コンテンツ強化専門調査会(第1回)議事録



  1. 日  時 : 平成24年12月25日(火)10:00〜12:00
  2. 場  所 : 知的財産戦略推進事務局会議室
  3. 出席者 :
    【委員】
    中村会長、井上委員、岡田委員、川崎委員、久夛良木委員、齋藤委員、
    新山委員、杉山委員、妹尾委員、谷口委員、野口委員、野間委員、別所委員、
    角川本部員、里中本部員、中島本部員、中山本部員、三尾本部員
    【事務局】
    内山事務局長、山根次長、作花次長、畑野参事官、木村参事官、林企画官
    【担当府省】
    内閣官房IT担当室 北林参事官
    総務省情報流通行政局情報通信作品振興課 竹村課長
    外務省経済局国際貿易課知的財産室 彦田室長
    文化庁長官官房著作権課 田口課長
    文化庁長官官房国際課 佐藤課長
    農林水産省食料産業局新事業創出課 遠藤課長
    経済産業省商務情報政策局生活文化創造産業課 岸本課長
    経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課 伊吹課長
    観光庁観光地域振興部国際交流推進課 坂井主査


○木村参事官
 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「コンテンツ強化専門調査会」第1回会合を開催させていただきます。本日は御多忙のところ御参集いただき、まことにありがとうございます。
 私、内閣官房知的財産戦略推進事務局内閣参事官の木村でございます。よろしくお願いいたします。
 後ほど委員の互選によりまして、本専門調査会の会長をお決めいただきますが、それまで議事の進行を務めさせていただきます。
 開催に先立ちまして、知的財産戦略推進事務局の内山事務局長から御挨拶を申し上げます。

○内山局長
 皆様、おはようございます。知財事務局の内山でございます。
 年末の大変御多忙の中、押し迫って皆様方に御参集をいただきました。感謝を申し上げたいと思います。
 各界を代表する皆様に委員に御就任いただきまして、本日、第1回目の専門調査会が開催できますことを大変うれしく、そしてまた、心強く思う次第でございます。
 グローバルネットワーク時代ということでございますけれども、そういった中でコンテンツの強化というものが大変大事であるということは、言を待たないわけでございます。特に、コンテンツとITあるいはものづくり、そういったものを連携あるいは融合させていくということが大変大事になってきていると思います。そういった意味で、この分野におきます政策をスピード感を持って強力に進めていく、大胆に進めていくということが大変重要になってきていると思います。
 来年3月には、知財戦略本部が創設されて10年を経ます。この10年の間に大変多くの課題に知財戦略本部も取り組んでまいりましたが、大変進捗したものもございますが、道半ばのものもございます。また、この10年の間に大きな環境変化、状況変化を遂げたものもございます。さまざまなものがたくさんあるわけでございます。
 10年目の節目の年に、こういった取組についてしっかり厳しく検証するとともに、次の10年を見据えて、新たな知財政策を構築していく。また、成長戦略の中でも、このコンテンツ強化というものを重要な柱の1つとして構築していくということが重要であると考えております。
 委員の皆様方、また、今日は本部員の皆様も大変多く御出席をいただきました。しっかりいろいろな意味での意見をいただきながら、私ども事務局も全力でこの専門調査会の議論がスムーズにいくように、サポートしてまいりたいと思います。
 どうぞよろしくお願いいたします。

○木村参事官
 それでは、今回、委員をお願いしました方々を御紹介させていただきたいと思います。資料1の委員名簿を御参照ください。
 井上由里子委員でございます。
 大ア洋委員は、所用のため御欠席されております。
 岡田裕介委員でございます。
 川上量生委員は所用のため、おくれて御出席されます。
 川崎由紀夫委員でございます。
 久夛良木健委員でございます。
 國領二郎委員は、所用のため御欠席されております。
 齋藤茂委員でございます。
 新山賢治委員でございます。
 杉山知之委員でございます。
 妹尾堅一郎委員でございます。
 谷口元委員でございます。
 中村伊知哉委員でございます。
 野口祐子委員でございます。
 野間省伸委員でございます。
 平澤創委員は、所用のため御欠席されております。
 別所哲也委員でございます。
 また、本日はオブザーバーとして、知的財産戦略本部員にも御出席いただいております。
 角川歴彦本部員でございます。
 里中満智子本部員でございます。
 中島淳本部員でございます。
 中山信弘本部員でございます。
 三尾美枝子本部員でございます。
 事務局の出席者についても御紹介いたします。
 山根事務局次長でございます。
 作花事務局次長でございます。
 畑野総括参事官でございます。
 林企画官でございます。
 また、本日は各省庁より関係課長をお呼びしております。
 内閣官房IT担当室、北林内閣参事官でございます。
 総務省情報通信作品振興課、竹村課長でございます。
 外務省知的財産室、彦田室長でございます。
 文化庁著作権課、田口課長でございます。
 文化庁国際課、佐藤課長でございます。
 農林水産省新事業創出課、遠藤課長でございます。
 経済産業省生活文化創造産業課、岸本課長でございます。
 経済産業省文化情報関連産業課、伊吹課長でございます。
 観光庁国際交流推進課、亀山課長でございます。

○坂井代理
 亀山の代理で出席させていただいております坂井と申します。よろしくお願いいたします。

○木村参事官
 それでは、初めに本専門調査会の会長をお決めいただきたいと思います。専門調査会の設置規定によりまして、会長は委員の皆様の互選により選出していただくということとなっております。委員の皆様で、どなたかを推薦される方はいらっしゃいますでしょうか。
 谷口委員、よろしくお願いいたします。

○谷口委員
 今までに引き続き、中村委員にお願いしたいと思いますので、推薦いたします。

○木村参事官
 ありがとうございます。
 ただいま、中村委員の御推薦がありましたが、いかがでしょうか。
(「異議なし」と声あり)

○木村参事官
 それでは、中村委員に会長をお願いしたいと思います。
 ここからの議事は、中村会長にお願いいたします。

○中村会長
 中村でございます。よろしくお願いいたします。
 私、この知財計画の策定に携わるのは今回で4年目ということになるわけですけれども、今回、委員も改まりまして、政権も交代ということですので、気を新たに取り組んでまいりたいと思います。
 コンテンツの状況に鑑みますと、いまだ国家戦略として政策が確立されたかというと、心もとないところがあります。私自身も、ここまでで成果を上げたのかと問われると、これも胸も張れるものではございません。これからのことだろうと思っております。新しい政権の姿勢というものがどうなるかということはまだわからないわけですけれども、これまでにない力をこの分野に注いでもらうように、求めてまいりたいと思います。
 多くの府省の方々にも積極的に参加をいただきまして、互いに知恵を出してまいりたいと思います。政府の方々の席、ちょっと窮屈そうで申しわけありません。
 折しも、先ほどお話がありましたように、この本部設立から10年を迎えるということですので、その成果を厳しく評価するとともに、将来に向けて骨太の政策を出してまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
 では、議事次第にのっとって進めてまいりたいと思います。
 まず、急な事情で私がこの会議に出席することができなくなった場合に、会合の議事進行をしていただく方として、副会長をあらかじめ決めておきたいと思います。この専門調査会の設置規定によりまして、専門調査会の運営に関する事項で特に定めのない事項については会長が定めるとなっておりますので、私から、杉山知之委員に副会長をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○杉山委員
 よろしくお願いします。

○中村会長
 まず、この調査会の運営あるいは今後の検討スケジュールについて、事務局から説明をお願いします。

○木村参事官
 それでは、まず配布資料の確認をさせていただきたいと思います。
 議事次第の次に、資料1〜5、参考資料1〜5が事務局で用意させていただいた資料でございます。
 また、資料6と7について、それに続いて資料番号を振っておりませんが、机上配布資料が1点ございます。こちらのほうは委員から御提出いただいた資料ということになっております。漏れがありましたら、事務局までお申しつけください。
 それでは、専門調査会の運営について御説明させていただきたいと思います。参考資料2をごらんいただきたいと思います。
 参考資料2の1.と2.にありますように、議事は原則として公開し、議事録、配布資料も原則として会議終了後、速やかに公開という形になっておるところでございます。
 また、参考資料3でございますが、専門調査会の公開の手続とありますように、会議の開催をホームページなどで周知いたしまして、一般傍聴や報道関係の傍聴を認めているという手続としておるところでございます。
 次に、今後のスケジュールについて御説明申し上げます。資料2をごらんいただきたいと思います。
 今後、新たな知的財産推進計画の策定に向けて御議論いただきまして、4月ごろにはコンテンツ強化専門調査会として、知財計画2013の骨子に盛り込むべき事項を取りまとめていただきたいと考えておりまして、その後、更に検討を深めて、6月ごろには知財計画2013に盛り込むべき事項をおまとめいただきたいということでございます。
 また、本日第1回目の会合を開催させていただいた後、次回を1月17日に予定しておりまして、第3回以降の日程は後日調整させていただきますが、全5回の開催を予定しておるところでございます。
 以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございました。
 今の説明について、何か御意見、御質問等ございますでしょうか。よろしいですか。
 では、資料2のとおり検討を進めたいと思います。また、皆さんの時間を頂戴することになります。よろしくお願いいたします。
 次に、知的財産政策ビジョン検討ワーキンググループの設置についてです。これも説明をお願いします。

○木村参事官
 それでは、資料3をごらんいただきたいと思います。
 2002年に政府として知財立国の実現を目指して「知的財産戦略大綱」を策定してから、10年が経過してございます。知財立国に向けた各般の取組を進めておるところでございますが、急速なグローバルネットワーク化といった知財を取り巻く環境変化が生じる中で、今後、我が国がどのような対応を進めていくのかといったことが喫緊の課題となっているところでございます。このため、本専門調査会と「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会」、この2つの専門調査会の下にワーキンググループを設置いたしまして、集中的に過去10年の取組の検証を行うとともに、今後の10年を展望した知的財産政策ビジョンの策定に向けた検討を行うというものでございます。
 ワーキンググループの委員につきましては、2枚目の別紙のとおりとしてございます。両方の専門調査会の委員、本部員の有識者に入っていただくとともに、IT戦略との連携という観点から、IT戦略本部有識者にも加わっていただくということとしております。
 この知財政策ビジョンに関して、ワーキンググループで行われる議論につきましては、本専門調査会にも御報告いたしまして、専門調査会においても御議論いただくということとしたいと考えているところでございます。
 なお「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会」のほうでは、去る21日でございますが、開催された会合で本ワーキンググループの設置をお認めいただいたところでございます。
 以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございました。
 これは決議が必要ということですので、このワーキンググループの設置について決定したいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)

○中村会長
 では、この調査会としても、このワーキンググループの設置を決定ということにいたします。
 次、インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループの廃止についてです。これも説明をお願いします。

○木村参事官
 資料4をごらんいただきたいと思います。平成22年2月にインターネットの著作権侵害コンテンツ対策における法的課題を中心として、集中的に調査・検討を行うためにワーキンググループを立ち上げて検討を行い、報告書をまとめ、知財計画にも反映されたところでございますが、既にその目的を達成したことから、このワーキンググループの廃止の手続を取らせていただくというものでございます。
 簡単でございますが、以上でございます。

○中村会長
 これも決議事項となりますけれども、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
(「異議なし」と声あり)

○中村会長
 では、本調査会として廃止を決定といたします。
 事務手続は以上でございます。
 次に、過去10年の知的財産推進の取組の検証について議論したいと思います。事務局から説明をお願いします。

○木村参事官
 資料5をごらんいただきたいと思います。
 過去10年の知的財産推進の取組を検証するために、我が国の知財戦略の基本的な方針といたしまして、第1期となる「知的財産戦略大綱」、第2期となる「知的財産推進計画2006重点編」、「第3期知的財産戦略の重点方針」、これらに取り上げられました項目を中心に取り上げておりまして、主な指摘、達成状況、論点ということをまとめた資料となってございます。
 まず、委員の皆様方に自由に御議論いただこうということから、論点では現状に関する記述にとどめまして、事務局としてあらかじめ具体的な方向性を示すものは控えております。主にデジタル化・ネットワーク化の基盤整備、クールジャパンの推進ということを柱として取り上げながら、模倣品・海賊版対策の推進、人財育成に関する項目というものを取り上げておる資料になってございます。御参照いただければと思います。
 あわせて、参考資料5を配っております。A3の1枚紙で折りたたんだ資料でございます。こちらをごらんいただきたいと思いますが、過去の知財計画において提言されました項目を一覧にして、時系列的にまとめたものでございます。コンテンツ関係につきましては、中段から下段にかけた部分がコンテンツ分野に関する各項目を掲げておるというものでございます。これらのほうも議論の御参考にしていただければと思います。
 以上でございますが、こちらの項目あるいはその他の項目につきましても、委員の皆様から御自由に御発言いただきまして、知財政策ビジョン、知財計画2013に向けた御議論をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございました。
 では、議論に入りたいと思います。ここからフリーディスカッションです。今日は先ほど説明がありましたように、委員の皆様から自由に御意見をいただくということを目的としておりますので、忌憚のないコメント等をいただければと思います。
 今日は新しい委員もたくさんおられまして、顔合わせという面もございますので、皆様にはできれば一言以上ずつ声を出していただければと思います。
 では、どのテーマについてでも結構ですので、自由に御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 谷口委員、どうぞ。

○谷口委員
 9ページになると思います。「クリエーターへの適切な対価の還元」という項目ですけれども、私的録音録画補償金制度、ここでは補償金額が減少傾向と書かれておりますが、現状は破綻寸前という状況でございます。それは対象機器と指定されているものが、町中で皆様が使われている機器と全く乖離しているということであるとかもございますので、これは喫緊の課題としまして、補償金制度の内容の見直し、実効性を確保するということで、皆さんに御議論いただければと思います。
 よろしくお願いします。

○中村会長
 ありがとうございます。
 他にいかがでしょうか。
 まずは皆さんから関心事項をどんどん出していただいたほうがいいと思います。
 新山委員、どうぞ。

○新山委員
 NHKの新山と申します。
 日ごろ制作現場を通してやってきましたので、その視点で常日ごろ疑問に思っていることをお聞きしたいと思います。それはクールジャパンという言葉なのですけれども、クールジャパンという言葉は、恐らくちょうど10年前にアメリカのジャーナリストが、日本は経済パワー以上に文化パワーがあるのだということを紹介したのが皮切りだと思います。その後、日本がその言葉でいろいろ戦略を立てているのですけれども、我々にとってのクールジャパンというのは一体何なのかという議論が果たして行われてきたのかどうかということを、私は疑問に思っていまして、どうしてもアニメとか、ここにも映画産業の方がいらっしゃいますけれども、映画とか、すぐお金にする大型なものに目が行き過ぎて、どうもそれは金になる金にならないという議論に終始したのではないか。日本が自分たちの言葉として、クールジャパンというものを世界に売り出したい概念というものは一体何なのかといったところ、そもそも我々のよりどころとする言葉の意味について議論があったのかどうかということは、常日ごろ疑問に思っています。
 と申しますのは、私は地味な情報番組とかドキュメンタリーをやってきたものですから、実はドキュメンタリーというものは、最近、スリーピング・ジャイアント・ドキュメンタリー、日本のコンテンツ力はすごく評価されていまして、今までそういう場がなかったということなのです。ようやく日本の一つひとつのコンテンツに目が向き始めている中で、我々はもう一度クールジャパンというものを再定義する必要があるのではないかと思っていまして、言わせていただきました。

○中村会長
 ありがとうございます。
 私もNHKの「COOL JAPAN」という番組に出演させていただいているのですけれども、今のは質問でもございますので、どなたかコメントがあればと思いますが、いかがでしょうか。
 別所委員、どうぞ。

○別所委員
 皆さん、初めまして。私、別所哲也と申します。
 日ごろは俳優をやったり、ここにも書いてありますように、国際短編映画祭をこの14年間主催させていただいて、世界中から100か国以上の国々の作品を4,000本以上集めて、日本で映画の価値づけ機関、ランキングビジネスがどういうものかということを改めて世界中の方々と語らう場所を設けているわけなのですが、今のクールジャパンに関しては、実は私もここに委員と座りまして、今回で4年目に入りまして、クールジャパンとは何ぞやと、あるいはクールジャパンというものも、日本が発信したいクールジャパンと世界が捉えているクールジャパンは何なのか。そこに若干の誤差やひずみや差異はないのかという議論は、この調査会でも熱く議論されたと記憶しています。
 ただ、そこに何か1つの答えがあったかというと、どこかに収れんしていくという以上に、この調査会の目的にもかかわると思うのですが、状況分析あるいはこういった現状ではないかというところに終始して、実際のアクションプランというものになっていくと、今日もいらっしゃいますが、各省庁のそれぞれの方々のもとにある予算配分とその先にある実行プランということにひもづいて、私も「YOKOSO! JAPAN」の大使をやっていますが、今日は観光庁の方もいらっしゃっていますけれども、観光庁という立場で何らかのクールジャパンを表現する体現者であり、スピーカーになり、オピニオンメーカーになっていくという立場をとっているので、厳密には10年前のクールジャパンと今のクールジャパンにどういう差があって、先ほども言ったように、日本国内のそれぞれ多様性あるクールジャパンと、海外が求めているクールジャパンを一致させたらいいのか悪いのかという議論は、この場でこの後もされていくのかと思います。
 ただ、私が非常に危惧しているのは、4年目に入りますが、初回ですのであえて苦言を呈す意味で言いますと、ここが知財の本部で国家戦略という割には、実際に行われているプランが世の中に知られていない。これはメディアに携わる私も含めたメディアへの発信力の問題もあるでしょうし、メディア側の問題もあると思います。実際のプラン自体もそれぞれのやっていることが連携されているかというと、連携されていない。私も現実にこの調査会でも感じていることです。
 ですので、なお今回の2番に大きくクールジャパンの推進とございますので、何がクールで何に優先順位をつけてクールで押し出していくのか。あるいは、世界は何をクールと考えているのか。
 たしか3年前の議事録にも書かれていると思いますが、新幹線そのものもクールだ、ウルトラマンもクールだと。では、ウルトラマンがハリウッドでリメイクされないのはなぜか。頑張っているけれども、新幹線がいつまで経ってもなかなか出ないのはなぜか。そういった連携したことは、断片的には表現されていても、その先の議論というものは、最終的には総理大臣だと思うのですが、アクションプランにつながっているのか、ばらばらなのかがわからないのではないか。是非、今回は4年目になりますし、政権交代と会長もおっしゃいましたが、何か具体的なプランになるように私もここでお話ができればと思っております。

○中村会長
 先に野口委員、お願いします。

○野口委員
 本年度から初めて参加させていただきます、弁護士の野口と申します。よろしくお願いいたします。
 今の別所委員の御指摘に関連した点で、私から1点御提案をさせていただきたいことは、そうは言いましても、恐らく過去、各省庁の皆様方が予算の中でベストと思われる政策をいろいろやってこられたのだと思うのです。しかし、それが本当にどこまで効果があったのかということについて、より見える形での具体的フィードバックがいただければと思っております。例えばイベントをやりました、そのイベントは日本の映画なりコンテンツなりの認知を広めるためにやっている、など、いろんな目的があると思うのですが、その目的は達せられたのかについて、例えばその場で来場者にアンケートを取り、成果としてどれぐらい認知が得られたのかとか、もしくは面白かった点、面白くなかった点、を確認して次の施策の検討・改善につなげられればと思います。また、別の例で、例えば、その場で海外にライセンスをして海外展開を狙うということで、ライセンスの交渉窓口のようなものを設けたのであれば、そこに訪れた人が実際に幾つ交渉をしたのか、どれぐらい使いやすい仕組みになっていたかとか、そういう効果を測るということが過去どれぐらいされているのかということについては、いつも疑問に思っていました。簡単なアンケートフォームを用意して集計をするなどは、費用もそんなにかからず簡単にできることだと思うので、もし過去にそういうフィードバックがあったのであれば、そこの検証も含めて次につなげていければと思いますし、過去余りやられていないのであれば、今後は是非そういう評価プロセスも含めて1つのパッケージとしていったらいいのではないかと思います。

○中村会長
 そのとおりですね。
 野間委員、お願いいたします。

○野間委員
 講談社の野間でございます。
 今、お話に上がったような点で、具体的なところで申し上げますと、21ページにございますが「コンテンツ×消費財」ということで、タイムリーな話題なのですけれども、23日、日曜日にインドで「巨人の星」のクリケット版のアニメーションの放映が開始されました。さまざまなメディアに取り上げていただいたもので、日本国内での広告効果というものは非常に高かったのです。実現に至るまでは、経産省さん、外務省さんに大変お世話になりまして、どうもありがとうございました。
 具体的に言いますと、日本の原作をインドで制作するという形なのですけれども、そこにスポンサーとして全て日本企業で、航空、食品、文具、空調機器、自動車の5企業が向こうでのアニメ放映に関してスポンサーになってくださっています。そのメリットとしましては、コンテンツとあわせて日本ブランドを売っていこうということが狙いですけれども、プロダクトプレースメントを行ったりですとか、一部の食品ですとか文具のほうでは、キャラクターをつけたさまざまな商品化を展開していこうということで、その展開が始まったところでございます。
 実際、向こうでアニメがどの程度人気になるのかということは、まださっぱりわからないのですけれども、非常に可能性はあるのかと思っていまして、先日、経産省さんの別の会議に出ましたら、インドで日本について知っているという人は極めて少ない。日本のことについて知らない人が8割ぐらいだということですので、我々から見れば、クールジャパン戦略の一環なのかもしれませんけれども、向こうにしてみれば、そもそも日本のことについて何も知らないので、クールジャパンも何もあったものではないというところなのでしょう。ただ、我々としては、そこから新しいことをやっていければ面白いことになるかと思います。
 また、これをインドだけではなく、他の国などにも展開できれば、どんどん日本ブランド、日本というものの認知度を世界に広めていくことができるのではないかと思っておりまして、今後も是非、御協力をお願いしたいと思っております。

○中村会長
 中山本部員、どうぞ。

○中山本部員
 全体なことをお話ししたいと思います。私はこの戦略本部が始まって以来、10年間本部員としてこの戦略計画にも関与してきましたけれども、よく書けているといいますか、私が言うのもおかしいのですが、東大生の優の答案のような立派なものだと思うのですけれども、果たしてこれがどのくらい実践的かということになると、疑問を持たざるを得ない。
 資料5の24ページにもありますとおり、世界のコンテンツ市場は非常に伸びているにもかかわらず、日本のコンテンツ市場は縮小ぎみである。これ1つ取りましても、果たしてこの優の答案が実際にどのくらい実現されているのかということが疑問のように思えるわけです。
 一般的に言いますと、10年前からずっとそうなのですけれども、総花的な答案になっておりまして、ここが肝であるということが少ない。肝になるところを1点とか2点突破していこうというところが少なく総花的になり過ぎている。
 あとは、フォローアップの問題ですが、前近藤事務局長のときからフォローアップをやっておりますけれども、角川本部員などはおっしゃっているのですが、○、△、×で言いますと、ほとんどが○になっているわけですが、現実にコンテンツ市場は縮小している。したがいまして、私はこのフォローアップをもっと厳格にやっていく必要があるのではないかと思います。

○中村会長
 ありがとうございます。
 他にいかがでしょうか。
 角川本部員、お願いします。

○角川本部員
 今年は出版界から見ると、黒船と呼ばれたAmazon、Google、Appleがみんな上陸した年なのです。9月にはGoogleがGoogle Playというネットのストアを始めましたし、10月にはAmazonがいよいよ本格的に始まって、12月にはAppleがクラウドサービスのiBookというものを始めるという話です。その中で、私は日本の電子書籍のインフラを伸ばすためにも、そういうところと協力したほうがいいと割り切って契約したわけですけれども、その折りにできれば日本のコンテンツを海外に持っていく。日本のコンテンツをお金にする、メイクマネーするということでそれらの人たちとも手を組むという気持ちになったわけです。
 それらの契約書を全て点検してみますと、海外にコンテンツを持っていくことに対しては、彼らの販売力に依存することは問題ないのですけれども、各国における法制度、宗教問題、文化や慣習、そういう問題に日本のコンテンツが差しさわった場合には、全ての責任は当該コンテンツ提供会社にあると明文で書いてあります。
 つまり、Google、Apple、Amazonは日本のコンテンツを海外に広めるのは協力するけれども、責任は全部あなたたちですということなのです。
 そこで私は改めてクールジャパンというのは、国策として10年間やってきたわけですが、一番重要なことは、日本のコンテンツを国策として産業育成しようというはずだったわけですけれども、クールジャパンと言われている日本のコンテンツが各国の知財の法制度や宗教問題、民族の感性の問題について、割と無頓着だったと思ったのです。
 つまり、改めて日本のコンテンツがその国でどう利用されるかという調査を基本的に欠いてきて、ただ一方的に日本のコンテンツは格好がいいということばかりを言ってきたような気がします。恐らく講談社さんもインドのアニメについては、相当インドの習慣に戸惑われたのではないかというお話を聞きたい。是非、同一基準、同一価値で全世界におけるコンテンツを伸ばしたい国、そこで調査をしていただくようなことを検討していただきたいと思うのです。
 日本のコンテンツ力は全世界のマーケットで14%の市場価値を持っていると言われていますし、アメリカのハリウッドは40%、中国に至っては全世界で3%ということですから、日本のコンテンツ力は大した存在感だと思うのですけれども、我々、10年間それをメイクマネーする、本来の知財本部でやるべき産業の育成に失敗してきたのではないかと思います。ですけれども、ようやく何が問題だったかということがわかってきたのではないか実感を持っています。是非、先ほどからのクールジャパンのお話を総括するところに、今回は手を伸ばしていただきたいとお願いしたいと思います。

○中村会長
 ありがとうございます。
 中島本部員、お願いします。

○中島本部員
 皆様の御発言に関連するのですけれども、先ほど中山本部員が推進計画、いろいろ総花的で答案としては満点というお話だったのですが、私も記載してあること一つひとつはすばらしいことがたくさんあると思うのですけれども、どうしても文章に書きますと、全部並列的になってしまうというところを区別して、優先順位、本当に太いところがどこなのかということを明確にするべきではないかと思います。
 参考資料5の過去の変遷に関しても、確かにこれはこれでこのとおりなのでしょうけれども、例えばで言えば、枝のところ幹のところ葉っぱのところ、これがどうしても並列的になってしまいがちであるということです。特に先ほど新山委員からもありましたが、クールジャパンというのは一体何をメインロードにするのか、プラットフォームにするのかというところ、インバウンドもそうですけれども、最初にきちんと土台をつくる。それに皆さんが乗れるようにする。そこら辺の肝心なメインストリームの部分とアプリケーションの部分、これを区別して、まずはプラットフォームづくり、メインストリームづくりをきちんとするというところが大切だと思いますし、これは今後10年、政策ビジョンワーキンググループでやってくださるのではないかということですので、大いに期待しているところでございます。
 よろしくお願いします。

○中村会長
 では、三尾本部員、お願いします。

○三尾本部員
 私も中山先生と同じように、随行のときの立場を含めますと約10年間、この戦略本部に携わってまいりまして、特にコンテンツの専門調査会については、何年もの間、本部員も含めましていろいろ検討させていただいてきました。正直申し上げて、各専門調査会の議論の中では、非常に真摯に議論されていて、レベルの高い、完成度の高い議論がされていたと思います。それは戦略計画のほうに十分反映されまして、すばらしい計画ができていたと思っております。個々の議論については、私はしっかりしてきたと思いますし、それについては十分だったかと思っています。
 ただ、感想になりますけれども、韓国と比べまして、検討されたことがどこまで成果を得られているか、クールジャパンというものは何なのかということを考えた場合に、感慨深いものがあります。実は、たまたま今月初めに韓国のIBA、インターナショナル・バー・アソシエーションという法律家の会なのですが、そのソウルにあるアジア支部に行くことがありました。IBAは非常に大きな全世界的な法律家の会で、日本の弁護士も多く会員になっており、韓国の弁護士は相対的には会員数が少ないです。そのIBAが今後アジアに注力するために、アジアでIBAの支部をつくろうということになったわけなのです。会員の数から言いますと、東京というのが妥当なのだろうと思ったのですけれども、ソウル市が費用を負担するとして自ら手を挙げたため、IBAのアジア支部がソウルに決まったということなのです。実際にその支部を訪問してみると、非常に狭い暫定的な場所で、まだこれから移転をする予定で、とりあえず開設しましたということでした。所属する方々も2、3人だし、また事務所をその程度しか入れない小さな場所でした。でも、ソウル市が設置の誘致を勝ち取ったわけなのです。東京はそのときにいろいろ考えて、準備ができないということもあったのだと思うのですけれども、手を挙げなかったということです。
 これ自体はコンテンツとは直接関係ないかもしれないのですが、共通するものがあるのではないかと思います。この10年いろいろ検討し、完全なものをつくろうと、十分準備をしてから進めようとしてきたのですけれども、結局は行動が伴わなかったのではないか、とりあえず手を挙げて、準備も不十分だけれどもとりあえずやるという韓国のような姿勢が欠けていたのではないか。何か行動して世界市場をゲットするといいますか、クールジャパンを実現していくという力強い行動力が足りなかったのではないかと、今回、韓国を訪問してみて思いました。IBAの件もコンテンツの件も共通するのは、日本は完璧を求め過ぎており、考え過ぎなのではないかと思うのです。 あまり、いろいろ考えないでまず行動するということが、この10年間で足りなかったのではないかと思います。
 以上です。

○中村会長
 里中本部員、どうぞ。

○里中本部員
 では、今の意見と関連することですので、先に述べさせていただきます。今の韓国の話は、普段実感していることでありまして、私、NPOをつくってずっとMANGAサミット運営本部というものをやっておりますが、世界の本部は韓国にあるのです。それも本当におっしゃったようにゲットするという勇気、行ってみますと本当に大丈夫かというぐらいの事務所、あとは人材もころころ変わったり連絡もうまく行き届かなかったりします。思うのですけれども、日本人というのは本当に考え過ぎなのです。考え過ぎてすばらしい計画書をつくって、文法的にも間違っていないし、どこからつつかれてもちゃんと説明ができるようなものをきちんとつくった上で手を挙げる、それが社会性だと思っているのです。ただ、世界の多くの国、例えば中国にしましてもそういうことでないのです。自分たちがこれをやるのだと見せかけた以上は、やってしまうというすばらしい勇気だと思います。
 かつて韓国が経済危機に陥ったときに、たまたま韓国の漫画家とかシナリオライターとかと話していて、落ち込んでいるかと思うと、非常に意気が上がっておりまして、やるのだと。なぜなら、政府が売れるものは産物ではないのだと。産物というものは、それに上乗せして幾らかの利益という大体常識がありますけれども、コンテンツというものは幾らでも、一が億になる世界だと、これが国の力になるのだということで、国の経済は大変なのにこんなに援助してくれると言ったということで、すごく燃えていたのです。
 ところが、国の援助に慣れてしまいますと、それに当てにするようになっていろんな問題が起きましたが、とにかくやるのだという意欲と、先ほどもお話がありましたけれども、一般の方に対して、国がこういうことをやって後押ししているのだということが余りにも知られていない。そんな大声で知らせるものではないとすごく遠慮がちに上品にやっているような気がするのです。わかっていただけると、特に若い人たちが大丈夫なのだと、もし自分が海外から話があったときに、どうなるかわからないから断るということではなく、何か相談できるのだとか、あるいはもっと広く基礎研究をやってらっしゃる方とか、いろいろな工業製品をつくってらっしゃる方も、特許についてずっと悩んでいらして、そういうことに国がちゃんとアドバイスをくれるのだということがわかると、ここはコンテンツの調査会の場ですけれども、コンテンツというものは本当に広い意味があると思うのです。まずそれを知ることが大事で、かつて韓国のあの大変な経済状況の中で、知財にかかわる方が物すごく勇気を出して前向きになったように、今の日本の若い子たちに、こういう分野でそんなにびくびくしなくていいのだということを伝えるだけでも、もう少し活躍と言いますか、まとめてきたものを広く認知していただける方法をとりたいと思います。
 現在でも、私に近い分野ですが、何かあったとき例えば海賊版とかいろんなことがあったときに、出版社が何かしてくれるだろうかもしれないけれども、どうなのだろうかぐらいしか認知していないのです。芸能のいろんな分野もありますが、クールジャパンよりオールジャパンであるべきことはすごくたくさんあると思いますので、よその国をお手本にするのは非常に情けないのですけれども、韓国を見習って、もう少し丁寧さよりもアピール力ということで、どうせ日本人は丁寧にやるなといってもやりますので、大丈夫だと思います。こういうことを答案は書くのですが、できれば読んでくださいとか、わかる人はわかってくださいという姿勢がどうもあるので、その辺がとても残念です。

○中村会長
 ありがとうございました。
 こちらサイドからは全員声が出ましたので、今度はこちら。
 妹尾委員、どうぞ。

○妹尾委員
 今回、初めて委員を拝命しました妹尾と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私が委員に拝されたのは3つ理由があると思って、自己紹介を兼ねて申し上げます。
 私は、もう1つの知財戦略本部の専門調査会「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会」の会長として、こちらのほうも兼務せよということかと思います。なぜならば、テクノロジーのコンテンツの融合領域がかなり広まっているということであります。昨年までは中村先生に我々の調査会の委員を兼務していただいて、今年は私が逆にこちらを兼務させていただくということかと思います。
 第2点は、御存じかと思いますが、私は秋葉原の再開発のプロデュースをずっとやっております。杉山先生などに大分お世話になりましたけれども、秋葉原をどういうコンセプトで再開発したか。「ロボット&フィギュア」というコンセプトを出しました。ロボットとは先端技術の象徴、フィギュアとはアートの象徴ということで、秋葉原の再開発を10年進めてまいった経験からだと思います。
 3つ目は、3期目に入りましたが、私はコンピュータ利用教育学会の会長、そういう観点からここに何か微力ながら貢献できればということかと思います。
 今からお話しするのは、1つはテクノロジーのほうの専門調査会でどういう話が出てきているかということを皆さんにお伝えしてみたいと思います。先週の金曜日に開かれましたけれども、ここでは我々も10年の総括、10年の展望をどうやっていくか。角川本部員や中山本部員が本当に御苦労されて積み上げてきてくださった10年をどう学習の種にするかということです。総括と言いますと、私たちの世代はついついつるし上げて最後は処刑するというイメージがございますが、そうではなくて、何を気づき、学び、考えるかということだと思っています。
 その10年の中を2つの側面で見てみよう。1つは、何が継続し何が変化しているのだろうかという観点でございます。
 もう1つは、何が相似、似ていて、何が相違、違うのだろうか。この観点から、我々は総括していこうと考えて、また展望していこうと思っています。
 今まで先生方のお話を伺って、テクノロジーと明らかに違うというところに気がつきました。それは何かと言うと、普段私が申し上げている知財立国は2つのUであるということかと思います。ユニバーサリティーとユニークネスという知財の両側面を持っています。科学技術に関してはユニバーサリティー、アフリカの方だろうが中国の方だろうが日本人だろうが、どこの国の人だろうが、科学技術は共通であります。ユニバーサリティーを持っている。ですから、いかにその中で独自の商品力を形成していくか。事業競争力をつくっていくかということが焦点であります。
 一方、こちらのコンテンツのほうは日本というかなりユニークなところ、文化、芸術といったものに立脚して、独自性を強調しながら、しかし、それはどうやって世界に通用するか。全く逆の方向で価値形成をしているということが非常によくわかるわけであります。  その中で、どうやって知財政策をやっていくのかということになりますけれども、私どもはこちらと共通ですが、どういうことかというと、内閣になぜこれが出てきているか。すなわち内閣府ではなくて内閣にある専門調査会であるということを強調すると、各府省の追認機関ではなくて、司令塔であるという意味だと理解しています。コンテンツに関しても同じ立場で御一緒できればと思っています。
 1つ大きい点で共通点として気がついたのは、我々、テクノロジーのほうの専門調査会で議論しているのは、産業生態系がこの10年間でさま変わりしたということであります。ビジネスモデルも変わる。商品形態、すなわちアーキテクチャーも全く変わる。恐らくコンテンツにおける商品形態も相当変わっているでしょうし、事業業態、ビジネスモデルも相当変わっている。恐らく産業生態系はすさまじく変わっているだろうと拝見しております。
 例えば、我々テクノロジーの世界で言う知財権特許、あるいはそれを使った標準化みたいなものは、従来の参入障壁と参入促進のそれぞれの区分けが入れ乱れるようになっております。おそらく、著作権についても従来のような、使うなというところではなく、使えというところへかなり移行しているのではないかと思います。その意味では、知財権と知財マネジメントの仕方が共通して世界の産業の中では変わっているのではないかという認識をしているわけであります。
 ちょっと長引いて恐縮なのですけれども、資料7をごらんいただきたいと思います。私のほうのメモをしたためさせていただきました。これは何かというと、コンテンツを分野している皆様に是非、呼びかけたいテクノロジー側からの問題意識と見ていただければと思います。最初に知財マネジメントというのは、テクノロジー系を中心とした知財マネジメントの考え方で、私が放送大学、東京大学、一橋大学その他で使っているものなのですが、これは後でお読みいただければと思います。おそらく、技術の伝播・波及やブランドの普及・浸透のコントロールを行おうとする営みということは、著作権、その他をベースにコンテンツの伝播・波及をしつつ、しかし、それをコントロールできないと産業上はやっていけないということでは、多分同じかと思います。
 その次の1「テクノロジーとコンテンツの関係の変容と多様化」ということを共通して認識させていただきたいと思います。最初に「著作権=コンテンツ」という枠組みは当然なのですけれども、産業財産的な使い方が非常に高まっているということを知ってください。現在、ものづくりのハードウエアのほうは、機械そのものだとか作業系と我々は呼んでいますが、それそのものの価値ではなく、それをいかに制御するかというアプリケーションのソフトウエアのところが、競争力を強化するところでものすごく重要になっています。そのレイヤーをとらないと、あるいはそこのアルゴリズムを著作権で押さえず、あるいはそれが標準化されてしまうと、一気に競争力を失うというのが現在の日本のものづくり産業の惨状の原因なのです。ですので、先ほどの著作権を初めとして「著作権=コンテンツ」という世界だけではないということを、是非、お知りいただきたいと思います。  2つ目に、コンテンツにおける「新工芸」と私は呼んでいますが、工、テクノロジーと芸、アートの関係性が極めて多様化しております。これは杉山先生の隣で私が申し上げるのは極めて恥ずかしいのですが、「初音ミク」のバーチャルとリアルの融合的なものであるとか「Additive Manufacturing」、御存じのとおり3次元プリンターを主体にしたアートへの進出、私は10年前に秋葉原で3次元プリンターのオープンラボを提唱していた人間として、10年後になってようやく花開いてきたということをうれしく思っておりますけれども、これもコンテンツとアートの完全なる融合領域に入ってきていると思うわけであります。
 3つ目、これは先ほどから本部員の先生方がおっしゃっていることと関連しますが、2007年に私は競争力の調査会からコンテンツの調査会に呼びかけて、決定されたはずの事項が2つあるにもかかわらず、まだ全く実行されていないということでございます。そのときの資料を資料の後ろのページにつけてあります。2007年11月21日に了解をとられたのですが、これは全く動いておりません。5年も経っているので、そろそろ動かしていただきたいと思っております。
 2番目、先ほどまでの話はほとんどエンターテインメント系のコンテンツの話をされています。私はコンピュータ利用教育学会の会長として大変懸念しているのは、教育コンテンツの問題であります。教育コンテンツが欧米系、特に米国系に席巻されかけているというのが、我々教育関係者の大変な問題意識であります。例えば電子書籍については、日本は文芸書を中心に考えていますが、米国では医学書というマーケットがしっかりわかって、なおかつアングロサクソン系知識体系がしっかりしている段階から一気に入ってきています。それについての電子書籍、パッドの使い方から何からが全部動いております。
 もう1つ、電子書籍はデバイスの形態のサイズ問題と極めて密接に関係しているにもかかわらず、日本は現在、完全に後追い関係に入ってきているということは、教育系コンテンツについても、また日本はガラパゴス状態に一気に進むのではないかと懸念しているわけであります。
 最後のところは、世界の図書館は1つあれば済む、もちろんこれは皆さん御案内のとおりでありますけれども、そうすると角川本部員がさらに気にされているところだと思いますが、出版系から何からのビジネスモデルは5年後に一気に変わって、全部ひっくり返るという状況でありますから、そこにどうやって日本の産業としての手を打つか。ここら辺が問題意識ではないかと考えるわけであります。
 こういうことが、我々テクノロジー系から見たコンテンツ系の皆様への、共通して認識しませんかという呼びかけであることと御理解いただければと思います。
 長くなって済みません、そういうことを御紹介させていただきました。ありがとうございます。

○中村会長
 ありがとうございます。
 知財計画は両調査会で共同してつくっていきますので、妹尾委員には、是非、その橋渡しもお願いしたいと思います。
 他にいかがでしょうか。
 齋藤委員、どうぞ。

○齋藤委員
 京都からやってきました。朝、雪でおくれるかと思ってきたら、何もなくて早く着いたのですけれども、京都からすると、東京でいろんなことが議論されているのでしょうけれども、なかなか実行に移されていないという感じは確かにいたします。
 私は、34年前からゲームソフト開発をずっとやってきまして、もう2,100タイトルのコンテンツをつくっているのですが、正直言って、コピーについては野放しというか、諦めているような状況でございます。ただ、もっと前向きに考えようということで、コピーされるということは、それだけどんどんPRされているということで、いつかコピーされない技術ができたときに、リターンがあるのではないかと前向きに考えるようにしようとしています。
 先ほどから議論を聞いていますと、スピード感というものは大事だと思いますし、決めた以上は取締りなり何なり、きちんとやってほしいと思っておりますし、クールジャパンということであれば、京都では京料理を世界遺産登録しようという動きがされていまして、これも韓国に先を越されそうになっているということで、京都だけではなくて、日本にあるそういう資産を世界文化遺産登録というのを国のほうでどんどんやっていくべきだと思います。例えば寿司などもそうだと思いますし、最もクールジャパンではないかと思うのですが、そういうものも登録に向けて主導してほしいと思います。
 スピード感という意味で言うと、もう1つ、京都はマンガミュージアムというものが既にできておりまして、たしか麻生さんが107億円で秋葉原につくろうという話で、結局なくなりましたけれども、その間、京都が数十分の一の予算でぱっとつくってしまって、大変好評をいただいているという実行力もあると思いますし、そういうところをどんどん支援していただきたいと思います。
 里中先生が言われたように、かける予算に対してリターンが多いのはコンテンツビジネスではないかと思います。工場に投資しても1倍、2倍というのは返ってくるのですけれども、ひょっとしたら、コンテンツというものは投資するリターンが数十倍とか数百倍、ひょっとしたら一万倍返ってくるかもわからない。そういうところを投資の意味ではどんどんやってほしいと思います。
 27ページのKYOTO CMEXというものがあるのですが、私、この実行委員長をさせていただいておりまして、角川さんには大変お世話になりまして、実行委員長を続けております。こういうところの予算でも、ちょっと文句を言いたいところなのですけれども、どんどん減らされていっているというところで、京都の地元で府とか市が予算をふやして何とかカバーしていっているという状況がございます。今年から、9月に「京都国際マンガ・アニメフェア」というものも加わりまして、10万人以上を動員しているにもかかわらず、予算というものはなかなかつけていただけないというところで、ちょっと困っているようなこともお話ししておこうかと思います。
 まだ慣れていないので、これからおいおいと話をしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○中村会長
 よろしくお願いします。
 久夛良木委員、どうぞ。

○久夛良木委員
 この何年か、クールジャパンの議論をずっとしてきたのですが、格好いい日本というよりは、どちらかというと冷え切って、何かみっともない寂しい日本という状況が、この数年間目立っているかと思います。例えば政治の世界でも泣きべそかいたりするような方が出てくるとか、片やテレビを見ると産業界のトップが不調や不祥事で謝ってばかりです。そうすると、子供たちも大人を見て格好よくないというか、我が国自体が格好悪いのではないかと捉えがちなのかもしれないというのは、何とかしなくてはいけない。これは我が国の教育の在り方にも関係するのでしょうけれども。 例えば21ページに、東京国際映画祭とかゲームショウとかCEATECとありますが、国際映画祭はコンペティション部門でたくさんの作品が出てきて、ショートショートもそうなのですが、この分野はとても元気だと思うのですが、片やCEATECとかゲームショウにいくと本当に寂しい。我が国の国力がどれだけ落ちたかということがよくわかる。先ほど里中先生もおっしゃいましたけれども、今の韓国はとても元気なのです。何で元気かというと、よしあしなのですが、やるときにまず勝つことを考えて、端から規制を考えるより、まずはどんどん走って、その中で生き残ってきたものの中でいろんなコンセンサスをつくっていくという考え方ができていると思いますし、シリコンバレーもITバブルが一旦はじけたときに、どちらかというと、昔の大きな企業群はこれで当分だめだと気落ちしたところに、新しいベンチャーがどんどん出てきて、更に元気になっていった。こういったいい事例があるわけですから、我々もここでただ議論を重ねているだけではなくて、とにかく我々も格好よく、お父さんお母さんが格好よく頑張っていれば、息子たち娘たちもそのままそこに従うことはないとは思いますが、私たちも頑張ってやってみようかとなると思います。
 1点残念だったのは、ここで言うのも語弊がありますが、最近の調査で彼氏にしたくない大学1位から10位が、我が国ではほとんど理系の大学ということらしい。具体的に学校名を出すのは控えますが、これはいけない。サイエンスが弱くなるような国は将来が非常に心配なので、そういった意味からも、コンテンツとサイエンスというのは、今までは別のものと考えられたかもしれませんが、実は非常に近い領域なので、ぜひ、ここで議論するだけではなくて、具体的にここを引っ張っていけるような分野を幾つか選んで、予算も重点的に配分していただきたい。全体では大きな予算であっても、対象が多いと何か薄まってしまうようなところもあるので、どこかに寄せてでももっと迫力のある、メリハリのある成果を出していければと思います。
 以上です。

○中村会長
 ありがとうございます。
 川崎委員、お願いします。

○川崎委員
 テレビ東京の川崎でございます。
 予算を考えなければいけない時期で、単視眼的になってしまうところを引き戻して、いつも考えていることをお話ししたいと思います。
 テレビ東京のアニメ局の場合、放送局という顔と、もう1つ、アニメビジネス会社の顔で海外に10数年、たくさんの作品を流通させているという作業をしております。その点からこの会は発言させていただきたいと思うのですが、やはりクールジャパンになってしまうのですけれども、出発点として日本のものはいいものだというところにこだわり過ぎているのではないかというのは、正直思います。よいものをたくさん世界に広めていくということが基本だとしますと、よいものは一体何なのかということを考えますと、今まで日本的なものというのはもちろん、こだわっていくべきだと思うのですが、それ以外に世界の価値観に合わせて日本を変化させていくということが重要なのではないかと思っております。
 特に、ここ数年各国が非常に内向きになっています。私は文化の保守化と呼んでいますけれども、ヨーロッパもアメリカもアジア各国も内向きになっている中で、もちろん日本も不景気の中でだんだん作品の内容が小さくといいますか、非常に価値感が狭くなっているといいますか、そういったところがあります。そういう中で、もちろん日本的なものですので、どんどんこだわってつくっていくべきだと思います。一方、世界には市場がたくさんあって、特にアニメの場合にはアニメのビジネスモデルが受け入れられてきたというものもあります。ですので、そういったビジネスモデルを輸出する考え方があると思います。
 今、我々は中国と2作品、ヨーロッパと1作品を共同制作しておりますけれども、これは日本の産業とノウハウを向こうに持っていって、そのノウハウと結果を持って日本の産業に戻してくるということを目指してやっています。ですので、よく言う人材育成とかありますけれども、ものづくりの立場で言えば、人材育成は産業がないと育成できないと思っております。クリエーターの方々も元サラリーマンの方が多いです。産業を維持してなんぼだと思っていますので、海外市場を利用して日本の市場に戻す。ビジネスの規模を維持、拡大していくということが大事だと思っております。その点では、ものづくりへのインセンティブとか評価として、もっとメリハリのついたものづくりへのヘルプが大事だと思っております。
 ものづくりの一方、せっかくいいものをつくったら、流通させなければ何にもならないと思っております。その点で言えば、アメリカのクランチロール社とか中国の土豆というところを使って、今、アニメの配信を日本の放送終了後すぐに行っております。これは非常に評価されておりますけれども、現状、流通に牛耳られている。どの産業も同じだと思うのですが、流通に牛耳られているというのを何とか変えていかなければいけない。逆にネットの時代ですので、非常にやりやすくなっているという部分も逆手にとってと思っております。ですので、こういったところをメリハリをつけて、国としてつけるものはつける、助けるものは助けるということでやっていけないのかと日々思っているところであります。
 以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございます。
 岡田委員、どうぞ。

○岡田委員
 東映の岡田と申します。
 こういう会議をやっていていつも思うのですけれども、単なる勉強会をやっていてもしようがないと思っているのです。それぞれの分野に関しては、それぞれの人が専門的な知識をお持ちになって、ねじの特許がどうだと言われても、よくわからない。映画に関してはわかっても、知的財産全般となると非常に分野が広過ぎる。それを総論と討論会でやっていて皆さんに発表してわかってもらっていても、はっきり言って意味があるのですかということが1つです。ですから、この会は勉強会なのか何かを皆さんで議論する場なのかということが、今の話をお聞きしていてよくわからなかったのです。
 内閣としてはっきりとした目的に対して予算をつけるのですかということが明快によくわからないのです。こういうことをやっていこう、こういうことをみんなで決めたなら、それに向かっていこう。この満場一致で全員が興味があることというのはあり得ないと思うのです。まず1つの物事に集中しなければいけないと思っております。
 それと世界という話が出ましたけれども、世界というのは、先ほど宗教の話も出ましたが、本当に文化も違うし、インドといってもおやりになったらわかりますが、言語が13種類ぐらいあるのです。英語が通じるとはいえ、大変なことになってくるわけです。つまり具体的にやるとしたら、ターゲットの国がどこか内閣が決めてくれたらいいのですが、台湾でもミャンマーでもタイでもフランスでもドイツでもアメリカでもどこでもいいですが、その国の状態、つまり今のクールジャパンに関しての日本のコンテンツ状態はどうなっているのか。知的財産の他の部分はどうなっているのか。そこは海賊版を取り締まる必要があるのかないのか。齋藤さんの海賊版の話は、どこの話なのですかということもあるわけです。アフリカのある国で著作権の話でそうもめてはいないけれども、中国ではもめている。それぞれ国によって基本的に違うと思うのです。
 ですから、議論している中でどこかの国に絞ってやっていくとか、ある分野に限ってやるとか、国内の話も出てきましたけれども、この話はよくわからないのですが、単純にお聞きしたいのは、国内の人にアピールする必要はあるのですか。海外に出ていく話ではなくて、コンテンツ強化の話なのですか。自分たちがやっていることをアピールする必要は余りないわけです。どこか具体的な国に対してやるならば取り組み方を検討したいと考えております。
 我々の業界からいいますと、テレビと映画というのは近しい関係にあるのです。私はターゲットとする国の放送局を国の予算で買っていただくというのが一番早いと思っております。
 つまり、NHKが真面目な番組ばかり流しているのではなくて、農業のやり方とか教育テレビの古いソフトだけではなくて、民放や映画会社も含めてその国で知的財産の面でどう戦略を立てていくかということを総合的にやらないと、そこにトヨタさんが車を売るならスポンサーについてもらうということになってくる。それも国策でやりましょうといったら、今の日本の経済状況を見ても、内閣の中でそんなに予算がないわけだから、どこかの国に絞ってやるなり何かの産業に絞ってやるなり、方針を決めて著作権を取り締まるのか、それとももっとアピールを重視していくのか。何か決めて討議していかないと、この話は結局何年経っても進んでいかないのではないかと、大変申しわけないけれども思うようになりました。
 映画とねじの特許の話や新幹線の話は、全然違うと思うのです。そこだけは分けて話さないと、いつもいつも総論しかないみたいな話になるのではないかと危惧しておる次第です。

○中村会長
 ありがとうございます。
 御指摘、おっしゃるとおりでありまして、ここの場は勉強会ではありません。次回以降になりますけれども、知財計画というアクションプランを政府としてつくっていく。その中で予算が必要なものもあれば、制度の改正が必要なものもあれば、海外に対する外交ですとか取締りが必要なものも出てまいります。そうした中で、過去にも優先順位をつけて優先的な国も決めましょうとか、そのためのアクションを決めましょうということもありましたし、過去の議論で海外の放送局のルートを押さえるべきではないかという議論もありました。ただ、先ほど来議論が出ていますように、そこにメリハリをつけてアクションを起こそうというのを次以降の宿題にしていかなければいけないと思っております。
 今日のところは、過去10年をどのように見るかという総論の話を重点的にしていただいているのですけれども、次の計画あるいはビジョンはこのようなところに力を入れるべきだという御意見でも結構ですし、資料5にありますような個別具体的な項目についての御指摘でも結構です。引き続き、何か御意見等あればお願いします。
 井上委員、どうぞ。

○井上委員
 今回から参加させていただくことになりました、一橋大学の井上でございます。知的財産法を専門としております。よろしくお願いいたします。
 お話しさせていただきたいのは、最近話題になっておりますオープンデータ戦略でございます。
 オープンデータ戦略というのは、御承知のとおり、政府の持っている情報、公共データを広く社会に公開して二次利用を推進していこうという話です。その目的としては、行政の透明性を確保して市民の行政への参加の道を開くということもありますが、最近注目されているのは、経済の活性化、つまり、政府の持っているデータというものは、ある種宝の山でありまして、それを民間が活用して新しいコンテンツを生み出す、新しいビジネスを生み出すということができるのではないか、という視点です。
 EUなどでは、最近始めたオープンデータ戦略で数百億ユーロの規模の市場が生まれているという報告もあるわけでございます。また、ビジネスとしてだけではなくて、学問的にも科学的にも研究にそういったデータを使うことができます。
 ところが、政府の持っている情報というものは物によるのですけれども、著作権というものが存在しているものも多い。政府の側はそういった情報を出すに当たって、果たしてそれはどのぐらい二次利用を認めてよいのか余りわからず、今まではそれほど積極的に利用してもらおうという態度ではなかったわけです。既に公開している情報についても、著作権の権利制限の範囲内で使っていただくことはできますとホームページなどには書いてありますけれども、どんどん使ってほしい、商用利用してほしいというような促進する姿勢というものは全く見られないというのが現状です。
 ここのところ、IT戦略本部などでもこのオープンデータ戦略を進めようということで、公共データの公開をより進める、公開するだけではなくて、再利用を自由にする、基本は無償で再利用を認める、という方向で進んでいます。知財戦略本部のほうでも、コンテンツを強化するという観点から、この公共データの二次利用の促進ということに取り組んではどうかと思います。特に著作権の取扱について、いま一つはっきりしないところがございますので、その点についてできる限り統一的で、わかりやすいルールを策定して実施する。財政措置は余り要らないということでございますので、それほどハードルが高くない選択肢であろうと思っております。

○中村会長
 ありがとうございます。
 オープンデータは今後非常に重要になっていくと思いますし、今日はIT戦略本部の方にもお越しいただいていますけれども、そちらとも連携、相談をしながら進めさせていただきたいと思います。
 杉山委員、どうぞ。

○杉山委員
 杉山です。
 私も大学をやっていますので、人財育成ということで、40ページを見ていただきますと、2002年度から2011年度に学部がふえている。なかなか結構なことではないかということになるのだと思うのですけれども、今、私のところには約1,000人の大学生と200人ちょっとの大学院生がいます。たかだか1,200人の小さな大学なのですが、約4分の1が留学生になっておりまして、30か国ぐらいから来ているのです。これだけ日本が経済的にも、いろんな指標を見ても落ちている中で、まだ留学生が何を目指して日本にやってくるかということなのですけれども、当然本場である日本に来ているのです。何が本場かというと、もちろん漫画、アニメ、ファッション。若い人にとってはまだ非常に魅力的な国に見えています。これだけ中国との状況が悪くても、今、入試のシーズンになっておりますが、今年も私たちのところでは中国人の受験生の数は減らない状況です。
 ですから、この数字の中で、私たちの大学だけでなくて、実は留学生はかなり含まれている。これをどう見るかです。もしかして、すごい人を育てて相手の国に塩を送っているような感じにもなるわけですが、実は、多くの留学生の中で、一生日本に住みたい、例えば有名なアニメ制作会社とかゲーム制作会社に入って、ずっと日本に住んでいたいとか、そういう子は非常に多いのです。ですから、こういう状況の中でもまだしばらく魅力的に見えているのかと思います。
 ちょっと巨視的に見れば、今、世界の人口はふえているわけで、62億人ぐらいになっていると思うのですが、半分以上は30歳以下の状態です。世界の赤ちゃんが1年間にどのぐらい生まれてくるかというと、1.4億人ぐらい生まれてくるわけですから、20年もすればまた30億人ぐらいが20歳以下ということです。何が言いたいかというと、そういう若い人にとってのコンテンツというものは物すごく重要です。教育も含めてですけれども、エンターテインメント・コンテンツというのは恐ろしいほどの消費量があるわけで、それも将来的にも約束されている量なのです。ですから、ここで何かちゃんとやれば、先細りするようなことはないわけです。放っておいてもポテンシャル・カスタマーは勝手にふえているという状態なので、何かきちっと戦略を打ってやれば、まだ強みは残っていると思います。
 もうちょっとだけ言うと、本当に日本化していると思うのは、大学などに来てきれいでかわいくて、何か先端のファッションをしているという女の子はほとんど留学生なのです。ですから、本当に若い人たちに対しての影響力というものはあると思っているので、是非、クリエーター育成というところもこの数字だけではなくて、せっかく調査していただくのだったら、留学生の比率とかそういうものも見ながら、こういうことをどう捉えていくかということを、私自身もそうなのですけれども、考え直していきたい。当然、そういう中で世界市場というもので勝負していかなければ、日本だけ見ていたら子供の数はどんどん減っていますから、そういう観点はぜひ持ちたいと思っています。
 以上です。

○中村会長
 ありがとうございました。
 大体一巡したのですけれども、他に。
 中山本部員、どうぞ。

○中山本部員
 先ほど言い忘れたことが1点ございますので、申し上げたいと思います。知財戦略本部のあり方の問題ですけれども、戦略本部ができた10年前は、荒井寿光事務局長という人のパーソナリティーもあったかと思うのですけれども、官庁横断的な司令塔としての役割を果たしておりました。特に戦略本部の前身の戦略会議、これは総理の私的諮問機関だったのですけれども、そこで私が起草委員長として戦略大綱をつくりましたが、そのころは2日も3日もかけて各官庁の課長クラスを呼んで活発な議論をして、官庁横断的な作用を果たしていたと思います。日本の国力の衰退に合わせて戦略本部もだんだん衰退してきたと言っては失礼なのですけれども、司令塔的な役割というものをだんだん失ってきたように思えるわけです。
 戦略本部は手足を持っておりませんし、法案をつくる権限もないものですから、10年も経てばだんだんと衰えてくるのも当然かもしれませんけれども、知的財産戦略というものは10以上の官庁にまたがった問題でございますので、司令塔というものは必要だと思います。10年を節目にぜひ、初心に戻るといいますか、司令塔としての役割を取り戻していただきたいと思います。

○中村会長
 別所委員、どうぞ。

○別所委員
 これも毎回3年間言っていることなのですけれども、多分議事録だったりこういったものにも1行か2行反映されていることだと思いますが、海外に出ていく視点というものは常にあるのですけれども、日本に呼び込む視点というのは、例えば杉山委員もお話しになりましたが、私はもっと世界に出ていくことは全然否定しませんし、これからもどんどん出ていかないと日本は加工文化国家ですし、加工産業国家ですし、資源は人間だという国だと理解していますから、その知恵を外に出していくことは重要だと思いますが、世界中の人に日本を理解してもらうという意味では、どれだけ日本に世界の知財に関連した人が訪れ、会議をし、ひざをつき合わせて議論をし、それは何の分野でもいいのです、ゲームの分野でも映画の分野でも、俳優、役者の分野でも出版の分野でも、漫画家でも何でもいいのですが、それを自分たちで手を挙げて、あるいは国とともに国家戦略的に呼び込んでいるか。もちろん私の不勉強で呼び込んでいることもたくさんあると思うのですが、聞こえてこない、伝わってこない。
 私が海外で海外の方に言われるのは、ものづくりはよくわかるけれども、物語が聞こえない国だと。要するに顔がないのです。今回、もう4年目ですので、一体誰が決裁をして、どういうアクションプランを具体的に進めるかということも、次回に関して是非要望したいのは、政権が変わって大臣も変わられると思うのですが、担当大臣にこの場に来ていただきたいと思いますし、そう思う委員もたくさんいらっしゃると思います。その上で、大臣がどれだけ発言力を持って日本を世界に発信するのか。あるいはそれを持続的に補完するインターネットの情報であるとか、前回ですと、内閣官房の広報室の方がいらっしゃっていたと思うのですけれども、そういった方が何を情報発信されるのか。そういった部分を明快にしていっていただきたい。
 各論に関しては、先だと思うのですけれども、ANEWというものはできたとか、コンテンツ特区はどうなったとか、それぞれ検証することは必要だと思うのですけれども、結局、私も3年間効果測定というよりは、それはどうなった、あれはどうなったという話はしたのですが、その先、具体的に何がどう形になったのかというのは、非常にかかわっていながら、いまだに外でクールジャパンとかコンテンツ調査会の話をしても、クールビズとどう違うのとか、本当にそのぐらいのレベルです。誰が何をやっているところなのと、あえてそれを宣伝する必要はないのかもしれないのですが、やっていることが伝わらないというのは、致命的なことなのではないか。
 先ほど来、勇気を持ってとか情熱を持ってとか、私もそういうスポ魂的な世界は大好きなのですけれども、最終的に韓国は何をしているかと言ったら、トライアル・アンド・エラーで間違った人も罰しないのです。あるいはエラーした人も救う仕組みをつくる。要するに、エラーすらも若い人がトライアル・アンド・エラーでやったことは、アントレプレナーとしてもアイデアとしてもいいではないかと、ちゃんと顕彰してあげる安心感があるのだと思うのですけれども、日本にいると、私は40代ですけれども、20代とか30代とかで何かやりたいと思っても、法令チェックをされたらできないとか、特区と言っているけれども、何もできないとか、お金も出しているようで助成金というものは書類を山のようにつくって、3か月も4か月も経っても答えが出ないとか、そういうことだらけです。
 結局若い人たちがどうしているかというと、昨年も一昨年も言いましたが、もう電子書籍をつくる人、映画をつくる人はもう日本にいません。若いプロデューサーとかも川村元気とかいますけれども、彼ぐらいが元気なだけで、要は海外のシンガポールとかインドネシアとかに行って、語学力の問題は突破できたとしても、映画をつくるとかアプリをつくるとかゲームをつくるとか電子書籍をつくるとか、海外の拠点で法人化して、アイデアのわかる連中とそこでつくってしまったほうが早いのです。それで日本に出したほうが、インターネットでつながって日本のマーケットは知らない間にシンガポール拠点の企業、あるいはそこに日本人がいる場合もたくさんありますけれども、そこで動いている。要するに、どんどん空洞化しているのは事実です。
 こうなってしまうと、私も俳優の端くれ、映画人としても演劇人としても日本発の映画とかが世界を席巻するとか、日本のアイデア、昔話も含めてたくさんいいものがあるのですが、世界の人がどうそれを受け入れて、日本で育もうとしているかといったら、仕組みがない、国内の人間、若手が何かやろうとすると、すぐルール違反だと言われる。新しいアイデアを支援してくれるところが、書面も含めて複雑怪奇でできない。その現実がいろんなことの弊害になって進めないのかと思っているので、最初に戻りますが、改めて次回のミーティングに担当大臣、新政権になった後の決裁権を持つ方、アクションプランを実際に動かす方、10年目の節目ですし、内山局長のもと、ぜひ前進できるような形をとっていただけたらいいと思っております。

○中村会長
 では、野口委員、お願いします。

○野口委員
 2点申し上げたいと思います。
 1点目は、先ほどの私の発言をフォローアップしたいのですけれども、フィードバックという意味で先ほど発言をしたのですが、中山本部員からも御指摘がありましたとおり、一応、現在でも○×の評価は行っているので、私が言いたかったのは、今後は、文章で評価して○だとか×だとかということではなくて、もっと地に足のついた生のデータをこの場に出して評価できれば良いな、ということでございます。
 もう1点目は、たくさんの利害関係者がこの場にいらっしゃる中で、あえて産業に直接身を置かないで、これまで外から知的財産戦略を眺めてきた立場として申し上げると、今の別所委員の御指摘は非常に鋭いところを突いていると言いますか、国内の空洞化というお話が出たのですけれども、この知的財産の戦略にはいろんな戦略があって、ビジネス的な戦略であったり、予算をつけるということがあって、そこには先ほどから出ていますように、外に出すとか外から呼ぶというお話があると思うのです。
 もう1つの大きな柱が、日本の法制度をどうするかという法律的なところで、私は法律家ですので、あえてそこの部分について、常日ごろ思っていることを申し上げたいのです。
 先ほど杉山委員からもございましたとおり、特許について、産業技術については、いかに特許を使いやすくするかとか、中小企業に補助金をつけて特許を取りやすいようにするかという話があって、一時期出願はすごく伸びたのですが、最近はすごく減ってきている。その理由として、せっかくいい特許が出たとしても、結局マネタイズできていない。最後のところで、一番重要なアウトのプロセス、つまり技術を実際にサービスや製品に利用することができないという問題があるように感じます。
 一方、このコンテンツのほうは、コンテンツの価値を高めて守るために、いかに著作権法を強化するかという話が中心的に議論されてきたと理解しているのですが、それをもう一段高い視点から見ると、この2つは常に相対立する関係になっている面がありまして、もちろん海賊版の対策は非常に重要なのですけれども、例えば面白いITサービスをつくってみようとか、コンテンツの流通インフラをつくろうとか、第三者がコンテンツを活用したビジネスをして通信技術のマネタイズ化も図りつつ、コンテンツのマネタイズもするということを考えたときに、著作権を強化し過ぎると、権利処理のコストが高くなって、ビジネスのアウトができないという面もあるわけですから、その2つは常に緊張関係にあって、コンテンツをマネタイズ化して守るということは、著作権を強化すればいいというだけのことではないのだと思うのです。
 従来から、日本では、特許は特許でできるだけIT通信技術も含めて、一生懸命マネタイズ化しましょうと言っていて、こちらはこちらでコンテンツを頑張りましょうと言っているのですけれども、その間の緊張関係まできちんと踏まえた上で、例えばアメリカのように、著作権も強化しつつ、その一方でYouTubeなりGoogleなりFacebookなり、もしくはAmazonのKindleなり、そういうITサービスが、ソーシャル・リーディング・サービスとかという面白いサービスをやれるような余地も同時に著作権法に盛り込んで技術の活用も図るとか、両方のサービスをにらんだ総合的な政策というものが、例えば著作権法でもされていると思うのですけれども、日本では従来、そういう総合的なものの見方というものを余りしていないような気がしていて、その2つの分野がそれぞれ独立に話をしているような印象があります。
 もちろん、非常にセンシティブで、例えばソーシャル・リーディング・サービス1つをとっても、出版社の皆様や著作権者の皆様がどうお思いになっているかということについて、非常に難しい問題があるということは十分わかった上で、あえて申し上げるならば、結局そういう面白い機能がいろいろついているところが、世の中の流通を席巻してしまって、そこがある程度流通プラットフォームとして一定以上の力を持ってしまえば、そこに対してコンテンツを提供する側が力関係として弱くなってしまうというところも考えたときに、知的財産の制度というものもある意味国際競争をしているわけでありまして、先ほど別所委員がおっしゃったとおり、サービスをつくる側は一番つくりやすい国へ行って、インターネットを通して日本も含めて市場にしてしまうというところがあるわけですから、そういう意味では、日本の総合的な著作権や特許は例えばプロバイダ責任制限法とか通信とか放送の分野も全部含めて、法制度がいろんな人にとって使いやすいものになっているのかということを、もう一段上の目線から検討するということが必要なのではないかと思っておりまして、非常に抽象的な話で申しわけないのですけれども、意見を申し上げさせていただきました。

○中村会長
 では、新山委員。

○新山委員
 常日ごろ、現場でコンテンツの展開の際のジレンマに直面している者として、具体的な話を2、3点お伝えしたいと思います。
 今、著作権の話がありましたけれども、去年、台湾に行きまして、CODAさんや台湾の知財警察の夜店の一斉取締りに立ち会ってきました。一斉に夜店から海賊版はなくなりました。なくなって半年過ぎて、先日、台湾の知財警察の方、MPAというところも含めてやってこられまして、おかげさまで夜店から海賊版がなくなったのだけれども、かわりの正規のコンテンツが何も流通しないので、何を置いていいかわからないということで、また海賊版が出てきていますということなのです。今、両方でやるというお話がありましたが、まさにそこは台湾の夜店の風景に象徴されておりまして、海賊版を取り締まると同時に、日本の民放も含めたドラマや映画のコンテンツが正規で出回るという仕掛けをいかにつくるかというのは、喫緊の課題だと思います。ハリウッドの映画には海賊版がありません。韓国のドラマには海賊版が少ないです。これはネット等、配信の権利について極めて速やかに国家戦略としてやっているスキームがあるということですから、それを我々はもっと学んで、台湾に日本の正規のコンテンツが流通する道をつくることがあると思います。
 もう1つ、韓国の話が出ましたけれども、90年代半ばからいろんな国際見本市がありますが、そこで韓国は出展する人の出張旅費、ブース代、その他の補助するお金を全部持ってくれています。これは90年代半ばです。金大中が出てきて、21世紀は文化の世紀というのが90年の最後ですから、先ほどから出ていますように、その前から韓国は国を挙げてMIPとか、シンガポールにも大きなテレビコンテンツ祭があります。行ったらわかると思いますけれども、MIPは、今年ようやくジャパン・フォーマット・ブースというものを経産省さんと総務省さんと一緒になってつくりましたが、スペースが狭いです。なぜ、こういったところにジャパンコンテンツが大きなスペースを持ってクールジャパンを売らないのか。今、YouTubeでアジアで今年一番ヒットしているのは、日本の女性が日本料理を上げて、それを4か国語にローカライズしたものがヒットしているのです。これは個人がやっている話です。そういったものをそういう見本市に持っていってあげるとか、そういう橋渡しの場、これは非常に具体的なことですが、そこに支援をしていただきたい。そうすると、日本に生まれたコンテンツが一気に芽を吹き出すと思います。
 NHKの人間も先ほどありましたけれども、日本では面白くないと思っている番組も、実は台湾で非常にうけている生活情報の番組があるのです。ドラマではないのです。成熟社会の果てに彼らも行き詰っているのです。日本がこの失われた20年の間に経験したコンテンツの意味を彼らが求めているのです。そういった場を是非、つくっていただきたい。そのために、是非、リーダーシップを発揮していただきたいと思います。

○中村会長
 久夛良木委員、どうぞ。

○久夛良木委員
 著作権の権利制限の一般規定のところ、これは中山本部員がいつも御指摘されておるところで、私も本当にそうだと思うのですが、7ページに書いてある「著作権法における権利者の利益を不当に害しない」、この言葉も気になっておりまして、権利者が本来有している権利というのはわかるのですが、利益を害しないということを書くと、どうしても引けてしまうところがあって、著作権ビジネスをされている方からすると、絶対守るべきところであるということはわかるのですが、どうしても次に新しいビジネスを立ち上げたい、もしくは提案したいと思うビジネスサイドの人々からすると、これが非常に大きな重しとなってきているのではないかと思います。
 ここ何年も議論された結果、来年1月から施行なのですが、ここは大分進んだとはいえ、まだまだ突破力に欠ける。本来だったら、もうちょっと呼び水となるような部分を空けて、我が国として積極的に実験してみるということが必要だと思います。特に日本以外のところでは、割合とこういった部分について、もっと早くから議論や実験がされて、一定のコンセンサスができているところで、新しいビジネスモデルがどんどんできてきているわけです。
 今、お話にあったように、UGC、ユーザーがつくったコンテンツもそれなりに新しいメディアに乗っていく時代において、この権利制限の一般規定というよりも、もうちょっと一歩踏み込んで、より使えるような、もしくは新産業を促進するような方向で、実のあるディレクションを出していければいいなと思っています。
 以上です。

○中村会長
 中山本部員、どうぞ。

○中山本部員
 まさにそのとおりでして、私もそう思うのですけれども、現在の著作権法の立法に際しては、法制局のせいかもしれないのですが、とにかく明確性第一、明確でないものは一切だめ、遊びがあってはいけないという方針で立法をしているように見えます。したがって、これはやっていい、これはやっていけないということに明確に線を引く。しかし明確な線を引いても、この激動の時代において明日はどうなるかわからない。明日になるともう時代おくれになってしまうという規定しかつくってはいけないということになっている。そういう法制局の方針のようなのです。
 例えば日本ではアメリカより10年おくれて検索エンジンビジネスが合法だという法律をつくりました。しかし、あの規定は公衆の求めに応じた検索エンジンだけを合法としておりますので、公衆の求めに応じたものではないプッシュ型の検索エンジンは違法であることが明らかになってしまいました。公衆の求めに応じという厳格な要件を立てたために、それ以外のものは全部アウトであるということがはっきりしてしまったわけです。そのようなぐあいに、著作権法をつくるときには、とにかく明確性第一ということですから、遊びもないし新しい産業に全く適用できていない法律になっております。
 この戦略本部でフェアユースをやろうということが決まったのですけれども、文化庁の文化審議会にトーンダウンし、更に法制局で骨抜きされ、平成24年改正では「名も実もない」ようなフェアユースができあがってしまった。この戦略本部としては、もう一回著作権のフェアユースの問題を含めて、将来に対応できるような法制は何かということを検討してもらいたいと思います。

○中村会長
 妹尾委員、お願いします。

○妹尾委員
 妹尾です。
 少し時間が余るようなので、先ほどの話に少し敷衍したいと思います。
 やはり大きい問題は、産業生態系が物すごく変わってきているということだと思うのです。私が東洋経済に連載している中でも何回も書いたのですが、テレビを見るという言葉をもう死語になったと私は思っています。テレビを見るというのは、我々の世代はテレビ番組をテレビ放送というサービスを通じて、テレビ受像機というデバイスで見るということを言ったのですが、若い人たちは、テレビ番組は何で見てもいい。パソコンで見ても携帯のワンセグで見ても、iPhoneで見てもいいのだという世代なのです。産業生態系が1:1:1の分野別な統合から、n:n:nの横断的な状況に入ってきている。ですから、コンテンツサービスとデバイスの関係が全く変わったということが、この数年の動きで、これはさらに加速します。
 同時に、デジタルとアナログ、バーチャルとリアル、これが融合を始めました。さらに、コンテンツに関しては、従来産業生態系はベンダーがつくっていたのが、これにユーザーが入ってきたということです。そうでないと、初音ミクは全く理解できないということになるわけです。
 この状況の中で、著作権法を考えようということが、先ほどの野口先生などのおっしゃっていることだと思います。これは同じく特許の世界でも言われていて、従来の独占的排他権と思い込んでいたら、排他権を独占的に使わないというやり方で、一気に産業の市場加速をするみたいなビジネスモデルができているということと同じです。著作権で守るではなくて、著作権を使って市場を広げるみたいなことが同時に起こらなければいけないという状況であるという理解だと思います。
 同時に、私は別所委員の意見に大賛成で、別所委員の言われている知の取込みみたいなもの、これはオープン・イノベーションでみんなが誤解しているところを指摘されていると思うのですけれども、オープンしておいて、クローズの領域を求めて、またオープンにすると全部できるようになる。オープン・アンド・クローズとテクノロジーのほうでは言いますが、コンテンツ系も全く同じで、知を取り込むというオープンの世界、それで収益源を確保するというクローズの状況、市場化を加速的に形成するというオープンな状況、これを誰がデザインするのか。ですから、コンテンツのクリエーターとともに、こういうビジネスデザイナーもこの世界では育成しなければいけないだろう。この辺が杉山先生が御苦労されているところだろうと思います。
 2点ほど指摘させていただきたいのは、こういうコンテンツをオーサリングツールといいますが、それをやるテクノロジーが日本はぼろ負けしているのです。日本はテクノロジーが強いと言いながら、オーサリングツールのところはソフトもハードもぼろ負けしています。ここのところは何とかコンテンツの皆さんとものづくりの側が一緒にやらなければいけない分野かと思っています。
 もう1つは、先ほど出てきたメディア関係の大学の話がありました。あの中で、実は写真が入っていないのではないかという懸念があります。というのは、メディア芸術の連合をやったときに、スチールフォトグラフを入れなかったですね。私は写真が出身なものですから、写真がメディア芸術に入れられなかったというのは、大変な憤りを感じている一人なのですけれども、ムービーのほうは入るのですが、フォトグラフ、スチールが入っていないというところがあります。だけれども、日本はデジカメの国民普及率が最大のところですし、いまだに輸出貿易額はデジカメが唯一残った牙城なのです。そこのところがコンテンツの中で余り認知されていないということは、今後変えていかないと、コンテンツについてもテクノロジーについても、ちょっと問題なのかと思っていますので、この辺は一度指摘させていただきたいと思います。

○中村会長
 ありがとうございます。
 メディアの生態系ということで言いますと、マルチスクリーンでクラウドネットワークでソーシャルサービスと塗り変わってきていて、3年前とがらっと光景が変わっておりますので、新しい光景に適した戦略づくりをしていく必要があろうと思っております。
 さて、時間がだんだん迫ってきましたけれども、関係省庁の方から何かコメントなどありませんか。よろしいですか。これまでどおり、いつでも割って入ってきていただければと思います。
 他にいかがでしょうか。
 妹尾委員、どうぞ。

○妹尾委員
 私のほうの専門調査会はいつも時間がなくなるのですけれども、こちらは時間が余る。大変意味があると思っていますが、1点、話題を提供します。
 私の大学院生が1人、2年ほど前にベース・オブ・ピラミッドの調査をするということで、バングラデシュに行ってきました。帰ってきてびっくりして彼が報告するには、携帯の普及率がもう6割を超えているということ。当時だから、今はもっとふえています。どうしているのかと聞いたら、夜、村の中で電気が全部消えてしまうから、真っ暗の中で彼らは携帯をやっているという話です。どうやって充電しているのだろうと言ったら、昼間ぼろぼろの太陽光発電パネルや何かを使いながら充電しているという話です。
 ここまではいいのですが、携帯で何をやっているのだろうかということを皆さんは御存じでしょうかという話です。彼らが携帯でやっていることは何かというと、実はその携帯の画面の中に、明日の朝は雨が降りそうだから、農作業はこういうふうにしたほうがいいという情報が流れてくるのです。これを流しているのは、スイスに本部を置く世界的なバイオメジャーのS社です。そこの企業は、バイオメジャーとして種を売りつつ、そういう育成についてまで全部地域ごとに指示を出すということです。しかも、そこでは農作業についての教育がされていないので、その携帯の中は実は学校になっているということなのです。これが欧米の勝ち組のビジネスモデルです。すなわち、コンテンツについて徹底的に取り込む、ロックインさせるというスタイルです。
 エンターテインメント系ももちろんあるのですけれども、私は先ほど申し上げた教育的なコンテンツがそこまで出てきて、彼らが教育の段階まで入ってきたときに、日本の産業は勝てるかという問題です。コンテンツ系はエンターテインメントがクールジャパンではあるのですが、そういうものをやらないと、幾らOECDや新興国、低開発国の農業頑張れよと言っても、意味がないということがわかると思います。こういう世界が開いているというときに、我々が何をするかということを考えるべきだということがあるので、話題として御提供させていただきました。

○中村会長
 里中本部員、どうぞ。

○里中本部員
 今、教育の話が出ましたが、ずっと感じておりますのは、書類をすごくきちんとやるというのが、教育の実態にもあらわれているのではないかと思うのです。このコンテンツ人財育成というところで、学校におけるコンテンツクリエーターの育成となっているのですが、これも大学における大学のコンテンツ関連学部となっているのです。学部でないとこういうことをやっていないと思われたまま通り過ぎていくわけです。
 私自身は大阪芸術大学というところで、ずっとキャラクター造形学科で学科長をやっております。そこではゲーム、アニメ、漫画、フィギュアアーツをずっとやっておりまして、学科全体で毎年180人ぐらい入ってきます。大変厳しくて、今、この御時世でも当然ですが、全員は入学できないのです。ところが、芸術学部に属しているのです。芸術学部の中のキャラクター造形学科という名前ですから、調査対象からは外れてしまっている。写真学科もあります。映像学科もあります。でも、学部としてどこかの中に組み込まれていて、大変人数が多い大学なのですけれども、実態が外に出てこない。ですから、アンケートもそうですが、いろいろ調査するときに余り言葉に縛られ過ぎると、実態が見えてこないこともあるかなと危惧いたしました。
 以上です。

○中村会長
 ありがとうございました。
 さて、今日いろいろと指摘をいただきました。クールジャパンという言葉の捉え直しが必要ではないか、クールというより格好悪くなっているのではないかという御指摘。あるいは、成果や評価をきちんとすること、フォローアップという言葉も出てまいりました。また、海外の調査やデータが必要だという御指摘もありました。教育情報化とかオープンデータといった、エンターテインメント以外のコンテンツが重要だという御指摘がありましたし、計画づくりに当たっての肝を決めるといいますか、プライオリティーづけ、あるいはメリハリをつけるという御指摘も重なっておりました。そして、何よりもアクションにつなげろと、考え過ぎないで行動しろという御指摘もございまして、いずれも御指摘どおりでございます。
 今日いただいた意見は、過去の検証と次のプランづくりに生かしてまいりたいと思いますが、他にもいろいろと今日出なかった意見もあろうかと思いますので、また事務局のほうにお寄せいただければと思います。アクションやアウトプットに体重を載せてまいりたいと思います。
 ということで、予定の時間が迫りましたので、今日はこのあたりで閉会としたいと思います。次の会合について、事務局から連絡をお願いします。

○木村参事官
 次回の専門調査会でございますが、1月17日木曜日10時から、この知財事務局会議室で開催する予定でございます。
 次回は、本日の議論を踏まえまして、知的財産推進計画及び知財政策ビジョンに盛り込むべき事項について、さらに議論を深めていただくという予定にしております。  以上でございます。

○中村会長
 ありがとうございました。
 では、閉会といたします。御多忙のところ、ありがとうございました。