コンテンツ強化専門調査会(第5回)議事録



  1. 日 時 : 平成23年1月17日(月)15:00〜17:00
  2. 場 所 : 知的財産戦略推進事務局会議室
  3. 出席者 :
    【担当政務官】
    和田隆志 内閣府大臣政務官
    【委 員】
    中村会長、大多委員、角川委員、川上委員、佐藤委員、末吉委員、杉山委員、谷口委員、別所委員、吉羽委員、佐藤本部員、里中本部員、中山本部員、三尾本部員
    【事務局】
    近藤事務局長、上田次長、芝田次長、安藤参事官、奈良参事官、内藤企画官
    【担当府省】
    総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 安藤課長
    文化庁 長官官房 著作権課 永山課長
    経済産業省 商務情報政策局 文化情報関連産業課 信谷課長
    【有識者】
    国立国会図書館館長 長尾 真
    (社)日本電子書籍出版社協会監事・弁護士 村瀬 拓男
    (株)ボイジャー代表取締役社長 萩野 正昭
    グーグル(株)パートナー事業開発本部ストラテジックパートナーデベロップメントマネージャー  佐藤 陽一
    弁護士 福井 健策
    慶應義塾大学文学部教授 糸賀  雅児


○中村会長
 皆さん、明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
 ただいまから、コンテンツ強化専門調査会、第5回の会合を開催いたします。ご多忙のところご参集いただきまして、誠にありがとうございました。
 今日は、知財計画2011の策定に向けまして、とても大きな課題であります書籍の電子配信、電子書籍を巡る課題について議論をしたいと存じます。昨年、「電子書籍元年」と呼ばれて、非常に大きな政策論議となりました。この書籍の電子配信につきましては、総務省、文部科学省、そして経済産業省による、いわゆる三省懇談会、「デジタルネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」が開かれました。また、その後も各省庁で研究会が開かれたり、実証実験が推進されたり、予算措置が講じられたりと、政策が進んでいる面もございます。
 そこで、この知財本部といたしましても、これを重要案件と捉えて、知財計画に政策を反映させていくという動きになってきているわけでございますけれども、こうした各省庁での取組、考え等については、内閣官房知財本部として汲み上げることができるのは当然なのですけれども、同時に有識者の皆様、関係者の皆様からも直接ご意見、考え方などをお聞きいたしまして、政府全体の方向性を整理し、後押しすべきものは後押しするということで進めてまいりたいと思います。従いまして、各省庁での議論との重複、二度手間、三度手間になる面もあるんですけれども、そのあたりの考え方、ご理解をいただきたいと存じます。特に今日は各省庁での枠を超えるような問題ですとか、大きな政策判断を要する問題などについてご議論を賜ればと考えております。
 また、今日は3省庁の代表の方々にもオブザーバーとして参加をいただいております。これはかねて近藤局長からもお話がありますように、この場は仕分けの場ではなくて、政策を後押しする場でありますので、皆さん積極的に入り込んで議論をいただければと存じます。
 なお、本日は大ア委員、久夛良木委員から欠席の連絡をいただいております。また、佐藤委員、川上委員、大多委員が少し遅れるという連絡をいただいたということでございます。
 また、知的財産戦略本部員からは、佐藤本部員、里中本部員、中山本部員、三尾本部員にお越しいただいております。
 また、今日は、我々のもう一つの専門調査会の知的財産による競争力強化国際標準化専門調査会の会長であり、国際標準化戦略タスクフォースの座長でもあります妹尾会長にもご出席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 そして、今日は関係者といたしまして、順に読み上げますと、慶應義塾大学文学部教授糸賀様、グーグル株式会社ストラテジックパートナーデベロップメントマネージャー佐藤様、国立国会図書館長長尾様、株式会社ボイジャー代表取締役社長萩野様、弁護士福井様、日本電子書籍出版社協会監事・弁護士村瀬様にお越しいただいております。どうもありがとうございます。
 また、関係省庁からも、オブザーバーとして、総務省情報通信行政局安藤課長、文化庁著作権課永山課長、経済産業省文化情報関連産業課信谷課長にご出席いただいております。
 では、早速ですが、書籍の電子配信を巡る課題について議論を進めていきたいと思います。
 まず、事務局から全体の状況について説明をお願いします。

○奈良参事官
 それでは、説明申し上げます。説明の前に資料の確認をさせていただきたいと思います。
 まず、議事次第がございまして、資料1が書籍の電子配信に関する検討課題という討議用の資料でございます。それから、資料2が本日ご出席の皆様からいただいた資料でございます。2−1−1、2−1−2が長尾様から提供いただいた資料でございます。それから、2−2が村瀬様から提供いただいた資料。それから、2−3が萩野様から提供いただいた資料。それから、2−4が佐藤様から提供いただいた資料。2−5が福井様から提供いただいた資料。福井様の資料につきましては、机上用ということで後ほどプレゼンいただく資料も配布してございます。それから、2−6が糸賀様の資料でございます。それから、2−7が吉羽委員から提供いただいた資料でございます。
 それから、日本文藝家協会の三田様にご出席をお願いしましたが、本日かなわないということでございまして、ご意見をいただいており、2−8として配布してございます。これは後ほどご紹介させていただきたいと思います。
 それから、参考資料1が前回の主な意見、参考資料2が今後のスケジュールについてということでございます。
 それから、一番下でございますけれども、資料番号を振ってございませんけれども、「知的財産推進計画2011の策定に向けた意見募集」ということで、今、2011に向けて議論をしているわけでございますけれども、広く国民の皆様からもご意見を募集したいと考えておりまして、本日から2月7日まで広く意見を募集したいと考えてございます。本日ご出席の関係者の皆様方、あるいは、本日傍聴に来ていただいている方々、積極的にご意見をいただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず私のほうから書籍の電子配信を巡る全体の状況につきまして、ご説明をさせていただきたいと思います。資料1をご覧いただきたいと思います。
 1枚めくっていただきまして、電子書籍市場を巡るビジネスの状況でございます。ご案内のとおり、米国におきまして、電子書籍端末が急速に普及、あるいは、書籍の検索サービス等も普及しているところでございます。我が国におきましても、昨年12月より対応の端末が販売されるなど、民間の取組が始まりつつあるところでございます。ただし、下のほうにございますとおり、国内におきましては、現時点では書籍コンテンツの規模は大体2万から3万冊程度ということでございまして、米国と比較すると数で言えばまだまだ少ないというところでございます。
 2ページをご覧ください。各国の国立図書館におけるデジタルアーカイブを巡る状況でございます。日本は、真ん中にございますけれども、国立国会図書館におきまして、約90万冊のデジタル化を予定、そのうち現在は明治・大正期の約15万冊をウェブ公開しているところでございます。
 これに対しまして、左側のヨーロッパのほうでございますけれども、EU加盟各国が連携いたしまして、資料600万点をウェブ公開、1,000万点の公開を目指しているという取組、あるいは、真ん中の中国、あるいは韓国でもそういった取組が起こってきている。
 それから、右側のアメリカのほうにおきましては、米国の議会図書館でございますけれども、「歴史資料」に関しまして1,500万点をデジタル化済み。あるいは、民間の動きでございますけれども、グーグルが700万冊の出版物をデジタル化済み。こういった状況があるわけです。
 3ページをご覧いただきたいと思います。書籍の電子配信に関する課題イメージでございまして、これは前回もお示ししたものでございますが、大きく言いますと、左側が国のアーカイブとしての国立国会図書館を中心としていかにアーカイブの活用を図っていくかという視点、それから、右側がいかに電子書籍の市場の整理を図っていくかという視点でございます。
 左側のほうにいきますと、国会図書館に対するデジタル化を促進する、あるいは、検索の容易化を図っていくというような課題があろうかと思っております。また、現在は国会図書館で見るという状況でございますけれども、それを公立図書館でも見られるようにする、こういうような課題がある。さらには、ビジネスとの棲み分けを図りながら、外部でも積極的に活用していく必要があるのではないか、こういうような課題があるわけでございます。
 右側のほうにまいりますと、あらゆる端末で電子書籍が提供できるように、中間ファイルフォーマットの策定、あるいは、国際標準化の問題でありますとか、あるいは、各エンドユーザーにおいて日本語が正確にあらわれるよう、そういった最終ファイルフォーマットの日本語化、こういった課題があるわけです。また、上の著作者、出版者との関係で言いますと、出版者への権利付与、権利処理、あるいは、契約促進といったような課題があるわけです。
 4ページにまいりまして、今申し上げたところと若干重複いたしますが、論点例ということで幾つか掲げておりますので、本日の議論の参考にしていただければと思います。
 1点目は電子書籍市場の整備ということで、ビジネスを加速化するための取組として何が考えられるかということでございますけれども、方向性の例として、契約基盤を整備していく必要がある。例えば、出版者への権利付与という問題についてどう考えるか、あるいは、出版者・著作者間の契約を促進するための仕組みとしてどういうことが考えられるだろうか。それから、マルチプラットフォーム戦略を可能とするようなフォーマットの作成、最終ファイルフォーマットへの日本語対応化、それから、著作権侵害対策、こういったような課題があろうかと考えております。
 5ページ目にまいりまして、大きな2点目といたしまして、国立国会図書館のデジタルアーカイブの活用という視点でございまして、知的インフラの強化という観点から、デジタル化とともに外部提供を進めていくことが重要ではないかと、そのためにどのような措置が必要かということでございます。
 方向性の例といたしましては、関係者全体がwin-winの構築になるルール設定ができないかどうか。提供する対象範囲を限定する、あるいは、利便性について一定の制限をかけていく。あるいは、料金設定ということについてどう考えるか、こういったことを考えながらルール設定ができないかどうか。それから、公立図書館等にも積極的に提供すべきではないか。それから、過去のデジタルアーカイブにつきましては、権利処理に時間がかかっているということがございますので、これを効率的に進める必要があるのではないか。あるいは、関係者の合意に基づきながら電子納本というものも進めるべきではないか。こういうような課題があろうかと思っております。
 それから、6ページにまいりまして、最後の3点目といたしまして、電子書籍を活用した経済社会の活性化ということで、せっかくこのようなツールがあるわけでございますので、これを我が国の経済社会の活性化につなげていけないか。一つは、電子書籍になりますと、海外展開も容易になるということで、それを促進する必要があるのではないか。あるいは、電子教材を普及促進することによって、教育の質を高められるのではないか。あるいは、高齢者や障害を持った方に対するやさしい書籍というものを提供できるのではないか、こういうような観点があろうかというふうに考えております。
 7ページ以降につきましては、ご参考でございますけれども、昨年6月にまとめました総務省、文科省、経済産業省における懇談会における取りまとめの概要でございます。
 それから、8ページにつきましては、後ほどご説明あるかもしれませんが、国立国会図書館におけるデジタルデータの状況ということで、大変見えにくくて恐縮でございますけれども、国会図書館では現在1968年までの図書等のデジタル化を推進しているということでございまして、そのうち、現在は明治・大正期の刊行のものにつきまして提供しているということでございます。
 9ページがそのものでございまして、現在約15万冊につきまして、インターネットで無償で提供しているという状況でございます。
 それから、10ページでございますけれども、公立図書館におけるネットの貸出という動きも幾つか出ているところでございまして、例えば千代田区立図書館におきましては、最大2週間の無償貸出サービスを実施している。あるいは、アメリカにおきましても、幾つか条件を加えながら一般の方に貸出をするというような動きも出てきているところでございます。
 それから、11ページでございますけれども、アーカイブにつきましては、権利処理をすることに大変時間がかかっているわけでございまして、そういう場合には文化庁長官による裁定手続きというものを利用することが可能になっているわけでございます。しかしながら、そもそも著作権があるのかどうか、あるいは、あっても相続人がどこに行っているのかというようなことを手繰るのに非常に困難な場合が多いというふうに伺っているところでございます。
 以上でございます。
 それから、資料2−8をご覧いただきたいと思います。本日、作家のお立場からということで、日本文藝家協会副理事長の三田誠広先生にご出席をお願いしたところ、本日出席がかなわなかったということでございまして、書面をいただいているところでございます。簡単にご紹介させていただきますけれども、基本的には日本語独特の問題に伴う様々な課題があるというお話でございました。
 まず、1点目が、縦書きルビつきの基本フォーマットによりまして、書籍の互換性を高めることが必要だということ。
 2点目といたしまして、今は印刷会社ごとにコードがバラバラでありますけれども、これを統一する必要があるのではないかということでございます。
 3点目といたしまして、「正字」と言われるものの対応ということで、例えば「尊敬」の「尊」の字をつくりとする漢字のように、わずかな書体の違いがありますけれども、そういうものにも対応できるようにする必要があるのではないかというお話。
 2ページ目にまいりまして、4点目でございますけれども、今度はユーザーのほうでどの端末でも、正字あるいはJIS外の文字が正確に表示できるような環境が必要だということでございます。
 それから、5点目が国会図書館の関係で、現在1968年くらいまでデジタル化を進めているわけでございますが、これを全国の図書館あるいは一般ユーザーが利用できるようなシステムの確立が求められているということでございます。
 それから、3枚目にまいりまして、6点目といたしまして、電子書籍の不正流出という問題でございまして、不正流出が起こっても出版者が対応できないという問題でございます。契約で対応することも可能であるけれども、安心して作品を出版できる環境をつくるためには、新しい何らかの基準が必要ではないかというご意見でございます。
 7点目でございますけれども、電子書籍の時代になりますと、世界に広がるということで、その場合に我が国の著作権の保護期間が50年となっているのは非常に問題ではないかというようなご意見でございました。
 以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございました。
 ここで、和田大臣政務官が到着されましたので、ご挨拶を賜りたいと存じます。
 よろしくどうぞお願いいたします。

○和田大臣政務官
 大臣政務官の和田でございます。今日は、皆様方お忙しい中こんなにも多数の方々に議論に参加していただきまして、ありがとうございます。内閣の改造がこの数日間目下我々の最重要事項になってしまっておりまして、少し出てくるのが遅れましたことをおわび申し上げます。
 今回第5回目ということで専門調査会、皆様方にご参加いただきますが、我々のほうでは知財計画2011を策定するために、色々な分野での検討を進めております。今日は特に電子書籍についてご議論いただく予定だと伺っておりますが、それに関わる関係多方面からいらっしゃっていただいていることを感謝申し上げます。
 私自身まだ小さな子の子育て中の父親でございまして、早速、電子書籍の分野にも父親として触れさせていただいております。子どもに色々な本を読んで聞かせるにも、事務方からこれだけたくさん会議をいただいているものですから、私には本を買いにいく時間がなく、夜、コンピュータからダウンロードするということが日課になっております。やってみて思いますのが、本当に便利なものでございます。ただ、便利なものである以上、そこには気をつけなければいけないこともあるなと確かに思いました。
 この分野は、コンテンツを普及させることは大事だと思っておりますので、是非それを促進したいと思いますが、コンテンツをつくっていただいている方々の気持ちになることも必要だというふうに思いました。自分で子どもを育てておりまして、子どもにこんなに興味を持ってもらえるようなものをつくってくださる方のありがたみを日々感じ取っておりまして、そうしたコンテンツを生み出してくださる方々の権利保護をしっかりと図りながら、だけれども、生み出していただいたものは世の中に広めていくということが、これからの社会に求められているのではないかなと思っています。
 そんなところを、是非皆様方のご議論を聞かせていただきながら、政治家として考えていきたいと思います。今日はどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○中村会長
 ありがとうございました。
 では、有識者の方々からのヒアリングを進めてまいりたいと思います。今日は6名の方にお越しいただいておりまして、長尾様、村瀬様、萩野様、佐藤様、福井様、糸賀様の順でお願いしたいと思っております。ご意見、ご質問については、ヒアリングが一通り終わりましたら、まとめて行いたいと思っておりますが、大勢の関係者の方にお越しいただいておりますので、意見交換の時間をとるとなりますと、お一方10分程度でお話をいただければ助かります。その後、Q&Aに向かいたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 では、まずは長尾様からご説明をお願いできますでしょうか。

○長尾氏
 それでは、資料2−1−1と2−1−2を用いてご説明いたします。
 国立国会図書館のアーカイブの活用ということでございまして、1ページを開いていただきますと、NDL(国立国会図書館)におけるアーカイブについてでございます。どの国におきましても、自国の出版物をすべて収集・保存し、利用に供することは国としての使命であると認識されておりまして、国立国会図書館は現在、納本制度によって出版物を網羅的に集めるという使命を果たしているわけでございます。
 集めた資料は情報技術によりまして、日本中どこにいても利用できるようにすることが望ましいということは当然かと思います。国立国会図書館は国の税金によって賄われているわけでございますので、来館する人たち、来館できる人たちだけではなくて、日本中どこにいても同じような利用ができるようにするというのが理想的でございます。
 そのためには、何と言いましても情報通信技術を使わなければいけないわけで、所蔵資料のデジタル化を一生懸命やり始めておりまして、先ほどの資料にもございましたように、1968年までの図書のデジタル化を今年の3月末までに行うということになっております。
 その他に、国の関係のWebサイトの収集をやっております。最近は貴重な情報がWebサイトに出ておりますので、国、地方公共団体、それから、国公立大学、独立行政法人のWebサイトをとりあえず集める。国関係につきましては毎月1回、それから、大学あるいは独立行政法人等につきましては年に4回ぐらい集めるということで、昨年の4月から本格的にやっております。
 それから、もう一つはオンライン出版物がどんどん増えてきておりますので、これの電子納本ということが大切になってくるわけでございます。紙にはプリントされていなくて、電子的にだけ出版されているものを含めて、全部を将来の日本の人たちのために集めて保存し、活用されるという環境をつくっていかなければならないということでございまして、世界各国そういう方向で頑張っております。
 オンライン出版物の電子納本が行われますと、これはタイムスタンプというものを押しますから、そうすることによって電子著作物の先取権が明確にできるということもあり得るわけでございます。
 2ページにいきまして、アーカイブされました資料は種々の利用目的に合うように適切に組織化される必要がございます。
 書誌検索、これはOPAC検索と言っておりますけれども、その他に目次検索や本文テキスト検索機能によって、OPAC検索では得られない情報探索が可能であるようにすべきであるというわけで、現在色々な検索のソフトウエアを我々も開発しておりますし、世の中にもあるということでございます。
 しかし、これは必ずしも検索した結果すべての全文が検索した人の目に触れるということではございませんで、グーグルなどがやっておりますようなスニペット表示であるとか、色々な制限された表示をするのは当然のことかと思いますが、検索については色々なことを自由にできるようにすべきだということ。つまり情報の所在を明確にしていくということが最も必要とされることでございます。
 次の3ページからにつきましては、資料2−1−2という図を見ながらお聞きいただけるとありがたく思います。NDLのアーカイブシステムと言いますのは、図の黒の箱になっておりますけれども、そこは出版者にとりましては一種のクラウドであるとみなすことができるのではないかと思っております。つまり、出版者の方々は出版物をNDLアーカイブに置きまして、買いたい人にはそこから販売することがあり得ると。
 それから、販売価格は当然出版社が設定なさる。それから、読みたい方々は過去からのすべての出版物について検索するということがやりたいことでございますから、現在市販されているものだけではなくて、それ以前のものも一括して検索して自分の読みたいものを探し出したいということでございますので、NDLのアーカイブを中心として流通プラットフォームがつくられていく可能性もあるのではないかと考えているわけでございます。
 次に4ページですけれども、NDLアーカイブを使って販売する時の著作権処理、あるいは、売上金の出版社、著作権者への配分ということにつきましては、出版物流通センターと仮称で言っておりますところが世話をすることがよろしいのではないかというふうに考えているところでございます。
 この流通センターは複数あっていいわけでございまして、それぞれに特徴のある付加的サービスをすることが当然考えられるわけでございます。
 著作権の切れたもの、あるいは、著作権処理のなされたもの、オーファンワークス、孤児出版物で文化庁長官の裁定を得たものは、NDLアーカイブから無料で取り出して利用できるということになろうかと思います。
 次に5ページですけれども、NDLの貸出しサービスでございます。アーカイブからは、出版社はそれを使って販売ということをやるわけですけれども、図書館というのは貸出しサービスをすることが仕事でございます。NDLアーカイブの資料につきましては、館内にお出でになる方には当然無料で閲覧できるべきだということでございます。
 公共図書館への貸出しというものは、適当な料金が伴わなければ出版社側は成り立たないということになると思いますから、適当な料金を出版社に支払うことによって、公共図書館に国会図書館から出していくということがあり得るのではないか。ただ、その料金、お金はどこから出したかということにつきましてはいろいろな可能性がある。例えば公共図書館側で持つということもあり得るかもしれませんし、韓国がある程度やっておりますように、国としてそれを支援するということもあるかもしれません。
 あるいは、現在市場で入手できない出版物に限って、国会図書館から公共図書館に貸出しをするというふうに、資料の種類を限定することもあり得るかもしれません。こういったことについては、色々な関係者の議論によって決めていけばよろしいのではないかということでございます。
 6ページですけれども、公共図書館に貸し出しました資料につきましては、何人もが自由に見るというわけにはいかないわけでございまして、特別の端末で要求した人に対してだけ行うということを考えてもいいのではないかと。
 それから、その次の黒ポツですけれども、NDLから個人への貸出しということももちろんあり得るわけでございまして、その場合は1日当たり、あるいは、1週間当たり、適当な単位で料金を出版社が指定することによって、出版社に貸出しをした時のお金が入っていくというふうにすることも十分考えられるのではないか。
 そういうふうにしまして、NDLにあります、あるいは、NDLに入ってきます電子出版物について、貸出しあるいは販売等によって日本中の人に渡す代わりに、それに対応する料金を適切な形でとって、それを出版社あるいは権利者にお渡しすると、そういうマネジメントをやるものとして出版物流通センターというものを考えることができるのではないかということでございまして、その出版物流通センターは権利処理もやるということになろうかと思っております。
 次に、7ページ、最後のページですけれども、いずれにしましても最も大切なことは、せっかく国の税金でやっております国会図書館の資料、しかも、それを大々的にデジタル化するために相当なお金を使わせていただいているわけでございますから、その資料ができるだけ円滑に日本中のすべての人に利用されるシステムをつくることが必要である。win-winの関係を考える。つまり、利用者も権利者もそれによってベネフィットを受ける、満足できるという形のビジネスモデルを是非とも構築する必要があるのではないかということでございます。
 2つ目は、電子読書端末がどんどん出てきておりますけれども、その電子読書端末の種類に関係なく、種々の情報資源を使えるように、利用者の立場に立った電子書籍配信プラットフォームをつくることが大切である。利用者の囲い込みといったことが新聞などにちょこちょこ出たりしておりますけれども、利用者としてはどの端末装置を買っても、どこにある電子情報資源も自由に使える。そして、適切なお金を払う、そういうモデル、システムを実現していくことが必要ではないかということでございまして、2−1−2の図もそのための一つのモデルでございまして、いろいろ議論を煮詰めていくことによって妥当なものをつくることが、現時点で最も大切なことではないかというふうに思っているところでございます。
 以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございました。
 次に、村瀬様からお願いします。

○村瀬氏
 それではお話させていただきます。私の資料は2−2ですが、資料1の3ページ、書籍の電子配信に関する課題イメージ、事務局のほうでつくっていただいた資料ですが、このイメージを前提として述べさせていただいておりますので、併せてご覧いただければと思います。
 大きく分けて2つお話したいことがあるのですが、1つは、今まさに長尾館長がおっしゃられた国立国会図書館の蔵書デジタル化及び利用将来像について、出版界、私自身が出版界を代表する者では必ずしもありませんけれども、色々な議論の場の中で見聞きしたこと等を踏まえてまとめさせていただきました。
 まず基本的な視点としては、今回ターゲットなっているものは「出版物」であって、その「出版物」というものは、その多くが民間の営利活動の中で生産されているものであるということを踏まえていただきたい。その収益が次の生産の基盤となっている。ここをまず外さない議論が絶対的に求められるというように考えております。
 この資料にはありませんが、作家の塩野七生さんが『ローマ人の物語』を15年かけて全15巻をこの間完結されましたけれども、全国各地を巡回し、書店の方々を招いてお礼パーティを開催された際に、塩野さんは「15年間他の仕事は一切しないで『ローマ人の物語』にかかりきりになれたのは、書店に来てお金を出して買ってくださったお客様がいたからにほかなりません。その収入で私は生活し、執筆に専念し、資料を買い込み、次の巻を書くための勉強に時間を割くことができました」とおっしゃっています。
 これは著者の例ですけれども、まさに出版者にも同じことが妥当するわけです。ですので、今後このような色々な書籍の電子配信を巡る議論の中で、このような営利企業、社会の営利活動の中でのサイクルに関して、可能な限り悪影響を及ぼさないような方策を考えなければいけないのではないかというのが、何より基本的な視点として述べさせていただきたいところです。
 それに関連して、この3ページの課題イメージの図でいけば、国会図書館から公共図書館、大学図書館への提供等についても議論の対象となるとされておりますが、これに関しては出版界の議論の中で図書館ごとの独自の書籍収集活動に過大な影響が出ないか。すなわちすべて電子データとなって国立国会図書館から電子的な配信を受けられるのであれば、わざわざ蔵書として持つ必要はないのではないか。このことは、図書館に一定部数購入していただくことを想定した上でつくられる、市場的にはそんなに過大に売れるものではないけれども、是非つくっておきたいような書籍という企画がたくさんあります。このようなものに過大な影響が出る可能性があるのではないかというようにも考えております。
 3番目、外部への提供についてに関してですが、当初デジタル化されるのは書籍刊行当時の版面イメージということになっております。そうすると、その利用範囲は実際には極めて限定されるのではないか。すなわち版面というのは生き物でございます。例えば30年前の本の版面と今の版面というのは明らかに違うということを読書家の方は体感的に感じておられる。そういうことで言うと、今の段階での版面イメージ、刊行当時の版面イメージの固定というものでは、将来色々な利用をしようという場合にも限界があるのではないか。また、その利用に関していろいろ問題はあるにせよ、テキスト化その他も、書籍の版面を外れたデータとしての利用の道筋を考えておくべきではないかというように思います。
 それから、利用者への直接提供についてですが、既に日本においては電子書籍のマーケットは現実に存在しております。これからかなりのスピードでもうワンランク上のマーケットができてくるでしょう。この電子書籍の場合には、書籍と違い、ものへの部分というのはございませんから、電子的な閲覧というところに関して言えば、基本的には図書館発のものであっても、既にマーケット上で営利事業の一端として投入されるコンテンツにしても、ユーザーから見ても分ける意味がないわけですね。ですから、利用期間その他色々な条件等は、そういう意味で言えば市場の中できちんとコントロールできるような仕組み、すなわち図書館独自のルール的なところが反映されないような形が是非とも望まれるのではないかと考えます。
 それから、冒頭に申し上げたんですが、あくまでも今回議論しているのは「出版物」であるというふうに考えています。色々な資料等はペーパーとか論文とかその他に関しては、必ずしも出版物というわけではなくて、著作物がそのままイコールである場合もありますけれども、日本における出版物の多くは、そこの要素は、主に著作物ではありますけれども、完全なイコールではありません。場合によっては複数の著作物、ないしは、著作物以外のものも含めて、出版物として束ねられている。
 実際にはそれが保存され、流通されるということになりますので、その「出版物」の制作過程、権利の処理過程ということに関して言えば、その「出版物」を作成・編集した出版者に実質的に権利情報が集中しております。その権利情報を有効活用するような方策を考える。我々出版社の団体側としては出版者に対しての権利付与という運動をずっと続けておりますけれども、それはこの限りで言えば著作権その他の情報の集約化を図ることに確実に資することになるというように考えますので、そのあたりについて是非とも積極的なご議論をお願いしたいという気持ちがあります。
 2ページ目にいっていただいて、国会図書館発の話とは異なる民間の市場についてですが、大きく分けると3つぐらいの問題があるのかなというふうに考えております。1つは、長尾館長も先ほどおっしゃったコンテンツ単位の囲い込みというものに関しては、基本的には是非ともこれにあらがっていきたいというようなことを考えております。実際に議論されているフォーマットの標準化も、コンテンツの囲い込みに対して、容易に囲い込まれないための方策の一つですし。
 もう一つは、価格の問題についてもやはり触れざるを得ない。現実には書籍に関しては、書籍や雑誌は定価販売ができるというように独禁法の例外規定として認知されておりますけれども、電子書籍はそうではないともされています。先ほどから出版社が価格を決めるべきだとおっしゃっている部分が、どこまでそれが射程範囲になるのか、このあたりは実際の議論としては避けて通ることはできないというように考えております。現実問題としては、出版者側としては、一定範囲での版元にある価格拘束を肯定できる、そのような方向が妥当であろうというように考えております。
 さらに、この2番で言えば、そもそも出版というのはもともと「出版権」規定を見るまでもなく、著作物を独占的に頒布する権利という形で発展してきたものです。ただ、そのデジタル環境が進展することにより、当然に独占するという地位はとうに失われているわけですが、今後は著者・出版者、その他の関係者がどのように役割分担を行うかということを明確にする必要があると考えております。
 既に出版者の団体である書協においては新しい出版契約のひな型を発表いたしましたが、その点を意識したものであります。このあたりについても積極的な認識をいただきたいということ。それから、それに関連していますが、デジタルだから安くなるというような非常に乱暴な議論というのは基本的にはやめていただきたいという部分があります。
 最後に、これまた昨今非常に大きな話題になっておりますが、デジタル海賊版等について。現実では出版者が著作権法上の権利者でないことによる対応の遅れは著しく顕在化しております。結局、海賊版による被害というのは個別の著作物ごとに見ればそれほど大きくならない一方、それに対応する負担というのは極めて過大になります。それが例えば著作者個人にかぶさってきているという状況がある。これが実際の対応が遅れている最大のポイントの一つであろうと我々は考えています。
 また、このデジタル海賊版に関しては、単に通常の「物」による海賊版とは異なり、非常に簡単に国境を越え、色々な形で捕捉が難しい問題がありますので、通常の司法的な解決のみに委ねない問題解決のスキームの構築というのが、国単位、それから国家間の単位で議論していただく必要があると考えています。
 以上、短いですけれども、私からの発表とさせていただきます。

○中村会長
 ありがとうございました。
 続いて、萩野様からお願いします。

○萩野氏
 萩野です。まず私が最初に申し上げたいこと、現在私たちが総務省の「新ICT利活用サービス創出支援事業」、これは電子出版環境整備と言われていますけれども、これの下で取り組んでいる電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト、そして、EPUB日本語拡張仕様推進委員会、EPUB日本語拡張仕様策定についての基本的な理解についてです。
 まず、電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクトは、様々な端末、プラットフォームで利活用でき、十分な日本語表現を備え、かつ、だれもができるオープン、公開されたということですね、フリー、利用保障が中間(交換)フォーマットの開発と策定ということになっています。EPUB日本語仕様策定ということについては、海外閲覧フォーマットとして有力なフォーラム標準の一つであるEPUBについて、日本語表現の対応が可能となるようなEPUB日本語拡張仕様の策定ということになっています。この2つが対立するもののような言われ方をして、相手方を攻撃する材料に使われていることに意見を申し上げたいということです。
 表をご覧いただきたいんですが、これは中間(交換)フォーマットの概略図です。中間(交換)フォーマットの対象となっているのは、シャープが開発してきましたXMDFと、ボイジャーが開発した.BOOK−TTXが、長い間日本語の表現ということに対して一定の実績があるということで、この2つの共通部分を抽出して、XMLによるタグの規定、スタイルと内容の分離というようなことを行っているわけです。
 右側に書かれているのがそうなんですけれども、その中でXMDF独自のもの、TTX独自のものというのは、どうしてもはみ出て、出てくることは事実なんですけれども、真ん中に共通の部分としてなるべく包含していこうということです。例えばXMDF独自のもののフォーマットというのは、辞書関係とか、コミックのアニメ的な表現とか、こういう部分が入っている。TTX独自ものというのは、例えば画像の絶対位置指定、画像はどこに出なければいけないかという指定のものとか、傍点というようなものになっています。
 次のページをめくっていただきたいんですが、この中間フォーマットというものを、両者を支えるようなオープン化、これをオープン化して、右側にある制作ツール、各社のビジネス領域だと思いますね、オーサリングツールをつくる、あるいは、配信用のフォーマットとしてどうしていくかということになっていきます。この中にEPUBというものが含まれてくるということです。
 ですから、基本的に対立することではないという認識なんですけれども、どうしたらEPUBで書かれたものが縦書き表示できるのか。これが簡単にわかっていれば、この問題はもっと簡単に解決できるのではないかと思うんですね。縦書きで表示できるというのは一つの象徴的な言い方で申し上げました。これは作家とか出版者が納得できる日本語の表現というふうにとっていただいていいと思います。その要件と難易度について今まで語られてきたことを整理してみたいと思います。
 EPUBというのは、XHTMLというものとCSSというスタイルシートを所定の形式でパッケージングしたものというふうに理解していただきたいと思います。日本の古典文学、特に近代文学のパブリック・ドメインを提供している青空文庫というのがありますけれども、青空文庫はXHTMLとCSSで書かれています。使用されているタグとCSSのプロパティが非常に限定的なものですから、青空文庫のようなものはプロパティが限定的だということで、縦書きビューワをつくるのは非常に簡単。「非常に簡単」という言い方はちょっとあれですけれども、たやすい、難しくない。したがって、各種ある青空リーダーというのが開発されてきているわけです。
 しかし、現実にEPUBでは様々なCSSのプロパティが使われています。XHTML+CSSの表示にはブラウザが行っている機能とほぼ同じことが要求されます。ブラウザと言えば皆さんよく使っているインターネットエクスプローラとか、サファリとか、ファイアーフォックスとか、そういうのがあると思いますけれども、そのどれもよく見ると、これはWebページですからいいんですけれども、表示としてはそのどれも同じ表示、共通の表示ができなという問題をまだまだ内包しているということです。
 そうなると、独自の表示エンジンでフェアするのは非常に困難。インターネットエクスプローラを自分たちでつくるぐらいの大事業になってくるということですね。広範にわたるEPUB、つまり好き放題につくられたEPUBを表示するエンジンを開発するのは、現状は無理だということが言えるのではないかと思います。日本語縦書きに関しては専用だと割り切って、限定的なタグとCSSのプロパティしか解釈できなくてもいいというリーダー、こういうことでWebピットとかRMSDK、これはアドビのリーダーモバイルSDKで対応するということがあります。EPUB3.0だとCSS3に縦書きプロパティが入ることになっていますので、こういうことができるだろうということです。しかし、こういうような非常に不確定要素を含んだものであるということを認識していただきたいと思います。
 今現在、確定要素の見えない状況の中で、今まで努力してきた日本語表示のノウハウを集約して、これを将来にわたって活用できるために準備すること。これが交換フォーマットがやっていることです。そして、これをオープンに公開し、だれもが無償で利用できるための備えを行うことは、電子出版発展のために欠くべからざる重要なことだと私は確信しています。これがまず一つの私の意見です。
 それから、次のページに二項対立でいろいろ書きましたけれども、今日は与えられている時間が非常に短いので、これからお話することがこのそれぞれのことを包含していると考えてご理解いただきたいと思います。これは、この道を生きてきた者として、私はボーンデジタルとしてこの仕事についてきたわけです。私たちの会社は紙の本を原則一冊も出していないという会社です。すべてデジタルでやってきたという会社です。その立場で生きていくということがどういうことなのかを語ってみたいと思うんです。
 なぜそんなことを皆さんに語らねばならないのか。それは今、現状デジタル関連で論議されていることのほとんどが、デジタル生まれ変わり、ボーンアゲインのための論議であって、既得権を持つ人々が、こう言ったらちょっと言いすぎかもわからないんですが、既存の何ものかを持つ者が、デジタル時代に手持ちの何ものかをボーンアゲインさせることの議論に終始するからです。
 図書館のデジタル化についてもそうだと思います。ボーンデジタルの新しい活動が活発化しない限り、この国の未来は暗いと思います。なぜならば、世界はすべてが新しいボーンデジタルの力によって産業や文化が突き動かされているからです。その影響を日本ももろに受けているのではないでしょうか。ツイッター、フェイスブック、アイチューンズ、グーグル、アンドロイド、EPUB、HTMLファイル、それらはことごとく日本を離れた、ちょっと古い言葉で言えば舶来物です。これらに支配されている現実というのはあると思います。
 この国でボーンデジタルとして生きていくためには、基本的には大きなものに巻かれるしかなかったわけです。そこから糧を得て学びとるしか方法はない。ボーンデジタルは総じてどこの馬の骨ともわからない身の上としてこの世の中にあらわれてきます。それゆえに独学しか生きる道がないにもかかわらず、独学する余地が生まれにくい。強いて言うなら、そんなボーンデジタルの身の上を独自に学ばせてくれる公共、交遊の場として電子図書館の必要性です。
 電子出版に関して言うならば、我々は様々な主張や意見、事実の証明、論証、物語等々、これをつくり出すよりどころを持っていません。デジタルに公開され共有する情報をだれが持っていると言えるのでしょうか。放送や映像、過去の記録ことごとく取り上げられている状況です。なぜこれを無償に公開していく道が促進されないのか。非常に不思議でなりません。もちろん創造、クリエーションに関しては確かなよりどころがあるとは言えません。
 しかし、今まで私たちは、人々の残した日記、手紙、論文、議事録、裁判記録、そうした根拠を丹念にひも解いた専門書、膨大な記録を残しており、これを格納する図書館を保持してきました。これらは、一部、絵画、絵巻などに付された描画はあるものの、ほとんどが文字に属する記録だといっていいでしょう。そして、図書館、博物館を通して私たちはこれを閲覧することができ、ここからヒントを得、流れをつかみとり、自らの創作に転用することができた。そこからさらなる創造活動を喚起してきたのだと思います。一方で音声、写真、映像にわたる記録について、これらを閲覧し、再組成することによるコンテンツの創出は図られるべきことだと思います。文字との融合もまたしかりでしょう。
 それを担うべきデジタルの図書館がどうして生まれてこないのだ。デジタルとは既存の何かをボーンアゲインするだけではなく、新たな創造行為と深く結びつくもので、この創造活動を活性化させることは一国の大きな文化政策だと私は思います。ボーンデジタル、この新しい新世代がいかようにも元気に活躍できる余地について、デジタル時代に立ち会っている我々は考える必要がある、そう思います。
 以上です。

○中村会長
 ありがとうございました。
 続いて、佐藤様、お願いいたします。

○佐藤氏
 グーグルの佐藤と申します。先ほどプラットフォームの多くがアメリカの企業だというお話がありましたが、そのアメリカの企業の中でグーグルが書籍のデジタル化に関しては、昨年、一昨年から色々世間をお騒がせしている部分もあり、他社に比べると規模的に大きく進んでいる部分もありといったことで、我々がやっている活動の一端、電子書籍もしくは書籍の電子配信といったことについて、どういう考え方で何をやっているかということを簡単にご覧いただこうと思います。
 これは、グーグルのトップページから検索を、例えば「状態名詞」という言葉で検索をした時の画面です。こちらは、書籍に限定した検索をしているわけではなく、グーグルの普通のWebの検索をしているのですが、その検索結果の中に、「状態名詞」という言葉が含まれている書籍が、検索結果として普通のWebの検索の結果の中に混じって出てきます。この本をクリックすると「状態名詞」という言葉が入っている書籍のページがそのまま表示される。つまり、書籍の中身が100%デジタル化されて、その中身がすべて検索できることによって、Webサイトにある情報と全くように、書籍の中身も言葉、キーワードをキーにして検索することができるということです。
 この表示されたページは、何ページか前後にページを繰って見ることはできますけれども、基本的には無料で見られるのは全体の20%までに限定されています。ただ、どの20%が見えるかは、今検索した結果でご覧いただいていることでもおわかりのとおり、だれもが同じ20%が見えるわけではなくて、検索語によってどのページを見るかは人によって異なります。ですので、本の中の100%が検索可能になっていて、そのうち20%まで無料で見られるようにはなっているけれども、どのページを表示することで20%になるかは人の検索次第だということになります。
 昨年の後半ぐらいから「グーグルeBooks」、当時はGoogle Editionという名前でした、についてご紹介を始めました。電子書籍配信プラットフォームとして、20%まで無料で見えるところに、お金を払えば100%見られる機能を加えましょうというのが、グーグルのeBooksの考え方です。ですので、考え方は非常に単純でして、今、デジタル化した本で検索可能になっている本が、基本は20%まで無料で見えるけれども、100%もこの場で見たいという方がお金を支払えば、その先100%自由に見られるようになるというのが、グーグルのeBooksの考え方です。
 これがGoogle Booksのトップページですけれども、一番上にMy eBooksとあって、今、僕のアカウントで入っていますので、私がアメリカのパブリック・ドメインの本で自由にダウンロードできるものを、自分のeBooksのライブラリーの中にこんなふうに入れています。つまり、その人のアカウントの中に自分が買ったeBooksなり、自分がダウンロードしたeBooksなりがどんどん蓄積されていって、自分の書棚だけを対象にして本を串刺しにして検索することもできますし、自分が読もうと思っている本をMy eBooksに登録だけしておいて、課題図書として自分の注意がいくようにしておくこともできる。実際に必要になった時に買えばいいということもできるようになっています。
 My eBooksの中から、ここにある『フランケンシュタイン』という本をクリックした画面がこんな形になります。これはパブリック・ドメインです。アルファベットのほうがOCRがしやすいこともありまして、さっき萩野さんのお話にありましたEPUBのフォーマットで自動的に変換したもので見ている場合にはこんなふうになります。例えば、自動変換をせずに、最初にスキャンされたページ画像で見ることもできるようになっています。それぞれの書籍が
 実際にスキャンした画像としてページが見えるようにもなりますし、そのデータがEPUBなり何かしらの電子ブックフォーマットで提供されていれば、文字の大きさを変えたりとか、フォーマットを変えて、例えばモバイルデバイスであれば、それに見やすい形に合わせた表示にすることができるようになっているというのが我々のサービスの特徴です。
 Google eBookstoreというのを昨年の12月にアメリカでスタートしました。今、日本からアクセスしていますので、アメリカでしかサービスをやっていない関係で、日本からは購入することができないという状態になっていますが、こういったサービスを今年中に日本でも、日本の書籍をそろえた上で展開したいと思っています。
 駆け足ですが、今ざっとご覧いただいたことを模式図でご覧いただくとこんなふうになります。検索から20%の無料のプレビューのところまでというのが、基本的にはGoogle Booksが出版社さんと契約した上で、検索をして見られるようになっているパートナープログラムと呼ばれるところで、さらにその先、20%を超えて見たい場合は購入して100%閲覧してねと。
 20%までプレビューされたものが、紙の本でしか売っていなければオンライン書店がガイドされますし、デジタルでも売っていればデジタルで買えるところも案内されます。なおかつ、デジタルで買える場合は、グーグルのサイトからだけ買うのではなくて、このグーグルのクラウド上にあるデータをユーザーが100%お金を払って見にくるといった権利を、オンライン書店さんが売っていただくこともできる。つまり、囲い込むのではなくて、我々としてはプラットフォームもオープンにして、色々なプレイヤーが参加して、販売してもらえるようにというような仕組みにしようとしています。
 ちょっとわかりにくいかもしれませんので、模式図にすると、Google Booksというプログラム全体では、図書館でスキャンされた本も含めて1,000万冊以上が検索できるようになっていますが、その中でパートナープログラムという、出版社さんとの契約によって出版社さんがご提供いただいた書籍が、先ほどのように全文が検索でき、さらにほとんどの場合20%まで無料で閲覧できるようになっています。その中で販売の条件が整ったもの、権利処理ができたものがGoogle eBooksとしても販売が可能になるという、こういう入れ子の構造になっているというのが、Google Booksの一つの特徴です。
 あと、先ほど申し上げたとおり、どの販売店も売っていただけるようなオープンなプラットフォームにします。あとは、Webブラウザさえあればどんなデバイスでも使える、一つの特定のデバイスに囲い込まれるという形ではなくて、Webブラウザを介して見ることによって、どんなデバイスでも見ることができるというのが大きな特徴になります。
 今のところ、アメリカでスタートしまして、パブリック・ドメインの本と、商業的に今流通している本を合わせて、アメリカだと300万冊程度が利用できるという状態で、サービスがスタートしているという状況です。
 ありがとうございました。

○中村会長
 ありがとうございました。
 続いて、福井様からお願いいたします。

○福井氏
 弁護士の福井でございます。よろしくお願いいたします。今日私、何のお話をしようかと大分迷ったんですけれども、何分各分野の第一人者の方々がお話をされますので、恐らく私が話すことはなくなるだろうなというふうに予測をしておりました。概ねここまで予測どおりの流れを経ているわけですけれども、一応、私、著作権と契約が専門ですので、今日は著作権の観点から少し先の話をしてみたいと思います。
 書籍に限らず、文化のアーカイブというものが10年ぐらいの間にこんな形をとっているといいなというようなことを夢想してみました。そんな思考実験を今日はご紹介したいと思います。お手元に配っておりますのは、申しわけありません、間もなく発表されるであろう論文でありますので、今日は追いかけられません。ご興味のある方はどうぞご覧いただければと思います。
 その冒頭にも書きましたし、今お話も出ましたけれども、電子でのプラットフォームというのは、ほぼアメリカ系に絞られていると言って過言ではないと思います。あるいは、萩野さんがおっしゃった舶来物に支配されているというような状況はあろうかと思います。こういうことに対して、例えばヨーロッパで出版された元フランス国立図書館長、ジャンヌネーさんの『Googleとの闘い』、こうしたような指摘はもう既に言い尽くされたものになっていようかと思います。
 恐らくはそうした視点に基づいて事務局からご紹介のありました「ユーロピアーナ」、ヨーロッパでの全メディア、電子図書館が立ち上がったということが言えようかと思います。パワーポイントでいうと5枚目ぐらいになりますので、進めていただけますでしょうか。
 これですね、「ユーロピアーナ」、これはEUによる統一の巨大電子図書館という触れ込みであります。現在のところはプラットフォームというのが正しいところだと思いますけれども、各種の電子アーカイブを統合したものになっています。先ほどの事務局の数字より、私が最新で確認した数字はもう少し多いのですが、いずれにしてもほぼグーグルに匹敵するような数の規模の電子アーカイブになっています。
 ただし、特徴がございます。このページは何かというと、『レ・ミゼラブル』という、自分の趣味である言葉を入れてみたところです。そうしたところ、100件以上のものがヒットしたわけですけれども、近くでご覧いただくと、その中にはテキストもあれば、イメージ、画像もあれば、サウンド、音源もあれば、映像、ムービーもあるわけです。つまり、これは全メディアのアーカイブなんです。こうしたもので全部合わせますと、1,000万点前後のものが既に公開されているというふうに言われています。
 こうした電子図書館を独自に立ち上げた背景には、こうした文化の集積と流通を支えるのは、域外の一民間企業ではなくて、中立的な安定した地域内の公共セクターであるべきだという、シビアな戦略的な思考があるのではないかというふうに思います。これを支えているのは加盟各国のデジタル化のプロジェクトでありまして、財政難の中いろいろ苦労もおありなようですけれども、例えば旗振り役のフランスにおいては、サルコジ大統領の肝いりによりまして、文化資産のデジタル化プロジェクトのために1,000億円の予算が組まれているというふうに言われております。なかなかな規模でございます。
 さて、これに対して我が日本はどうかというと、もう既にご紹介のあったところですけれども、日本でも様々な野心的な文化のアーカイブの試みがございます。代表例は、当然今日の話題になっております国会図書館、例えば近代デジタルライブラリーで、明治期、大正期の書籍などを公表しております。書籍については、この他に、やはり名前が出ております青空文庫、これも忘れることはできない。その他に、映像で言えばNHKアーカイブス、NHKオンデマンド、あるいは、国会図書館のフィルムセンター、これはデジタルではないですけれどもそれから、歴史的音盤のアーカイブなど、様々な事業が行われております。
 しかしながら、それをめぐっては苦労もよく耳にするところであります。それは収集で苦労するという「収集の壁」であり、権利処理で苦労するという「権利の壁」であり、そして、それぞれのデータベースがそれぞれ分断されているという「統合の壁」ということが言えようかと思います。こうした権利処理の壁を乗り越えるために、様々な権利の集中管理についての取組、いやいや、権利処理の壁を乗り越える上で重要である権利の集中管理の取組が行われています。
 様々な試みがありますが、音楽、JASRACが、集録点数というか、管理している権利においては突出している他は、多くの分野ではまだ権利の集中管理化は道半ば、あるいは、道の始めといってよかろうかと思います。書籍の分野でもいわゆる三省懇による書籍版JASRACの提言がされているところです。
 さて、これらの状況を踏まえて、今後5年から10年ぐらいの中期目標として日本が目指すべきと思える、私には目指すべきと思える、こうであったらいいなと思える文化アーカイブの姿を想像してみました。これは、先に内実をお話すれば何のことはない、先ほどの「ユーロピアーナ」と、それからまた、お話の出ました「グーグルブックス和解案」という話題になったもの、そして、長尾館長の構想を私なりに参考にして、そこから立ち上げたものにすぎません。
 それは全メディア・アーカイブの試案であります。特徴は、すべてのジャンルを統合した全メディアのアーカイブであるということです。最終的にはこの形にいくのではないかと思います。なぜならば、デジタルというのは基本的に国境がないからであります。メディアミックスが本質だからです。
 そして、これを担うのは国会図書館が望ましいのではないかというふうに考えています。もちろん様々な候補は考えられるわけでありますけれども、デジタル・アーカイブとしてのノウハウを考えた時に国会図書館、あるいは、独立性を考えた時に望ましいのではないかと思います。こうしたところで様々な作品を収集していきます。ただし、ただ独自に収集するだけでは、その規模において限界が出てきてしまいますから、既存のアーカイブを利用して、これを結びつけていくという形が現実的かなと考えます。
 さて、このように収集したものは公開したいわけでありますけれども、ここで市販中の作品と、非市販あるいは権利者不明の作品を仕分けるという作業が必要になろうかと思います。大体3つの種類に分けられるのではないでしょうか。
 まず1番目がパブリック・ドメイン、つまり権利の保護期間の切れたもの、それから、クリエイティブ・コモンズライセンスがついているなど、自由に流通していいとされているもの、これは当然に収集されれば無料で公開されます。
 それに対して市販中の作品、それから、海外の作品については、権利管理データベースというものを同時に立ち上げまして、これを通じて権利者が公開の許可、公開の指示を行った場合だけ公開される、こういう形をとる。つまり、グーグルブックスで話題になりました「オプトイン」であります。
 それに対して、非市販・権利者不明の作品、もう市販されていない、あるいは、権利者が見つからない作品、これについては公開がされても市場での民間圧迫ということは考えづらいので、6カ月間の予告期間の後に、特に権利者から反対の意思が出ない限りは公開される。こういう「オプトアウト」の形をとってはどうかなというふうに考えます。無論一回公開された後も、権利者が登録の上で配信停止ということを指示すれば、即座に配信停止される。こういう形を考えてはいかがかなと。これはグーグルブックスの示唆によります。
 さて、この公開ですけれども、やはり私も有料公開がされるべきだと思います。課金・決裁機能を持つべきだと思います。よって、ユーザーが視聴をすれば支払いを行います。パブリック・ドメインのものは無料で見ることができるでしょう。しかし、保護期間中のものは、まずダウンロードはできず視聴のみ、もしくは貸出しという形をとられて、数日後に視聴不能になるのが望ましいのではないか。
 そして、それは有料である。その価格でありますけれども、デフォルトでは、やはり長尾館長もおっしゃるとおり、図書館に足を運ぶ時の交通費程度が望ましいと思いますが、権利者が自由に指定することができる。ですから、権利者は自分の本には1万円の値打ちがあると思えば1万円と値段をつければよろしい。
 加えて、これに投稿機能を持たせてはどうかと思います。と言いますのは、収集はなかなか難しい。ところが、このようなヒントがあります。YouTubeであります。YouTubeというのは様々な優れた映像作品がアップされているわけでありますし、中には非許諾の、つまりは権利侵害状態のコンテンツもアップされます。そういう陰と陽の側面の他にこんな側面もあります。
 これは「のらくろ」というキーワードでYouTubeで検索を行った場合です。もちろん何十件もヒットするわけですが、冒頭に出ましたのが戦前の『のらくろ』映画です。松田映画社という無声映画など好きな方はご存じの活弁入りの戦前の『のらくろ』の映像がアップされます。
 さらに、下に下りていきますとレコードの絵が写っているのがおわかりになるでしょうか。これは戦前のキングレコード、『のらくろ』の音盤をどなたかがアップしているわけであります。つまり、音源のアーカイブが不十分なところが、YouTubeがその役割を既に果たしている。こんなことはミュージックビデオなどをYouTubeでご覧の方は先刻ご承知かと思います。
 こういうふうに投稿機能を持たせると、作品の幅が随分出てまいります。よって、投稿機能を持たせてはどうかと思います。もちろん市販の作品については、オプトインされない限りは公開されることはありません。非市販の作品が投稿された時には、サムネールが表示されまして、特に異論がない限り6カ月後に公開されるというわけです。当然ですが、課金された料金については、各団体などを通じて権利者に配分されていくと、こういったことが考えられようかと思います。
 こうした導入については様々な危惧があろうかと思います。図書館というのは本来無償であるべきだ、あるいは、これは民業圧迫ではないかと。これについては論文の中で幾つか記載しておりますので、ご興味のある方はご覧ください。
 こうしたことを行っていくためには、必要な法改正というものがございます。当然、国会図書館法の法改正も必要になりますし、著作権法も現行31条他で幾つか今のような仕組みを可能にする改正が必要になります。なぜこのような仕組みを提案するのか。これまで民間のアーカイブを見てくると、一部非常に進んでいるジャンルはありますが、全体においては非市販の作品、過去の作品についてのアーカイブ化は十分進んでこなかったという厳然たる事実があるからです。
 そうした中で、グーグルのような非常に意欲的な海外のプラットフォームが、事実上アーカイブの役割を果たしつつある。しかし、ヨーロッパと同じ視点です。そうした文化のアーカイブを域外の民間企業に委ねることで本当に構わないのか。ここでは国家の戦略的な思考が必要になろうと思います。もしも何か国内で安定的な中立的なアーカイブが必要だと思うのであれば、このぐらいのことはしないとなかなか進まないのではないかなと。こうした観点から今日はお話をさせていただきました。
 どうもご静聴ありがとうございました。

○中村会長
 ありがとうございました。
 では、最後になりますが、糸賀様からお願いいたします。

○糸賀氏
 慶応大学の糸賀でございます。お手元の資料2−6をご覧ください。私の今日の発表は6項目に分かれております。その順に従って発表してまいります。
 まず初めに携帯情報機器の急速な普及であります。このグラフをご覧ください。私どもの研究室でこの7年間、電車に乗っている乗客がどういうメディアを使ったかというものをずっと調査してまいりました。この7年間の変化の様子を示したのがこのグラフであります。この調査は調査する路線、調査する時期、調査する時間帯、全部統一してあります。さらに言えば調査時の天候までそろえてあります。というのは、傘を持っているとメディアの利用形態がかなり変わってしまいます。傘を持っていない時に限定しております。
 そうしまして、この7年間の推移を見ましたところ、07年に電子メディアを使う人が何もしていない人をここで上回ったという結果が出ております。それ以降、昨年の電子書籍元年と言われる2010年まで、この電子メディアと、何もしていない、このグラフでは紺色になっておりまして、電子メディアが茶色ですけれども、この差は開くばかりであります。
 今後どうなるのかについて申し上げると、黄色い線は睡眠、寝ている人なんですが、寝ている人と何もしていない人の人数を、来年あたりは電子メディアを使う人が上回るだろうというふうに推測されます。何が言いたいかというと、これは後の伏線にもなるんですが、携帯できるもの、つまり持ち運びができるものの利用は急速に高まっていくだろうということであります。
 この話を詳しくしたいんですが、本筋から離れますので、このくらいにしておきますが、実際には路線ごとの違いを見ると大変おもしろいんです。同じ山手線でも、新橋、有楽町、浜松町を含む山手線の東側と、新宿、原宿、渋谷を含む山手線西側では、大きくメディア利用は違います。ついでに言っておくと、同じ山手線でも、巣鴨駅周辺はまた独特の利用形態をしています(笑)。
 そこらあたりをいろいろお話したいんですが、このぐらいにしまして、2番、書籍デジタル化の3類型についてご説明いたします。大きく分けるとこの3つに分けられると考えます。1番が国会図書館所蔵の書籍のデジタル化。今日の私の発表はこれが中心になります。
 2番目が絶版・品切れの本。これは図書館が持っている場合もあれば、持っていない場合もありますが、これのデジタル復刻。実は図書館が機能することによって、2番の絶版・品切れのものがデジタルであれば出版しやすくなるはずです。そういった需要がどのあたりにあるのかを示す場合に、図書館の利用傾向というのはヒントになるだろうと思います。と言いますのは、図書館利用のいわゆるロングテール、裾の長いほうで起きております。今売れ筋のものは民間市場に委ねるべきものなんですけれども、図書館が機能することによって、紙であったらなかなか復刻しづらいものが、デジタルであれば復刻しやすくなるというふうに考えます。従って、2番の話も多少言及いたします。
 3番、先ほどから再三出ているボーンデジタルでありますとか、書籍のデジタル重版、デジタルのみで重版させようといったものは、市場が成り立つ見込みがあるから出版社がやるわけでして、そこに図書館が介入するというようなことは、図書館はあまり考えていないと思いますし、私もそこは民間の市場に委ねたほうがいいだろうと思います。
 3番、知的財産としての書籍の電子配信をめぐる背景であります。これももう皆さんご承知だと思いますが、2009年1月にアメリカのGoogleブック訴訟の和解案の告知というものが、日本の関係者に対しても新聞紙上等を通じてなされました。同じ年の5月に補正予算で国立国会図書館蔵書のデジタル化に127億の予算がつけられたわけであります。同じ年の6月に著作権法31条が改正されました。この法改正によって、国立国会図書館が特例として書籍のデジタル化が無許諾でできるようになったわけです。つまり、2009年に一連のこういった動きかございました。これが大きな背景になっております。
 なお、この著作権法改正の時の国会の附帯決議というのがございます。これをそのまま抜き出しました。ちょっと読み上げます。「国立国会図書館において電子化された資料については、情報提供施設としての図書館が果たす役割の重要性にかんがみ、読書に困難のある視覚障害者等への情報提供を含め、その有効な活用を図ること」というのが国会の附帯決議であります。
 ということは、その一番下に四角で囲いましたが、アメリカの場合と異なり、国策として国立図書館での書籍の電子化を推進する財源確保と法整備を行ったのですから、その国民的利用に向けた条件整備を図らなければムダ使い、うっかりすれば事業仕分けで「それでは無駄ではないか」というふうな指摘をされかねないと思います。そういう意味で、我が国は、民間セクターではなくて、これを公共セクターが主導するという選択をしたことになります。
 次、2枚目の4に移ります。では、図書館による書籍の電子配信について、どういうことが考えられるか。以下、簡単に説明してまいります。
 広く国民が国会図書館蔵書のデジタル化の恩恵に浴するためには、地域の公立図書館、これは全国に約3,100ばかりありますが、その活用が効果的だろうと思います。
 いつでも、どこでも、だれにでもという公立図書館の理念は、電子書籍の特性と親和性が高いことになります。というわけで、いつでも、どこでも、だれにでもということは、時間を超えて、空間を超えて、だれにでもということは、人間を超えて、これは老若男女というだけではなくて、様々な障害を持った方もこの電子メディアを活用することで、いろいろな知の財産にアクセスすることができるようになります。「ときのあいだ」と書いて「時間」、「そらのあいだ」と書いて「空間」、「ひとのあいだ」と書いて「人間」です。いわば時空人間(じくうじんかん)の制約を超えていくということになります。これは公立図書館の理念と極めて親和性が高いと言っていいだろうと思います。
 我が国の公立図書館は、かつてのような無料貸本屋から抜け出して、課題解決型サービスに力を入れるところが最近増えております。その良い例は文部科学省による「図書館海援隊」の活動であります。詳しく紹介している時間はございませんが、これは、失業者でありますとか、年越し派遣村で過ごしたような方たちを、図書館も支援していこうと。役に立つ、人助けをする図書館ということを打ち出しております。詳しいことは文部科学省のホームページのトップページにこれが出てまいりますので、それをご覧いただきたいと思います。
 図書館における書籍の電子配信をめぐる課題は、私は以下の3つのCに集約されるだろうと思います。1つはContents(コンテンツ)であります。最新の図書は私も民間市場に任せるべきだろうと思います。図書館は絶版・品切れの良質の出版文化、あるいは、地方行政資料でありますとか、国の刊行物といったもの、なかなか書店では売られていないようなものを図書館が支えていくということになるだろうと思います。
 次のCはCost(コスト)です。経費をだれが幾らで負担するのか、ここがポイントになります。電子書籍は外部のサーバに蓄積されたデータにアクセスする限りにおいて、我が国の図書館法でいう図書館資料には当たらないと考えられます。図書館資料というのは、図書館が責任を持ってその中身について管理しているものであって、外部から書き換えが可能な状態にされているものは図書館資料とは言えません。従って、無料原則が図書館法17条に明記されているわけですが、これが適用されないことになります。言い方を換えますと、こういったものはお金をとろうと思えばとることができると解釈できます。
 最後のCはCopyright(コピーライト)であります。電子書籍は貸出しと言っておりますが、実際には著作権法38条の「貸与」ではなくて「公衆送信」に当たります。したがって、権利者の許諾が必要となります。貸与の場合には非営利・無料であれば無許諾で貸出しできますが、これは公衆送信に当たりますから、権利者の許諾が必要になります。この場合、図書館の利用者ないしは読者は、お金を払うか時間を払うかの選択をすることになります。
 早く読みたい人はお金を払って購入する、そうでない人は、申しわけない、お金が十分ない人は時間を払う、つまり一定の期間が経過した後、その内容にアクセスする。あるいは、機会費用、つまりそれなりの時間を払ってその内容にアクセスすることになるだろうと思います。その選択をしていけばいいわけでして、必ずお金をとらなければいけないというものではないだろうと思います。現に映画DVDとか音楽CDのレンタル業者での貸与は、新しいものがリリースされてから一定の時間をおいてレンタル可能になっております。そういう意味では、お金を払うか時間を払うかという選択があっていいだろうと思います。"タイム イズ マネー"、まさしく「時は金なり」であります。
 諸外国でも公立図書館への電子配信が推進されています。これは先ほどの資料で紹介されたとおりであります。とりわけお隣の韓国ではそのためのインフラ整備が進められております。国際競争力強化の点からも、広く国民が利活用できるような環境の整備が最重要になってくるだろうと思います。
 そして5番目、国会図書館蔵書の公立図書館への電子配信ですが、館内閲覧に限定し、同時アクセス数も制限し、国会図書館に1部しかなければ全国で同時アクセスは1つでも構わないと思います。それから、複製不可です。ダウンローディングもプリントアウトもできないという3原則の下で、無許諾送信を可能とするような法整備を進めることが、これまでの一連の施策からも国益にかなうだろうと思います。
 今の3原則の下では、利用者から不便だという不満が出ることが当然予想されますが、その需要次第で当該図書館はその書籍を購入することになります。そういう需要が多い、あるいは、ダウンロードしたい、貸出しをしてほしいというようなことになれば、それは当然一定のお金を払って購入することになります。あるいは、そういう声が全国で多いことが国会図書館で把握できれば、そういうものはデジタル復刻をするというような選択肢も出版社には見えてくるということになります。さらに、先ほどもありましたように、ソーシャルリーディングの機能をここに持たせて、こういう本を読んだ人が「こういう本もありますよ」というような推薦ができる仕組みを用意していって、出版や販売のインセンティブも上がるような配慮は必要だろうと思います。
 もちろん著作権が存在するものについては、権利者の意思でこれを不許諾とし、オプトアウトすることができるようにすればいいだろうと思います。オプトアウトされたものについては、先ほどの長尾館長の構想にある電子出版物流通センターを含めた枠組みで、知財保護の観点から別途関係者間での協議を行っていく必要があると考えます。
 この場合、出版者に対しても著作隣接権を認める必要があると考えます。当然、著者は構わないと言っても、出版者がそれは困るというように意見が異なることがありますので、そのためにも出版者に著作隣接権を認める必要があると考えます。
 国民がどこに住んでいても必要な知識・情報にすみやかにアクセスできる環境を整備することで、知の循環型社会が構築され、我が国が目指す知財立国への近道になると私は確信しております。
 最後、結論になります。せっかくここまで国費でデジタル化を進め、法律も整備してきたのですから、著作者の中の電子配信して構わないという方たちの善意を生かすためにも、そういう方たちの書籍は全国の公立図書館を通じて遠隔地の読者にサッサと配信してあげましょう。そうしないと投入した国費が無駄になりますし、知の再生産が進まなくなります。電子配信は困るという方たちとは、配信を止めておいて、別室で話合いましょうということになります。

○中村会長
 どうもありがとうございました。
 関係者の方々からのご説明は以上でございますが、電子書籍にかかわりの深い委員、そして、本部員の方にもご発言をここでいただければと思います。その後、残り時間がありましたら、議論をしたいと思いますが、吉羽委員、里中本部員、そして、角川委員の順にご発言をお願いしたいと思います。
 まず吉羽委員からお願いいたします。

○吉羽委員
 有識者の先生方の非常にレベルの高い議論の後で、私、恥ずかしいんですけれども、お手元の資料は、先般の会の時にお話した海賊版というか、アップル社の海賊アプリのお話がありましたけれども、それ以外の実例ということで、私が幹事長をやっております民法上の任意団体ですけれども、デジタルコミック協議会というコミックの出版をしている出版社の団体がここ1年間ぐらいで調査したものを載せております。長いので逐一説明はしませんけれども、ポイント、ポイントでお話をさせていただきます。
 まず、冒頭のところに海賊版サイトというのが4種類ありますと。スキャンレーション、それから、Winnyのようなファイル共有、動画投稿サイト、YouTubeもそうです。それから、オンラインストレージという、サーバ上にアップしているもの、こういったタイプのものがありますということで、具体例として下に弊社刊行物及びそれを原作としているアニメーションのYouTube上での海賊版の実態調査というのがあります。期間は2010年の4月13日から約1カ月間です。
 1番はアニメーションですけれども、345、これは1話だけです。アニメーション第2話がアップされていて、累計視聴回数が453万回余りということですので、このシリーズでいうと100話近く、80話ぐらいありますけれども、掛け算をすると大変な数になるということです。
 それから、コミックの第1巻第1話漫画スライドショーのマッチ数ということで、これはYouTubeなので漫画をスライドショーにしていますが、55のアップロードがあって、14万回弱というような回数が上がっておりますが、YouTubeの海賊行為は海賊版全体のごくごく一部にすぎないということで、アニメーションの場合には12%程度だということがあります。
 それから、1枚めくっていただきまして、2番目ですけれども、当然ながら海賊版のサイトに各出版社ないしはこの協議会として警告メールを送るんですけれども、一般的な反応は、投稿サイトの場合にはサイトをアップロードしているのは、事業者側ではないので、ユーザーが勝手に投稿されているので、自分たちはあまり関係ないよというような対応、木で鼻をくくったような対応が一般的に返ってくるものです。サイトからの削除が必要であれば、著作権者自身が著作物を特定して、しかもどのコンテンツなのか、つまりサイト全体が多くの著作権違反のものを上げていたとしても、1個1個やりなさいというのが基本的な反応になってまいります。下のほうには中国でのサイトの具体例が幾つか載っております。
 それからまた1枚めくっていただいて、3枚目の真ん中あたりに、アメリカでのコミックの違法サイトに関してFBIが摘発して、これに対して、日本の出版社も海外版、英語版のコミックをアメリカで出版していますので、アメリカの出版社が日本の出版社と協力して対応するようなことを模索しているということで、実例としてなっております。先般、新聞にも載っておりましたが、投稿サイトではなくて、ファイル交換サイトですか、警察による検挙が出ているということもありまして、日本も少しずつ対応が進んでいるのですが、国際間というか、国をまたいだ場合にはまだ難しさが残っております。
 それから、4ページ目の下のところに「看漫画」というサイトのことがありますけれども、これは、前回もちょっとお話したかもしれませんけれども、App Storeに上がっている違法サイトで、ビューワを800円でダウンロードすれば漫画を読み放題になる。これもクレームをつけたけれども、アプリを上げている会社とコンテンツを出しているところは全然別なので、僕等は関係ありませんというような対応が返ってきたということで、これは実例としてさらに詳しくということでお話をさせていただきました。
 時間が限られているんですけれども、本日の資料に対して、資料1のところで少し補足としてお話をさせていただきたいことが2点あります。
 まず、契約基盤の整備の中で、出版者−著作者間の契約の促進という部分は、著作権者の皆様と、前回雑協の例もございましたけれども、お話合いをしながら進めてきているんですけれども、先ほど村瀬先生のほうからお話がありました出版物イコール著作物ではないというところで申し上げますと、特に雑誌における肖像権のクリアがなかなか困難な状況が続いていて、今実際に商用で配信されている雑誌でも、肖像の部分を一部黒ベタで出していたりというようなことがありまして、この辺も完全な姿での電子配信がなかなか難しい要因になっているというところをご報告しておきます。
 それからもう一つ、フォーマットのことに関連するんですけれども、6ページ目、マンガ等の電子書籍の海外配信ということです。マンガも含めまして、雑誌もそうなんですけれども、画像と文字で構成されていて、その位置情報がかなり重要な要素を占めているというものに関してのフォーマットというのは決して進んでいるわけではありません。今、電子書籍関連というと文字関連のものが大変クローズアップされているんですけれども、国際的には、三田先生の資料にもございましたように、マンガの国際展開をどうするかという部分、とりわけ吹き出しの中の多言語化、それから、海外版の雑誌も出ておりますけれども、レイアウトを保持したまま文字の部分だけをどう多言語化するかといったようなこと、こういったあたりのことはこれからまだまだ研究の必要があるのではないかということで補足させていただきます。
 以上です。

○中村会長
 次に、里中本部員、ご発言をお願いいたします。

○里中本部員
 今いろいろ伺いまして、各委員会で言われていることなどすべてを通じまして、私の感想としては、電子書籍の普及なしに文化は保てないという危機感を皆さんが持っていらっしゃるということ。私もそういった危機感を持っております。いかにこれを有効活用していくかというときに、変な言い方ですが、これまでの出版物という枠の中で考えていては当然色々な無理が出てまいります。デジタルと紙の出版物は性格が全く違うということを前提に今後の生かし方を考えるのがいいのではないかと常日頃思っております。
 今伺いました様々な取組、試案につきましても、例えば私にとって、あるいは、私の業界のマンガにとって、何となく気になるのが出版社に著作隣接権を付与させるという話です。そうでなければすべてが好転しないみたいな言い方がありますけれども、著作隣接権という非常に広い意味を持つことを適用することにより、様々な予測の中での不安感というのが著作者の間にも生まれております。ただ、誤解をしていただきたくないんですけれども、著作者と出版社はカップルとしてこれまで出版文化を支えてきましたので、お互いに気持ちのいい関係でいたいし、今後も、デジタルも大事なんですけれども、紙の出版物も同じようにどうぞ出版社の皆さん見捨てないでいただきたいと。変な話ですが、そういう気持ちもあります。
 今、デジタル、デジタルと言っていて、これは確かに海外展開を考えた場合に絶対に外せない大切な瀬戸際にきていると思います。ただ、日本国内の多くの読者を考えますと、デジタル機器がなければ読めないデジタル書籍、それに触れない人もかなりいらっしゃるわけですよね。本という形があったからこそ国内隅々まで、この流通というすばらしいシステムによって日本人が文字文化、画像文化を受けてきたということはあります。大体こういうことを話し合う人間というのは、デジタルのありがたさをよくわかっているし、便利さもよくわかっているから推進したいんですが、紙の本しか読めない方々も多くいらっしゃる。
 信じられないかもしれませんけれども、高齢化社会の中で、映像機器のDVDの操作すらできないお年寄りもたくさんいらっしゃるわけです。そういう方たちに電子書籍でこういうことができますよと言っても、個人お一人ではできない方もいらっしゃる。そういう方を取り残していかないような、紙の出版物の今後の無理のない出版のあり方というのも大事だと、改めて申し上げたいと思います。
 あと、先ほど少し触れました著作隣接権なんですが、よく出版社の方が「海賊版を取り締まるためには、出版社にも著作権がなければ物を言う権利がない」という言い方をされますが、ここで特定の国名を挙げてはいけないかもしれませんが、中国なり何なりにしましても、世界的に出版社が著作隣接権を持っているという例がほとんどないこの現状で、日本国内だけの法をあてはめて相手方に通じるのかどうかなんですね。警察組織をもってもなかなか壊滅できないのがこの海賊版問題です。特にデジタル上の海賊版というのは、みんなで力を合わせて違法コピーが不可能なような仕組み、そちらにお金も人手も能力もかけていくと、10年後にはかなり改善されているのではないかなと、非常に希望的観測ですけれども、そう思います。
 ただ、このデジタル社会で、またこれも出版社の方とよく相談するんですが、特にグラビア雑誌などのグラビアページがそのままスキャンされてアップされていると。ある地域とかある国によっては雑誌丸ごと即配信されているわけですよね、もちろんマンガもそうですが。この場合、元になっている本というのは出版社の出した出版物です。それを無断でスキャニングされているわけですね。それを防ぐ手立てとして、出版社も物申したいし、権利がほしい、あったほうがいいというのはもちろんわかります。
 著作隣接権という、一度決めてしまえばかなり怪しげな出版社もその権利を持つようになる、今だって著作者たちは怪しげで違法行為すれすれのことを繰り返して出版社に振り回されることもたくさんあるわけです。ですから、「著作隣接権」という今ある言葉以外に、出版社が出版物ですね、正しく出版物です、その出版物を管理し、保護する権利というのを、著作権法上新しくつくれないかどうか。そちらで解決するという方法はどうかなと個人的には思っております。一緒に考えていければいいと思っております。
 デジタルという思ってもみないものが出てきたこの時代に、著作権法の中の文言をそれに合わせて変えていくということは当然必要なことだと思いますし、出版した本そのものをどう管理するのか、どう使用するのか。もちろんこれまでも「出版権」という言葉はありました。ありましたが、もっと強い形で「出版物管理権」とか、そういうことで解決できればスムーズにいくのではないかなと考えておりますので、関係各位と一緒になって前向きにいろいろと相談していきたいなと願っております。この場でお願い申し上げるのは筋ではないかもしれませんが、関係各位幅広くいらっしゃるということもありまして、提案させていただきたく思いました。
 何せこの問題に関しては、すべての関係者が協力しながら、お互いの権利を不当に侵すことなく、かつ、前向きに世界市場の中での日本の文化出版物を積極的に広めていく、それが必要だと思います。今後、ボーンデジタルのものに関しても、これまでよりもっと幅広く色々な検討が必要だと思っております。ここであまりぐずぐずしておりますと、前向きな著作者はすべてボーンデジタルでいってしまおうと思うかもしれません。それはそれでいいのかもしれませんが、長い間熟成されてきた出版社と著作者の関係を壊すことなく生かしていくためには、再生と新しい誕生と両方に目を向けた取組を願ってやみません。
 長くなりまして、失礼しました。

○中村会長
 ありがとうございました。
 では、角川委員、お願いします。

○角川委員
 去年iPadが出て、いきなり電子書籍が表舞台に上がってしまって、出版社は今少し本心戸惑っているのではないかなと思います。そういう中で、電子書籍の著作権とか、電子書籍をどうやって広げていったらいいかということに関しては、先行している音楽、映画、特に音楽ですね、この世界のことを我々はよく勉強することによって、電子書籍も音楽の世界でよかったこと、失敗したことを参考にして展開できるのではないかなと思います。そういうことではコンテンツの色々なジャンルがありますけれども、そういう他のジャンルから電子書籍というのはまだまだ学べるのではないかなと思います。
 一方で、著作権法というのは、これまでコンテンツの分野によって著作権の適用がバラバラだったわけです。特に映画については非常に強い著作権を映画会社に渡していて、一方で今お話が出ているような出版物に関しては出版社にほとんど権利がないという状況がありました。どちらかというと、テレビ局と映画会社は強くて、出版社は弱いというふうなことがあったと思うんです。デジタル化の時代の流れの中で、著作権法も変わっていくのであれば、すべてが画像化・映像化されていくという認識が持てれば、著作権をジャンル別に分けていくという意味がだんだんなくなってきて、著作権の適用をあらゆるコンテンツに統一的に与えていくというふうな方向も、大きな目で見ればあるのではないかなと思ったりいたします。
 今日は話が出ませんでしたけれども、電子書籍では「自炊」だとか、それからまた、ソフトウエアで新たな出版物ができてしまうという問題があります。3つか5つぐらいの出版物を掛け合わせて1つの出版物をつくってしまって、それが世に出てくるというふうなことも具体的に出ております。出版各社が行っている懸賞の中で、そういう掛け合わせ出版物が当選してしまったというふうな例も出ている。角川でもありまして、電子書籍で新たな海賊版の問題が出てきているということもひとつ検討しなければいけないかなと思いました。
 それから、今日のお話を総体的に聞かせていただいて、国会図書館において権利センターをつくるということにつきましては、過去いろいろ誤解も出版社側、著作権者側にあったと思います。あるいは、国会図書館が国会に所属していて、出版社からみれば少し遠い存在であって、そこが何をするんだろうというふうな心配もあったりして、権利センターなどについては、言ってみると誤解されやすい存在だったと、フィルターをかけて見るというふうなことがありました。これは今日の長尾先生のお話を聞いて、まともに検討していくべき方向が出たのではないかと思います。あるいは、今日また糸賀先生よりお話が出ましたように、著作物に関しても、ロングテールの分野に限って、図書館がやるデジタルサービスについて有効なのではないかというご意見もございましたので、それも検討する価値があるのではないかと思いました。
 それから、今日は指摘がなかったんですけれども、今の電子書籍のビジネスモデルが2011年1月現在まだどこからも明確なものが出ておりません。通信キャリアが提案する電子書籍のスタイルにしても、家電メーカーがしているものと、どういうふうなことで電子書籍が出版者や著者に配分されているかということについては、まだまだ不透明で、発表されていないと言ってもいいかもしれません。それにつきましては、この知財本部の中で著作権者と出版者を保護するという立場で、電子書籍のビジネスモデルについても検討していただきたいなと思います。
 それから、今日ご招待していただいた外部の方々のお話、皆さんどこかでオープンであるべきではないかという意見でした。国会図書館も権利センターについては多様であってもいいとか、ボイジャーの萩野さんのお話でもオープンであることが必要ではないかと言いますし、グーグルでもオープンのことを指摘されたと思います。そういう点ではデジタル文化が国民の創作性を涵養する上ではオープンであるということをどこかでいつも考えていなければいけないのではないかなと、コンテンツやユーザーの過剰な囲い込みについては問題があるのではないかなというふうに感じました。
 そういうことで今日は非常にいいお話を聞かせていただいたと思います。全体でこういうふうな非常にエキサイティングで幅の広い議論が出たのも、知財本部がもう7年になりますが、そういう動きの中で著作権の改定に動いて、コンピュータによる複製を認めていくというふうな動きが実現している中で、こういうふうなエキサイティングな話ができるようになったのだと思います。そういった点では社会の動き、技術革新の動きと、それから、知財本部の動きはかなりパラレルというんですか、同期性があるなと思いますので、是非これからも知財本部の議論は革新的に積極的に進めていくべきだということを改めて感じました。

○中村会長
 ありがとうございました。
 残り時間が10分程度となってしまったんですけれども、冒頭申し上げましたとおり、この場では各省庁の枠を超える問題ですとか、あるいは、大きな政策判断を要するような問題について、方向性を見出していきたいと考えております。ただ、整理をしていくのは次回以降ということで、今日は残り時間でできるだけ多くの論点をこのテーブルの上にお出しいただければと思います。
 といったことも含めまして、今日事務局からお配りいただいた資料1の3ページ目には課題イメージということで3つばかり大きな課題、例えば右上の電子書籍市場の整備、市場をどう整備するのか。そして、2つ目に国会図書館のデジタルアーカイブをどうしていくのか。3つ目に、一番下に書いてあります電子書籍の活用を通じた経済社会の活性化、このような柱が提示されております。このような検討を進めていくことでよいのか。そして、それぞれどのような方向性にもっていけばよいのか、あるいは、他にもっと大きな柱があるのかといったことも含めまして、皆さんからご意見、今これを言っておきたいとか、今日せっかくお越しいただいているので、これだけは聞いておきたいというようなことがありましたら、挙手をお願いしたいと思います。いかがでしょう。

○別所委員
 前頭葉が動くというか、ちょっと濃度が濃すぎるぐらいの情報量で、もちろん今日すべてをここで質問したり、中村会長おっしゃるようにすべてということではないと思うのですが、今日聞いた視点で少しあれっと思ったのこと、私が非常に共感を得たのがボイジャーの萩野さんのお話です。今後の議論は、電子書籍と言われるような世界観を、今ある新たなルールづくりの中で、どう交通整理をしていくのか。
 あえてもっと言うのであれば、既得権者である、あるいは、今まで20世紀の書籍文化あるいは産業を支えてきた方々と著作権者が、この21世紀的なメディアの中でどう権利を保持するかという交通整理のお話と、ボーンデジタルという言葉でしょうか。今後、電子書籍と言われているメディアの中で起きていることを切り分けた議論と言いますか、どちらに優先順位があるのかということを私は判断しかねますが、少なくとも国家戦略的に何かをやるというのであれば、その2つを分けて考えてほしいということと、こういった議論を1日ではできないのではないかなという気がしました。
 それから、海外へのサービスというのはどうお考えになっているのでしょうか。また、逆に、国内へ海外の方々の電子書籍にまつわるようなサービスを迎い入れるということはどうお考えなんでしょうか。あるいは、その部分に関しての視点、あるいは、議論はまた別のテーブルになるのではないかなと思いました。
 それから、縦書きに対する対策ですけれども、僕は日本人として生まれて縦書きというのを非常に愛しているんですけれども、今後これを国の政策として守るべきことなのか、こういった議論はどうされるのでしょうか。かつて、漢文のような表現もあったり、僕たちはなかなか読めない時代を感じる漢字と片仮名で表現されたような時代もあったわけですが、このままいけば22世紀に縦書き文化というのはあるのかなと思ったりもするわけです。各論に入るつもりはあまりないのですが、縦書き文化の国々と共通の政策をとって、例えば中国とか台湾とか、そういう国々と一緒に何かプラットフォームをつくるとか、事業を展開するとか、そういったことを考えに入れた戦略づくりがあるのか、あるいは、あったらいいなと思ったりもします。
 とにかく今日一番言いたかったことは、今後の新しいプラットフォームづくりのための議論と、既存の考え方を整理しながら、権利保持をどう考えるかという議論をしっかり分けた議論の形が望まれるように思いました。

○中村会長
 今後の整理の仕方ですね。
 他にいかがでしょうか。
 では、先に川上さん、その次に大多委員、お願いします。

○川上委員
 すみません、中村さんから求められているような質問ではないような気がするんですが、今日のプレゼンの中でグーグルさんの発表について幾つか質問をさせていただきたいんですが。まず20%を無料で見られるということなのですが、これの質問は、ユーザーが1回で20%を無料で見れるということなんですけれども、そもそもユーザーのIDなどをとっていないグーグルさんで、そのユーザーの特定を実際どの程度できるのか。実際には20%というのがどの程度確実に守られるのかというところが非常に疑問があるということと、恐らくグーグルアカウントなどを使用されると思うのですが、グーグルアカウントのほうも実際にはフリーのメールアドレスをとれば簡単にとれるものですし、例えばパソコンが違ったりとか、色々な方法で結果的にはほとんど本の内容をオープンに公開するような内容しか見えない。
 それと、20%は一般の検索にも登場するということなんですが、実際にグーグルの検索の仕組みを考えると、リンクされていないものというのは検索の上位にきませんから、恐らくは本のタイトルで検索した時にeBooksができるということだと思うんですね。そうしたら、実質的にはグーグルの検索でどういうようなサービスで機能するかと言いますと、本のタイトルを入れるとトップページのところにeBooksの検索結果があらわれて、何と20%立ち読みできるというふうな感じのサービスに現実にはなるんだと思います。
 その他でもし出てくるものがあるんだとすれば、ユーザーで話題になったような、どこか引用されたような箇所があったとしたら、簡単な例でいうと、例えば辞書などでいうと広辞苑何々とかいうような単語単位でやると、その場所がきれいに出てきて、そこから20%読めるみたいな感じになってしまい、もしくは、その何とかの本で第1章とか第何章とかいうと、その章が読めるみたいに結果的になるようなサービスにしか見えないんですね。そこにユーザーが購入リンクをつけたとしても、現状、検索結果の中にはアマゾンの本とかのリンクというのは既に存在しているわけですから、現実的にユーザーの購入が増えるとは思えない。
 もう一つ言いますと、今、ブログとかいうような人気のブロガーという方がいるわけですけれども、ユーザーの行動の形態としたら、ある人気記事があったとして、ファンがつくんですけれども、それが記事ごとによって見たり見なかったりして、人気のブログだからといって過去の記事を全員見るみたいな読み方をする読者というのは非常に少ない。今のネットのユーザーというのは切り刻んで読むような傾向にあります。その中でアーカイブとしてまとまった本を切り刻んでブログのように読めるような検索手段を提供するということが、果たして本の購入増加につながるのかというと非常に疑問なんです。逆に、海外の200万冊のパートナーさんというのはどういう気持ちでされたのかというのがよくわからないんですが。

○佐藤氏
 まず最初の20%をどうやってユーザーを確定するのかというのは、ログインをさせて20%見せるわけではありませんので、基本的にはブラウザのクッキーを使います。ですので、緩やかに確認をしているというようなことになるので、例えばブラウザを変える、パソコンを変える、クッキーを消すといったことで、他の20%が見える可能性はあるのかと言われれば、技術的にはあります。ただ、今まで5年やってきた中で、英語圏、日本語、全部含めてユーザーの動向を見ていると、20%丸々見ようとするユーザーはほぼいないというか、ほとんどいない。ほとんどの場合は8ページ前後見ると何らかのアクションを起こします。つまり、本を買うというリンクをクリックするのか、その場からいなくなるのか、何らかそういうアクションを起こすということがほとんどです。
 ですので、20%は見せすぎではないかという論は、アメリカでスタートした直後は非常に強く出版社さんからいただきましたし、日本でも昨年、一昨年ぐらいは出版社さんからよくいただきましたが、実際に参加いただいたところからは、20%見られたことによって本を買われなくなったよねといった、つまりセールスに対してネガティブな何か影響があったという話は1件も聞いたことがなく、むしろ見せたほうがオンライン書店へのクリック率が上がるよねということもあって、今では100%見せてしまっている出版社もアメリカでは珍しくありません。
 なので、実際に事前に予想された動きとは相当異なったユーザーそのものの動きが見えるという点では非常におもしろいんのですが、さっきロングテールであったりタイトルから、もしくは、著者名からというお話がありましたが、今、出版社さんからいただいている200万冊の書籍の中で、その200万冊の相当数、9割以上は月に1回はだれかが必ず見に来ると。200万冊というレンジがあったとしても、顧みられない本はほとんどないというのが我々の持っているデータです。
 ですので、検索の広がりみたいなものを考えると、書籍に対して何らかの興味を抱いてその本を見に来るという方が必ずというところでは、書店店頭に並んでいる時期がそれほど長くない今の書籍の流通の現場に対して、必要な本が必要な方の目にとまるかどうかというのは、言ってみれば、カケのような状況になっていますし、その本に対する何らかのアクセス、何らかのきっかけというのがインターネット上であるということは、セールス上は非常に重要な役割を担っているというのが、4年やってきた中でアメリカの出版社全員がほぼ合意しているところです。ですので、極端な例でいうと、スプリンガーとかいったところは4万、5万タイトルが既にBooksの中に入っていて、20%ビューというような状態になっているというのが現状です。

○川上委員
 その200万冊の中で、例えば毎週の書店のベストセラーに入るような本は含まれているのでしょうか。

○佐藤氏
 200万冊の書店のベストセラーに入るようなものが含まれているケースもありますし、極端な例でいうと、『ハリーポッター』のようなものは、あそこに入れて、物語であそこまで、どこでも手に入るものですから、Booksの中で検索できるということは著者から見ると大してメリットを感じないということもあって入っていなかったりします。ただ、入れる入れないは出版社、著作者の意向次第ですが、Google eBooksというBooksで売れる仕組みになってからは特にそうですが、割とベストセラーのリストに入っているものが多く入ってくる傾向にはなっています。

○川上委員
 どれぐらいの割合でしょうか。

○佐藤氏
 割合はこちらでも把握していないです。

○中村会長
 川上委員、時間がきていますので、その辺でよろしいですか。何か意見なりコメントなり、この場でありますか。次回以降整理でいいですか。

○川上委員
 そうですね。

○中村会長
 では、最後に、挙手いただいた大多委員から発言お願いします。

○大多委員
 電子書籍に関してのコンテンツ制作というか、クリエイティブのほうの観点からのお話があまりないのですが、テレビ局的には、電子書籍の時代になったということで、フジテレビだけ見てもまだ数点しか出ておりません。バラエティの関連本であるとか、アナウンサーのレシピ本みたいなものが電子書籍になった程度ということで、正直、我々、これからこの電子書籍がどんどん増えるだろう、読まれるだろうというだけで、一体何をするのか。出版社の方とは色々なお話をしていますけれども、これといったアイデアがまだまだ生まれてこないんです。ですから、『アバター』が出て3Dが爆発的に注目されたような、電子書籍はあれで変わったねというようなコンテンツがまだ無い。
 そうすると、先ほど収益という話もありましたけれども、それではどうやって儲かるんだというようなところがまだまだ見えてこないというのが現状かなと思っております。もう既に動画と文字を合わせたような作品も出てきておりますし、音楽もあると思いますが、出版だけではなくて音楽界とか、いわゆる映像コンテンツを持っているテレビであるとか映画であるとか、こういったものを合わせたもので何か今まで見たことないような、そして、先ほどの巣鴨のおじいちゃんおばあちゃんまで、それだったら見てみたいと、読みたいと思うようなものが現れるのかどうか。この辺のクリエーターの感性など、それも育てるというのもあるのかもしれませんが、この辺をつくっていかなければいけないのかなというふうに最近非常に思っているということでございます。

○中村会長
 本件、非常に利害が交錯する面がありまして、ナーバスな問題であると同時に、先ほどどなたかおっしゃいましたように国家戦略的なテーマでもあります。今日も皆さんのヒアリングの中から大きな方向性と言いますか、例えばオープンだとか、オールメディアですとか、インターナショナルといったキーワードも出てきたところですし、大きな提案もいただいたところだと思います。そうしたご意見を踏まえて今後の課題をこれから整理していきたいと思いますが、今日いただいたご意見以外にも、恐らく皆さんもっと意見や質問などあろうと思いますので、後ほど事務局までお寄せいただければと思います。
 では、最後に和田政務官、コメントいただければ幸いでございます。

○和田大臣政務官
 皆様、今日も本当に活発な議論をありがとうございました。ご議論を聞いておりまして、これだけ色々な活用の用途が見えてきているだけに、これを国全体として推進していくということはもう決断しなければいけないのではないのかなと思っています。ただ、もう何度も色々な方々から出たように、もともと著作権を持ったものを生み出してくださっている方々の生活、お仕事が成り立たないことには、国として発展の素地が期待できませんので、電子媒体を通じた提供の仕方をするとしても、もともと生み出してくださっている方々の生活と仕事を維持できるような仕組みをいかに考えるかということに尽きるような気がいたします。
 先ほどどなたかが、国として、また政府全体どんな方向性を持って臨むつもりなのか、もっとしっかり考えろ、示せというようなご意見もあったように思います。私自身、数日前までは海江田大臣が上司でございましたが、海江田大臣とも、それから、就任が決まった直後の玄葉大臣とも科学技術のこの分野についてお話をしたことが多少なりともございます。その時にお二人に共通して意識があったと思いますのは、日本人として文字や画像にもっともっとしっかりとみんなが触れて、知的な刺激のある国にしなければいけないなということでございます。
 その時に話が出ておりましたのは、紙媒体で今まで世代間を通じて、例えばおじいちゃんがこんなものを見ていたんだといって孫に見せたり、そんなことができていた時代から、物理的におじいちゃんと孫とが地理的に離れてしまっていて、そんな中でやりとりしようと思ったら、こんなものが使えるんだねとか。それから、数日前、女優の高峰秀子さんがお亡くなりになったというニュースが流れていましたが、そういったニュースを世代をまたいで会話するツールに、こういう電子媒体が使われているというような話をされておられました。
 何を申し上げたいかというと、まず大前提として、色々な選択肢を国としては年代がたっていっても維持していくということは必要でございます。本がなくなってもよいとは決して思っていないものですから、本の大切さもきちっと政府として国民の皆様方に訴えつつ、しかし本を見る以外でも、世代間のやりとりをするのにこんなものも使ってくださいという提示の仕方もある。どなたかもおっしゃっていましたが、最終的には提供してくださる方が出版社も著作権者も含めて、意思を持って、自分はこんな提供の仕方をしたいというふうに思っていただく姿が、日本国の中では実現するという方向性を持ってやりたいなと思っています。
 どうぞ皆様方、確かにいろいろと利害錯綜するところではございますが、国全体としては国民の皆様方にご活用いただきやすい環境を整えていきたいと考えておりますので、次回以降もよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

○中村会長
 最後に事務局から連絡事項、お願いいたします。

○奈良参事官
 次回は2月10日、木曜日、13時からを予定しておりまして、知財計画2011骨子の策定に向けた議論を進めていきたいと思っております。
 それから一点、申し遅れましたが、今日は経団連様にもご出席をお願いしましたけれども、欠席ということで返事をいただいていたところでございます。
 以上です。

○中村会長
 では、ここで閉会いたします。ご出席いただいた関係者の皆様、どうもありがとうございました。