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次世代知財システム検討委員会(第1回)



日 時:平成27年11月6日(金)16:00〜18:00

場 所:中央合同庁舎4号館 1214特別会議室

出席者:

【委 員】
中村委員長、赤松委員、亀井委員、川上委員、喜連川委員、瀬尾委員、
田村委員、福井委員、水越委員、宮島委員、柳川委員、山口委員
【事務局】
横尾局長、増田次長、磯谷次長、田川参事官、永山参事官、中野参事官補佐


  1. 開会
  2. 本検討委員会の趣旨
  3. 検討の背景
  4. 次世代の知財システムの論点について
  5. その他
  6. 閉会

○永山参事官 それでは、定刻になりましたので、ただいまから「次世代知財システム検討委員会」の第1回会合を開催させていただきたいと思います。

 私、内閣官房知的財産戦略推進事務局の永山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、本当に御多忙のところ、御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 本委員会は「知的財産推進計画2015」で定められたデジタル・ネットワークに対応した知財制度等の検討を行うため、知財戦略本部のもとに設置された検証・評価・企画委員会の枠組みの中で、重要な検討事項について専門的に取り扱っていただく会合でございます。

 まず、議事に先立ちまして、知的財産戦略推進事務局長の横尾から御挨拶を申し上げます。

○横尾局長 知財事務局長の横尾でございます。

 今日は、お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 今回の検討会について、一言私の思いを冒頭にお話し申し上げたいと思います。

 知財本部では、知財の推進計画というものを毎年作成しておりますが、今年の「知的財産推進計画2015」というのは、いわゆる知的創造サイクルという創造・保護・権利化・活用のサイクルの中で、知財を活用することでビジネスを創出・拡大して成果につなげていく。これに非常に重きを置いたつもりでございます。

 その知財計画を決定した6月の本部会合で、この知財計画の中の一つの項目でございますけれども、安倍総理からの取りまとめ発言で、デジタル・ネットワーク社会において著作権などの法制度のあり方をしっかり検討するという御発言をいただきましたので、今回、それを受けての特別の委員会を設置したということであります。

 もともと私がこの議論について触発されましたのは、2年前に知財本部で「知的財産政策ビジョン」というのをつくったのですが、その知財ビジョンに飽き足らなかった当時の角川本部員や中村先生も委員でいらしたのですが、そういう方たちが次の2.0の世界を考えようということで「IP2.0」という研究会でやられていた内容に触発されています。

 この研究会でやっていた内容は非常に多岐にわたっているのですけれども、その中で、やはりこれからの知財システムのあり方を左右する大きい要素、まさに大きい技術的社会変化をもたらすのはデジタル・ネットワーク技術の進展だろうということで、ここにフォーカスを当てるべきではないかと思った次第であります。

 幾つか申し上げたいのですが、1つは、まさにこれからの技術的社会変化をもたらすデジタル・ネットワーク技術の将来に向かっての特徴を、一つ仮説的にある軸、あるいは枠組みでもって事務局で提示をさせていただいて、まず御議論をいただこうと思っています。

 これは一つの軸でございますので、ここから縦横にいろいろ広がる論点・課題はあろうかと思いますが、特に今日は初回でもありますので、皆様方からいろいろなお話や議論を出していただければと思っております。

 2つ目に、このデジタル・ネットワーク社会の行く末に当たって、新しい制度・ルールというのを考えなければいけない中で、我々は知財本部のもとの検討委員会ですので、知財にフォーカスをするということであります。

 もちろん、その知財の射程がどこまでなのかということ自体は議論になるわけでありますけれども、知財とそれが接する知財ではないかもしれないところとの連携なり、調和なり、そこは常に意識をして議論したいですし、逆に、そもそも知財制度とは何のためのものかという、そもそもの意義に立ち返った議論も、この際あわせて考えていかなければいけないと思っています。

 3番目に、もう一つのキーワードは恐らく「グローバル化」ということで、知財推進計画2015のにも「国際的な動向を考慮しつつ」と書いてあるのですけれども、まさに主要先進国でいわゆる著作権リフォームをはじめとして、新しい知財制度のあり方を模索する動きがありますし、何よりも先般まとまったTPP、これはこれからの知財制度を考える上での日本としての制度的な立ち位置が変わるというか、一つの予見としてこのTPPでの合意をこれから国内で実施していくわけですが、その上で日本として知財制度をどう考えていくかというのを常に意識する必要があろうかと思っています。

 この検討委員会の名前を「次世代」と称したのですが、実は目の前にある課題から将来にわたる課題まで多岐にわたるのですが、常に将来の姿からバックキャストして、ビジョナリーな議論をぜひしたいなということで、その上で今やるべきこと、中長期に考えるべきことという、常に将来から今を考えるという意味で「次世代」という名前で取り組もうとした次第でございます。

 そういう意味では「システム」というのも、単に個別の制度を超えて、より大きい知財システムとしてなるべく大きい議論をしたいということでございます。

 最後になりますけれども、今回、委員になっていただいた諸先生方は、私なり、私のスタッフがいろいろな人と意見交換をして触発されたさまざまな分野の方に集まっていただきました。

そういう意味で、ここから知の融合によって新しい考え方が出ることを期待したいと思います。

 私のささやかな自慢話ですが、四半世紀前「融合」という文字を初めて法律用語として使ったことがありまして、当時、条約で「核融合」というのが唯一あった言葉で、それを国内法制化で中小企業の異業種連携のことをあえて「融合」という言葉で、単なる連携ではなく新しいものを生み出すという意味で使った記憶がございます。

 ぜひ知の融合によって新しい知財システムのあり方を考えていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

○永山参事官 それでは、本委員会の委員の方々を御紹介させていただきたいと思います。

 お手元の資料に委員名簿がございますので、そちらのほうも御参照いただきながら、紹介をさせていただきたいと思います。

 まず、このたび委員長に御着任いただきました中村伊知哉委員長でございます。

○中村委員長 中村でございます。よろしくどうぞお願いします。

○永山参事官 赤松健委員でございます。

○赤松委員 よろしくお願いします。

○永山参事官 亀井正博委員でございます。

○亀井委員 亀井でございます。

○永山参事官 川上量生委員でございます。

○川上委員 よろしくお願いします。

○永山参事官 喜連川委員につきましては、前の予定のために遅れて参加される予定とお伺いしております。

 続きまして、瀬尾太一委員でございます。

○瀬尾委員 どうぞよろしくお願いいたします。

○永山参事官 田村善之委員でございます。

○田村委員 よろしくお願いします。

○永山参事官 福井健策委員でございます。

○福井委員 よろしくお願いします。

○永山参事官 水越尚子委員でございます。

○水越委員 よろしくお願いします。

○永山参事官 宮島香澄委員でございます。

○宮島委員 よろしくお願いします。

○永山参事官 柳川範之委員でございます。

○柳川委員 よろしくお願いします。

○永山参事官 山口いつ子委員でございます。

○山口委員 よろしくお願いいたします。

○永山参事官 なお、上野達弘委員につきましては、本日は所用のため御欠席ということでございます。

 それでは、これからの議事進行につきましては、中村委員長にお願いをいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○中村委員長 よろしくどうぞお願いいたします。

 では、議事に入りたいと思いますが、まず、事務局から次世代知財システムに関する検討の背景、論点についての説明をお願いできますでしょうか。

○永山参事官 それでは、お手元の資料、右上に資料ナンバーを振っておりますが、資料1をご覧いただければと思います。

 「次世代知財システム検討委員会の開催について」ということで「1.趣旨」のところでございますが、2つ目の○にございますように、デジタル・ネットワーク化の進展は情報量の爆発的な増大を起こし、それが情報検索、解析技術と結びつくことによりまして新たな付加価値を生み出す、そういった新しいイノベーションの創出が期待されているということ。

 3つ目の○ですが、他方で、大量に生成・収集される情報の中には、知財で保護されている情報が混在することが想定される。そういう中で、イノベーション創出と知財保護のバランスをどう図っていくかが課題であるということです。

 4つ目の○は、さらなる技術の進化により、人工知能による創作物、物を完全に再現できる3Dデータなど、従来存在しなかった情報が生まれてくることが想定される。このようなものを知財制度上どのように取り扱うべきか、検討が必要であるということ。

 最後の○は、国境を越えたインターネット上の知財侵害が深刻さを増してきており、それについての対応のあり方について検討を行うことが必要ということが、この検討委員会を設置することになった趣旨ということでございます。

 続きまして、2ページに「2.これまでの経緯等」をまとめております。

 1つが「『知的財産推進計画2015』における記載」でございます。

 1点目が【新しい産業の創出環境の形成に向けた制度等の検討】という中で「柔軟性の高い権利制限規定や円滑なライセンシング体制など新しい時代に対応した制度等の在り方について検討する」という記述がございます。

 また【インターネットを通じた知財侵害への対応】ということで、措置のあり方について検討を行うということになってございます。

 2つ目の○ですが、本年6月に安倍総理から、デジタル・ネットワーク時代にふさわしい著作権法などの法制度のあり方などの検討にもしっかり取り組んでいくという方針が示されております。

 3つ目の○ですが、そういう知財計画、総理の方針を受けて、文化庁では今年の7月に「新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム」を設置し、現在、権利制限規定のあり方について議論を行っているという状況でございます。

 そういう背景、経緯の中で、今日からこの検討委員会で検討をお願いしたいということでございます。

○中野参事官補佐 知財事務局の担当補佐の中野と申します。よろしくお願いいたします。

 続きまして、資料2で、今、御説明した背景について、もう少し詳細に御説明をさせていただきたいと思います。

 「次世代の知的財産システムに関する検討の背景について」という横長のスライドでございます。

 こちらは、次世代知財システムの検討がなぜ必要であるかというところの議論の前提となる環境変化について、どういうことが起きているのか、今後どんなことが起こると予想されるのかというものを、事務局でいろいろな有識者の方にヒアリングさせていただきながら、まとめたものでございます。

 2ページ目は目次になっておりますが、キーワードとしては、局長の挨拶にもありましたが、デジタル・ネットワークの発達ということ、それによって産業、社会がこれまでも変化してきたし、今後も新しい技術によって変化をしてくるだろうということを整理しているものでございます。 3ページ「1.(1)デジタル・ネットワーク社会の発展の変遷」ということで、これは今まで何が起きてきたかということを簡単にまとめているものでございます。

 デジタル・ネットワーク社会というと、もう古くて新しい話、1990年代後半からデジタル化と検索技術が進んできたということで、最初は情報がデジタル化されて、誰とでもつながるというようなネットビジネスというのが台頭してきました。

 それにあわせて2000年代の後半からは、ソーシャル・ネットワーク・サービスということで、情報の発信主体が、企業や事業者だけではなくて、個人にも拡大をしてきておりました。

 さらに、ここ最近はIoTということで、物がインターネットにつながってくる。これによって、現実で起きていることがリアルタイムでインターネット上でも再現される。それをもとに、またサービスをやっていくというようなことも現実のものとなってきているということかと思います。

 これにさらにAIというのが加わって、どうなるかというところが後半でございますが、それは少し後にして4ページ目にまいります。

 今、申し上げたようなデジタル・ネットワークにはいろいろな段階があったわけですが、それぞれの段階でいろいろなサービスが生まれてきている。日本国内でもそうですし、海外も含めて生まれてきている。これは数え出すと切りがないというところではございますが「1.(2)これまで生まれてきた新たなビジネス例」で、ごく代表的なものをここでは載せさせていただいております。

 5ページの「1.(3)デジタル・ネットワーク時代の付加価値(考察)」でございますが、デジタル・ネットワークというのは結局何なのだろうということを事務局なりに整理をしてきたものがこちらになります。

 こういういろいろなビジネスの特徴を見ていくと、3つの付加価値・特徴があるのではないかなということを考えております。

 @ということで、大量の情報を集積することにより価値が高まるというところ、ありふれた情報であっても、分散していた時には余り価値がなかったものでも、たくさん集めると価値が出てくる。今「ビッグデータ」という形で言われていますが、そういったことがデジタル・ネットワークの一つの特徴ではないかと考えております。

 Aとして「短い距離感」と表現しておりますが、誰でもすぐにつながれる、時間も空間も超えてつながれるというところ。

 Bとして、さらに、そのつながった中でお互いに発信をしてくるということで、いろいろな人が発信することで、また全体の情報が増え、価値も上がってくる。

 このような3つの特徴があるのかなということで整理をしてございます。

 こういう特徴を生かしながら、さらに新しい技術、人工知能とか3Dプリンティングといったものを使いながら、さらに今後もビジネスモデルがどんどん提案されていくだろうというような整理をしてございます。

 6ページ目の「(参考)情報とコンテンツの関係(イメージ)」でございますが、今の説明でも「情報」ということを定義なく使っているわけですが、「情報」という言葉はかなり人によって捉え方がさまざまと思います。

 この整理は厳密にし出すと切りがないわけですが、この委員会で議論いただく前提として「情報」というものにどういうものが含まれるかというのを、これも事務局なりに整理をしたものがこちらのイラストになります。

 「情報」と言った時には、このスライドに載っているようないろいろなカテゴリーのもの全てが「情報」という概念に入るのではないかなと考えております。

 ただ、その中にはいろいろ違う面があるということで、真ん中で色をつけている部分でございますが、典型的にはコンテンツのように単独の情報でも経済的取引の対象となるような、ある意味、濃度の高い情報から、真ん中に書いてあるような、分散している時には余り価値のなかったようなものまで、さまざまある。さまざまなものが、結局、デジタル、01(ゼロイチ)ということで全部同じに扱えてしまうというところが、このデジタル・ネットワークの難しさであろうかなということで、少し頭の整理としてつけているものでございます。

 7ページから先が「2.技術・社会の変化と到来する社会像」ということで、将来像について幾つか言及しているものでございます。

 8ページ「2.(1)ビッグデータ解析から人工知能技術の進展と新規ビジネス創出」からは、一つの技術の潮流として、ビッグデータを使ったビジネスから、さらにそこに人工知能の技術が加わってくる。それによって、また新しいビジネスが生まれてくるだろうということを整理してございます。

 8ページ目の左側になりますが「現状〜 :ビッグデータを用いた機械学習」というのは、いろいろなところで既に実用化されております。この技術的な特徴をすごく簡単に整理して申し上げると、ある意味、ビッグデータの中から人が欲しい情報を探し出して持ってきてくれる。パーツを切り出してきてくれるようなビジネスというのが、今もいろいろなところでやられているというところかと思います。

 AIが進化してきてその技術が加わってくると、もう少し提示される情報に変化が加わってくるというのが、この下の第一進化、第二進化の段階と考えております。

 第一進化の段階では、ビッグデータに少し加工を加えてくる。翻訳をしたり、推測をしたりという形で、単に情報を持ってくるのではなくて、そこに付加価値をつけるという段階です。

 第二進化に行きますと、もはや何かオリジナルがあってそこに加工をするというよりは、AI自体が創作をしてくるような段階というところまで、技術的にはもう行くのではないかということが言われております。

 9ページからが、実際にどんなビジネスのイメージがあるのかというものを段階ごとに整理しているものでございます。

 9ページの「2.(2)新規ビジネスのイメージ(現状〜)〜ビッグデータを用いた機械学習とユーザーニーズに沿った情報提供〜」は、現状、既にやられているビジネスの例ということで、この下の絵が実際の例になっているのですが、例えば、今、どんなニュースが話題になっているか知りたいというユーザーのニーズがあった時に、何らかの符号を与えて、それをもとにビッグデータから該当する情報を特定して、引っ張ってきて見せるといったようなビジネスというのは既に行われている。似たような切り口でいろいろなビジネスというのは、今後も展開し得ると考えております。

 10ページの「2.(3)新規ビジネスのイメージ(第一進化段階)〜ディープラーニングによる情報提供の精度や内容の向上〜」が、人工知能の技術が加わって、さらにビジネスはどう進化するかというところでございます。

 「第一進化段階」と名前をつけておりますが、この段階になると、人間が余り指示をしなくても、どういう特徴に注目して分析するかをAIが自分で考えてくる。さらに、自分がやった結果も学習データとして再度取り込んで、概念として深めていくことで、より精度が高い、あるいは推測を加えたような情報を提供していく。それをもとにビジネスをやっていくということも考えられるかと思います。

 事例を2つ載せておりますが、1つは多言語翻訳ということで、会話を認識しつつ翻訳文を提示し、その翻訳の結果から出てくる会話を取り込んで学習をしていくというようなものですとか、あとは「マッシュアップ」と書いておりますが、断片的な情報、例えばある部屋の2〜3枚の写真を与えてあげれば、見えていないところも含めて3DでAIが推測して再現をするというようなところも技術的には可能になってくると言われております。

 11ページの「2.(4)新規ビジネスのイメージ(第二進化段階)〜人工知能が情報を創作〜」は、さらに先ということで、もうビッグデータからAIが自分で学習をしてしまっていて、人間と同じように、そこからAIが創作物を出していくというような段階です。音楽をつくってくれとか、絵画をつくってくれという働きかけがあれば、いずれそれに対応していくというようなところにも行くのではないかということで、こういう時代も来ることを念頭に議論したいということを考えて書いております。

 ここまでが人工知能の関係の話でございまして、次の12ページの「2.(5)3Dプリンティング技術の進展による物と情報の一体化」では、3Dプリンティングの技術の発展による変化を記載してございます。

 物から3Dデータをとって、その3Dデータからまた物を生産することができると、物と情報が同じような価値になるというようなことが技術的にはできるようになるだろうと言われています。

 それによって何が起きるかということで、1つは、自分好みのものをよりつくりやすくなる。誰かがつくったデータを自分好みにカスタマイズしたりというような物の二次創作みたいなこともよりやりやすくなるだろうという一方で、誰かがいいデザインのものをつくって何か権利を持っていたとしても、それがデータの形で誰かに勝手にスキャンされて流通してしまう。容易に拡散してしまうというようなことも想像されるのではないかと考えております。

 ここまでが、デジタル・ネットワークの技術の進展によって、また新しいビジネスがいろいろ広がってくるという、どちらかというとポジティブな話なのですが、デジタル・ネットワークはいいことばかりではなくて、難しい面もあります。

 知財の面でも、インターネット上の知財侵害が深刻化しているというところについて、何か検討が必要ではないかということで、13ページの「2.(6)インターネット上の知財侵害の深刻化」で状況を整理してございます。

 インターネットには国境がないということで、国を基本とした従来の知財制度だけではなかなか対応が難しいということが言われております。

 14ページ目でございます。ここも、知財侵害は大変だということは、一般論としてはそうだなというところかと思うのですが「知財侵害」と一言で言った時にも、これも人によって想起するものがいろいろあろうかと考えておりまして、その代表例ということでマッピングをしてみたものが「(参考)インターネット上の知財侵害の主なパターン」でございます。

 これは厳密な整理をしたものではございませんが、こういういろいろな対応があるということを前提として、対策のあり方についても議論をしていくべきではないかと考えております。

 15ページがここまで御説明したところのまとめのスライドになっております。「2.(7)デジタル・ネットワーク時代に対応した知財制度の整備」を検討していくことが必要であろうということで、1つは、新しい技術によって到来する社会・産業構造の変化を念頭に、新しいビジネスを立ち上げやすいような制度整備というところと、あとは、ちょっとネガティブな面とも言える侵害に対しても、措置のあり方ということを検討していくことが必要ではないかということで、2つの問題意識のもと、大きく3つの論点を示させていただいております。

 その後の16ページ以降については、知財以外の分野でも新しいビジネスと制度の関係というのはいろいろと難しい点があり、議論が動いているということで、そういった政府の他の部署・部門でやられている議論について、参考的にまとめたところでございます。この場での説明は割愛させていただきますが、御興味のある方は御確認いただければ幸いでございます。

 資料2についての説明は以上でございます。

○永山参事官 引き続きまして、論点について御説明をさせていただきます。資料2の15ページも開いていただきながら、資料3と両方をご覧いただきながらお聞きいただければと思います。

 資料2の15ページに、論点として3つのカテゴリー「1.新規ビジネス創出と知財制度」「2.技術革新により新たに生じる情報の取扱い」「3.国境を越えるインターネット上の知財侵害への対応」ということで、それぞれについて、資料3のほうで少し深掘りする形で論点を整理させていただいております。

 まず、資料3「次世代知財システムの在り方について(論点)」の2ページ、3ページのところが1つ目の論点に該当する部分についてでございます。

 2ページ「1.(1)新規ビジネス創出と知財制度」という大きなカテゴリーの中の【論点@】として「大量の情報集積・活用型ビジネスと著作権制度」ということでございます。

 四角囲みにございますように、ビッグデータの中には、コンテンツなど著作権で保護されている情報とそうでない情報が混在する中で、2つ目のポツですが、大量の情報を網羅的に取り扱う場合、知財によって保護された情報とそうでない情報をどう区分していくのか。また、大量の情報について、現実的には個別に事前許諾を得るということは難しく、非常に社会的コストが大きいという中で、やはりビジネス創出上のハードルになる面があると考えられるということでございます。

 そういう中で、今後の知財保護のバランスの観点からどう考えていくのかというのは、非常に大きな論点の1つ目でございます。

 右下のほうに、各国のアプローチということで、まず、我が国としては、権利制限規定の見直しという中で、ここでは平成21年の改正の例を挙げておりますが、いわゆる情報解析ということで、営利、非営利を問わず、コンピューターによる情報解析について、許諾なく行えるような法改正を行っているという対応が一部あるということでございます。

 アメリカについては、御承知のように、一般的な権利制限規定ということで「フェアユース」という規定がございます。幾つかの判断基準に基づいて、公正な利用に該当する場合には許諾なく利用が可能ということで、最終的に公正利用に当たるかどうかということは裁判で争うことになるという制度設計になってございます。

 イギリスについては、そもそも「フェアリーディング」という規定がございますが、その上にプラスして、2014年の法改正で、ビッグデータに関連して非営利の研究目的、データ分析をする場合の複製行為、データ蓄積について、権利制限規定を新設したり、2013年には、ライセンシングの円滑化という観点から、拡大集中許諾制度というものを制度として導入しています。各国そういうアプローチをしている状況で、今後、我が国としてどうしていくのかというのが1つ目の論点でございます。

 3ページの【論点A】が「自動集積されるデータベースの保護のあり方」ということで、右下にございますが、現行法では、創作性のあるデータベースにつきましては、著作権法上の保護対象になる。

 一方「秘密管理性」「非公知性」「有用性」の3要件を満たすデータベースであれば、営業秘密ということで保護の対象になるという現行法制でございますが、そういう中で、上のほうの「論点」に戻っていただきたいと思いますが、AIの進展によって、人間の指示とは無関係に情報取集し続けるようなデータベースが今後増え、そういうものの価値や重要性は増していくと考えられるわけですが、現行法の規定による保護で十分かどうかということを検証していく必要があるのではないかというのが【論点A】でございます。

 4ページからが大きな2つ目のカテゴリーの論点「2.(1)技術革新により新たに生じる情報の取扱い」でございます。

 その中の【論点@】が「AIによって生み出される創作物等の取扱い」ということで「論点」の1つ目にございますように、人工知能が人間の創作物と質的に大差ないものを生み出すような状況に陥った場合に、その創作物につきましては、知財制度上どのように取り扱うべきかという問題。

 また、今後、人工知能によって爆発的に大量の創作物が生み出されるということが考えられる中で、既存の知財制度の考え方をそのまま適用することは妥当かどうかということも論点になるのではないかと思っております。

 下に「AIが生み出す情報の種類」とありますが、アプローチの仕方として、産業財産に関わる場合といわゆる著作権に関わる場合、それぞれ分けて考える必要があるのではないかということで、分けて記述させていただいております。

 産業財産に関わる発明とか工業デザイン、特許とか意匠については、登録が必要ということで、ある程度現行の考え方で対応できるのではないか。また、過不足があるのかということ。

 著作権については、人工知能が道具として使われている間は、現行法の規定の中で対応できる。

「操作している人の著作物」と捉えられるのではないかという点。

 また、AIが独自に創作物を生み出せるようになった場合について、どう取り扱うのかということで、現行法を前提にすれば「思想又は感情を創作的に表現した」というものが著作物の要件でありますので、現行法の著作物には該当しないという中で、今後、どう位置づけていくのかということを御議論いただきたいと考えております。

 左下のほうに、イギリスにおける「Computer Generated Works」ということで、特別な類型を求めて保護するアプローチをしている国もあるということでございます。

 ただ、当然、コンピューターがつくった作品ということで、保護期間は70年のところを50年、人格権はないという特別な形で保護の対象にしているというアプローチの仕方もあるということでございます。

 次の5ページ、これは【論点A】の「3Dプリンティングによるものづくりのオープン化と知財制度」ということで、真ん中の絵のところは、先ほど背景のところで御説明させていただいたとおり、物がデータになってサイト上にアップされて、それがダウンロードされて、3Dプリンターで家庭などの身近なところで製品がつくれるという環境が間近に迫っている中で、知財制度としてどう考えていくのかということで、1つが、左下のほうに「ものづくりのオープン化と知財制度」とありますが、現在、そういうデータの利用や流通行為については「業として」行っていなければ侵害に当たらないという考え方でございますが、※にありますように、家庭内とか個人的にやる部分については、規制の範囲外ということでございますが、そういう対応で十分かどうかという点。

 また、右側にございますように、3Dデータについて、そもそも現行制度上は明確でない部分がある。権利の対象になるかどうかということについて、まだまだ想定していない面がありますので、そこについてどう整理していくのかという点について、御検討をいただければと思います。

 6ページが大きな3つ目の論点「3.(1)国境を越えるインターネット上の知財侵害への対応」、侵害対策ということで、資料2の14ページで知財侵害の主なパターンとして、数多くのパターンを資料として提示しておりますけれども、論点@が、そういうさまざまな対応が考えられる中で、今後、どのような行為を対象に実効的な対策のあり方について検討を深めるべきかということで、例えば、営利目的かどうか、悪質性とか被害の大きさ、法的措置の困難の程度と、さまざまな観点からある程度ターゲットを絞って検討していく必要があるのではないかというのが論点@です。

 論点Aが、これは間接侵害の問題としてこれまで御議論いただいている部分ではございますが、まとめサイト、アプリ等の侵害コンテンツへのアクセスを容易化する目的のサイトについて、どう対応していくのかというのが論点Aです。

 論点Bが、論点@で一定の行為類型を対象として実効的な措置を検討するとした場合に、どのようなアプローチが考えられるのかということで、その際の参考として、7ページは「3.(2)参考となり得る対応策

 〜他分野での対応例〜」ということで、上の2つ、不正競争防止法と個人情報保護法については、海外で行われる一定の行為について、国内法の適用対象になることを明確化するような例です。

 また、児童ポルノにつきましては、サイトブロッキングというものを導入した例を挙げさせていただいております。

 8ページは「3.(3)参考となり得る対応策 〜海外での対応例〜」ということで、諸外国の動向ということで、上の2つがEUということでございます。

 EUのほうは、2001年に欧州著作権指令の中で、侵害サイトへのアクセス遮断などの侵害差し止めについて、いわゆるサイトブロッキングについて規定し、イギリスは2003年に法律改正によりそういう制度を導入したということでございます。

 ただ、2つ目のポツにありますように、裁判所の手続を経た上で行うという手続を踏んだ上で、サイトブロッキング、差し止めというものを制度化したということでございます。

 アメリカでは、ドメイン差し押さえということで、ドメインの差し押さえが実施されるとそれが画面に表示されて、ユーザーが侵害サイトにアクセスできなくなるという形での対応をとっています。

 そういうさまざまなやり方を各国、また、他の分野で行っている中で、そういうものを参考にしながら、我が国としてコンテンツの分野で実効ある対策をどうとっていくのかというのが大きな3つ目の論点でございます。

 その上で、今後のスケジュールを資料4で用意しておりまして、当然、今後、また委員長と御相談しながら進めていきたいと思っておりますが、本日1回目ということで、背景と論点について御説明いたしましたので、それを参考にしていただきながら総論の御議論をいただき、2回目以降、それぞれの論点ごと、大きな3つの項目につきまして順次御検討をいただいて、次の知財計画に反映させるという観点から、まとまったものについて反映させていくという観点から、今年度中を目途に報告書案をまとめていただければありがたいと考えております。

 内容については、時間の関係もございますので御説明いたしませんが、10月5日に大筋合意されて、昨日、協定の全文が公表されましたが、TPPの協定交渉における知財分野の概要について、参考資料2としてお配りさせていただいております。

 私からの説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○中村委員長 ありがとうございました。

冒頭、私も今の説明を伺っていまして、頭の整理をしたいと思ったのですが、次世代のシステムを考えるということであります。その背景の事情としては、いろいろな環境や技術が変化してきたという説明がありました。その主なものとして挙げられたのが、ビッグデータ、AI、3Dプリンティング、IoTも含んでのことだと思いますけれども、そういった背景があるというのが1つ。

 これは、言ってみれば、スマート化の次の段階が来たというのでしょうか。この5年ほどデジタルの世界を覆っていたスマホ、クラウドネットワーク、ソーシャルサービスの次のステージに進みそうだということで、次世代では知財をどう捉えるのかという問いかけだろうと思います。

 事務局の整理によると、政策の目的が3つあって、1つ目が新しいビジネスをつくるということ、2つ目が技術の変化に対応するということ、3つ目が国境を越える侵害問題をどうするかということで、どうやら攻めの問題と守りの問題がありそうであるということです。

 論点として整理いただいたのは7つほどあって、新ビジネスということでいうとビッグデータやデータベース、技術への対応ということでいうとAIと3D、侵害ということだと二次創作とかまとめサイトとか、具体的な措置ということでありまして、今日は総論ということなので、これをどう見るかということを中心に議論をいただければと思います。

 このような議論のスコープとか、状況の認識でよいのか、もっと大事なことがあるのかといったこと、あるいは政策の目的や方向性、あるいは挙げていただいた論点でいいのか、他にもっと大事なことがあるのか、その中でも何が大事なのか、急ぎの問題は何なのかといったことについて、皆さんがお感じになっているコメントを全部テーブルの上に並べて、次回以降でどうするという深掘りに入ることができたらなと思っております。

 冒頭で横尾事務局長から、大きなビジョナリーな議論を望むというお話がありました。我々に課せられているミッションは、そのようなことであると思います。資料の中では「制度」という文字がクローズアップされていますけれども、必ずしも制度にとどまらずに、国としてアクションを起こすべきことは何かということをお出しいただければと思います。

 私、国際的に見て、こういった議論を政府がやっているというのは余り聞いたことがありませんで、ですから、かなり世界の先を行く議論になると思いますし、世界の先を行くメッセージがここから出てくればよいかなと思っているところですので、よろしくお願いいたします。

 1つだけ冒頭に確認を事務局にしたいのですけれども、最後に参考資料2でお配りいただいたTPPのことなのですが、ここの場でもTPP後の世界をどうするかということを議論することになると思うのですが、政府としては、TPPの知財の問題というのは知財本部が取りまとめるという仕切りになっていたと思うのですけれども、ここでの議論と文化庁の審議会で進められる議論との関係といいますか、そのあたりの認識をどうしておいたらいいかということを教えていただければと思うのですが、いかがでしょう。

○永山参事官 文化庁での検討については、今、2つの線路で進んでいます。1つは、そもそもTPPで直接求められている事項について、どう考えていくのかということと、これは今回のこの会の趣旨と似たような面があって、今後の権利制限といいますか、保護と利用をどう図っていくのかというダブルトラックで文化庁も検討しているということでございます。

 今回のこの検討会については、文化庁でいうと2つ目の論点に近い形で、今後の知財制度、ビッグデータ、AI、3Dプリンティングという大きな社会・技術の変化の中で、知財制度をどうしていくのかということを御議論いただきたいということで、基本的にはTPPについてどうしていくのかという直接的なところを御議論いただく場ということではなくて、当然、TPPで保護期間の延長とか、保護の強化は図られますので、そういうことを見据えながら、今後の知財制度、保護と利用とのバランスはどうあるべきかについて、この場で御議論いただければと思っております。

○中村委員長 わかりました。

ということは、保護期間の延長とか、非親告罪化のように法律を直ちにどうするかというような話というのは、文化庁で主に議論していただいて、こちらでもいろいろな著作権に関する議論というのは出てくると思うので、そのあたりはオーバーラップする部分もあるかとは思いますけれども、そんな感じで認識しておいたらよいということですね。ありがとうございます。

 では、皆さんからコメントをいただきたいと思います。質問でも意見でも何でも結構ですので、もし意見などがありましたら、挙手をして発言をいただければと思いますが、いかがでしょう。

 では、川上さん。

○川上委員 この知財に関しては、中期的な視点と長期的な視点と2つあるのかなと思っていまして、中期的視点は何なのかというと、1つは、このようなIoTの技術の革新による新しい知財のあり方ができたこと、もう一つはグローバル化ですよね。

 それに対する何のメリットかというと、要するに、そこで権利をうまく日本が活用することができれば、多分そこで経済的な得をするというのが1個の中期的な視点です。それは当然3Dデータについてもそうでしょうし、データベースについてもそうでしょうし、もしくは国際間でどうやって日本の知財を使用していくのかというところがまず中期的な視点だと思います。

 長期的な視点は何なのかというと、いずれこの知財制度は崩壊するというのを認識として持たなければいけないのかなということです。現状でも大変なのですけれども、国際間で権利の整合性をとっていこうとすると、事務手続に忙殺されて、現実的には知財制度そのものが多分機能しなくなる。

 さらには、人工知能で知財をたくさん獲得したところが強くなるというのは、短期的、中期的な現象としては起こるのですよね。要するに、人工知能を使ってどんどん特許をとりましょうという会社が、今後、間違いなく勝っていくのでしょう。

 でも、その先というのは、そういうものに知財を認めてはだめだよねというようなところに、認めると崩壊してしまうよねというところに最終的には行ってしまうのだと思います。そのバランスの中でどうするのだということを考えなければいけないのではないのか、というのが、私が思っていることです。

 もう一つは、個別な話で、1つはデータベースの取り扱いに関してです。データベースの権利の保護というものが論点として挙げられていましたけれども、私はこれは要らないのではないかなと思います。

 要らない理由は2つありまして、1つは、現行守られていると、データベースとしての創作性云々がある場合は認められていると書いているのですけれども、このビッグデータの時代において、それは絞り込み検索と何が違うのかというような議論というのが恐らく起こってきていまして、ある一定の形式化された手続でそういう創作性のあるデータベースそのものがつくれる時代になってしまいましたから、そういったものに関して権利を認めるのはそもそもおかしいだろうというのが1点。

 現実問題として、少なくともビッグデータを持っているウエブ企業は、保護をしてもらわなくても、サーバーでセキュリティーさえ確保しておけば、基本はビジネスをする際には支障はないのです。

 要するに、当然、データベース自体がぱくられたらどうするのかというのはあるのですけれども、基本的にはそれも動的に生成されて自動収集されるものですから、保護される必要もなくビジネスはできてしまっているということなので、それの権利の保護ということは特に考える必要はないのではないかなというのがデータベースの議論に対して思ったことです。

 もう一つですが、国境を越えた知財の議論に関して一つ思うのは、今は恐らく国境を越えた場合の著作権侵害コンテンツを中心とされた議論だと思うのですけれども、多分、実際にはそれだけではないと思います。

 例えば、ウエブサービスの分野で起こっているのであれば、うちの会社では「ニコニコ動画」というサイトがあって、その中である部分、例えば、コメント米とかで特許を取っているのですよね。

 ところが、その特許を守ろうとしても、海外にサーバーがあるサービスに関しては、それに対して訴訟をするのが非常に難しいというか、そういう訴訟が成立するかどうかというのがわからないという、著作権でも起こっている議論と同じことが特許権でも起こるのです。

 これは特許権だけではなくて、恐らく法律が絡む全てのジャンルで国境をまたいだ部分というのは起こるのです。なので、ここは知財だけを議論する場ではありますが、知財の中でも著作権だけではなく、その他の全ての知財において、国境を越えた侵害の問題は発生するのだということを一つ意見として述べたいと思います。

 以上です。

○中村委員長 ありがとうございます。

 他にいかがでしょう。

 福井さん、お願いします。

○福井委員 ブレスト的なお話ということで、私も思いついたことをまずはお話しをさせていただきます。

 今の川上さんのお話に共感するところがありまして、この場では長期的な話をするのか、短期的な話をするのかという視点が重要だと思います。

 長期的に言うならば、私は著作権制度というものは、今の形では無理になるだろうと思っています。今の形で無理というのは、もうほとんど崩壊に近いぐらい形を変えざるを得ないだろうなという気がしています。

 理由は、コンテンツが余りに増えてしまったことに尽きます。もともとコピーライトという制度は、コンテンツが希少で、その複製あるいは流通の手段が限られていた時に、無断コピーを防止することによって収益を上げようというビジネスモデルを支えるための制度として大きな意義を発揮したものだと思います。

 しかし、現在はコンテンツ希少とは到底言える時代ではなく、コンテンツは極めて過剰です。なぜかといえば、1億総クリエイター時代に入ったからです。

 そして、AI、これがコンテンツを生み出す力においては、近い将来、恐らく人間をはるかに凌駕していきますので、その生み出す力は100倍、1,000倍と大変な規模になっていくと思います。

 そうすると、そこまで過剰になったコンテンツのコピーを防止しても、恐らくビジネスモデルとしてはほとんど意味がないことになるだろうと思うのです。であれば、今の著作権制度は、根本が大分変わってこざるを得ないだろう。長期的にはこのように思うのです。それが2025年ごろであるのか、2045年であるのかは到底予測することはできないのですが、少なくとも長期的にはそうだろうと思います。

 その時に、川上委員がおっしゃったように、多くの企業、特によく「プラットフォーム」と言われる、例えば、グーグルとかアップル、アマゾンといった存在は、余り知財の保護、少なくとも著作権の保護は必要としないかもしれません。

 なぜならば、人々は彼らのプラットフォームの上で日々を過ごし、その上で情報を需要し、発信するということが余りに当たり前になってしまっているからです。よって、彼らのつくったルールに従わなければ、そのプラットフォームからはじかれるだけであるとするならば、彼らのルールには従うし、恐らくアーキテクチャー的に従わざるを得なくなってしまうだろうと思います。

 であれば、プラットフォームは著作権制度という法システムに余り頼らない時代がもう既に来ている気がするし、今後、その傾向は強まっていくでしょう。

 これは私の勝手な考えにすぎませんので、全く的外れだと言う方もいらっしゃるかもしれませんが、例えばそんな予測をしています。

 しかし、そういう未来予測は予測として、ここで話し合うことは、でき得れば短期の課題、5年ぐらいの間に実行可能なメニューにある程度的を絞ってはどうかなという気がします。それは先ほど横尾局長がおっしゃったとおり、長期的な視野を持ちながらも5年で実行できるような話をしないと、その議論の賞味期限が切れてしまうので、ほとんど意味がないと思うからです。

 よって骨太の計画の中に入れたら、著作権でいうならば、すぐにも文化審議会で議論を始めてもらえそうなものを重点的に行うべきではないかなと思います。

 そういう前提で申すならば、現在は著作権は、多くのコンテンツホルダーにとっては収入確保のための重要な手段です。同時に、それは時には新規ビジネスの障害にもなり、あるいは古い作品や世の中の多様な情報を活用しようとすると、その権利処理が障害になるということは、全くおっしゃったとおりだと思います。

 そこで、短期的に何を考えるべきかといえば、現行著作権制度をほぼ前提としつつも、その権利処理コストをいかに下げるかということにかなりのエネルギーを割くべきではないかと思うのです。

 権利処理コストを下げるためのメニューとしては、恐らくこれから「フェアユース」という言葉も登場するかもしれず、あるいは思い切って、任意の作品登録制を著作権制度において導入するというような話も出てくるかもしれません。それらを含めて、5年以内で実現できるようなメニューの議論をしてはどうかなと思います。

 その中で、先ほどプラットフォームという話をしました。このプラットフォームがルールメーカーとして著作権システムにかわるような力を、今後ますます振るうであろうという予測のもとに立つならば、今、それらが主としていわゆる外資の企業たちであるというのは、全く無視することはできないだろうと思います。

 もちろんドワンゴのような大変な成功モデルも日本にはあるわけであり、そういう存在から我々は多くを学べると思いますが、日本の中からプラットフォームを更に育成していくというような視点もあっていいのではないかなと思います。

 また、過去の作品をたくさん集積し、社会の中で役立てていくためのアーカイブ、こうした営みの振興策も、この場で考えていけると良いなと思います。

○中村委員長 ありがとうございます。

 では、亀井委員お願いします。

○亀井委員 ありがとうございます。

 長期的に物事を考えるということは、自分のことを申し上げると、想像力の問題もあって、非常に長いスパンになりますと、そういうこともあるのかなという程度になってしまうということだと思います。

 ただ、ちょっと口幅ったいですが、人間がというか、人類が情報のやりとりの中で物事を考え、新しいものをつくってきたということを考えますと、今、まさにインターネット等を介して情報が瞬時に国境を渡るという中で、日本と言わず、人類にとって非常にすばらしい時代が来ているのだろうと思います。

 知的財産権というのは、先ほど非常にうまい絵を描かれていましたけれども、一部のものが要件を満たすと特別な権利が与えられるというものだと思いますので、そこをやみくもに広げていくと情報の流通そのものがとどめられていってしまうのではないかという側面も多分あるのだろうと思いますので、うまいバランスをとっていく必要があると思われます。

 現状は非常に過渡的な時期で、先ほど進化の過程であるという御説明があったと思いますが、そういう中で今、現実的な解を探すということなのだろうなと思います。

 その点で、福井先生がおっしゃった、5年程度をターゲットに置いた具体的な議論というものも要るのではないかという御提案に全く賛成でございまして、そういう目で見ますと、今日御説明いただいた中の1番目の課題の中で、IoTの中で著作物のようなものも含まれて、データベースに取り込まれていく。挙げられた例を眺めましても、それによってさまざまなサービスが考えられる。

 対応はさまざまかもしれませんが、そこでは恐らく取り込んだ著作物の全部ないし一部がある程度出力される。出力によって人間が新しい知恵を得て、その知恵がまた次にサイバー空間の中に取り込まれていくというような循環が起きるのだろうなと思われます。

 そのような目で見ますと、論点として御説明いただいた1番目のところでは、著作物の取り込みのところについてははっきりとお書きいただいているのですが、著作物が出力されるところというのは、ここの段階ではお書きいただいていないようにお見受けしますので、この前提となっている現状を鑑みると、取り込みだけではなくて、どういう場合だと出力というのが許されるべきなのかというような議論があるのではないかと思います。

 これは恐らく著作権の権利制限の話に落ちていくことだろうなと思いますが、そのような点を本日のところでは感じた次第です。ありがとうございました。

○中村委員長 では、水越さんお願いします。

○水越委員 ありがとうございます。

 IoT、グローバルという話があり、プラットフォーマーという話もありましたが、現象を分解して見てみるのが役に立つかと思います。

 センサーでつながっていろいろなデータが日本国内でも生成されると、それは日本国内だけで処理される場合もありますし、海外に渡って処理をされて瞬時に返ってくるということもあります。

 もう幾つか話が出ていますが、今の資料では「国際的な」というのが3番目だけに出てくるのですけれども、データが生成されて、それが各国を回ってまた日本に返ってきたり、海外で使われているという中で、まず1つは、「著作物」か否かは別として、やはり日本が「データリッチ」になること、とにかくいろいろなデータが出て行くだけではなくて、入ってくるということも必要だと思います。

 私が感じているのは、技術について、こういう革新をしなさいと言ったからといって革新が生じるわけではありませんので、こういうプラットフォーマーを育てようというのはなかなか難しいと思います。しかし、例えば書籍の問題にしても、日本語だけを扱うより、英語も扱って、フランス語も扱って、スペイン語も扱ったほうが、当然扱うデータがリッチになってくるということがありますので、ぱっと思いつくのは、扱う言語を多様にするとか、その中で日本がデータリッチになるような施策というのは、知的財産ということでは必要なのではないかと思います。

 ですので、1番と2番の課題についても、よりグローバルという観点を取り入れたほうがいいのではないかと考えます。

 まさにTPPのように、個別ではなくてリージョナルで合意を形成していくという場は、これからまた新しいことをやっていくのに良い出発点になると思いますので、この中でデータの価値というものを世界と共有しながら、日本をデータがリッチに行き交う場所にするということが一つ視点としてあるといいのではないかと思います。

 短期的なところで何を検討するかについては、戦略的に検討をしてはどうかと思います。

 AIとの関係で創作者や人格権を考えるのは非常におもしろいのですが、なかなかチャレンジングなところもあって、早く決めるのが良いのか、後から決めるのが良いのか、真ん中辺で決めるのが良いのかという問題もあるかと思います。また、権利制限の観点では47条の7がありますけれども、現行法の範囲での使い勝手についても検討していくべきかと思います。

 あとは、最後、権利行使の面がセットになるかと思います。創作のところと権利制限を変えていく中で、今度、裁判に持っていくとなかなか解決しないというのでは、組み合わせとして使い勝手が悪いということになりますので、裁判の手法・制度の進化ですとか、そういうことも必要なのではないかと感じました。最初のコメントとさせていただきます。

○中村委員長 ありがとうございます。

 では、瀬尾さん、お願いします。

○瀬尾委員 最初の局長のお話から大変大きなお話で、これを6回でやるのかというのが正直なところです。

 今3つお題がありますが、最初の著作物の定義ではないですけれども、どこまでを著作物として認めて保護するべきかという、資料2の6ページの「(参考)情報とコンテンツの関係(イメージ)」という図は非常に重要なものですし、これは著作権の制度自体の根本的な部分に関わるお話だと思います。

 ただし、これはかなりコンセプチュアルな話ですから、こういう一番基本の部分は話すにしても、そこそこにしないと、6回では何も結論が出ないというおそれがちょっとあるかなと思います。

 ただ、個人的には、ここは、今、文化庁さんでやっていらっしゃるようなことの基本になりますし、下手をするとかなりの部分のちゃぶ台返しになるので、そこはよく話しておく、もしくはある一定の結論は出しておくべきかと思います。

 それと、先ほどのいわゆる経済政策としての取り組みをここでは決めるべきだと私は思っているので、文化論とか意味論ということを極力省いていかないと、ここではできないと私は考えます。

 ですので、まず、今のような一番初めの基本的な部分からできるだけ具体的に切り分けていく。

3つ目の海賊版対策というのはかなり具体に落ちているので、大きさとしてはもっと下に入る話ではないかなと思います。ディレクトリとしてはかなり落ちる項目かなと思っています。

 そういう最初にやるべきことを、根本的な部分、経済政策を基本とした制度の部分、その中の一つとしての海賊版というようにレイヤーを分けていかないと、これだけ大きい話をみんなでやって、しかも、このようなメンバーでそれぞれのことを言うと、まとまらないのではないか。最初に委員長がこれでとおっしゃられたのは、私も大変そう思います。ですので、よく切り分けていくべきかなというのが第一の印象です。

 2つ目は、これは著作物についての私の雑感的なお話になってしまいますが、著作物を保護することによって創作を豊かにして、流通をさせるという基本的な考え方があるかと思いますけれども、それはつくった瞬間から自然発生的に保護されるという基本的な考え方もあります。

 私が先ほどちらっと思ったのは、例えば「ミク」みたいな形のものを、舞台の上で勝手にプログラムによって3Dで投影して、踊って歌ってしまう。曲も自分でつくってしまうものができた時に、それを私が撮影したいとする。そのもの自体は何で守られるのか。

 著作権なのか、勝手にただつくっているだけなのに著作権では守られないのか。実はその裏に人がいるか、いないかなんて誰にもわからない。人がつくっていたら保護されて、人がつくっていなかったら保護されないのかとか、非常に大きな問題があると思います。

 私も著作者ですし、著作権について思うのは、今後、著作者は自分でそれが著作物であることを主張しないといけない時代になってくる。何でもかんでも保護されるかというと、周りから見たら、こんなすばらしいものを人間がつくっていないということもあり得ると思いますから、例えば署名をするとか、先ほど登録という言葉が出ましたけれども、著作者が何らかの意思表示をしない限り、今後、著作権の保護が難しい時代に入ってくると私も思います。

 ただ、そういう何らかの方法を講じないと、線を引いて真っ二つに分けてしまうと、多分いいことも悪いことも同時に起きてしまうので、著作物の利用のルールのあり方について、まず考えるべきかなということをすごく思いました。

 後半は雑感ですけれども、一応、以上です。

○中村委員長 では、喜連川さん、お願いします。

○喜連川委員 まず、いろいろな議論を聞くところで、多分このメンバーの中では、いわゆる理系、かつ大学にいるのは私だけのようなので、通常のコンテンツと我々が考えていることに大分距離があるなという気がすごくいたしまして、まず、そのベースラインを微妙に合わせる必要があるのかなという気がいたします。

 例えば、先ほど川上委員がデータベースを守らなくていいとおっしゃったのですけれども、私はデータベース学会の役員として、そんなことはあり得ないなという感じがしています。

 つまり、データというものを相手に、自分でプログラムコードを書いた経験のある人が、我々の周りは100%そういう人ばかりなのですけれども、原則、95%の時間というのはいわゆるデータのキュレーションに投入されます。つまり、ごちゃごちゃしたデータは余り価値がなくて、きれいになったデータというものに本質的に価値があります。

 冒頭、委員長がスマートの次にビッグデータが来たとおっしゃられたのですけれども、今のIT屋の感覚はそこも違っておりまして、今、ビッグデータの次はスマートデータと言われているところで、でかければいいという時代はちょっともう限界があるように感じています。

 例えば、我が国ですと、物材機構が持っているマテリアルのデータベースというのは圧倒的なパワーがありまして、これはもう絶対外には出さないというような非常にバリアブルなものです。知財の根源のようなものですので、多分そういう意味ではなくお使いになられているのだと思うのですけれども、分野によって違う感覚というのがあるのかなという気がしています。

 それから、ここの資料の中に「AI」という言葉がいろいろ出てくるわけですが、資料2の9ページには「機械学習」あるいは「自然言語処理」「解析」という言葉が出ているのですけれども、「AI」という言葉が出ていないのですね。機械学習とAIを皆さんがどのように違い分けてお感じになられているのかというのも、この辺も少し具体的なインスタンスで議論をしていく必要があるかなと思っています。

 例えば芸術的な作品で、人間がつくったのとほとんど同じぐらい人間が感情を動かされる作品をつくれるというのは、それはそうかもしれないのですけれども、それと、現在、我々ビッグデータやいわゆる学習系の研究者が苦労しているところはもう全然違う領域にありまして、例えば、医療の中でマシンラーニングを適用するというのも、もう本当に一歩一歩手でつくっています。

 AIが自動的に知識を獲得しながら病理診断の知識ベースをつくるなんて、そんなことは今100%できておりません。人工知能が潜在物質といって新しい物質を何かつくる。では、その潜在物質をAIがぽっとつくれるか。そんなものは全然つくれません。

 ですので、多分、分野によっていろいろ違うのではないかと思うのですが、この辺のAIとか機械学習ということをこの会議で議論される時は、先ほどのデータベースもそうなのですけれども、どういうことを議論するのか、対象領域をある程度具体的に示すほうがいいのではないかなという気がします。

 最後は多分哲学的な論争で、川上委員がおっしゃられたように、全て法律というのはなかなか難しくなる。

 これは多分「Crash Of Civilization(クラッシュ・オブ・シビライゼーション)」という非常に有名な論文が出たのもそうですけれども、そこに一分の望みをかけるというのが、国際判事として御活躍になられている小和田様のような方の御見識でもある。つまり、アイシスのようなものが出た今日、どうやって国際法を維持するのかというのはかなりファー・ビヨンドな哲学的な領域に入ってくると思うのです。

 ですので、私もそこまで先の話をこの場で議論していてもコンクルージョンに至るとは思えないので、そこまでは求めませんが、一体どの辺をここの立ち位置にして議論するかというのは整理していただくことが必要かと存じます。

 以上でございます。

○中村委員長 どうもありがとうございます。

 田村さん、お願いします。

○田村委員 いろいろと論点が多岐に分かれていますが、3つ全部についてお話しするのは時間的に無理なようなので、最初の、次回から議題に入る新規ビジネスのところのお話をしたいと思います。

 時間的に、基本的に著作権を中心に語りますが、著作権というのは、排他権ではありますが、活用という視点から見た場合は、市場を利用して著作物の創作とその利用を促すという制度だと思っています。排他権を与えても、うまく機能しているのであればそのままでいいわけですから、特に制限をする必要はない。まず、これが基本になると思います。

 しかし、先ほどから著作権はじきに崩壊すると言われているのはなぜなのかというと、それは、今日もちゃんと御提示いただきましたが、例えば、資料2の5ページに3つほどキーワードが上がっていまして、それぞれ正鵠を得ているように思いますが、この著作権制度ができた18世紀の最初には考えられなかったような現象が起きていて、まず、@の大量の情報集積・活用が必要だということは、当然、今までどおりにいくと権利が大量になるという、何度も指摘されていることです。アンチコモンズと言われている現象です。

 Aの「短い距離感」というのは実は結構影響がありまして、いろいろな技術を全てインターネットなどでデジタル化して、物すごく瞬時にいろいろなことが法律内のところでできるのですが、依然として著作権の処理のところは基本アナログで、誰が著作権者でどこにいるのかというようなことに関しては、全部とは言いませんけれども、かなりの点はアナログのままなのですね。だから、そのアナログのままのものをデジタルに合わせていく必要がある。

 逆に言うと、要するに、短い距離感になった分、従来ですとなかなか利用するにも時間がかかっていたので、その間に権利処理をしても、特にビジネスではまあまあ許されるようなところがあったのが、相対的に非常に割高感が強くなっている。だから、そのアナログのところをいかにデジタルに近づけていくか。

 例えば、福井先生がちょっと提唱されましたけれども、任意登録なんていうのも、なるべくデジタルの処理を増やそうという位置づけだと思います。

 Bの「双方向性」というのは、もう少しこれは大きく捉えたほうがいいと思いますけれども、要するに、権利者が多様化していて、従来だったら一般には利用できなかったような人々の著作物も、今、デジタルやインターネットでは利用できるようになっている。

 その分、すごく保護を求めている権利者もいれば、どうでもいいと思っている権利者もいる。あるいはもう孤児著作物のように権利者が全く無関心という、そういったものに分かれていて、先ほど何人かの方からお話がありましたけれども、要するに、著作権が一筋縄ではいかなくなっているということが問題だと思います。

 結論から言うと、要するに、全部ではないですが、市場がどうも失敗しているところもある。その一つの例として、今日はビッグデータと新しいビジネスの例を出していただいたと思うのです。だから、今は話をそこに絞っているのだということだと思います。

 次に、市場が失敗である場合の共生策なのですけれども、この共生策はいろいろなメニューがありますので、何をどのような視点で選ぶのかという議論がもしできれば、一番うれしいのだと思うのですね。

 オプションは幾つもありますが、フェアユースなんていう議論もありましたけれども、一番初めに思いつくのは権利制限です。フェアユースではなくてもいいです。特定のビジネスを目がけた、特定の47条のタイプでも結構ですが、権利制限です。

 これは基本的には完全に権利を制限することになると思いますが、他方で、制限はするけれども報酬請求権化しようという考え方もあるし、あるいは報酬請求権化するけれども、やはり個別処理になじまないから、そこを集中処理にしようとか、ちょっと考えただけでもオプションが幾つもあります。

 これをどうやって切り分けていくかなのですが、私が思っているのは、権利者が普通に利用している市場を害さないような利用です。言語解析とか、47条の7はそのような典型だと思いますけれども、そこが制限されてもインセンティブには全く影響がないので、完全な権利制限もありだと思うのです。

 他方で、権利者の市場を害するようなところは、これはやはり創作のインセンティブに影響が出ますので、完全な権利制限は少し控えたほうがよいのだろうと思うのです。

 とはいえ、市場は失敗していますので、何かしたほうが望ましいのだと思うのですね。

 そこで出てくるのが、例えば差止請求権を制限して報酬請求権化してみようと。それによって、無駄な投資かどうかなどを気にせず投資を誘発しようと。それがまたアンチコモンズで、個別の処理、報酬請求権の交渉が大変だというのなら、集中処理とか、いろいろな制度が考えられるということだと思います。

 それが、今のような選択をする時に、どういう時に制限して、どういう時に報酬請求権か、どういう時に集中処理かというのを考えたほうがいいのかなという大量処理の話が一つです。

 もう一つ、多様化の話ですと、やはり完全な権利が必要な権利者はもちろんいらっしゃるわけで、かつ、今日もいろいろとお話があったとおり、インターネットのデジタル化で非常に期待にさらされている分野もあります。その意味では、侵害からの実効的な保護が必要なところはもちろんある。その話はもちろんここでしなければいけないのかもしれません。

 他方で、多様化していますので、どうでもいいと、どんどん使ってくれと、あるいは著作物があるとも知らない著作権者の遺族たちというのは、たくさん世の中にいたりする。あるいは昔のビジネスの話なので、昔のものについて関心を持っていない。現にビジネスをやっているのかもわからず、動画サイトに何も文句を言わないという方もたくさんいらっしゃるわけですね。だから、切り分けが必要なのです。

 今日はお読みになりませんでしたけれども、図解で大変よくわかる絵で、資料3の論点のほうの2ページに【(注)権利制限がなかった時に大量の著作物について事前許諾の取得を試みた例】としてコーパスの例が出ています。

 これは非常に示唆的な数字で、実質上大体こんな数字が出てくることが多いと思うのですが、頑張って処理したところ、86%は連絡がとれたというのはすごいことだと思いますけれども、これは私にも連絡が来て、私はオーケーを出しましたけれども、拒否はたった5%なのですが、14%はとれなかったということで、この5%を保護するために探索コストが非常にかかった。

 そもそもこのコーパスなんていうのは、47条に乗るでしょうから、先ほどの分類でいっても、ここの市場を目がけて創作しているのは少ないと思いますので、一般的には人格権の問題を切り離せば完全制限でいいと私は思うのですが、だから、この例でどうかというよりは拒否が5%だったということがとても大事で、この5%の人のためにたくさん調べなければならず、それもアナログで調べているというのが大きな問題です。

 だから、先ほどもお話がありましたけれども、自動的な著作権というのはじきに限界が来るはずです。

 でも、福井先生が5年以内にとおっしゃったから、余り大きな話をしてはいけないのかもしれないですけれども、横尾事務局長はやってくれというような感じだったから、大きなことをにらんで、それに行き着く一歩みたいな感じでいくと、非現実的な話をすると、例えば、昔の1976年までアメリカにあった更新登録のように、公表後28年たったら、更新登録をしないと権利が消えるというような制度というのは、全ての著作物問題を解決できる制度だと思うのです。

 非現実的ではありますが、言いたいことは、要するに、アナログのところを変えるためには権利者に手を挙げさせる必要があるのだろうと思うのです。更新登録が非現実的だと言うのであれば、例えば拡張許諾制度とか法定許諾制度、あるいは今はありませんが、裁定許諾制度、このどれを選ぶかというのも、例えば、裁定許諾は個別でやっていたけれども、これは結構それなりにどうしてもコストがかかる。逆に法定許諾はいい制度ですけれども、千差万別の著作物に法律で対応できるのかという問題があります。

 その中でいいところ取りをしようと考えているのが拡張許諾ですが、逆に、正当化をしようとすると、オプトアウトを認めたほうがいいのではないかという話がやはり出てくると思うのです。なので、そういった形でいろいろなコストをにらみながら、議論していくのが必要なのではないかなと思っています。

 余り抽象的な大きな話をしてもしようがないのかもしれませんけれども、せっかく文化庁さんの委員会とまた別に進んでいるということは、ゆったりと言ってはいけないかもしれないですが、また別のスタンスでいろいろな話をすることもできるところかなと思いましたので、ちょっとお話をさせていただきました。

○中村委員長 柳川さん、お願いします。

○柳川委員 こういう話を大きく考える時に、私なりに重要だと思う視点のポイントのようなことを幾つかお話しさせていただこうと思います。

 1つは、先ほども出てきましたが、少し長期に見た時に、どのように世の中が変わってくるのかというのをどこまで射程にするかというお話ですけれども、これは私は、どうすべきかという理念的な話と、いろいろな制約を踏まえた時にどうできるのかということを少し切り分けて議論をする必要があるのだと思うのです。

 どうすべきかの話を全くしないで、何ができるかという現実論だけの話をしてしまうと、極めて将来の方向性が見えない話になってしまいます。

 ただ、どうすべきかという話の時には、やはり先ほどの長期的な話も踏まえながら、現状、どういうものを把握していくかということが出てくると思うので、両方の視点を少し切り分けながらやっていくことが必要だろうと思います。

 どうできるかという時に、将来の制約条件として考えなければいけないのは2つで、1つは技術的な状況の変化です。それは、例えば川上委員がおっしゃるように、技術的にもう全く制度が機能しなくなるということなのかもしれません。あるいはそういうものも含めて、技術的にどういう制約要件になるのか。

 もう一つは、法律や制度の側の制約条件でして、これも全く白地に絵を描けるわけではないので、田村先生のほうからも御議論があったように、現状どこまで変えられるのかという、こちらも大きな制約要件になるので、最終的にはこの2つの制約条件をにらみながら、どうできるのかということを考えていかざるを得ないのですけれども、こればかりにならずに、どうすべきかというところも少し視点として入ってくるべきなのだろうというのが1つ目です。

 2つ目で、個別のどうできるかという話は次回以降だと思いますので、どうすべきかということで、経済学者でございますので、先ほど経済政策をというお話が出てきましたので、かなり経済を活性化させるために知財をどう使っていくのかという観点からすると、どうやったら経済が活性化して、みんながいろいろな形でイノベーションをしていく上で、どういう制度なり、法律が必要かということを考えるということからすると、先ほど保護と利用というお話がありましたけれども、できるだけ利用してもらって、そこから新たに出てくるイノベーションを拡大させましょうと。

 こういう観点からすると、できるだけ権利を制限して、勝手に誰でも使えるようにして、そこから新しいものが出てくるというビジネスの一つの方向性があります。

 ただ、それをしてしまうと、本当に必要な知財であるとか、著作権であるとかというもの、今まで保護されてきたような大事なアイデアだとか、大事なアウトプットが出てこなくなるので、ポイントは、先ほど田村先生のほうからインセンティブという話がありましたけれども、やはりそういうものがきちんと出てくる動機づけになるための保護をする、権利を認めるという形になるのだと思います。

 これは純粋に保護だけではなくて、保護することでそこからインセンティブが生まれ、動機づけが行われ、新しいビジネスが次から次へと出てくる。

 その観点からすると、きちんともうかって、そこにお金を投じて、リスクをかけて開発をしてもいいと思えるような動機づけになるためには、どういう保護をしたほうがいいかという観点が重要になってくるのだと思います。

 この観点からすると、これも先ほど田村先生が御指摘になったことと同じことだと思いますけれども、コンピューターが完全に自動的にやってくれるような話ですね。こういうものが本当にどこまでできるのかというのは、先ほどAIの現状はそこから大分遠いのだというお話がありましたから、どこまで出てくるかわかりませんが、コンピューターから自動発生的に出てくるものというのは、ある意味で、コンピューターに気持ちが発生して、どのぐらい評価されるかとか、もうかるかということを気にするようなコンピューターが出てくれば別かもしれませんけれども、そうでない限りは、自動的に出てくるのだとすると、そこにある程度動機づけのための仕掛けや権利は基本的に必要ないということになるのだと思います。

 私はこういう割り切り方なので、それはまた別の軸が出てくればあれかもしれませんけれども、一つの判断材料というのはそういうところなのだろうと思います。

 3番目は、先ほどのどうできるかということに関係する大きな論点なのですけれども、やはり法律の実効性に関しての限界が非常に大きく変化しているということなのだろうと思います。追うことができないとか、田村先生のお話からすると、市場の失敗の形が変わってきているということなのだと思います。

 こういうことで、結局、実効性の限界が変わってきていて、最終的にいえば、川上委員がおっしゃるように、全くだめということになるのかもしれませんけれども、そうではないとすると、ある程度実効性の形や、その動きが変わってきているので、どういう形で適切な把握をしていくかということがやはり一つの論点になってくるのだろうと思います。

 実効性という観点からいうと、専門家のいらっしゃる前で私が言うのもなんですけれども、もともと著作権は完全に守られていたわけではないわけです。漫画の貸し借りから、あるいは貸本屋とか、そういうものがあったわけで、私的な利用ならいいとかいうことをつけて法律的にはオーケーにしていたり、あるいは黙認していたり、いろいろなことがあったわけですけれども、現実的にいえば、その実効性だとか、きちんとした法的な担保のようなことはもともとパーフェクトではなかった。

 それは、例えば本であれば、回し読みをする程度に限界があるので、この程度の回し読みをしてもいいだろうという判断があったわけです。

 ところが、これがネット上に上がってデジタル化されてしまうと、回し読みといっても何百万人に回し読みされてしまう。これでは、回し読みという切り口ではちょうどうまい具合の実効性が確保できなくなったということなのだと思います。

 そういう意味では、やはりこのデジタル化時代においての実効性の相場観というようなものを少し考えていく必要があって、これは皆さんも御議論があったように、長期を考えなくても、5年先ぐらいを考えても100%は無理なのだろうと。そこそこできる範囲で、どういう形で切り分けたら、このデジタル化時代に適切な実効性が確保できるかという視点が重要だという気がいたします。

 ここでちょっと本当に中長期的な話で、川上委員の話に触発されて、現実的な、目先の法律改正と余り関係ない話をしますが、全くこういう形でいろいろ直接的に著作権を保護することが難しくなってくると、やる方法の最終というのは恐らくプラットフォーマーに関する行動規制になってくるのだろうと思います。

 現状、かなりプラットフォーム上にいろいろな権利と思われるような知財が乗っかっているとすると、プラットフォームに対する行動規制で、全てある程度を把握していくという今年か多分なくなってくるのだろうと思います。これはプラットフォームを規制したほうがいいという話では全くありませんので、あくまで遠い先の話として聞いていただければいいのですけれども、感想としてはそういうことを思いました。

 以上でございます。

○中村委員長 山口さん、お願いします。

○山口委員 では、続きまして、私も、大きな話も含めて、意見を述べさせていただきます。この委員会での検討課題について、次回以降は個別具体的な話に入っていくと思いますので、そうした個別課題の検討に先立ち、これから重要になると思われる一般的なポイントとして、次の3点を挙げておきます。

 第1点目は、最初に横尾局長が指摘されたように、グローバルなルールメーキングや、政策決定ないし、ポリシーチョイスとの関係において、まず、日本法の立ち位置をどうするのか、次に、その立ち位置を決めた時に、それを説明するロジックをどのようにつくっていくか、が重要となるということです。というのも、私の専門は「情報法・政策」という領域で、知財だけではなく、社会の情報化に伴って生じるさまざまな法的課題――例えば、憲法上の表現の自由・プライバシー・いわゆる中間媒介者(intermediary)の責任など――を幅広く領域横断的に取り上げて、アメリカやイギリスとの比較法的観点も踏まえつつ研究を進めていますが、そうした中でも、特にネットに関する諸課題については、そのルールメーキングや政策決定をグローバルな関係において考えていくことが、とても重要になっています。

 ただ、既に皆様から指摘されたとおり、この委員会での検討課題をめぐっては、それぞれの立場や国・地域によっても、考え方ないしスタンスがかなり異なってきますので、この委員会の最終的な成果として何を出すかは、結構、難しいなという気がしております。これまでも出た意見の中でも、1つ目に、議論のスパンを、長期的なものとするのか、それとも短期的に決着がつくものに限定するのかが問われます。2つ目に、議論の射程をめぐって――例えば、現行ないしは今後の法制度・知財システムのあり方、また、プラットフォーマーのような事業者の自主的な措置がデファクトで進んでいる現状と日本のルールメーキングや政策形成とのかかわり方、されに、特にネット関係の課題に対する技術的な措置のとり方など――は、それぞれを代替的に捉えるよりも、むしろ、問題となった場面ごとにうまく組み合わせて考えていくことが、有効となりえます。そこで、そのあたりは、問題解決のための道具や手段をできるだけたくさん確保しておくという意味で、適宜、俎上に載せておくとよいと思います。3つ目に、具体的な論点を検討する際のアプローチとして、例えばAI・人工知能やデータベースなどをカテゴリカルに扱うのか、それともむしろファクトベースで、特例の領域や場面について、現行法の解釈を踏まえながら個別に見ていくのかをめぐってもかなり意見が分かれてきます。そうした中で、この委員会の議論の場では、オープンかつフレキシブルにこれからのことを考えていくという基本的なスタンスが、先ほど述べたグローバルな動向との関係でも、やはり大事だと思います。

第2点目としては、次世代の知財制度ないし知財システムのデザインを構想するにあたって、いわゆるリアクティブな視点とプロアクティブな視点のどちらかというのではなく、その両方を持っておくことが、重要になると思います。例えば、ビッグデータ、人工知能、3Dプリンティングなどの検討課題について、それぞれの対応策のアプローチをカテゴリカルにするのかファクトベースにするのかはさておくにしても、日本の現行法の解釈に基づいて、ある程度は対応できるところもあると思います。

 ただ、それと同時に、現時点では予測できない将来の技術革新がもたらす価値やベネフィットをうまく取り込めるように、知財制度ないしは知財システムのデザインをどうつくっていくかが、極めて重要です。できれば、一定の領域・分野によっては、先手を打ってプロアクティブな措置を、あらかじめこの知財システムのデザインの中に組み込んでおくということも、今後の日本の政策選択におけるオプションの一つになり得ると思います。なお、ここで言う、まだ予測できない将来の価値等の中には、この委員会での議論の焦点はビジネス関係となるものの、特に情報や技術という観点から見ると、今後の知財制度の行方によっては民主主義社会における諸価値にも広範な含意を持ち得ますので、知財制度や著作権制度が仕えるはずの広い意味での公共の利益・ベネフィットについても幅広く視野に入れた上で、次世代の知財システムのデザインを、場合によってはかなり大胆に、プロアクティブにやっていくという視点をもって進められると、とてもよいと思います。

 第3点目は、より具体的に、これは特にアメリカと欧州との比較法的検討に基づく私見ですが、次世代の知財システムのデザインにおけるいわば「デフォルト設定」となる基本的・根本的な考え方をどのように規定するのかが、極めて重要になると言えます。例えば、著作権法における権利制限規定の書き方次第で、一方では、ここまではきっちりとプロテクションをかけて知財の権利者側をしっかりと保護してもらいますが、他方で、そこに乗ってこないことはある程度は自由に利活用ができます、といった線引きをうまく書けば、利活用もやりやすい制度になります。

 日本の、現行著作権法の権利制限規定の解釈としては、少なくとも従来は、そこでのいわば「デフォルト設定」が限定列挙とされてきました。この委員会での何度も意見が出たようなアメリカ型のフェアユースについては、日本でも既にかなり緻密な検討が行われてきたところですけれども、改めて、今、この委員会のような横断的かつ包括的な議論の場で、さらに検討を深めていくタイミングではないかと、私は考えています。この権利制限規定の書き方をめぐって、アメリカ型のフェアユースのような包括的・一般的な権利制限規定をそのままの形で日本の現行法に導入できるかと問われれば、それは難しいところで、欧州でも同様の論点が検討された時に、イギリスでさえもなかなか難しいとされてきましたが、それでもなお、イギリス法なりの立場で、また日本法なりの立場で、できることはたくさんあると言えます。例えば、もし、日本の現行著作権法における権利制限規定を見直して利活用がもう少し自由にできるようにするのであれば、これも議論があるところですけれども、各権利制限規定の性質にはさまざまなものがある中で、ある一定のコアなものについては、強行法規性を付与して、契約などでオーバーライドできないようにするということも、制度デザインのオプションとしては可能なはずです。

 そうした選択肢も含めて、この委員会での検討のテーブルに何を載せて、どこまでの政策選択に踏み込むのかは、ある程度、そもそもの知財制度の根底にある考え方をめぐる価値選択にかかわるところです。そこで、日本政府が、どのタイミングで、どのような価値選択をして、どのようにすればそれを価値観等が違う他の国々にも説得的に説明していくことができるのか、といった点については、はこれからぜひ、積極的に、そしてオープンかつフレキシブルに議論ができれば、と思っております。

○中村委員長 では、赤松さん、お願いします。

○赤松委員 法的もしくはプラットフォーム的なお話が随分出たので、私は漫画家ですので、コンテンツそのもののお話をしたいのですが、先ほど対象領域と年数の話題が出ましたけれども、この場では、やはり日本がいかにして儲けていくかというものを即決で話し合ったほうがいいのではないかと思います。

 日本が世界で最強なのは、キャラクタービジネス、萌えキャラ、ゆるキャラ、二次創作で、これは私、今回すごく興味を持っているのですけれども、これは「エヴァンゲリオン」ですよね。綾波ですよね。1995年です。

 これは横に長い目なのですが、これは2011年の「まどか☆マギカ」なのですけれども、目が縦に伸びていますよね。

こういうものというのは、随分はやり廃りがあって、なだらかにみんな好みが変わっていくのです。こういうものというのは、もうAIで予想できると私は思っています。

 こういうもので究極の絵柄とかというものを日本発でどんどん出していってみたいなことを、第2回の新規ビジネス創出で、こういうものをいかにしてマッシュアップしていくか、リアルタイムで多言語化で翻訳して海外に出していくか、そういうものをどんどんやっていくのをいかにして我々は助けるか、そのプラットフォームをつくっていくかという研究をしていけたらいいなと夢見ているのです。

 川上さんに一つ質問があるのですけれども、将棋をやっていたでしょう。将棋をやって、コンピューター、AIが人間を超えてしまったではないですか。何でやめたのですか。

○川上委員 やめていないです。

○赤松委員 やめていない。でも、コンピューター対人間というのはやめたではないですか。

○川上委員 いや、それもやめていないです。やり方を変えただけです。

○赤松委員 私は今「マガジン」でこれをやっているのですけれども、もし私よりおもしろい漫画がAIでできた時、私の絵よりもかわいい美少女ができた時に、我々は売れなくなってしまう。アンケートで低くなって首を切られてしまう。そういうケアまでここで論じていけたら、おもしろいかなと思っています。

 コンテンツそのもののほうのお話に興味があります。そちらをぜひやっていきたい。

 以上です。

○中村委員長 最後の判断がアンケートというところがおもしろいですね。ありがとうございました。

 では、宮島さん、お願いします。

○宮島委員 ありがとうございます。

 既に発言された委員の方々と同じ意見の部分もありますので、一般とのつながりのところでちょっと発言したいと思います。

私も産構審などで知財の議論をしていましたが、正直、知的財産はすごく大事でありながら、一般の人の意識が高かったり、十分理解しているものではないと思っています。

 ただ、先ほどから、今のルールがどんどん崩壊しているとか、抜け穴が増えているというお話が出ている理由は、結局、以前は著作権ですとか知的財産というのは、それに携わっているプロの方、あるいは業者の方がわかっていれば、それで一定程度何とかなっていたものなのだけれども、今や発信をする人に誰でもなり得て、いろいろな人が、自分たちが発信者であり、著作物をすぐに出すことができるという状況の中で、いろいろな人が意識のないまま、いろいろなことをするようになった多様化の中で、現実がついていかなくなったのだと思います。

 だとすれば、ここから先は、本当にビジネスをいろいろ進めるためには、状況に応じて今までのアナログ的な障害はとっていくということにはなると思うのですけれども、最後の最後で、今のコンテンツのような、ここを守らなければ日本の成長や経済にはプラスにならないというところはしっかり見定めて、そこを守っていくためのルールはどうするのかということはちゃんとやらないといけないと思います。

 ここは線を引くというよりは、それこそ手を挙げるとか、方式の問題かもしれませんが、例えば、つくっていただいた資料の「コンテンツのイメージ」という中でも、概念として本当に狭義のコンテンツ、いわゆる「経済的取引の対象となる『情報』」とありますけれども、これも人によっては経済的な取引の状況というのはきっと違うと思うのです。そして、どんどん変わっていると思うのです。

 例えば私たちの業界でいいますと、かつては官庁のデータ情報というのは、私たちが聞いてそれを発信することに意味があったので、そこにはかなりちゃんとした価値があったと思ってやっていたのですけれども、今や機械受注統計でもGDP調査でも即座にネットに上がりますので、記者は恐らく数字に対して意味づけをすることができなければ、そこに価値を創出することができなくなっていると思うのです。

 そういったいわゆる経済的取引の対象となるという意味合いもだんだん変わってきている中で、本当に日本が世界で戦っていく中で、これだけは守らなければいけないというところをちゃんと見定めて、そこに対してはきっちり保護をかけていくという形をしなければいけないという、なかなか難しいところだとは思うのですけれども、広い意味では、非常に緩やかな利用を進めていく中でも、まさに今、赤松委員もおっしゃったような、国際的に日本が勝っていける材料のところは押さえていく必要があると思います。

○中村委員長 ありがとうございました。

 これでワンラウンドしたというところで、ほぼ所定の時間が来たのですけれども、ツーラウンド目をやりたいとおっしゃる方、もし追加発言したいという方はおられますでしょうか。

 瀬尾さん、どうぞ。

○瀬尾委員 赤松さんもおっしゃいましたけれども、コンテンツをつくる側はどうしていくのかという話があって、デジタル化の進歩によって、今までよりもクリエイターが生きにくくなっているのは間違いないのですよね。写真も、昔は難しかったのに今は簡単に撮れてしまうので、ギャラも下がったし、当然、そういう技術の進歩によって、クリエイターの立ち位置というのも変わってくると思います。

 その保護が重要だということもあるのですけれども、ここで話をするのは経済政策としてなのですが、著作物というのはやはりこの国の文化という側面があって、ここで文化論をやってしまうと、ぐちゃぐちゃになってしまうので言いませんけれども、ただ、単純な財ではないという性格を持っていて、この国を性格づけていくような文化というのは何なのか。流通するか、しないかは別にしても、人がつくっていく文化はどうなのかということがバックヤードに隠れているということを我々は慎重に考えながら議論しないと、その場で日本のいいところを全部切り売りして、もうかればいいのかというのは常にある。でも、そんなことを言っていると、全然何もならなくなってしまうということもある。

 なので、私はやはり最後に、我々のこの財が、財であると同時に、日本を特徴づけている地域固有の文化に密着しているという部分は、逆に売りになるかもしれないし、そこら辺を考えた上で、我々は財として考えるというところを私は申し上げておきたいと思います。

 本当に文化論を言ってしまうと泥沼になるので、思想論なので、余り言いませんけれども、ただ、そういうことのあるものなので、他の財とは一線を画すのではないかなということだけ、つけ加えさせていただきたいと思います。

○中村委員長 他にいかがでしょうか。よろしいですか。

 では、川上さん。

○川上委員 喜連川先生の言われたデータベースのことに関してなのですけれども、自動収集されるデータベースに関する保護は必要なのかというのが論点として上がっていましたので、それについては必要ないというのが私の意見です。

 それは保護する実効性のほうも、そんなことなく保護されますので、プラットフォームのウエブ企業の人たちは、データを隠すことによって、生成するプラットフォームを維持することによって守られますので、法的保護は必要ないし、そもそもその過程において得られるいろいろなデータベースがいろいろな切り口で、一旦ビッグデータが出ると、それから派生するデータベースは幾らでもつくれるので、それに関しては保護をすべきではないというのが私の考えですということをもう一度お話しさせていただきたいというのが1点です。

 それと、短期的視点というのはどうせ実現しないので、私は中期的視点と長期的視点という言い方をさせていただいたのですけれども、これはどちらもあっていいのではないかなと思っています。

 中期的視点というと実効性のある話だと思うのですけれども、実効性のある話は話で非常に細かい論点が出ますので、どうせまとまりません。

 長期的視点というのは、今は余り役に立たないのかもしれないのですけれども、罪がない。例えば、そういうコンテンツで機械が出てきた時に、人間を超えた時にどうするのかという議論をやっても、多分怒る人は余りいないと思うので、そういうことも一緒にやっていったほうが割と話としてはまとまり、それを入れたことによって議論による混乱というのは実はそんなに起こらないのではないかということと、知財においては、長期的視点というのが欠けていることによって、何となく無駄な議論をしているのも多いのではないかと思うのです。

 例えば著作権70年の議論というのも、今あるクリエイターのやる気の問題とか言っていましたが、私はずっと思っていたのですけれども、先ほど言ったような理由で、50年後か70年後か知らないですが、その時もう既に著作権制度というのはなくなっていると思うのですよね。

 そうすると、実際に50年、70年にする議論というのは何なのかというと、過去につくった人の著作権を50年、70年にするかどうかなのです。それにおいて意味があるものというのは、恐らくみんなが切れたらもっと使いたいと思っている経済的価値があるものについての議論なので、それを守るか、守らないかというのは、これは力関係で決めていただいても全然いい話だと思うので、これは本質的な議論ではないと思うのです。

 ただ、長期的な視点がないことによって、すごく無駄な議論というのが多分起こっているのではないかと思いますので、やはり著作権制度、知財制度というのが長期的には維持できない。

 それは1つは、もう今、機械的に大量にコンテンツが増え過ぎるというのが未来予測として出てくることと、それが単独の国家でもこんなに維持が難しいものが、グローバル化しようとしても多分うまくいかないのです。

そういう視点を持っておくというのはすごく重要なのではないかと思います。

 どうせこれからもグローバルに知財制度を統一しようとか、そのような議論が出ると思うのですけれども、それは恐らくは失敗するだろうなという認識を持っておくのは、中期的な視点を考える場合でも、そんなに悪い話ではないのかなと私は思います。

○中村委員長 では、最後に、赤松さん、お願いします。

○赤松委員 先ほどの文化庁とのパワーバランスの話なのですけれども、委員長はフェアユースを扱う予定はあるのかというのと、文化庁のパワーバランスでフェアユースを扱うに当たってはどうなのかというのを、一応、念押しでお聞きしたいのです。

○中村委員長 フェアユースについては、皆さんからも、論点といいますか、議論の一つだとおっしゃっていただいているので、それは議論の必要があればしていけばよいと思います。

 文化庁は所管の法律があるので、そこで議論されるでしょうけれども、政府全体でいうと、知財本部で今後どのような議論、あるいは制度をつくっていくのかというのを毎年、知財計画として取りまとめていって、担当の省庁に対してこういう議論が必要だという調整をしていくということになりますので、ここの場でも重要な論点であるということは出していただいて、議論をしていただければと思います。

○赤松委員 とすると、ここで話し合って、それを文化庁に落として法文化してもらうみたいなことはあり得るということですか。

○中村委員長 後で事務局に確認していただければいいと思うのですけれども、仕組みとしてはあり得る。それはここでの議論が、例えば、5年タームでやれること、あるいは10年タームでやれること、いろいろタイムスパンはあると思うのですけれども、それぞれによって、そういった制度の粒度とかというものも違ってくると思うのです。それの我々で議論すべきことはしっかりと議論をしておきたいなというのが私の考え方です。

 喜連川委員、どうぞ。

○喜連川委員 今日は本当に、漫画でプログラムが勝てるのかというすごくチャレンジングなお話を聞けたのが、今日の中で一番楽しかったのですが、「か」と「き」で1ビット横でなかなか意見は合わないのですけれども「自動」という言葉が何を意味しているのか私には余りよくわからなくて、データベースというのは、多くの場合、自動なのです。

 例えば、一番違う例を挙げますと、国家の河川流量というのがありまして、これはテレメトリーなので、ある意味では自動でとってくるのですけれども、多くの場合、非常にノイジーで、機器もアンステーブルなので、とってきただけのデータを入れても何の価値もないのです。そういうものは自動なのか、自動でないのかというのがよくわからないというのが1つ。

 知財も著作権も70年後になくなってしまうとか言われると、大学の先生は一体何のために生きているのかよくわからなくなってくるので、プログラムで多様なコンテンツが出せるというのは、そうかもしれないのですけれども、では、多様なコンテンツを出すプログラムを持ってきたらiPS細胞は発見できるのですかというと、多分できないのですよね。

 つまり、ジェネレートする空間というのは、コンビナートリアルな空間といいますか、指数空間になりますので、原則、やっていることというのは、それをどうやってナローワイズするかというところに全て英知を我々はかけているのです。

 創作物も多分同じで、いろいろな楽曲とか、いろいろな漫画と言うのですけれども、与えるものをどうするかというのがその学習の粋というか、一番極みのところなので、何か言葉が通じないなと隣同士で思っている次第です。

○中村委員長 ありがとうございます。

 今おっしゃったデータベース、あるいはビッグデータの部分というのが、まさに第2回のテーマになるということだと思いますので、そのあたりの論点みたいなものをこちら側で整理をさせていただいて、次回、そのあたりを深掘りしていただけると非常にありがたいと思います。

 今日は皆さんに実に大きなことをおっしゃっていただいて、ありがとうございます。

 私、議論を聞いていまして、3つぐらい簡単に整理をしてみますと、知財あるいは著作権という制度が長期的には崩壊するかもしれないというような見通しもあるという中で、この場では5年ないしは中期的な議論に絞ったらいいのではないか、あるいは経済政策に絞って議論をすべきではないかというお話があって、ある程度そこはコンセンサスと思いましたというのが1つ。

 それから、そこで何をするか、今の問題にどう対応するかということでいうと、すべきことのキーワードとしていろいろ出てきました。データベースの保護、あるいはフェアユースもそうです。登録制というのもありました。アーカイブ、プラットフォームの育成というのとプラットフォームの規制というのがありました。データリッチというお話もありましたし、AIを振興するというのもありました。

 それら全てを個別にこうするというところまでこの会議で落とせるかどうかはわかりませんが、方向性とプライオリティー、こちらのほうだよねというところまで整理ができたらいいなと思います。

 そういった議論をたたく視点としても、皆さんからいろいろお出しいただきました。今お話があったように、技術的に対象分野によって状況とか進路が違うというのもあるので、そういった認識を押さえるということ、制度の実効性を押さえるということ、国際的な位置づけというのを押さえるということ、あるいはビジネスの価値を押さえるというお話があったということで、その方向で整理ができればなと思った次第であります。

 そういう意味で、実に皆さんの議論はおもしろくて、シンポジウムとしては非常に最高なのですけれども、案の定、委員会としては大変なことになったなと思っておりまして、どこまで何を整理すればいいのかというのを改めて事務局と一緒に再整理をさせていただければと思います。

 ということで、最後に、横尾事務局長から改めて総括をいただければと思います。よろしくどうぞお願いいたします。

○横尾局長 今、中村委員長からラップアップがありましたけれども、予想以上に、冒頭の私のリクエストというか、なるべく大きいことを議論しましょうと言ったことにさすが諸先生方は応えていただいて、大変いろいろな議論が出たなという印象でございます。

 したがって、シンポジウムを6回やるわけにはいかないので、これをどう整理をしていくかは、これから事務局でも考えて、中村先生とも御相談をしたいと思っています。

 その中で、今、中村先生からもありましたが、我々知財本部のミッションは知財基本法に基づいてやるという意味では、基本的には経済政策として物事を考えるということであります。

 ただ、その際に、もちろん文化の振興という観点も留意しながら、しかしながら、知財基本法の第1条の目的規定にありますけれども、国際競争力の強化等々、まさに経済政策として取り組むというのが基本の考え方でございます。

 短期か中期か長期かという話は、当面やるべきことというか、それが短期なのか中期なのかはありますけれども、ただ、やはり長期の技術、社会のトレンドをにらみながら当面の話をしなければいけないというのは、冒頭、私も申し上げたところでありますが、そこの長期の視点というのは常に失わずに、中期でやるべきことというのも考えていくということで、その時にどういうオプションがあるのかという切り分けの議論というのを、次回以降、具体的にさせていただきたいと思っています。

 その全体の中で、先ほど赤松委員からありました文化庁との関係というのは、そもそも知財本部は内閣に置かれる政府全体をコーディネートする本部で、そこに置かれた委員会でありますので、ここでは知財計画に従って大枠の議論をさせていただくということで、まさにこれがつくる大きい方針が最後は知財計画になるわけですけれども、そのもとで各省庁、文化庁なら文化庁で個別の制度を具体的に議論するという役割分担であります。

 他の委員会でもそうですけれども、各省での取り組みをこの知財本部の委員会でプレゼンしていただいて、皆さんから御議論いただくというのは、他の委員会でもやっておりますので、そういう意味では、この全体の知財本部の委員会と各省の取り組みというのは、連携しながら、日本政府全体として制度なりシステムをつくっていくという議論をしていくということでございますので、そういう御理解でいていただければと思っております。

 私からは以上になります。

○中村委員長 どうもありがとうございました。

 では、最後に、次回以降の会合について、事務局からお願いいたします。

○永山参事官 本日はどうもありがとうございました。

 年内の会合につきましては、先ほど資料4でご覧いただきましたが、次回会合が12月1日火曜日の16時から、第3回会合につきましては、12月22日の火曜日の同じ16時からとなっております。

 その後、年明けの会合につきましては、また日程を調整させていただきまして、決まり次第、御連絡をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○中村委員長 ありがとうございました。

 では、閉会といたします。ありがとうございました。

○横尾局長 どうもありがとうございました。


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