁手続は極めて有効である、今後この制度が大いに活用されることを期待するというふうに言われた上で、ただ約款における仲裁契約条項の規定の仕方については、将来の無用の紛争の防止のために、特段の反省と配慮を促すというふうに言われたわけでございます。
 こういうことがありましたので、昭和56年に四会連合約款は改正されて、現在のような形になっているということでございます。
 11ページ目でございますけれども、現実に建設工事紛争審査会におきまして、どのような形で仲裁合意がされているのかということを調べたものでございます。
 まず、平成13年度に全国の建設工事紛争審査会に対しまして仲裁申請が行われた事件、39件について調べてみました。その結果、紛争発生前の仲裁合意、すなわち請負契約締結時点での仲裁合意というのが39件中34件ということでございます。紛争発生後の仲裁合意もございますけれども5件ということで、圧倒的多数は紛争発生前の仲裁合意でございます。
 34件の内訳としましては、現在の四会連合約款のように、約款の紛争処理条項と独立の仲裁合意書というのが20件でございます。それから、改正前の約款のような、紛争処理条項のみというのが14件でございます。
 この全体39件のうち、紛争当事者の一方が消費者契約法に規定する消費者であったと思われるものが21件でございます。ほとんど個人住宅の建設請負契約というふうに考えていただければ結構でございます。
 これらにつきまして、仲裁合意の形式を同じように調べますと、やはり紛争前の仲裁合意が圧倒的に多くて、21件中18件でございます。この18件のうち、仲裁合意書が約款とは別に付いているというのが13件でございまして、紛争処理条項のみというのは5件だけであったということでございます。
 消費者が当事者である仲裁事件、これは中央審査会のものを過去10年さかのぼって調べてみましたら、傾向的には同じような傾向でございました。詳しい説明は省略させていただきます。
 一応資料の御説明は以上でございますけれども、先般○○委員から御提出いただいたペーパーにつきまして、検討して若干コメントとして申したいこともございますが、今申し上げてもよろしいでしょうか、あるいは後ほど討議の中で申し上げた方がよろしいでしょうか。

□ ○○委員に先に話していただいて、それに引き続いた方がいいでしょう。○○委員、どうぞよろしくお願いいたします。

【仲裁法に関する検討項目についての提言(国内消費者保護の観点から)】

○ 前回、ペーパーをお配りしておりますので、委員の先生方もお読みになっていると思いますけれども、かいつまんで説明したいと思います。
 まず「I 提言の趣旨」でございますけれども、今回の改正は、国際商事仲裁に対応できるような法制の整備というのが最重要の課題だというふうに認識しておるわけでございますけれども、国内仲裁につきましても、立法上分けないということになりますと、とりわけ消費者を当事者とする仲裁に関しては、一定の配慮をした立法が望ましいと思います。したがって、今後の検討項目に加えていただきたいというふうに提言いたしました。事務局から今回、こういう立派な検討項目が出ましたので、そういう意味では目的を達しているわけでございますが、なお説明したいと思います。
 「II 背景となる考え方」でございますけれども、仲裁は、紛争の解決を当事者の私的自治に委ねたものであるということであります。
 しかし他方、現実の消費者契約あるいは消費者・事業者間の紛争においては、消費者が仲裁条項の存在を認識せずに、あるいはまた約款を含む長文の契約書にサインしたりして、仲裁の意味を十分理解していないというようなことがあったり、あるいは仲裁でも外国を仲裁地とする仲裁だったり、あるいは業界団体の主宰する仲裁機関における仲裁だったりというようなことが見られるわけであります。
 仲裁合意は、訴権を失うという重大な効果を発生させる合意でありますので、私的自治の名の下に、弁護士・法務部の存在する企業間と同様に認めてしまってよいのかというのが基本的な視点であります。
 また、これは事実上のことのようですけれども、仲裁合意がありますと、いわゆる消費生活センター等の行政型ADRでの解決も、それを待ちましょうということで、事実上機能しないで、門戸を閉ざすというようなこともあるように言われております。
 したがって、このような視点から主に仲裁合意の方式及び効力について消費者保護の観点からの立法的な手当を仲裁法の検討の中で行っていくのが適当であろうというふうに考えます。
 以下、幾つかたたき台として提示するものでございます。
 3ページの「III 具体的問題点と考え方」。「1 問題となる典型例」としてあえてわかりやすくするために2つ述べたわけですけれども、1つは国内消費者、例えば広島在住の者と、東京の業者が結んだ契約。実は、契約といっても、商品、サービスを購入する際の申込書の裏面の約款等に「本契約から生ずる一切の紛争は○○業協会クレーム・紛争解決部会(東京都所在)における仲裁手続によって解決するものとし、当事者は同委員会の仲裁人の判断に服するものとする」というような仲裁条項が入っていた場合のケース。
 もう1つは、国際消費者契約と言いましょうか、これからインターネットが盛んになってきますと、例えばネット上で商品を購入すると、その契約の中に、今後の紛争は米国仲裁協会の手続規則に従った仲裁によって解決されるものとすると。少し極端かもしれませんけれども、仲裁の場所はシンガポールとする、準拠法はカリフォルニア州法とするというような仲裁条項が入っていたといったような場面を想定いたしますと、幾つか問題が起こるのではないかと。
 1つは、消費者が裁判所に訴えを提起しましたけれども、業者が仲裁合意を理由に訴えの却下を主張する場合とか、2つ目は、業者の方が消費者を相手に仲裁機関、しかも業界寄りの仲裁機関などに申し立てた場合はどうだろうかと。3つ目として、そのような仲裁について判断がなされて、現実に執行判決を求められる。あるいは、消費者が仲裁判断の取り消しを求めるというようなケースを想定すると問題がわかりやすいのではないかというふうにしておきました。
 具体的に4ページの2のところですが、これは今回の検討項目に入っておりますけれども、1つは消費者契約における仲裁合意の効力をどうするかということであります。
 1つの考え方としてあり得るのは、紛争が現実に起こる前に締結したものは、無効ないし片面的に無効とするという考え方があり得るだろうと。
 例えば、EUでは、ここに書きましたとおりの指令がある。イギリス法等々のことについては、むしろ今日の事務局のペーパーの方がまとまっておりますので、そちらに譲りますけれども、例えばスウェーデンの例とか香港の例などには、こういうような無効ないし片面的無効と思われるような規定がある。
 Aに、仮に一律の無効としないとしても、仲裁合意の内容が著しく消費者に不利であって、消費者保護の原則に反すると認められる場合については、無効とするという考え方もありましょうということです。
 次に5ページの3ですけれども、仲裁合意の方式です。
 仲裁合意の方式について、例えば約款方式をどうするのか。否定するとか、あるいは書面においても自署を要求する、あるいは電子的な方法による合意を否定する、あるいは仲裁合意のみ独立の書面にすることを要求するとか、こういう何らかの方式の面で縛りをかけるという考え方はどうかということでございます。
 ドイツにも例があるようですけれども、ただ、考えなければいけないのは、方式面だけを規定すれば消費者保護が十分かというと、必ずしもそうではない。すなわち形式だけを整える業者というのは、必ず出てくる可能性がありますものですから、先ほどの1に述べました効力の規制の問題と合わせて法定しないと実効性は薄いというふうに考えます。
 4のところは、少し細かいことになりますけれども、いわゆる応訴管轄的な仲裁合意を、もし仲裁法で認めるとすると、仮に書面で正式な仲裁合意をしていない消費者が仲裁機関に呼び出されて、訴権を失うことを理解せずに、うっかり本案について答弁してしまったような場合に問題になるのではないか、そういう事後的合意についても手当てをしておかないと尻抜けになるのではなかろうかという指摘でございます。
 最後の6ページの「5 仲裁法の適用範囲、準拠法について」。これは、先ほどの国際消費者取引みたいな場合の準拠法をどうするのかの話でございまして、これも今回の検討項目に入っています。
 「6 その他」は、その他どんなことがあるかということを、とりあえずアトランダムに並べてみたものです。
 そのうち、1番目の書面による通知のみなし受領規定について、これは今回の検討項目に入っております。
 その下は、幾つか私の方で、こういう場合はどうなのかなというのを記載したものですが、どちらかと言うと細かいところでございますので、主としては、効力等々、本日事務局で用意していただいた検討項目でよろしいかと思っています。

□ どうもありがとうございました。それでは○○委員、先ほどの件をどうぞ。

○ 若干コメントを申し上げさせていただきたいのですけれども、消費者保護条項の問題は、恐らく3つの論点があるかなというふうに思っております。
 第1点は、そもそも消費者が仲裁合意というものの意味を理解できるのかどうかという問題だと思います。
 第2点は、消費者が仲裁合意の意味を理解できるような適切な方式で仲裁合意がされているのかどうかという問題だろうと思います。
 第3点としましては、現実に行われている仲裁合意において、適切な仲裁機関や仲裁人が指定されているのかということだろうと思います。
 第1点のところでございますけれども、恐らく仲裁合意の意味自体は、ほとんどの消費者には理解できるだろうと思います。重大な法的効果を持つ行為でありますけれども、だから理解できないということではなくて、基本的には裁判に代わるとか、裁判で争えなくなるということで、意味自体は極めて明瞭だろうと思っております。
 問題は、第2点の方式のところでございますけれども、これはおそらくケース・バイ・ケースかなというふうに思っております。
 先ほど御紹介しました建設工事紛争審査会の例で申し上げますと、若干の例外はございますけれども、多くの場合には、約款の一条項だけということではなくて、独立の書面に契約書とは別に記名、押印するという方式を取っているということでございます。
 第3に、適切な仲裁機関なり、仲裁人が指定されているのかということですが、先ほど事業者団体というようなお話もございました。事業者団体がすべて不適切だということでもないと思いますけれども、これもおそらくケース・バイ・ケースかなというふうに思います。
 これも建設工事紛争審査会の場合で申し上げますと、先ほど説明では飛ばさせていただきましたけれども、最後の12ページに建設業法の条文を少し付けさせていただいておりまして、建設工事紛争審査会は、法律に基づいて行政庁に設置された仲裁機関でございまして、委員は人格が高潔で、識見の高い者のうちから任命するということになっております。そして、3名の仲裁人のうち、少なくとも1人は弁護士資格を有するものでなければならないということで、手前みそではございますけれども、信頼に値する仲裁機関ではないかというふうに考えております。
 したがいまして、おおよそ消費者は仲裁合意の意味は理解できないのではないかとか、適切な方式で仲裁合意が行われていない場合が多いとか、あるいは適切な仲裁機関や仲裁人が指定されていない場合が多いというような前提で考えることはできないのではないかなというふうに思っております。
 ですから、よくない仲裁合意あるいはよくない仲裁があるから、すべての仲裁について無効または取消しの制度を導入するというのは、やや短絡的と申し上げてはあれですけれども、やや議論としてはいかがなものかなというふうに思っております。そういうものを防ぐためにどういう選択肢があるのかというのを少し前広に御議論いただければありがたいと思っております。
 私が最も懸念いたしますのは、そういう無効、取消しというような特別な条項を仲裁法に置きますと、仲裁は消費者には理解しにくい非常に危険なものであるとか、あるいは適切でない仲裁が現実に蔓延しているというような、仲裁に対する不信感と言いますか、警戒感と言いますか、そういうものを国として法律で公に認めてしまうということにつながらないかということでございます。
 そういうイメージが仲裁に対して形成されてしまいますと、よい仲裁も含めた仲裁全体に対する、言わば委縮効果みたいなものが働くことになってしまうのではないかと。お湯と一緒に赤ん坊も流してしまうということになってしまうのではないかというふうに思っております。
 ついでに申し上げますと、ADRの拡充・活性化という基本的な方向にも逆行するのではないかというふうに思っております。
 仲裁にはいろんなメリットがあるわけでございますけれども、建設工事紛争審査会の場合には、専門技術的な紛争を簡易、迅速に処理しているということで、先ほどの資料にもありますように、消費者からの申立てというのも非常に件数が多いわけでございまして、ある種消費者保護のために仲裁制度が利用されているということも言えるのではないかと思っております。
 また、事業者もいろいろな事業者がいると思うのですけれども、まともな事業者にとりましては、仮に仲裁合意をしておりましても、本当に仲裁で紛争を解決できるのか、それとも訴訟でやらざるをえないのかということが、消費者の判断だけで左右されるということにもなりますので、立場として非常に不安定になってしまうと。そういうのは法の下の平等という観点からいかがなのかという懸念もなしとしないということでございます。
 仲裁合意の有無というのは、具体の事案に即して判断する必要があるというふうに考えておりまして、建設工事紛争審査会の実務でも、仲裁手続の開始に当たりましては、この点を十分吟味するようにいたしております。
 仲裁合意の成立について、約款の条項しかなく、若干疑義のある場合には、改めて別途仲裁合意書をつくっていただくということもやっておりますし、判例でも私の理解するところでは、単に約款に仲裁条項があるというだけで仲裁合意を認めているわけではなくて、約款の読み聞かせをしたかどうかとか、業者の方でどういう説明をしたかとか、それまでに類似の約款を使ったことがあるかどうかというような事情を総合的に勘案して判断しております。
 したがいまして、懸念されるようなネット取引などにおける約款の仲裁条項については、効力を否定されるという場合も多いのではないかというふうに思っております。ですから、無効、取消しという手法で対応するよりも、むしろ消費者契約における意思表示の効力一般の問題であるというふうにとらえた上で、仲裁の意味というものをよく理解していただくという啓発活動を行っていくとか、あるいはいろいろな約款を改正して、適切な仲裁合意の方式を普及させていくとか、あるいは適切な仲裁機関、仲裁人を支援し、伸ばしていくということで、この問題には対応していくべきではないかなというふうに考えております。
 消費者契約における意思表示の効力一般ということでとらえますと、今の消費者契約法で十分対応できているのかどうかという論点もあろうかと思いますので、むしろ仲裁の問題というよりは、約款規制と言いますか、仲裁は1つの例かと思いますけれども、消費者に不利な条項が知らない間に約款の中に紛れ込んでしまっていないか、そういう場合には、その効力を否定する必要があるのではないかという、やるのであればむしろ約款規制一般の問題として取り組むべきではないかというふうに思う次第でございます。

【消費者保護について 〜1 消費者と事業者の間の仲裁契約の効力について〜】

□ ○○委員、○○委員、どうもありがとうございました。
 それでは、具体的に資料に入らせていただきます。資料25の「1 消費者と事業者の間の仲裁契約の効力について」というところでございますが、まず事務局からこの部分の説明をお願いいたします。

● 枠内のそれぞれの考え方について説明します。
 2ページ目の説明の記載に従って、まずD案から説明をしたいと思います。
 1の枠内のうちD案は、消費者と事業者間の仲裁契約については、消費者契約法の規律にゆだね、その限度で消費者保護を考慮すれば足りるという考え方です。
 ただし、この考え方によると、仲裁契約中のどのような条項に消費者契約法が適用になるのかが明確でないという点は問題となり得ると思われます。
 例えば、消費者と事業者がともに東京に居住しているのに、仲裁地が沖縄と合意されているような場合を考えますと、消費者契約法10条の任意規定に比して、消費者に一方的に不利益となるかが問題となるわけですが、モデル法20条によると、仲裁地については、当事者の合意がない場合には、仲裁廷が当事者の利便を含む事情を考慮して決定するということになっています。
 この場合に、任意規定と比して不利益か否かということが、仲裁廷が決めるということとの関係で、一義的に明確ではないのではないかということが問題になるわけです。
 C案は、D案のこのような問題点を踏まえて、消費者と事業者の仲裁契約のうち、ある一定の内容のものについては、効力を制限するという考え方を取ったものです。
 この考え方を取った場合、どのような場合に仲裁契約の効力を制限すべきなのかにつき、消費者契約法を参考にしつつ、なお検討する必要があると思われます。
 これらの考え方に対し、仲裁契約が訴権の剥奪という重大な効果を伴うものであることから、消費者の保護を徹底するために、仲裁契約の内容に関わらず、一律に規制するという考え方もあり得るところです。ただし、消費者を当事者とする仲裁契約をすべて無効とするとの考え方もあり得ないではないわけですが、過度の規制ではないかとも考えられるところです。
 そこで、消費者が仲裁手続を理解して手続を進める場合にまで仲裁契約を無効にする必要はないという前提に立った場合に、A案及びB案が考えられるのではないかということで記載しているところです。
 A案は、消費者と事業者が紛争発生前に結んだ仲裁契約は、消費者が仲裁の意義を理解せずになされることが多いと思われることから、これを一律に無効とし、ただし無効の主張権者を消費者に限るとしたものです。
 また、B案は、消費者と事業者の仲裁契約も有効であることを前提に、仲裁によって紛争を解決しようという消費者の意思を担保するために、仲裁手続開始後の一定時期まで、消費者からの解除権の行使を認めるとするとともに、仲裁廷に対し、消費者へ仲裁の意義等について説明する義務を課すという考え方です。
 この考え方は、割賦販売法等におけるクーリングオフの制度と類似する考え方であるということができます。ただ、手続安定の見地から、消費者の解除権の行使を仲裁廷の説明義務違反の程度とは切り離して考える必要があるのではないかと思われます。
 このA案及びB案を簡単に整理したものを3ページの6に記載しました。
 A案では、無効を消費者からのみ主張できるとするほか、無効の主張時期を制限することが必要だと思われます。
 また、仲裁廷は、仲裁契約が無効であることを前提に呼出しや通知を行うことになりますが、これが妥当なのかどうかということが問題になるところです。
 一方、B案のように考えた場合は、消費者が解除権を行使すべき時期を本案の答弁までとすることが妥当かどうか。その場合、本案の答弁をしたら、直ちに解除権は失効するか、一定の冷却期間的なものを設けるのか、更に消費者が手続を懈怠し欠席したときに、解除権を奪うかどうかということも検討すべきであると思われます。
 なお、A案及びB案を具体的な事例に当てはめた場合、コメントに挙げたような事例において差異が出てくることになります。
 特に1の(1)の場合、すなわち、事業者が消費者を相手として仲裁を申し立て、これに対して消費者が審問に欠席し、または答弁書を提出しなかった場合にどのように考えるかが異なってくると思われます。
 それぞれの考え方の問題点も指摘していただきながら、どのような考え方をするのがよいのか御意見をいただきたいと思います。
 なお、付言しますと、本日の午前中にも消費者問題について、幾つかの意見書が事務局の方に提出されております。これは少し時間的に間に合わなかったこともありまして、皆さまのお手元には配布しておりません。
 1つの意見は、事前にお配りした全国証券問題研究会と同じような問題意識で、先物取引についても仲裁の適用対象から外すべきであるという考え方が1つございました。
 もう1つは、消費者については仲裁から外すべきであると、絶対無効の考え方についての御意見もございました。これは次回までにお手元に届くようにしておきたいと思いますが、そういう意見もあったということを念頭に置いた上で御議論いただければと思います。

□ それでは、これが効力の問題で一番最初の難しいところでございます。A案からD案まで4つの案が並べてございますけれども、どなたからでも結構ですので、どうぞ御自由に御意見をお願いしたいと思います。

○ A案の意味でございますが、これは要するに将来の争いに関する仲裁契約については、消費者は無効を主張できるという御趣旨でございますか。

□ はい。

○ 順番に申し上げたいと思います。まず、A案は、今御説明がありましたように、仮に無効と構成するとしても、無効を主張できる時期を制限し、かつ無効を主張できる者も制限するという仕組み方になろうかと思います。
 そうしますと、実質的には取消しとほとんど異ならないということになり、これを無効で構成することは、3ページの下から10行目以下で指摘されている問題も含めまして、かえって混乱を招くことになろうかと思います。
 もちろん、資料の4ページ以下で挙げられておりますように、無効と解除とでは、若干の効果の違いがあることは確かですが、いずれも瑣末な問題であり、どちらかで仕組むのであればB案の方になるということになろうかと思います。
 B案ですが、1点B案でよくわからないのは、B案ではA案と違って将来の争いに関するものに限定しておりませんが、現在の紛争に関して仲裁合意が結ばれた場合を解除権の対象にする必要はないと思われますので、仮にB案を取るとしても、将来の紛争に関する仲裁契約に限るということになろうかと思います。
 このA案とB案をD案と比べた場合でありますが、結論としましては、私はD案がよいのではないかと考えております。
 3点ほど挙げたいと思います。
 第1ですが、この後、議論されます消費者を一方当事者とする仲裁契約の方式の問題というのが別途ございます。1の効力の問題と、2の方式の問題というのは、論理的には両方重畳的に課すということもあり得ないではありませんが、諸外国の立法等を見ますと、どちらかを選択するという選択的な問題としてとらえているのが一般的ではないかと思います。
 そうしますと、2の議論のときに申しますが、私は方式の制限で対応するのがよかろうと思いますので、効力の制限というのはいかがなものかと考えております。
 2点目ですが、消費者を一方当事者とする仲裁契約の効力を制限したいという議論の基礎は、先ほどからるる説明されておりますように、仲裁契約が訴権の剥奪という重大な効果を招くということだろうと思います。
 ただ、訴権の剥奪ということを取り上げますと、むしろ不起訴の合意の方が仲裁契約よりもより深刻であります。なぜならば、不起訴の合意の場合には、訴訟にも訴えられないし、仲裁にも訴えられないということですから、より紛争解決の道は閉ざされるということになります。
 ところが、仲裁契約にのみ効力を無効ないしは解除できるという規定を置いて、不起訴の合意の方を放置しておくということが、立法的な整合性を維持できるのかという疑問がございます。
 この問題は結局、一般的な消費者保護の立法に委ねることが規定の整合性を持たせるということを導くわけでございまして、基本的には消費者契約法の規律に委ねることが望ましいと考えます。
 もちろん、消費者契約法の内容がそうした目的を達成するために十分ではないという議論もあり得るかもしれませんが、それは消費者契約法の問題になろうかと思います。仲裁法でのみパッチワーク的に手当てをするということの問題も別途生じるというふうに考えております。
 更に、これは先ほど○○委員からの御指摘もありましたが、消費者契約法があるにもかかわらずA案ないしB案のような規定を別途設けますと、仲裁をことさら敵視した規定が置かれたという実質を帯びる恐れを危惧いたします。
 3番目は、やや細かい点でございますが、諸外国の立法でこういう例がどれほどあるのかという問題であります。基本的には、さほど諸外国ではこういう規定が置かれている例は多くないと理解しております。
 ここでは、スウェーデン法が挙げられておりますが、一読したところによりますと、スウェーデン法は、消費者を一方当事者とする仲裁契約のすべてについて及ぶものではなく、更にその一部に限定をしているように思われます。したがって、御提案のA案ないしB案とは異なるのではないかと思います。
 香港法についてはよくわかりませんが、いずれにいたしましても、消費者契約法のような一般的な消費者保護法規を有している国の中で、更にA案やB案のような規制を課している国がどの程度あるのかということを伺いたいと思います。
 以上のように考えますと、D案は、消費者契約法と適合的でありますし、2の方式規制と組み合わせることで目的は達成できるのではないかと考えております。
 ちなみにC案でございますが、これは適切な類型をくくり出すことができるのかどうかというところに懸かっておりますので、その内容が現時点でオープンになっていない以上、コメントは困難ではないかと考えております。

□ どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

○ 私は、基本的にはただいまの○○委員の御意見に賛成なのですが、消費者契約一般の問題としてとらえると考えました場合に、D案だけなのかどうなのかというのもあろうかと思います。
 と言いますのは、○○委員が提起された問題が、消費者が知らないうちに約款の一条項として重大な法的効果を持つ条項が紛れ込んでいるという問題でありますので、それが今の消費者契約法4条、10条の規律だけで十分なのかどうなのかと。仮に消費者契約、約款一般の問題に引き直して考えた場合にも、そういう問題があろうかと思いますので、そういう意味では、むしろE案と言いますか、今の消費者契約法4条は、事業者側の何らかのアクションと言いますか、誤認させるような説明というのを前提にしておりますので、さりげなく約款の中に何か問題がある条項が入っているというものも消費者契約法で対応できるようにする案もあるのではないかというふうに思います。
 ちなみに、韓国では約款の規制法があるというふうに聞いておりまして、そこでは今○○委員のおっしゃったような不起訴合意のようなものも含めまして、不当な条項を規制している。これによって結果的に不当な仲裁合意と言いますか、約款に仲裁合意が紛れ込んでいるというものを防止できるというふうに聞いております。

● 今の御意見というのは、E案というふうにおっしゃいましたけれども、仲裁法の中に特段の規定は設けないということでは同じなのですね。

○ 同じでございます。

● むしろ、約款規制法を考慮すべきではないかということですね。

○ 新法なのか、消費者契約法の改正なのか、どちらかわかりませんけれども、そういうことです。

□ ほかにいかがでしょうか。

○ 私は、まだ十分確信を持った見解を持ち合わせていないのですが、今、○○委員、○○委員の御指摘というのは、極めて説得力があるものだったと思うのですが、なお、B案的な解決策というのも検討に値するのではないかという印象を持っておりますので、一言申し述べさせていただきます。
 私は、消費者の問題の規律が必要になるのは、先ほど○○委員がおっしゃったように、消費者に仲裁条項の意味が十分理解できないかどうかという問題が1つあるわけですが、理解できないということの意味なのですが、文言の意味は理解できて、効果は理解できるとしても、契約締結の段階では、消費者は紛争解決方法の問題というのを、それほど真剣にとらえないのではないかという懸念が1つあるのではないかと思っております。
 通常、自分が契約を締結する場合でも、普通は契約がうまくいく場合を念頭に置くわけでありまして、それについて紛争が起こって、それについて何らかの解決が必要になるような場合をも考慮して契約を締結することが期待できるかというと、そこには疑問があるのではないかということが、この問題の趣旨ではないかと理解しております。
 訴訟法でも、これは○○委員のペーパーにもございましたが、合意管轄に関して同じ問題がありまして、実際上、合意管轄については数多くの紛争が発生しておるわけであります。それを見ると、消費者は裁判が起こった場合のことまで十分考えて契約を締結しているというふうにはどうも思えないわけです。
 新民事訴訟法では、この問題については、合意管轄の効力は認めるけれども、移送を認めてその専属性を事実上否定するという形で問題を解決したわけでございますが、そのときにも方式規制というようなドイツ法的な規制が議論になったように記憶しておりますけれども、それで十分かという議論はあったところであります。その点で、方式規制で十分に規制し切れるかどうかということ、それで十分かどうかということについては、なお慎重な検討が必要ではないかと思っております。
 そういう意味では、規制の必要性というのは、ひどい仲裁だから規制するかということももちろん1つあるわけですが、やはり、仲裁とともにもう1つの紛争解決の本来的方法である訴訟のような法定の手続によらず、一審ですべてが決着してしまう仲裁で、本当に自分の紛争がそれによって解決されてもいいのかどうか。実際に紛争が起こってみて、それが自分にとってどういう意味を持っているかということを消費者が把握しなければ十分な選択はできないのではないか。そういう意味では、仲裁手続がどんなものであるかということとは無関係に規律するということも十分にあり得る選択肢なのではないかというふうに思います。
 例えば、B案的な規制をした場合に、それが国家が仲裁に対して、一定の否定的な評価をしているかということになるかというと、必ずしもそうではないのではないかと思います。
 クーリングオフは、もちろん割賦販売について、このような規制をしておるわけでありますが、それは国家が割賦販売を否定的にとらえているということを意味しているわけではなくて、割賦販売というものの健全な発展のためにこのような規制が望ましいという判断をしているにとどまるわけでございまして、仲裁においても、仲裁というものの健全な発展のためにこのような規制をするということで、別に仲裁自体を否定的に評価しているということには必ずしもならないのではないかと思います。
 選択肢としては、A案的なものも考えられると思いますが、これは先ほど○○委員が詳細に御指摘になったのと同じ印象を持っておりまして、また一律無効というのは、事務局から御指摘のあったとおり、消費者にとって利益となる仲裁というのももちろんあるわけでありますので、そのような規律を取るべきではなかろうと、そういう意味ではB案が相当ではないかと思います。
 ただ、今の私の議論からすれば、先ほど○○委員が適切に御指摘になったように、将来の争いに関するものについての規制で十分だろうというふうに思います。
 なお、先ほど○○委員が御指摘になった不起訴の合意との権衡という問題については、私自身まだ十分、腑に落ちる見解を有しておりませんので、なお確定的にB案が望ましいということではありませんけれども、今お話ししたような趣旨から、B案はなお検討に値する選択肢ではなかろうかという印象を持っております。

○ およそ制度をつくる場合に、その制度がどういうインセンティブを持つかということを十分考える必要があるのではないかというふうに思います。契約締結時点では、紛争解決方法まで十分考えていないのではないかというのは、○○委員のおっしゃるとおりではないかというふうに私は思います。
 ただ、それを前提として制度を仕組みますと、要するに現状を追認すると言いますか、契約時点でそこまで考えなくてもいいというインセンティブが働いてしまうのではないかと思うわけでございます。
 ですから、今、司法制度改革の理念というものが、事前規制型、事前調整型社会から、事後監視型社会に移っていこうとしているわけですから、およそ契約をするからには、将来何らかの紛争が生じた場合には、それを何らかの方法で解決する必要があるというところまで頭に入れて契約すべきではないかというふうに世の中は変わってきているのではないかと思うわけでございます。
 割賦販売法がそういう事前規制の思想でできているかどうかというのは、私は判断する知見がございませんけれども、非常に懸念しますのは、ちゃんと考えなくてもいいんだというふうになってしまう事態は避ける必要があるのではないかということでございます。

○ 1点付け加えたいと思います。B案を取るか、D案を取るかというのは、内容の問題というよりも、方式の問題の側面が大きいようにも思います。つまり、D案を取る場合に、内容規制が一切要らないという趣旨ではなくて、それは仲裁法に置くのではなく、消費者保護の一般的な法規である消費者契約法その他の法規に委ねて統一的な規制をすべきだということですから、内容規制が要らないという趣旨ではもちろんないわけであります。
 主要な諸外国の例を見ましても、先ほど来、例に出てきたドイツ法であるとか、韓国法、あるいはニュージーランド法、いずれも内容規制を仲裁法では置いておりませんが、それは内容規制が必要ないという趣旨ではありませんで、消費者保護の一般法規がそれをカバーしているということであります。
 イギリス法を見ますと、消費者保護に関する条文というのはあるのですが、その中身は結局消費者保護に関する一般法規を引用しているということで、やはり規定の仕方としては、一般法規にこれを委ねて、他の契約と整合的な規定にしているということであります。
 繰り返しになって恐縮ですが、不起訴の合意の問題もあれば、一般の実体的な契約の問題もある中で、仲裁契約のみをA案やB案のような形で取り上げることが果たして妥当かという問題であるということを、もう一度述べておきたいと思います。

○ 若干補足ですけれども、この間、消費者問題の弁護士会の委員会の方であるとか、あるいは消費者問題を扱っている方の意見も聞きました。
 そうなりますと、かなり厳しい見方が多くて、要するに消費者が理解するとか、しないとかという次元で議論するということではなくて、やはり先ほど○○委員がおっしゃったとおり、仲裁合意というのは、事前に消費者の意識というのは、そこまで向かっていないわけです。どうしても物を買うとか、あるいは何かサービスを受けるというときには、それをしたい方が先に立ちますので、必ずしも契約書の中身を十分検討しているものではないという観点です。
 およそ仲裁は、消費者契約については適用すべきではないという非常に強い意見さえあったのです。しかし、そこまでは強過ぎるとしたら、少なくとも事前の合意については、これは効力を認めないという形に是非してもらいたいという意見が強かったのです。
 日本は、弊害がどこまであるのかというのは、まだ今のところ仲裁が行われていないからないのでしょうけれども、今後仲裁法ができて、そういうことを前提とすると、業者の中には、いろいろと問題になる人が出てくるのではないかという懸念は、かなり述べられまして、とりわけアメリカでそういう事前仲裁の問題の弊害があるということを、かなりの方がおっしゃっていました。
 その中で、ヨーロッパの方は、先ほど出ていましたEU指令があるので、それに基づいて、イギリスとかフランスとか、どちらかと言うと、消費者保護の規定をカバーしつつあるようです。この辺は、私も専門ではないのではわかりませんけれども、やはり何らかの消費者保護の規制を置くというのが、世界的なことだろうというふうに思います。
 なお、○○委員のところのような、ちゃんとしたところがやっていることと、どういうふうに規定すれば、どういうふうになっていくのかというのは、今後の検討課題だと思うわけで、確かに消費者の方が言っているのも、よからぬ弊害の方を主としておっしゃっていることは事実だと思います。
 ですから、私どもは中央建設工事紛争審査会のやっていることであるとか、役目を否定するというものではないのです。ただ、やはり法律で事前の合意をどうするのかというを考えなければいけないのだろうと思います。
 A案かB案かということについて、私個人的にはA案もしくはB案というぐらいのことしか今のところはありません。B案でもそれなりに運用されればできるのではなかろうかというふうに考えております。

□ この問題はかなり世界観が対立するところでして、消費者問題について日本の仲裁はどういう態度をとるかというのが、これからの仲裁の動き方に大きな影響を与えると思うのです。我々もこの点は相当腹をくくって慎重に検討して、じっくり議論をしたいというふうに思って、今日で結論が出る話では全然ないと思っておりますので、どうぞこれからも考えていただきたいと思っております。
 ○○委員に少し私からも質問をしたいのですけれども、UNCITRALは、あれだけ暫定保全処分の執行力などについて検討しているのですが、この問題については、どんなふうな議論がなされているのでしょうか。

○ UNCITRALの国際モデル法は、国際商事の事件に限定してとりあえず立法しておりまして、消費者が一方当事者として登場してくるということを基本的には想定しておりませんので、議論はしていないということだろうと思います。

□ 事務局に私が聞くのもあれなのですが、ここでC案というようなものを考えていますけれども、C案というのは実際には具体的にかなり難しいことになると思うのですが、何かヒントみたいなのがあるのでしょうか。

● C案の場合に、具体的にどういうことが考えられるかというと、2つぐらい考えられるかと思っているのですが、D案で任意規定を基準として考えるという場合の任意規定というのが非常にわかりづらいので、1つはそこを飛び越えて訴訟との関係で考えるというのは、1つのやり方だと思うのです。
 もう1つの考え方は、個別具体的に、先ほど仲裁地ということを問題にしましたけれども、仲裁地の場合だとか、仲裁人の場合だとか、いろんな場面場面をすべて取り上げて、すべてについてどうなるのかということを、任意規定に代わるものとして、基準を書き切るということも1つはあり得るんだと思います。
 ただ、そうすると、消費者保護の規定ばかりが仲裁法の中でたくさん占めてしまうというのもどうかなという感じもしないではありません。そういう方向性とか、その辺のところについても何か御意見があれば伺っておきたいと思っています。

□ わかりました。何か裁判所の方はどうですかと言われても少し困るかもしれませんけれども、何かお考えがあったら聞かせておいていただければと思います。

○ 個人的な印象になりますけれども、先ほど○○委員がおっしゃったのに非常に共感を覚えました。いざ紛争になったときに、その条項の持つ意味を本当に改めて考えるという消費者が非常に多くて、更に、例えば証券取引とか、貸金業とか、いい話だから早く取引に入りたいというときに取引のために必要な書類ですと言われて盲目的に書いてしまいましたというような話が非常にたくさん出てまいります。
 そういうことを考えますと、消費者契約法というような形で実質的に立証責任を消費者の方に負わせていくような制度というのでは、本当に保護が図り切れるのかなというところがありまして、個人的には○○委員の御見解に賛成させていただきたいと思っております。

○ 紛争になってから仲裁合意をするのは、確かにそれで結構だと思いますが、現実に私どもがやっていますのを見ましても、事前の仲裁合意がほとんどでございまして、いざ紛争になってから仲裁合意できるかというと、なかなか難しいというのが実態でございます。合意できないなら仲裁合意なしというのは当然ではないかという議論があろうかと思いますけれども、結局消費者の保護ということを考えますと、事前に仲裁合意をして、しかるべき仲裁機関で迅速な紛争解決をする方がよいという場合もあるわけでございまして、そういうのを−−消費者から有効と言えば有効と言えるのでしょうから、否定するわけではないのでしょうけれども−−基本的に事後的な合意でというふうに考えるのはどうかなというふうに思うわけでございます。

○ 私は、消費者保護の観点について、不勉強でよくわかりませんが、皆さんの意見を拝聴しておりますと、結論的には仲裁契約の方式の部分で規定することでおそらく足りるのではないだろうかというふうに思っておりますが、ただ、選択肢としての検討の余地としては私はB案あるいはA案があるかと思います。A案とB案というのは、実質的にほとんど違いがないように思うのですが、B案は仲裁廷による説明義務を課しておりますが、それ以外の部分については、両案に実質的な違いがないように思われるのです。要するに、消費者の方から有効な仲裁契約について、無効を主張できる、あるいは取り消すことができるということですので、仲裁契約自体は有効に成立したものを消費者がオプション権として裁判への道も選ぶことができるということが、A案ないしB案だと思うのです。
 したがって、私も見方がよくわからないのですが、EU指令が、消費者に裁判と仲裁のどちらかを選ばせる権利を与える限り、不当条項に当たらないというようなことを内容としているものだとすれば、消費者の方から仲裁合意を撤回する権利を留保させるということ自体が、いわゆる仲裁を敵視するという意味に直接つながるものではないという感じがしております。
 ただ、もちろん、建設工事紛争審査会の仲裁というのは、長きにわたって実施されておられるわけですから、それを維持、発展させるということは確保するとして、一般論としては、A案、B案というものの検討の余地はまだ若干あるのではないかと思っております。

○ 今、○○委員がおっしゃったのですけれども、本当に事前に制度の趣旨をよく理解されて、それで仲裁がいいと思われた方であれば、紛争が起こった後に仲裁制度のよさをもう一度説明して、やはりそちらの制度でいきましょうということになられると思うのです。
 そこでもって翻意される方というのが、果たして本当に真剣に紛争になった場面を理解していたのかということを考えますと、事後的な合意は皆さんいいのではないかということですので、事前に奪ってしまうということまでしなくても、事後に了解を求めれば、それが合理的だと思われる方は乗られるのではないかというのが、素朴な疑問なのですけれども。

□ ほかによろしゅうございますか。どうぞ。

○ まだ、この問題は、座長がおっしゃったように、引き続き検討しなければいけない問題だと思いますが、冒頭におっしゃった国際的な動向を注視してという点にも十分注意を払って議論が進むことを希望したいと思います。
 内容規制、方式規制それぞれにつきまして、諸外国がどういう立法をしているのかという点で、我が国の消費者だけが諸外国の消費者とは異なるというような議論にならないように、なるべく普遍性のある形で立法するということが望ましいと思います。
 特に、先ほど来、こういう規定を置くと仲裁に対して否定的な印象を与えるかどうかという議論がありましたが、現時点で我が国の仲裁法は、仲裁制度に対して非常に不親切であるとか、否定的であるという国際的な印象を持たれておりますので、そうした現状も十分勘案しながら、なるべく諸外国の立法と比べて特異な規定を置かないようにということを念願しておきたいと思います。

○ それとの関係で、事務局に対してのお願いなのですが、EUディレクティブの趣旨、多分イギリス法はそれを入れているんだろうと思うのですが、「法の適用されない仲裁によってのみ紛争を解決することを要求し」という文言の意味が何なのかということで、広く読めば、要するに裁判ではなくて仲裁を強制するというような条項は直ちに無効であるというふうにも読めるのですが、あるいは「法の適用がされない」というところの内容に規制的な意味が含まれているのかどうか、その辺りが先ほど○○委員が言われた国際的動向との関係でということでEU全体のルールということになりますので、もし、今おわかりであればお教えいただきたいですが、おわかりでなければまたということで。

● 少し私の方から説明させていただきます。御指摘のとおり、EUディレクティブ、それからこれを受けた形で規定しているイギリスの法律、その他EU諸国では、文言上は、「法の適用されない仲裁」という形になっております。
 実は、事務局の方でもこの意味はまだ研究が進んでおりませんで、文言どおりとらえればおっしゃったように、例えば仲裁判断の基準について法律によらないというだけの意味なのか、あるいはそれ以外のことについてまで法律によらないというのが入ってくるのか、つまびらかではありませんので、もう少し研究させていただきたいと思っております。
 それから、一番最初に○○委員の方から、そのほかの国について言及がございました。スウェーデン法については、先生のおっしゃいますとおり、消費者を一方当事者とするすべての仲裁について、片面的に効力を否定するというものではございません。主として、個人的使用のために供給される商品とか、役務またはその他の用益に関するときにという縛りが掛かった無効の条項でございます。これについては、これ以上詳しい資料がございませんので、できるだけ検討してまいりたいと思います。
 香港のものについては、先ほど消費者保護法全般と仲裁法との関係についても少し説明してほしいというお話でしたが、香港については実は仲裁法の方に、消費者を一方当事者とする仲裁については免責約款規制令を適用するという条項があって結ばれておりますので、香港は一般的な枠組みの中で仲裁についても考えているということが言えるかと思います。
 英国の方は、現在の1996年英国仲裁法の前に、消費者に関する仲裁法というのがあったわけでございますが、これが1996年法で廃止されております。英国仲裁法の91条で、金額が少ないものについて、一般的に契約の中で仲裁をするという条項が入っている場合に、これを不公正なものとするというような形で、どうも少額のものについては、仲裁契約ができないような形にしているのではないかと思われるところがあります。以上が、まず比較法の関係です。
 それから、消費者契約法の一般の枠組みでこの問題をどう考えるかという問題でございますが、先ほど○○委員の方からE案ということで御説明がありましたけれども、実は、これも事務局の知る限りですけれども、消費者契約法の制定の過程で、不意打ち防止の規定というのを設けるべきではないかというのが、試案の段階で一旦載ったという経緯がございます。不意打ちというのは、結局、消費者にとって予測できないような条項が、契約の付随的な条項に入っている場合には、その効力を認めないような方向にできないかというような議論があったわけですけれども、最終的には、なかなかその要件・効果を明確にすることは難しいということで、最終的な消費者契約法の成立の時には、規定を設けなかった、むしろほかの一般条項で読んでいくということになったという経緯があるようでございます。

□ どうもありがとうございました。事務局もそういうふうに更に調べてくれるようですので、この問題はまた第3読会で更に議論していただきたいと思います。
 むしろ、方式の方と関連しますので、方式の方に入らせていただきたいと思います。
 まず、説明をお願いいたします。

【消費者保護について 〜2 消費者と事業者の間の仲裁契約の方式について〜】

● 仲裁契約の方式については、ただいま検討していただきました仲裁契約の効力の問題とも関連しますので、先ほどの議論も踏まえて御議論いただければと思います。枠内のA案、B案は、いずれもドイツ法の考え方を取り入れたもので、独立書面や消費者の自署を要求するものです。ドイツ法の規定からもわかるとおり、A案とB案は両立し得る考え方です。C案は、割賦販売法等に類似する規定を設けるという考え方です。これは、原則的には仲裁契約締結の際に事業者に仲裁契約の内容を明示させるものですが、C案の(注)にもありますとおり、仲裁廷が代わってまたは仲裁廷も併せて説明をするということも考えられます。C案の考え方は、1の仲裁契約の効力についてB案を取り、仲裁契約が仲裁手続を懈怠した場合には、解除権を奪う仕組みとした場合の消費者保護の方策となるものです。D案は、仲裁契約の方式について規定することの実効性は余り高くないこと、仲裁契約の効力について片面的無効または解除権を認めるとする場合には、それで消費者の保護としては十分であることを根拠とするものです。
 以上のことについて御議論いただければと思います。

□ それでは、これもA案からD案まで4つありますけれども、どなたからでも結構です。これは効力の問題と絡めながらでも結構でございます。
○ 今、事務局から御説明がありましたように、仮に1のところで効力について何らかの規定を設けるとすれば、方式規制は必要ないと思いますので、D案の御説明にもそう書かれておりますが、D案はそういう前提で読むべきだろうと思います。
 とりあえず、効力に関しては規制を設けないという前提で考えますと、今御説明がありましたように、A案とB案、いずれもドイツ法に準拠しておりまして、しかも両者は相互に排斥するものではないと考えておりますので、A案プラスB案のような形がいいのではないかと思います。
 付け加えますと、先ほど○○委員の御説明がありましたが、私が正しく理解しているとしますと、建設工事紛争審査会の取っておられる方式もA案プラスB案の組み合わせに近いものではないかと考えます。
 また、ニュージーランド仲裁法の11条1項は、ドイツ法とは若干異なるようですが、やはり2つほどの要件がありまして、実体的な契約とは別に仲裁契約の書面が作成されなければならないということと、仲裁契約に拘束されることについての同意文言が入っていることというようなことではなかったかと思います。
 趣旨としては、ニュージーランド法のような規定ぶり、もしくはドイツ法のような規定ぶり、実質において大きな差はないと思いますが、そのような規定ぶりがいいのではないかと考えます。

○ 方式の問題は、事前の仲裁合意の場合もあるし、事後の仲裁合意の場合もあるし、私はこれは両方において、仮に事後の場合であっても形式についてはきちんと考えて、十分認識した上で合意させるという方がよろしいのではないかというふうに思いますが。

□ これは、両方のことですね。仮に先ほどの効力のB案というようなことになると、B案というのは、ここで言うとどこに結び付きやすいか。先ほど少し事務局から説明がありましたけれども、○○委員いかがでしょうか。

○ 私は、○○委員がおっしゃったのと基本的には同じような考え方を持っていまして、つまり、先ほどの私の議論は、基本的には契約締結段階では消費者は紛争解決の方法について、それを真剣に考えないだろうという認識を前提にしておりますので、その段階でこのような形で方式を規制するということには、それほど大きな意味は認められない。
 業者の側から見ても、一方的に後で解除されるかもしれないわけですから、相手方に対して詳細な説明義務を課すというのも制度上はいかがなものかという感じがします。
 ただ、C案の(注)に記載されておりますように、仲裁廷の方で審理に先立って、C案に記載されているようなものを送付するということは是非とも必要であろうというふうに思います。○○委員の今日の資料の仲裁合意書の裏面にこういう文言が記載されているということでしたが、仲裁廷がこういうような文言を記載した文章を送って、特に一方的解除権が与えられるということを事前に明らかにしておいて、期日に出頭した場合には、解除権を行使するかどうかということを判断してもらうということをあらかじめノーティスを与えておくということは必要であろうというふうに思っております。

● 今の○○委員の御発言との関連なのですが、仮に1でB案を採った場合に、事後的に解除されるので、事業者に詳細な説明義務まで課すのはどうかという御意見があったのですが、むしろ、B案的なものを採った場合に、制度として仲裁合意を一番最初にするので、事業者は、そこについては十分説明をしておかなければいけないというのが前提になるのかなと思うのです。そうすると、先ほど○○委員の意見にもあったように、十分説明をしておいて、納得するものについて仲裁に来るというのが本流でなければいけないのかなという気はしていたのですが、その辺は少し違うのでしょうか。

○ 私も更に手厚く事業者に説明させるということは、もちろんあり得るとは思いますけれども、クーリングオフとの比喩で言えば、私の理解は、紛争が発生して仲裁廷に申立てがあって、仲裁廷から呼び出しがあるというのが、まさにクーリングオフの最初の段階の説明であって、それを受けて消費者は真剣に考えて、本当にこの仲裁で解決するかどうかというのを考えて、解除権を行使するかどうかということを決断するという理解になるのではないかと思いますので、クーリングオフとの比喩で考えれば、この(注)のような考え方で、最初のところで更に手厚く規制を掛けるかどうかというのは、また別な問題としてはあるのですが、先ほども申し上げたように、そこまでやるかなというのが私の印象だということです。

● 確かにおっしゃるようなお考えもあるのだろうと思います。結局、クーリングオフの前提としては、消費者がある程度の知識を持った上で解除権を行使するかどうかを自己の判断で決したい、という考え方があります。そのために消費者に情報を与えなければいけないというときに、どの段階で与えればいいかの問題だと思います。
 仲裁廷が呼出しをするときに与えればいいというのは1つの考え方だと思うのです。ただ、懸念いたしますのは、現実に仲裁をやりたいということで、業者の側が仲裁付託の申出をして、仲裁機関から呼出しをした段階で、果たして仲裁のことを何も知らない消費者は、仲裁機関からやってきた郵便を開封するのかということです。郵便を開ければ、裁判と同じようなことが始まってしまって、行かないと場合によっては不利益なことになるんだということが分かりますし、裁判所から来る書面であれば普通はみんな開けるのかもしれませんが、仲裁機関という何も知らないところから来たものについて、開けないで捨ててしまった場合には、結局十分知識を得ることもなく、仲裁廷に出ていって仲裁合意を解除することもできずに、そのまま仲裁判断が出てしまうという問題が1つあろうかと思うのです。
 そうであるとすれば、仲裁について約束したんだぞということを最初の段階で意識させておくという意味では、一番最初にこういうことをやらせておくのも1つの考え方ではないか。
 そこまでやる必要はないのではないかというのは、もちろんあり得ると思います。そういう発想もあって、最初の段階での説明も1つ設けておりますし、(注)のように仲裁廷のところだけでいいではないかという考え方もあるだろうし、いろいろと考えておるところでございます。

○ 今、おっしゃった点の確認ですが、仮に1でB案を取ると、今おっしゃったような場合には、欠席の形で仲裁判断が出されるわけで、本案についての答弁はしていないわけですから、その場合は更に取消しが可能ということになるのではないのでしょうか。

● 欠席の場合の規律を、○○委員がおっしゃるように、後で消費者側が取り消すことができるようにすることもありえると思います。その場合はA案の規律と似たものになります。これに対し、最初に事業者が説明をして、仲裁廷も説明をして、それでも来なかった人については欠席に対して文句を言えない仕組み、つまり欠席で仲裁判断が出た後に、消費者の側からの無条件の取消しは認めないという立場に立つ場合には、相当厳格な説明をしなければいけないのではないかということなのです。
 おっしゃるように、欠席仲裁判断が出てしまった後で、無条件で仲裁契約が解除できるというような立場に立つ場合には、そこまでやる必要はなくなるということかと思いますけれども。

□ 2つの可能性があるということですね。

● はい。

□ 方式についていかがでしょうか。

○ 細かいことで、念のためですけれども、(注)のところに書いてある「送付しなければならない」というのは、つまり、仲裁廷が事前に送っておくということですね。なおかつ、先ほど来の話だと、仲裁廷に出て来た人には仲裁廷がきちんと説明をするということももちろん含んでいるということですね。送付だけではなく、きちんと説明するということも重要だと思いますので。

【消費者保護について 〜3 書面による通知の方法について〜】

□ よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、引き続きまして「3 書面による通知の方法について」の検討に入らせていただきます。まず、これも説明をお願いいたします。

● 当事者に対する書面による通知の一般的方法については、1読、2読でそれぞれ検討していただきましたが、ここでは消費者保護の観点から、当事者が消費者の場合の規律について御議論いただきたいと思います。
 モデル法3条1項の規定は、両当事者が仲裁契約により、仲裁手続に合意したことに根拠を求めるものと考えられますが、消費者保護規定の検討は、消費者が仲裁契約自体を理解していないことも考えられるため、仲裁手続への合意を根拠とした通知方法は採用できないとも考えられます。
 そこで、消費者保護の観点から、(1)により、仲裁契約中で簡易な方法で通知できる旨の合意をした場合、これを無効とするとともに、仲裁法の中に置く方向で検討されている一般的な通知についてのデフォルトルールについても枠内(2)によりその規定の消費者仲裁への適用を否定するとし、もって消費者を当事者とする仲裁については特殊な通知の方法を一切否定し、相手方の住居所等が不明の場合には、裁判所による公示送達の手続を利用するという案です。これは(1)(2)別々ということではなくて、一体のものということを前提とさせていただいております。
 このような考え方の当否とその他の考え方があり得るかについて、御意見をいただきたいと思います。なお、この問題は、仲裁契約の効力についてどのような考え方をするかということとも関連すると思います。詳細は16ページの3、4に記載したとおりですので、この点も踏まえて御検討いただければと思います。
 なお、コメントに記載のあるとおり、消費者保護に関する規定を設けた場合の適用範囲や常に適用させる必要があるかどうか、及び公示送達以外の送達方法についての裁判所による送達の利用の可否についても検討する必要があると思われますので、御意見をいただければと存じます。

□ それでは、通知の方式でございますけれども、いかがでしょうか。これについては、こういう考え方はどうかということで1つの案が具体的に示されておりまして、簡易の通知の合意というようなものはだめだと。最後の住所地に送ればいいというようなモデル法の規定を採っても、消費者についてはそこのところは排除して、公示送達ということにしたらどうかという考え方が示されておりますが、これについてはいかがでしょうか。

○ まず、資料の御説明の細かいことで恐縮ですが、15ページの説明の1というところで、モデル法3条1項についての説明があるのですが、モデル法は当事者間に合意がある場合には、より簡易な通知の方法によることでもよいこととしており云々と続いて、仲裁手続の相手方の手続保障を手厚いものとはしていないという、この説明はモデル法3条1項の説明としては、かなり誤解を招くものではないかと危惧いたします。
 まず、書いてあることとは矛盾はしませんが、簡易な通知の方法でもよいと書いてあるのではなくて、別段の合意がない限り云々と書いているので、簡易な方法も重い方法も当事者の合意があればできるという趣旨ですので、片面的に簡易な方法でよいと言っているわけではないのと、最後の相手方の手続保障を手厚くしていないというのは、これはモデル法の立法者は心外ではないかと思います。
 モデル法の趣旨は、当事者が合意の内容を十分に理解した上で合意を結んだことを前提に、その合意はモデル法の規定に優先すると言っているだけで、今の消費者の議論は、当事者が合意の内容を十分に理解せずに結んだことを前提に議論されているわけですから、その議論をもってモデル法の規定が手続保障を手厚くしていないというような説明をすることは、いかがなものかと考えておりますので御一考いただければと思います。
 以上が、少し細かい話です。
 内容についてですが、通知の点に関してこういう規定を設けるべきかという問題は、今まで議論してきた、1の内容規制の問題、2の方式規制の問題との関係がどうなるのかということが、よくわからないところです。
 と申しますのは、まず、内容規制を置くというのであれば、これは欠席の場合に解除権が行使できるかという問題とも関連しますが、仮にできるのであれば、このような規定は不要ではないかと思われます。
 他方、内容規制ではなくて、2の方式規制を置くという方針を取った場合には、方式規制を置くという発想の根本は、消費者と言えども、約款の中に紛れ込んだ仲裁条項は見落とす恐れがあるけれども、仲裁合意の部分を取り出して、しかも特定的に署名まで要求するということは、内容を理解させれば消費者も適切な判断ができるという前提に立っているはずでありまして、そうしますと、2の点で方式規制を置いた場合もこのような規定は要らないのではないかということで、内容規制または方式規制を置く場合に、更にこの3が必要かという議論がどういうところから出てくるのかというのを伺いたいと思います。
 併せて、諸外国の立法例でこのような規定を置いている例があるのかということも伺いたいと思います。

● おっしゃるとおり、問題設定としては、1の効力の関係で、B案の解除権的規制を取った場合に、しかも仲裁判断が出た以上は、それについて後で仲裁判断自体を解除する、取り消すことができないという前提を取った場合に3のような規制が必要になるのではないかと考えています。
 そのほかの、無効にする場合であるとか、方式規制だけの場合については、基本的には直接結び付くものではないと思います。
 ただ、1のところでD案を取った場合に、一般的な消費者契約法の適用によって規律して考えていけばいいという考え方にとっては、論理必然ではないですが3のような考え方と結びつく余地があるというふうに思っております。
 諸外国の例については、申し訳ないですが、まだ調査しておりませんので、できるだけ調査するようにしたいと思います。

□ 確かに○○委員のおっしゃるように、前の方の効力の点をどうするか、あるいは方式の点をどうするか、そちらの方を厳しくすればするほど、通知の点は特別な規定を設けなくてもよい。前の方を緩やかに認めておくと、こういう個別的なところで消費者保護についてきめ細かな対応をしなければいけないという相関関係があると思います。それはそうとしても、こういう規定はどういうふうにお考えになるかということについて、もし御意見があれば伺わせていただきたいと思います。

○ (2)の、相手方の住所等が不明である場合に裁判所の公示送達手続を利用することはどうかというのがあるのですが、公示送達手続というのは、実際には裁判所の前の掲示板にぺたっと紙を貼るだけで、めくって見ている方というのはまずおられなくて、不明であることが判明したときに、あの手続だけを取ることに果たしてどれだけの意味があるのだろうかという気が少しするわけです。
 公示送達のときに、事案によりますけれども、具体的に裁判所がどんな判断をしているかと言いますと、一般的には住民票とか戸籍の付票とかをまず調査して、そこに送ってみて宛てどころ訪ね当たらないという郵便局の回答書か何かを出してもらい、更にモデル法にもあるのですが、名宛人の最後に知られていた営業所、常居所または郵便受取場所みたいなところについて同じような調査をしてもらって、そのほか特に事件の記録から表われたところで、ここだったらわかるかもしれないというところの調査をしていただいた上で、それで常居所不明であれば仕方がないかなと。
 この判断自体は、おそらく仲裁廷でされるところも裁判所でするところも多分変わらないと思いますので、もしそこまでされるのであれば、消費者の場合にも、むしろ、こういうところを調査してもなお住居所が判明しなかったというのであれば、もう送達されたものと見なすというふうにしていただくのと、余り実質的な違いはないのではないかという気がしまして、果たして裁判所に公示送達の手続をする必要がどれだけあるのかどうかというところも一度御検討いただいてもいいかなというふうに思いました。

□ しかし、裁判の場合には、裁判所はそういうふうに公示送達をやっているわけですね。ですから、仲裁で公示送達を利用することについて、裁判所としては何か困るとか、障害とか、そういうことはおありになりますでしょうか。

○ まず、住居所不明の判断というのが、まず仲裁廷が一旦されるのでしょうけれども、次に裁判所も改めて住居所不明の判断をしなければいけないかという点が、裁判所がどこまでその判断に関わるのかという問題によっては、裁判所の事務量としては、もしかしたらものすごく大きくなるのかもしれないですし、ですから、それをするだけの意味があるのかどうか、ちょっとどうお答えしていいかわからないのですが、何かその辺りのところが少し引っ掛かったということです。

□ ありがとうございました。どうぞ。

○ 先ほど申し上げましたように、消費者保護という観点からすれば、仲裁契約の方式でカバーすることが必要というふうに考えております。それが充足されれば、書面による通知の方法に関して事業者と消費者を別に扱う根拠が、今一つこの説明を読んでいてもわからないし、また諸外国の立法例でもこういった例はございません。したがって、消費者保護という点について、書面による通知の方法に特別の規定を設けることについては、にわかに賛成できないというところでございます。

● 1点補足させていただきますと、モデル法3条の規定自体は、アドホック仲裁もあることから、事業者が相手方に直接申出書を送るという形になって、事業者自体が住居所不明であるかどうかについて判断するという枠組みになると思うのです。
 それについて、事業者がそういうことを判断して手続を進めるということでいいのかどうかということについて疑義をおっしゃっている方もいらっしゃったものですから、こういうような検討項目も挙がってきたところです。その点御了承願えればと思います。

□ はい、わかりました。どうぞ。

○ 今の事務局の御説明と、それから効果の点について期間の追完みたいなものを認める、それは裁判所でやらなければ認められないのかどうかというのはわからないのですが、取消申立ての期間が既に過ぎた後で、なお取消申立ての機会を付与するという道をどこまで与えるのかということと、この公示送達の問題というのは関係し得るということだろうというふうに思います。
 もう1点、(1)の点ですが、これはコメントの2のところで触れられておるのですが、オンラインADRと言われるもの、特にB to Cの紛争においては、オンラインによる解決というのは非常に重視されて、EUなんかでも非常に議論されているというふうに伺っていますので、(1)によってB to Cの紛争についてオンラインの仲裁が一切利用できなくなるということは非常に不都合なことだろうと思いますので、一般的には仮に(1)のような規律をするとしても、その点については是非、なお御検討をいただければと思います。

○ 相手方の住所等不明というのは、そんなに頻繁にある場合ではないと思いますので、裁判所の公示送達手続をお願いしたところで、すごく負担になることはないと思いますけれども、ただ、実際公示送達手続に付するということが、実質的に消費者の保護になっているのかどうかという点については、私は○○委員と同じ意見でございます。
 あと、16ページの一番上の2のパラグラフで、通知の方法についての前提ということで「そもそも、消費者が仲裁契約の内容を理解していないことを前提としている」ということなのですが、私の理解では、理解している場合も、理解していない場合もあるわけでございますので、私は前提自体に異議がございます。

□ わかりました。資料のつくり具合ですね。この点は、よろしゅうございますか。

○ 先ほど少し言葉が足りなかったかもしれないのですけれども、規定の仕方として、これこれとこれこれを調査したときには、その上でここに送ったときには送達があったものと見なすということで、裁判所が実質的に判断している要件を仲裁廷の方とか、−−先ほどの事業者の場合は別になると思いますけれども−−仲裁廷がおられるのであれば、仲裁廷がそれを要件として手続を踏まなければいけないような規定の枠組みが考えられないかという趣旨で申し上げたつもりですので、少し補足させていただきます。

【消費者保護について 〜4 国際的な要素を含む消費者仲裁について〜】

□ それでは、これも全体と絡みますので、先に進ませていただきまして、次は少し国際的な要素を含むということで、少しディメンションが違いますが、これにつきまして御説明をいただきたいと思います。

● 国際的な要素を含む消費者仲裁については、これを一般的に論じるとイメージがわきにくいため、最も問題となり得る例として、日本の消費者と外国の事業者の間で仲裁契約が締結された場合の当該仲裁契約の準拠法について御検討いただき、その議論を踏まえて今後の検討を進めていきたいと考えております。19ページのコメントの1に記載しましたように「日本」「外国」という表現も厳密なものではなく、あくまでも議論の枠組みの整理のために設定しております。ところで、仲裁契約の準拠法については、1読、2読で御議論いただきましたが、そこでは第1に当事者の指定により、第2に仲裁地法によるとする方向で検討が進められているところです。消費者保護の観点から、この点について特別な規律をすることが考えられますが、その必要性の有無を含め御議論をいただきたいと思います。
 枠内のA案は、消費者保護の観点から特別な規定を置くという考え方に基づいたものです。この考え方によると、仲裁契約が日本に密接に関連する場合には、日本法が適用になり、先ほど御検討いただいた仲裁契約の効力等の問題がここにかかることになります。その点の具体的な帰結については説明の2の(2)に記載したとおりです。
 一方、B案は、仲裁契約の準拠法については、特別な規定を置かず、法例33条の解釈に委ねるという考え方です。この考え方によると、日本の仲裁法及び消費者契約法の規定が法例33条の公序の内容となり、外国法の適用が排除される結果、結果的に日本の仲裁法及び消費者契約法が適用されるという考えになるのではないかと思われます。
 A案、B案どちらの考え方がよいのか、あるいはその他の考え方があるのか御議論いただきたいと思います。

□ これは、かなり難しい問題ですけれども、最初にまた、例によりまして、○○委員に基本的な考え方、解説も含めて少し御発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○ 国際私法あるいは国際民事訴訟法の平面で消費者保護をどのように図っていくのかというのは、極めて新しい問題でございまして、まだ定説と呼べるものはございません。
 A案の方ですが、これは密接関連性という要件にかなり含みが残されるわけですが、基本的な発想としては、日本にいる消費者には新たに設けられる日本の仲裁法上の消費者保護を及ぼしていこうという考え方だと思います。
 通常の債権契約の場合につきましては、契約準拠法が何かに関わらず、消費者が住んでいる場所、消費者の常居所地の法律の保護を及ぼす、つまりそこでの保護を奪うことはできないという考え方が、国際的にも非常に強くなっているところでございます。
 訴訟の場合の国際裁判管轄についても似たような傾向がありまして、消費者事件については、消費者の常居所地に国際裁判管轄を認めて、管轄合意の効力もそれを基にして制限していこうという考え方が強いわけでございます。そこでは、事前の管轄合意を規制していこうという考え方も強いわけです。
 A案というのは、このような消費者の常居所地を中心にするという考え方に沿っているのではないかと思います。
 先ほどの効力面の話と当然リンクしてくるわけですけれども、もし効力面についてA案ないしB案のような新しい規定を置くというのであれば、ここのA案というのが有力な選択肢になると思います。
 あと、問題点としては、日本法上の消費者保護を及ぼすわけですが、では契約準拠法が日本法でない、そしてむしろ契約準拠法の方が消費者にとって有利だという場合も当然考えられるわけで、その場合にはどうするのかという点が問題になってきますし、密接関連性というのはどこまで含むものなのかという点も若干不明確だという問題はあろうかと思います。
 B案の方ですが、契約準拠法が外国法であるときに、公序を使って適用による不当な結果を排斥していくというのは、最もオーソドックスな従前の解釈のやり方でございます。
 先ほど申し上げましたように、国際私法、あるいは国際民事訴訟の平面で消費者保護をどのように図っていくかにつきましては、十分議論が成熟しておりませんので、現在の日本の国際私法のシステムとの調和を考えてB案にとどめるというのは穏当な考え方ですし、先ほどの効力面で特に規定を置かないということであれば、当然こういうことになっていこうかと思います。
 ただし、従前の考え方では、公序の発動というのは、ケース・バイ・ケースであって、しかも通説的にはそれはできるだけ慎重にやらなければいけないということになっておりますので、そうすると、果たしてそれで十分明確かつ安定した消費者保護を図れるかという点については、やや問題が残ろうかと思います。

□ わかりました。わかりましたというのは、ある程度の理解ができたという意味で、内容は少しよくわからないのですが、法例33条に任せてしまうと、外国法の適用が排除されても、その行き先は、日本法に返ってくるのでしょうか。先ほど事務局はそういう説明をされたと思いますけれども、B案の場合に、何も規定を置かないで33条に任せてしまった場合に、その後のことが少し心配だと言えば心配なのですけれども。

○ 理論的にはかなりややこしい議論があり、通常の考え方と言っていいかどうかわかりませんが、33条を使って外国法を排除したその後には、当然使うべき法律が欠けることになりますので、それを日本の法律で補充するということになろうかと思います。

○ ここの規定自体も特別で、私は若干奇異な感じを受けました。国際的な要素を含む消費者仲裁における消費者保護ということでございますけれども、ここで言っているのは、若干コメントの部分でも書いてありましたが、日本の消費者、要は国籍が日本の消費者を対象として保護しようというのが御趣旨なのか、消費者の国籍を問わず、日本人であろうが、外国人であろうが、消費者契約であれば、仲裁契約については一定の効力なり方式について特別規定を設けるという御趣旨なのか。
 もし、日本人の消費者を保護するということであれば、当事者の一方が日本人の場合にはさっきの仲裁契約の方式の規定が適用されるということを書けばいいだけのことだと思うのです。そこのところを、どういった仲裁を対象として法を考えておられるのか、仲裁地の問題もありますけれども、まず、人的な問題からすれば、国籍でもって消費者保護というものを考えておられるのかどうか。その辺りがこの内容からわからなかったものですから。

● ここも多分、厳密な国際私法かどうかわかりませんけれども、人を中心に連結を考えていく場合に、おっしゃったように国籍を基準にするという考え方もあるかもしれませんが、常居所地、日本に住んでいる人であれば外国人でもいいという考え方もあると思うのです。日本と連結する場合に何をもって連結するかということ自体が、こういう規律をしていく場合には1つの大きな問題ではないかということで、そこもまだこの段階では特に成案があるわけではございません。国籍ということであれば、先ほど○○委員がおっしゃったようなことになるかもしれませんが、もう少し広い意味があり得るだろうと考えております。ここでA案というのは、非常にふわっとした書き方で、契約が日本に密接に関連すると。一方の当事者が日本に常居所地を持っている場合には、仲裁契約が日本に密接に関連するというふうに普通なるのか、ならないのかも含めて、非常にふわっとしたあいまいな表現にはなっているのです。ですから、どういう規律にするかも含めていろいろ御意見をいただければと思うのですけれども。

○ 身分関係とか家族関係では、本国法というのを使うわけですけれども、仲裁の場合は通常財産関係を念頭に置くわけですので、ここでは国籍ということは、おそらく考えられないと思います。
 ですから、先ほどの私の説明も常居所ということで一本化して説明しましたし、日本に住んでいるのか、外国に住んでいるかで切り分けていけばいいと思います。
 ただ、問題として残るのは、コメントのところにも書いてありますが、日本に住んでいる者は保護する。では、日本の企業が外国の消費者と取引した場合に、外国に住んでいる消費者を保護しなくていいのかと、ここがかなり悩みの深い問題になろうかと思います。両案あり得ると思います。

○ ということであれば、常居所を基準とするのかどうか、あるいはもっと普遍的に消費者というものを保護するというのが立法の趣旨であるとすれば、こういった密接関連性でもって日本法を適用するというようなことの規定を置かずに、日本の仲裁法でもって、仲裁契約の方式を先ほどの議論で出ましたような形で規定をしておけば、日本が仲裁契約の準拠法と指定された場合、日本の立場としては、こういったものしか方式は受け付けないという態度を出すだけで十分だと私は思っておりますけれども。

□ しかし、準拠法が外国であって、日本が仲裁地になっているという消費者の契約については、今のお考えでは被ってこないのではないですか。

○ そういう場合には、仲裁契約の準拠法の決定という問題がまず出てきますね。そこで、日本の仲裁法の適用があれば、日本の消費者保護に関する規定が適用されると。もし、外国の仲裁法が、仲裁契約の準拠法に指定された場合に、先ほど○○委員がおっしゃいましたように、例えば日本の裁判所で妨訴抗弁があったといった場合には、日本の仲裁法が規定している消費者保護の規定の立法趣旨にかんがみて、法例33条の公序の規定によって、外国法の適用が排除されるということが起きるということではないでしょうか。
 ただ、もう一方の考え方としては、ドイツの規定というのは、特に適用関係については、方式についても仲裁地を基準としているようですので、したがって、ドイツの考え方が適当であるとし、仲裁地が日本の場合に、仲裁契約の方式について、例えば自署だとか、独立書面要件といったものを課し、そういった仲裁契約に基づいて出された仲裁判断が確定判決と同じ効力を有するんだというのが日本の仲裁法の考え方だとすれば、仲裁地を基準にして仲裁契約の方式を規律するという考え方は十分成り立つと思います。

● 例えば、将来紛争に関しての仲裁合意は無効であるという外国法を準拠法をとっている場合、日本で方式だけを取っていた場合に、外国の準拠法上では、将来紛争ではなくて事後合意であるから有効であるという適用の場面において、日本法を更に適用した場合に方式に欠けるから無効になってしまうということになっていいのかというのが若干疑問になるのです。
 だから、消費者契約の場合というのは、効力の問題と方式の問題が一体のものなので、方式だけを日本法で切り捨てることでいいのかどうかというのは若干問題があるかなという気はしているのですが。

○ 今の話と少しずれるかもしれませんが、私はこういう規定を置きたいという趣旨自体は十分理解しているつもりですし、仲裁に関する外国の近年の書物を見ても、この種の問題が議論されていることは存じております。
 ただ、その場合に一般にはドイツやイギリスでなされているように、約款規制の一般法とか、あるいは消費者保護の一般法で規制するというのが普通の議論ではないかと思います。
 と申しますのは、先ほど1の内容規制のところで、仲裁契約だけを取り出した場合に、不起訴の合意等との整合性はどうなるのかということを申しましたが、ここでも仲裁契約だけを取り出して日本法が適用されるという規定を置いた場合は、これは先ほど○○委員もおっしゃったかと思いますが、実体契約の方と適用法が分離することになりかねないわけで、仲裁法で仲裁契約だけを規定するのがいいのかという問題は、1の内容規制の場合と同様に、ここでも生ずるのではないかと考えますが、なお、私は国際私法については専門ではありませんので、誤解があれば事務局なり○○委員に補っていただきたいと思います。

□ 特に何か御意見があれば。

○ 一言だけ言わせていただきますと、B案は非常にオーソドックスな考え方ですけれども、最近の私どもの学会のはやりとしては、こういう場合に消費者の常居所地の法律を契約準拠法と関わりなく、常に特別に使っていくと。結論的にはB案と非常に近いところにあるのですけれども、公序ないしは特別連結を使ってという形で触れていただければより説得力が出てくるのではないかと思います。

□ わかりました。それでは、資料25はこれで一応議論していただいたということにいたしまして、それでは、今、3時半でございますので、3時40分まで10分間休憩いたしまして、また開始させていただきたいと思います。

(休 憩)

□ それでは、時間でございますので、再開させていただきたいと思います。
 時効の中断ということでございますけれども、これまでの消費者の問題について何か御発言があったらどうぞ。

○ 私どもは消費者については扱っていないのですが、皆さんの議論あるいは資料などを拝見いたしまして思うところは、まず、消費者というのは仲裁については何も知らない、それから、場合によっては業者が悪いやつだという視点から議論が出発しているような感じがいたしました。
 むしろ英国の仲裁法のように1条項を設けて、消費者保護については別途消費者契約法に委ねるといったような程度の規定の方がよいかと思います。
 と言いますのは、さんざん議論していただいたように、消費者についてのみ、非常に詳しく規定しなければならなくなるのではないかという心配もございますので、一言感想を含めて申し上げました。

【時効中断について】

□ どうもありがとうございました。それでは、よろしゅうございますね。
 それでは、資料26の時効の中断に入りたいと思います。
 まず、事務局から御説明をお願いいたします。

● これまでの議論では、時効の中断の効力を認めることについては御異論がなかったものと思われますが、中断時期に関しては、機関仲裁の場合とアドホック仲裁の場合で格別に考えるかどうか、仲裁手続の開始時期との関係はどうなるかといった点についてそれぞれ御意見をいただいたところです。枠内の考え方は、これまでの議論の中でいただいた意見を基に、時効中断の規定について事務局で案を作成したものです。
 A案は、仲裁判断が確定判決と同一の効力を有するとされていることから、時効中断に関しては、仲裁に付する申出を裁判上の請求とみなすとする考え方です。ただし、具体的な時効中断の時期については、原則として仲裁に付する申出書が相手方に到達した時点とした上で、機関仲裁の場合には、仲裁に付する申出書を当該仲裁機関に提出した時とする趣旨の規定です。
 B案は、モデル法21条と同様に仲裁手続の開始時期に関する規定を設け、この開始時期に時効中断の効果が生ずると考えるものです。この考え方では、仲裁手続の開始時期について、当事者の合意によることを許容しますので、機関仲裁の場合には、規則等で仲裁手続の開始時期を仲裁申立書を機関に提出した時等と定め、この時に時効中断の効力が生ずるとすることが可能であると思われます。ただ、この場合には、当事者が仲裁手続の開始時期として、対象となっている権利の請求とは全く接点のない時期を定めた場合、その開始時点での時効中断を認めてよいかという問題が残りますので、そのような場合の手当てを考える必要があると思われます。
 また、コメントに記載した、時効中断に関して、仲裁に付する申出は書面によることに限るものとすることでよいかについても御意見をいただければと思います。
 以上です。

□ わかりました。時効中断について、今日これだけを御議論いただきたいというふうに思っております。
 A案は、民訴147条のようなことをヒントにつくって、B案は、モデル法に従って仲裁手続の開始ということについて時効中断を認めると、少し2つの考え方が違いますが、どういうものがいいのかということについて御議論いただきたいと思います。

○ 少しわかりにくいので、念のためです。A案の2のところのただし書きの考え方ですけれども、要するに当事者が合意する内容というのは、申出書を相手に送付するということを合意するとなっているのですね。

□ そうです。法人が送付するということを合意しているのです。

● ただ、今少し考えていまして、時効中断との関係で一番重要なのは、その申出書が相手に到達するということが一番重要であると思うのです。その場合、当事者がそれを合意したということが1つの要件だと思うのですが、更に当該法人等が、当事者の合意に基づいて自分でちゃんと送りますということを合意したということまで要件になるのかどうかというのを今検討しているところです。むしろ、それも要件にした方がわかりやすいのかもしれないというふうに思っております。

○ この場合には、いずれにせよ当事者の合意書の中に、機関規則の中の送付する旨の条項を引用しながら合意するというようなイメージなのですか。

● いや、機関仲裁の場合であれば、国際商事仲裁協会さんでも、海運集会所さんでも、機関の方で相手方に申出書を送りますと書いてあるのです。だから、それにのっとりますということであれば、それでもう合意をしているということだと思うのです。 事務局の方では、機関仲裁の場合に、申出書を機関に提出した時に時効中断というのは、法制的になかなか難しいのではないかと今でも思っているのですが、1読でも2読でも、機関仲裁のときは機関に申出があった時に時効中断をするという御意見が非常に強かったというふうに私どもの方では認識しておりまして、なるべくそれに沿うような案をひねくり出してみたのですが、これで条文として立てられるかどうかというのは、まだ検討中というところです。その辺のところも含めて御意見をいただければと思います。

□ このただし書きが、まさにそういうことなのですね。機関仲裁の場合には、その機関に届いた書面は、必ずその機関が相手方に送るということが当事者間で合意されていれば、その機関に提出した時に時効中断の効力が生ずるということを書きたいということで、奮闘していただいたのは、このただし書きの内容だというふうに御理解いただければと思いますが、これは機関の方がいらっしゃいますから、いかがでしょうか。

○ 一見しますと、B案の「当事者間に別段の合意がある場合」でもって包摂されるような感じを受けるのですけれども。ただし書の内容が、今おっしゃられた仲裁機関を対象とされているということなのですが、「法人その他の団体において」と非常に広く書かれておりますね。したがって、どういうものか、この意味が判然としないという部分もあります。おそらく、この部分は規則で手当てされているものであるので、B案の「別段の合意」でカバーされると思いますから、そちらの方がすっきりしている書きぶりかなと思います。

○ A案でもただし書きで随分お考えいただいたと思いますけれども、条項としてはB案の方がすっきりしているかなと思っております。

● B案の場合、先ほど言いましたように、当事者間で仮に、仲裁手続は仲裁申出書を作成した時に開始するというようなことを合意した場合に、作成しただけで提出も何もしていないときには、時効中断は民法上との関係で生じ得ないと思うのです。その場合の手当てが、他方で必要になってくるのかなと思うのです。
 言ってみれば不適切な合意をした場合には、その申出書が相手に到達した時に時効中断が生じるというようなことを何らかの形で、−−書けるかどうか問題があるのですが−−B案の場合にはそういう手当てが必要になるのかなということを若干考えております。

○ A案の方は、1のところで「裁判上の請求とみなす」とありますね。ですから、今言ったA案、B案の違いというのは、当事者の別段の合意で、機関の場合には申立ての時にというのはわかるのですけれども、そうすると「裁判上の請求とみなす」というのは、ある意味では強力な規定になりますね。今、A案の2のことについては、別段の合意のところのただし書きでわかったのです。
 そうすると、B案を採ってしまって、A案の1の「裁判上の請求とみなす」というのは、何か絡めて残すという方法はあり得ないのでしょうか。その方が強力な感じがするのですけれども。

□ A案は、仲裁手続の開始ということではなくて、民法の裁判上の請求に乗せていこうという案。B案の方は、仲裁手続の開始という、そちらの方で規定しようというものですから、少し内容がずれているのです。
 B案は、確かに今おっしゃるようにすっきりしているのですが、では時効中断の時期はいつかというのが、当事者の合意の中に入り込まれてしまっているものですから、外から見えないのです。「当事者に別段の合意がある」の中に、いつ時効が中断するかということが入ってしまっている。それを表に表わしたのが、A案のただし書きで、わかりにくいという御批判はあるかもしれませんけれども、A案のただし書きで書こうとしたことなのです。

○ 基本的に、実際の実務は違うかもしれませんが、アドホック仲裁であろうが、機関仲裁であろうが、考え方というのは、相手方に到達した時に開始するということを大原則にしているということであれば、機関仲裁の場合であっても同じことではないかなというふうに思ってはいるのです。

● そうすると、機関仲裁の場合でも相手方に到達した時に時効を中断すればいいということでしょうか。

○ この考え方を採用するとすれば、そこに違いを設けること自体が余り説得的な意味がうかがえないのですが。

● 1読、2読の時に、むしろ事務局は申出書が相手方に到達した時に時効を中断するということで、統一的に説明してはどうかという案を出させていただいて、わりとそれに対する反対意見が多かったと。

○ 私は反対しましたが、私は申立人の方で時効中断の時期を決定することができるようにした方がよろしいだろうということで、受領日ではなくて、むしろ発信主義を取るべきだということを申し上げたと思うのですけれども。

□ 発信というのは、仲裁機関からですか。

○ いや、申立人が被申立人に対して、仲裁の申立てをするという通知を発した時点です。というのは、住所がわからないとか、いろんな問題が現実にはございますね。そうすると、あて先がわからずに時効が中断しないということは少なからずあると思うのです。そうすると、被申立人の住所地がわからないがために時効が中断できないということを防ぐためには、発信主義の方が適当ではないかということを申し上げたかと思うのです。
 アドホック仲裁では、被申立人が受領した時、到達主義だと、機関仲裁の場合には、発信主義に近いものを設けるというのは、どうも考え方が両方で一致していないような感じがするのですけれども。

○ ○○委員に伺いたいのですけれども、○○委員のところは仲裁の開始とか、手続の開始とか、時効の中断については、規則の中で全然触れていないのですか。

○ 開始日は、申立書の提出日ということで規定がございます。ただ、それが時効の中断の起算点になるのかどうかということは法律の問題ですから、そこはどういうふうになるのかは理解は完全にはしておりませんが、たしか判例にございますね、仲裁手続を開始したときか、何かそういったこと。

● やるべきことをやると。だから、例えば選任が必要であれば選任をしたときですね。

○ 選任がそれに当たるのか、あるいは申立書を相手方に送るのか、それは法律の規定によるのでしょうけれども、必要な手続を取った時ということであれば、必要な手続を取るということは、申立てをする時でしょうから、申立人が被申立人に対して仲裁の申立てをするという時点であっても、判例の立場と抵触するわけではないというふうに思っていますけれども。
 そういう意味で、おそらく解釈としては、○○委員がおっしゃられたように、機関仲裁の場合には申立書が提出された時に時効が中断しているというふうに考えておるのが大方の見方だと思いますけれども。

○ そうすると、今の○○委員がおっしゃるのは、例えばB案の場合には、仲裁に対する申出書が、相手方に到達した時ではなくて、申出書を相手方に送った時と、要するに発信主義を取るという意味のことであって、合意の方はいいわけですね。
 私どもでは、仲裁手続の開始というのは受理した日だというふうにしていますので、それと時効の中断を併せて考えているわけですから。

□ そういう趣旨ですか。

○ 私は、原則は発信主義で採るべきかなと従前にも申し上げたつもりですけれども。

● 発信主義を採るというのは、なぜこの場合に発信主義になるのかという民法の大原則との関係で、なかなか説明はつきづらいかなという気がするのですが。

○ 裁判所であれば、時効の中断の時期は訴状の提出ですね。それははっきりできますね。

● それも発信主義ではなくて、到達主義を取っていて、裁判所に訴状を提出した場合に、それが受理された時には、裁判所という機関は相手方にちゃんと送るということが前提になっているので、その時点で時効中断を認めましょうというのが、時効の考え方だと思うのです。

○ 私は、やはり利用者にとってわかりやすい制度にするべきだと思いますので、アドホック仲裁もありますけれども、実際にほとんど行われているのは機関仲裁でございますので、利用者の感覚としては、仲裁機関に申請書を出して受理されれば、裁判所に訴えを提起したときと同じように時効は中断すると考えるのが自然と言いますか、一番わかりやすい制度なので、そこはそうなるように制度を仕組む必要があるのではないかと思います。

○ 私もそういう趣旨で言ったのですが、それがA案でこういうふうになっているのかなということで、説明の下の3行でございますが、「機関仲裁の場合には、仲裁に付する申立書を当該仲裁が行われる仲裁機関に提出した時(仲裁申立時)に訴え提起と同様に効力を認め」と、これが一番シンプルだし、裁判所に受付になったと同じように、機関仲裁のところで受け付ければ、そこで時効は中断するという仕組みが一番シンプルでいいのではないかなというふうに考えておりますけれども。

○ 私も結論的には同じで、それをどういうふうに法文上表現するかという問題だけなのかなと思っているのですが、A案の書き方は、大変御工夫が見られるわけですが、「法人その他の団体」というのはなかなか難しいのではなかろうかと。個人をディスティンギッシュするのは、なかなか実際は難しいような気がしております。
 B案で実質的にその効果が達成されるのであれば、御説明があったように乗り越えなければいけないテクニカルな問題が幾つかあると思うのですが、これでいけるのであれば、是非B案的な方向で解決を模索していただければと思います。

○ そうしますと「裁判上の請求とみなす」というA案の1の書き方は、B案の1を生かして、なおかつA案の1を生かすような書き方というのがあるのかどうかわからないのですが。と言いますのは「裁判上の請求とみなす」とあえて言う必要があるのかどうかということで、結局仲裁手続の開始なり、仲裁に付する申出書の到達なりがあれば、それは時効中断ですということさえ言えばいいのであって、「裁判上の請求とみなす」ということをわざわざ言うことの論理必然性と言いますか、それがよくわからないというのがあります。
 特に別の場でADRのあっせん、調停などについての時効中断効の御議論があると思いますので、その辺との平仄の取り方を考えると「裁判上の請求とみなす」とあえて言わなくてもいいのではないかというような気がいたします。

○ 私もよくわからないのですが、催告との関係で、催告の効力を生かすという観点からすれば、裁判上の請求か訴えの提起かわかりませんが、みなすという規定があった方がいいのかなという気もしないではないのですが。

● あと、効果の点との関係で、却下だとか、取下げの関係をどうするのか、、理論的な問題としては、権利確定的に考えた場合に、権利確定をしないような、訴え却下とか取下げの場合は効力が生じないということになるので、A案的だとこれを書けばそれで全部民法の規定で処理されると。B案的なものであれば、その場合にどうするのかというのを更に書き切る必要があるということになってきます。
 ただ、ここで一応確認しておきたいのは、機関の場合は機関に申立書を出した時だと、普通のアドホックのときには、個人が相手方に申出書を送って、それが受領された時だという仕切りの実質が取れれば、あとは表現の問題としては、何らか工夫をして実質が取れるようにという御意見が多いのかなと思いますので、努力してみたいなと思うのですが、そういうことでよろしいでしょうか。

□ 内容的にはよろしいでしょうか。

● 若干補足させていただきますと、A案の1というのは、例えば公害紛争処理法の責任裁定の申請で、時効中断に関しては「裁判上の請求とみなす」という規定があるのですが、多分法律の規定ぶりの効率化等も考えてのことだと思うのです。こう規定するとあとは、−−却下というのが仲裁の場合にあるのかどうかはまだ検討が必要なのですが−−取下げの場合等にも読み替え規定を置く程度で済むと。「時効中断の効力を生ずる」というふうに実体的に書きますと、その他の場合についても、多分実体的な規定を置かなければならないのだろうと思うのです。
 A案の方向としては、もともとこういうふうに「裁判上の請求とみなす」というふうにしておきますと、2ページのところに書いてありますが、民法147条第1号の請求になぞらえまして、実際に裁判上の請求はいつ時効中断を生じるかについては、民訴法に規定が書いてあるということになりますので、これと文言的にはパラレルな形でA案の2という肢を書いたつもりなのですが、いささかその内容が複雑怪奇になっておりますので、ここのところは更に工夫を要することではあるかとは思いますが、A案の趣旨としてはそういうことでございます。

□ A案の2の前半は、確かに民訴の147条と同じなのです。ただし書きのところは少し読みにくいと言えば読みにくいけれども、言わんとするところは要するにさっきのようなことなのです。

● なるべく実質を生かすという方向で努力したいと思いますので、それで御容赦願えれば。

○ 3点意見があります。1点目は、機関に申し出た場合には、申出の時に中断するという実質を取っていただきたいと思います。仲裁の場合は、訴権が奪われるわけですから、なるべく訴訟と同じような保護が当事者に与えられることが原則だろうと思います。
 2点目としましては、これも既に議論が十分出ましたが、A案の1の「裁判上の請求とみなす」という趣旨の表現をお採りいただきたいと思います。先ほど○○委員がおっしゃったように、少なくとも民法153条の催告との関係で、裁判上の請求とみなされれば、更に6か月の催告の可能性もあるということで、これも、訴権が奪われる仲裁との関係ではなるべく訴訟と平仄を合わせるべきであろうと思います。
 3点目ですが、2ページのコメントのところにある、時効中断に関して、仲裁に付する申出は書面によることに限るとするかという点は、なるべく書面に限らないような方向で御検討いただきたいというのが、私の個人的な意見でございます。
 言うまでもなく、これからはオンライン仲裁の問題も生じてきますし、訴え提起の場合には現在は訴状という書面によらなければいけないことになっていますが、この点ですら、書面によらなくてもいい方策が現在いろいろなところで検討されていると伺っておりますので、まして今の時点で立法する際に仲裁が書面によることに限るということには強く疑義をとなえたいと思います。

【証拠調べに関する裁判所の援助について 〜1 援助の請求権者について〜】

□ よろしゅうございますか。それでは検討会資料の26は終わったことにいたしまして、次に27でございます。
 27は「証拠調べに関する裁判所の援助について」ということでございますが、これもまた最初に事務局から御説明をいただきたいと思います。

● 援助の請求権者については、枠内のように仲裁廷のみに限るとすることでよいかどうか御検討いただきたいと思います。モデル法では、仲裁廷のほか、仲裁廷の許可を得た当事者にも援助の請求権があるものとしており、当事者が証拠調べに強い利害関係を有していることを考えると、仲裁廷の許可を前提に当事者にも申立権を認めるという規律も考えられます。しかし、そのように規律した場合、関係人が多くなることにより複雑な関係を招くことも懸念されるところですし、証拠調べの援助は、民事訴訟法でいう受託裁判官による証拠調べというイメージではないかと考えられるところです。そうだとすると、証拠調べを実施する際の共助と考えることができ、仲裁廷のみを請求権者とすることがわかりやすい規律になるのではないかと思います。ちなみに韓国法でもそのような規律にしているところで、このように考えることに問題があるかどうか、その他、請求権者等の当事者に関連して問題となることがあるかどうか御検討いただきたいと思います。

□ まず、この問題は、援助の請求権者を仲裁廷に限るかどうか、仲裁廷の許可を得た当事者というようなものも加えるのかどうかという割合単純な問題でございますけれども、原案のような仲裁廷に限るというような考え方について、これでよいかどうかということについて、どうぞ。

○ 私は、モデル法と同様に、仲裁廷のみならず、仲裁廷の許可を得た当事者も申立てをできることにするべきだろうと思います。
 特に問題になるのは、国際仲裁の場合だろうと思います。例えば、当事者の一方が日本人または日本企業で、他方がアメリカ人またはアメリカの企業、そして仲裁人は第三国人を取ることが珍しくありませんから、例えばフランス人、仲裁地は日本で、日本法が手続準拠法になっているというような場合を考えましたときに、当然証拠調べの共助を日本の裁判所に求めるわけですが、それをフランス人の仲裁人にやれというのは、場合によっては負担が大きい場合があろうかと思います。
 そのときに、もちろん当事者が勝手にすると手続が混乱しますし、裁判所もお困りになると思いますが、仲裁廷が許可を与えるというのは、もちろん仲裁廷が自らやる場合と同じ判断をしているわけですから、その場合に日本の裁判所の仕組みとか証拠調べの実質を熟知している日本の当事者がそれを行えるというようなことは残しておかなければいけないのではないかと考えております。

□ いかがでしょうか。

○ なぜ絞るのかという趣旨が少し、どうなのかなということです。今の公催仲裁法は、当事者だけになっていて、仲裁廷ができない、仲裁人ができないのが不便で、立法の処置が求められたということですね。モデル法だと、仲裁廷もできるし、許可を得た当事者もできるわけだから、オーソドックスに考えればモデル法でいいのかなと。
 ただ、あえてそこで仲裁廷だけに限るとするならば、次に出てくる求められる援助の内容と言いましょうか、証拠調べの範囲をある程度広げる代わりに、当事者がやたらとやるよりは仲裁廷に絞った方が広げやすいということにも関連してくるのかなと思って、これを読んでいたのですけれども。
 特にそういうふうな効果との関連があるならば、仲裁廷に絞るということは意味があると思いますけれども、そうでなければモデル法の考え方でどうしていけないのかなという感じでございます。

● その点に関しましては、例えば証拠調べの必要性ということについて、当事者が許可を得て申し立てた場合に、仲裁廷がどこまでスクリーニングするのかなという懸念を1つ持っています。共助という考え方であれば、証拠調べの必要性については、仲裁廷の方で是非必要なんだということを前提にして、その点についての判断は裁判所はしないという前提にしたいと思うのですが、仲裁廷の許可を得て当事者がするというふうにした場合、法律の建前としては仲裁廷が必要性についてきちんとスクリーニングした上で許可を与えるということが徹底できればそれで構わないのですが、必ずしもそうではなくて、当事者が言ってきているからそれでいいよという形で許可を与えて、必ずしも必要であるかどうかが不明確なものが増えるのではないかというのが1つの懸念としてあります。
 そういう場合に、前にも、権利の濫用的な形で必要性をはねる場面というのが出てくるのではないかという議論があったと思うのですが、その余地が広まってしまう可能性があるのではないかと。なるべくそういう余地を狭めておいて、必要性については裁判所は判断しないで、適法要件とかそういうものについて限定した形の判断をするという形に純化させるためには、仲裁廷の許可ということで当事者にさせるということをあえて絞った方がシステムとしてはうまく運ぶのではないかと考えたところです。

○ 将来どうなるかということはもちろんわからないわけですが、今、事務局がおっしゃったのは、かなり杞憂に近い議論ではないかと私は思っております。
 仲裁廷にとって、裁判所に証拠調べの援助を求めるというのは、かなり例外的な事態で、仲裁廷は本来それをしたくないことがほとんどですから、自らやる場合はもちろん、許可を与える場合も、軽々に許可を与えるということは、私の乏しい知識で見聞した限り、それは少し考えにくいのではないかと考えております。

● 先ほどの○○委員への反論になってしまうのですが、先ほどの日本の法制について熟知している人がやるべきではないか、少なくとも一方当事者が日本人であることが多いのでということなのですが。確かに、そういうことが多いと思うのですが、仲裁廷の手足となって当事者に動いてもらうことは差し支えないのだろうと思うのです。それはあくまでも仲裁廷の責任においてやってもらうと。片方の日本人の代理人に動いてもらって申立書をつくってもらって、でもそれは仲裁人が出しているという形にするということも十分あり得るのかなというふうに思っていたのですが。そうすると、実質においてはそんなに変わらないかなと。

○ それはどうでしょうか。仲裁廷だけがやれるという仕組みの下で、一方当事者に援助を頼むというのは、仲裁廷が両当事者を公平に扱うという観点からきらう仲裁廷があろうかと思いますし、相手方当事者から異議が出される場合もあろうかと思いますので、やはり法制的に仕組んでおくべきだろうと思います。

○ 先ほどの○○委員の例示というのはわかりやすかったのですけれども、例えばそういうときに証人尋問について援助の依頼が来たけれども、例えば尋問事項についてよくわからないことが書いてあったので趣旨を確認したいというときには、当事者に確認するのでしょうか、それとも仲裁廷でしょうか、両方に確認する必要があるのでしょうか。その辺りはどういう制度になってくるのでしょうか。

□ 援助の申立人を仲裁廷に限定すれば、仲裁廷に確認をするということになります。

○ そのときは、非常に一本化していてわかりやすいのですが。

□ 当事者まで広げると、それは当事者に確認をすると。

○ やはり当事者になるのでしょうか。少し不安がありますのが、やはり当事者というのはふくらませていろんなことを聞きたいだろうと思うのですけれども、それは仲裁廷が許可を与えた範囲のことなのか。当事者が許可の範囲を超えて、こういう趣旨のものを出してほしいのですとか、こういう趣旨の尋問をしてほしいのですというようなことを言ってきたときに、それも許可の範囲なのかどうかということを一義的に確認しづらい場合があるのではないかと思いまして、そういうことを心配すると、仲裁廷一本に限る方が非常にすっきりしているのではないかという気がいたします。

□ 事務局の考え方もそういうことです。許可を得ても当事者が援助の申立人であることは間違いないわけですから、当事者に独立の地位を与えてしまいますと、今度は裁判所と当事者の間でやりとりをするということになると思います。

○ 確かに運用によっては、どちらでも余り変わらないような結果になるのではないかという気がいたしますけれども、文面上モデル法と変わると言いますか、モデル法より絞り込む形になるのは事実でありますので、国際的な観点と言いますか、日本の仲裁法が使い勝手が悪いと見られるのをどのぐらい気にするのかというところで決まってくるのかなという気がいたします。

○ 私も○○委員が言われたのは大変説得的な感じがしたのですが、内部的に処理すると事務局がおっしゃったのは、果たして可能なのかなということ、一方当事者の代理人に仲裁廷をこの場面で代理する権限を与えるということは、弁護士倫理の問題とかとも関係して、果たしてどの程度できるのかというのはやや疑問なところがあるという感じがするのと、当事者の許可を得てやる場合には、一種の任意的訴訟担当のような形になるのかなという感じもして、それでできるという感じもしないでもないので、それを正面から認めるということであっても、それほどおかしなことはないような気もするのですけれども。

● 内部的なものというのは、隠して一方でやるというイメージではなくて、裁判所に証拠調べの嘱託をしてほしいという場合に、裁判所に提出する書面も添付した上で申し立てなさいという指導をして、それを出させて相手方とも議論をして、それを採用した場合に、事務局の方から提出するというイメージだと思うのです。
 ただ、申立書の作成です。それは、もちろん相手方との意見調整をしないと証拠調べするかどうかは通常は決まらないと思いますので、その中でやっていく。だから、民事訴訟における鑑定事項の確定なんかも両当事者の間でやりますから、それと同じようなイメージで考えておりまして、それほど問題はないのではないかという気がしたのですけれども。

□ 内部的に使うのは、そういうことがあるかどうかは別といたしまして議論のあるところですが、絞るのがいいのか、モデル法の方がいいのかという点について、もう少し、どうぞ。

○ 今、手元にモデル法の立法資料を持っておりませんので、記憶で申し上げますから間違っていたら訂正していただきたいのですけれども、私が先ほど申し上げた趣旨は、私の個人的意見というよりは、たしかモデル法が仲裁廷の許可を得た当事者も含めたときの議論にあったように記憶しておりますので、事実がはっきりしないことを前提に述べるつもりはございませんが、もし仮にこの点がそうであるとすれば、あえてその趣旨を曲げるわけですから、−−もちろん諸外国の立法の中には、この部分を外した立法もありますから、全く異例というわけではないかもしれませんが−−合理的な理由が必要かと思いますので、なお御調査いただければと思います。

○ 今のに補足ですが、私が申し上げた趣旨は、申立書だけのことではなくて、法廷での尋問とかも考えて、先ほどの例ですとフランス人の仲裁人が来ても、実際に尋問はできないわけです、補充的にできるという規定はありますけれども、やはり何らかの代理人的なものを想定せざるを得ないのではないかという趣旨で申し上げたわけです。

□ モデル法の規定も、国内の裁判所との関係、あるいは裁判手続の関係というのは、国内法に大きく依存しているところがありますので、裁判所との関係の規定を変容しても、それはモデル法に大きく違反したということではないと思います。その点はモデル法の中でも規定のグレードが少し違うというふうに私は理解しております。
 しかし、これは両方あるということで。

○ ○○委員の御趣旨を確認したいのですけれども、証拠調べの援助を求めることができる者を仲裁廷のみとするか、仲裁廷プラスその許可を得た当事者とするかによって、証拠調べを実施するときの発問権者の範囲が変わってくるという整理でおっしゃったのでしょうか。

○ 私も実際にどういう形で尋問がされるかということを理解しているわけではないのですが、後の方で仲裁人が発問権を有するという規定がありますものですから、そこでは何らかの形で代理的なものを想定しないといけないのではないかという趣旨です。

○ 仲裁人の発問権の問題自体はそれ自体あると思うのですが、それとは別に実際に証拠調べの実施方法そのものとして、裁判所が職権で聞く形にするのか、両当事者を連れて来て、両当事者に発問させることも含めて実施するのかというのは、一応両方あり得るのかなと思ったものですから、念のため伺ったわけです。また、後のところでと思います。

【証拠調べに関する裁判所の援助について 〜2 対象となる証拠調べの範囲について、 3 裁判所が援助を行うための要件について〜】

□ では、少し先に行かせていただきます。次は、2の対象となる証拠調べの範囲についてと3の援助を行うための要件をまとめてお願いします。

● これらの問題については、1読及び2読でそれぞれ御意見をいただいたところですが、ここでは、それぞれの問題について事務局で作成した幾つかの案を土台に御議論をいただければと思います。
 2は、援助の対象となる証拠調べの範囲についてのもので、枠内のA案は、裁判所による援助の趣旨が、強制力を有しない仲裁廷に代わって裁判所が強制力を働かせることにあるという理解を前提に、援助の対象も強制力や制裁措置を伴う証拠調べに限定されるとするものです。B案は、仲裁廷がすることができない証拠調べを援助の対象とする考え方ですが、この場合「仲裁廷がすることができない証拠調べ」の内容が問題となることは説明欄に記載のとおりです。C案は民事訴訟法において定められている証拠調べ一般を広く援助の対象としようという考え方です。これまでの検討会では、援助の範囲については広く認めるべきであるという意見があった一方、何らかの制限を設けるべきであるという意見もあったところですので、再度御意見をちょうだいできればと思います。
 3は、裁判所が援助を行うための要件について検討をお願いするものです。5ページの説明の2点目に記載したとおり、裁判所には、要証事実の重要性や証拠調べの必要性についての審査権限がないと解することを前提に、A案のように、単に適法性のみの審査をすれば足りるとするのか、B案及びC案のように、適法性の要件に加え、何らかの要件を加味すべきであるかという観点から御意見をお伺いしたいと思います。B案やC案のように適法性のほかに一定の要件を課そうという場合には、要件としてどのような内容を盛り込むべきかが問題となるところです。そのような問題についてどのように考えるべきか御意見をいただければと思います。

□ それでは、証拠調べの範囲と、援助を行うための要件について。若干関係はいたしますけれども、むしろ先ほどの問題と関係してまいります。いかがでしょうか。

○ 2の証拠調べの範囲ですが、C案の証拠調べ一般を対象とするということがよいかと思います。理論的には、確かにB案のように、仲裁廷ができることは仲裁廷がやればいいというのも理屈はありますから、B案のような考え自体がおかしいとは思いませんが、問題はそういう規定をわざわざ置くかということでして、私が知る限り諸外国の立法でC案的な規定以外の規定を置いている例は存じませんので、もしあれば教えていただきたいと思います。
 ちなみに、ドイツ仲裁法1050条は、やや微妙な規定ぶりですが、春日教授の訳によりますと、証拠調べの際の援助または仲裁廷の権限に属さないその他の裁判所の行為の実施を要請することができるという訳になっておりまして、この訳が正しいとしますと、証拠調べの援助は無限定で、その他の裁判所の行為の要請をする場合に、仲裁廷の権限に属さないものという規律になっております。
 また、その他の国を見ますと、主要国はいずれも証拠調べの範囲について特に限定を置いていないようであります。
 韓国仲裁法28条は、裁判所に証拠調べを嘱託することができるとするのみで、何らの制限も置いておりません。イギリス仲裁法等も同様であります。
 次に、3の要件ですが、例えばB案で言っている濫用的な申立てを裁判所が審査できるかというのは、実際に規定ができた後に、解釈で論じられる余地はあろうかと思いますが、わざわざこういう規定を置くのかどうかという点は、極めて疑問であります。これも私の知る限り、諸外国の立法で、A案からC案を含めて特に規定を置いている例を知りませんので、もしあればお教えいただきたいと思います。
 いずれにしましても、2、3に掲げられている問題の多くは、一般的には解釈に委ねられている問題だろうと思います。わざわざ立法を置き、しかも制限的な立法を置くということが我が国の仲裁法のイメージを損なう可能性があるという点を含めて、慎重に御検討いただきたいと思います。

● 確認なのですが、規定をどういうふうに仕組むのかというのは別にして、要件としてはA案ということでいいということでしょうか。

○ 3の方ですか。

● 3の方です。

○ はい、A案です。

□ 要するに、A案ということは、必要性の判断は仲裁廷だけでするということでよろしいですね。

○ ただ、先ほど申したことの繰り返しになりますが、その場合でも濫用的な申立てを審査できるというのは、これは一般条項の問題でして、仲裁法に規定がなくても、もちろん裁判所が審査できる余地はあるわけですから。

□ それはそうなのですが、証拠を調べることが事案にとって必要かどうかという証拠採否の問題は、裁判所は一切判断しないという前提ですね。

○ その点は、以前の検討会でも多数意見であったかと理解はしております。

○ ほかの制度でいきますと、裁判所が関与する場面というのは、強制力が働くとか、人権に関わるとか、そういうときに関与していると思うのです。今、○○委員がおっしゃられた仕組みの中で、なぜ裁判所を関与させなければいけないのか、強制力を使うから、本当にそれだけの必要があるのかどうかについて裁判所の審査というハードルが必要だというのであればほかの制度と一致するような気がするのですけれども、もし、申立書にそれなりの理由も書いてある、管轄もその他の適法要件もあると、それだけで裁判所が出せるとしますと、何を期待されて、裁判所が関わらなければいけないということになるのかが、よく理解できないのですけれども。

○ 今、おっしゃったのは、2の点ですか、3の点、どちらの点の御質問でしょうか。

○ 私は、どうも3の点が発想の基にありまして、そこからいきますと、やはり何か、期待されている以上、審査しなくてはいけないものがあるのではないか。そうなってくると、2の証拠調べの範囲というのも限定していかなければいけないのではないかと、強制力とか、人権に関わるというような部分をきちんと後見的に見なさいよという趣旨なのではないかというところがどうしても引っ掛かっているものですから教えていただけるとありがたいという趣旨です。

○ おそらく2つの問題を区別して論ずる必要があろうかと思うのです。私が先ほど申し上げたのは、かなり立法を意識した発言でして、先ほど申しましたように、諸外国の立法例を見て、2にしても3にしても特に制約的な規定を置いている例を知らないということですから、規定として置くのはどうかというのが、まず1つございます。
 内容について、○○委員がおっしゃったような制約的な解釈ができるかできないか、これはまた別の問題だろうと思います。確かに我が国でも、これがどれだけ支持をされている見解かはわかりませんが、現行法の話ですが、証拠調べの範囲については一定の範囲に制約するという議論もございますし、あるいは3の要件についても、少なくとも先ほど申しましたように、B案のような濫用的申立ての審査ができるかどうかというのは、一般条項の解釈問題として議論の余地があろうかと思います。その辺の解釈の余地を否定するという趣旨ではございませんが、少なくとも立法としては、2も3も制限的な規定を置くべきではないということでございます。

○ 私も、今の○○委員と同じ意見でありまして、まず、2の対象については、当然ながらA案では余りにも狭過ぎますし、B案というのは、現在の公催仲裁法の「為スコトヲ得サルモノ」ということをただそのまま持ってきているだけになりますね。
 そうすると、やはりB案の今の仲裁法の「為スコトヲ得サルモノ」というのがどの範囲なのかというのは御案内のとおりいろいろと議論が分かれるわけですから、せっかくここで法律をつくるのに、そういう解釈の分かれるものを引きずるのは必ずしもよくないだろうと。
 C案というのは、これから仲裁の制度をいろいろと紛争解決のために実効あらしめるためにやっていくわけですから、そこで制限を与えるのではなくて、やはり証拠調べ一般を対象にするというC案がふさわしいのではなかろうかというふうに思います。
 なお、仲裁機関の方も、何もやたらめったら利用するということではなくて、やはりそれなりにいろいろと審理する中で、どうしてもということでおそらくやってくるものと思いますので、その場合には広く認めていただきたいと思います。
 3の方は、私も適法でいいのかなと思いますし、かといって余り濫用的なものについてはどうかと。これについては特に考えはまとまっておりませんけれども、余り必要性とまでなってしまって、そのためにどういう疎明をするとか、組み立てをどうするのかというところで、いざ実際に必要なものが蹴られるということがないようにしていただきたいということでございます。

○ 私も定見があるわけではないのですが、2の証拠調べの範囲は、B案という考え方も理論的には成立し得るのではないかと思っております。要するに、仲裁廷ができる証拠調べは仲裁廷がやって、できない証拠調べを裁判所でやるという話だと思いますので、極めて素直な発想だろうと思います。
 A案ですと、その間に間隙ができてしまって、仲裁廷ではできないけれども、裁判所にも嘱託できないという部分ができてしまうわけですから、仲裁判断が既判力を有して確定判決と同一の効力を持っているとすれば、そこで求められる真実の発見の度合いというのも、基本的には判決と同じものが求められるはずですから、そこに間隙が生じるというのは、やはり制度的に問題があるんだろうというふうに思っております。
 仲裁廷でもできるけれども、裁判所にお願いできるというふうにだぶってはいけないかということは、それほど確定的なものはないのだろうというふうには思っておりますけれども、制度としてはそこはだぶらせないということもあり得るだろうと。
 ただ、おそらくだぶる範囲というのは極めて狭いだろうというふうに認識しております。当事者が自ら書証を提出してそれを裁判所が一読する、純粋な書証の取調べというのは多分だぶるのだろうと思うわけですが、そんなことを求める人はどこにもいないだろうと思いますので、私の認識では調査嘱託とか、文書送付嘱託、あるいは鑑定もおそらく鑑定人等に公法上の義務を課する以上は、仲裁廷でできないというふうに解さざるを得ないというふうに思っておりますので、そうだとすると、実際問題としてはB案とC案はそれほど変わらないのではないかと。理論的にはB案は成立する余地はあるだろうというのが私の認識です。

● 2のA案と3のC案というのはわりとつながりやすいことになろうかというのは、見てごらんのとおりだと思いますが、今、○○委員がおっしゃったように、B案というものは1つあり得るのかなというふうに思っているところと、先ほど○○委員がおっしゃったように、C案とした場合に、3の方でA案、−−A案、B案余り変わらないというように思うのですが−−A案的にした場合に、本当にそれで理論的な説明として整合するのかどうかというのは若干問題あり得るのかなと考えています。全く一般のものを対象にした場合に、裁判所の方の側もある程度の要件のスクリーニングができるということにしないと、理論的な説明というのは、先ほど○○委員がおっしゃったような形の問題点が出てくるのかなという気が若干しております。
 だから、B案的なことにして、B案の内容というのは、仲裁合意を基礎にしているので当事者の合意の範囲については仲裁廷でできるということにした場合に、3番目のA案、B案ということとわりと説明はしやすいのかなという感じは若干持っています。ただ、この点について明確に何かものの本で書いてあるわけではなくて、少し自信もないところなので、いろいろと御意見を伺いたいと思っているところです。

○ 繰り返しになりますが、○○委員がおっしゃったことは、私も先ほど申しまして、B案は理論的に考えられないわけではないと。したがって、おそらく議論の次元がかみ合っていないのだろうと思いますが、私の意見では解釈に委ねればいいと。法制的に仕組む場合には、特にB案のような制限を設けるのは、諸外国の立法例に全く例がないこととのバランスも考えて、望ましくないのではないかということです。
 私の認識の基礎にあるのは、裁判所に対する証拠調べの援助というのが、言わば伝家の宝刀で、ほとんど仲裁廷ないし当事者から要請されることは考えにくいという認識があるからです。
 仲裁廷にとってみれば、裁判所に証拠調べの援助を求めるというのは、かなり自らの存在意義を損なう部分があるわけで、もともと裁判では望ましくないとか、裁判よりも仲裁の方が適切であるという事件が仲裁廷に来ているときに、自らやれないから裁判所に援助を求めるというのは、基本的にはほとんどインセンティブがわかないはずでありまして、また現実にその例はほとんどないだろうと思います。
 したがって、そういった現実の下で、あえて我が国だけが特殊な規定を置くということが望ましいのかどうかという点を危惧いたしております。

○ 実態として、今、○○委員がおっしゃったようなことになっていくのだろうということは思うものの、やはり法律をつくることもある立場の者から申しますと、その精神を条文上何も表わさずに一切できますという書き方をすることがいいのかなという思いをどうしても持ってしまうところでして、そういう意味では2のB案がせいぜいよろしいのではないか。もし仮に2のB案が不明確でわからないということがあれば、場合によってはA案も検討の余地があるのかなというぐらいに私は思っております。
 また3の方は、C案のような要件を立てたとしても、裁判所に実質に踏み込んでの必要性判断の能力というのはないのが事案に照らして通常であろうと思いますので、どうしてもA案ないしB案的な判断しかできないことになっていくのではないかと思います。
 そうしますと、裁判所としては、来たものが不適法でない限り基本的に援助をするという制約の中で行動する以上、できる範囲というのを、ある程度論理的に必要性が絞られている2のB案程度の幅に設定しておかないと、これは少しおかしいのではないかなというふうに思っております。

○ 実際問題としまして、1で仲裁廷が必要と認めるものでありますから、2でもって、A、B、Cいずれであっても、そんなに内容的には変わらないと。
 3番目のB案のように濫用的申立てがどうかというのは、むしろ仲裁廷が考えて、これは濫用的な申立てだからやらないでいいということを考えるであろうと思われますので、3番目ではA案でいいのではないかと思っております。
 実際に裁判所の援助を求めるということは、ないですね。なぜないかと言うと、裁判所へ行ったら多分時間が掛かってえらいことになるのではないかというのを当事者も考えている。濫用的にそれをやるのがたまにあります。あれ出せ、これ出せ、第三者の持っている書類を出してほしいといったことがありますが、そういった場合には、仲裁廷が必要と認めれば裁判所の援助を求めるということで済むと思っております。

【証拠調べに関する裁判所の援助について 〜4 裁判所の決定に対する不服申立てについて〜】

□ それでは、この問題は一応議論していただいたということにいたしまして、次は、裁判所の決定に対する不服申立てについてでございます。お願いいたします。

● この点については、ごく簡単に御議論いただければと思うのですが、援助に関する裁判所の決定に対して、不服申立てを認めないということでどうかということです。

□ 援助の決定をした場合もですか。

● 援助請求を却下した場合です。

□ はい、これはいかがでしょうか。

○ 確かにシンプルだし、スピーディーでいいかなと思ったのですけれども、少し考えてみますと、先ほどの議論と全部つながってくるのですね。援助の範囲であるとか、その場合に何を審査するかとか。
 そうすると、仮に仲裁廷ないし当事者側で、やはりこれはどうしても必要だと、これを是非やってもらいたいというのを、そこで見解が違うような場合ですね。微妙な問題の余地があろうかと思うのです。ですから、そうなってくると一審限りでいいのかなという若干の疑問が残ったのです。あえてどうしてもとここで力む必要はないのかもしれないのですけれども、そういう点とも絡んでくるということで、その場合には却下に対するもう1回の審査というのも意味があるのではなかろうかと思います。

● その場合、即時抗告を認めるということですね。

○ そうです。

○ 私は、裁判所が仲裁にどの程度援助するかというのは、裁判所の高度な裁量に属すると思いますので、原案に賛成いたします。

□ いかがでしょうか。私は、重要な証拠について、裁判所で調べてもらわなければいけない証拠を申請したのだけれども、却下されてしまったという場合に、何のチェックもなくていいのかなというのは若干気になるところなのです。それは○○委員のおっしゃるのと全く同じで、そこで裁判所が余り自由な裁量を振るってもらっては困るというような気もしないわけでもないという程度です。よろしいですか、この点は。

【証拠調べに関する裁判所の援助について 〜5 援助に係る証拠調べの在り方について、 6 仲裁廷が行う証拠調べの援助について〜】

□ それでは、その次に「援助に係る証拠調べの在り方について」と「仲裁廷が行う証拠調べの援助について」を併せて一緒にお願いいたします。

● 5の枠内の考え方は、援助に係る証拠調べについては、裁判所が民訴法の規定に従って実施するものとした上で、判断者たる仲裁廷を構成する仲裁人に証拠調べへの立会権及び発問権を保障することにより、その心証形成に役立たせようとするものです。
 6は、仲裁廷自らが行う証拠調べを裁判所が援助することも重要であることから、裁判所が証人または鑑定人に対し、仲裁廷の面前への出頭を命ずることができるとして、仲裁廷が証拠調べを実施する形態を設けることはどうかというものです。この場合、仲裁廷に出頭を命じられた証人または鑑定人が正当な理由なくこれに応じないときは、裁判所は、過料の制裁を課することが可能であると考えられます。また、裁判所が第三者に対し、仲裁廷への出頭を命じることができるとする理論的な検討は必要であると思われます。なお、文書や検証物の仲裁廷への提出・提示については、提出された物の管理の問題があるので、枠内の案は、仲裁廷が行う証拠調べの対象とはしないものとしております。
 それぞれ枠内のように考えることについて、御意見をいただきたいと思います。

□ それでは、2つの関連する問題ですが、援助に係る証拠調べの在り方ということですが、こちらの方はこれでよろしいでしょうか。民訴の手続による、そして証人尋問、鑑定人尋問の場合には、仲裁人が証拠調べに立ち会って、裁判長の許可を得て、直接発問ができるということです。
 この場合に、当事者はどうなのかという点について少し御議論をいただきたいのですが。

○ 当事者が立ち会うのは当然のことではないですか。

□ いや、発問や何かです。

○ 発問というか、それが交互尋問方式を採るか、ドイツ型の先に裁判所ないし仲裁廷が発問する方式を採るかは別にして、当事者の尋問権がないということはあり得ないわけですね。ですから、それは当然のことではないかと思います。

○ 先ほど○○委員からの御質問で、私はよく了解できていなかったところなのですが、単に「民事訴訟法第二編第三章の規定」とこれだけ書けば尋問権を持つのは当事者だけであって、証拠調べの嘱託の手続の当事者というのは、先ほどのお話であれば、前提としては仲裁廷だけであるというふうに思いますので、そうすると仲裁手続の当事者には尋問権はないのかなという気もしたのですが、それはそうは考えておられないということですね。

● この冒頭のところで説明をしましたけれども、受託裁判官の証拠調べと同じように、証拠調べの共助ということで、仲裁廷の証拠調べに代わって裁判所が証拠調べを実施すると。構造的には仲裁廷の証拠調べと同じことがそのまま移行してきて、当事者に民訴法の反対尋問権があって、当事者が尋問して、反対尋問権があるという構造はそのまま維持されるという前提でよろしいのではないかと考えております。

○ 前提は全く異論はないのですが、そうだとすれば、これをパブリック・コメントに出すときには、その点は書かれた方が。誤解を呼ぶ可能性があるような気がしますが。

□ よろしゅうございますか。

○ 私は、当然そういう理解に立つべきだろうと思っております。

□ それでは、その次の6の仲裁廷が行う証拠調べへの援助です。これについてはいかがでしょうか。裁判所自らがやるのではなくて、仲裁廷に行って証言しろというようなことを言うということですね。

● 純理論的に言うと、これもできるかどうかということも若干問題になり得るかなと思っているのですが。

○ 私は、これはかなり慎重に考える必要があるのではないかという考えを持っています。どの程度の需要があるのかわからないので、需要が大変あるということであれば、更に検討が必要だろうと思うのですけれども、理論的に見ると、やはり仲裁廷の面前での取調べというものについては、基本的には裁判所は責任を負えない立場にあると思うわけで、そこでどういうようなことが行われるかということは、裁判所にはわからないわけですね。
 そうすると、例えば民事訴訟法の証人尋問というのは、もちろんそこは一定の規律があって、その規律に反した扱いを証人は受けないということが前提になっているわけですが、例えば仲裁廷では非常に侮辱的な質問がなされるというようなことだってあり得るわけですね。それに対して、過料の制裁をもってそこへの出頭を命じるということが果たしてできるのだろうかと、勾引でなければいいということにはならないだろうと思います。
 それから、出頭義務と証言義務というのは、やはり連続的なものでなければ意味がないわけで、出頭義務だけ課して、出頭して次の瞬間自分は嫌だから帰りますというので帰るのを認めるのでは、過料をもって出頭義務を課する意味はないわけですから、やはりそこで証言をしなければいけない義務まで課さないといけないだろうと思うわけです。
 そうすれば、更に先ほどお話ししたように、証言拒絶権なども必ずしも認めるとは限らない手続の中で、それを過料によって担保するということは制度上かなり慎重な考慮が必要ではないかというふうに思います。

○ 我々の実務からしますと、いろいろな手続上の問題がありますけれども、やはり原則的な実務としては、仲裁廷で証拠調べを行うというのが普通かなと思っておりました。おそらく、現実に利用されることはほとんど少ないとは思いますけれども、裁判所へ仲裁廷と当事者が行って、裁判所で証人尋問をするということは通常考えられないと思うのです。だから、もし利用されるとすれば、仲裁手続の中で、そういう強制力を得て証拠調べをやるということぐらいではないかと思っております。

○ 今の点ですが、大陸法の国の仲裁法は具体的にどういう形で証人尋問を行うかについて書いていないことが多く、他方、英米法の国ではその点は比較的に具体的に書くことが多いという傾向がございます。
 したがって、書いていない大陸法のことはしゃべれませんので、英米法系の国の仲裁法で見ますと、たまたま今私の手元には、ニュージーランド仲裁法がございます。ニュージーランドをしばしば引用しますのは、大体英米法の一般的な精神を取っているのですけれども、特に法律の中に詳しく書いていることが多いものですから引用するという趣旨です。
 これを見ますと、27条という規定ですが、証人の仲裁廷への出廷を強制して証言若しくは文書の提出をさせるために、高等裁判所は、罰則付召喚令状、オーダー・オブ・サピーナを発することができ、地方裁判所は証人召喚状、ウィットネス・サモンを発することができるという規定になっていますから、先ほど○○委員がおっしゃったのとは逆に、仲裁廷へ、しかも罰則付で出頭を命ずることができる、あるいは証言を命ずることができるという規定ぶりになっており、以下は記憶ですが、英米法系の多くの国はこれに似た規定を置いていたのではないかと思います。
 やはり、この問題も、諸外国で当然に行われており、そのことについて特に問題があると考えられていない面につきましては、日本だけが特異な規定を設けるのは慎重であるべきだろうと思います。
 この点は、今手元には一国の資料しかありませんので、なお調査が必要であろうと思いますが、○○委員がおっしゃったような懸念というのが、実際に仲裁を頻繁に利用している諸国で本当に問題になっているのかどうかという点も調べるべきだろうと思います。
 これは推測ですが、先ほどおっしゃった、例えば仲裁廷に呼ばれたら、訴訟の場ではなされないような侮辱的な質問をされたという場合は、おそらく証人は証言を拒否したり、あるいは場合によっては退席したりするでしょうから、それがこうした制度を認めないことの理由になるのかどうかは疑問が残るところです。

○ ○○委員がせっかく調査をしてくださるなら、ほかにも調査をしていただきたいのですが、やはり制度の全体的な構造等の関係があると思いますので、英米法系の国々には広くコンテンプト・オブ・コートという制度があると伺っているのですが、仲裁廷に証拠調べを委託したときに、仲裁廷で何らかの、裁判所が思わぬようなことがなされた場合に、裁判所が仲裁廷に対してコンテンプトを掛けるというようなこともあり得るかと思いますので、そのような点も含めて御調査をいただければというふうに思います。

□ ○○委員、可能だったら。

○ 可能かどうかわかりませんが。

● 仮に援助を要求してきた仲裁廷について、当事者から、あそこは何とか組と称されるようなところが実質やっている仲裁廷なんです、怖くて行けませんというふうな話があった場合は、やはり先ほど○○委員から御発言がありましたように、そこへ出頭しろとはなかなか言えないと思うのですが、他方で、出頭しなくていいということも難しいと思います。
 かなり、○○委員のおっしゃったように、問題点はなくはないかなと思っておりまして、機関仲裁だけではなくて、アドホック仲裁なんかも含めていろんなものが対象になった場合に、強制できるということで本当にいいのかという理論的な問題もなくはないだろうと思ってはおります。

○ 今ずっと議論されている中身ですが、これは先ほども御質問が出ましたけれども、考え方であって、必ずしも条文にするという話ではないわけですか。

● この実質をとらえるような条文を考えていかなければいけないと思っております。

○ 今の○○委員の御発言の趣旨を忖度しますと、確かに6に書いてあるようなことが具体的にできるできないということは、大陸法系の立法では余り書いていないわけです。

● 入っていないと、やはりできないということなのですか。

○ そうとは思いません。これもドイツ等では現実に証人尋問に対する援助要請の例があろうかと思いますので、どういう扱いになっているのかも併せて、可能であれば、お調べいただければと思います。

【証拠調べに関する裁判所の援助について 〜7 援助に係る証拠調べの費用について、 8 援助に係る証拠調べの結果の取扱いについて〜】

□ それでは、十分に調査できていない部分もありますので、先に進めさせていただきまして、今度は「援助に係る証拠調べの費用について」と「援助に係る証拠調べの結果の取扱いについて」というものを一緒にして御説明をいただきたいと思います。

● 7は、援助に係る証拠調べの実施に必要となる費用の納付義務者及び納付がない場合の措置についての問題です。枠内の考え方は、証拠調べに係る費用については、仲裁廷が納付すべきものとした上、裁判所は仲裁廷に対し、費用の予納を命じ、その予納がないときは、当該費用を要する行為を行わないものとするものです。この場合、仲裁廷としては、当事者に必要となる金員を予納させ、これを裁判所に予納することになると思われます。
 8の枠内の考え方は、裁判所において行われた証拠調べは、写真、録音テープ、ビデオテープ等に記録する方法をもって調書の記載に代えることができるという趣旨を表わしたものです。裁判所が実施した証拠調べの結果は、これを記載した記録の閲覧、謄写によって、当事者が記録の写しを入手し、これを仲裁廷に提出する等の方法が考えられますが、枠内の案は、裁判所の証拠調べの効率化を図る見地から、通常の調書のほか、録音テープやビデオテープに記録する方法を許容するものです。

□ いかがでしょうか。今のような御説明で、証拠調べの費用と結果の取り扱い、何か御意見があれば承っておきたいと思います。これは少し細かな問題でございますので、何か大きな意見があれば。

○ 細かいことの規定だと思うのですけれども、これは6の仲裁廷で行う証拠調べに関わる費用なんかというのは、どこかに規定があるわけですか。

● 費用の関係ですか。

○ 非常に細かい規定がされているように窺えるのですけれども、これは裁判所が証拠調べを行う場合の費用に関する考え方ですね。仲裁廷が行う場合に裁判所に援助を求める場合には、当然費用が発生するわけですね。そういったものについては、ほかに規定があるから、ここには規定されていないということですか。

□ それは、一般原則で、裁判所に鑑定を申し立てるとすれば、それを予納するということですね。それは別にある。

○ 規定があるわけですね。

□ はい。

○ これは、規定がないので、ここに規定をするというお考えですか。

● 実質の内容としてこういうことでいいかどうかということをまず議論していただいて、それで必要があれば規定を設けるということになると思います。

○ 仲裁廷が行う証拠調べに関しての裁判所の援助に関わる費用というのは、もう既に別途規定があるということなのですね。

● そうですね。

○ これについては、規定がないから、こういう規定を場合によっては置く必要があるだろうということですね。

● この内容のとおりであれば、必ずしも規定がなくても、今の法律で運用はできると思います。これを変えるということになれば、規定を設けなければいけないということになると思います。

○ これが適用されるかされないかという疑義があるということですか。かなり細かい規定のように見えるので、こういったことまで必要なのかなというのが若干疑問に思いました。

● 今までのとおりだとすれば、このとおりだと思います。今まで余り利用されていないものですから、どういうことになっているのか自体が明らかになった後に。

○ 大変細かいことですけれども、予納と、これは当然のことだと思うのですけれども、7の裁判所が「仲裁廷に対し」命ずるということなのですけれども、これは申立人が当事者だったら「当事者」ということになりますね。

● そうですね。先ほどの議論とリンクします。

○ 同じく質問で申し訳ないのですけれども、12ページの説明の前半部分のところで、裁判所が実施した証拠調べの結果は、当事者を通してしか仲裁廷に出ていかないという前提で書いてあるようにお見受けしたのですが、私は外国からの受託の場合はどうしているか現実を存じ上げませんが、裁判所に嘱託があって何かしたのであれば、嘱託した人のところに裁判所から直接何かを返すのかなと思っていたのですが、当事者が介在しないと返っていかないものなのでしょうか。
 調査嘱託が来た場合の調査嘱託回答書的な形で、証拠調べの結果の調書なり、テープなりが、裁判所から仲裁廷に直接返っていくというスキームにはならないのですか。

● そういうスキームはあり得ると思います。

○ これは選択肢の1つということで。

● この案ではそういうことです。韓国法は裁判所の方で記録を作って送るということになっているのですが、この案ではそういうふうにはしていないということです。

□ よろしゅうございますか。これはかなり技術的なことですから、時間の関係もありますので。

【多数当事者仲裁について 〜1 多数当事者仲裁が認められるための要件について〜】

□ 資料の28というのが、多数当事者仲裁という大変難しい問題でございますが、項目は3つだけでございますので、まず、これの説明をお願いいたします。

● 近時多数の者が関与する取引の増加や法律関係の複雑化を背景に、多数の者が関与する紛争が増加しています。多数の者が関与する仲裁については、紛争の一回的、統一的解決が求められる一方、多数の者が関与することにより手続が複雑化することも考えられます。そこでこのような多数当事者仲裁の妥当な規律の在り方を検討する必要があるものと思われます。なお、モデル法には多数当事者仲裁に関する規定はございません。
 1の枠内は、多数当事者仲裁が認められるための要件について御議論をお願いするものです。
 (1)は、当初から多数当事者間に仲裁合意がある場合には、別段の合意がある場合を除き、当該仲裁合意の内容に従い、多数当事者の仲裁として手続を開始することができることを規定したものです。
 (2)は、仲裁手続開始後に第三者が当該仲裁手続に参加する方法について規律したものです。アは、第三者が、仲裁手続の当事者全員の同意の下に自ら参加の申立てができる旨を、イは、第三者を仲裁手続に引き込む場合について、仲裁手続の当事者が、他の当事者全員及び当該第三者の同意を得て、第三者を当事者として参加させる申立てを仲裁廷に対してできる旨を、ウは、ア及びイの申立てがあった場合に仲裁廷が一定の場合には参加を許さないことができる旨をそれぞれ規定したものです。
 (3)は、当事者の合意を前提に、仲裁廷に対して事件の併合を申し立てることができる旨及び仲裁廷が一定の場合に併合の申立てを却下することができる旨を規定したものです。この場合、各仲裁廷の意向や利害を考慮して、併合される事件の仲裁廷に異議がないことを要件とするかどうかが問題になると思われます。
 (2)(3)のように、仲裁手続の当事者等が増える場合については、合意を前提とすることになっておりますが、このように考えることや当事者の申立てを仲裁廷が却下できる要件及びコメントに記載した事項も含めて御意見をいただきたいと思います。

□ これは非常に難しい問題ですが、内容的にこういうことで大体いいのかどうか。もう1つは、こういうものがそうであるにしても、規定を置く必要があるかどうかという、2つの点が問題になるのではないかと思いますが、どうぞ。

○ (2)の整理について若干疑問を持ったのですが、(2)は「参加」という言葉を使っておられますけれども、説明を見ますと、その者自身の権利義務を併せて確定するという意味で入ってもらうことを想定しているようです。
 そうすると、その者に対して仲裁判断を確定判決と同一の効力として及ぼそうということだと思われます。そうだとすると、その者との間にも仲裁合意がないとそんなことはできないということになっていくのではないかと思います。だとすれば、その者は参加人というより、当事者そのものなのではないかという気もしまして、(3)で出ている場合の1つである仲裁の追加的併合と位置づけて整理すべき話で、別途参加という概念を立てる必要性、あるいは必要性というより合理性がないような印象を持ちました。その点何かお考えがあれば御教示いただければと思います。

● この多数当事者参加は、いろいろなパターンがあり過ぎてなかなかシンプルな形で整理するのは難しいのですが、端的には、(3)の併合というのは、既に2つの事件が進んでいて、つまり仲裁廷も2つあるというようなケースで、統一的解決のためにその事件を一緒にするというようなイメージでございます。
 参加及び引込みの方は、二当事者間でやっていたのですけれども、例えば債権者と保証人の間でやっていたのを、やはり主債務者も一緒にやって統一的に解決しようというような機運が高まったときに、一番ノーマルな形としては、手続に第三者が参加する、あるいは引き込んでしまうというようなのが、一番ティピカルなイメージとして想定しております。

● 実質は、今、○○委員がおっしゃったとおりなので、確かに(2)の参加というのが、当事者であって、参加人という用語でよいかは問題があると思います。(2)のところの「参加する方法」の前に、「当事者として」参加するというようなことを入れた方がわかりやすいということであれば、そういう形にさせていただきたいと思います。切り分けとしてどういう切り分けをしたのかというのは、事務局の方で御説明したとおりです。

□ したがって、仲裁契約はあるという前提ですね。

● もちろんです。

□ いかがでしょうか。ほかに今のような御質問あるいは御意見は。

○ 感想でもよろしゅうございますか。全体を拝見いたしましたけれども、かなり要件が厳しいというか、当事者の合意が前提であることと、仲裁廷がそれについて拒まないということですので、結局、これはなくても実務としては同じことができるのではないかという印象を持ちました。したがって、結論的にはこのぐらいの規定であれば、法律に規定を設ける必要はないのではないかなというのが率直な感想でございます。
 事後的併合については、例えばB事件で仲裁廷が成立しておって、その事件がA事件に併合されるということは、通常実務ではないと思うのです。申立てがあって、仲裁廷がまだ構成されていないという時点でもって、事件を別の事件に併合させるということはあると思うのですけれども、仲裁廷ができていて、Aの仲裁廷とB仲裁廷が一緒に仲裁手続をやるとすると、それまでの審理をどうするのか、その後の審理をどうするのかといったいろんな問題が出てきますので、通常は片方しか仲裁廷が成立していないという場合だと思います。
 総じて申し上げれば、一定の要件でもって併合を命ずる権限を付与するということであればまた別でしょうけれども、当事者の合意、仲裁人の了解、したがって、関係者すべての同意があるときに併合なり参加なりできるということであれば、これはもう仲裁合意があるからできるという話に尽きますので、したがって、規定は置かなくてもいいのではないかというのが結論でございます。

□ わかりました。ほかにいかがでしょうか。

● なくていいという意見が強ければ、それはそれで結構かなというふうに思っているのですが、非常に難しいところでして。

○ 確かに運用でやろうと思えばこういうふうになるのだろうと思うのですけれども、基本パターンをこういうふうに決めておいていただければ、それにのっとって運用がやりやすいという面はございますので、あっていけないということはないのではないかと思います。

○ 補足的に申し上げさせていただければ、たしかオランダの仲裁法は当事者のの合意がなくても、ある一定の要件を充足すれば、裁判所が併合を命ずることができるという規定になっていたかと思うのです。それはそれで意味があると思うのですが、ここまでがちっと決めた規定であれば、これは当事者と仲裁人で話し合って、多数当事者仲裁をやればいいということだけに過ぎないのではないかと思っております。

□ よろしゅうございますか、○○委員、何かありますか。

○ オランダだけではなくて、ほかの国にも併合規定は置かれていますが、今、○○委員がおっしゃったように、これよりはもう少し仲裁廷の権限を認めて一定の要件の下に併合等を認めておりますので、この形であれば、私も特に規定はなくてもいいかという気はいたしております。
 ただ、1点、併合ではなくて、当事者としての参加の方ですが、これは以前に○○委員だったかと思いますが、そういうものが必要になるケースもないではないという御説明を伺いましたので、実務のニーズいかんによっては置いた方がいいのかもしれませんが、それは常設仲裁機関の方に伺いたいと思います。

□ では、これはなお検討するということでよろしゅうございますか。
 それでは、多数当事者仲裁を仮に置くとした場合の仲裁廷の構成という問題ですが。

【多数当事者仲裁について 〜2 多数当事者仲裁における仲裁廷の構成について〜】

● 多数当事者仲裁における仲裁廷の構成については、2の枠内のように考えることでどうか、御意見をいただきたいと思います。
 枠内の考え方は、仲裁人の選定については、当事者の合意があればそれによることとし、合意がない場合の規律として(1)以下のように考えてはどうかというものです。
 (1)は、当初から多数当事者の場合について、第一には当事者の合意によるものの、合意に至らない場合や合意によって所定の仲裁人が選定されない場合については、a及びbのように裁判所の選定に委ねるとするものです。ただし、このように規律した場合であっても、裁判所において、事案に応じた適正な仲裁人の数を何を基準に判断すべきなのかが明確ではなく、そのような負担を裁判所に課することが妥当であるかどうかは検討の必要があると思われます。
 (2)は、第三者が既存の仲裁手続に参加する場合について、既存の仲裁手続に仲裁人が1人も選定されていないときは(1)と同様にし、それ以外の場合については、既存の仲裁手続の仲裁人で仲裁廷を構成し、審理に当たるとするものです。
 (3)は、仲裁事件の併合を認めた場合の取扱いについて、基本となる事件の仲裁廷が併合される事件も併せて審理するという考え方を採ったものです。

□ こういうことでございますが、何か御意見はありますでしょうか。
 これはよろしいですね。規定を置くかどうかと、規定を置いた場合には、こういうことまで考えなければいけないということで、今日は時間もありませんので、事務局はここまで検討しているということをお認めいただければいいのではないかと思います。

● ○○委員に1点だけ確認させていただきたいのですが、1番目の方で、多数当事者の要件設定が要らないということであれば、2番目の仲裁廷の構成についても特段要らないということでよろしいですね。

○ はい。

□ 3のその他はいいですか。

● はい。結構です。

【裁判所の管轄等について 〜1 事物管轄について〜】

□ では、最後の資料29でございますが、これはかなり厚い資料になっていますが、 裁判所の管轄等についてということでございます。
 まず「事物管轄について」から御説明をお願いしたいと思います。

● 事物管轄については、1読でも若干触れていただいたところですが、再度御意見をいただきたいと思います。仲裁に関して裁判所が行う援助または監督は、その性格・内容がさまざまであり、これらを一律に論じてよいかどうかは検討する必要があるとろですが、そのような点も踏まえて、地裁、簡裁ということがいろいろあるのですが、御意見をいただければと思います。

□ これは、いかがでしょうか。今は、地裁と簡裁と両方あるというのが現行法ですけれども、事物管轄を仮に地裁なら地裁に絞ってしまうというようなことはいかがでしょうか。

○ 地方裁判所だけで結構かと思います。

○ 全体の中で、どんな事務が裁判所に来るかが決まらないと、例えば先ほど公示送達というようなお話もありましたけれども、ああいうこともすべて地裁なのか、やはり枠組みが決まってから、事物管轄についてはもう少しきめ細かく検討する必要性があるのではないかという気もいたします。

□ これから、それぞれの事項が出てきますので、またそれではここに戻ってくるということでよろしゅうございますか。

【裁判所の管轄等について 〜2 土地管轄等について〜】

● 3ページのところを見ていただきたいと思うのですが、まず、2の(1)は仲裁人の選定、忌避、任務懈怠等の場合の任務終了決定及び仲裁廷の審理判断権限についての決定に対する不服申立ての管轄裁判所を規定したものです。枠内の案は、まず仲裁地が日本にあるかどうかで、ア、イ、ウというように規律を分けております。
 枠内アは、仲裁地が日本にある場合の管轄裁判所として、aないしcを規定し、これら競合する管轄には順位または優劣を設けないとするものです。ただし、aの当事者の合意に関しては、仲裁合意において指定した場合に限るのか、仲裁合意後の合意により管轄裁判所を定める場合も含むものにするかは検討する必要があると思われます。また、競合する管轄に優劣を設けないということについても別の考え方があろうかと思われます。
 枠内イは、仲裁地が未定の場合の管轄裁判所についてのものです。仲裁地が未定の場合についても、被申立人が日本に住居所を有するなど日本に一定のつながりがあるときは、仲裁についても便宜を図る必要があると認められるとして、援助の対象とするものです。
 枠内ウは、仲裁地が外国にある場合は、裁判所が援助をする必要はないとの考え方によるものです。
 枠内エは、管轄違いによる移送及び裁判所の裁量による移送を認める規定です。
 次に、9ページですが、2の(2)は、証拠調べの援助の管轄等については、仲裁地を重視する立場から、仲裁地が日本にある仲裁についてのみ援助の対象とすることを前提に、仲裁地を管轄する裁判所と尋問を受けるべき者の居所等の所在地を管轄する裁判所に管轄があるとするものです。また、当事者の合意による管轄指定は認めないとの立場に立っております。なお、この場合も管轄違いによる移送及び裁判所の裁量による移送を認めることが妥当だと思われます。
 それから11ページの(3)ですが、仲裁判断書の預置制度を存置させるとした場合において、その管轄についての規律を考えなければいけないことで検討しているところです。枠内の案は、当事者が合意した裁判所と仲裁地を管轄する裁判所に管轄があるとするものです。なお、当事者の合意については、先ほど説明した2(1)と同様の問題があると思われます。

□ それでは、土地管轄の(3)までについて御意見を承りたいと思います。

○ まず、4ページの、仲裁地が決まっていない場合のイ、仲裁人の選定や忌避等に関する裁判所の協力に関してのことなのですが、これは仲裁地が定まっていない場合であっても日本法を仲裁人の選定に関する、あるいは仲裁人の忌避に関する手続の規定に適用して、仲裁人の選定あるいは仲裁人の忌避を行うという考え方に基づいているという理解でよろしゅうございますか。

● はい。

○ もう1つは、9ページの証拠調べについての援助等でございますが、これは仲裁地を基準にして証拠調べについての援助を行うということになっておりますが、仲裁地が外国の場合は証拠方法が日本にあっても協力はしないという立場ですか。

● 基本的にそうです。

○ その場合には、外国の仲裁地ということですので、外国の仲裁地の裁判所に証拠調べの援助を求めると。従前お伺いしてまだお答えをいただいていなかったかもしれませんが、それについては、いわゆる国際司法共助に載るということは、もう確認されたということでよろしゅうございますか。

● そういう形になるということです。

○ ちょっと大丈夫なのかなという気がするのですが。例えば外国の仲裁廷が、日本に証拠がある場合に、外国の裁判所に証拠調べの援助を求めて、そこから裁判所間の司法共助の枠組みに載せるという場合に、裁判所間の司法共助の枠組みに乗るというところは結構かと思うのですが、その前の段階で、その国から見て外国に証拠方法がある場合に、証拠調べの嘱託を受けてくれるということは普遍的な現象としてそうなのかなというところが疑問なのですが。

● 民訴条約なんかの証拠調べの関係で、1読の時に○○委員から、仲裁は排除されているのではないかという御指摘があったのですが、送達の関係では排除されているのですが、証拠調べの関係とか、裁判所間の共助の関係では特段排除されておりませんので。

○ それは結構なのですが、外国が、自分の国にある仲裁廷から、日本に証拠方法があるんだけれども、取り調べてくれるように日本に頼んでくださいというような申立てを一般的に受けているのかどうかと。

● それはないのではないでしょうか。だから、日本においてできるのは民訴条約にのるとか、何かの条約にのった場合に、二国間条約でも民訴条約でもいいのですけれども、外国から証拠調べのルートがある場合に、それにのってやると。だから、外国仲裁廷から直接日本の裁判所に対して援助の要請というのはないと理解していましたが。

○ ないのはわかるのですが、外国で一般的にそういうようなことを自分の国の仲裁廷から受けていないとすれば、そういう国が。

□ それはその国の国内法の問題です。

○ そうなのですが、ただ、そうだとすれば、結局は外国の仲裁地で日本に証拠がある場合には調べられませんということになるわけなのですが、諸外国はそういう規定を設けていないから悪いんだというふうに言えるほどそれが一般的な話なのかどうかというのが、私にはよくわからなかったので、日本は確かにこういうのを採って、日本としては一貫していると思うので結構なのですが、諸外国でもそういうことをしているのか少し調べた方が安全ではないかと。何か日本で一人よがりにこういうのをつくって、ほかの国が全部そんなことはしていなくて、外国が仲裁地のものも直接仲裁廷が申し立てるというスキームを採っているんだとすると、そういう批判を受ける可能性はないかなというふうに懸念したのですが。

● 外国の仲裁廷が、直接他の外国の裁判所に申し立てるというスキームがあるのではないかという御指摘ですね。

○ ほかの国ではそういうふうにやっていないという保障はないですかという疑問なのです。

○ ドイツは、証拠調べの援助に関するのは、仲裁地を基準にしていませんね。仲裁地が外国にあっても援助の対象にしていますね。

○ そういう国内法を持っていれば、それが一貫しているとすれば、ドイツは多分自分の国の仲裁廷からそういう申立てがあっても、仲裁廷が自分で申し立ててくださいと言っているような気もするのですが。

○ さっき証拠調べで非常に細かい議論がございましたけれども、外国の仲裁廷だろうが、日本の仲裁廷だろうが、そこを区別する理由がよくわからないのです。例えば、ロンドンが仲裁地で、日本人3人で仲裁をやっている場合と、東京で仲裁をやってすべてアメリカ人ですといった場合に、アメリカ人の仲裁廷と日本人の仲裁廷が、仲裁地が片やロンドン、片や日本と逆転していますけれども、そうした人たちが、日本の裁判所に、日本に証拠方法があるので、その証拠方法の提出を求めることについて裁判所の援助を求めるといった場合に、両者を区別する根拠というのはどこにあるのかなと思います。逆に司法共助で求めた場合に可能だとしたとしても、相当時間が掛かりますね。そういったものをショートカットする意味で、直接証拠方法の所在する裁判所に援助を求めるというのは、非常に仲裁にとってメリットがあると思うのですけれども。

● 英国を仲裁地とする仲裁手続は、英国法の仲裁法によって規律されるわけですね。英国の仲裁手続法に規律される手続を日本の証拠調べとドッキングさせると。

○ ただ、英国法は仲裁廷に日本の裁判所に証拠調べの援助を求めることを排除はしていないと思うのです。

● その場合、先ほどのところでは、証拠調べは日本の民訴法によるというふうに仲裁法では書くつもりなのですが、英国法の方では英国法による証拠調べでなければいけないと書いてある場合には、何法を適用して手続をやればいいのでしょうか。

○ だから、英国法は日本の民事訴訟法の規定に反しない限りで適用されて、実質法的指定という形での適用なのではないでしょうか。

● 実質法指定ではないですよね。

○ それは、日本の民訴法が適用されるということが書いてあれば、日本の民訴法の規定に抵触しない範囲で行われるということしか道はないですね。国際司法共助によったとしても、それは日本の国内法に抵触した証拠調べというのはできないですよね。それと同じことです。

● 外国の裁判所は、日本の裁判所に対して証拠調べは直接は申し立てられませんね。援助を求められませんね。でも、仲裁廷の場合はできるようにしなければいけないという御意見ですね。

○ その方が迅速にできるということが1つです。どうしてそれができないのかなというのがよくわからなかったのですけれども。

□ そう言われると確かにそうかもしれません。私は司法共助のルートでずっと考えていたものですから、その方が日本の裁判所は受けやすいかなと思っていたのですけれども、そういうショートカットの方法がいいとすれば、これは○○委員の言われるように諸外国はどうしているのかです。仲裁廷の証拠調べを外国の裁判所に直接仲裁廷から申請できるかどうか、法律がどうなっているかというのを少し調べてみないと。

○ 少なくともドイツは証拠調べに関する援助は国内外問わず行うということで規定がありますので、理論上は外国の仲裁廷がドイツの裁判所に証拠調べの援助を求めることは可能だと思うのです。

○ それは諸外国の例を調べざるを得ないと思うのです。ほかのすべての国でお互いにそれがやられているときに、日本だけがうちは受けませんというのはなかなか採りにくいですから、そういう実態がどこまであるのか、やはり調べてみないといけないだろうと思います。

□ ニュージーランドは何と書いてあるのですか。

○ ニュージーランド法には、私の記憶では書いていないと思います。

□ わかりました。これはもういいですね。

● 後でしかるべき人にお願いすることになると思いますので、よろしくお願いします。
 ドイツの場合というのは、ブリュッセル条約適用地以外のところでも全部やっているということなのですね。

○ そういう規定になっていると私は理解しておりますが。

● 1点よろしいですか、4ページのところで[仲裁合意において指定した]というのと[合意により指定した]というのを2つ書いてあるのですが、任意規定というふうな形で解したらどうかなというふうに今のところ思っているのですが、そういうふうに考えた場合には、[合意により指定した]ということで構わないのかなというふうに思っているのですが、それについて特に御意見がございましたら。よろしいでしょうか。

□ 仲裁合意でなければいけないというふうに限定することはないような気がしますけれども、いかがですか。
 それでは、預置はいいということで「(4)仲裁判断取消しの裁判の管轄等について」です。

● 12ページのところですが、仲裁判断取消しの裁判の管轄について、仲裁合意の当事者の意思と仲裁地を重視するとともに被申立人の便宜を考慮して、民事訴訟の原則にならい、被申立人の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所も管轄裁判所としたものです。また、モデル法の考え方に合わせて、外国仲裁判断は取消しの裁判の対象とならないと考えています。なお、13ページの説明にあるとおりの理由から、管轄違いによる移送及び裁量による移送を認めることが考えられます。
 2の(5)は、仲裁判断の承認執行の裁判の管轄について、当事者の合意と仲裁地に加えて、外国判決の執行判決の裁判管轄を参考に、被申立人の普通裁判籍及び請求の目的または差し押さえることができる被申立人の財産の各所在地を管轄する裁判所に管轄を認めたものです。ただし、枠内アの考え方は、民事執行法の規定と異なり、申立人は、aないしdのいずれも任意に選択することができるとしています。
 なお、仲裁判断の執行許否の裁判は、外国仲裁判断も対象とする必要があるため、管轄規定も仲裁地のいかんを問わず適用されることになりますが、外国仲裁判断について、その当事者が仲裁合意等で指定した裁判所に管轄を認めるべきかどうかは検討する必要があります。また、民事執行法の外国判決の執行判決の裁判の管轄は専属管轄であるとされており、仲裁判断の執行許否の判断も同様に専属管轄とすべきかどうかについても引き続き検討する必要があると思われます。
 ちょっと性質が違いますが、16ページの「(6)通知についての援助の管轄等について」も一緒に御検討していただければと思います。
 仲裁の当事者または仲裁廷や仲裁機関が行う通知について、裁判所の援助の対象にするかどうかについては、先ほど検討していただいた消費者保護の在り方とも併せて検討する必要があると思われます。援助を行うとした場合は、枠内のように民法97条の2の公示による意思表示の規定に類似した規定を設けることも考えられます。援助の対象とする必要があるかどうか、また対象にするとした場合の考え方について御意見をいただければと思います。

□ それでは、取消しと執行の裁判の管轄については、いかがでしょうか。取消しの方は、仲裁判断をしたところに関係が深いということになりますし、執行は目的財産があるかというようなことにも関係しますので、こういう管轄が考えられているわけですけれども、何かございますでしょうか。
 それから、専属管轄というのもありますけれども、専属管轄にするまでのことはないという気もいたします。むしろ、向こうの方を直せというような感じもいたしますけれども。

● 民事執行法上の執行判決の関係で、なぜあれが専属管轄になったのかということについて、明治の帝国議会の議事録とか、元老院のものをいろいろ調査したところ、それについて明確に言及しているものはありませんでした。民事執行法全体について専属管轄にするべきだということだけで、執行判決について独自に議論をされているところはないようです。

□ よろしいですか。最後の民法97条の2に類似した規定というような、通知についての援助の管轄はいかがでしょうか。

● これについては消費者保護の関係がございますので。

□ 援助の対象にするか否かということ自身がまず問題になりますので、これは消費者保護との関係で、第3読会でまた検討するということにさせていただきたいと思います。
 事物管轄のところに少し戻ると、○○委員何かございますでしょうか。さっきの事物管轄についてどういうことをやることによって、簡裁か地裁かということで、戻りましょうと先ほど私が言いましたけれども、何か御意見がございますか。

○ 地方裁判所というふうに今決められるかどうかというよりは、裁判所に援助がくる、あるいは申立てがくるものの大枠が決まってからでないと、なかなか全体像が見えないのではないだろうかということだけ申し上げたかっただけですので。

□ わかりました。

○ ○○委員の、検討が要るというのは、更に簡易裁判所を含めるかどうかについて検討が要るということで、高等裁判所の方は考えていないわけですか。

○ 考えていないです。ただ、その辺もよくわかりませんので、簡易裁判所を含めてという意味です。

□ 公示送達などが問題となる場合に、確かに簡裁をどうするかという問題はあると思いますけれども。
 よろしゅうございますか、大変最後は急ぎましたけれども。
 それでは、次回の予告について事務局の方からよろしくお願いいたします。

【次回の予定等、閉会】

● まず、パブリック・コメントの関係等について一言御説明したいと思います。
 第5回の冒頭で御了解をいただいたように、本日までに御議論をいただいた内容についてパブリック・コメントに付する案文を座長と相談の上作成したいと思っております。作成した案文については、各委員に今週の金曜日までにメール等で差し上げたいと思いますので、1週間以内に御回答をお寄せいただければと存じます。
 御意見を寄せられたもののうち、必要な箇所は修正させていただきますが、修正部分等についても、事務局としては、座長と相談の上進めていきたいと考えております。全員の意見が一致すべく努力をしていきたいと考えておりますが、最終的にそうなるかどうかというのも、最終的には座長に御一任いただければというふうにお願い申し上げます。
 こう申しましても、決して無理に取りまとめをしようという趣旨ではございませんので、念のため申し添えさせていただきたいと思います。
 こうしてでき上がった中間試案を8月の初めから9月の中旬ごろまでパブリック・コメントに付するという予定です。その後、パブリック・コメントの結果を踏まえて再び検討会において更に具体的な検討をしていただくということになっております。
 なお、中間試案とともに、事務局において補足説明を作成しますので、御了承願いたいと思います。

□ 今のようなスケジュールで進めさせていただきたいと思います。今週の金曜日にメールで。

● メールかもしくはファックスかでお送りしたいと思います。

□ これは相当分厚いものになるのですか。

● 大体40ページぐらいでしょうか。

□ それについて御意見をいただく場合に、座長に一任と言われても、趣旨を正確に把握して、電話などを掛けないで済むようにしたいと思いますので、こういうふうに直せとか、こうだとかいうことを、かなり詳しく理由等を書いていただければ、なるべくその趣旨に従って直させていただきたいと思います。パブリック・コメントに付する前に集まっていただく機会がございませんので、少し詳しく御説明いただければと思っております。
 それでよろしゅうございますか。

● はい。

□ それでは、次回の予定をもう一度お願いいたします。

● 次回の検討会は、10月17日木曜日というふうに当初御連絡差し上げていたのですが、事前にメールで御連絡差し上げているのですが、10月22日火曜日の午後1時30分とさせていただきたいと思っているのですが、それでよろしいでしょうか。

□ よろしいですね。それでは、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 今日は、時間を大変超過いたしまして、本当に申し訳ございませんでした。本当に御苦労様でした。ありがとうございました。

(以上)